(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066322
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】開閉体緩衝装置、およびそれを用いた折戸装置
(51)【国際特許分類】
E05F 1/08 20060101AFI20230508BHJP
E05D 15/26 20060101ALI20230508BHJP
E06B 3/48 20060101ALI20230508BHJP
E05F 5/02 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
E05F1/08
E05D15/26
E06B3/48
E05F5/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177002
(22)【出願日】2021-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000137959
【氏名又は名称】株式会社ムラコシ精工
(74)【代理人】
【識別番号】100167863
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 恵
(72)【発明者】
【氏名】菊地 健
(72)【発明者】
【氏名】東 陽太
【テーマコード(参考)】
2E015
2E034
【Fターム(参考)】
2E015AA01
2E015BA10
2E015CA21
2E015DA02
2E015FA01
2E034JA01
2E034JB01
(57)【要約】
【課題】安価で、装置全体の意匠性を損なうことがない開閉体緩衝装置を提供する。
【解決手段】扉体2a、2bを閉じた状態或いは開いた状態に強制的に移動させるとともに、移動の衝撃を緩衝する開閉体緩衝装置10であって、開閉方向に延在する上ガイドレール4の所定の位置に取り付けられたクローザー40と、扉体2b側に取り付けられ、走行ローラー23が上ガイドレール4に沿って移動することで扉体2bが開閉方向へ移動する戸先側上金具20とを備え、戸先側上金具20には、当該戸先側上金具20が移動してクローザー40と重なる位置で、クローザー40と戸先側上金具20とが干渉しないように、クローザー40を戸先側上金具20の内側で通過させるクローザー用空間S1が設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉体を閉じた状態或いは開いた状態に強制的に移動させるとともに、移動の衝撃を緩衝する開閉体緩衝装置であって、
開閉方向に延在する上ガイドレールの所定の位置に取り付けられたクローザーと、
前記扉体側に取り付けられ、走行ローラーが前記上ガイドレールに沿って移動することで前記扉体が開閉方向へ移動する戸先側上金具とを備え、
前記戸先側上金具には、当該戸先側上金具が移動して前記クローザーと重なる位置で、前記クローザーと前記戸先側上金具とが干渉しないように、前記クローザーを前記戸先側上金具の内側で通過させるクローザー用空間が設けられていることを特徴とする開閉体緩衝装置。
【請求項2】
前記クローザー用空間は、底板部と、前記底板部の前後方向の端部からそれぞれ上側に起立する2つの側板部によって囲まれた内側に形成されており、前記側板部には、前後方向の外側に突出する回転軸に走行ローラーがそれぞれ取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の開閉体緩衝装置。
【請求項3】
前記走行ローラーの下側の位置は、前記底板部と同じ高さ、或いはそれよりも上側に位置することを特徴とする請求項2に記載の開閉体緩衝装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載した開閉体緩衝装置を、折戸に使用したことを特徴とする折戸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉体を閉じた状態或いは開いた状態に強制的に移動させるとともに、移動の衝撃を緩衝する開閉体緩衝装置、およびそれを用いた折戸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2枚の扉体を2つ折りにして開閉する折戸装置がある。この折戸装置に設けられる開閉体緩衝装置としては、ヒンジ内に弾性付勢部材を取り付け、その弾性力を利用して扉体を開閉方向に付勢して、扉体が完全に閉じた状態或いは開いた状態までこの付勢力で移動させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、引戸や開き戸で使用される開閉体緩衝装置を、折戸装置に流用して使用する技術もある(例えば、特許文献2参照)。このような引戸装置で使用される開閉体緩衝装置は、引戸の上部に設けられた走行ローラーおよびクローザー(補足引込機構)が、建屋側に設けられた上ガイドレールのレール内を開閉方向に移動するものである。また、クローザーには、引戸を開閉方向に付勢するための弾性ばねが設けられており、この付勢力で扉体を開閉方向へ移動させる(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-332633号公報
【特許文献2】特開2012-180640号公報
【特許文献3】特開2012-158957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1の技術では、ヒンジ内で回転力を与えるために強い付勢力が必要であり、また、繰り返し使用できるための耐久性が必要になる。これらを実現するためには、ヒンジ部の構造が複雑になるとともに、ヒンジ部を強固な構造にする必要があるため、安価に製作することが困難である。
【0006】
また、特許文献2の技術では、折戸の戸先側上金具が走行するための上ガイドレールの外側にクローザーを設ける必要がある。そのため、利用者からクローザーが視認できる状態にあり見栄えが悪い。また、取り付け作業もしづらい。
【0007】
さらに、特許文献3の技術を折戸装置に使用した場合、クローザーが開閉方向に長尺であるため、間口の小さな折戸装置には使用することができなかった。また、上ガイドレール内部の上側をクローザーが移動し、かつ、上ガイドレール内部の下側を走行ローラーが走行する構造であるため、利用者から視認される上ガイドレールの上下方向の長さが長くなり、意匠性を損なうことがある。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、安価で、装置全体の意匠性を損なうことがない開閉体緩衝装置を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述課題を解決するため、本発明は、扉体を閉じた状態或いは開いた状態に強制的に移動させるとともに、移動の衝撃を緩衝する開閉体緩衝装置であって、開閉方向に延在する上ガイドレールの所定の位置に取り付けられたクローザーと、前記扉体側に取り付けられ、走行ローラーが前記上ガイドレールに沿って移動することで前記扉体が開閉方向へ移動する戸先側上金具とを備え、前記戸先側上金具には、当該戸先側上金具が移動して前記クローザーと重なる位置で、前記クローザーと前記戸先側上金具とが干渉しないように、前記クローザーを前記戸先側上金具の内側で通過させるクローザー用空間が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、前記クローザー用空間は、底板部と、前記底板部の前後方向の端部からそれぞれ上側に起立する2つの側板部によって囲まれた内側に形成されており、前記側板部には、前後方向の外側に突出する回転軸に走行ローラーがそれぞれ取り付けられているようにしてもよい。
【0011】
さらに、前記走行ローラーの下側の位置は、前記底板部と同じ高さ、或いはそれよりも上側に位置するようにしてもよい。
【0012】
一方、本発明は、請求項1から請求項3のいずれか1つに記載した開閉体緩衝装置を、折戸に使用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る開閉体緩衝装置では、戸先側上金具が移動して前記クローザーと重なる位置で、前記クローザーと前記戸先側上金具が干渉しないように前記クローザーを内側で通過させるクローザー用空間が設けられているので、戸先側上金具の開閉方向への移動範囲を大きくすることができる。そのため、建屋側の開口の間口が狭いような場合であっても、扉体を引き込む長さを十分に確保した開閉体緩衝装置を取り付けることができる。
【0014】
また、クローザーと戸先側上金具が干渉しないように、クローザーの位置と戸先側上金具の走行する位置を上下に分けて構成する必要がない。そのため、上ガイドレールの上下方向の長さを短縮することができる。その結果、利用者から見て上ガイドレールを目立たないようにすることで、装置全体の意匠性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施の形態に係る開閉体緩衝装置が取り付けられた折戸装置を斜め上側から見た斜視図である。
【
図3】
図1において上ガイドレールを除いた状態を示す斜視図である。
【
図4】
図3から扉体を半分開いた状態を示す斜視図である。
【
図5】
図3および
図4から扉体を完全に開いた状態を示す斜視図である。
【
図6】戸先側上金具を左斜め上側から見た斜視図である。
【
図7】戸先側上金具を右斜め上側から見た斜視図である。
【
図8】(A)は戸先側上金具の平面図、(B)は(A)のB-B断面図である。
【
図9】(A)は吊元側上金具を左斜め上側から見た斜視図、(B)は右斜め上側から見た斜視図である。
【
図10】(A)は吊元側上金具の正面図、(B)は平面図、(C)は左側面図、(D)は右側面図である。
【
図13】本発明の変型例であって、開閉体緩衝装置を引戸に用いた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る開閉体緩衝装置について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る開閉体緩衝装置が取り付けられた折戸装置を斜め上側から見た斜視図、
図2は、
図1のA-A断面図である。
図3は、
図1において上ガイドレールを除いた状態を示す斜視図、
図4は、
図3から扉体を半分開いた状態を示す斜視図、
図5は、
図3および
図4から扉体を完全に開いた状態を示す斜視図である。なお、
図3~
図5は、説明を容易にするために上ガイドレールを除いて描いたものである。
【0017】
また、以下の説明で使用する「左側(戸開側)」「右側(戸閉側)」「前側(手前側)」「奥側」「上側」「下側」「前後」の方向は、
図1、
図3~
図5で示す方向をいうものとする。また、右側の端部を戸先側、左側の端部を吊元側という。
【0018】
折戸装置1は、
図1~
図5に示すように、2枚の扉体(第1扉体2a、第2扉体2b)を有しており、第1扉体2aの右上角部と、第2扉体2bの左上角部がヒンジ3によって連結されている。また、図示は省略しているが、2枚の扉体2a、2bの下側にも、上側と同様にヒンジによって連結されている。これらの2枚の扉体2a、2bは、
図3~
図5に示すように、利用者が第2扉体2bの戸先側を手前側に引く(或いは、利用者が後側から第2扉体2bの戸先側を前側に押す)ことでヒンジ3の位置が後側に移動して折りたたまれ、開いた状態になる。また、開いた状態から逆の動作をすることで、閉じた状態に移行する。
【0019】
図1および
図2に示す上ガイドレール4は、建屋側の開口の上端部に取り付けられており、扉体2a、2bの開閉方向(左右方向)に亘って連続して設けられている。上ガイドレール4の断面形状は、
図2に示すように、下側が開口するコ字形状に形成されている。この上ガイドレール4は、建屋側に取り付けられる上面部4aと、この上面部4aの前後からそれぞれ下側に延びる側面部4b、4bとで構成されている。
【0020】
また、側面部4b、4bの下側には、内側に向けて略水平に延びる転動面部4c、4cが設けられている。さらに、上面部4aには、下側に延びる2つの位置決め用壁部4d、4dが前後方向に間隔を空けて設けられている。なお、上ガイドレール4の断面形状は、前後方向においてほぼ対称に形成されている。
【0021】
上ガイドレール4の内部であって、この位置決め用壁部4d、4dに挟まれた領域には、詳細は後述するクローザー(補足引込機構)40が取り付けられている。このクローザー40は、上ガイドレール4の左右方向の所定の位置(
図1~
図5では、上ガイドレール4の左右の両端部)に間隔を空けて2つ取り付けられている。なお、このクローザー40、40は、それぞれ同じ構造のものであり、左側のクローザー40の左右の向きを反転させることで、右側のクローザーとして使用することができる。
なお、
図2に示すように、上ガイドレール4の上下方向の長さは、クローザー40の上下方向の長さとほぼ等しくなるように形成されている。
【0022】
また、上ガイドレール4の内部であって、位置決め用壁部4dと側面部4bに挟まれた領域には、詳細は後述する戸先側上金具20の走行ローラー23が配置され、この走行ローラー23が転動面部4c上を開閉方向に走行する。
【0023】
第2扉体2bの上側であって、左右方向のほぼ中央の位置には、戸先側上金具20が取り付けられている。この戸先側上金具20は、第2扉体2bに対して水平方向に回転自在に取り付けられており、第2扉体2bが開閉する動きに合わせて回転する。また、戸先側上金具20は、走行ローラー23によって上ガイドレール4の内部で開閉方向へ移動可能に構成されている。
【0024】
第1扉体2aの上側であって、左側の位置には、吊元側上金具30が取り付けられている。この吊元側上金具30も、戸先側上金具20と同様に、第1扉体2aに対して水平方向に回転自在に取り付けられており、第1扉体2aが開閉する動きに合わせて回転する。また、吊元側上金具30は、戸先側上金具20と異なり、上ガイドレール4の左端部に固定されて移動しないようになっている。
【0025】
本実施例では、開閉体緩衝装置10は、これらの戸先側上金具20、吊元側上金具30、およびクローザー40によって構成されている。
【0026】
図6は、戸先側上金具20を左斜め上側から見た斜視図、
図7は、戸先側上金具20を右斜め上側から見た斜視図である。また、
図8(A)は戸先側上金具20の平面図、(B)は(A)のB-B断面図である。
【0027】
戸先側上金具20は、板金を加工して形成されたランナー21と、このランナー21の下側に吊り下げられる態様で取り付けられた扉係合部25とで構成されている。
【0028】
ランナー21は、底面を構成する底板部21aと、この底板部21aの左側に位置し、底板部21aの前後の両端から上側にそれぞれ起立する左側板部21b、21bと、底板部21aの右側に位置し、底板部21aの前後の両端から上側にそれぞれ起立する右側板部21c、21cとを備えている。
【0029】
左側板部21b、21b、右側板部21c、21cには、前後方向の外側に向けて回転軸22がそれぞれ突出するように設けられており、この回転軸22には、それぞれ走行ローラー23が回転自在に取り付けられている。また、回転軸22の内側の端部は、左側板部21b、21b、右側板部21c、21cの内側面よりも内側に突出しないように組み付けられている。
【0030】
上述した構成により、底板部21a、左側板部21b、21b、右側板部21c、21cによって囲まれた内側部分には、
図6~
図8に示すように、クローザー用空間S1が形成される。このクローザー用空間S1の前後方向の間隔は、
図2に示すように、クローザー40の前後方向の幅寸法よりも広く形成されている。これにより、ランナー21が開閉方向に移動してクローザー40の位置に到達したとしても、このクローザー用空間S1内にクローザー40が入り込み、戸先側上金具20が走行する際にクローザー40を内側にして通過することで、クローザー40とランナー21とが同じ高さ位置で干渉しないようになっている。
【0031】
また、走行ローラー23は、
図2に示すように、クローザー40の前後方向の外側の位置で、上ガイドレール4の転動面部4cに支持されながら走行する。この走行ローラー23の下側(下端)の位置は、クローザー40、および、底板部21aの下側(下端)の位置とほぼ等しい高さ、或いは、それよりも上側になるようにしており、上ガイドレール4の高さ寸法が不必要に大きくならないようにしている。
【0032】
また、底板部21aの左側には、底板部21aの上面に被捕捉部材24が取り付けられている。この被捕捉部材24は、底板部21aに沿って左右方向に延びるベース部24aと、このベース部24aの左右の両端部にそれぞれ設けられた被係合部24bとで構成されている。
【0033】
ベース部24aは、リベット26によって、底板部21aに固定されている。被係合部24bは、
図8(B)に示すように、略L字状に上側に突出しており、詳細は後述するクローザー40の捕捉部材42(
図11および
図12参照)によって捕捉され、クローザー40によって戸先側上金具20が開閉方向のいずれかに引き込まれるようになる。
【0034】
扉係合部25は、第2扉体2bの上側中央部に埋め込まれる態様で取り付けられる。また、扉係合部25は、
図8(B)に示すように、底板部21aから下側に延在する回転軸27に水平方向に回転自在に取り付けられており、これにより第2扉体2bの移動に合わせて水平方向で自在に回動する。
【0035】
図9(A)は吊元側上金具30を左斜め上側から見た斜視図、(B)は右斜め上側から見た斜視図である。また、
図10(A)は吊元側上金具30の正面図、(B)は平面図、(C)は左側面図、(D)は右側面図である。
【0036】
吊元側上金具30は、上ガイドレール4の所定の位置に固定される固定部材31と、この固定部材31の下側に吊り下げられる態様で取り付けられた扉係合部25とで構成されている。
【0037】
固定部材31は、底面を構成する底板部31aと、この底板部31aの前後の両端から上側にそれぞれ起立する側板部31b、31bとを備えている。また、底板部31aと側板部31b、31bとの間には、ランナー21と同様に、
図9、
図10に示すように、クローザー用空間S2が形成される。このクローザー用空間S2は、クローザー用空間S1とほぼ同じ大きさであり、クローザー用空間S2の前後方向の間隔は、クローザー40の前後方向の幅寸法よりも広く形成されている。これにより、クローザー用空間S2内にクローザー40を収容した状態で、クローザー40とともに上ガイドレール4に取り付けられる。
【0038】
また、側板部31bの前後方向の外側には、調節部材32、32がそれぞれ取り付けられている。この調節部材32、32の前後方向の厚み寸法は、ランナー21の走行ローラー23の厚み寸法と同じであり、固定部材31を上ガイドレール4内に取り付けたときに、調節部材32が上ガイドレール4の側面部4bの内面と前後方向で接するようにしている。
【0039】
なお、調節部材32の下側の位置は、走行ローラー23と同様に、クローザー40、および、底板部21aの下側の位置とほぼ等しい高さ、或いは、それよりも上側になるように形成されている。
【0040】
扉係合部25は、戸先側上金具20で使用されるものと同じ構造であり、第1扉体2aの上側左端部に埋め込まれる態様で取り付けられ、第1扉体2aの移動に合わせて水平方向で自在に回動する。
【0041】
図11は、クローザー40の斜視図である。また、
図12は、クローザー40の断面を示す正面図である。なお、
図11および
図12に示すクローザーは、特許文献3で使用するものの向きを変えずにそのまま描いたものであるが、本発明では、クローザーの上下方向を逆にしてそのまま使用している。
【0042】
クローザー40は、扉体2a、2bの閉じ際にクローザー40の捕捉部材42が戸先側上金具20の被係合部24bを捕捉して、扉体2a、2bが完全に閉じた状態になるまで引き込むことで、扉体2a、2bが半開きの状態で放置されるのを防止するためのものである。同様に、開き際に被係合部24bを捕捉して、扉体2a、2bが完全に開いた状態になるようにするためのものである。また、扉体2a、2bを勢いよく閉じた(開いた)ときに、その衝撃を吸収し、緩やかに閉じた(開いた)位置まで移動するようにしている。
【0043】
このクローザー40は、従来(例えば、特許文献3参照)と同じ構造、機能を果たすものである。ただし、従来構造では、クローザー40を開閉方向へ走行させるための走行ローラーを設けているが、本発明ではクローザー40が上ガイドレール4に固定されているので、走行ローラーは設けられていない点が異なる。そのため、構造、機能に関する詳細な説明は省略し、以下に主要部分を簡略にして説明する。
【0044】
図11および
図12に示すように、クローザー40の本体部41の内部には、捕捉部材42を引き込むためのばね部材44と、扉体2a、2bの勢いを緩衝するためのダンパー43とが設けられている。捕捉部材42は、リンクピン42bがガイド孔41aに沿って移動することで上下に移動して、所定の位置でランナー21の被係合部24bを捕捉或いは捕捉を解除する。捕捉した状態では、ばね部材44の付勢力によって被係合部24b(戸先側上金具20)を引き込むとともに、ダンパー43によって引き込む方向への衝撃を吸収する。
【0045】
次に、本実施の形態に係る開閉体緩衝装置10の動作・作用について説明する。
本発明では、クローザー40を上ガイドレール4の所定の位置に固定しており、移動させない。そのため、従来の構造のように走行ローラーを設ける部分をなくすことで、クローザーの開閉方向の長さを短くすることができる。そのため、建屋の開口の間口が小さい場合であっても、開閉体緩衝装置10を取り付けることができる。
【0046】
また、上ガイドレール4に沿って開閉方向に戸先側上金具20が走行し、正面から見てクローザー40と戸先側上金具20とが重なる位置に到達したときに、戸先側上金具20のクローザー用空間S1内にクローザーが入り込む。そのため、クローザー40と戸先側上金具20とが干渉せずに、戸先側上金具20がクローザー40と同じ高さ位置で開閉方向に走行することができる。
【0047】
また、この戸先側上金具20の走行ローラー23は、クローザー用空間S1の前後方向の外側に配置されているので、戸先側上金具20が開閉方向に走行する際に、この走行ローラー23とクローザー40とが干渉することがない。また、走行ローラー23が外側に位置することによって、上ガイドレール4の高さ寸法をクローザー40の高さ寸法とほぼ等しい寸法にまで短縮することができる。詳細には、従来では、クローザー40と走行ローラー23が上下に配置されていたので、上ガイドレール4の高さ寸法は、クローザー40と走行ローラー23の高さ分の合計の寸法が必要であったが、それをクローザー40の高さ寸法と同等の長さに合わせることができるようになる。
【0048】
一方、一般的な折戸装置では、扉体の重心が前後方向に移動しながら開閉するという引戸装置にはない特有の課題があるため、扉体が前後方向に振れて安定しづらい。これに対し、本発明では、クローザー用空間S1を挟んで前後方向の外側に走行ローラー23をそれぞれ配置することで、前後方向の一対の走行ローラー23の距離を従来の距離より長く確保することができるので、一対の走行ローラー23を前後方向に配置することで、前後方向の安定性が向上する。
【0049】
本発明の実施の形態に係る開閉体緩衝装置によれば、開閉方向に延在する上ガイドレール4の所定の位置に取り付けられたクローザー40と、扉体2b側に取り付けられ、走行ローラー23が上ガイドレール4に沿って移動することで扉体2bが開閉方向へ移動する戸先側上金具20とを備え、戸先側上金具20には、戸先側上金具20が移動してクローザー40と重なる位置で、クローザー40と戸先側上金具20が干渉しないようにクローザー40を内側で通過させるクローザー用空間S1が設けられているので、戸先側上金具20の開閉方向への移動範囲を大きくすることができる。そのため、建屋側の開口の間口が狭いような場合であっても、扉体2bを引き込む長さを十分に確保した開閉体緩衝装置10を取り付けることができる。
【0050】
また、クローザー40と戸先側上金具20が干渉しないように、クローザー40の位置と戸先側上金具20の走行する位置を上下に分けて構成する必要がなく、同じ高さ位置でクローザー40と戸先用上金具20とを構成することができる。そのため、上ガイドレール4の上下方向の長さを短縮することができる。その結果、利用者から見て上ガイドレール4を目立たないようにすることで、装置全体の意匠性が向上する。
【0051】
また、クローザー用空間S1は、底板部21aと、底板部21aの前後方向の端部からそれぞれ上側に起立する2つの側板部21b、21cによって囲まれた内側に形成されており、側板部21b、21cには、前後方向の外側に突出する回転軸22に走行ローラー23がそれぞれ取り付けられているので、クローザー40の取り付け位置と戸先側上金具20が走行する位置を正面から見て互いに重なる位置で構成することができる。
【0052】
さらに、走行ローラー23の下側の位置は、底板部21aと同じ高さ、或いはそれよりも上側に位置するようにしているので、上ガイドレール4の高さ寸法を、クローザー40の高さ寸法とほぼ同じに構成することができる。そのため、上ガイドレール4の高さ寸法を短縮することができ、意匠性が向上する。
【0053】
一方、本発明の実施の形態に係る折戸装置では、上述した構成を有する開閉体緩衝装置10を、折戸に使用しているので、折戸装置1の全体の意匠性を向上させることができる。また、前後方向に位置する走行ローラー23の間隔が広くなるので、扉体2a、2bの重心が前後方向に移動するという折戸装置の特有の課題を克服し、前後方向における安定性を向上させることができる。
【0054】
以上、本発明の実施の形態に係る開閉体緩衝装置について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0055】
例えば、本実施の形態では、開閉体緩衝装置10を折戸装置1に使用しているが、
図13に示すように、引戸102を開閉方向に沿って移動させる一般的な引戸装置100にも使用することができる。これによれば、従来技術と比較して、上ガイドレール4の上下方向の寸法を短く構成することで、利用者から目視される上ガイドレールを目立たなくすることができる。これにより意匠性が向上する。
【符号の説明】
【0056】
1 折戸装置
2a 第1扉体
2b 第2扉体
3 ヒンジ
4 上ガイドレール
4a 上面部
4b 側面部
4c 転動面部
4d 位置決め用壁部
10 開閉体緩衝装置
20 戸先側上金具
21 ランナー
21a 底板部
21b 左側板部(側板部)
21c 右側板部(側板部)
22 回転軸
23 走行ローラー
24 被捕捉部材
24a ベース部
24b 被係合部
25 扉係合部
26 リベット
27 回転軸
30 吊元側上金具
31a 底板部
31b 側板部
32 調節部材
40 クローザー(補足引込機構)
41 本体部
41a ガイド孔
42 捕捉部材
42b リンクピン
43 ダンパー
100 引戸装置
102 引戸
S1、S2 クローザー用空間