(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006621
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】フットウェア
(51)【国際特許分類】
A41B 11/00 20060101AFI20230111BHJP
A41D 13/06 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A41B11/00 J
A41D13/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109321
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】306033379
【氏名又は名称】株式会社ワコール
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】高木 映子
【テーマコード(参考)】
3B011
3B018
【Fターム(参考)】
3B011AA14
3B011AB01
3B011AC21
3B018AB07
3B018AC07
3B018AD11
3B018GA01
(57)【要約】
【課題】靴に対する足の滑りをより確実に抑制しつつ、歩き易さの向上を図ることができるフットウェアを提供する。
【解決手段】フットウェア1は、本体生地10と、本体生地10の外表面11に形成された樹脂プリント部20と、を備える。樹脂プリント部20は、足甲部3の内の爪先部2寄りに設けられた第1樹脂プリント部21と、爪先部2の足甲側に設けられた第2樹脂プリント部22と、を有する。第1樹脂プリント部21と第2樹脂プリント部22との間には、長さ方向に第2幅W2以上の幅を有すると共に足幅方向に延びる本体生地単独部13が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪先部と足甲部と足裏部と踵部とを備えたフットウェアであって、
本体生地と、
前記本体生地の外表面に形成された樹脂プリント部と、を備え、
前記樹脂プリント部は、
前記足甲部の内の前記爪先部寄りに設けられた第1樹脂プリント部と、
前記爪先部の足甲側に設けられた第2樹脂プリント部と、を有し、
前記第1樹脂プリント部と前記第2樹脂プリント部との間には、長さ方向に一定以上の幅を有すると共に足幅方向に延びる本体生地単独部が設けられている、フットウェア。
【請求項2】
前記樹脂プリント部は、
前記足裏部の内の前記爪先部寄りに設けられた第3樹脂プリント部を更に有する、請求項1に記載のフットウェア。
【請求項3】
前記樹脂プリント部は、
前記爪先部の足裏側に設けられた第4樹脂プリント部を更に有し、
前記第3樹脂プリント部と前記第4樹脂プリント部との間には、長さ方向に一定以上の幅を有すると共に足幅方向に延びる別の本体生地単独部が設けられている、請求項2に記載のフットウェア。
【請求項4】
前記樹脂プリント部は、
前記足裏部の内の前記踵部寄りに設けられた第5樹脂プリント部を更に有する、請求項3に記載のフットウェア。
【請求項5】
前記樹脂プリント部は、
前記足甲部において前記第1樹脂プリント部の前記長さ方向における後方に隣接して設けられた第6樹脂プリント部と、
前記足裏部において前記第3樹脂プリント部と前記第5樹脂プリント部との間に設けられた第7樹脂プリント部と、を更に有する、請求項4に記載のフットウェア。
【請求項6】
前記樹脂プリント部は、
前記足裏部の内の前記踵部寄りに設けられた第5樹脂プリント部を更に有する、請求項1に記載のフットウェア。
【請求項7】
前記樹脂プリント部は、
前記足裏部の内の前記爪先部寄りに設けられた第3樹脂プリント部と、
前記爪先部の足裏側に設けられた第4樹脂プリント部と、を更に有し、
前記第3樹脂プリント部と前記第4樹脂プリント部との間には、長さ方向に一定以上の幅を有すると共に足幅方向に延びる別の本体生地単独部が設けられている、請求項6に記載のフットウェア。
【請求項8】
前記樹脂プリント部は、
前記足甲部において前記第1樹脂プリント部の前記長さ方向における後方に隣接して設けられた第6樹脂プリント部と、
前記足裏部において前記第3樹脂プリント部と前記第5樹脂プリント部との間に設けられた第7樹脂プリント部と、を更に有する、請求項7に記載のフットウェア。
【請求項9】
前記第7樹脂プリント部におけるプリント密度は、前記第1樹脂プリント部、前記第2樹脂プリント部、前記第3樹脂プリント部及び前記第4樹脂プリント部の少なくともいずれかにおけるプリント密度よりも小さい、請求項5又は8に記載のフットウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば靴下等のフットウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、足甲側又は足裏側に滑り止め部を有する靴下が知られている(例えば特許文献1,2参照)。特許文献1に記載された靴下では、足甲側に形成された滑り止め部は、第1基節骨から第5基節骨までの基節骨全て、且つ、第1中足骨、第2中足骨及び第5中足骨の中間付近までを覆う領域に配置されている。特許文献2に記載された靴下では、足甲側と足裏側に、凸部からなる滑り止めパターンが形成されている。足甲側と足裏側において、滑り止め部のパターンの形状(ドット部の形状等)を異ならせた構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-218689号公報
【特許文献2】特開2021-55210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の靴下では、靴(シューズ)を履いた際に靴と足の滑りを抑えることが、課題とされている。しかしながら、着用者が靴下等のフットウェアを履いた状態での「歩き易さ」の観点では、十分な検討がなされているとは言えなかった。靴に対する足の滑りを抑制するという観点でも、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、靴に対する足の滑りをより確実に抑制しつつ、歩き易さの向上を図ることができるフットウェアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、爪先部と足甲部と足裏部と踵部とを備えたフットウェアであって、本体生地と、本体生地の外表面に形成された樹脂プリント部と、を備え、樹脂プリント部は、足甲部の内の爪先部寄りに設けられた第1樹脂プリント部と、爪先部の足甲側に設けられた第2樹脂プリント部と、を有し、第1樹脂プリント部と第2樹脂プリント部との間には、長さ方向に一定以上の幅を有すると共に足幅方向に延びる本体生地単独部が設けられている。
【0007】
このフットウェアによれば、第1樹脂プリント部と第2樹脂プリント部とが設けられることにより、靴に対する足の滑りがより確実に抑制されている。例えば特許文献1に記載の靴下では、爪先部の足甲側には滑り止め部が設けられていないが、第2樹脂プリント部が設けられることで、特許文献1に記載の靴下に比して、足(特に爪先部)がより確実に固定される。更に第1樹脂プリント部と第2樹脂プリント部との間に本体生地単独部が設けられているので、着用者は、フットウェアを履いた状態で、足の指の根元(中足指節関節)を曲げやすい。この構成は、着用者が歩く際の歩き易さを向上させる。
【0008】
樹脂プリント部は、足裏部の内の爪先部寄りに設けられた第3樹脂プリント部を更に有してもよい。この構成によれば、第3樹脂プリント部が設けられることで、足(特に足裏部)がより確実に固定される。
【0009】
樹脂プリント部は、爪先部の足裏側に設けられた第4樹脂プリント部を更に有し、第3樹脂プリント部と第4樹脂プリント部との間には、長さ方向に一定以上の幅を有すると共に足幅方向に延びる別の本体生地単独部が設けられていてもよい。この構成によれば、足甲側と足裏側の両方に本体生地単独部が設けられることで、足の指の根元(中足指節関節)をより一層曲げやすくなる。
【0010】
樹脂プリント部は、足裏部の内の踵部寄りに設けられた第5樹脂プリント部を更に有してもよい。この構成によれば、第5樹脂プリント部が設けられることで、足(特に足裏部の踵部寄りの部分)がより確実に固定される。
【0011】
樹脂プリント部は、足甲部において第1樹脂プリント部の長さ方向における後方に隣接して設けられた第6樹脂プリント部と、足裏部において第3樹脂プリント部と第5樹脂プリント部との間に設けられた第7樹脂プリント部と、を更に有してもよい。この構成によれば、足甲部と足裏部の両方において足がより確実に固定される。
【0012】
第7樹脂プリント部におけるプリント密度は、第1樹脂プリント部、第2樹脂プリント部、第3樹脂プリント部及び第4樹脂プリント部の少なくともいずれかにおけるプリント密度よりも小さくてもよい。プリント密度とは、各樹脂プリント部が設けられた領域の面積に対し、樹脂(ドットやタイル等)によって被覆された部分の面積の割合を意味する。プリント密度は、樹脂による占有率ということもできる。足裏部の中央に設けられる第7樹脂プリント部は、概ね、着用者の土踏まず部を覆っている。第7樹脂プリント部のプリント密度が小さく設定されることで、足の固定に関する寄与度の低い部分ではある程度の通気性を維持することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、靴に対する足の滑りがより確実に抑制され、更に、着用者が歩く際の歩き易さの向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフットウェアにおける足甲側の樹脂プリント部のパターン図である。
【
図2】
図1のフットウェアにおける足裏側の樹脂プリント部のパターン図である。
【
図3】
図3(a)は
図1中の本体生地単独部を示す図、
図3(b)は
図2中の本体生地単独部を示す図である。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は第1樹脂プリント部と第6樹脂プリント部が設けられる領域及びそれらの境界ラインを示す図である。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は第3樹脂プリント部と第7樹脂プリント部と第5樹脂プリント部が設けられる領域及びそれらの境界ラインを示す図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)のそれぞれは、フットウェアの宇宙船内での適用例を示す図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係るフットウェアにおける足甲側の樹脂プリント部のパターン図である。
【
図8】
図7のフットウェアにおける足裏側の樹脂プリント部のパターン図である。
【
図9】
図9(a)及び
図9(b)は、足甲側及び足裏側のそれぞれにおける本体生地単独部の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
本実施形態のフットウェア1は、着用者の足に装着される物品である。フットウェア1は、例えば靴下である。着用者は、屋外においてはフットウェア1の上に靴を履くが、室内においては、靴を履かずにフットウェア1のみを装着してもよいし、スリッパ等の上履きを履いてもよい。
図1及び
図2は、フットウェア1を平置きした状態で、足甲側及び足裏側を示した図である。フットウェア1は、左右一組の履物であるが、左足用と右足用は、例えば対称な構造を有する。
図1では左足用のフットウェア1の足甲側が示され、
図2では、理解を容易にするために右足用のフットウェア1の足裏側が示されている。以下の説明では、左足用又は右足用の一方の構成のみを説明し、他方に関する重複する説明は省略される。
【0017】
図1及び
図2に示されるように、フットウェア1は、爪先部2と、足甲部3及び足裏部4と、踵部6と、筒部8とを備える。足甲部3及び足裏部4は、足囲の部分を包み込むように筒状に形成されている。フットウェア1を平置きした状態で、足甲部3は表側に配置され、足裏部4は裏側に配置され、足甲部3及び足裏部4の先端側に爪先部2が連続するように設けられている。足甲部3及び足裏部4には、着用者の足首を覆う筒部8が連続するように設けられている。筒部8は、足甲部3及び足裏部4から立ち上がるように形成されるが、
図1では紙面手前側に位置するため仮想線で示されている。筒部8の上端に、足を挿入するための開口9が形成されている。
【0018】
なお、本実施形態のフットウェア1における爪先部2は、着用者の親指が挿入される第1爪先部2Aと、着用者の他の4本の指が挿入される第2爪先部2Bとを有する。第1爪先部2Aと第2爪先部2Bとは、指分け部2Cによって分けられ、別個の収容空間を有している。またフットウェア1における踵部6とは、着用者の踵骨112(
図4(b)参照)の部位により踏まれて接地する部分ではなく、踵骨112の後側を覆う部分を意味する。踵骨112の部位により踏まれて接地する部分は、足裏部4の一部である。
【0019】
フットウェア1は、例えば伸縮性を有する糸が編まれることにより形成された本体生地10を備える。編地である本体生地10は、例えば、その全体にわたって、あらゆる方向における伸縮性を有する。本体生地10の伸縮性は、その編成構造によって付与されてもよく、本体生地10を構成する糸の伸縮性によって付与されてもよく、編成構造及び糸の伸縮性の両方によって付与されてもよい。本体生地10を構成する糸としては、弾性糸のみ、又は非弾性糸のみでも良いが、弾性糸と非弾性糸を用いるのが好ましく、例えば弾性糸としてはウレタン糸、非弾性糸としてはアクリル糸及び/又は綿糸等が挙げられる。なお、本体生地10を構成する糸又は生地等の材質は特に限定されない。
【0020】
フットウェア1は、本体生地10の外表面11に形成された樹脂プリント部20を備える。樹脂プリント部20は、爪先部2、足甲部3及び足裏部4の各部に設けられている。フットウェア1では、樹脂プリント部20が設けられる領域と設けられない領域を設定(調整)することで、フットウェア1が装着された際の機能性(例えば滑り難さ)と、心地良さ(例えば動き易さ、歩き易さ又は走り易さ)が実現されている。以下、樹脂プリント部20について詳細に説明する。
【0021】
樹脂プリント部20は、所定のプリントパターンに従って、本体生地10の外表面11に樹脂がプリント加工されることで形成される。樹脂プリント部20に用いられる樹脂としては、例えばシリコン樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂又はそれらの組合せが挙げられる。なお、樹脂プリント部20を構成する樹脂の材質は特に限定されない。樹脂プリント部20は、例えば、樹脂材料が所定のプリントパターンに従ってフットウェア1の各面に塗布・加熱され、その後硬化することで形成される。
【0022】
樹脂プリント部20は、滑り止めの機能を有すると共に、本体生地10の外表面11が擦れることによる摩耗や、場合によって面ファスナーに接触することによる毛羽立ち等を防止する機能をも有する。
【0023】
以下の樹脂プリント部20の説明では、まず足の前側に相当する部分すなわち母趾球120及び小趾球130(
図5(b)参照)の部位を含みそれより爪先側の部分について説明し、その後、足の後側に相当する部分について説明する。
【0024】
図1に示されるように、樹脂プリント部20は、足甲部3の内の爪先部2寄りに設けられた第1樹脂プリント部21と、爪先部2の足甲側(表側)に設けられた第2樹脂プリント部22とを有する。第1樹脂プリント部21は、例えば、5本の中足骨101(
図4(b)参照)を覆う領域に設けられている。第1樹脂プリント部21は、例えば、所定の大きさを有する多数の六角形の大ドット21aと、大ドット21aに隣接する位置に設けられた特殊プリント部21bとを含む。大ドット21aは、例えば、長さ方向及び足幅方向において所定の間隔を有して千鳥状に配列されている。なお、長さ方向とは、足長の方向であり、爪先部2の先端から踵部6に向かう方向である。
図1に示されるフットウェア1の上下方向が長さ方向に相当する。足幅方向は、長さ方向に直交する方向である。
図1に示されるフットウェア1の左右方向が足幅方向に相当する。
【0025】
特殊プリント部21bは、例えば、本体生地10の編成構造の変化により具備されたサポートライン(復元力の大きい部分。例えば特許第6011211号参照)に沿って延びるように設けられてもよい。なお、特殊プリント部21bは省略されてもよい。
【0026】
第2樹脂プリント部22は、先端の縁部に沿って配列された複数の六角形の大ドット22aと、大ドット22aよりも内側(足甲部3寄りの領域)に設けられた多数の円形の小ドット22bとを含む。小ドット22bは、例えば、長さ方向及び足幅方向において所定の間隔を有して千鳥状に配列されている。
【0027】
続いて、
図2を参照して、足裏側の構成について説明する。
図2に示されるように、樹脂プリント部20は、足裏部4の内の爪先部2寄りに設けられた第3樹脂プリント部23と、爪先部2の足裏側に設けられた第4樹脂プリント部24とを有する。第3樹脂プリント部23は、例えば、母趾球120及び小趾球130(
図5(b)参照)の部位により踏まれて接地する領域に設けられている。第3樹脂プリント部23は、例えば、所定の大きさを有する多数の六角形の大ドット23aと、大ドット23aの長さ方向における後方(踵部6寄りの位置)に隣接して設けられた多数の小ドット23bとを含む。大ドット23aは、例えば、長さ方向及び足幅方向において所定の間隔を有して千鳥状に配列されている。大ドット23aが設けられた領域が、概ね、母趾球120及び小趾球130を覆ってもよい。小ドット23bは、例えば、長さ方向及び足幅方向において所定の間隔を有して千鳥状に配列されている。
【0028】
第4樹脂プリント部24は、先端の縁部に沿って配列された複数の六角形の大ドット24aと、大ドット24aよりも内側(足裏部4寄りの領域)に設けられた多数の円形の小ドット24bとを含む。小ドット24bは、例えば、長さ方向及び足幅方向において所定の間隔を有して千鳥状に配列されている。
【0029】
続いて、足の後側に相当する部分について説明する。
図2に示されるように、樹脂プリント部20は、足裏部4の内の踵部6寄りに設けられた第5樹脂プリント部25を有する。第5樹脂プリント部25は、後端の縁部に沿って配列された多数の六角形の大ドット25aと、大ドット25aよりも前側に設けられた多数の円形の小ドット25bとを含む。大ドット25aは、例えば、長さ方向及び足幅方向において所定の間隔を有して千鳥状に配列されている。小ドット25bは、例えば、長さ方向及び足幅方向において所定の間隔を有して千鳥状に配列されている。
【0030】
また樹脂プリント部20は、足裏部4において第3樹脂プリント部23と第5樹脂プリント部25との間に設けられた第7樹脂プリント部27を有する。第7樹脂プリント部27は、概ね、土踏まず及びその幅方向の外側を覆う領域に設けられる。第7樹脂プリント部27は、例えば、多数の小ドット27aを含む。小ドット27aは、例えば、長さ方向及び足幅方向において所定の間隔を有して千鳥状に配列されている。
【0031】
図1に戻り、樹脂プリント部20は、足甲部3において第1樹脂プリント部21の長さ方向における後方(踵部6寄りの位置)に隣接して設けられた第6樹脂プリント部26を有する。第6樹脂プリント部26は、概ね、立方骨106及び楔状骨107(
図4(b)参照)を覆う領域に設けられる。第6樹脂プリント部26は、例えば、多数の小ドット26aを含む。小ドット26aは、例えば、長さ方向及び足幅方向において所定の間隔を有して千鳥状に配列されている。なお、フットウェア1において、舟状骨110及び距骨111を覆う領域には、樹脂プリント部が形成されていない。
【0032】
続いて、本明細書における、第1樹脂プリント部21と第6樹脂プリント部26の境界位置、並びに、第3樹脂プリント部23、第7樹脂プリント部27及び第5樹脂プリント部25の境界位置について説明する。
【0033】
図4(a)及び(b)に示されるように、第1樹脂プリント部21と第6樹脂プリント部26の境界位置すなわち第1樹脂プリント部21の後端の位置は、5本の中足骨101の基部101aよりも前の位置に相当する。各中足骨101は、基部101aと骨幹部101bと骨頭部101cとからなるが、第1樹脂プリント部21の後端の位置は、例えば基部101aと骨幹部101bの境界、又は基部101aの前部分に相当する(
図4(b)に示される甲側境界ラインL1参照)。フットウェア1を基準として説明すると、第1樹脂プリント部21の後端は、フットウェア1の長さ方向の全長を基準として、例えば、前から35~45%の範囲内に位置する。
【0034】
図5(a)及び(b)に示されるように、第3樹脂プリント部23と第7樹脂プリント部27の境界位置すなわち第3樹脂プリント部23の後端の位置は、母趾球120と小趾球130の後端の位置に相当する(
図5(b)に示される裏側前境界ラインL2参照)。フットウェア1を基準として説明すると、第3樹脂プリント部23の後端は、フットウェア1の長さ方向の全長を基準として、例えば、前から30~40%の範囲内に位置する。また第7樹脂プリント部27と第5樹脂プリント部25の境界位置すなわち第5樹脂プリント部25の前端の位置は、踵140の前端の位置に相当する(
図5(b)に示される裏側後境界ラインL3参照)。フットウェア1を基準として説明すると、第5樹脂プリント部25の前端は、フットウェア1の長さ方向の全長を基準として、例えば、前から75~80%の範囲内に位置する。
【0035】
以上説明した第1樹脂プリント部21~第7樹脂プリント部27において、各種ドットの大きさ、間隔及び配置は、適宜に設定され得る。足(骨及び肉)の構造、足の動き、及び足の各部に対して設定され得る各樹脂プリント部のプリント密度に応じて、各種ドットの大きさ、間隔及び配置が定められてもよい。
【0036】
フットウェア1では、第7樹脂プリント部27におけるプリント密度は、第1樹脂プリント部21におけるプリント密度よりも小さく、第2樹脂プリント部22におけるプリント密度よりも小さく、第3樹脂プリント部23におけるプリント密度よりも小さく、また第4樹脂プリント部24におけるプリント密度よりも小さい。第7樹脂プリント部27におけるプリント密度が、第5樹脂プリント部25におけるプリント密度より小さくてもよい。第7樹脂プリント部27におけるプリント密度が、第6樹脂プリント部26におけるプリント密度と同程度であってもよい。
【0037】
続いて、
図3(a)及び(b)を参照して、足甲側及び足裏側に設けられた構成について更に詳細に説明する。
図3(a)に示されるように、足甲部3の第1樹脂プリント部21と爪先部2の第2樹脂プリント部22との間には、足幅方向に延びる本体生地単独部13が設けられている。この本体生地単独部13には、樹脂プリント部が設けられておらず、本体生地10のみが存在している。本体生地単独部13は、足幅方向に連続して形成された非樹脂プリント部である。本体生地単独部13は、長さ方向に一定以上の幅を有する。すなわち、本体生地単独部13は、第1爪先部2A側の第1端縁において第1幅W1を有し、第2爪先部2B側の第2端縁において第2幅W2を有する。本実施形態では、第1幅W1は第2幅W2よりも大きい。本体生地単独部13の幅は、第1端縁から第2端縁に向けて漸減している。本体生地単独部13は、少なくとも、長さ方向において第2幅W2以上の幅を有する。第2幅W2は、具体的には、例えば1mm~10mmの範囲内であってもよく、より好ましくは、3mm~8mmの範囲内であってもよい。
【0038】
図3(b)に示されるように、足裏部4の第3樹脂プリント部23と爪先部2の第4樹脂プリント部24との間には、足幅方向に延びる本体生地単独部14(請求項に記載された「別の本体生地単独部」に相当)が設けられている。この本体生地単独部14には、樹脂プリント部が設けられておらず、本体生地10のみが存在している。本体生地単独部14は、足幅方向に連続して形成された非樹脂プリント部である。本体生地単独部14は、長さ方向に一定以上の幅を有する。すなわち、本体生地単独部14は、第1爪先部2A側の第1端縁において第3幅W3を有し、第2爪先部2B側の第2端縁において第4幅W4を有する。さらに本体生地単独部14は、足幅方向における指分け部2C付近の位置において最大の第5幅W5を有する。本実施形態では、第3幅W3は第4幅W4よりも大きく、第5幅W5は第3幅W3よりも大きい。本体生地単独部14の幅は、第1端縁から第2端縁に向けて漸減するが、途中でいったん拡幅され、第5幅W5で最大値をとる。本体生地単独部14は、少なくとも、長さ方向において第4幅W4以上の幅を有する。第4幅W4は、具体的には、例えば1mm~10mmの範囲内であってもよく、より好ましくは、3mm~8mmの範囲内であってもよい。
【0039】
本体生地単独部13及び本体生地単独部14の形状は、それぞれ、適宜に設定され得る。本体生地単独部13及び/又は本体生地単独部14は、例えば、足幅方向に直線状に延びてもよい。本体生地単独部14が(弧状等に)湾曲して延びてもよいし、複数の直線状部分とそれらの間の折れ曲がった部分を有してもよい。
【0040】
フットウェア1において、樹脂プリント部20は、滑り止めの機能、及び、摩耗や毛羽立ちを防止する機能を有するが、樹脂プリント部20が設けられない本体生地単独部13及び本体生地単独部14では、足の動きが阻害されず、足(特に爪先)を自在に動かすことができる。
【0041】
本実施形態のフットウェア1によれば、第1樹脂プリント部21と第2樹脂プリント部22とが設けられることにより、靴に対する足の滑りがより確実に抑制されている。例えば、上述した特許文献1に記載の靴下では、爪先部の足甲側には滑り止め部が設けられていない。これに対し、フットウェア1では第2樹脂プリント部22が設けられることで、特許文献1に記載の靴下に比して、足(特に爪先部)がより確実に固定される。更に第1樹脂プリント部21と第2樹脂プリント部22との間に本体生地単独部13が設けられているので、着用者は、フットウェア1を履いた状態で、足の指の根元(中足指節関節)を曲げやすい。この構成は、着用者が歩く際の歩き易さを向上させる。着用者が走る際についても、上記構成は、走り易さを向上させる。
【0042】
また、フットウェア1が使用される場面は地上に限られず、例えば宇宙(宇宙船の中)も想定され得る。例えば、
図6(a)及び(b)に示されるように、宇宙船内では、無重力空間において着用者X(作業者)が姿勢の保持・制御がし易いよう、壁面に姿勢保持装置200が固定されている。姿勢保持装置200は、例えば、壁面に固定された一対の固定部201の間に架け渡された1本の係止バー202を有する。係止バー202は、壁面から所定の距離だけ離れて、壁面に平行に延在する。着用者Xは、左足LF及び右足RFにフットウェア1を装着した状態で、左足LF及び右足RFを係止バー202の下に挿入する。これにより、姿勢の保持・制御が可能となる。言い換えれば、着用者Xは、宇宙船内で身体を固定するために係止バー202に足を係止させる。
【0043】
例えば、
図6(a)に示されるように、着用者Xは、右足RFの爪先を持ち上げることで右足RFを係止バー202に引っ掛けつつ、左足LFの足裏は壁面に押し当てている。より具体的には、左足LFの母趾球120及び小趾球130(
図5(b)参照)の部位を覆う第3樹脂プリント部23と、第4樹脂プリント部24とが接地している。右足RFの甲と、左足LFの甲は、いずれも係止バー202に押し当てられ、梃子の原理により姿勢が保持・制御される。このとき、フットウェア1の構成により右足RFの指の根元(中足指節関節)を曲げ易くなっているので、結果として、着用者Xは爪先を持ち上げやすい。
【0044】
また
図6(b)に示されるように、着用者Xは、
図6(a)に示される姿勢から更に横向きの姿勢をとることもできる(例えば、作業対象が遠くにある等の場合)。このときも同様に、着用者Xは、右足RFの爪先を持ち上げることで右足RFを係止バー202に引っ掛ける。左足LFの爪先部2(第2樹脂プリント部22)が係止バー202に押し当てられると共に、左足LFの爪先を覆う第4樹脂プリント部24のみが接地している。このような姿勢でも、着用者Xは左右の両足を係止バー202に係止させ易くなっている。
【0045】
図6に例示した姿勢以外にも、例えば、左右の第5樹脂プリント部25(踵140の部分)を接地させる、又は左右のいずれか一方の足で係止バー202を踏むことにより両足で係止バー202を挟み込む等といった体勢も可能である。フットウェア1は、無重力空間における両足とバーとの係合を利用した姿勢の保持・制御にも有用である。
【0046】
また、フットウェア1によれば、足裏側の第3樹脂プリント部23が設けられることで、足(特に足裏部)がより確実に固定される。
【0047】
本体生地単独部13及び本体生地単独部14が設けられており、足甲側と足裏側の両方に本体生地単独部が設けられることで、足の指の根元(中足指節関節)をより一層曲げやすくなる。
【0048】
足裏側の第5樹脂プリント部25が設けられることで、足(特に足裏部の踵部寄りの部分)がより確実に固定される。
【0049】
第6樹脂プリント部26及び第7樹脂プリント部27が設けられることで、足甲部と足裏部の両方において足がより確実に固定される。
【0050】
足裏部の中央に設けられる第7樹脂プリント部27は、概ね、着用者の土踏まず部を覆っている。第7樹脂プリント部27のプリント密度が小さく設定されることで、足の固定に関する寄与度の低い部分では、ある程度の通気性を維持することができる。
【0051】
第1樹脂プリント部21~第7樹脂プリント部27において、樹脂をドット形状にプリントすることにより、履き易く、且つムレ難いフットウェア1が実現されている。
【0052】
図1及び
図2に示されるフットウェア1以外にも、各種の態様が採用されてもよい。例えば、
図7及び
図8に示されるフットウェア1Aが採用されてもよい。
図7に示されるように、このフットウェア1Aでは、足甲側の第1樹脂プリント部21Aにおいて、多数の長方形状のタイル21cが配列されている。第2樹脂プリント部22Aにおいても、多数の長方形状のタイル22c及びタイル22dが配列されている。第2樹脂プリント部22Aの中間の関節の位置に、本体生地単独部16A,16Bが設けられてもよい。第6樹脂プリント部26Aにおいて、多数の長方形状のタイル26cが配列されている。本体生地単独部13Aは、一定の幅を有して一直線状に延びており、且つ足幅方向に対して僅かに傾斜している。爪先の関節の位置に本体生地単独部16が設けられることで、当該関節を曲げやすくなっている。
【0053】
更に、
図8に示されるように、足裏側の第3樹脂プリント部23Aにおいて、多数の長方形状のタイル23cが配列されている。第4樹脂プリント部24Aにおいても、多数の長方形状のタイル24c及びタイル24dが配列されている。第5樹脂プリント部25Aにおいて、多数の長方形状のタイル25cが配列されている。本体生地単独部14Aは、比較的大きな幅を有して足幅方向に延びている。なお、このフットウェア1Aでは、
図2に示された第7樹脂プリント部27は省略されており、本体生地10が足裏の広い範囲で露出している。
【0054】
足甲側及び/又は足裏側の本体生地単独部は、上記した各種実施形態よりも小さな幅を有してもよい。例えば、
図9(a)に示されるように、足甲側の本体生地単独部13Bが、本体生地10の厚みと大ドット21e等の樹脂の厚みとの合計以上の第6幅W6を有してもよい。第6幅W6は、1mm以上であってもよい。なお、第1樹脂プリント部21Bでは、円形の大ドット21eが採用されており、第2樹脂プリント部22Bでは、先端に配列された円形の大ドット22eが採用されている。
【0055】
また、例えば、
図9(b)に示されるように、足裏側の本体生地単独部14Bが、本体生地10の厚みと大ドット23e等の樹脂の厚みとの合計以上の第7幅W7を有してもよい。第7幅W7は、1mm以上であってもよい。なお、第3樹脂プリント部23Bでは、円形の大ドット23eが採用されており、第4樹脂プリント部24Bでは、先端に配列された円形の大ドット24eが採用されている。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、爪先部2は、第1爪先部2Aと第2爪先部2Bとが分かれている態様に限られず、5本の指に対して1つのみの収容空間を有してもよい。或いは、爪先部2が、5本の指のそれぞれに対応する5つの収容空間を有してもよい。
【0057】
左右一組のフットウェア1において、左足用と右足用の区別がなくてもよい。筒部8は省略されてもよい。
【0058】
本体生地10は編地でなくてもよい。本体生地10は織地や不織布であってもよい。本体生地10が伸縮性を有しておらず、非伸縮性の生地であってもよい。
【0059】
フットウェアにおいて、上記した第3樹脂プリント部、第4樹脂プリント部、第5樹脂プリント部、第6樹脂プリント部、及び第7樹脂プリント部のうちの一部又は全部が省略されてもよい。すなわち、第1樹脂プリント部及び第2樹脂プリント部と、その間の本体生地単独部とを有するフットウェアであれば、上述した課題を解決することができる。
【0060】
フットウェアが、靴下である態様に限られない。本発明のフットウェアは、足袋に適用されてもよいし、靴自体に適用されてもよい。靴が、靴下のように足にぴったりとフィットする伸縮性を有する本体生地を備え、その本体生地上に樹脂プリント部が形成されてもよい。その場合には、着用者は、屋外にて、フットウェアの上に靴を履かずにフットウェアのみを装着して歩いてもよい。本発明のフットウェアは、爪先部と足甲部と足裏部と踵部と、足を挿入する開口を備えたあらゆる履物に適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1,1A…フットウェア、2…爪先部、3…足甲部、4…足裏部、6…踵部、8…筒部、9…開口、10…本体生地、11…外表面、13,13A,13B…本体生地単独部、14,14A,14B…別の本体生地単独部、20,20A…樹脂プリント部、21,21A,21B…第1樹脂プリント部、22,22A,22B…第2樹脂プリント部、23,23A,23B…第3樹脂プリント部、24,24A,24B…第4樹脂プリント部、25,25A…第5樹脂プリント部、26,26A…第6樹脂プリント部、27…第7樹脂プリント部、101…中足骨、101a…(中足骨の)基部、200…姿勢保持装置、202…係止バー、X…着用者。