(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066059
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】工業油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20230508BHJP
C10M 107/02 20060101ALI20230508BHJP
C10M 101/02 20060101ALI20230508BHJP
C10M 137/02 20060101ALI20230508BHJP
C10M 129/10 20060101ALI20230508BHJP
C10M 133/30 20060101ALI20230508BHJP
C10M 137/10 20060101ALI20230508BHJP
C10M 133/38 20060101ALI20230508BHJP
C10M 135/36 20060101ALI20230508BHJP
C10N 10/04 20060101ALN20230508BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20230508BHJP
C10N 40/20 20060101ALN20230508BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M107/02
C10M101/02
C10M137/02
C10M129/10
C10M133/30
C10M137/10 A
C10M133/38
C10M135/36
C10N10:04
C10N30:00 E
C10N40:20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176550
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 祐司
(72)【発明者】
【氏名】船木 亮佑
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA07A
4H104BB05C
4H104BE21C
4H104BE26C
4H104BG19C
4H104BH02C
4H104DA02A
4H104EA02A
4H104LA15
4H104LA20
4H104PA21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】臭気、ミストおよび油煙が抑えられる工業油組成物を提供すること。
【解決手段】工業油組成物は、基油として、α-オレフィン重合体を含む合成油、および水素化分解処理が施された不飽和分が10mass%以下である鉱油から選ばれる少なくとも一種と、酸化防止剤として、下記式(B)で表される中性亜リン酸エステル誘導体(B)、特定の2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体(C)および特定のヒンダードアミン化合物(D)とを含み、前記基油は、40℃の動粘度が40cSt以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油として、α-オレフィン重合体を含む合成油、および水素化分解処理が施された不飽和分が10mass%以下である鉱油から選ばれる少なくとも一種と、
酸化防止剤として、下記式(B)で表される中性亜リン酸エステル誘導体、下記式(C)で表される2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体および下記式(D)で表されるヒンダードアミン化合物とを含み、
前記基油は、40℃の動粘度が40cSt以下である、
工業油組成物。
【化1】
(上記式(B)中、R
b21~R
b24は、それぞれ独立に、炭素原子数10~16の脂肪族炭化水素基を表し、R
b25~R
b28は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、R
b291およびR
b292は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、R
b291およびR
b292の炭素原子数の合計は、1~5である。)
【化2】
(上記式(C)中、R
c1は、炭素原子数1~12の直鎖もしくは分枝状のアルキル基である。)
【化3】
(上記式(D)中、R
d21およびR
d22は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基を表し、R
d23は、炭素原子数1~10の2価の脂肪族炭化水素基を表す。)
【請求項2】
前記基油100質量部に対して、前記酸化防止剤を合計で0.5質量部以上5.0質量部以下の量で含む、
請求項1に記載の工業油組成物。
【請求項3】
さらに、ミスト防止剤として炭化水素系高分子化合物を含む、
請求項1または2に記載の工業油組成物。
【請求項4】
さらに、油性剤としてジアルキルジチオリン酸亜鉛を含み、
機械潤滑に用いられる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の工業油組成物。
【請求項5】
さらに、金属不活性剤としてベンゾトリアゾール誘導体を含む、
請求項4に記載の工業油組成物。
【請求項6】
さらに、極圧剤として硫黄化合物を含み、
金属加工に用いられる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の工業油組成物。
【請求項7】
前記硫黄化合物が、活性硫黄化合物であり、
さらに、金属不活性剤としてチアジアゾール誘導体を含む、
請求項6に記載の工業油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉱油、合成油または油脂を基油とし、塩素原子を有する化合物が含まれていない潤滑油組成物において、(A)成分として有機モリブデン化合物、(B)成分として活性硫黄化合物を含有する潤滑油組成物が記載されている。また、この潤滑油組成物を金属加工油として用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の潤滑油組成物を用いて機械潤滑または金属加工を行った場合は、臭気、ミストおよび油煙が発生する問題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、臭気、ミストおよび油煙が抑えられる工業油組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の工業油組成物は、基油として、α-オレフィン重合体を含む合成油、および水素化分解処理が施された不飽和分が10mass%以下である鉱油から選ばれる少なくとも一種と、酸化防止剤として、下記式(B)で表される中性亜リン酸エステル誘導体、下記式(C)で表される2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体および下記式(D)で表されるヒンダードアミン化合物とを含み、上記基油は、40℃の動粘度が40cSt以下である。
【0007】
【0008】
(上記式(B)中、Rb21~Rb24は、それぞれ独立に、炭素原子数10~16の脂肪族炭化水素基を表し、Rb25~Rb28は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、Rb291およびRb292は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、Rb291およびRb292の炭素原子数の合計は、1~5である。)
【0009】
【0010】
(上記式(C)中、Rc1は、炭素原子数1~12の直鎖もしくは分枝状のアルキル基である。)
【0011】
【0012】
(上記式(D)中、Rd21およびRd22は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基を表し、Rd23は、炭素原子数1~10の2価の脂肪族炭化水素基を表す。)
【発明の効果】
【0013】
本発明の工業油組成物によれば、臭気、ミストおよび油煙が抑えられる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0015】
<実施形態の工業油組成物>
実施形態の工業油組成物は、基油として、α-オレフィン重合体(ポリα-オレフィン(PAO))を含む合成油、および水素化分解処理が施された不飽和分が10mass%以下である鉱油から選ばれる少なくとも一種と、酸化防止剤として、下記式(B)で表される中性亜リン酸エステル誘導体、下記式(C)で表される2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体および下記式(D)で表されるヒンダードアミン化合物とを含む。また、上記基油は、40℃の動粘度が40cSt以下である。実施形態の工業油組成物では、特定の基油と、特定の酸化防止剤とを組み合わせているため、臭気、ミストおよび油煙が抑えられる。具体的には、実施形態の工業油組成物は、金属加工機械において、金属加工に用いる場合には、加工点が高温になっても、臭気、ミストおよび油煙が抑えられる。また、上記金属加工機械において、機械潤滑に用いる場合には、金属加工を行うにつれて、機械潤滑用の工業油組成物が潤滑箇所からしみだして金属加工用の工業油組成物と混ざり合うことがある。このように機械潤滑用の工業油組成物が金属加工用の工業油組成物と混ざり合っても、混ざり合った機械潤滑用の工業油組成物も、臭気、ミストおよび油煙を発生させない。さらに、機械潤滑用の工業油組成物は、長期間安定して金属加工機械を潤滑可能である。
【0016】
これに対して、従来の工業油組成物では、通常、一般的な鉱油と一般的な酸化防止剤(ジフェニルアミン誘導体、フェノール系酸化防止剤など)とが使用されている。上記工業油組成物を使用すると、油剤の低分子量成分の気化により、臭気、ミストおよび油煙を発生し、作業環境が低下する。また、上記酸化防止剤は消費が早いため、酸化防止能が失われるのも早い。これにより、鉱油の分子破壊による低分子化が促進される。このため、臭気、ミストおよび油煙の発生がさらに促進される。
【0017】
<実施形態1の工業油組成物>
実施形態1の工業油組成物は、基油と、酸化防止剤と、ミスト防止剤と、油性剤と、金属不活性剤とを含む。実施形態1の工業油組成物は、機械潤滑に好適に用いられる。
【0018】
〔基油〕
実施形態1の工業油組成物は、基油として、α-オレフィン重合体を含む合成油、および水素化分解処理が施された不飽和分が10mass%以下である鉱油から選ばれる少なくとも一種を含む。すなわち、基油として、上記合成油は1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、上記鉱油は1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。さらに、上記合成油の1種または2種以上と、上記鉱油1種または2種以上とを組み合わせて用いてもよい。上記基油は、40℃の動粘度が40cSt以下であり、7cSt以上32cSt以下であることが好ましく、13cSt以上26cSt以下であることがより好ましい。本明細書において、40℃の動粘度とは、それぞれJIS K 2283-1993に準拠して測定された値である。なお、2種以上を組み合わせて基油の混合物とする場合は、上記混合物(基油全体)において、40℃の動粘度が40cSt以下であり、7cSt以上32cSt以下であることが好ましく、13cSt以上26cSt以下であることがより好ましい。なお、用いる合成油または鉱油の1種について、40℃の動粘度が上記範囲外にあったとしても、上記混合物(基油全体)について、40℃の動粘度が上記範囲内になっていればよい。実施形態1の工業油組成物では、上記基油を用いているため、臭気、ミストおよび油煙の発生が抑えられる。ところで、実施形態1の工業油組成物では、後述する3種類の酸化防止剤が、臭気、ミストおよび油煙の発生の抑制機能を充分に発揮できる量で溶解されていることが好ましい。上記基油を用いると、3種類の酸化防止剤を、上記抑制機能を充分に発揮できる量で溶解できる。
【0019】
合成油に含まれるα-オレフィン重合体(ポリα-オレフィン(PAO))は、たとえば、エチレンおよび炭素原子数3~18のα-オレフィン、好ましくは炭素原子数10~18のα-オレフィンから選択される1種の単量体の単独重合体、エチレンおよび炭素原子数3~18のα-オレフィン、好ましくは炭素原子数10~18のα-オレフィンから選択される少なくとも2種以上の単量体の共重合体が挙げられる。たとえば、1-デセンおよび/または1-ドデセンの重合体(オリゴマー)が挙げられる。α-オレフィン重合体は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、α-オレフィン重合体を含む合成油は、40℃での動粘度が40cSt以下であることが好ましく、7cSt以上32cSt以下であることがより好ましく、13cSt以上26cSt以下であることがさらに好ましい。
【0020】
鉱油は、水素化分解処理が施された鉱油であるが、いいかえると、具体的には、アメリカ石油協会(API)が定める基油カテゴリーにおいてグループ3に属する鉱油である。なお、本明細書において、鉱油の不飽和分は、ASTM D 2007-93に準拠して測定される飽和分を用いて計算した値(含有量(mass%))である。また、鉱油は、40℃での動粘度が40cSt以下であることが好ましく、7cSt以上32cSt以下であることがより好ましく、13cSt以上26cSt以下であることがさらに好ましい。
【0021】
〔酸化防止剤〕
実施形態1の工業油組成物では、酸化防止剤として、下記式(B)で表される中性亜リン酸エステル誘導体、下記式(C)で表される2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体および下記式(D)で表されるヒンダードアミン化合物の3種類を組み合わせて用いる。このため、機械潤滑の際に、長期間使用されても、また、摺動部に高圧がかかり続けても、臭気、ミストおよび油煙の発生が抑えられる。また、中性亜リン酸エステル誘導体、2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体およびヒンダードアミン化合物のいずれかが含まれていない場合よりも、酸化防止剤の消費を抑制できる。したがって、工業油組成物の酸化防止能を長期に渡り持続できる。すなわち、実施形態1の工業油組成物は酸化安定性に優れ、粘度変化も抑制され、長期間使用可能となる。さらに、臭気、ミストおよび油煙の発生の抑制機能を長期に渡って持続できる。
【0022】
中性亜リン酸エステル誘導体は、下記式(B)で表される。中性亜リン酸エステル誘導体は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。中性亜リン酸エステル誘導体は、2量体であるため、蒸発しにくく、効率よく酸化防止性能を発揮できる。
【0023】
【0024】
式(B)中、Rb21~Rb24は、それぞれ独立に、炭素原子数10~16の脂肪族炭化水素基を表す。
【0025】
炭素原子数10~16の脂肪族炭化水素基は、直鎖、分枝または環状の脂肪族炭化水素基であってもよく、飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基であってもよい。炭素原子数10~16の脂肪族炭化水素基としては、具体的にはデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基(セチル基)などの直鎖状のアルキル基が好適に用いられる。
【0026】
Rb25~Rb28は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表す。
【0027】
炭素原子数1~6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、t-ペンチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基が挙げられる。
【0028】
中性亜リン酸エステルは、Rb25~Rb28に特定の置換基を有しているため、酸化防止性能に加えて、耐摩耗性にも優れる。これは、Rb25~Rb28に特定の置換基を有していると、摺動部に付着させた工業油組成物の膜がより強固になるためであると考えられる。
【0029】
特に、Rb25およびRb27が炭素原子数1~6、好ましくは1~3の直鎖状のアルキル基であり、Rb26およびRb28が炭素原子数3~6、好ましくは3~4の分枝状のアルキル基であると、耐摩耗性の改善の効果がより高まる。
【0030】
Rb291およびRb292は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表す。
【0031】
炭素原子数1~5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、t-ペンチル基、ネオペンチル基が挙げられる。
【0032】
ただし、Rb291およびRb292の炭素原子数の合計は、1~5である。したがって、たとえばRb291が水素原子のときは、Rb292は炭素原子数1~5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基であり、Rb291がメチル基のときは、Rb292は炭素原子数1~4の直鎖もしくは分枝状のアルキル基であり、Rb291がエチル基のときは、Rb292は炭素原子数2~3の直鎖もしくは分枝状のアルキル基である。
【0033】
工業油組成物の膜がより強固になるため、Rb291が水素原子であり、Rb292が炭素原子数1~5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基であることがより好ましい。
【0034】
2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体は、下記式(C)で表される。2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0035】
【0036】
式(C)中、Rc1は、炭素原子数1~12の直鎖もしくは分枝状のアルキル基である。炭素原子数1~12の直鎖もしくは分枝状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、t-ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基が挙げられる。上記アルキル基であると、2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体の相溶性が向上する。
【0037】
ヒンダードアミン化合物は、下記式(D)で表される。ヒンダードアミン化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0038】
【0039】
Rd21およびRd22は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基を表す。
【0040】
炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基は、直鎖、分枝または環状の脂肪族炭化水素基であってもよく、飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基であってもよい。
【0041】
炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、イソペンチル基、t-ペンチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基などの直鎖もしくは分枝状のアルキル基が好適に用いられる。これらのうちで、耐久性の向上の観点から炭素原子数5~10の直鎖もしくは分枝状のアルキル基がより好ましい。
【0042】
Rd23は、炭素原子数1~10の2価の脂肪族炭化水素基を表す。
【0043】
炭素原子数1~10の2価の脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、1,2-エチレン基、1,3-プロピレン基、1,4-ブチレン基、1,5-ペンチレン基、1,6-ヘキシレン基、1,7-ヘプチレン基、1,8-オクチレン基、1,9-ノニレン基、1,10-デシレン基、3-メチル-1,5-ペンチレン基などの2価の直鎖もしくは分枝状のアルキレン基が好適に用いられる。これらのうちで、耐久性の向上の観点から炭素原子数5~10の2価の直鎖もしくは分枝状のアルキレン基がより好ましい。
【0044】
耐久性の向上の観点から、上記の内でRd21、Rd22およびRd23の炭素原子数の和が16~30であることがより好ましい。
【0045】
実施形態1の工業油組成物において、基油100質量部に対して、上記3種類の酸化防止剤は合計で、0.5質量部以上7.0質量部以下の量で含まれていることが好ましく、0.7質量部以上3.1質量部以下の量で含まれていることが好ましい。酸化防止剤が上記の量で含まれていると、機械潤滑の際に、長期間使用されても、また、摺動部に高圧がかかり続けても、臭気、ミストおよび油煙の発生がより抑えられる。また、臭気、ミストおよび油煙の発生をさらに抑える観点から、実施形態1の工業油組成物において、基油100質量部に対して、中性亜リン酸エステル誘導体は、0.01質量部以上5.0質量部以下の量で含まれることがさらに好ましく、0.1質量部以上0.5質量部以下の量で含まれることが特に好ましい。
【0046】
〔ミスト防止剤〕
実施形態1の工業油組成物は、ミスト防止剤として、炭化水素系高分子化合物を含む。炭化水素系高分子化合物を用いると、工業油組成物の使用時に、ミストの発生を好適に抑えられる。
【0047】
炭化水素系高分子化合物としては、ポリイソブチレン、エチレン-プロピレンコポリマーが挙げられる。炭化水素系高分子化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのうちで、ポリイソブチレンが好適に用いられる。
【0048】
また、炭化水素系高分子化合物の数平均分子量は、100,000以上3,000,000以下が好ましく、200,000以上2,000,000以下がより好ましく、250,000以上1,000,000以下がさらにより好ましく、300,000以上700,000以下が特に好ましい。ここで、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した、ポリスチレン換算の数平均分子量を意味する。
【0049】
実施形態1の工業油組成物において、基油100質量部に対して、炭化水素系高分子化合物は、ミスト防止の観点から、0.01質量部以上5質量部以下の量で含まれることが好ましい。
【0050】
〔油性剤および金属不活性剤〕
実施形態1の工業油組成物は、油性剤として、ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含む。実施形態1の工業油組成物にジアルキルジチオリン酸亜鉛が含まれていると、摺動性が向上され、摩耗を防止できる。また、実施形態1の工業油組成物は、金属不活性剤として、ベンゾトリアゾール誘導体を含む。実施形態1の工業油組成物にベンゾトリアゾール誘導体が含まれていると、金属表面が保護でき、腐食を防止できる。実施形態1の工業油組成物においては、上記特定の油性剤および金属不活性剤を組み合わせているため、より長期に渡って機械を潤滑できる。
【0051】
ジアルキルジチオリン酸亜鉛が有するアルキル基は、第一級(プライマリー)タイプのアルキル基、第二級(セカンダリー)タイプのアルキル基が挙げられる。第一級(プライマリー)タイプのアルキル基および第二級(セカンダリー)タイプのアルキル基の両方を1分子中に有していてもよい。アルキル基は、直鎖であっても、分枝状であってもよい。アルキル基の炭素原子数は、特に制限はないが、摩耗を防止する観点から、3~12であることが好ましく、3~8であることがより好ましい。ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0052】
ベンゾトリアゾール誘導体は、好ましくは下記式(E)で表される。このようなベンゾトリアゾール誘導体が含まれていると、腐食をより防止できる。
【0053】
【0054】
上記式(E)中、Re1は、水素原子または炭素原子数1~18のアルキル基を表し、Re2およびRe3は、それぞれ独立に、炭素原子数1~18のアルキル基を表す。ベンゾトリアゾール誘導体は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0055】
実施形態1の工業油組成物において、基油100質量部に対して、ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、0.01質量部以上5質量部以下の量で含まれることが好ましい。また、実施形態1の工業油組成物において、基油100質量部に対して、ベンゾトリアゾール誘導体は、0.01質量部以上5質量部以下の量で含まれることが好ましい。
【0056】
実施形態1の工業油組成物は、上述した成分を適宜混合して調製することができる。
【0057】
<実施形態2の工業油組成物>
実施形態2の工業油組成物は、基油と、酸化防止剤と、ミスト防止剤と、極圧剤と、金属不活性剤とを含む。実施形態2の工業油組成物は、金属加工に好適に用いられる。
【0058】
〔基油〕
実施形態2の工業油組成物は、基油として、α-オレフィン重合体を含む合成油、および水素化分解処理が施された不飽和分が10mass%以下である鉱油から選ばれる少なくとも一種を含む。すなわち、基油として、上記合成油は1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、上記鉱油は1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。さらに、上記合成油の1種または2種以上と、上記鉱油1種または2種以上とを組み合わせて用いてもよい。上記基油は、40℃の動粘度が40cSt以下であり、7cSt以上32cSt以下であることが好ましく、13cSt以上26cSt以下であることがより好ましい。なお、2種以上を組み合わせて基油の混合物とする場合は、上記混合物(基油全体)において、40℃の動粘度が40cSt以下であり、7cSt以上32cSt以下であることが好ましく、13cSt以上26cSt以下であることがより好ましい。なお、用いる合成油または鉱油の1種について、40℃の動粘度が上記範囲外にあったとしても、上記混合物(基油全体)について、40℃の動粘度が上記範囲内になっていればよい。実施形態2の工業油組成物では、上記基油を用いているため、臭気、ミストおよび油煙の発生が抑えられる。ところで、実施形態2の工業油組成物では、後述する3種類の酸化防止剤が、臭気、ミストおよび油煙の発生の抑制機能を充分に発揮できる量で溶解されていることが好ましい。上記基油を用いると、3種類の酸化防止剤を、上記抑制機能を充分に発揮できる量で溶解できる。
【0059】
合成油に含まれるα-オレフィン重合体(ポリα-オレフィン(PAO))の詳細については、実施形態1で説明したものと同様である。また、鉱油の詳細についても、実施形態1で説明したものと同様である。
【0060】
〔酸化防止剤〕
実施形態2の工業油組成物では、酸化防止剤として、上記式(B)で表される中性亜リン酸エステル誘導体、上記式(C)で表される2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体および上記式(D)で表されるヒンダードアミン化合物の3種類を組み合わせて用いる。このため、金属加工の際に、加工点が高温になったとしても、臭気、ミストおよび油煙の発生が抑えられる。また、中性亜リン酸エステル誘導体、2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体およびヒンダードアミン化合物のいずれかが含まれていない場合よりも、臭気、ミストおよび油煙の発生が抑えられる。酸化防止剤の詳細については、好ましい範囲および理由なども含め、実施形態1で説明したものと同様である。
【0061】
実施形態2の工業油組成物において、基油100質量部に対して、上記3種類の酸化防止剤は合計で、0.5質量部以上7.0質量部以下の量で含まれていることが好ましく、0.7質量部以上3.1質量部以下の量で含まれていることが好ましい。酸化防止剤が上記の量で含まれていると、金属加工の際に、加工点が高温になったとしても、臭気、ミストおよび油煙の発生がより抑えられる。また、臭気、ミストおよび油煙の発生をさらに抑える観点から、実施形態2の工業油組成物において、基油100質量部に対して、中性亜リン酸エステル誘導体は、0.01質量部以上5.0質量部以下の量で含まれることがさらに好ましく、0.1質量部以上0.5質量部以下の量で含まれることが特に好ましい。
【0062】
〔ミスト防止剤〕
実施形態2の工業油組成物は、ミスト防止剤として、炭化水素系高分子化合物を含む。炭化水素系高分子化合物を用いると、工業油組成物の使用時に、ミストの発生を好適に抑えられる。ミスト防止剤の詳細については、好ましい範囲、量および理由なども含め、実施形態1で説明したものと同様である。
【0063】
〔極圧剤および金属不活性剤〕
実施形態2の工業油組成物は、極圧剤として、硫黄化合物を含む。具体的には活性硫黄化合物を含む。実施形態2の工業油組成物に活性硫黄化合物が含まれていると、加工点が高温になる場合も、加工性が向上できる。また、実施形態2の工業油組成物は、金属不活性剤として、チアジアゾール誘導体を含む。実施形態2の工業油組成物にチアジアゾール誘導体が含まれていると、加工点が高温になる場合も、金属表面が保護でき、腐食を防止できる。また、銅系金属の加工も可能となる。実施形態2の工業油組成物においては、上記特定の極圧剤および金属不活性剤を組み合わせているため、より好適に金属を加工できる。
【0064】
活性硫黄化合物は、分子内に活性硫黄を含有する化合物であればよい。ここで、活性硫黄化合物とは、たとえば、硫黄原子を含有し金属原子およびリン原子を含有しない化合物のうち、硫黄含量が1質量%になるように精製鉱油で希釈したものについて、JIS K2513(石油製品-銅板腐食試験方法;試験管法、100℃で1時間加熱)に準じて測定した銅板腐食が2~4であるものをいう。なお、一方、硫黄原子を含有し金属原子およびリン原子を含有しない化合物のうち、上記の試験法で、銅板腐食が1である化合物を不活性硫黄化合物という。活性硫黄化合物としては、ポリサルファイド、硫化油脂、粉末硫黄、硫化鉱油、硫化エステル、硫化オレフィン、硫化脂肪酸、硫化ラードが挙げられる。これらのうちで、硫化オレフィン、硫化脂肪酸、硫化ラードが好適に用いられる。活性硫黄化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの活性硫黄化合物と、原料や硫黄含量が近似していても、製造条件等により、不活性硫黄化合物である場合がある。
【0065】
チアジアゾール誘導体は、好ましくは2,5-ビス(アルキルジチオ)-1,3,4-チアジアゾールであり、下記式(F)で表される。このようなチアジアゾール誘導体が含まれていると、加工点が高温になる場合も、腐食をより防止できる。
【0066】
【0067】
上記式(F)中、Rf1およびRf2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~20のアルキル基を示し、aおよびbは、それぞれ独立に、1、2または3を表す。チアジアゾール誘導体は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0068】
実施形態2の工業油組成物において、基油100質量部に対して、硫黄化合物は、0.01質量部以上20質量部以下の量で含まれることが好ましい。また、実施形態2の工業油組成物において、基油100質量部に対して、チアジアゾール誘導体は、0.01質量部以上5質量部以下の量で含まれることが好ましい。
【0069】
実施形態2の工業油組成物は、上述した成分を適宜混合して調製することができる。
【0070】
<その他の実施形態の工業油組成物>
その他の実施形態の工業油組成物として、実施形態1、2の工業油組成物に、さらに、その他の添加剤が含まれていてもよい。その他の添加剤としては、塩素化パラフィンが挙げられる。その他の添加剤は、工業油組成物について臭気、ミストおよび油煙の発生抑制機能等の効果を妨げない範囲で含まれていることが好ましい。
【0071】
また、その他の実施形態の工業油組成物としては、実施形態1の工業油組成物に対して、ミスト防止剤、油性剤および金属不活性剤の少なくとも1種を含まない組成物であってもよい。
【0072】
あるいは、実施形態2の工業油組成物に対して、ミスト防止剤、極圧剤および金属不活性剤の少なくとも1種を含まない組成物であってもよい。実施形態2の工業油組成物において、上述した金属不活性剤を含まない場合は、銅系金属以外、たとえば鉄を含む金属の加工に好適に用いることができる。また、実施形態2の工業油組成物において、上述した金属不活性剤を含まない場合は、極圧剤として、活性硫黄化合物の代わりに不活性硫黄化合物を用いてもよい。
【0073】
いずれの工業油組成物も、臭気、ミストおよび油煙の発生を好適に抑えられる。
【0074】
以上より、本発明は以下に関する。
〔1〕 基油として、α-オレフィン重合体を含む合成油、および水素化分解処理が施された不飽和分が10mass%以下である鉱油から選ばれる少なくとも一種と、
酸化防止剤として、下記式(B)で表される中性亜リン酸エステル誘導体、下記式(C)で表される2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体および下記式(D)で表されるヒンダードアミン化合物とを含み、前記基油は、40℃の動粘度が40cSt以下である、工業油組成物。
【0075】
【0076】
(上記式(B)中、Rb21~Rb24は、それぞれ独立に、炭素原子数10~16の脂肪族炭化水素基を表し、Rb25~Rb28は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、Rb291およびRb292は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~5の直鎖もしくは分枝状のアルキル基を表し、Rb291およびRb292の炭素原子数の合計は、1~5である。)
【0077】
【0078】
(上記式(C)中、Rc1は、炭素原子数1~12の直鎖もしくは分枝状のアルキル基である。)
【0079】
【0080】
(上記式(D)中、Rd21およびRd22は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10の脂肪族炭化水素基を表し、Rd23は、炭素原子数1~10の2価の脂肪族炭化水素基を表す。)
〔2〕 前記基油100質量部に対して、前記酸化防止剤を合計で0.5質量部以上5.0質量部以下の量で含む、〔1〕に記載の工業油組成物。
上記工業油組成物は、臭気、ミストおよび油煙が抑えられる。
〔3〕 さらに、ミスト防止剤として炭化水素系高分子化合物を含む、〔1〕または〔2〕に記載の工業油組成物。
上記工業油組成物は、さらに臭気、ミストおよび油煙が抑えられる。
〔4〕 さらに、油性剤としてジアルキルジチオリン酸亜鉛を含み、機械潤滑に用いられる、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の工業油組成物。
〔5〕 さらに、金属不活性剤としてベンゾトリアゾール誘導体を含む、〔4〕に記載の工業油組成物。
上記工業油組成物は、機械潤滑に好適に用いられる。
〔6〕 さらに、極圧剤として硫黄化合物を含み、金属加工に用いられる、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の工業油組成物。
〔7〕 前記硫黄化合物が、活性硫黄化合物であり、さらに、金属不活性剤としてチアジアゾール誘導体を含む、〔6〕に記載の工業油組成物。
上記工業油組成物は、金属加工に好適に用いられる。
【0081】
[実施例]
以下実施例に基づいて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1-1]
基油として合成油を用いた。具体的には、合成油としてポリα-オレフィン(シェブロンフィリップスケミカル社製、PAO 4cSt(グレード)、40℃での動粘度16.8cSt)を用いた。
この基油100質量部に対して、中性亜リン酸エステル誘導体として4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル ジトリデシルフォスファイト)0.1質量部と、2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体としてオクチル=3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノアート(CAS 125643-61-0、商品名:イルガノックス(登録商標)L135、BASFジャパン株式会社製)0.5質量部と、ヒンダードアミン化合物としてデカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)ピペリジン-4-イル)0.1質量部と、ミスト防止剤としてポリイソブチレン(商品名:PARATAC、Triiso社製)0.1質量部と、油性剤としてジアルキルジチオリン酸亜鉛(商品名:アディティン(登録商標)RC308、ランクセス株式会社製)1質量部と、金属不活性剤として1-(N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル)ベンゾトリアゾール(商品名:イルガメット(登録商標)39、BASFジャパン株式会社製)0.5質量部とを混合して、工業油組成物を得た。
【0082】
[実施例1-2]
下記の量で成分を混合した以外は、実施例1-1と同様にして、工業油組成物を得た。すなわち、基油100質量部に対して、中性亜リン酸エステル誘導体0.5質量部と、2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体0.5質量部と、ヒンダードアミン化合物0.1質量部と、ミスト防止剤0.1質量部と、油性剤1質量部と、金属不活性剤0.5質量部とを混合して、工業油組成物を得た。
【0083】
[実施例1-3-1~1-3-6]
中性亜リン酸エステル誘導体として4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル ジトリデシルフォスファイト)(Rb21~Rb24=トリデシル基、Rb25、Rb27=メチル基、Rb26、Rb28=t-ブチル基、Rb291=水素原子、Rb292=n-プロピル基)の代わりに、上記式(B)中の置換基を表1の置換基に変更した化合物を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0084】
【0085】
[実施例1-4-1~1-4-6]
ヒンダードアミン化合物としてデカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)ピペリジン-4-イル)(Rd21、Rd22=n-オクチル基、Rd23=1,8-オクチレン基)の代わりに、上記式(D)中の置換基を表2の置換基に変更した化合物を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0086】
【0087】
[実施例1-5-1]
ミスト防止剤としてポリイソブチレン(商品名:ストラクトールAM、シル+ザイラッハ社製)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0088】
[実施例1-5-2]
ミスト防止剤としてポリイソブチレン(商品名:ストラクトールC、シル+ザイラッハ社製)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0089】
[実施例1-5-3]
ミスト防止剤としてポリイソブチレン(商品名:ストラクトールS、シル+ザイラッハ社製)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0090】
[実施例1-6-1]
基油として下記合成油を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、工業油組成物を得た。すなわち、合成油としてポリα-オレフィン(イネオスオリゴマー社製、デュラシン162、40℃での動粘度5.5cSt)およびポリα-オレフィン(イネオスオリゴマー社製、デュラシン164、40℃での動粘度17.0cSt)の混合物を用いた。上記混合物(基油全体)について、40℃での動粘度は10cStであった。
【0091】
[実施例1-6-2]
基油として下記合成油を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、工業油組成物を得た。すなわち、合成油としてポリα-オレフィン(エクソンモービル社製、スペクトラシン4、40℃での動粘度20cSt)を用いた。
【0092】
[実施例1-6-3]
基油として下記合成油を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、工業油組成物を得た。すなわち、合成油としてポリα-オレフィン(エクソンモービル社製、スペクトラシン5、40℃での動粘度25cSt)を用いた。
【0093】
[実施例1-6-4]
基油として下記合成油を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、工業油組成物を得た。すなわち、合成油としてポリα-オレフィン(イネオスオリゴマー社製、デュラシン166、40℃での動粘度31cSt)を用いた。
【0094】
[実施例2-1]
基油として鉱油を用いた。具体的には、鉱油としてグループ3に属する鉱油(S-OIL株式会社製、ウルトラ-S3、40℃での動粘度14cSt、不飽和分10mass%以下)を用いた。
この基油100質量部に対して、中性亜リン酸エステル誘導体として4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル ジトリデシルフォスファイト)0.1質量部と、2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体としてオクチル=3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノアート(CAS 125643-61-0、商品名:イルガノックス(登録商標)L135、BASFジャパン株式会社製)0.5質量部と、ヒンダードアミン化合物としてデカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)ピペリジン-4-イル)0.1質量部と、ミスト防止剤としてポリイソブチレン(商品名:PARATAC、Triiso社製)0.1質量部と、油性剤としてジアルキルジチオリン酸亜鉛(商品名:アディティン(登録商標)RC308、ランクセス株式会社製)1質量部と、金属不活性剤として1-(N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル)ベンゾトリアゾール(商品名:イルガメット(登録商標)39、BASFジャパン株式会社製)0.5質量部とを混合して、工業油組成物を得た。
【0095】
[実施例2-2]
下記の量で成分を混合した以外は、実施例2-1と同様にして、工業油組成物を得た。すなわち、基油100質量部に対して、中性亜リン酸エステル誘導体0.5質量部と、2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体0.5質量部と、ヒンダードアミン化合物0.1質量部と、ミスト防止剤0.1質量部と、油性剤1質量部と、金属不活性剤0.5質量部とを混合して、工業油組成物を得た。
【0096】
[実施例2-3-1~2-3-6]
中性亜リン酸エステル誘導体として4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル ジトリデシルフォスファイト)(Rb21~Rb24=トリデシル基、Rb25、Rb27=メチル基、Rb26、Rb28=t-ブチル基、Rb291=水素原子、Rb292=n-プロピル基)の代わりに、上記式(B)中の置換基を表3の置換基に変更した化合物を用いた以外は、実施例2-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0097】
【0098】
[実施例2-4-1~2-4-6]
ヒンダードアミン化合物としてデカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)ピペリジン-4-イル)(Rd21、Rd22=n-オクチル基、Rd23=1,8-オクチレン基)の代わりに、上記式(D)中の置換基を表4の置換基に変更した化合物を用いた以外は、実施例2-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0099】
【0100】
[実施例2-5-1]
ミスト防止剤としてポリイソブチレン(商品名:ストラクトールAM、シル+ザイラッハ社製)を用いた以外は、実施例2-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0101】
[実施例2-5-2]
ミスト防止剤としてポリイソブチレン(商品名:ストラクトールC、シル+ザイラッハ社製)を用いた以外は、実施例2-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0102】
[実施例2-5-3]
ミスト防止剤としてポリイソブチレン(商品名:ストラクトールS、シル+ザイラッハ社製)を用いた以外は、実施例2-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0103】
[実施例2-6-1]
基油として下記鉱油を用いた以外は、実施例2-1と同様にして、工業油組成物を得た。すなわち、鉱油としてグループ3に属する鉱油(S-OIL株式会社製、ウルトラ-S2、40℃での動粘度7.62cSt、不飽和分10mass%以下)およびグループ3に属する鉱油(S-OIL株式会社製、ウルトラ-S3、40℃での動粘度14cSt、不飽和分10mass%以下)の混合物を用いた。上記混合物(基油全体)について、40℃での動粘度は10cSt、不飽和分は10mass%以下であった。
【0104】
[実施例2-6-2]
基油として下記鉱油を用いた以外は、実施例2-1と同様にして、工業油組成物を得た。すなわち、鉱油としてグループ3に属する鉱油(S-OIL株式会社製、ウルトラ-S4、40℃での動粘度19.7cSt、不飽和分10mass%以下)を用いた。
【0105】
[実施例2-6-3]
基油として下記鉱油を用いた以外は、実施例2-1と同様にして、工業油組成物を得た。すなわち、鉱油としてグループ3に属する鉱油(S-OIL株式会社製、ウルトラ-S4、40℃での動粘度19.7cSt、不飽和分10mass%以下)およびグループ3に属する鉱油(S-OIL株式会社製、ウルトラ-S6、40℃での動粘度32.5cSt、不飽和分10mass%以下)の混合物を用いた。上記混合物(基油全体)について、40℃での動粘度は26cSt、不飽和分は10mass%以下であった。
【0106】
[実施例2-6-4]
基油として下記鉱油を用いた以外は、実施例2-1と同様にして、工業油組成物を得た。すなわち、鉱油としてグループ3に属する鉱油(S-OIL株式会社製、ウルトラ-S2、40℃での動粘度7.62cSt、不飽和分10mass%以下)を用いた。
【0107】
[実施例3-1]
基油として合成油を用いた。具体的には、合成油としてポリα-オレフィン(シェブロンフィリップスケミカル社製、PAO 4cSt(グレード)、40℃での動粘度16.8cSt)を用いた。
この基油100質量部に対して、中性亜リン酸エステル誘導体として4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル ジトリデシルフォスファイト)0.1質量部と、2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体としてオクチル=3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノアート(CAS 125643-61-0、商品名:イルガノックス(登録商標)L135、BASFジャパン株式会社製)0.5質量部と、ヒンダードアミン化合物としてデカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)ピペリジン-4-イル)0.1質量部と、ミスト防止剤としてポリイソブチレン(商品名:PARATAC、Triiso社製)0.1質量部と、極圧剤として活性硫黄化合物である硫化オレフィン(商品名:GS-440L、DIC株式会社製)1質量部と、金属不活性剤として2,5-ビス(アルキルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール(商品名:R100、DIC株式会社製)0.5質量部とを混合して、工業油組成物を得た。
【0108】
[実施例3-2]
下記の量で成分を混合した以外は、実施例3-1と同様にして、工業油組成物を得た。すなわち、基油100質量部に対して、中性亜リン酸エステル誘導体0.5質量部と、2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体0.5質量部と、ヒンダードアミン化合物0.1質量部と、ミスト防止剤0.1質量部と、極圧剤1質量部と、金属不活性剤0.5質量部とを混合して、工業油組成物を得た。
【0109】
[実施例3-3-1~3-3-6]
中性亜リン酸エステル誘導体として4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル ジトリデシルフォスファイト)(Rb21~Rb24=トリデシル基、Rb25、Rb27=メチル基、Rb26、Rb28=t-ブチル基、Rb291=水素原子、Rb292=n-プロピル基)の代わりに、上記式(B)中の置換基を表5の置換基に変更した化合物を用いた以外は、実施例3-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0110】
【0111】
[実施例3-4-1~3-4-6]
ヒンダードアミン化合物としてデカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)ピペリジン-4-イル)(Rd21、Rd22=n-オクチル基、Rd23=1,8-オクチレン基)の代わりに、上記式(D)中の置換基を表6の置換基に変更した化合物を用いた以外は、実施例3-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0112】
【0113】
[実施例3-5-1]
ミスト防止剤としてポリイソブチレン(商品名:ストラクトールAM、シル+ザイラッハ社製)を用いた以外は、実施例3-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0114】
[実施例3-5-2]
ミスト防止剤としてポリイソブチレン(商品名:ストラクトールC、シル+ザイラッハ社製)を用いた以外は、実施例3-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0115】
[実施例3-5-3]
ミスト防止剤としてポリイソブチレン(商品名:ストラクトールS、シル+ザイラッハ社製)を用いた以外は、実施例3-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0116】
[実施例3-6-1]
金属不活性剤として2,5-ビス(アルキルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール(商品名:R300、DIC株式会社製)を用いた以外は、実施例3-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0117】
[実施例3-6-2]
金属不活性剤として2,5-ビス(アルキルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール(商品名:RC8213、ランクセス社製)を用いた以外は、実施例3-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0118】
[実施例3-6-3]
金属不活性剤としてアルキルチアジアゾール(商品名:ハイテック4313、アフトンケミカル社製)を用いた以外は、実施例3-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0119】
[実施例3-7-1]
基油として合成油を用いた。具体的には、合成油としてポリα-オレフィン(シェブロンフィリップスケミカル社製、PAO 4cSt(グレード)、40℃での動粘度16.8cSt)を用いた。
この基油100質量部に対して、中性亜リン酸エステル誘導体として4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル ジトリデシルフォスファイト)0.1質量部と、2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体としてオクチル=3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノアート(CAS 125643-61-0、商品名:イルガノックス(登録商標)L135、BASFジャパン株式会社製)0.5質量部と、ヒンダードアミン化合物としてデカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)ピペリジン-4-イル)0.1質量部と、ミスト防止剤としてポリイソブチレン(商品名:PARATAC、Triiso社製)0.1質量部と、極圧剤として不活性硫黄化合物である硫化ラード(商品名:GS-110、DIC株式会社製)1質量部とを混合して、工業油組成物を得た。
【0120】
[実施例3-7-2]
極圧剤として不活性硫黄化合物である硫化脂肪酸(商品名:RC2411、ランクセス社製)を用いた以外は、実施例3-7-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0121】
[実施例3-8-1]
基油として下記合成油を用いた以外は、実施例3-1と同様にして、工業油組成物を得た。すなわち、合成油としてポリα-オレフィン(イネオスオリゴマー社製、デュラシン162、40℃での動粘度5.5cSt)およびポリα-オレフィン(イネオスオリゴマー社製、デュラシン164、40℃での動粘度17.0cSt)の混合物を用いた。上記混合物(基油全体)について、40℃での動粘度は10cStであった。
【0122】
[実施例3-8-2]
基油として下記合成油を用いた以外は、実施例3-1と同様にして、工業油組成物を得た。すなわち、合成油としてポリα-オレフィン(エクソンモービル社製、スペクトラシン4、40℃での動粘度20cSt)を用いた。
【0123】
[実施例3-8-3]
基油として下記合成油を用いた以外は、実施例3-1と同様にして、工業油組成物を得た。すなわち、合成油としてポリα-オレフィン(エクソンモービル社製、スペクトラシン5、40℃での動粘度25cSt)を用いた。
【0124】
[実施例3-8-4]
基油として下記合成油を用いた以外は、実施例3-1と同様にして、工業油組成物を得た。すなわち、合成油としてポリα-オレフィン(イネオスオリゴマー社製、デュラシン166、40℃での動粘度31cSt)を用いた。
【0125】
[実施例4-1]
基油として鉱油を用いた。具体的には、鉱油としてグループ3に属する鉱油(S-OIL株式会社製、ウルトラ-S3、40℃での動粘度14cSt、不飽和分10mass%以下)を用いた。
この基油100質量部に対して、中性亜リン酸エステル誘導体として4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル ジトリデシルフォスファイト)0.1質量部と、2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体としてオクチル=3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノアート(CAS 125643-61-0、商品名:イルガノックス(登録商標)L135、BASFジャパン株式会社製)0.5質量部と、ヒンダードアミン化合物としてデカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)ピペリジン-4-イル)0.1質量部と、ミスト防止剤としてポリイソブチレン(商品名:PARATAC、Triiso社製)0.1質量部と、極圧剤として活性硫黄化合物である硫化オレフィン(商品名:GS-440L、DIC株式会社製)1質量部と、金属不活性剤として2,5-ビス(アルキルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール(商品名:R100、DIC株式会社製)0.5質量部とを混合して、工業油組成物を得た。
【0126】
[実施例4-2]
下記の量で成分を混合した以外は、実施例4-1と同様にして、工業油組成物を得た。すなわち、基油100質量部に対して、中性亜リン酸エステル誘導体0.5質量部と、2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体0.5質量部と、ヒンダードアミン化合物0.1質量部と、ミスト防止剤0.1質量部と、極圧剤1質量部と、金属不活性剤0.5質量部とを混合して、工業油組成物を得た。
【0127】
[実施例4-3-1~4-3-6]
中性亜リン酸エステル誘導体として4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル ジトリデシルフォスファイト)(Rb21~Rb24=トリデシル基、Rb25、Rb27=メチル基、Rb26、Rb28=t-ブチル基、Rb291=水素原子、Rb292=n-プロピル基)の代わりに、上記式(B)中の置換基を表7の置換基に変更した化合物を用いた以外は、実施例4-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0128】
【0129】
[実施例4-4-1~4-4-6]
ヒンダードアミン化合物としてデカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)ピペリジン-4-イル)(Rd21、Rd22=n-オクチル基、Rd23=1,8-オクチレン基)の代わりに、上記式(D)中の置換基を表8の置換基に変更した化合物を用いた以外は、実施例4-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0130】
【0131】
[実施例4-5-1]
ミスト防止剤としてポリイソブチレン(商品名:ストラクトールAM、シル+ザイラッハ社製)を用いた以外は、実施例4-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0132】
[実施例4-5-2]
ミスト防止剤としてポリイソブチレン(商品名:ストラクトールC、シル+ザイラッハ社製)を用いた以外は、実施例4-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0133】
[実施例4-5-3]
ミスト防止剤としてポリイソブチレン(商品名:ストラクトールS、シル+ザイラッハ社製)を用いた以外は、実施例4-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0134】
[実施例4-6-1]
金属不活性剤として2,5-ビス(アルキルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール(商品名:R300、DIC株式会社製)を用いた以外は、実施例4-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0135】
[実施例4-6-2]
金属不活性剤として2,5-ビス(アルキルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール(商品名:RC8213、ランクセス社製)を用いた以外は、実施例4-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0136】
[実施例4-6-3]
金属不活性剤としてアルキルチアジアゾール(商品名:ハイテック4313、アフトンケミカル社製)を用いた以外は、実施例4-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0137】
[実施例4-7-1]
基油として鉱油を用いた。具体的には、鉱油としてグループ3に属する鉱油(S-OIL株式会社製、ウルトラ-S3、40℃での動粘度14cSt、不飽和分10mass%以下)を用いた。
この基油100質量部に対して、中性亜リン酸エステル誘導体として4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル ジトリデシルフォスファイト)0.1質量部と、2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体としてオクチル=3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノアート(CAS 125643-61-0、商品名:イルガノックス(登録商標)L135、BASFジャパン株式会社製)0.5質量部と、ヒンダードアミン化合物としてデカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)ピペリジン-4-イル)0.1質量部と、ミスト防止剤としてポリイソブチレン(商品名:PARATAC、Triiso社製)0.1質量部と、極圧剤として不活性硫黄化合物である硫化ラード(商品名:GS-110、DIC株式会社製)1質量部とを混合して、工業油組成物を得た。
【0138】
[実施例4-7-2]
極圧剤として不活性硫黄化合物である硫化脂肪酸(商品名:RC2411、ランクセス社製)を用いた以外は、実施例4-7-1と同様にして、工業油組成物を得た。
【0139】
[実施例4-8-1]
基油として下記鉱油を用いた以外は、実施例4-1と同様にして、工業油組成物を得た。すなわち、鉱油としてグループ3に属する鉱油(S-OIL株式会社製、ウルトラ-S2、40℃での動粘度7.62cSt、不飽和分10mass%以下)およびグループ3に属する鉱油(S-OIL株式会社製、ウルトラ-S3、40℃での動粘度14cSt、不飽和分10mass%以下)の混合物を用いた。上記混合物(基油全体)について、40℃での動粘度は10cSt、不飽和分は10mass%以下であった。
【0140】
[実施例4-8-2]
基油として下記鉱油を用いた以外は、実施例4-1と同様にして、工業油組成物を得た。すなわち、鉱油としてグループ3に属する鉱油(S-OIL株式会社製、ウルトラ-S4、40℃での動粘度19.7cSt、不飽和分10mass%以下)を用いた。
【0141】
[実施例4-8-3]
基油として下記鉱油を用いた以外は、実施例4-1と同様にして、工業油組成物を得た。すなわち、鉱油としてグループ3に属する鉱油(S-OIL株式会社製、ウルトラ-S4、40℃での動粘度19.7cSt、不飽和分10mass%以下)およびグループ3に属する鉱油(S-OIL株式会社製、ウルトラ-S6、40℃での動粘度32.5cSt、不飽和分10mass%以下)の混合物を用いた。上記混合物(基油全体)について、40℃での動粘度は26cSt、不飽和分は10mass%以下であった。
【0142】
[実施例4-8-4]
基油として下記鉱油を用いた以外は、実施例4-1と同様にして、工業油組成物を得た。すなわち、鉱油としてグループ3に属する鉱油(S-OIL株式会社製、ウルトラ-S2、40℃での動粘度7.62cSt、不飽和分10mass%以下)を用いた。
【0143】
[実施例5-1]
基油として合成油を用いた。具体的には、合成油としてポリα-オレフィン(シェブロンフィリップスケミカル社製、PAO 4cSt(グレード)、40℃での動粘度16.8cSt)を用いた。
この基油100質量部に対して、中性亜リン酸エステル誘導体として4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル ジトリデシルフォスファイト)0.1質量部と、2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体としてオクチル=3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノアート(CAS 125643-61-0、商品名:イルガノックス(登録商標)L135、BASFジャパン株式会社製)0.5質量部と、ヒンダードアミン化合物としてデカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)ピペリジン-4-イル)0.1質量部とを混合して、工業油組成物を得た。
【0144】
[実施例5-2]
基油として合成油を用いた。具体的には、合成油としてポリα-オレフィン(シェブロンフィリップスケミカル社製、PAO 4cSt(グレード)、40℃での動粘度16.8cSt)を用いた。
この基油100質量部に対して、中性亜リン酸エステル誘導体として4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル ジトリデシルフォスファイト)0.1質量部と、2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体としてオクチル=3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノアート(CAS 125643-61-0、商品名:イルガノックス(登録商標)L135、BASFジャパン株式会社製)0.5質量部と、ヒンダードアミン化合物としてデカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)ピペリジン-4-イル)0.1質量部と、ミスト防止剤としてポリイソブチレン(商品名:PARATAC、Triiso社製)0.1質量部とを混合して、工業油組成物を得た。
【0145】
[実施例5-3]
基油として鉱油を用いた。具体的には、鉱油としてグループ3に属する鉱油(S-OIL株式会社製、ウルトラ-S3、40℃での動粘度14cSt、不飽和分10mass%以下)を用いた。
この基油100質量部に対して、中性亜リン酸エステル誘導体として4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル ジトリデシルフォスファイト)0.1質量部と、2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体としてオクチル=3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノアート(CAS 125643-61-0、商品名:イルガノックス(登録商標)L135、BASFジャパン株式会社製)0.5質量部と、ヒンダードアミン化合物としてデカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)ピペリジン-4-イル)0.1質量部とを混合して、工業油組成物を得た。
【0146】
[実施例5-4]
基油として鉱油を用いた。具体的には、鉱油としてグループ3に属する鉱油(S-OIL株式会社製、ウルトラ-S3、40℃での動粘度14cSt、不飽和分10mass%以下)を用いた。
この基油100質量部に対して、中性亜リン酸エステル誘導体として4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル ジトリデシルフォスファイト)0.1質量部と、2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体としてオクチル=3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノアート(CAS 125643-61-0、商品名:イルガノックス(登録商標)L135、BASFジャパン株式会社製)0.5質量部と、ヒンダードアミン化合物としてデカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)ピペリジン-4-イル)0.1質量部と、ミスト防止剤としてポリイソブチレン(商品名:PARATAC、Triiso社製)0.1質量部とを混合して、工業油組成物を得た。
【0147】
[比較例1-1]
基油として合成油を用いた。具体的には、合成油としてポリα-オレフィン(シェブロンフィリップスケミカル社製、PAO 4cSt(グレード)、40℃での動粘度16.8cSt)を用いた。
この基油100質量部に対して、2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体としてオクチル=3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノアート(CAS 125643-61-0、商品名:イルガノックス(登録商標)L135、BASFジャパン株式会社製)0.5質量部と、ヒンダードアミン化合物としてデカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)ピペリジン-4-イル)0.1質量部と、ミスト防止剤としてポリイソブチレン(商品名:PARATAC、Triiso社製)0.1質量部と、極圧剤として活性硫黄化合物である硫化オレフィン(商品名:GS-440L、DIC株式会社製)1質量部と、金属不活性剤として2,5-ビス(アルキルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール(商品名:R100、DIC株式会社製)0.5質量部とを混合して、工業油組成物を得た。
【0148】
[比較例1-2]
基油として合成油を用いた。具体的には、合成油としてポリα-オレフィン(シェブロンフィリップスケミカル社製、PAO 4cSt(グレード)、40℃での動粘度16.8cSt)を用いた。
この基油100質量部に対して、中性亜リン酸エステル誘導体として4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル ジトリデシルフォスファイト)0.1質量部と、ヒンダードアミン化合物としてデカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)ピペリジン-4-イル)0.1質量部と、ミスト防止剤としてポリイソブチレン(商品名:PARATAC、Triiso社製)0.1質量部と、極圧剤として活性硫黄化合物である硫化オレフィン(商品名:GS-440L、DIC株式会社製)1質量部と、金属不活性剤として2,5-ビス(アルキルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール(商品名:R100、DIC株式会社製)0.5質量部とを混合して、工業油組成物を得た。
【0149】
[比較例1-3]
基油として合成油を用いた。具体的には、合成油としてポリα-オレフィン(シェブロンフィリップスケミカル社製、PAO 4cSt(グレード)、40℃での動粘度16.8cSt)を用いた。
この基油100質量部に対して、中性亜リン酸エステル誘導体として4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル ジトリデシルフォスファイト)0.1質量部と、2,6-ジ-t-ブチルフェノール誘導体としてオクチル=3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノアート(CAS 125643-61-0、商品名:イルガノックス(登録商標)L135、BASFジャパン株式会社製)0.5質量部と、ミスト防止剤としてポリイソブチレン(商品名:PARATAC、Triiso社製)0.1質量部と、極圧剤として活性硫黄化合物である硫化オレフィン(商品名:GS-440L、DIC株式会社製)1質量部と、金属不活性剤として2,5-ビス(アルキルジチオ)-1,3,4-チアジアゾール(商品名:R100、DIC株式会社製)0.5質量部とを混合して、工業油組成物を得た。
【0150】
[評価方法およびその結果]
(1)金属加工機械として主軸台移動形CNC自動旋盤(製品名Cincom L220E-10、シチズンマシナリー株式会社製)を用いて、300個の部品を加工した。この際、金属加工を行う部分に、金属加工用の工業油組成物(実施例3-1で作製した工業油組成物)をかけた。なお、金属加工機械の機械潤滑用には、実施例1-1で作製した工業油組成物を用いた。
また、上記において、実施例3-1で作製した工業油組成物の代わりに、実施例3-2~4-8-4、比較例1-1~1-3で作製した工業油組成物をそれぞれ用いた場合についても、上記と同様にして、300個の部品を加工した。
300個の部品を加工した後、ミスト、油煙および臭気の発生を評価した。ミスト、油煙の発生は、金属加工機械の窓の曇りを確認して評価した。曇っていなかった、すなわちミスト、油煙の発生がなかった場合を〇、曇っていた、すなわちミスト、油煙の発生があった場合を×とした。また、臭気の発生は、金属加工機械の窓を開けて確認して評価した。臭気がしなかった、すなわち臭気の発生がなかった場合を〇、多少臭気が感じられた、すなわち多少臭気が発生した場合を△、強く臭気が感じられた、すなわち強く臭気が発生した場合を×とした。結果を表9に示す。
【0151】
【0152】
【0153】
表9より、臭気の発生がより抑えられるため、基油の40℃の動粘度は13cSt以上であることがより好ましいといえる。また、実施例3-1~4-8-4で作製した工業油組成物は、基油の40℃の動粘度が32cSt以下であるため、金属加工を行う部分への噴霧のしやすさ、刃先へのまわりやすさの観点でより優れていた。なお、基油の40℃の動粘度が32cStを超えると、上記観点について劣る場合がある。
また、実施例3-1~4-8-4で作製した工業油組成物を用いた場合は、加工1個目から加工300個目の部品すべてについて、表面粗さに優れていた。一方、比較例1-1~1-3で作製した工業油組成物を用いた場合は、加工1個目から加工300個目の部品すべてについて、表面粗さが劣っていた。
なお、上記のように、金属加工機械の機械潤滑用には、実施例1-1で作製した工業油組成物を用いた。金属加工を行うにつれ、しみだしてきて実施例3-1~4-8-4で作製した工業油組成物と混合していた可能性もある。この場合であっても、実施例1-1で作製した工業油組成物は、ミスト、油煙、臭気の発生に影響しなかったと考えられる。
【0154】
(2)金属加工機械として主軸台移動形CNC自動旋盤(製品名Cincom L220E-10、シチズンマシナリー株式会社製)を用いて、300個の部品を加工した。この際、金属加工機械の機械潤滑用には、機械潤滑用の工業油組成物(実施例1-1で作製した工業油組成物)を用いた。なお、金属加工を行う部分に、金属加工用の工業油組成物(実施例3-1で作製した工業油組成物)80質量%と、機械潤滑用の工業油組成物(実施例1-1で作製した工業油組成物)20質量%とを混合した組成物をかけた。このように、1個目の部品の加工のときから、機械潤滑用の工業油組成物がしみだして金属加工用の工業油組成物と混合している状態を模擬的に再現した。
また、上記において、実施例1-1で作製した工業油組成物の代わりに、実施例1-2~2-6-4、5-1~5-4で作製した工業油組成物をそれぞれ用いた場合についても、上記と同様にして、300個の部品を加工した。
300個の部品を加工した後、ミスト、油煙および臭気の発生を評価した。ミスト、油煙の発生は、金属加工機械の窓の曇りを確認して評価した。曇っていなかった、すなわちミスト、油煙の発生がなかった場合を〇、曇っていた、すなわちミスト、油煙の発生があった場合を×とした。また、臭気の発生は、金属加工機械の窓を開けて確認して評価した。臭気がしなかった、すなわち臭気の発生がなかった場合を〇、多少臭気が感じられた、すなわち多少臭気が発生した場合を△、強く臭気が感じられた、すなわち強く臭気が発生した場合を×とした。結果を表10に示す。
【0155】
【0156】
【0157】
表10より、機械潤滑用の工業油組成物がしみだした際にも、臭気の発生がより抑えられるため、基油の40℃の動粘度が13cSt以上であることがより好ましいといえる。
また、実施例1-1~2-6-4、5-1~5-4で作製した工業油組成物を用いた場合は、加工1個目から加工300個目の部品すべてについて、表面粗さに優れていた。機械潤滑用の工業油組成物がしみだした場合を想定した際にも、表面粗さに優れる部品が得られることがわかる。