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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066354
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】可搬パーテーション
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/74 20060101AFI20230508BHJP
   E04B 2/82 20060101ALI20230508BHJP
   E04G 21/32 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
E04B2/74 561Z
E04B2/74 541P
E04B2/82 501Z
E04B2/82 511Z
E04G21/32 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086219
(22)【出願日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2021176889
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000213851
【氏名又は名称】朝日機材株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591075630
【氏名又は名称】株式会社アクティオ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山添 大樹
(72)【発明者】
【氏名】三舩 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】成清 耕太朗
(72)【発明者】
【氏名】荒木 佑剛
(72)【発明者】
【氏名】森保 理恵
(72)【発明者】
【氏名】豊田 勝敏
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐太
(72)【発明者】
【氏名】海江田 孝
(72)【発明者】
【氏名】山田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 弘揮
(57)【要約】
【課題】密閉性を確保しつつ、高さや幅を調整できる可搬パーテーションを提供する。
【解決手段】可搬パーテーション10は、内部に空気が充填される可撓性の膜体で形成された少なくとも2本の柱部材32と、内部が柱部材32の内部と連通された可撓性の膜体で形成されると共に、一方の端部が一方の柱部材32の上端部と連結され、他方の端部が他方の柱部材32の上端部より横方向に突出して片持ちとされた梁部材34と、柱部材32及び梁部材34の長手方向に亘って着脱可能に接合され、粉塵の飛散を抑制可能なシート20と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空気が充填される可撓性の膜体で形成された少なくとも2本の柱部材と、
内部が前記柱部材の内部と連通された可撓性の膜体で形成されると共に、一方の端部が一方の前記柱部材の上端部と連結され、他方の端部が他方の前記柱部材の上端部より横方向に突出して片持ちとされた梁部材と、
前記柱部材及び梁部材の長手方向に亘って着脱可能に接合され、粉塵の飛散を抑制可能なシートと、
を備えた可搬パーテーション。
【請求項2】
前記柱部材の下端部には、前記柱部材を折り畳んだ状態で保持できる保持部材が取付け可能とされている、請求項1に記載の可搬パーテーション。
【請求項3】
前記シートにおいて前記柱部材に沿う一方の端辺には、前記柱部材に沿う他方の端辺と接合可能なファスナーが形成されている、
請求項1又は2に記載の可搬パーテーション。
【請求項4】
前記柱部材の下端部は、前記柱部材の内周面同士が接触するように内側へ折り込まれた状態で、有底の筒状に形成された保持部材へ挿入可能とされている、請求項1に記載の可搬パーテーション。
【請求項5】
前記柱部材の下端部の外周面には面ファスナーが上下方向に沿って固定され、
前記保持部材の内周面には、前記面ファスナーと着脱可能な面ファスナーが周方向に沿って固定されている、
請求項4に記載の可搬パーテーション。
【請求項6】
前記保持部材の底部には、前記柱部材を持ち上げ可能なエアジャッキが装着されている、
請求項4又は5に記載の可搬パーテーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬パーテーションに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、可撓性シートに可撓性チューブを貼着して形成されたパネルユニットによる防音・防塵構造が示されている。
【0003】
この防音・防塵構造では、縦方向に伸びる3本の柱部と、柱部を支持する3本の横桟部とが設けられている。また、これらの柱部及び横桟部には、空気が吹き込まれて円柱状に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-30046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の防音・防塵構造では、柱部及び横桟部が、枠状に形成される。このような枠状に配置された柱部及び横桟部が形成されていると、パネルユニットの高さや幅を調整し難い。
【0006】
例えば上記特許文献1には、パネルユニットの高さを短くする場合に、柱部の中間位置を紐で縛ることが記載されている。しかしながら、空気が送られない部分の横桟部や、この横桟部や柱に貼着された可撓性シートがだぶついて、密閉性を確保し難くなる可能性がある。すなわち、密閉性を確保しつつ、高さや幅を調整することが難しい。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して、密閉性を確保しつつ、高さや幅を調整できる可搬パーテーションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の可搬パーテーションは、内部に空気が充填される可撓性の膜体で形成された少なくとも2本の柱部材と、内部が前記柱部材の内部と連通された可撓性の膜体で形成されると共に、一方の端部が一方の前記柱部材の上端部と連結され、他方の端部が他方の前記柱部材の上端部より横方向に突出して片持ちとされた梁部材と、前記柱部材及び梁部材の長手方向に亘って着脱可能に接合され、粉塵の飛散を抑制可能なシートと、を備える。
【0009】
請求項1の可搬パーテーションは、膜体の柱部材、梁部材及びシートで形成される。柱部材及び梁部材は、内部に空気が充填されて形成される。このため、鋼製の足場などにシートを取付けて形成するパーテーションと比較して軽量であり、持ち運び易い。また、空気の圧力を調整することにより、天井と床との間で突っ張らせて保持できるため、設置が容易である。さらに、空気を抜けば持ち運びやすくできる。
【0010】
また、柱部材の下端部を巻上げて空気を充填すれば、パーテーション全体の高さを調整できる。さらに、梁部材の他方の端部が柱部材より横方向に突出して片持ちとされているため、この端部を巻込んで空気を充填すれば、パーテーション全体の幅を調整できる。
【0011】
また、シートが、柱部材及び梁部材の長手方向に亘って着脱可能に接合されている。こ
れにより、シートを接合しない状態で柱部材の下端部や梁部材の端部を巻けば、シートを接合した状態より巻きやすい。また、巻き取られないシートは、床面や壁面に沿って配置することができるため、密閉性を確保し易い。
【0012】
請求項2の可搬パーテーションは、請求項1に記載の可搬パーテーションにおいて、前記柱部材の下端部には、前記柱部材を折り畳んだ状態で保持できる保持部材が取付け可能とされている。
【0013】
請求項2の可搬パーテーションでは、柱部材の下端部を折り畳んだ状態で保持できる。これにより、パーテーション全体の高さを調整し易い。
【0014】
請求項3の可搬パーテーションは、請求項1又は2に記載の可搬パーテーションにおいて、前記シートにおいて前記柱部材に沿う一方の端辺には、前記柱部材に沿う他方の端辺と接合可能なファスナーが形成されている。
【0015】
請求項3の可搬パーテーションでは、ファスナー同士を接合させることで、可搬パーテーションを繋げて配置することができる。
【0016】
請求項4の可搬パーテーションは、請求項1に記載の可搬パーテーションにおいて、前記柱部材の下端部は、前記柱部材の内周面同士が接触するように内側へ折り込まれた状態で、有底の筒状に形成された保持部材へ挿入可能とされている。
【0017】
請求項4の可搬パーテーションでは、柱部材の下端部が、内周面同士が接触するように柱部材の内側へ折り込まれた状態で、有底で筒状の保持部材へ挿入可能とされている。これにより、柱部材の長さを短くできる。
【0018】
この場合、下端部を折り畳んで柱部材を短くする場合と比較して、柱部材の下端部の外形を、下端部「以外」の外形と同様に保持し易い。このため、保持部材へ挿入し易い。
【0019】
請求項5の可搬パーテーションは、請求項4に記載の可搬パーテーションにおいて、前記柱部材の下端部の外周面には面ファスナーが上下方向に沿って固定され、前記保持部材の内周面には、前記面ファスナーと着脱可能な面ファスナーが周方向に沿って固定されている。
【0020】
請求項5の可搬パーテーションでは、柱部材の下端部の外周面に、面ファスナーが上下方向に沿って固定されている。このため、柱部材の下端部を内側へ折り込んでも、面ファスナーが柱部材の外周面へ露出した状態が保持され易い。
【0021】
一方、保持部材の内周面には、面ファスナーが周方向に沿って固定されている。このため、柱部材の外周面に固定された面ファスナーと交差する。これにより、柱部材と保持部材とを固定し易い。
【0022】
請求項6の可搬パーテーションは、請求項4又は5に記載の可搬パーテーションにおいて、前記保持部材の底部には、前記柱部材を持ち上げ可能なエアジャッキが装着されている。
【0023】
請求項6の可搬パーテーションでは、保持部材の底部に、柱部材を持ち上げ可能なエアジャッキが装着されている。これにより、柱の高さを調整できる。すなわち、キャップ材から柱部材を抜いて、柱部材の下端部の折り込み長さを調整する手間をかけることなく、保持部材に柱部材を挿入したままで、柱の高さを調整できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の可搬パーテーションによると、密閉性を確保しつつ、高さや幅を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る可搬パーテーションを示す立断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る可搬パーテーションのシートを示す立断面図である。
図3】(A)は本発明の実施形態に係る可搬パーテーションのエアー体を示す立断面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図であり、(C)は(A)のC-C線断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る可搬パーテーションを横方向に連結した状態を示す立面図である。
図5】(A)は本発明の実施形態に係る可搬パーテーションを横方向に連結した状態を示す平面図であり、(B)は可搬パーテーションの交差する方向に配置した状態を示す平面図である。
図6】本発明の実施形態に係る可搬パーテーションの柱部材及び梁部材の長さを短くした状態で保持した状態を示す立面図である。
図7】(A)本発明の実施形態に係る可搬パーテーションを建物に設置した状態を示す断面図であり、(B)はシートの端部の配置を変えた変形例を示す断面図であり、(C)は梁部材の長さを短くした状態で建物に設置した状態を示す断面図である。
図8】(A)は本発明の実施形態に係る可搬パーテーションを横方向に連結した状態で梁部材同士が接して配置されるように形成した変形例を示す立面図であり、(B)は梁部材を連結部材で連結した変形例を示す立面図である。
図9】本発明の実施形態に係る可搬パーテーションにファスナーを追加した変形例を示す平面図である。
図10】本発明の実施形態に係る可搬パーテーションのエアー体の配置を反転した変形例を示す立面図である。
図11】(A)は本発明の実施形態に係る可搬パーテーションの保持部材をベルトで形成した変形例を示す部分拡大立面図であり、(B)は柱部材及び梁部材を巻いている状態を示す部分拡大立面図であり、(C)は柱部材及び梁部材をさらに巻いている状態を示す部分拡大立面図であり、(D)はベルトをバックルで固定した状態を示す部分拡大立面図である。
図12】(A)は本発明の実施形態に係る可搬パーテーションの柱部材の下端部を示す部分拡大断面図であり、(B)は柱部材の下端部を内側に折り返した状態を示す部分拡大断面図であり、(C)は折り返された状態の柱部材の下端部を保持部材へ挿入した状態を示す部分拡大断面図である。
図13】(A)は本発明の実施形態に係る可搬パーテーションの保持部材にエアジャッキを取付けた状態を示す立面図であり、(B)はエアジャッキが取付けられた保持部材に柱部材を挿入した状態を示す立面図であり、(C)はエアジャッキに空気を充填している状態を示す立面図である。
図14】本発明の実施形態に係る可搬パーテーションの柱部材の下端部に目盛りを形成した例を示す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係る可搬パーテーションについて、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0027】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0028】
各図において矢印X、Yで示す方向は水平面に沿う方向であり、互いに直交している。また、矢印Zで示す方向は鉛直方向(上下方向)に沿う方向である。各図において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0029】
<可搬パーテーション>
図1には、本発明の実施形態に係る可搬パーテーション(以下、パーテーションという)10が示されている。パーテーション10は、建物の解体工事などにおいて、解体に伴う粉塵が広範囲に飛散することを抑制するための養生壁である。また、パーテーション10は、塗装工事などにおいて、塗料の飛散を抑制するため等に用いることもできる。パーテーション10は、シート20及びエアー体30を用いて形成されている。
【0030】
(シート)
図2に示すように、シート20は、幅W1(例えばW1=3810[mm])、高さH1(例えばH1=3310[mm])の長方形に形成されている。シート20は、例えば塩ビ製とされ、粉塵の飛散を抑制可能な膜体であり、重量は約5[kg]とされている。
【0031】
シート20の両面にはファスナーG(ファスナーG1、G2、G3)が固定されている。なお、ファスナーGは、フック状に起毛された面ファスナー及びループ状に起毛された面ファスナーを互いに貼り合わせて用いられる接合用材料である。これらの面ファスナーは、着脱可能に貼り合わせることができる。
【0032】
なお、以下の説明においては、フック状に起毛された面ファスナー及びループ状に起毛された面ファスナーの2種類の面ファスナーの種別を特定しないで、これらをファスナーG1、G2、G3、…として説明する。また、これらのファスナーG1、G2、G3、…を総称して、ファスナーGと称す場合がある。
【0033】
互いに貼り合わされるファスナーGは、それぞれ、一方がフック状に起毛された面ファスナーであり、他方がループ状に起毛された面ファスナーである。以下の説明においては、互いに貼り合わされた一対のファスナーを、単にファスナーGと称す場合がある。
【0034】
シート20の一方の面(図2においては紙面奥側)には、シート20における幅方向の一方の端辺20E1に、上下方向に沿うファスナーG1が固定されている。また、シート20の他方の面(図2においては紙面手前側)には、幅方向の他方の端辺20E2に、上下方向に沿うファスナーG2が固定されている。
【0035】
なお、ファスナーG1、G2は、シート20にエアー体30が接合された状態で、後述する柱部材32(図1参照)に沿う方向に配置される。
【0036】
また、シート20の他方の面には、ファスナーG3が固定されている。ファスナーG3は、後述するエアー体30のファスナーG4(図3等参照)と貼り合わせられる面ファスナーである。
【0037】
ファスナーG1、G2及びG3は、それぞれの下端部が、シート20の下端部と、幅H2(例えばH2=300[mm])だけ離間して配置される。また、ファスナーG3は、上端部が、シート20の上端部と、幅H3(例えばH3=100[mm])だけ離間して配置される。
【0038】
(エアー体)
図3に示すように、エアー体30は、内部に空気が充填される可撓性の膜体で形成された袋状の構造体である。エアー体30は、柱部材32、梁部材34及び連結補強部材36を備えている。これらの柱部材32、梁部材34及び連結補強部材36は、以下に示すように互いに連通した状態で連結されており、空気が往来可能とされている。エアー体30の重量は、約7[kg]とされている。
【0039】
なお、エアー体30を形成する可撓性材料としては、ポリエステル等の編物、織物、不織布等の繊維基材の両面又は片面をポリ塩化ビニルやゴム等で被覆したターポリン、PVC(ポリ塩化ビニル)、PP(ポリプロピレン)、CSM(クロロスルフォン化ポリエチレン)等の各種の材料を用いることができる。
【0040】
柱部材32は、直径が約180[mm]の筒状(円柱状)に形成された長尺部材であり、本実施形態のエアー体30には、2本設けられている。柱部材32は、高さH4(例えばH4=3000[mm])とされている。
【0041】
なお、高さH4は、外力が加わらない状態でエアー体30の内部に充填された空気の圧力が、大気圧と等しい場合における寸法である。また、高さH4は、エアー体30を形成する膜体が弾性変形していない状態の寸法である。以下に示すエアー体30に関する各種の寸法も同様である。
【0042】
それぞれの柱部材32には、取っ手32Eが形成されている。取っ手32Eは、柱部材32の下端から高さH5(例えばH5=1500[mm])の位置に設けられている。取っ手32Eは、互いに隣り合う柱部材32において、対向する部分にそれぞれ設けられている。これらの取っ手32Eは、互いに間隔W3(例えばW3=1500[mm])で配置されている。
【0043】
梁部材34は、直径が約180[mm]の筒状(円柱状)に形成された長尺部材であり、一方の端部34Aが、一方(図3では右側)の柱部材32の上端部と連結されている。また、他方の端部34Bは、他方(図3では左側)の柱部材32の上端部より横方向に突出して片持ちとされている。梁部材34は、長さW2(例えばW2=3600[mm])とされている。
【0044】
なお、柱部材32は、梁部材34の端部及び梁部材34の長さ方向の中心部に接合されている。柱部材32の本数は、梁部材34の長さW2が長い場合などは、適宜増やすことができる。柱部材32は、梁部材34の長さ方向において、1800[mm]以内程度毎に設ければよい。
【0045】
連結補強部材36は、筒状(円柱状)に形成された長尺部材であり、両端部がそれぞれ柱部材32と連結されている。連結補強部材36は、下端部が柱部材32の下端から高さH6(例えばH6=1000[mm])の位置に配置されるように設けられている。
【0046】
連結補強部材36には、バルブ36Aが設けられている。バルブ36Aから連結補強部材36の内部へ空気を導入することにより、連結補強部材36、柱部材32及び梁部材34へ空気が充填される。
【0047】
(エアー体とシートとの連結構造)
柱部材32、梁部材34及び連結補強部材36には、それぞれの軸方向に沿って、ファスナーG4が固定されている。ファスナーG4を、図2に示すシート20のファスナーG3と貼り合わせることにより、図1に示すパーテーション10が形成される。シート20は、ファスナーG3、G4を貼り合わせたり剥がしたりすることにより、柱部材32及び梁部材34の長手方向に亘って着脱することができる。
【0048】
また、パーテーション10を横方向(X方向)に沿って複数並べる際には、シート20の端辺20E1と、隣に配置されるシート20の端辺20E2とを、ファスナーG1、G2を用いて貼り合わせる。
【0049】
これにより、図4に示すように、複数のパーテーション10が横方向に連結される。なお、各図においては、貼り合わされた状態のファスナーG1、G2及び貼り合わされた状態のファスナーG3、G4をファスナーGとして示している。
【0050】
この図に示されるように、パーテーション10を横方向に連結した状態において、それぞれのパーテーション10におけるエアー体30は、互いに離間して配置される。具体的には、互いに隣り合って配置されるエアー体30において、一方(図4では右側)のエアー体30の梁部材34と、他方のエアー体30の梁部材34(換言すると、柱部材32の上端部)との間には、隙間Vが形成される。
【0051】
この隙間Vが形成されることにより、図5(A)、(B)に示すように、パーテーション10の梁部材34同士を平面視で交差する方向に配置しても、梁部材34同士が干渉することが抑制されるため、梁部材34同士を任意の角度で配置し易い。
【0052】
(保持部材)
エアー体30は、柱部材32の下端部及び梁部材34の片持ち側の端部を、図3(A)に示す保持部材40に挿入して用いることができる。
【0053】
図3(A)、(C)に示すように、柱部材32の下端部及び梁部材34の片持ち側の端部には、ファスナーG5が固定されている。ファスナーG5は、柱部材32及び梁部材34において、ファスナーG4が固定された面と反対側の面と、ファスナーG4が固定された面と略90°で交差する2つの面と、の3面に固定されている。
【0054】
一方で、有底の筒状に形成されたキャップ状の保持部材40には、内周面にファスナーG6が固定されている。ファスナーG6は、保持部材の内周面の周方向に沿って固定されている。
【0055】
例えば柱部材32の下端部を、折り畳んだ状態や柱部材32の軸方向に沿って巻いた状態で、保持部材40に挿入する。これより、ファスナーG4及びG5と、ファスナーG6と、が貼り合わされる。これにより、柱部材32が、折り畳んだ状態または巻いた状態で保持される。
【0056】
同様に、例えば梁部材34の片持ち側の端部を、折り畳んだ状態や梁部材34の軸方向に沿って巻いた状態で、保持部材40に挿入する。これより、ファスナーG4及びG5と、ファスナーG6と、が貼り合わされる。これにより、梁部材34が、折り畳んだ状態または巻いた状態で保持される。
【0057】
このように、柱部材32及び梁部材34を折り畳んだ状態または巻いた状態で保持することにより、図6に示すように、柱部材32及び梁部材34は、任意の長さに縮めた状態でシート20に接合することができる。
【0058】
なお、図3(A)に示すように、柱部材32のファスナーG5は、柱部材32の下端部から連結補強部材36の下端部まで形成されている。梁部材34のファスナーG5は、梁部材34の片持ち側の端部から、柱部材32の接合箇所までの範囲における任意の位置まで形成することができる。柱部材32及び梁部材34は、ファスナーG5が形成された範囲において任意の長さに折り畳み、保持部材40に挿入して使用することができる。
【0059】
<作用及び効果>
本発明の実施形態に係るパーテーション10は、膜体の柱部材32及び梁部材34を含むエアー体30並びにシート20で形成される。柱部材32及び梁部材34は、内部に空気が充填されて形成される。
【0060】
このため、鋼製の足場などにシートを取付けて形成するパーテーションと比較して軽量であり、持ち運び易い。また、空気の圧力を調整することにより、床と天井との間で突っ張らせて保持できるため、設置が容易である。
【0061】
例えば図7(A)に示した状態では、パーテーション10を設置する建物の床から天井までの高さH7が、柱部材32の高さH4(図3参照)以下とされている。これにより、エアー体30に空気を充填すると、柱部材32が、床と天井との間で突っ張った状態で保持される。
【0062】
この状態で、柱部材32の下端部と床面との間にシート20の下端部を挟み、かつ、梁部材34と天井との間にシート20の上端部を挟めば、シート20を容易に保持できる。
【0063】
なお、図7(B)に示すように、シート20の下端部及び上端部は、柱部材32の下端部と床面との間及び梁部材34と天井との間で、挟まない構成としてもよい。この場合、例えばシート20の下端部には、めくれ上がり抑制のための錘WTなどを配置すると好適である。
【0064】
また、図7(C)に示すように、柱部材32の下端部を折り曲げて又は巻上げて、さらに保持部材40で折り曲げた状態又は巻き上げた状態を保持して空気を充填すれば、パーテーション10全体の高さを調整できる。
【0065】
また、エアー体30から空気を抜けば、エアー体30が床と天井との間で突っ張った状態が解除されるため、容易に撤去することができる。そして、撤去後に復旧作業などが必要ない。これに対して、例えばシートを床や天井に粘着テープなどを用いて貼り付けて形成するパーテーションでは、粘着テープなどを除去する作業が必要となる場合がある。
【0066】
さらに、図3に示すように、エアー体30は、梁部材34の端部34Bが柱部材32より横方向に突出して片持ちとされている。このため、この端部34Bを折り曲げたり巻き込んだりできる。そして図6に示すように、保持部材40で折り曲げた状態又は巻き上げた状態を保持して空気を充填すれば、パーテーション全体の幅を調整できる。
【0067】
また、シート20は、ファスナーGを用いてエアー体30と接合される。このため、シート20は、柱部材32及び梁部材34の長手方向に亘って着脱可能に接合されている。
【0068】
これにより、シート20を接合しない状態で柱部材32の下端部や梁部材34の端部を巻けば、シート20を接合した状態より巻きやすい。また、巻き取られないシート20は、建物の床面や壁面に沿って配置することができるため、密閉性を確保し易い。
【0069】
<その他の実施形態>
上記実施形態においては、シート20の端辺に固定されるファスナーG1、G2を、面ファスナーで形成しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えばこれらのファスナーG1、G2は、シッパーを用いて形成してもよい。また、パーテーション10を単体で用いる場合は、これらのファスナーG1、G2は省略してもよい。
【0070】
また、上記実施形態においては、図4及び図5に示したように、互いに隣り合って配置されるエアー体30において、一方のエアー体30の梁部材34と、他方のエアー体30の梁部材34との間には、隙間Vを設けている。
【0071】
しかし、本発明の実施形態においては、この隙間Vは必ずしも設けなくてもよい。例えば図8(A)に示すように、一方のエアー体30の梁部材34と、他方のエアー体30の梁部材34とを、接して配置してもよい。このように形成すると、梁部材34と天井との間に隙間が生じにくい。
【0072】
また、一方のエアー体30の梁部材34と、他方のエアー体30の梁部材34との間に隙間Vを設ける場合及び設けない場合に関わらず、図8(B)に示すように、連結部材38を用いて、これらの梁部材34を互いに連結してもよい。このような連結部材38を用いることで、梁部材34が撓むことを抑制できる。なお、梁部材34の撓みは、梁部材34と床との間に、突っ張り棒を配置して抑制してもよい。突っ張り棒は、エアー体30のように内部に空気を充填した中空の柱部材等を用いることが好適である。
【0073】
連結部材38は、例えば面ファスナーを用いて形成する。この場合、連結部材38は、一方の梁部材34におけるファスナーG5及び他方の梁部材34におけるファスナーG7と貼り合わせる。ファスナーG7は、連結部材38と貼り合わせるために設ける面ファスナーであり、梁部材34において、柱部材32と接合された端部の上面に固定される。
【0074】
このような連結部材38を設けることで、片持ち側の梁部材34の端部が固定されるため、梁部材34の自重による垂れを抑制できる。これにより、パーテーション10による気密性を向上させることができる。
【0075】
また、上記実施形態においては、図2に示すように、シート20の一方の面(図2においては紙面奥側)に、上下方向に沿うファスナーG1のみが固定されているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0076】
例えば図9に示すように、保持部材40を用いて梁部材34の長さを短くした状態で、パーテーション10を連結して使用するために、シート20のファスナーG1が固定された面には、シート20を畳んだ状態で保持するファスナーG8を形成してもよい。
【0077】
なお、図9では、ファスナーG8を、フック状に起毛された面ファスナー及びループ状に起毛された面ファスナーが組み合わされた状態で図示している。
【0078】
また、上記実施形態においては、図3に示すように、ファスナーG4を、柱部材32及び梁部材34の一方の面(図3では紙面奥側の面)のみに固定しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えばファスナーG4は、柱部材32及び梁部材34の他方の面(図3では紙面手前側の面)にも固定してもよい。
【0079】
これにより、図10(A)に示すように、エアー体30の向きを、図1に示された状態と水平方向に反転させた状態で用いることができる。図10(A)に示した状態のパーテーション10と、図1に示した状態のパーテーション10とをファスナーG1、G2を介して横方向に連結して用いることで、柱部材32の間隔を広く確保することができる。これにより、例えば作業用の出入口等を形成し易い。
【0080】
また、上記実施形態においては、柱部材32及び梁部材34を折り畳んだ状態または巻いた状態で保持する保持部材として、図3に示すように、筒状に形成された保持部材40を用いているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0081】
保持部材としては、保持部材40に代えて又は加えて、例えば図11(A)~(D)に示すベルト50を用いることができる。ベルト50は、図11(A)に示すように、例えば柱部材32及び梁部材34の少なくとも一方の下端部に固定される。
【0082】
図11(B)、(C)に示すように、ベルト50の両端部を柱部材32又は梁部材34から突出させた状態で、柱部材32又は梁部材34を巻き上げる。そして、図11(D)に示すように、柱部材32又は梁部材34の所望の長さが得られた段階で、ベルト50の両端部同士をバックル52で固定する。
【0083】
このように、ベルト50を用いれば、ファスナーG5が不要である。また、ベルト50を用いて柱部材32及び梁部材34を巻いた状態で保持する場合は、保持部材40は省略してもよい。
【0084】
保持部材40を省略すれば、パーテーション10を形成する材料を減らすことができる。一方、保持部材40を用いれば、巻いた状態の柱部材32及び梁部材34の端部の形状が整えられるため、パーテーション10を設置した場合の安定性が高くなる。
【0085】
このように、本発明において、柱部材32及び梁部材34を折り畳んだ状態または巻いた状態で保持する保持部材とは、有底の筒状に形成された保持部材40のみを用いる実施形態、保持部材40に「代えて」ベルト50のみを用いる実施形態、及び、保持部材40に「加えて」ベルト50を用いる実施形態を含むものとする。
【0086】
また、本発明において、保持部材40には、図12(A)~(C)に示すように、柱部材32の下端部を、柱部材32の内周面同士が接触するように内側へ折り込んだ状態で、挿入することができる。
【0087】
柱部材32の下端部は、図12(A)に示すように、エアー体30内部の空気がエアー体30の外部へ漏出しないように閉塞されている。このため、図12(B)に示すように、この閉塞された下端部を柱部材32の内側へ折り込むことで、外部へ空気が漏出しない状態を保持したまま、柱部材32の長さを変えることができる。なお、折り込むことによりエアー体30へ充填できる空気量が変わるため、エアー体30へ空気を完全に充填する前に、折り込みを実施することが好ましい。
【0088】
そして、図12(C)に示すように、柱部材32の内周面同士が接触するように内側へ折り込んだ状態で、柱部材32の下端部を保持部材40へ挿入することで、柱部材32の長さが短くされた状態を保持することができる。
【0089】
このように、柱部材32の下端部を内側へ折り込めば、先端を例えば蛇腹状に折り畳んで柱部材32を短くする場合と比較して、柱部材32の下端部の外形を、下端部「以外」の外形と同様に保持し易い。
【0090】
このため、柱部材32の下端部を保持部材40へ挿入し易い。また、図11に示したベルト50を用いる場合と比較して、柱部材32を任意の長さに調整し易い。なお、このように、先端を内側へ折り込んで長さを調整する実施形態は、梁部材34に適用してもよい。
【0091】
また、図3に示したように、柱部材32の下端部の外周面には、面ファスナーを用いて形成された複数のファスナーG5が上下方向に沿って固定されている。このため、例えば図6に示すように柱部材32の下端部を内側へ折り込んでも、ファスナーG5が柱部材32の外周面へ露出した状態が保持され易い。
【0092】
さらに、保持部材40の内周面には、ファスナーG5と着脱可能な面ファスナーであるファスナーG6が周方向に沿って固定されている。このため、ファスナーG6は、柱部材32の外周面に固定されたファスナーG5と交差する。これにより、柱部材32と保持部材40とを固定し易い。
【0093】
また、図13(A)~(C)に示すように、保持部材40の底部には、柱部材32を持ち上げ可能なエアジャッキ60を装着してもよい。エアジャッキ60を用いる場合は、例えば図13(B)に示すように、エアジャッキ60に空気を未充填または完全に充填していない状態で保持部材40へ柱部材32を挿入する。
【0094】
そして、エアー体30を床と天井との間に配置して、図13(C)に示すようにエアジャッキ60にコンプレッサーのホース62等を接続して空気を充填する。これにより、エアー体30が、床と天井との間で突っ張った状態で保持される。
【0095】
このように、エアジャッキ60を用いることで、柱部材32の高さを調整できる。すなわち、保持部材40から柱部材32を抜いて、柱部材32の下端部の折り畳み長さや折り込み長さを調整する手間をかけることなく、保持部材40に柱部材32を挿入したままで、柱部材32の高さを調整できる。
【0096】
なお、エアジャッキ60を用いるか否かに関わらず、柱部材32の先端部は、蛇腹状に折り畳んだ状態、図11(B)~(D)に示すように巻き上げた状態、または、図12(B)、(C)に示すように折り込んだ状態の何れかの状態で、保持部材40へ挿入することができる。あるいは、柱部材32の先端部は、図11(A)に示すように折り畳み、巻き上げ及び折り込みの何れも実施しない状態で、保持部材40へ挿入してもよい。
【0097】
また、上記各実施形態においては、柱部材32及び梁部材34を保持する保持部材を備えているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えばパーテーション10は、このような保持部材を備えない構成とすることもできる。
【0098】
パーテーション10に保持部材を省略しても、エアー体30に空気を充填すると、柱部材32が、床と天井との間で突っ張った状態で保持される。エアー体30は、可撓性の膜体で形成されているため、パーテーション10を設置する建物の床から天井までの高さH7が、柱部材32の高さH4より大きくても、柱部材32が上下方向に膨張して、床と天井との間で突っ張った状態で保持される。
【0099】
また、図14に示すように、柱部材32の先端には、目盛り70を形成してもよい。目盛り70は、天井高を示す定規である。目盛り70の形成方法は任意であるが、一例として、次の方法が挙げられる。
【0100】
図14に示す例では、天井高がH1、保持部材40の高さがH3である。柱部材32において、保持部材40の上端部が配置される位置、すなわち、天井面からの距離がH2(H2=H1-H3)の位置には、目盛り70を示す横線と共に「H1」と記載されている。
【0101】
これにより、柱部材32の先端部を折り畳んだり折り込んだりした後に柱部材32を保持部材40へ挿入する際に、適切な挿入深さを把握できる。挿入深さを適切にできれば、柱部材32と保持部材40とはファスナーG5、G6により固定されるため、高さを保持することができる。
【符号の説明】
【0102】
10 可搬パーテーション
20 シート
32 柱部材
34 梁部材
40 保持部材
50 ベルト(保持部材)
G1 ファスナー
G2 ファスナー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14