(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066277
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 16/28 20190101AFI20230508BHJP
G06Q 40/12 20230101ALI20230508BHJP
【FI】
G06F16/28
G06Q40/00 420
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021176910
(22)【出願日】2021-10-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】316014906
【氏名又は名称】株式会社FRONTEO
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久光 徹
(72)【発明者】
【氏名】吉川 悠一
(72)【発明者】
【氏名】蓮子 和巳
【テーマコード(参考)】
5B175
5L055
【Fターム(参考)】
5B175FB04
5B175KA12
5L055BB64
(57)【要約】
【課題】エンティティ間の影響度を適正に評価できる情報処理システム等を提供する。
【解決手段】情報処理システムは、複数のエンティティに対応する複数のノードの相互の出資関係および出資比率を示すエンティティネットワークを取得する取得部と、前記複数のノードのうち特定ノードから直接的または間接的に結ばれる複数の上位ノードのそれぞれについて、前記特定ノードからの出資関係を辿った経路に付与されている1つ以上の出資比率に基づき前記特定ノードに対する前記出資比率を指標とした影響度を分析する分析部と、を備え、前記分析部は、前記影響度を分析する対象の分析対象ノードから結ばれる2つ以上の上位ノードのうち1つの上位ノードの出資比率が半分を超えている場合、当該出資比率が半分を超えている1つの上位ノードが前記分析対象ノードを実効的に支配していると分析する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエンティティに対応する複数のノードの相互の出資関係および出資比率を示すエンティティネットワークを取得する取得部と、
前記複数のノードのうち特定ノードから直接的または間接的に結ばれる複数の上位ノードのそれぞれについて、前記特定ノードからの出資関係を辿った経路に付与されている1つ以上の出資比率に基づき前記特定ノードに対する前記出資比率を指標とした影響度を分析する分析部と、を備え、
前記分析部は、前記影響度を分析する対象の分析対象ノードから結ばれる2つ以上の上位ノードのうち1つの上位ノードの出資比率が半分を超えている場合、当該出資比率が半分を超えている1つの上位ノードが前記分析対象ノードを実効的に支配していると分析する、情報処理システム。
【請求項2】
前記分析部は、前記特定ノードから前記分析対象ノードに至るまでの経路に複数の出資比率がある場合、当該複数の出資比率を乗算し、前記特定ノードから前記分析対象ノードに至るまでに複数の経路がある場合、当該複数の経路のそれぞれの出資比率を加算して前記影響度を示す値を算出する、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記分析部は、前記分析対象ノードを実効的に支配していると分析した前記1つの上位ノードによる前記分析対象ノードに対する影響度を示す値を前記出資比率の最大値に設定する、請求項1または2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記分析部は、上位ノードから下位ノードに向かう経路を除外して前記影響度を分析する、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記分析部は、最上位ノードから直接的または間接的に結ばれる複数の下位ノードに至る複数の経路のうち、前記出資比率が所定値よりも大きい経路に絞って前記影響度を分析する、請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記所定値は、前記出資比率の最大値の半分よりも小さい値である、請求項5に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記エンティティネットワークの各ノードのそれぞれに対応して、分析した前記影響度を示す値を付加した画面を表示装置に表示させる制御を行う表示制御部、
をさらに備える請求項1乃至6のうち何れか1項に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記影響度を示す値が所定の閾値以上である1つ以上のノードを強調表示させる制御を行う、請求項7に記載の情報処理システム。
【請求項9】
複数のエンティティに対応する複数のノードの相互の出資関係および出資比率を示すエンティティネットワークを取得し、
前記複数のノードのうち特定ノードから直接的または間接的に結ばれる複数の上位ノードのそれぞれについて、前記特定ノードからの出資関係を辿った経路に付与されている1つ以上の出資比率に基づき前記特定ノードに対する前記出資比率を指標とした影響度を分析し、
前記影響度を分析する際に、前記影響度を分析する対象の分析対象ノードから結ばれる2つ以上の上位ノードのうち1つの上位ノードの出資比率が半分を超えている場合、当該出資比率が半分を超えている1つの上位ノードが前記分析対象ノードを実効的に支配していると分析する、情報処理方法。
【請求項10】
複数のエンティティに対応する複数のノードの相互の出資関係および出資比率を示すエンティティネットワークを取得し、
前記複数のノードのうち特定ノードから直接的または間接的に結ばれる複数の上位ノードのそれぞれについて、前記特定ノードからの出資関係を辿った経路に付与されている1つ以上の出資比率に基づき前記特定ノードに対する前記出資比率を指標とした影響度を分析し、
前記影響度を分析する際に、前記影響度を分析する対象の分析対象ノードから結ばれる2つ以上の上位ノードのうち1つの上位ノードの出資比率が半分を超えている場合、当該出資比率が半分を超えている1つの上位ノードが前記分析対象ノードを実効的に支配していると分析する、
処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、株式の保有比率を用いて、あるエンティティが、他のエンティティに対してどのような影響力を有しているかを数値化して評価する手法が知られている。エンティティとしては、例えば、国、企業、人等が挙げられる。
【0003】
あるエンティティが、他のエンティティに対して間接的に影響力を及ぼしている場合、持ち株比率を単純に積算して、上記の影響力を数値化する手法が、非特許文献1に提案されている。また、ネットワーク影響力指数(NPI:Network Power Index)を用いて、エンティティ間の影響力を数値化する手法が、特許文献1に提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Mizuno T, Doi S, Kurizaki S (2020) The power of corporate control in the global ownership network. PLoS ONE 15(8): e0237862. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0237862
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、複数のエンティティを結ぶエンティティネットワークが多層構造になっているような場合、持ち株比率を単純に乗算してエンティティ間の影響力を数値化する手法では、当該影響力を適正に評価することが難しい。また、NPIを用いてエンティティ間の影響力を数値化する手法でも、当該影響力を適正に評価することは難しい。例えば、NPIは独自の指標を採用していることから、NPIの値が「1」以外の場合、NPIの値とエンティティ間の影響度とがどのような関連性を有しているかを表すことは難しい。また、NPIを用いた手法では、エンティティネットワークの各エンティティのうち、あるエンティティを実質的に支配しているエンティティの影響度を分析することができない。
【0007】
本開示のいくつかの態様によれば、エンティティ間の影響度を適正に評価できる情報処理システム等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様における情報処理システムは、複数のエンティティに対応する複数のノードの相互の出資関係および出資比率を示すエンティティネットワークを取得する取得部と、前記複数のノードのうち特定ノードから直接的または間接的に結ばれる複数の上位ノードのそれぞれについて、前記特定ノードからの出資関係を辿った経路に付与されている1つ以上の出資比率に基づき前記特定ノードに対する前記出資比率を指標とした影響度を分析する分析部と、を備え、前記分析部は、前記影響度を分析する対象の分析対象ノードから結ばれる2つ以上の上位ノードのうち1つの上位ノードの出資比率が半分を超えている場合、当該出資比率が半分を超えている1つの上位ノードが前記分析対象ノードを実効的に支配していると分析する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】情報処理システムを含むシステムの構成例である。
【
図4】企業持ち株ネットワーク分析の説明図である。
【
図5B】従来のNPI算出の他の例を示す図である。
【
図6A】間接持ち株比率算出の一例を示す図である。
【
図6B】間接持ち株比率算出の他の例を示す図である。
【
図7】エンティティネットワークの一例を示す図である。
【
図8】間接持ち株比率を用いた影響度算出処理の一例を示す図である。
【
図12】間接持ち株比率の算出方法の一例を示す図である
【
図13】ボトムアップ法を用いた影響度算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図16】エンティティネットワークの他の例を示す図である。
【
図17】トップダウン法において出力されるノードの一例を示す図である。
【
図18】トップダウン法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図19A】変形例における間接持ち株比率算出の一例を示す図である。
【
図19B】変形例における間接持ち株比率算出の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態について図面を参照しつつ説明する。図面については、同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本開示の必須構成要件であるとは限らない。
【0011】
1.OSINTシステム
1.1 システム構成例
図1は、本実施形態に係る情報処理システム10を含むシステムの構成例である。本実施形態に係るシステムは、サーバシステム100および端末装置200を含む。ただし、情報処理システム10を含むシステムの構成は
図1の例に限定されず、一部を省略する、或いは他の構成を追加する等の種々の変形実施が可能である。例えば、
図1は、端末装置200として、端末装置200-1および端末装置200-2の2つを例示しているが、端末装置200の数はこれに限定されない。また、構成の省略や追加等の変形実施が可能である点は、後述する
図2や
図3においても同様である。
【0012】
本実施形態の情報処理システム10は、例えば、サーバシステム100に対応する。また、サーバシステム100は、コンピュータに対応する。ただし、本実施形態の手法はこれに限定されず、サーバシステム100と他の装置を用いた分散処理によって、情報処理システム10の処理が実行されてもよい。例えば、本実施形態の情報処理システム10は、サーバシステム100と端末装置200との分散処理によって実現されてもよい。以下、情報処理システム10がサーバシステム100である例について説明する。
【0013】
サーバシステム100は、1つのサーバであってもよいし、複数のサーバを含んでもよい。例えば、サーバシステム100は、データベースサーバおよびアプリケーションサーバを含んでもよい。データベースサーバは、後述するエンティティネットワーク等、種々のデータを記憶してもよい。アプリケーションサーバは、本実施形態に係る各種の処理を行ってもよい。上記の複数のサーバは、物理サーバであってもよいし、仮想サーバであってもよい。仮想サーバが用いられる場合、当該仮想サーバは1つの物理サーバに設けられてもよいし、複数の物理サーバに分散して配置されてもよい。以上のように、本実施形態におけるサーバシステム100の具体的な構成は種々の変形実施が可能である。
【0014】
端末装置200は、情報処理システム10を利用するユーザによって使用される装置である。端末装置200は、PC(Personal Computer)であってもよいし、スマートフォン等の携帯端末装置であってもよいし、他の装置であってもよい。
【0015】
サーバシステム100は、例えば、ネットワークを介して端末装置200-1および端末装置200-2と接続される。以下、複数の端末装置を相互に区別する必要がない場合、単に端末装置200と表記する。ネットワークは、例えば、インターネット等の公衆通信網であるものとして説明するが、LAN(Local Area Network)等であってもよい。
【0016】
本実施形態の情報処理システム10は、例えば公開情報を用いて、対象に関するデータの収集、分析等を行うOSINT(Open Source Intelligence)システムである。公開情報は、有価証券報告書や産業連関表、政府の公式発表、国や企業に関する報道等、広く公開されており、合法的に入手可能な種々の情報を含む。なお、本実施形態の情報処理システム10は、OSINTシステムには限定されない。
【0017】
サーバシステム100は、公開情報に基づいて、様々な属性を含むノードを生成する。ノードはエンティティを表す。エンティティは人であってもよいし、企業であってもよいし、国であってもよい。属性は、例えば、公開情報に基づいて決定される情報である。属性は、エンティティに関する情報および持ち株比率の情報を含む。属性は、国籍や事業分野、売り上げ、従業員数、ボードメンバー、取引品目等の種々の情報を含んでいていてもよい。
【0018】
所与のノードの属性に、他のノードとの関係性を含む属性がある場合、所与のノードと他のノードとが、向きを有するエッジによって連結される。例えば、所与のエンティティの株主に、他のエンティティが含まれるとする。この場合、他のエンティティに対応するノードと、所与のエンティティに対応するノードとの間が、持ち株比率を表すエッジによって連結される。エッジは、影響を受ける側から与える側への方向を有するエッジである。例えば、当該エッジは、出資される側から出資する側への方向を有するエッジである。
【0019】
本実施形態の手法では、サーバシステム100は、複数のエンティティを表す複数のノードが、属性に基づく向きを有するエッジによって連結されたネットワークであるエンティティネットワークを取得する。即ち、エンティティネットワークは有向グラフである。サーバシステム100は、エンティティネットワークに基づく分析を行い、分析結果を提示する処理を行う。例えば、端末装置200は、OSINTシステムが提供するサービスを利用するユーザによって使用される装置である。例えば、ユーザは、端末装置200を用いて何らかの分析をサーバシステム100(情報処理システム10)にリクエストする。サーバシステム100は、エンティティネットワークに基づく分析を行い、分析結果を端末装置200にレスポンスとして送信する。
【0020】
図2は、サーバシステム100の詳細な構成例を示すブロック図である。サーバシステム100は、例えば、処理部110、記憶部120および通信部130を含む。
【0021】
本実施形態の処理部110は、所定のハードウェアにより実現され得る。ハードウェアは、デジタル信号を処理する回路およびアナログ信号を処理する回路の少なくとも一方を含むことができる。例えば、ハードウェアは、回路基板に実装された1つ以上の回路装置や、1つ以上の回路素子によって構成され得る。回路装置としては、IC(Integrated Circuit)やFPGA(field-programmable gate array)等が適用され得る。1つ以上の回路素子は、例えば抵抗、キャパシター等である。
【0022】
処理部110は、1つ以上のプロセッサによって実現されてもよい。本実施形態のサーバシステム100は、例えば、情報を記憶するメモリと、メモリに記憶された情報に基づいて動作するプロセッサと、を含む。情報は、例えばプログラムと各種のデータ等である。プロセッサは、ハードウェアを含む。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等、各種のプロセッサを適用可能である。メモリは、SRAM(Static Random Access Memory)やDRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリであってもよいし、レジスタであってもよい。メモリは、ハードディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)等の磁気記憶装置であってもよいし、光学ディスク装置等の光学式記憶装置であってもよい。例えば、メモリはコンピュータによって読み取り可能な命令を格納しており、当該命令をプロセッサが実行することによって、処理部110の機能が処理として実現される。命令は、プログラムを構成する命令セットの命令でもよいし、プロセッサのハードウェア回路に対して動作を指示する命令であってもよい。
【0023】
図2の例の処理部110は、エンティティネットワーク取得部111、影響度算出部112および提示処理部113を含む。
【0024】
エンティティネットワーク取得部111は、エンティティネットワーク121を取得する取得部である。例えば、エンティティネットワーク取得部111は、公開情報に基づいてエンティティネットワーク121を生成してもよい。エンティティネットワーク取得部111は、生成したエンティティネットワーク121を、記憶部120に記憶する。エンティティネットワーク取得部111は、本実施形態の処理を実行する際に、記憶部120に記憶されたエンティティネットワーク121を取得する。
【0025】
エンティティネットワーク121の生成は、本実施形態に係る情報処理システム10とは異なる他のシステムにおいて行われてもよい。この場合、エンティティネットワーク取得部111は、通信部130を介して、他のシステムからエンティティネットワークを取得してもよい。
【0026】
エンティティネットワーク取得部111は、例えば、複数のエンティティが出資関係により結ばれるネットワークをエンティティネットワーク121として取得する。エンティティネットワーク121には、複数のエンティティが含まれる。各エンティティは、上述したように、それぞれノードを表す。ノードとノードとの間は、出資関係に基づき、エッジにより接続される。また、各エッジにはそれぞれ出資比率が付与されている。出資比率は、持ち株比率を表す。持ち株比率の情報も、上述した公開情報に基づき、得ることができる。
【0027】
影響度算出部112は、エンティティネットワーク121に基づいて、所与のエンティティに対する他のエンティティの影響度を算出する影響度算出処理を行う。影響度算出部112は、分析部に対応する。
【0028】
提示処理部113は、例えば、エンティティネットワーク121の各ノードの接続関係、エッジに付与された出資比率、および各ノードに対応した間接持ち株比率を示す提示画面を端末装置200に表示させる処理を行う。提示処理部113は、表示制御部に対応する。
【0029】
記憶部120は、処理部110のワーク領域であって、種々の情報を記憶する。記憶部120は、種々のメモリによって実現が可能である。メモリは、SRAMやDRAM、ROM、フラッシュメモリ等の半導体メモリであってもよい。メモリは、レジスタやハードディスク装置等の磁気記憶装置、光学ディスク装置等の光学式記憶装置であってもよい。
【0030】
記憶部120は、例えばエンティティネットワーク取得部111が取得したエンティティネットワーク121を記憶する。記憶部120は、本実施形態の処理に係る種々の情報を記憶可能である。
【0031】
通信部130は、ネットワークを介した通信を行うためのインターフェイスである。通信部130は、例えばアンテナ、RF(radio frequency)回路、およびベースバンド回路を含む。通信部130は、処理部110による制御に従って動作してもよいし、処理部110とは異なる通信制御用のプロセッサを含んでもよい。通信部130は、例えば、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)に従った通信を行うためのインターフェイスである。具体的な通信方式は、種々の変形実施が可能である。
【0032】
図3は、端末装置200の詳細な構成例を示すブロック図である。端末装置200は、処理部210、記憶部220、通信部230、表示部240および操作部250を含む。
【0033】
処理部210は、デジタル信号を処理する回路およびアナログ信号を処理する回路の少なくとも一方を含むハードウェアによって構成される。処理部210は、プロセッサによって実現されてもよい。プロセッサは、CPUやGPU、DSP等、各種のプロセッサを適用可能である。端末装置200のメモリに格納された命令をプロセッサが実行することによって、処理部210の機能が処理として実現される。
【0034】
記憶部220は、処理部210のワーク領域であって、SRAMやDRAM、ROM等の種々のメモリによって実現される。
【0035】
通信部230は、ネットワークを介した通信を行うためのインターフェイスである。通信部230は、例えばアンテナ、RF回路、およびベースバンド回路を含む。通信部230は、例えば、ネットワークを介して、サーバシステム100との通信を行う。
【0036】
表示部240は、種々の情報を表示するインターフェイスである。表示部240は、液晶ディスプレイであってもよいし、有機ELディスプレイであってもよいし、他の方式のディスプレイであってもよい。表示部240には、サーバシステム100の提示処理部1113からの制御に基づき、例えば、後述する提示画面等が表示される。
【0037】
操作部250は、端末装置200に設けられるボタン等であってもよい。表示部240と操作部250とは、一体として構成されるタッチパネルであってもよい。
【0038】
1.2 サービスの具体例
次にOSINTシステムである情報処理システム10によって提供されるサービスの具体例について説明する。以下、具体的なサービスとして、企業持ち株ネットワーク分析の例を説明する。
【0039】
図4は、企業持ち株ネットワーク分析を説明する図であり、出資関係を表すエンティティネットワークの一例である。
図4に示すように、公開情報に含まれる株主や出資比率を表す情報に基づいて、国や企業の出資関係を示すネットワークが形成される。
【0040】
影響度算出部112は、例えば、様々な国や企業が、他の企業に対して有している影響度を分析してもよい。この場合の影響度は、出資による支配力を表す。影響度算出処理の具体例については、後述する。
【0041】
例えば、特定の国が、所与の業種の企業に対して有している影響度を求めることによって、当該国が当該業種の製品供給をどの程度支配しているかを把握することが可能である。例えば、当該国で重大な事件が起こった場合に、その事件が製品の安定供給に与える影響を評価すること等が可能である。影響度算出部112は、世界的企業への国ごとの影響力を求めてもよい。これにより、国家間のパワーバランスを把握することが可能である。また、世界的企業への国ごとの影響力の時系列的な変化を求めることで、上記パワーバランスの推移を把握することも可能である。
【0042】
影響度算出部112は、所与の国のインフラストラクチャに関連する企業への、他の国の影響力を求めてもよい。インフラストラクチャに関連する企業は、電力等のエネルギー関連企業であってもよいし、移動通信網を提供する企業であってもよい。これにより、インフラストラクチャが機能を停止するリスクを評価することが可能になる。影響度算出部112は、軍事転用が可能な技術を有する企業への影響力を求めてもよい。これにより、安全保障上のリスクを検出することが可能になる。
【0043】
影響度算出部112は、国または企業が特定の行動を取ったときの影響度の変化を求めてもよい。例えば、所与の国の外交政策が転換されたと仮定した場合に、転換前後での影響度を求めることによって、当該外交政策が世界各国へ与える影響をシミュレーションすることが可能である。
【0044】
影響度算出部112は、企業持ち株ネットワーク分析を用いることによって、人手では検出が難しい複雑な出資関係に基づく影響度の分析が可能になる。
【0045】
近年、国家間、企業間、要人間の関係は、かつてないほどグローバルかつ複雑につながったネットワークとなっている。そのため、人手による上記の影響度の分析には限界がある。その点、上述したOSINTシステムでは、出資による企業支配を表すネットワーク等の分析が可能である。OSINTシステムでは、複雑な関係性を読み解くことが可能であるため、政府や企業が最適な戦略を立案すること等が可能になる。
【0046】
2.処理の詳細
以下、本実施形態における処理の詳細を説明する。本実施形態の手法は、狭義には企業持ち株ネットワーク分析である。ただし、本実施形態の手法は、企業持ち株ネットワーク分析以外の任意の手法に適用可能である。
【0047】
2.1 影響度算出の基本
ノード間の影響度を算出する手法について説明する。
図5Aは、従来のNPI算出の一例を示す図である。
図5Bは、従来のNPI算出の他の例を示す図である。
図5Aの例では、エンティティAの株式をエンティティB、エンティティCおよびエンティティDが保有している。エンティティBおよびエンティティCの持ち株比率は30%であり、エンティティDの持ち株比率は40%である。また、エンティティCの株式をエンティティBおよびエンティティEが保有している。エンティティBおよびエンティティEの持ち株比率はそれぞれ50%である。
【0048】
NPIを求める手法は、従来技術であるため、詳細な説明を省略するが、株主iの企業jに対するNPIは、以下の(1)の式で求められる。
【0049】
【数1】
以上の(1)の式を用いて、
図5AにおけるエンティティBのエンティティAに対するNPIは「2/3」として求められる。
【0050】
一方、
図5Bでは、エンティティBのエンティティCに対する持ち株比率は51%であるが、エンティティEのエンティティCに対する持ち株比率は49%である。この場合、エンティティBは、エンティティCを介して、エンティティAに対する影響力を持つため、上記のNPIは「1」として求められる。
【0051】
図5Bのように、NPIが「1」である場合、エンティティAをエンティティBが実効的に支配していることは分かる。しかしながら、
図5Aのように、NPIが「2/3」である場合、当該NPIの値がどの程度の影響力を有しているかを具体的に表すことは難しい。
【0052】
図6Aは、本実施形態の間接持ち株比率算出の一例を示す図である。
図6Bは、本実施形態の間接持ち株比率算出の他の例を示す図である。間接持ち株比率はISH(Indirect Shareholding)で表される。間接持ち株比率は、特定のエンティティに対する他のエンティティの直接的または間接的な影響度を、持ち株比率を用いて表す値である。
図6Aおよび
図6Bの例において、特定のエンティティをエンティティAとする。例えば、エンティティAは特定の企業である。
【0053】
本実施形態のエンティティネットワークは、NPIとは異なり、エンティティ間は影響を受ける側から与える側への方向を有するエッジにより結ばれる。
図6Aの例におけるエンティティAは、エンティティB、CおよびDに株式を保有されている。エンティティBのエンティティAに対する持ち株比率は30%である。エンティティCのエンティティAに対する持ち株比率は30%である。エンティティDのエンティティAに対する持ち株比率は40%である。
【0054】
エンティティCは、エンティティBおよびエンティティEに株式を保有されている。エンティティBのエンティティCに対する持ち株比率は50%である。エンティティEのエンティティCに対する持ち株比率も50%である。
【0055】
従って、エンティティBは、直接的にエンティティAに対して影響力を有しており、さらにエンティティCを介して間接的にエンティティAに対して影響力を有している。よって、エンティティBのエンティティAに対する間接持ち株比率ISHは45%(=30%+0.5×30%)となる。
【0056】
図6Bの例は、エンティティBのエンティティCに対する持ち株比率が51%であり、エンティティEのエンティティCに対する持ち株比率が49%である点で、
図6Aの例と異なる。
【0057】
図6Bの例において、エンティティCは、エンティティBおよびエンティティEに株式を保有されているが、エンティティBの持ち株比率は51%であり、過半数を超えている。持ち株比率が過半数を超えるエンティティ(例えば、企業)は、一般に、普通決議を単独で可決する権限を有し、支配株式となれる。このため、エンティティBは、エンティティCを実効的に支配すると分析できる。
【0058】
つまり、エンティティBのエンティティAに対する間接持ち株比率ISHは最大60%(=30%+1×30%)になると考えてもよい。厳密には、エンティティBのエンティティCに対する持ち株比率が「2/3」を超える場合は完全支配なので問題はないが、51%は「2/3」を超えていないため、エンティティCの持ち分30%が完全にエンティティBの思うままになるわけではない。このため、実効的にエンティティBはエンティティAの51%を支配していると考えるにとどめ、エンティティEのエンティティAに対する実質的な支配力を、エンティティDの40%、エンティティBの51%を引いた9%が残るというように計算する変形例も考えうる。しかしながら、エンティティBのエンティティAに対する影響力の脅威を多めに見積もる方が好ましいことが多いため、ここではエンティティBのエンティティAに対する間接持ち株比率ISHは最大60%として以下議論する。なお、上記の変形例については、改めて後述する。
【0059】
図5Aの例では、エンティティBのエンティティAに対するNPIは「2/3」である。しかしながら、NPIが「2/3」である場合、エンティティBのエンティティAに対する影響度がどのような意味合いを持つのかを表すことが難しい。
【0060】
一方、
図6Aの例では、エンティティBのエンティティAに対する間接持ち株比率ISHは45%である。間接持ち株比率ISHは、持ち株比率を指標として表される間接的な影響度も考慮した影響度を示す値である。つまり、エンティティBは、直接的または間接的に、エンティティAに対して「45%」という持ち株比率を指標とした影響度を有していると分析できる。例えば、OSINTシステムを利用するユーザや顧客は、NPIの値がどのような影響度を有しているかを直感的に理解することが難しい。一方、ユーザや顧客は、持ち株比率で表される影響度は直感的に理解しやすい。本実施形態の間接持ち株比率は、持ち株比率をベースとした影響度で表されるため、ユーザや顧客に対して、理解しやすい形で影響度を提示できる。
【0061】
図6Aおよび
図6Bは、エンティティの数が少ないエンティティネットワークを例示している。特に、エンティティの数が多く、且つ多層構造のエンティティネットワークでは、NPIを用いた手法を用いたとしても、特定のエンティティに対する他のエンティティの影響度を適正に表すことは難しい。
【0062】
一方、本実施形態の間接持ち株比率は、エンティティの数が多く、且つ多層構造のエンティティネットワークであっても、特定のエンティティに対する他のエンティティの影響度を適正に分析して、ユーザや顧客に理解しやすい形で表すことができる。また、多層構造のエンティティでは、特定のエンティティに対する究極の支配者のエンティティ(究極支配エンティティ)の他に、特定のエンティティを実質的に支配しているエンティティ(実質支配エンティティ)が存在する場合がある。NPIの手法では、実質支配エンティティ(例えば、直接株主)の影響度を分析することが難しい。これに対して、本実施形態の間接持ち株比率を用いた手法では、実質支配エンティティを分析することもできる。
【0063】
2.2 間接持ち株比率の算出の具体例
<エンティティネットワークの一例>
図7は、エンティティネットワークの一例を示す図である。
図7のエンティティネットワークの例には、ノード1~ノード13が含まれる。各ノードは、それぞれエンティティを表す。各ノードのうち2つのノードの間は、相互の出資関係に基づき、エッジで結ばれる。エッジの方向は、出資される側から出資する側へ向いている。
【0064】
また、各エッジには、それぞれ持ち株比率(出資比率)の情報が付与されている。各ノードの情報、各エッジの情報および各持ち株比率の情報は、例えば、上述した公開情報に基づき得ることができる。以上のようなエンティティネットワークが、
図2のエンティティネットワーク121として得られる。
【0065】
本実施形態の間接持ち株比率を用いて影響度を算出する手法では、影響度算出部112は、影響度の分析を行う特定ノードをボトムノードとして、当該ボトムノードから上位ノードに向けて、影響度を算出するための処理を行う。ボトムノードは、特定のノードに対応する。間接持ち株比率を用いて影響度を算出する手法は、ボトムアップ法とも称される。
【0066】
<ボトムアップ法を用いた影響度算出処理の一例>
図8~
図11は、間接持ち株比率を用いた影響度算出処理の一例を示す図である。以下、
図7のエンティティネットワークを用いた例について説明する。
【0067】
影響度算出部112は、最初に、スタックSおよび経路集合Pを初期化する。これにより、スタックSおよび経路集合Pは空集合になる。
【0068】
以下、エンティティネットワークに含まれる各ノードのうち、ノード1(ボトムノード)以外のノード2~ノード13のうち処理するノードを処理ノードとして説明する。処理ノードは、ボトムノードから直接的または間接的に結ばれるノードである。処理ノードは、分析対象ノードに対応する。
【0069】
スタックSには、ボトムノードであるノード1から処理ノードに至るまでの経路に付与された持ち株比率の情報を含む経路情報(重み付き経路)が格納される。スタックSは、重み付き経路の集合を格納するために用いられる。
【0070】
ノード1と処理ノードとが間接的に結ばれる場合、ノード1と処理ノードとの間には複数のエッジが存在する。また、ノード1と処理ノードとが直接的に結ばれる場合、ノード1と処理ノードとの間には1つのエッジが存在する。本実施形態では、ノード1と処理ノードとの間に存在する1つ以上のエッジを経路と称する。従って、経路は1つのエッジにより構成される場合もあり、複数のエッジにより構成される場合もある。
【0071】
経路集合Pは、スタックSからポップされた重み付き経路の集合を格納するために用いられる。影響度算出部112は、経路集合Pに格納された重み付き経路の集合を用いて、間接持ち株比率ISHを算出する。スタックSおよび経路集合Pは、例えば、記憶部120の一部の記憶領域を用いて実現される。
【0072】
影響度算出部112は、エンティティネットワークから、ボトムノード(特定ノード)であるノード1を取得する。そして、影響度算出部112は、ノード1から結ばれるノード2、ノード3およびノード4のそれぞれについての重み付き経路をスタックSに格納する。
【0073】
図8の例では、影響度算出部112は、ノード1からノード2に向かう経路の重み付き経路のエッジに持ち株比率の情報「0.3」を付与した重み付き経路をスタックSに格納する。影響度算出部112は、ノード1からノード3に向かう経路の重み付き経路、およびノード1からノード4に向かう経路の重み付き経路についても同様の処理を行い、各重み付き経路をスタックSに格納する。
図8は、持ち株比率が小数で表されている例を示しているが、持ち株比率はパーセントで表されてもよい。
【0074】
影響度算出部112は、ボトムノードまたは処理ノードの上位ノードに持ち株比率が50%を超えるノードがある場合、当該上位ノード以外の他の上位ノードを処理ノードについての処理対象から削除する。例えば、処理ノードに直接的に結ばれる複数の上位ノードのうち処理ノードの持ち株比率が50%を超える上位ノードが存在する場合、影響度算出部112は、当該上位ノードが処理ノードを実効的に支配していると分析する。
【0075】
この場合、影響度算出部112は、上記の複数の上位ノードのうち持ち株比率が50%を超える上位ノードの持ち株比率を、持ち株比率の最大値である「1」に書き換える。また、影響度算出部112は、当該上位ノード以外の1つ以上の上位ノードを処理ノードについての処理対象から削除する。影響度算出部112は、ボトムノードについても同様の処理を行う。
【0076】
図7の例では、ノード2、ノード3およびノード4のノード1に対する持ち株比率は何れも50%未満である。よって、影響度算出部112は、各ノードについてのノード情報をスタックSに格納する。スタックSには、
図8のF1で示される3つの重み付き経路が格納される。
【0077】
影響度算出部112は、スタックSに格納されている3つの重み付き経路のうち先頭の重み付き経路(ノード1からノード2に向かう重み付き経路)を取り出す。影響度算出部112は、エンティティネットワークから、処理ノードであるノード2の3つの上位ノード(ノード5、ノード6およびノード7)を取得する。
【0078】
ノード5、ノード6およびノード7のノード2に対する持ち株比率は何れも50%を超えていない。影響度算出部112は、ノード1からノード2までの重み付き経路に、ノード5、ノード6およびノード7をそれぞれ追加する。影響度算出部112は、ノード2からノード5、ノード6およびノード7のそれぞれに結ばれるエッジに対応する持ち株比率の情報を付与する。
【0079】
影響度算出部112は、
図8のF2に示すように、ノード1からノード5までの重み付き経路、ノード1からノード6までの重み付き経路、およびノード1からノード7までの重み付き経路をスタックSに格納する。スタックSに格納されているノード1からノード3までの重み付き経路およびノード1からノード4までの重み付き経路には変化はない。
【0080】
影響度算出部112は、スタックSの先頭に格納されているノード1からノード5までの重み付き経路を取り出す。影響度算出部112は、処理ノードから結ばれる1つ以上の上位ノードのうち持ち株比率が50%を超えている上位ノードがある場合には、当該上位ノードの持ち株比率を「1」に書き換える。また、影響度算出部112は、当該上位ノード以外の上位ノードをノード1についての処理対象から削除する。
【0081】
図7の例に示されるように、ノード5の上位ノードはノード10だけであり、持ち株比率は100%である。この場合、影響度算出部112は、ノード10がノード5を実効的に支配するノードであると分析して、ノード5からノード10までのエッジに持ち株比率「1」を付与する。そして、影響度算出部112は、ノード1からノード2およびノード5を経由してノード10までの経路の重み付き経路を経路集合Pに格納する。これにより、スタックSおよび経路集合Pは、
図8のF3に示される状態になる。
【0082】
影響度算出部112は、スタックSの先頭に格納されているノード1からノード6までの重み付き経路を取り出す。
図7の例では、ノード6はノード5と同様、ノード10に実効的に支配されているノードである。影響度算出部112は、ノード1からノード2およびノード6を経由してノード10までの経路の重み付き経路を経路集合Pに格納する。これにより、スタックSおよび経路集合Pは、
図8のF4に示される状態になる。
【0083】
影響度算出部112は、スタックSの先頭に格納されているノード1からノード7までの重み付き経路を取り出す。
図7の例に示されるように、ノード7からノード11、ノード12およびノード13にそれぞれエッジが結ばれている。これら3つの上位ノード(ノード11、ノード12およびノード13)のうち、ノード11のノード7に対する持ち株比率は50%を超えている。
【0084】
影響度算出部112は、取り出した重み付き経路にノード11を追加し、ノード7からノード11に結ばれるエッジの持ち株比率を「1」に書き換える。そして、影響度算出部112は、ノード1からノード2およびノード7を経由してノード11までの経路の重み付き経路を経路集合Pに格納する。また、影響度算出部112は、ノード12およびノード13をノード7についての処理対象から削除する。これにより、スタックSおよび経路集合Pは、
図8のF5に示される状態になる。
【0085】
図9は、
図8に続く図である。影響度算出部112は、スタックSの先頭に格納されているノード1からノード3までの重み付き経路を取り出す。
図7の例に示されるように、ノード3からノード2、ノード7およびノード8が結ばれているが、ノード2のノード3に対する持ち株比率は50%を超えている。
【0086】
影響度算出部112は、ノード3にノード2を追加し、ノード3からノード2に結ばれるエッジの持ち株比率を「1」に書き換える。そして、影響度算出部112は、ノード1からノード3を経由してノード2までの経路の重み付き経路を経路集合Pに格納する。また、影響度算出部112は、ノード7およびノード8をノード3についての処理対象から削除する。これにより、スタックSおよび経路集合Pは、
図9のF6に示される状態になる。
【0087】
影響度算出部112は、スタックSの先頭に格納されているノード1からノード3を経由してノード2までの重み付き経路を取り出す。
図7の例に示されるように、ノード2からノード5、ノード6およびノード7が結ばれているが、何れのノードもノード3に対する持ち株比率は50%を超えていない。
【0088】
影響度算出部112は、ノード1からノード3を経由してノード2までの重み付き経路にノード5、ノード6およびノード7を追加し、それぞれの持ち株比率を付与して、スタックSに格納する。これにより、スタックSおよび経路集合Pは、
図9のF7に示される状態になる。
【0089】
ノード5、ノード6およびノード7については、上述した処理と同様の処理が行われる。よって、スタックSに格納されているノード1からノード5までの経路の重み付き経路、ノード1からノード6までの経路の重み付き経路、およびノード1からノード7までの経路の重み付き経路は、経路集合Pに格納される。これにより、スタックSおよび経路集合Pは、
図9のF8に示される状態になる。
【0090】
図10は、
図9に続く図である。
図10のF9~F12において、経路集合Pに格納されている重み付き経路を図示していないが、
図9の例に示されるF8に対応する各重み付き経路が経路集合Pに格納されている。影響度算出部112は、上述した処理と同様の処理を行う。これにより、スタックSおよび経路集合Pは、
図10のF9~F11に示される状態になる。
【0091】
図11は、
図10に続く図である。
図11のF13~F14で、経路集合Pに格納されている重み付き経路を図示していないが、
図9の例に示されるF8に対応する各重み付き経路が経路集合Pに格納されている。
図11のF13で、影響度算出部112は、ノード1からノード2を経由してノード9に結ばれる経路の重み付き経路をスタックSから取り出す。そして、影響度算出部112は、当該重み付き経路を経路集合Pに格納する。これにより、スタックSは空になる。この時点で、影響度算出部112は、影響度算出処理を終了する。
【0092】
図12は、間接持ち株比率の算出方法の一例を示す図である。経路集合Pには、上述した処理により、9つの重み付き経路X1~X9が格納されている。影響度算出部112は、各重み付き経路X1~X9を用いて、間接持ち株比率ISHを算出する。
【0093】
ノード2のノード1に対する間接持ち株比率ISH(2、1)を算出する例について説明する。なお、間接持ち株比率ISH(2、1)のうち2はノード2を表し、1はノード1を表す。以下、同様の表記である。ノード1からノード2に結ばれる経路としては、X1~X3の経路とX4~X6の経路とがある。X1~X3の経路のうちノード1からノード2に至るまでの経路は同じである。X4~X6のうちノード1からノード2に至るまでの経路は同じである。
【0094】
X1~X3の経路は、ノード1からノード2に直接的に結ばれる経路である。当該経路におけるノード1からノード2に結ばれるエッジに付与された持ち株比率は「0.3」である。
【0095】
一方、X4~X6の経路では、ノード1からノード2にはノード3を介して間接的に結ばれている。ノード1からノード3に結ばれるエッジに付与された持ち株比率は「0.3」であり、ノード3からノード2に結ばれるエッジに付与された持ち株比率は「1」である。影響度算出部112は、間接的に結ばれる経路に付与された複数の持ち株比率を乗算する。この場合、乗算結果は「0.3(=0.3×1)」となる。
【0096】
影響度算出部112は、X1~X3についての経路の持ち株比率「0.3」に、X4~X6についての経路の持ち株比率「0.3」を加算する。これにより、影響度算出部112は、ノード2のノード1に対する間接持ち株比率ISH(2、1)を「0.6」として算出する。
【0097】
次に、ノード3のノード1に対する間接持ち株比率ISH(3、1)を算出する例について説明する。
図12の例の各重み付き経路X1~X9のうち、ノード1からノード2に結ばれる経路はX1~X3の経路のみである。従って、影響度算出部112は、ノード3のノード1に対する間接持ち株比率ISH(3、1)を「0.3」として算出する。
【0098】
他のノードについても同様である。これにより、影響度算出部112は、ボトムノードであるノード1から直接的または間接的に結ばれる全てのノードの間接持ち株比率ISHを算出する。
図12は、全てのノードについての間接持ち株比率ISHを示している。
【0099】
ここで、影響度算出部112は、間接持ち株比率ISHが所定の閾値を超えているノードを検出してもよい。所定の閾値は任意に設定可能である。例えば、所定の閾値が「0.5」に設定されている場合、影響度算出部112は、ノード2およびノード10を検出する。
【0100】
図7の例のエンティティネットワークに基づき、検出されたノード10が究極の支配力を持つノードであると判定できる。また、検出されたノード2は、各ノードのうち最も高い間接持ち株比率を示している。このため、検出されたノード2が、ノード1に対する実質的な支配力を持つノードであると判定できる。
【0101】
図13は、ボトムアップ法を用いた影響度算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。影響度算出部112は、経路集合PおよびスタックSを初期化する(ステップS101)。影響度算出部112は、ボトムノードから結ばれる各上位ノードおよび各経路に付与された持ち株比率を取得する(ステップS102)。ボトムノードをn
1としたとき、各上位ノードおよび各持ち株比率は、以下の(2)で表される。なお、ノードはn、持ち株比率はqを表す。
【0102】
【0103】
影響度算出部112は、ボトムノードから結ばれる各上位ノードのうち持ち株比率が50%を超えている上位ノードがあるかを判定する(ステップS103)。影響度算出部112は、ステップS103でYesと判定した場合、持ち株比率が50%を超えている上位ノードの持ち株比率を変更する処理および当該上位ノード以外の上位ノードを処理対象から削除する処理を行う(ステップS104)。具体的には、影響度算出部112は、持ち株比率を変更する上位ノードを変更対象上位ノードとして、以下の(3)の処理を行う。
【0104】
【0105】
影響度算出部112は、ステップS103でNoと判定した場合、処理をステップS105に進める。この場合、ステップS104の処理は行われない。
図7の例では、影響度算出部112は、ステップS103でNoと判定し、処理をステップ105に進める。
【0106】
影響度算出部112は、ボトムノードから上位ノードに向かうエッジに持ち株比率を付与した重み付き経路を生成する(ステップS105)。ステップS104の処理が行われた場合、生成される重み付き経路は1つである。重み付き経路は、以下の(4)で表される。
【0107】
【0108】
影響度算出部112は、ステップS105で生成された1つ以上の重み付き経路をスタックSにプッシュする(ステップS106)。影響度算出部112は、ステップS106の処理を行った後、処理を「A」から
図14のステップS107に進める。
【0109】
図14は、
図13に続くフローチャートである。影響度算出部112は、スタックSの先頭の重み付き経路を取得する(ステップS107)。取得された重み付き経路を重み付き経路xとする。重み付き経路xは、以下の(5)で表される。
【0110】
【0111】
影響度算出部112は、取得した重み付き経路xのうち最上位ノードnkに株主がいないかを判定する(ステップS108)。影響度算出部112は、ステップS108でYesと判定した場合、ステップS107で取得された重み付き経路xを経路集合Pにプッシュする(ステップS109)。この場合の最上位ノードnkは、究極支配エンティティに対応するノードである。その後、影響度算出部112は、処理をステップS116に進める。
【0112】
影響度算出部112は、ステップS108でNoと判定した場合、処理をステップS110に進める。影響度算出部112は、取得した重み付き経路xのうち最上位ノードnkを処理ノードとして、当該処理ノードnkから結ばれる1つ以上の上位ノードおよび当該上位ノードについての持ち株比率を取得する(ステップS110)。処理ノードnkから結ばれる1つ以上の上位ノードおよび当該上位ノードについての持ち株比率は、以下の(6)で表される。
【0113】
【0114】
影響度算出部112は、処理ノードnkから結ばれる各上位ノードのうち持ち株比率が50%を超えている上位ノードがあるかを判定する(ステップS111)。影響度算出部112は、ステップS111でYesと判定した場合、持ち株比率が50%を超えている上位ノードの持ち株比率を変更する処理および当該上位ノードを処理対象から削除する処理を行う(ステップS112)。具体的には、影響度算出部112は、持ち株比率を変更する上位ノードを変更対象上位ノードとして、以下の(7)の処理を行う。
【0115】
【0116】
影響度算出部112は、ステップS112の処理を行った場合、残った上位ノードおよび当該上位ノードの持ち株比率を、処理ノードnkから結ばれる1つ以上の上位ノードおよび当該上位ノードについての持ち株比率として書き換える。一方、影響度算出部112は、ステップS111でNoと判定した場合、処理をステップS113に進める。この場合、影響度算出部112は、処理ノードnkから結ばれる1つ以上の上位ノードおよび当該上位ノードについての持ち株比率を書き換えない。
【0117】
影響度算出部112は、循環ノードがあれば、当該循環ノードの除外処理を行う(ステップS113)。具体的には、影響度算出部112は、処理ノードn
kから結ばれる1つ以上の上位ノードのうちステップS107で取得された重み付き経路xがあれば、当該重み付き経路xを除外する。つまり、影響度算出部112は、上位ノードから下位ノードに向かう重み付き経路を除外する。
図7の例では、ノード13からノード4に結ばれる経路が除外される。
【0118】
循環ノードの除外処理について説明する。例えば、上位ノードYが下位ノードXの株式を保有しており、且つ下位ノードXが上位ノードYの株式を保有しているとする。上位ノードYの下位ノードXに対する持ち株比率をYqとし、下位ノードXの上位ノードYに対する持ち株比率をXqとする。この場合、上位ノードYの下位ノードXに対する間接持ち株比率は「Xq+Yq×Xq+Yq×Xq2+Yq×Xq3+・・・」として表される。
【0119】
上記のうち「Yq×Xq」は、YがXに支配される経路を介してYを支配するという支配力を表す。当該支配力が許容されると、処理がループするため、影響度算出部112が行う処理量が多くなる。このため、影響度算出部112は、循環ノードの削除処理を行う。
【0120】
影響度算出部112は、循環ノードがあれば、当該循環ノードを削除して、処理ノードnkから結ばれる1つ以上の上位ノードおよび当該上位ノードについての持ち株比率を書き換える。影響度算出部112は、循環ノードがなければ、処理ノードnkから結ばれる1つ以上の上位ノードおよび当該上位ノードについての持ち株比率を書き換えない。
【0121】
影響度算出部112は、処理ノードnkから結ばれる1つ以上の上位ノードに、ノードおよび持ち株比率を追加する(ステップS114)。これにより、重み付き経路xは、以下の(8)のように更新される。
【0122】
【0123】
影響度算出部112は、更新された重み付き経路xを経路集合Pにプッシュする(ステップS115)。影響度算出部112は、スタックSが空になったかを判定する(ステップS116)。影響度算出部112は、ステップS116でNoと判定した場合、処理をステップS107に戻す。影響度算出部112は、ステップS116でYesと判定した場合、処理をステップS117に進める。つまり、スタックSが空になるまで、ステップS107~ステップS116までの処理が行われる。
【0124】
影響度算出部112は、経路集合Pに格納されている各重み付き経路を取得して、エンティティネットワークのうちボトムノードに対する各ノードのそれぞれの間接持ち株比率ISHを算出する(ステップS117)。具体的には、影響度算出部112は、経路集合Pに格納されている全ての重み付き経路を取得し、取得した各重み付き経路の集合をP(nk)と定義する。
【0125】
そして、影響度算出部112は、ノードnkのノードn1に対する間接持ち株比率ISH(k、1)を以下の(9)の式を用いて算出する。
【0126】
【0127】
これにより、
図12の例に示されるような各間接持ち株比率ISHが得られる。影響度算出部112は、ステップS117の処理を行った後、ボトムアップ法を用いた影響度算出処理を終了させる。
【0128】
<提示処理>
以上のようにして、エンティティネットワークにおける各ノードの間接持ち株比率ISHが得られる。提示処理部113は、通信部130を介して、端末装置200の表示部240に、エンティティネットワークおよび間接持ち株比率を表示させてもよい。
【0129】
図15は、提示画面の一例を示す図である。提示処理部113は、エンティティネットワークの各ノード、各ノードの間を結ぶ経路に付与された持ち株比率および各ノードのそれぞれに間接持ち株比率ISHを付加した画面を生成する。そして、提示処理部113は、生成した画面を、端末装置200の表示部240に表示させる制御を行う。
【0130】
例えば、端末装置200を操作するユーザが、操作部250を用いて、間接持ち株比率の表示を要求する操作を行ったとする。操作部250が当該操作を受け付けると、処理部21は、間接持ち株比率の表示のリクエストを、通信部230を介して、サーバシステム100に送信する制御を行う。
【0131】
提示処理部113は、上記のリクエストを受信したことに応じて、上記の画面を生成する。そして、提示処理部113は、生成した画面をレスポンスとして端末装置200に送信して、端末装置200の表示部240に表示させる。これにより、端末装置200を操作するユーザに対して、エンティティネットワークの各ノードのノード1に対する影響度を視覚的に提示することができる。
【0132】
提示処理部113は、間接持ち株比率が所定の閾値以上である1つ以上のノードを強調表示した画面を端末装置200の表示部240に表示させてもよい。所定の閾値は任意の値に設定されてもよい。例えば、所定の閾値が「0.5」である場合、提示処理部113は、間接持ち株比率が「0.5」を超えているノード2およびノード10を強調表示した画面を生成してもよい。
【0133】
これにより、端末装置200を操作するユーザに対して、ノード1に対する影響度が高いノードの情報を良好な視認性で提示することができる。また、提示処理部113は、影響度が高いノードに対応する間接持ち株比率を強調表示してもよい。これにより、端末装置200を操作するユーザに対して、影響度が高いノードについての間接持ち株比率の情報を良好な視認性で提示することができる。ノードおよび間接持ち株比率の強調表示の態様は、
図15の画面例には限定されない。
【0134】
<支配伝搬を加味した影響度算出処理の一例>
次に、支配伝搬を加味した影響度算出処理について説明する。支配伝搬を用いる手法は、トップダウン法とも称される。影響度算出部112は、上述した間接持ち株比率を用いる手法(ボトムアップ法)に、支配伝搬を用いる手法(トップダウン法)を適用してもよい。
【0135】
図16は、エンティティネットワークの他の例を示す図である。
図16の例のエンティティネットワークは、ノード1~ノード16を含む。最上位ノードはノード1である。
図16の例のエンティティネットワークは、
図7の例のエンティティネットワークとは異なる。つまり、
図16の例のノード1~ノード13は、
図7の例のノード1~ノード13とは異なる。
【0136】
影響度算出部112は、最上位ノードから持ち株比率が所定値α以上のエッジを辿る複数のノードを取得していく。所定値αの範囲は「0<α<1」である。
図16の例のエンティティネットワークは、最上位ノードであるノード1に直接的または間接的に結ばれる複数の下位ノードを示している。
【0137】
最上位ノード(ノード1)に結ばれない下位ノードは、当該最上位ノードについてのトップダウン法の対象外である。例えば、ノード12はノード9にのみ結ばれており、間接持ち株比率は51%である。このため、ノード12の株式を保有している別のノードが存在するが、当該別のノードはノード1から直接的または間接的に結ばれるノードではない。このため、当該別のノードは、
図16の例には示されていない。
【0138】
例えば、上記の所定値αを「α≧0.5」とすると、
図16の例のエンティティネットワークのうち、ノード1に実効的に支配されている複数のノードを特定できる。例えば、「α=0.5」であるとする。
図16の例の各ノードのうち、持ち株比率が所定値α以上のエッジを辿る経路上に存在しないノードは、ノード7、ノード9、ノード10、ノード12およびノード13である。従って、影響度算出部112は、各ノードからノード7、ノード9、ノード10、ノード12およびノード13を除外して、それら以外の各ノードを取得する。
【0139】
一般に、エンティティネットワークを構成するエンティティ(ノード)の数は多く、その数が膨大な数になるケースが増えている。このため、上述した間接持ち株比率を用いた影響度算出処理を行う前に、支配伝搬を用いた手法により処理対象となるノードの数を削減することが望ましい。
【0140】
そこで、影響度算出部112は、トップダウン法により処理対象となるノードを絞り込んだ上で、ボトムアップ法を用いて影響度算出処理を行ってもよい。最上位ノードからの支配の伝搬力が弱いノードは影響度算出処理の対象から除外しても、影響度算出処理の精度に与える影響は少ない。影響度算出部112は、トップダウン法を用いて、エンティティネットワークの各ノードの中から処理対象を絞り込んでから、ボトムアップ法を用いて影響度算出処理を行う。これにより、影響度算出処理のための処理量を減らしつつ、高い精度で影響度算出処理を行うことができる。
【0141】
所定値αが大きくなりすぎると、エンティティネットワークから多くのノードが削減されるため、所定値αは0.5未満(αの最大値の半分未満)であることが好ましい。より好適には、αは「α=1/3」である。
【0142】
「α=1/3」の場合、エンティティネットワークから多くのノードが削減されることを抑制できるとともに、影響度算出処理のための処理量を減らす効果が低下することも抑制できる。
【0143】
例えば、
図16の例において所定値αが「α=0.5」であるとする。この場合、削減されるノードはノード7、ノード9、ノード10、ノード12、ノード13およびノード15である。従って、出力されるノードは、
図17の例の「α=0.5の場合」に示される各ノードになる。一方、
図16の例において所定値αが「α=1/3」であるとする。この場合、削減されるノードはノード15のみになる。従って、出力されるノードは、
図17の例の「α=1/3の場合」に示される各ノードになる。
図17の例の各ノードは、以下の
図18のフローチャートを実行した結果として得られる。
【0144】
以上のことから、「α=1/3」の場合における処理量の削減効果は、「α=0.5」の場合における処理量の削減効果よりも低くなるが、トップダウン法を適用しない場合よりも、処理量の削減効果は高い。
【0145】
図18は、支配伝搬を用いる手法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。影響度算出部112は、最上位の階層のノード集合を初期化する(ステップS201)。ここで、
図16に示されるように、エンティティネットワークの各ノードの階層におけるノードの集合をノード集合E
mとする。影響度算出部112は、ステップS201において、「m=1」および「flag=1」に設定する。flagは「0」または「1」の何れかの値になる。
【0146】
影響度算出部112は、次の階層(m+1番目の階層)のノード集合Em+1を空にする(ステップS202)。この場合、影響度算出部112は、「Em+1=φ」に設定する。
【0147】
影響度算出部112は、階層Emについて、階層Emの各要素であるノードに対応する会社(エンティティ)により、αを超える持ち株比率を持たれる会社(エンティティ)である、階層のm+1の候補ノードを取得する。(ステップS203)。具体的には、影響度算出部112は、以下の(10)で定義されるノードを取得して、ステップS203の処理を行う。(10)で定義されるノードが「階層のm+1の候補ノード」である。
【0148】
【0149】
影響度算出部112は、次に、階層Emまでの既出ノードを以下の(11)に従って計算する。(ステップ204)
【0150】
【0151】
影響度算出部112は、ステップS203で取得した階層のm+1の候補ノードからステップS204で取得した階層mまでの既出ノードを除外したノード集合をEm+1に追加する(ステップS205)。
【0152】
影響度算出部112は、mをインクリメントしてm=m+1とし、Emが空ならば、flag=0とする(ステップS206)。
【0153】
影響度算出部112は、flag=0であるかを判定する(ステップS207)。影響度算出部112は、ステップS207でNoと判定した場合、処理をステップS202に戻す。
【0154】
影響度算出部112は、flagが「0」である場合、ステップS207でYesと判定する。この場合、影響度算出部112は、以下のノード集合(12)を返す(ステップS208)。そして、影響度算出部112は、
図18のフローチャートを終了させる。
【0155】
【0156】
以上のように、影響度算出部112は、ボトムアップ法を用いて影響度算出処理を行う際に、トップダウン法を用いて処理対象のノードの数を削減することで、処理の効率化が図られる。
【0157】
次に、
図6Bを用いた説明した変形例について述べる。影響度算出部112は、所与のエンティティに対する他のエンティティの持ち株比率が「2/3」を超えている場合に、間接持ち株比率ISHの算出の手法を変えてもよい。
図19Aの例の場合では、エンティティBのエンティティCに対する持ち株比率は「50%」を超えているものの、当該持ち株比率は「2/3」を超えていない。この場合、影響度算出部112は、他のエンティティの間接持ち株比率も考慮して、エンティティBのエンティティAに対する間接持ち株比率ISHを算出してもよい。
図19Bの例の場合、影響度算出部112は、エンティティDの間接持ち株比率「40%」およびエンティティBの間接持ち株比率「51%」を引いた「9%」をエンティティEのエンティティAに対する間接持ち株比率ISHとして算出してもよい。
【0158】
図19Bの例の場合、エンティティBのエンティティCに対する持ち株比率は「80%」であり、当該持ち株比率は「2/3」を超えている。この場合、エンティティBはエンティティCを完全支配していると分析できる。従って、影響度算出部112は、
図6Bの例と同様、エンティティBのエンティティAに対する間接持ち株比率ISHを60%(=30%+1×30%)として算出してもよい。この場合、エンティティEのエンティティAに対する間接持ち株比率ISHは「0%」になる。
【0159】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本実施形態の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、各種の変形はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書または図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書または図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態および変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また情報処理システム、サーバシステム、端末装置等の構成および動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0160】
10…情報処理システム、100…サーバシステム、110…処理部、111…エンティティネットワーク取得部、112…影響度算出部、113…提示処理部、120…記憶部、121…エンティティネットワーク、130…通信部、200,200-1,200-2…端末装置、210…処理部、220…記憶部、230…通信部、240…表示部、250…操作部
【手続補正書】
【提出日】2022-04-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のエンティティに対応する複数のノードの相互の出資関係を出資される側の下位ノードから出資する側の上位ノードに向いたエッジで表すとともに当該エッジに出資比率が付与されたエンティティネットワークを取得する取得部と、
前記複数のノードのうち特定ノードから直接的または間接的に結ばれる複数の上位ノードのそれぞれについて、前記特定ノードから前記エッジで結ばれる出資関係を辿った経路に付与されている1つ以上の出資比率に基づき前記特定ノードに対する前記出資比率を指標とした影響度を算出する際に、前記影響度を算出する対象の対象ノードから結ばれる2つ以上の上位ノードのうち1つの上位ノードの出資比率が半分を超えている場合、当該出資比率が半分を超えている1つの上位ノードの前記対象ノードに対する出資比率を100%に書き換えてから、前記特定ノードから前記対象ノードに至るまでの経路に複数の出資比率がある場合、当該複数の出資比率を乗算し、前記特定ノードから前記対象ノードに至るまでに複数の経路がある場合、当該複数の経路のそれぞれの出資比率を加算した値を、前記対象ノードの前記特定ノードに対する前記出資比率を指標とした前記影響度として算出する分析部と、
を備える情報処理システム。
【請求項2】
前記分析部は、上位ノードから下位ノードに向かう経路を除外して前記影響度を算出する、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記分析部は、最上位ノードから直接的または間接的に結ばれる複数の下位ノードに至る複数の経路のうち、前記出資比率が所定値よりも大きい経路に絞って前記影響度を算出する、請求項1または2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記所定値は、前記出資比率の最大値の半分よりも小さい値である、請求項3に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記エンティティネットワークの各ノードのそれぞれに対応して、算出した前記影響度を示す値を付加した画面を表示装置に表示させる制御を行う表示制御部、
をさらに備える請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記影響度を示す値が所定の閾値以上である1つ以上のノードを強調表示させる制御を行う、請求項5に記載の情報処理システム。
【請求項7】
複数のエンティティに対応する複数のノードの相互の出資関係を出資される側の下位ノードから出資する側の上位ノードに向いたエッジで表すとともに当該エッジに出資比率が付与されたエンティティネットワークを取得し、
前記複数のノードのうち特定ノードから直接的または間接的に結ばれる複数の上位ノードのそれぞれについて、前記特定ノードから前記エッジで結ばれる出資関係を辿った経路に付与されている1つ以上の出資比率に基づき前記特定ノードに対する前記出資比率を指標とした影響度を算出する際に、前記影響度を算出する対象の対象ノードから結ばれる2つ以上の上位ノードのうち1つの上位ノードの出資比率が半分を超えている場合、当該出資比率が半分を超えている1つの上位ノードの前記対象ノードに対する出資比率を100%に書き換えてから、前記特定ノードから前記対象ノードに至るまでの経路に複数の出資比率がある場合、当該複数の出資比率を乗算し、前記特定ノードから前記対象ノードに至るまでに複数の経路がある場合、当該複数の経路のそれぞれの出資比率を加算した値を、前記対象ノードの前記特定ノードに対する前記出資比率を指標とした前記影響度として算出する、情報処理方法。
【請求項8】
複数のエンティティに対応する複数のノードの相互の出資関係を出資される側の下位ノードから出資する側の上位ノードに向いたエッジで表すとともに当該エッジに出資比率が付与されたエンティティネットワークを取得し、
前記複数のノードのうち特定ノードから直接的または間接的に結ばれる複数の上位ノードのそれぞれについて、前記特定ノードから前記エッジで結ばれる出資関係を辿った経路に付与されている1つ以上の出資比率に基づき前記特定ノードに対する前記出資比率を指標とした影響度を算出する際に、前記影響度を算出する対象の対象ノードから結ばれる2つ以上の上位ノードのうち1つの上位ノードの出資比率が半分を超えている場合、当該出資比率が半分を超えている1つの上位ノードの前記対象ノードに対する出資比率を100%に書き換えてから、前記特定ノードから前記対象ノードに至るまでの経路に複数の出資比率がある場合、当該複数の出資比率を乗算し、前記特定ノードから前記対象ノードに至るまでに複数の経路がある場合、当該複数の経路のそれぞれの出資比率を加算した値を、前記対象ノードの前記特定ノードに対する前記出資比率を指標とした前記影響度として算出する、
処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。