(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066263
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】加湿システム、培養器装置及び加湿システムの加湿方法
(51)【国際特許分類】
F24F 6/00 20060101AFI20230508BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
F24F6/00 A
F24F6/00 H
C12M1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176892
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】230128026
【弁護士】
【氏名又は名称】駒木 寛隆
(72)【発明者】
【氏名】清水 義文
【テーマコード(参考)】
3L055
4B029
【Fターム(参考)】
3L055DA01
4B029AA01
4B029DF10
(57)【要約】
【課題】衛生面がより改善された加湿システムを提供する。
【解決手段】加湿システムは、第1の開口部と、第1の開口部から供給された水が充填される充填領域と、充填領域の最大容量を超えて供給された水が排出される、第1の開口部よりも高い位置に設けられた第2の開口部と、を有し、充填領域に充填された水を用いて加湿する加湿機構と、水の排出先との連結先を、第2の開口部と第1の開口部との間で切り替える第1の切替部と、加湿機構に対する水の給排水を行うためのポンプと、第1の切替部及びポンプの動作を制御する制御部と、を備え、制御部は、加湿機構に給水する場合は、水の供給源が第1の開口部に接続するとともに、第1の切替部が第2の開口部と排出先とを連結した状態において、ポンプを駆動し、加湿機構から排水する場合は、第1の切替部が第1の開口部と排出先とを連結した上で、ポンプを駆動する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の開口部と、前記第1の開口部から供給された水が充填される充填領域と、前記充填領域の最大容量を超えて供給された水が排出される、前記第1の開口部よりも高い位置に設けられた第2の開口部と、を有し、前記充填領域に充填された水を用いて加湿する加湿機構と、
水の排出先との連結先を、前記第2の開口部と前記第1の開口部との間で切り替える第1の切替部と、
前記加湿機構に対する水の給排水を行うためのポンプと、
前記第1の切替部及び前記ポンプの動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記加湿機構に給水する場合は、水の供給源が前記第1の開口部に接続するとともに、前記第1の切替部が前記第2の開口部と前記排出先とを連結した状態において、前記ポンプを駆動し、
前記加湿機構から排水する場合は、前記第1の切替部が前記第1の開口部と前記排出先とを連結した上で、前記ポンプを駆動する、
加湿システム。
【請求項2】
前記供給源との連結先を、前記第1の開口部と前記第2の開口部との間で切り替える第2の切替部を更に備え、
前記制御部は、
前記加湿機構に給水する場合は、前記第2の切替部が前記供給源と前記第1の開口部とを連結し、
前記加湿機構から排水する場合は、前記第2の切替部が前記第2の開口部と前記供給源とを連結する、
請求項1に記載の加湿システム。
【請求項3】
前記ポンプは、前記第1の切替部と前記排出先との間に設けられ、駆動により前記第1の切替部からの吸引動作を行う、請求項1又は2に記載の加湿システム。
【請求項4】
前記第1の開口部に接続する配管における水の存在又は不存在を検出する第1のセンサと、
前記第2の開口部に接続する配管における水の存在又は不存在を検出する第2のセンサと、
を更に備え、
前記制御部は、前記第1のセンサの検出結果、及び、前記第2のセンサの検出結果に基づき、前記ポンプの駆動を停止する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の加湿システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記加湿機構に給水する場合において、前記ポンプを駆動した後に、前記第1のセンサ及び前記第2のセンサが水の存在を検出したことに応じて、前記ポンプの駆動を停止する、請求項4に記載の加湿システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記加湿機構から排水する場合において、前記ポンプを駆動した後に、前記第1のセンサ及び前記第2のセンサが水の不存在を検出したことに応じて、前記ポンプの駆動を停止する、請求項4又は5に記載の加湿システム。
【請求項7】
前記供給源と、前記排出先とが接続された、水を収容可能な容器を更に備え、
前記ポンプは、前記容器に収容された水を前記加湿システムの配管において循環させることで、前記加湿機構に対する水の給排水を行う、
請求項1から6のいずれか一項に記載の加湿システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の加湿システムを備えた培養器装置。
【請求項9】
第1の開口部と、前記第1の開口部から供給された水が充填される充填領域と、前記充填領域の最大容量を超えて供給された水が排出される、前記第1の開口部よりも高い位置に設けられた第2の開口部と、を有し、前記充填領域に充填された水を用いて加湿する加湿機構と、
水の排出先との連結先を、前記第2の開口部と前記第1の開口部との間で切り替える第1の切替部と、
前記加湿機構に対する水の給排水を行うためのポンプと、
前記第1の切替部の動作を制御する制御部と、
を備える加湿システムの加湿方法であって、
前記制御部が、
前記加湿機構に給水する場合、水の供給源が前記第1の開口部に接続するとともに、前記第1の切替部が前記第2の開口部と前記排出先とを連結した状態において、前記ポンプを駆動する工程と、
前記加湿機構から排水する場合、前記第1の切替部が前記第1の開口部と前記排出先とを連結した上で、前記ポンプを駆動する工程と、
を含む加湿システムの加湿方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加湿システム、培養器装置及び加湿システムの加湿方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞培養器(インキュベータ)とは、細胞を培養するために、温度、湿度、及び気体組成等の空気の条件を一定に保つ装置である。細胞培養器においては、細胞の培養に適した湿度を保つための加湿機構が必要である。特許文献1には、加湿用の貯水池を備えた培養器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の構成においては、培養器内を加湿するための加湿機構に水が残存して雑菌が繁殖する可能性があり、衛生面に改善の余地があった。
【0005】
そこで、本開示は、衛生面がより改善された加湿システム、培養器装置及び加湿システムの加湿方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る加湿システムは、第1の開口部と、前記第1の開口部から供給された水が充填される充填領域と、前記充填領域の最大容量を超えて供給された水が排出される、前記第1の開口部よりも高い位置に設けられた第2の開口部と、を有し、前記充填領域に充填された水を用いて加湿する加湿機構と、水の排出先との連結先を、前記第2の開口部と前記第1の開口部との間で切り替える第1の切替部と、前記加湿機構に対する水の給排水を行うためのポンプと、前記第1の切替部及び前記ポンプの動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記加湿機構に給水する場合は、水の供給源が前記第1の開口部に接続するとともに、前記第1の切替部が前記第2の開口部と前記排出先とを連結した状態において、前記ポンプを駆動し、前記加湿機構から排水する場合は、前記第1の切替部が前記第1の開口部と前記排出先とを連結した上で、前記ポンプを駆動する。このように、加湿システムは、第2の開口部よりも低い位置に設けられた第1の開口部が水の排出先に連結した状態においてポンプを駆動して排水するため、排水処理後に加湿機構の内部に残存する水の量を低減することができ、衛生面を改善することが可能である。
【0007】
一実施形態において、前記供給源との連結先を、前記第1の開口部と前記第2の開口部との間で切り替える第2の切替部を更に備え、前記制御部は、前記加湿機構に給水する場合は、前記第2の切替部が前記供給源と前記第1の開口部とを連結し、前記加湿機構から排水する場合は、前記第2の切替部が前記第2の開口部と前記供給源とを連結してもよい。このように、加湿システムは、水の供給源、加湿機構、及び排出先が一本の経路を構成するようにした上で、ポンプを駆動して加湿機構から排水するため、加湿機構及び加湿システムを構成する配管からの排水を効果的に行うことができる。
【0008】
一実施形態において、前記ポンプは、前記第1の切替部と前記排出先との間に設けられ、駆動により前記第1の切替部からの吸引動作を行ってもよい。したがって、加湿システム内の流路の内部に過剰な圧力が印加されることにより、配管が破損又は損傷して、漏水が生じることを防ぐことができる。また、仮に、漏水が生じたとしても、漏水により流出する水の量を、加湿機構及び加湿システム内の流路の中に現に存在する水に限定させることができる。
【0009】
一実施形態において、前記第1の開口部に接続する配管における水の存在又は不存在を検出する第1のセンサと、前記第2の開口部に接続する配管における水の存在又は不存在を検出する第2のセンサと、を更に備え、前記制御部は、前記第1のセンサの検出結果、及び、前記第2のセンサの検出結果に基づき、前記ポンプの駆動を停止してもよい。したがって、加湿システムによれば、ポンプの駆動を自動的に停止させることができる。
【0010】
一実施形態において、前記制御部は、前記加湿機構に給水する場合において、前記ポンプを駆動した後に、前記第1のセンサ及び前記第2のセンサが水の存在を検出したことに応じて、前記ポンプの駆動を停止してもよい。このように、第1のセンサ及び第2のセンサが水の存在を検出したことに応じてポンプの駆動を停止することで、適切なタイミングで給水に必要なポンプの駆動を停止することができる。
【0011】
一実施形態において、前記制御部は、前記加湿機構から排水する場合において、前記ポンプを駆動した後に、前記第1のセンサ及び前記第2のセンサが水の不存在を検出したことに応じて、前記ポンプの駆動を停止してもよい。このように、第1のセンサ及び第2のセンサが水の不存在を検出したことに応じてポンプの駆動を停止することで、適切なタイミングで排水に必要なポンプの駆動を停止することができる。
【0012】
一実施形態において、前記供給源と、前記排出先とが接続された、水を収容可能な容器を更に備え、前記ポンプは、前記容器に収容された水を前記加湿システムの配管において循環させることで、前記加湿機構に対する水の給排水を行ってもよい。このように、加湿システムの配管において水を循環して、加湿機構に対する水の給排水を行うことで、水を収容する容器を小さくすることが可能である。
【0013】
一実施形態において、培養器装置は、上記の加湿システムを備えてもよい。このような培養装置によれば、排水処理後に加湿機構の内部に残存する水の量を低減することができ、衛生面を改善することが可能である。
【0014】
幾つかの実施形態に係る加湿システムの加湿方法は、第1の開口部と、前記第1の開口部から供給された水が充填される充填領域と、前記充填領域の最大容量を超えて供給された水が排出される、前記第1の開口部よりも高い位置に設けられた第2の開口部と、を有し、前記充填領域に充填された水を用いて加湿する加湿機構と、水の排出先との連結先を、前記第2の開口部と前記第1の開口部との間で切り替える第1の切替部と、前記加湿機構に対する水の給排水を行うためのポンプと、前記第1の切替部の動作を制御する制御部と、を備える加湿システムの加湿方法であって、前記制御部が、前記加湿機構に給水する場合、水の供給源が前記第1の開口部に接続するとともに、前記第1の切替部が前記第2の開口部と前記排出先とを連結した状態において、前記ポンプを駆動する工程と、前記加湿機構から排水する場合、前記第1の切替部が前記第1の開口部と前記排出先とを連結した上で、前記ポンプを駆動する工程と、を含む。このように、加湿システムの加湿方法は、第2の開口部よりも低い位置に設けられた第1の開口部が水の排出先に連結した状態においてポンプを駆動して排水するため、排水処理後に加湿機構の内部に残存する水の量を低減することができ、衛生面を改善することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本開示の一実施形態によれば、加湿システム及び培養器装置において衛生面を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】比較例に係る加湿システムの構成を示す図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る加湿システムの一例の概略構成を示す図である。
【
図3】
図2の加湿システムにおいて三方弁を切り替えた様子の一例を示す図である。
【
図4】
図2の加湿システムが組み込まれた培養器装置の一例の概略構成を示す図である。
【
図5】
図4の中空部材による加湿の原理を示す図である。
【
図6】
図2の加湿システムが備える処理部の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図7】加湿システムが実行する処理の手順の一例を示すシーケンスチャートである。
【
図8】加湿システムが実行する処理の手順の一例を示すシーケンスチャートである。
【
図9】本開示の他の実施形態に係る加湿システムの一例の概略構成を示す図である。
【
図10】
図9の加湿システムにおいて三方弁を切り替えた様子の一例を示す図である。
【
図11】加湿システムが実行する処理の手順の一例を示すシーケンスチャートである。
【
図12】加湿システムが実行する処理の手順の一例を示すシーケンスチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<比較例>
図1は、比較例に係る加湿システム9の構成を示す図である。比較例に係る加湿システム9は、培養器内を加湿するシステムである。
図1において、比較例に係る加湿システム9は、加湿機構90、給水ボトル91、ポンプ92、配管93,94、及び排水ボトル95を備える。加湿システム9において、給水ボトル91、加湿機構90、及び排水ボトル95は、配管93,94を介して互いに接続される。
【0018】
給水ボトル91は、加湿に用いられる水W1を蓄える容器である。ポンプ92は、給水ボトル91の水W1を、配管93を介して加湿機構90へ送り出す装置である。
図1の例では、ポンプ92は加湿機構90の前段に配置され、加湿機構90へ向けて水を圧送する。加湿機構90へ水を供給する配管93は、加湿機構90の鉛直方向に低い位置に設けられた開口部931に接続される。
【0019】
加湿機構90は、給水ボトル91からポンプ92により供給された水により培養器内を加湿する装置である。加湿機構90の内部において、開口部931から供給された水が充填される。開口部931から供給された水は、加湿機構90の加湿に用いられる。加湿機構90の内部の最大容量を超えて供給された水は、開口部931よりも高い位置に設けられた開口部941に接続された配管94を介して、排水ボトル95へ排出される。排水ボトル95は、加湿機構90から排出された水W2を蓄える容器である。
【0020】
比較例に係る加湿システム9では、加湿機構90に給水する場合も、排水する場合も、加湿機構90において水が流れる方向は同一である。給水ボトル91からの水の供給がない状態でポンプ92の駆動を継続すると、加湿機構90から配管94へ水が排出される。一方で、配管94が加湿機構90と接続する開口部941は、配管93が加湿機構90と接続する開口部931の位置よりも高い位置に設けられる。そのため、排水動作の際に、加湿機構90の前段の配管93の内部に水がなくなると、加湿機構90内部の水を後段の配管94へ送り出す水がなくなる。そのままポンプ92の駆動を継続すると、加湿機構90内では、気泡が後段の配管94へ向けて排出されるだけであり、加湿機構90の内部に水が残ってしまう。したがって、比較例に係る加湿システム9では、培養器内を加湿するための加湿機構90に水が残存して雑菌が繁殖する可能性があり、衛生面に改善の余地があった。
【0021】
また、比較例に係る加湿システム9では、ポンプ92が加湿機構90よりも前段に配置され、給水ボトル91の水W1を加湿機構90へ向けて圧送している。そのため、配管93を構成するチューブ及びその接続部分等に不具合が生じると、その部分から水が漏れる可能性があった。このように、比較例に係る加湿システム9では、装置内での漏水リスクがあった。
【0022】
本開示に係る構成は、これらの問題点を改善する。
【0023】
<実施形態>
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。各図面中、同一の構成又は機能を有する部分には、同一の符号を付している。本実施形態の説明において、同一の部分については、重複する説明を適宜省略又は簡略化する場合がある。
【0024】
(第1実施形態)
本実施形態に係る加湿システム1(1a,1b)は、加湿機構10に給水を行う場合と加湿機構10から排水を行う場合とで水の流路を切り替えることで、加湿機構10の内部に残存する水を低減し、衛生面を改善する。また、本実施形態に係る加湿システム1(1a,1b)は、加湿機構10の後段にポンプ20を設け、水及び空気を吸引することで、配管の破断及び損傷等による漏水リスクを低減する。
【0025】
図2及び
図3は、本開示の一実施形態に係る加湿システム1aの一例の概略構成を示す図である。加湿システム1aは、培養器60内を加湿するシステムである。培養器60と加湿機構10との関係については
図4を参照して後述する。
図2及び
図3において、加湿システム1aは、加湿機構10、配管11~18、ポンプ20、給水ボトル21、排水ボトル22、三方弁23,24、及び処理部100を備える。本実施形態に係る加湿システム1aは、加湿機構10に給水を行う場合と加湿機構10から排水を行う場合との間で、三方弁23,24を切り替えることで、水の流路を変化させる。三方弁23,24は、三方向に流体の出入口を有する弁であり、流体の流れ方向の切り替えに使用される。本実施形態では、三方弁23,24は電磁弁により構成され、処理部100が備える後述の制御部101(
図6参照)の制御に基づき配管11~18の接続関係を切り替える。
図2は、加湿機構10に給水を行う場合の三方弁23,24の接続関係を示している。
図3は、加湿機構10から排水を行う場合の三方弁23,24の接続関係を示している。なお、三方弁23,24は電磁弁を有するものに限らず、例えば、手動を含む他の方式により接続関係を切り替えてもよい。加湿システム1aは、加湿機構10の後段の配管17にポンプ20を備える。ポンプ20は、その前段に接続された配管17から水を吸引し、後段に接続された排水ボトル22へ吸引した水を排出する装置である。ポンプ20は、加湿機構10に対する水の給排水を行う。処理部100は、加湿システム1aのポンプ20及び三方弁23,24を含む各構成要素の動作を制御する装置である。
【0026】
図2に示すように、加湿機構10に給水を行う場合、配管11,12が第2の切替部としての三方弁23により接続され、配管16,17が第1の切替部としての三方弁24により接続される。そのため、給水ボトル21及び加湿機構10の前段が配管11~13を介して接続され、加湿機構10の後段及び排水ボトル22が配管15~17を介して接続される。水の供給源としての給水ボトル21は、加湿に用いられる水W1を蓄える容器である。
【0027】
このような構成においてポンプ20が駆動すると、ポンプ20の前段に存在する配管11~13、加湿機構10、及び配管15~17が陰圧となる。これに伴い、給水ボトル21の水W1が、配管11、三方弁23、及び配管12,13を介して、加湿機構10の前段へ引き込まれる。加湿機構10へ水を供給する配管13は、加湿機構10の前段の鉛直方向に低い位置に設けられた第1の開口部としての開口部131に接続される。
【0028】
加湿機構10は、ポンプ20の駆動により給水ボトル21から供給された水を用いて培養器60内を加湿する装置である。加湿機構10は、その内部において、開口部131から供給された水が充填される充填領域31(
図4参照)を有する。充填領域31に充填された水は、加湿機構10の加湿に用いられる。ポンプ20の駆動に伴い、加湿機構10の充填領域31は低い部分から順次水で充填され、開口部131よりも高い位置に設けられた第2の開口部としての開口部151から配管15へ空気が排出される。更に水が供給され、充填領域31の最大容量を超えると、最大容量を超えて供給された水が開口部151から配管15へ排出される。ポンプ20の駆動に伴い、空気及び水は、加湿機構10の高い位置に接続された配管15,16、三方弁24,及び配管17を介して、排水ボトル22へ排出される。水の排出先としての排水ボトル22は、加湿機構10から排出された水W2を蓄える容器である。なお、給水ボトル21及び排水ボトル22は完全に密閉されるわけではなく、外部との空気の流出入を可能とする空気穴を備えてもよい。
【0029】
図3に示すように、加湿機構10から排水を行う場合、配管11,14が三方弁23により接続され、配管17,18が三方弁24により接続される。そのため、給水ボトル21及び加湿機構10の後段が配管11,14,15を介して接続され、加湿機構10の前段及び排水ボトル22が配管13,17,18を介して接続される。
【0030】
このような接続関係においてポンプ20が駆動すると、ポンプ20の前段に存在する配管11,14,15、加湿機構10、及び配管13,18,17が陰圧となる。これに伴い、給水ボトル21から空気が、配管11、三方弁23、配管14,15を介して、加湿機構10の後段へ引き込まれる。前述のように、配管15は、加湿機構10の後段の鉛直方向に高い位置に設けられた開口部151に接続される。
【0031】
加湿機構10の後段の高い位置に設けられた開口部151から空気が引き込まれると、加湿機構10の内部の充填領域31では、高い部分から低い部分へ順次水から空気に置換される。さらに、空気が充填されると、開口部151よりも低い位置に設けられた開口部131から配管13へ水が排出され、加湿機構10内は空気が充填される。配管13から排出された空気及び水は、配管18、三方弁24、配管17、及びポンプ20を通り、排水ボトル22に充填される。このように、加湿システム1aは、空気及び水を移動させる動力を、ポンプ20で吸引力を発生させることで賄っている。
【0032】
加湿システム1aは、給水時には加湿機構10に対して低い位置に設けられた開口部131から水が入り、開口部131よりも高い位置に設けられた開口部151から排水されるような配管を有する。加湿システム1aは、排水時には三方弁23及び24を切り替えることで、加湿機構10の接続方向を変更する。これにより、加湿システム1aは、排水時には加湿機構10の高い位置に設けられた開口部151から空気が入り、開口部151よりも低い位置に設けられた開口部131から水及び空気が排出されるような配管を有する。
【0033】
以上のように、加湿システム1aは、加湿機構10から排水を行う場合、加湿機構10の開口部131の前段及び排水ボトル22が配管13,17,18を介して接続される。したがって、ポンプ20の駆動により、加湿機構10の内部ではより高い位置からより低い位置へ水が吸い込まれて排水ボトル22へ導かれるため、加湿機構10の残留水を低減することが可能である。また、加湿システム1aは、加湿機構10に対する給排水を加湿機構10の後段に設けられたポンプ20が駆動して陰圧を付与することにより実施する。したがって、加湿システム1aによれば、例えば、配管11~17の内部に過剰な圧力が印加される等の不測の事態により、配管11~17が破損又は損傷して、漏水が生じることを防ぐことができる。また、給水ボトル21からポンプ20までの配管等が何らかの理由で破損又は損傷した場合、ポンプ20はその部分から空気を吸引することになり、給水ボトル21からの新たな水の供給は停止される。したがって、仮に漏水が生じたとしても、漏水により流出する水の量を、加湿機構10及び配管11~17の中に現に存在する水に限定させることができる。
【0034】
図4は、
図2の加湿システム1(1a,1b)を備える培養器装置80の一例の概略構成を示す図である。
図4は、培養器装置80を鉛直上方から見た水平断面図の概略構成を示している。
図4において、培養器装置80は、培養器60及び加湿機構10を備える。培養器60は、壁部62により培養容器70を収容する。培養容器70内には、培養対象物が置かれる。培養対象物は、例えば、細胞、菌、又は微生物等である。細胞は、例えば、動物細胞、又は植物細胞である。培養容器70は、例えば、水平面方向に延在する板形状を有するウェルプレートである。
【0035】
培養器60内は、培養器60の外部とは異なる空気の環境に置かれる。環境は、培養対象物の培養に適した環境であり、例えば湿度、温度、及びCO2(二酸化炭素)濃度等によって特定される。なお、培養器60は、蓋を有することにより開閉可能に構成されてもよい。
【0036】
加湿機構10は、培養器60の外部に設けられ、加湿された気体(加湿気体)を培養器60内に供給する。加湿機構10の大きさは、培養器60及び培養容器70とは無関係に設計可能である。例えば、培養容器70の大きさに依存することなく、加湿機構10を小型化してもよい。
【0037】
加湿機構10は、充填領域31、中空部材50、及び壁部32を備える。充填領域31は、水W3が充填される領域であり、壁部32によりその領域が画定される。水W3は、培養器60の外部にある加湿用の水であり、前述のポンプ20の駆動により配管13から開口部131を介して充填領域31内に供給される。
図4の例では、充填領域31は、壁部32により画定された中空部材50の外側の領域である。
【0038】
中空部材50は、部材51及び中空部52を備える。中空部材50は、中空部52を有するように、部材51によって中空状に形成される。部材51は、中空部材50の側面(側壁でもよい)を規定する。中空部52は、部材51によって囲まれた部分であり、空隙である。中空部材50は、部材51が充填領域31に接するように設けられる。中空部材50は、例えば、中空糸である。その場合の部材51は、水W3の水分子を通過させるように構成された膜であってよい。そのような膜は、半透膜とも称される。中空糸以外にも、水分子を通過させるように中空状に形成された様々な部材が、中空部材50として用いられてよい。
【0039】
配管13及び配管15は、水の流路を与える。
図4では、水の流れが黒塗り矢印で模式的に示される。配管13は、開口部131を介して水を加湿機構10の充填領域31に供給する。配管15は、充填領域31の水W3を排出する。配管13によって供給された水W3のうちの余分な水が、開口部151を介して配管15へ排出される。
図4の例では、加湿機構10が培養器60の外部に設けられているので、充填領域31への給水及び充填領域31からの排水による培養器60内の環境への影響(温度及び湿度の変化等)はない。前述のように、加湿機構10が配管15に接続される位置は、加湿機構10が配管13に接続される位置よりも鉛直方向に高い位置に設けられる。
【0040】
給気チューブ41及び排気チューブ55は、気体の流路を与える。気体は、例えば、二酸化炭素(CO
2)が追加された空気である。培養容器70内の細胞等の培養対象物の活動により、培養容器70内の培養液は酸性に移行する傾向がある。二酸化炭素(CO
2)は、培養容器70内の培養液を中性に保つ作用を有する。
図4では、気体の流れが白抜き矢印で模式的に示される。給気チューブ41は、気体を加湿機構10内に取り込む。取り込まれた気体は、
図5を参照して後述するように、中空部材50によって加湿される。排気チューブ55は、加湿気体を培養器60内に供給する。
【0041】
中空部材50は、中空部52が給気チューブ41及び排気チューブ55と連通するように、給気チューブ41と排気チューブ55との間に接続される。気体は、給気チューブ41、中空部材50の中空部52、及び排気チューブ55をこの順に通り、培養器60内に供給される。気体は、中空部材50の中空部52を通過する際に加湿される。
【0042】
図5は、
図4の中空部材50による加湿の原理を示す図である。
図5には、中空部材50及び充填領域31の一部の拡大図が模式的に示される。中空部材50の部材51は、複数の微細孔51aを有する。微細孔51aは、水W3の水分子を通過させる一方で、水分子よりも大きな分子は通過させない。水W3の水分子は、微細孔51aを介して充填領域31から中空部52に入り込み、中空部52を通過する気体を加湿する。これにより、加湿気体が得られる。
【0043】
中空部材50の表面積(部材51の面積)が大きくなるほど、加湿機能が得られやすい。中空部材50が中空糸のように断面積が小さいものであれば、中空部材50の容積に対する表面積の比率は非常に大きくなる。そのような中空部材50を用いることで、小さい容積でも十分な加湿機能を得ることができる。このように、断面積が小さな中空部材50を用いることで、加湿機構10を小型化することができる。また、
図4は、中空部材50の形状を簡略化して示しているが、中空部材50は、例えば、充填領域31内の水W3との表面積が大きくなるような形状を有してもよい。
【0044】
液状の水は、充填領域31から中空部材50の中空部52へ直接入り込まない。したがって、培養器60内での漏水リスクを抑制することができる。
【0045】
図4に戻り、排気チューブ55は、加湿機構10から培養器60まで延在する。排気チューブ55は、加湿機構10及び培養器60それぞれの対応する壁部32,62を通過する。
図4に示される例では、壁部32及び壁部62は、互いに対向して隣接している。これにより、加湿機構10から培養器60までの距離が最短化される。培養器60の壁部62は、排気チューブ55が挿通する孔42aを有する。加湿機構10の壁部32は、排気チューブ55が挿通する孔32aを有する。孔32a及び孔42aが連通し、連結孔40が形成される。このような連結孔40を挿通する排気チューブ55によって、加湿気体を培養器60内に最短距離で供給することができる。培養器60及び加湿機構10が集約配置されるため、培養器装置80を小型化することもできる。
【0046】
なお、配管13、給気チューブ41、及び配管15は、加湿機構10の壁部32のうちの壁部62に隣接する部分以外の部分から、例えば、培養器60側とは反対側の方向に延在する。壁部32は、配管13,15に対応する開口部131,151、及び給気チューブ41に対応する孔32aを有する。加湿機構10側とは反対側における配管13及び配管15の先には、
図2,3を参照して説明した給水ボトル21、排水ボトル22、及びポンプ20等が配置される。加湿機構10側とは反対側における給気チューブ41の先は開放されていてもよいし、給気チューブ41の先にも空気を送り出すためのポンプが配置されていてもよい。
【0047】
加湿機構10内に蓄えられた水W3は、中空部材50内の気体を加湿するに従い減少していく。そこで、加湿機構10が加湿を行っている間、加湿システム1は、一定時間ごとにポンプ20を駆動して、給水ボトル21から水W1を加湿機構10へ供給してもよい。
【0048】
図6は、
図2の加湿システム1aが備える処理部100の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。処理部100は、制御部101、記憶部102、及び操作受付部103を備える。
【0049】
制御部101は、加湿システム1aの各構成要素と通信可能に接続され、各構成要素の動作を制御する。例えば、制御部101は、ポンプ20、及び三方弁23,24の動作を制御する。制御部101は、1つ以上のプロセッサを含む。一実施形態において「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限定されない。加湿システム1aの機能は、本実施形態に係る加湿システム1aを機能させるために用いられうるプログラムを、制御部101に含まれるプロセッサで実行することにより実現されてもよい。
【0050】
記憶部102は、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、ROM(Read-Only Memory)、及びEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)を含む任意の記憶モジュールを含む。記憶部102は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、及びキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部102は、加湿システム1aの動作に用いられる又は加湿システム1aの動作の結果得られた任意の情報を記憶する。例えば、記憶部102は、システムプログラム、ポンプ20及び三方弁23,24の動作制御プログラム、並びに操作受付部103を介して入力された操作情報を含む各種情報等を記憶してもよい。
【0051】
操作受付部103は、例えば、ユーザの入力操作を受け付けて、ユーザの操作に基づく入力情報を取得する1つ以上の入力インタフェースを含む。例えば、操作受付部103は、物理キー、静電容量キー、ポインティングディバイス、ディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン等であるが、これらに限定されない。
【0052】
処理部100は、例えば、組込みシステムにより構成されうるが、これに限られず、例えば、PC(Personal Computer)、タブレット、又はスマートフォン等の汎用の情報処理装置により実現されてもよい。
【0053】
図7及び
図8は、加湿システム1aが実行する処理の手順の一例を示すシーケンスチャートである。
図7は加湿機構10に給水を行う手順を示し、
図8は加湿機構10から排水を行う手順を示す。
図7及び
図8を参照して説明する動作は、本実施形態に係る加湿方法の一例に相当する。
図7及び
図8の各ステップの動作は、処理部100の制御部101の制御に基づき実行される。
図7及び
図8はいずれも、紙面の上から下にかけて時間が経過する場合における、制御部101に対して入力された「命令」と、それに応じて行われる「動作」の関係を示している。以下の動作の前提として、
図2のように、三方弁23は配管11,12を接続し、三方弁24は配管16,17を接続するように、三方弁23,24の接続関係は設定されている。
【0054】
図7のステップS1において、制御部101は、「給水」の命令を入力する。「給水」の命令の入力は、例えば、操作受付部103を介したユーザからの操作に応じて行われてもよい。
【0055】
ステップS1での「給水」の命令の入力に応じて、制御部101は、ステップS2において、ポンプ20に対して動作を開始するための命令を送信する。これに応じて、ステップS3において、ポンプ20の動作は「ON」となり、ポンプ20は吸引動作を開始する。この動作により、給水ボトル21の水W1が、加湿機構10へ供給される。
【0056】
その後、ステップS4において、制御部101は、「停止」の命令を入力する。「停止」の命令の入力は、例えば、操作受付部103を介したユーザからの操作に応じて行われてもよい。ユーザは、例えば、加湿機構10内に十分な水が行き渡ったことを認識すると、「停止」の命令を入力する。
【0057】
ステップS4での「停止」の命令の入力に応じて、制御部101は、ステップS5において、ポンプ20に対して動作を停止するための命令を送信する。これに応じて、ステップS6において、ポンプ20の動作は「OFF」となり、ポンプ20は吸引動作を停止する。この動作により、加湿機構10への水の供給は停止される。
【0058】
一方、加湿機構10からの排水の動作は
図8により示される。
図8のステップS11において、制御部101は、「排水」の命令を入力する。「排水」の命令の入力は、例えば、操作受付部103を介したユーザからの操作に応じて行われてもよい。
【0059】
ステップS11での「排水」の命令の入力に応じて、制御部101は、ステップS12において、三方弁23,24に対して接続関係を切り替えるための命令を送信するとともに、ポンプ20に対して動作を開始するための命令を送信する。これに応じて、ステップS13において、三方弁23は配管11,14を接続し、三方弁24は配管17,18を接続する。さらに、ステップS14において、ポンプ20の動作は「ON」となり、ポンプ20は吸引動作を開始する。この動作により、加湿機構10内の水W3が、前段の配管13,18、三方弁24、及び配管17を介して、排水ボトル22へ排水される。
【0060】
その後、ステップS15において、制御部101は、「停止」の命令を入力する。「停止」の命令の入力は、例えば、操作受付部103を介したユーザからの操作に応じて行われてもよい。ユーザは、例えば、加湿機構10内から水が十分に排出されたことを認識すると、「停止」の命令を入力する。
【0061】
ステップS15での「停止」の命令の入力に応じて、制御部101は、ステップS16において、ポンプ20に対して動作を停止するための命令を送信する。これに応じて、ステップS17において、ポンプ20の動作は「OFF」となり、ポンプ20は吸引動作を停止する。この動作により、加湿機構10からの水の排出は停止される。
【0062】
以上のように、加湿システム1aは、加湿機構10、三方弁24、ポンプ20、及び制御部101を備える。加湿機構10は、開口部131と、開口部131から供給された水が充填される充填領域31と、充填領域31の最大容量を超えて供給された水が排出される、開口部131よりも高い位置に設けられた開口部151と、を有する。加湿機構10は、充填領域31に充填された水を用いて培養器60内を加湿する。三方弁24は、排水ボトル22との連結先を、開口部151と開口部131との間で切り替える。ポンプ20は、加湿機構10に対する水の給排水を行う。制御部101は、三方弁24及びポンプ20の動作を制御する。制御部101は、加湿機構10に給水する場合は、給水ボトル21が開口部131に接続するとともに、三方弁24が開口部151と排水ボトル22とを連結した状態において、ポンプ20を駆動する。一方、制御部101は、加湿機構10から排水する場合は、三方弁24が開口部131と排水ボトル22とを連結した上で、ポンプ20を駆動する。このように、加湿システム1aは、開口部151よりも低い位置に設けられた開口部131が排水ボトル22に連結した状態においてポンプ20を駆動して排水する。よって、加湿システム1aは、排水処理後に加湿機構10の内部に残存する水の量を低減することができ、衛生面を改善することが可能である。
【0063】
また、加湿システム1aは、給水ボトル21との連結先を、開口部131と開口部151との間で切り替える三方弁23を更に備える。そして、制御部101は、加湿機構10に給水する場合は、三方弁23が給水ボトル21と開口部131とを連結し、加湿機構10から排水する場合は、三方弁23が開口部151と給水ボトル21とを連結する。このように、加湿システム1aは、給水ボトル21、加湿機構10、及び排水ボトル22が一本の経路を構成するようにした上で、ポンプ20を駆動して加湿機構10から排水するため、加湿機構10及び加湿システム1aを構成する配管からの排水を効果的に行うことができる。
【0064】
また、加湿システム1aにおいては、ポンプ20は、三方弁24と排水ボトル22との間に設けられ、前段から後段へ吸引動作をすることで、配管内の水を移動させる。したがって、加湿システム1aを構成する配管11~17の内部に過剰な圧力が印加されることにより、配管11~17が破損又は損傷して、漏水が生じることを防ぐことができる。また、仮に、漏水が生じたとしても、漏水により流出する水の量を、加湿機構10及び配管11~17の中に現に存在する水に限定させることができる。
【0065】
(第2実施形態)
第1実施形態では、給水及び排水において、制御部101は、ポンプ20の動作の停止を、ユーザからの操作に応じて行う例を説明した。しかし、ポンプ20の動作の停止は、配管11~17内の水の有無に応じて自動的に行うようにしてもよい。本実施形態では、加湿機構10の前段及び後段に水の有無を検知するためのセンサを設け、制御部101は、センサが検知した水の有無に応じてポンプ20を自動的に停止させる構成例を説明する。以下、第1実施形態と共通する構成には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0066】
図9及び
図10は、本開示の他の実施形態に係る加湿システム1bの一例の概略構成を示す図である。加湿システム1bは、
図2、
図3を参照して説明した加湿システム1aの構成に加えて、給水センサ25及び排水センサ26を備える。第1のセンサとしての給水センサ25は、加湿機構10の前段に設けられた配管11における水の有無を検出する。すなわち、給水センサ25は、開口部131に接続する配管における水の存在又は不存在を検出する。第2のセンサとしての排水センサ26は、加湿機構10の後段に設けられた配管17における水の有無を検出する。すなわち、排水センサ26は、開口部151に接続する配管における水の存在又は不存在を検出する。給水センサ25及び排水センサ26は、例えば、配管11,17へ光を照射して配管11,17を通過した光を受信し、配管11,17内の水の有無によって受信した光の特性が相違することに基づき、水の有無を検出してもよい。なお、給水センサ25及び排水センサ26の動作原理は、水の有無を検出可能であればいかなるものでもよく、水と空気とで光の透過特性が異なることを利用したものに限られない。
図9は、加湿機構10に給水を行う場合の三方弁23,24の接続関係を示している。
図10は、加湿機構10から排水を行う場合の三方弁23,24の接続関係を示している。
【0067】
図11及び
図12は、加湿システム1bが実行する処理の手順の一例を示すシーケンスチャートである。
図11は加湿機構10に給水を行う手順を示し、
図12は加湿機構10から排水を行う手順を示す。
図11及び
図12を参照して説明する動作は、本実施形態に係る加湿方法の一例に相当する。
図11及び
図12の各ステップの動作は、処理部100の制御部101の制御に基づき実行される。
図11及び
図12はいずれも、紙面の上から下にかけて時間が経過する場合における、制御部101に対して入力された「命令」と、それに応じて行われる「動作」の関係を示している。以下の動作の前提として、
図9のように、三方弁23は配管11,12を接続し、三方弁24は配管16,17を接続するように、三方弁23,24の接続関係は設定されている。
【0068】
図11のステップS21において、制御部101は、「給水」の命令を入力する。この処理は、例えば、
図7のステップS1と同様である。
【0069】
ステップS21での「給水」の命令の入力に応じて、制御部101は、ステップS22において、ポンプ20に対して動作を開始するための命令を送信する。これに応じて、ステップS23において、ポンプ20の動作は「ON」となり、ポンプ20は吸引動作を開始する。この動作により、給水ボトル21の水W1が、加湿機構10へ供給される。
【0070】
その後、ステップS24において、給水センサ25及び排水センサ26のいずれもが水を検出した(「給水センサON」「排水センサON」)ことに応じて、制御部101は、ステップS25において、ポンプ20に対して動作を停止するための命令を送信する。これに応じて、ステップS26において、ポンプ20の動作は「OFF」となり、ポンプ20は吸引動作を停止する。この動作により、加湿機構10への水の供給は停止される。
【0071】
一方、加湿機構10からの排水の動作は
図12により示される。
図12のステップS31において、制御部101は、「排水」の命令を入力する。「排水」の命令の入力は、例えば、操作受付部103を介したユーザからの操作に応じて行われてもよい。
【0072】
ステップS31での「排水」の命令の入力に応じて、制御部101は、ステップS32において、三方弁23,24に対して接続関係を切り替えるための命令を送信するとともに、ポンプ20に対して動作を開始するための命令を送信する。これに応じて、ステップS33において、三方弁23は配管11,14を接続し、三方弁24は配管17,18を接続する。さらに、ステップS34において、ポンプ20の動作は「ON」となり、ポンプ20は吸引動作を開始する。この動作により、加湿機構10内の水W3が、前段の配管13,18、三方弁24、及び配管17を介して、排水ボトル22へ排水される。
【0073】
その後、ステップS35において、給水センサ25及び排水センサ26のいずれもが水がないことを検出した(「給水センサOFF」「排水センサOFF」)ことに応じて、制御部101は、ステップS36において、ポンプ20に対して動作を停止するための命令を送信する。これに応じて、ステップS37において、ポンプ20の動作は「OFF」となり、ポンプ20は吸引動作を停止する。この動作により、加湿機構10からの水の排出は停止される。
【0074】
以上のように、本実施形態に係る加湿システム1bは、第1実施形態に係る加湿システム1aの構成に加えて、開口部131,151に接続する配管における水の存在又は不存在を検出する給水センサ25及び排水センサ26を更に備える。そして、制御部101は、給水センサ25の検出結果、及び、排水センサ26の検出結果に基づき、ポンプ20の駆動を停止する。したがって、加湿システム1bによれば、ポンプ20の駆動を自動的に停止させることができる。
【0075】
また、制御部101は、加湿機構10に給水する場合において、ポンプ20を駆動した後に、給水センサ25及び排水センサ26が水の存在を検出したことに応じて、ポンプ20の駆動を停止する。前述のように、給水の際、水は開口部131から供給され、加湿機構10の充填領域31の最大容量を超えて水が供給された場合、開口部151から最大容量を超えた水が排出される。したがって、給水時に、給水センサ25及び排水センサ26の両方が水の存在を検出するのは、加湿機構10には水が満たされており、それ以上水を供給する必要ない場合である。よって、給水センサ25及び排水センサ26が水の存在を検出したことに応じてポンプ20の駆動を停止することで、適切なタイミングで給水に必要なポンプ20の駆動を停止することができる。
【0076】
また、制御部101は、加湿機構10から排水する場合において、ポンプ20を駆動した後に、給水センサ25及び排水センサ26が水の不存在を検出したことに応じて、ポンプ20の駆動を停止する。前述のように、加湿機構10の排水は開口部151よりも低い位置に設けられた開口部131から行われる。したがって、排水時に、給水センサ25及び排水センサ26の両方が水の不存在を検出するのは、加湿機構10の内部には水が存在しない場合である。よって、給水センサ25及び排水センサ26が水の不存在を検出したことに応じてポンプ20の駆動を停止することで、適切なタイミングで排水に必要なポンプ20の駆動を停止することができる。
【0077】
なお、加湿システム1bは、加湿機構10への給水動作中に給水ボトル21の水がなくなった場合、それに応じてポンプ20を自動的に停止するようにしてもよい。例えば、加湿機構10への給水動作中に給水ボトル21の水がなくなった場合、給水センサ25は水の不存在を検出することになる。そこで、制御部101は、加湿機構10への給水動作中に給水センサ25が水の不存在を検出したことに応じて、ポンプ20の駆動を停止してもよい。これにより、加湿システム1bは、給水ボトル21が水を供給できなくなったことに応じて、自動的にポンプ20の駆動を停止させることができる。
【0078】
また、
図2、
図3、
図9、及び
図10に例示した加湿システム1a,1bでは、給水ボトル21と排水ボトル22とが別の容器として設けられているが、給水ボトル21及び排水ボトル22は、同一の容器により実現されてもよい。前述のように、本実施形態に係る加湿システム1において、中空部材50は、培養器60内の加湿に用いられる水のフィルターとしての役割を有する。そこで、加湿システム1は、給水ボトル21と排水ボトル22とを、一つの容器により実現し、加湿システム1の配管内で水を循環させてもよい。すなわち、加湿システム1は水の供給源と排出先とが接続された、水を収容可能な容器を備え、ポンプ92は、容器に収容された水を加湿システム1の配管において循環させることで、加湿機構10に対する水の給排水を行うようにしてもよい。これにより、加湿システム1は、加湿に必要な水を収容可能な大きさの容器を設ければ、給水ボトル21及び排水ボトル22として大きな容器を設けなくても、長時間、加湿をした状態で培養器60における実験することが可能である。
【0079】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、ブロック図に記載の複数のブロックは統合されてもよいし、又は1つのブロックは分割されてもよい。シーケンスチャートに記載の複数のステップは、記述に従って時系列に実行する代わりに、各ステップを実行する装置の処理能力に応じて、又は必要に応じて、並列的に又は異なる順序で実行されてもよい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
1,1a,1b 加湿システム
10 加湿機構
11~18 配管
131,151 開口部
100 処理部
101 制御部
102 記憶部
103 操作受付部
20 ポンプ
21 給水ボトル
22 排水ボトル
23,24 三方弁
25,26 センサ
31 充填領域
32 壁部
32a 孔
40 連結孔
41 給気チューブ
42a 孔
50 中空部材
51 部材
51a 微細孔
52 中空部
55 排気チューブ
60 培養器
62 壁部
70 培養容器
80 培養器装置
9 加湿システム
90 加湿機構
91 給水ボトル
92 ポンプ
93,94 配管
931,941 開口部
95 排水ボトル
W1,W2,W3 水