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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066407
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】コンテキストに基づく目標物検出
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/32 20060101AFI20230508BHJP
   G01S 7/35 20060101ALI20230508BHJP
【FI】
G01S7/32 220
G01S7/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022172078
(22)【出願日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】17/512,984
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】599158797
【氏名又は名称】インフィニオン テクノロジーズ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Infineon Technologies AG
【住所又は居所原語表記】Am Campeon 1-15, 85579 Neubiberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アジャヤン ネア
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ ロジェ
(72)【発明者】
【氏名】マークス ビヒル
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド アディソン
(72)【発明者】
【氏名】ダイソン ウィルケス
(72)【発明者】
【氏名】ムスタファ エマラ
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB17
5J070AC02
5J070AC06
5J070AD02
5J070AD06
5J070AD13
5J070AH12
5J070AH25
5J070AH31
5J070AH35
5J070AK40
5J070BA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】2D CFAR検出器は実装が高価となることが多い。
【解決手段】受信信号に基づくサンプリング値がメモリアレイの行および列に記憶される。第1の1次元(1D)検出器は第1の方向にメモリアレイ上を移動する。第1の1D検出器は、第1の被試験セルと第1の被試験セルの両側に配置された第1のトレーニングセルおよび第2のトレーニングセルとを含む。第1の1D検出器の第1の被試験セルならびに第1のトレーニングセルおよび第2のトレーニングセルは、第1の方向にアライメントされている。第2の1D検出器はメモリアレイ上を移動する。第2の1D検出器は第2の被試験セルと第2の被試験セルの両側に配置された第3のトレーニングセルおよび第4のトレーニングセルとを含む。第2の1D検出器の第2の被試験セルならびに第3のトレーニングセルおよび第4のトレーニングセルは第1の方向に対して垂直な第2の方向にアライメントされている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の1次元(1D)検出器を第1の方向にメモリアレイ上で移動させるステップであって、前記第1の1D検出器は、第1の被試験セルと、前記第1の被試験セルの両側に配置された第1のトレーニングセルおよび第2のトレーニングセルと、を含み、前記第1の1D検出器の前記第1の被試験セルならびに前記第1のトレーニングセルおよび前記第2のトレーニングセルは、前記第1の方向にアライメントされているステップと、
第2の1次元(1D)検出器を前記メモリアレイ上で移動させるステップであって、前記第2の1D検出器は、第2の被試験セルと、前記第2の被試験セルの両側に配置された第3のトレーニングセルおよび第4のトレーニングセルと、を含み、前記第2の1D検出器の前記第2の被試験セルならびに前記第3のトレーニングセルおよび前記第4のトレーニングセルは、前記第1の方向に対して垂直な第2の方向にアライメントされているステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の1D検出器と前記第2の1D検出器とは、前記メモリアレイの種々の位置上を同時に移動する、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の1D検出器は、第1の時間間隔にわたり、第1の移動経路に従って前記メモリアレイの種々の位置上を移動し、
前記第2の1D検出器は、前記第1の時間間隔よりも遅い第2の時間間隔にわたり、前記第1の移動経路に従って前記メモリアレイの種々の位置上を移動する、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記第1の1D検出器が前記第1の時間間隔中に前記メモリアレイの第1の位置に対応する場合、前記第1の1D検出器は、前記第1の被試験セルに対応する第1の受信電力レベルと前記第1のトレーニングセルおよび前記第2のトレーニングセルに対応する第2の受信電力レベルとの間の第1の比較を行い、
前記第1の1D検出器は、前記第1の比較に基づいて予備決定を形成する、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記第2の1D検出器が前記第2の時間間隔中に前記メモリアレイの前記第1の位置に対応する場合、前記第2の1D検出器は、前記第2の被試験セルに対応する第3の受信電力レベルと前記第3のトレーニングセルおよび前記第4のトレーニングセルに対応する第4の受信電力レベルとの間の第2の比較を行い、
前記第2の1D検出器は、前記予備決定および前記第2の比較に基づいて改訂決定を形成する、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記第1の1D検出器は、第1の時間間隔中に第1の移動経路に従って前記メモリアレイの種々の位置上を移動し、
前記第2の1D検出器は、前記第1の時間間隔と重ならない第2の時間間隔にわたり、前記第1の移動経路とは異なる第2の移動経路に従って前記メモリアレイの種々の位置上を移動する、
請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記第1の被試験セルは、第1の時点で、第1のメモリ位置から第1のサンプル値を読み出し、
前記第2の被試験セルは、前記第1の時点よりも後の第2の時点で、前記第1のメモリ位置から前記第1のサンプル値を読み出す、
請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記第1の1D検出器が第1の1D検出器メモリにビット値を出力し、前記ビット値は、前記第1の被試験セルに対応する第1のサンプル値が閾値よりも大きい場合に第1の状態をとり、前記閾値は、前記第1のトレーニングセルおよび前記第2のトレーニングセルに対応する受信電力レベルに基づく、
請求項1記載の方法。
【請求項9】
受信信号を受信するように構成された受信機と、
前記受信機に結合されており、前記受信機からのサンプリング値を自身の行および列に記憶するように構成されたメモリと、
行に対応する第1の方向に沿って配向された第1の被試験セルおよび第1のトレーニングセルを含む第1の1次元(1D)検出器と、
前記第1の方向に対して垂直な、列に対応する第2の方向に沿って配向された第2の被試験セルおよび第2のトレーニングセルを含む第2の1D検出器と、
を備えるシステム。
【請求項10】
前記第1の1D検出器および前記第2の1D検出器は、メモリアレイの種々の位置上を同時に移動する、
請求項9記載のシステム。
【請求項11】
前記第1の1D検出器は、第1の時間間隔にわたり、第1の移動経路に従って前記メモリアレイの種々の位置上を移動し、
前記第2の1D検出器は、前記第1の時間間隔よりも遅い第2の時間間隔にわたり、前記第1の移動経路に従って前記メモリアレイの種々の位置上を移動する、
請求項10記載のシステム。
【請求項12】
前記第1の1D検出器が前記第1の時間間隔中に前記メモリアレイの第1の位置に対応する場合、前記第1の1D検出器は、前記第1の被試験セルに対応する第1の受信電力レベルと前記第1のトレーニングセルに対応する第2の受信電力レベルとの間の第1の比較を行い、
前記第1の1D検出器は、前記第1の比較に基づいて予備決定を形成する、
請求項11記載のシステム。
【請求項13】
前記第2の1D検出器が前記第2の時間間隔中に前記メモリアレイの前記第1の位置に対応する場合、前記第2の1D検出器は、前記第2の被試験セルに対応する第3の受信電力レベルと前記第2のトレーニングセルに対応する第4の受信電力レベルとの間の第2の比較を行い、
前記第2の1D検出器は、前記予備決定および前記第2の比較に基づいて改訂決定を形成する、
請求項12記載のシステム。
【請求項14】
前記第1の1D検出器は、第1の時間間隔中に、第1の移動経路に従って前記メモリアレイの種々の位置上を移動し、
前記第2の1D検出器は、前記第1の時間間隔と重ならない第2の時間間隔にわたり、前記第1の移動経路とは異なる第2の移動経路に従って前記メモリアレイの種々の位置上を移動する、
請求項9記載のシステム。
【請求項15】
送信信号を送信するように構成された送信機と、
前記送信信号に基づく受信信号を受信するように構成された受信機と、
前記受信機に結合されており、レンジビンおよびドップラービンに従って前記受信信号に基づいてレーダーサンプルを記憶するように構成されたメモリと、
前記レンジビンおよび前記ドップラービンに記憶された前記レーダーサンプルに基づいて予備目標物決定を形成するように構成された第1の1次元一定誤警報確率(1D CFAR)検出器と、
前記予備目標物決定に基づいて改訂目標物決定を形成するように構成された第2の1D CFAR検出器と、
を備えたレーダーシステム。
【請求項16】
前記第1の1D CFAR検出器は、目標物が第1のレンジビンと第1のドップラービンとの交点に存在するか否かの予備決定を第1の時点で形成し、
前記第2の1D CFAR検出器は、前記予備決定に基づいて、前記目標物が前記第1のレンジビンと前記第1のドップラービンとの交点に存在するか否かを示す改訂目標物決定を前記第1の時点後の第2の時点で形成する、
請求項15記載のレーダーシステム。
【請求項17】
前記第1の1D CFAR検出器および前記第2の1D CFAR検出器は、同時に前記メモリアレイを通過し、同じ移動経路に従って前記メモリ内の前記レーダーサンプルを評価して前記メモリを読み出す、
請求項16記載のレーダーシステム。
【請求項18】
レンジビンおよびドップラービンに従ってアレイにレーダーサンプルを記憶するステップであって、前記レンジビンが前記アレイの行に対応しかつ前記ドップラービンが前記アレイの列に対応するか、または、逆に前記ドップラービンが前記アレイの行に対応しかつ前記レンジビンが前記アレイの列に対応するステップと、
第1の1次元(1D)一定誤警報確率(1D CFAR)検出器を移動させて、前記アレイの第1の列に沿った第1の方向でレーダーサンプルを評価するステップであって、前記第1の1D CFAR検出器は、前記第1の方向にアライメントされた第1の被試験セルおよび第1のトレーニングセルを有するように配向されているステップと、
前記第1の1D CFAR検出器が前記アレイの第1の列に沿って移動している間、同時に第2の1D CFAR検出器を移動させて、前記アレイの第2の列に沿って前記レーダーサンプルを評価するステップであって、前記第2の1D CFAR検出器は、前記第1の方向に対して垂直な、前記アレイの行に対応する第2の方向にアライメントされた第2の被試験セルおよび第2のトレーニングセルを有するように配向されているステップと、
を含む方法。
【請求項19】
前記第1の1D CFAR検出器は、目標物が第1のレンジビンと第1のドップラービンとの交点に存在するか否かの予備決定を第1の時点で形成し、
前記第2の1D CFAR検出器は、前記予備決定に基づき、前記第1の時点後の第2の時点において、目標物が前記第1のレンジビンと前記第1のドップラービンとの交点に存在するか否かを示す改訂決定を形成する、
請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記予備決定は、前記目標物を正確に検出するための第1の精度を有し、
前記改訂決定は、前記第1の精度よりも高い、前記目標物を正確に検出するための第2の精度を有する、
請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記第1の時点で、前記第1の1D CFAR検出器の前記第1の被試験セルは、前記第1のレンジビンと前記第1のドップラービンとの第1の交点に位置し、第1の被試験セル電力レベルを前記第1のトレーニングセルのための第1のトレーニングセル電力レベルと比較して予備決定を形成する、
請求項19記載の方法。
【請求項22】
前記第2の時点で、前記第2の1D CFAR検出器の前記第2の被試験セルは、前記第1のレンジビンと前記第1のドップラービンとの第1の交点に位置し、第2の被試験セル電力レベルを前記第2のトレーニングセルのための第2のトレーニングセル電力レベルと比較して改訂決定を形成する、
請求項19記載の方法。
【請求項23】
それぞれの列は、前記それぞれの列に対するそれぞれ一定のレンジビン値を有し、
それぞれの行は、前記それぞれの行に対するそれぞれ一定のドップラービン値を有する、
請求項18記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全体として、電子システム、例えばレーダーシステムに関し、より具体的には、一定誤警報確率(CFAR)検出技術または他の検出技術を利用するレーダーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーダー(RAdio Detection And Ranging)システムは、無線電波を使用して、フィールド内の目標物の位置および/または速度を決定する。歴史的に、レーダーは、とりわけ航空機、船舶、宇宙船、誘導弾および地形の検出に使用されてきた。近年ではレーダーが気象形態の調査および/または予測に使用されることもあり、また自動車における衝突検出および/または衝突回避に使用されることもある。レーダーシステムは、無線波領域またはマイクロ波領域の電磁波を形成する送信機と、フィールド内の1つまたは複数の目標物から跳ね返った後のこれらの波を受信する受信機と、目標物の特性を決定するためのプロセッサと、を含む。送信機からの電磁波はパルス波または連続波とすることができ、これは、目標物で反射されて受信機へ戻り、レーダーシステムに対する目標物の位置および/または速度に関する情報を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1】周波数変調連続波(FMCW)レーダーシステムで用いられる送信波形および受信波形を示す図である。
図2】FMCWレーダーシステムで用いられる送信パルスおよび受信パルスを示す図である。
図3】FMCWレーダーシステムを示す図である。
図4】種々の目標物からの受信電力がプロットされたフィールドを示す2Dプロットを、レーダーシステムにおける時間遅延(レンジ)および周波数/ドップラーシフト(相対速度)に対して示す図である。
図5】いくつかの実施形態による1次元(1D)検出器を示す図である。
図6】受信機と協調して移動される2つの1D検出器を有するメモリアレイとを備えた、メモリアレイ内のデータを評価するためのシステムを示す図である。
図7】目標物が存在するか否かの決定を一定誤警報確率(CFAR)検出器がどのように形成しうるかの一例を示すグラフである。
図8】いくつかの実施形態による、2つの1D検出器を含むレーダーシステムを示す図である。
図9】A~Hは、第1の1D CFAR検出器および第2の1D CFAR検出器を使用して、実際の目標物がレーダーフィールド内に存在するか否かを図8のレーダーシステムによって決定する、CFARレーダー技術のいくつかの例を示す図である。
図10図8および図9A図9Gのいくつかの態様に一致するサンプリング値の処理を示すタイミング図である。
図11】いくつかの実施形態による、2つの1D検出器を含むレーダーシステムを示す図である。
図12】A~Eは、第1の1D CFAR検出器および第2の1D CFAR検出器を使用して、実際の目標物がレーダーフィールド内に存在するか否かを図11のレーダーシステムによって決定する、CFARレーダー技術のいくつかの例を示す図である。
図13図11および図12A図12Eのいくつかの態様に一致するサンプリング値の処理を示すタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
以下に添付の図面の各図を参照して本開示を説明するが、ここでは、全体を通して同様の参照符号が同様の要素を指すために使用されており、図示の構造および装置は必ずしも縮尺通りに描かれているわけではない。本明細書で使用する場合、「コンポーネント」、「システム」、「インタフェース」などの用語は、コンピュータ関連のエンティティ、ハードウェア、(例えば実行中の)ソフトウェアおよび/またはファームウェアを指すことを意図している。
【0005】
レーダーシステムは、別個のパルス波または連続波の形態で電磁波を送信し、次いで、受信されたパルス(またはエコー)を聴取して、フィールド内の目標物の位置および/または速度を決定する。例えば、図1には、周波数変調連続波(FMCW)レーダーシステムによって送信される単純な送信波形102と、フィールド内のさまざまな目標物から反射して戻る2つの受信波形(またはエコー)104,106と、の例が示されている。これらの波形は、単なる非限定的な例示であり、実際の波形は任意の数の形態をとりうることが理解されるであろう。
【0006】
送信波形102は、一連のランプまたはチャープを含み、これらのランプまたはチャープは、規則的な間隔を置いた時間窓C0,C1,C2,…,Cnで繰り返されるように送信される。図1にはチャープの瞬時周波数が時間に関して示されている一方、図2には対応する時間窓C0,C1,…において伝送されるときのチャープの対応する変調電圧信号が示されている。各ランプは、所与の時間窓の開始時に開始周波数Fstartで開始し、所与の時間窓の終了時に終了周波数Fendまで上昇または下降する。理想的には、各ランプはその時間窓中に一定の傾きを有しており、これにより、時間遅延とビート周波数とFMCWレーダーシステムにおける種々の目標物のためのレンジとの間のリンクが提供される。実際の実現形態では、傾きは完全には一定でなく、時間の経過と共に僅かに変化しうる。
【0007】
受信波形104,106または「エコー」は、送信波形102に応答したものである。受信波形104,106は送信波形102の時間遅延コピーであり、また、波形104,106を反射させた目標物の相対速度に起因するドップラー成分をも有する。したがって、例えば図1および図2では、第1の受信波形104が、レンジ1において第1の目標物から反射され、第1の時間窓C0で送信パルスに対して第1の遅延δt1だけ遅延されている。同様に、第2の受信波形106は、レンジ2において第2の目標物から反射され、第1の時間窓C0で送信波形102に対して第2の遅延δt2だけ遅延されている。これらの時間遅延δt1,δt2は、フィールド内の送受信機から第1の目標物および第2の目標物までの往復遅延を表しているので、第1の目標物および第2の目標物に対する第1のレンジおよび第2のレンジをそれぞれ決定する基礎を成している。さらに、後の時間窓では、第1の目標物が移動している場合、送信波形102と第1の受信波形104との間の遅延が(第1の遅延δt1に対して)僅かに変化する可能性があり、これにより、第1の目標物の速度を実証することができる。なお、所与の時間窓の期間に対して、第1の時間遅延δt1および第2の時間遅延δt2の長さは、図1および図2ではわかりやすくするために誇張されていることに留意されたい。
【0008】
図3は、いくつかの実施形態に従ったFMCWレーダー送受信機300を示し、これは、図1図2に記載されているようなFMCW波形を利用することができる。送受信機300は、無線周波数(RF)フロントエンド302と、RFフロントエンド302の下流のベースバンドプロセッサ304と、を含む。RFフロントエンド302は、送信機(電圧制御発振器306、増幅器308および送信アンテナ310を含む)と、1つまたは複数の受信アンテナ312を含む受信機と、を含む。送信機は、例えばVCO306を用いて、送信波形102を形成する。図示の例では、送信波形102は、それぞれn個の時間窓において送信されるn個のランプについて時間的にランプを形成する周波数を有している。送信波形は、搬送周波数Fcを周波数変調することにより得られる。ここで、送信波形102の瞬時周波数は、FstartからFendまで変化させることができる。送信機は、増幅器308およびアンテナ310を使用して、波形102を送信する。
【0009】
受信波形または「エコー」(例えば104および106)は、受信アンテナ312および増幅器314によって受信される。フィールド内の各目標物は異なるエコーを生じさせるため、各Rxアンテナ312は受信したすべての波形の重畳を観察する。ミキサ316は、送信波形102と受信波形104,106とを混合し、これらの波形を共に乗算して混合信号318を形成する。当該混合信号318は、受信波形の周波数δf1+δf2の混合物であるビート周波数を含む。よって、当該ビート周波数は、さまざまな目標物に対する時間遅延に対応し、これらの時間遅延は、さまざまな目標物についてのレンジにそれぞれ対応する。ビート周波数は搬送周波数Fcまたは掃引の中心周波数よりも格段に低い。この場合、ビート周波数は、アナログデジタル変換器(ADC)320によってサンプリングされ、デジタル信号が形成される。
【0010】
ベースバンドプロセッサ304では、第1の高速フーリエ変換(FFT)ブロック322がデジタル信号を処理して、個々のビート周波数を分離する。このことは直接にレンジビン324に繋がっており、各レンジビンは、目標物を見出すことのできるレンジ/距離のうちそれぞれ異なるレンジに対応する。当該プロセスは、n個のランプの各ランプにわたって反復されるので、レンジビンはn個のランプのそれぞれについて記憶される。n個のランプのすべてが完了すると、データのブロックがメモリアレイ326に記憶される。E1でのレンジビン327(n個のランプのそれぞれに対するレンジE1に対するレンジ値を含む)の結果は、この段階で同様に観察されるが、個々のランプC1,C2,…,Cnが時間的に分離されているため、サンプルはさまざまな目標物のドップラーシフトによって誘導される微細な位相差(例えば、距離v×tだけ移動する目標物によって生じるレンジの僅かな変化に起因する時間遅延、ここで、vは目標物の速度であり、tは時間である)を有する。
【0011】
ドップラー情報を復元するために、今度はすべてのランプから共通に配置されたビン(コーナーターン演算または転置(transpose)演算を表す)についての第2のFFTブロック328を使用することができる。
【0012】
330および332において、2段階の処理により、ここでなじみ深いレンジドップラーマップが得られる。実用上のレーダーは2つ以上のアンテナを有することが多い。これはある程度のダイバーシティを提供する。各アンテナは、ほぼ同時に同様の手法で処理される。
【0013】
334において、複数のアンテナからのダイバーシティが積分部338を使用して結合され、このプロセスの出力は、図4において説明するように、検出プロセスにおいて使用される電力レベルである。次に、336において、複数の1次元検出器が処理を実行して、後の図に即して説明するように、検出された電力レベルが実際の目標物を表しているかまたはファントム目標物を表しているかが決定される。
【0014】
図4には、レーダーシステムのフィールドにわたるレンジ(x軸)およびドップラーシフト(y軸)の2次元プロットが示されている。プロットにおけるカラーコーディングは、各レンジ値およびドップラーシフト値における受信信号パルスのパワーを示している。したがって、1つまたは複数のパルスが送信された後、さまざまな時間遅延に対する受信電力が、レンジビンに従ってx軸上にプロットされている。各レンジビンにおいて、送受信機はドップラーフィルタリングを適用して各レンジビン上のドップラー周波数シフトを決定する。例えば、図4には、視界内の潜在的な目標物に対応する、受信電力が増大した複数の領域が存在する。第1の潜在的な目標物402は相対速度+v1を有するレンジR1に位置しており、第2の潜在的な目標物404は相対速度-v4を有するレンジR1に位置しており、第3の潜在的な目標物406は相対速度+v1を有するレンジR3に位置している。より小さいかつ/またはより検出が困難な実際の目標物でありうる他の潜在的な目標物も存在する可能性があり、ここには、相対速度+v2を有するレンジR1に位置する第4の潜在的な目標物408、相対速度+v1を有するレンジR2に位置する第5の潜在的な目標物410、相対速度-v3を有するレンジR3に位置する第6の潜在的な目標物412および相対速度-v5を有するレンジR4に位置する第7の潜在的な目標物414が含まれる。
【0015】
増大した受信電力を有するこれらの領域は潜在的な目標物とされるが、レーダーシステムにおけるノイズ、クラッタおよび干渉のバックグラウンドに起因した、フィールドの当該領域内に実際の目標物を有さない単なるファントム目標物である可能性もある。潜在的な目標物が実際の目標物であるかまたは単なるノイズであるかの識別を支援するために、レーダーシステムは、一定誤警報確率(CFAR:Constant False Alarm Rate)検出技術を使用することができる。
【0016】
2次元(2D)CFAR検出器は、潜在的な目標物が実際の目標物であるかまたは単なるノイズであるかを識別するために使用可能な検出器の一種である。2D CFAR検出器は、すべての側において保護セルのリングによって包囲されている被試験セル(CUT)を含み、この保護セルのリングはトレーニングセルのリングによって包囲されている。よって、図4の場合、2D CFAR検出器は、潜在的な目標物408、412および414を収差および/またはノイズに起因するファントム目標物として除外しながら、潜在的な目標物402、404および406および410の存在を確認することができる。2D CFAR検出器は多くの点で十分であるが、実装が高価となることが多い。
【0017】
したがって、本開示のいくつかの態様では、一般に2D CFAR検出器よりも安価な1つまたは複数の1次元(1D)CFAR検出器が使用される。1D CFAR検出器は、(図3の検出器336に対応しうる)システムに記憶されたレーダーデータの複数回の通過を行い、ここで、最初の通過により潜在的な目標物が実際の目標物であるか否かに関する予備決定が形成され、後続の通過により潜在的な目標物が実際の目標物であるか否かに関する改訂決定が形成される。改訂決定は、初期の決定よりも正確である。したがって、1D CFAR検出器により、より手ごろな価格点で、「擬似」2D CFAR検出器を近似することができる。さらに、本開示のいくつかの態様がこうしたレーダーで使用されるレーダーおよび1D CFAR検出器に関して表現されているが、本開示は、より広く、データがメモリに記憶され、次いで1つまたは複数の1D検出器によって評価される他の領域にも適用可能であることが理解されるであろう。したがって、一般に、1D検出器は、1D CFAR検出器および/またはレーダー用途における使用に限定されているわけではなく、到来するデータがメモリに記憶されてから処理される任意のタイプの1D検出器および/または他の用途にも広く適用可能である。例えば、レーダーは一般に無線電波を使用しているが、本開示は、無線に加えて電磁スペクトルの他の部分を使用するレーダーシステムおよび/または無線通信システムにおいて使用されてもよいし、かつ/またはとりわけ有線システムにおいて使用されてもよい。
【0018】
図5には、1D CFAR検出器500の一例が示されている。1D CFAR検出器500は、両側に隣接した第1の保護セル504aおよび第2の保護セル504bを有する被試験セル502と、それぞれ第1の保護セル504aおよび第2の保護セル504bの外側に隣接した第1のトレーニングセル506aおよび第2のトレーニングセル506bと、を有する。第1の保護セル504aおよび第2の保護セル504bならびに第1のトレーニングセル506aおよび第2のトレーニングセル506bは、被試験セル502のすべての側面を包囲することなく、被試験セル502から単一方向に延在する。こうした1D CFAR検出器500は、メモリアレイ508上を移動して基礎となるメモリセルにおける値を分析して、被試験セル502に対応するメモリセルが第1のトレーニングセル506aおよび第2のトレーニングセル506bに対応するメモリセルの平均値よりも大きい値を有するか否かを決定することができる。メモリアレイ508を介した1つまたは複数の1D-CFAR検出器の複数の経路を使用することにより、本開示のいくつかの態様をレーダーシステムにおいて使用して、レンジおよびドップラーデータを、処理速度に関して効率的に、かつ同時に2D CFAR検出器よりも実装コストが低くなるように処理することができる。これは、1D CFAR検出器へのメモリ要求が2D CFAR検出器へのメモリ要求よりもある程度小さく、このような効率性が得られるためである。
【0019】
図6には、第1の1D検出器600aおよび第2の1D検出器600bがメモリアレイ608上で分析を実施するシステム600の一例が示されており、メモリアレイ608は、行および列として配置されたメモリ位置(例えばそのいくつかに参照符号601が付されている)を含む。第1の1D検出器600aおよび第2の1D検出器600bはそれぞれ、図5に示したような1D CFAR検出器500として実現可能であるが、他の1D検出器であってもよい。図6の例では、受信信号610は、受信機614のアンテナ612で受信される。受信信号610は、ベースバンドへと逓降変換された(かつ、例えば高速フーリエ変換によって処理可能な)RF信号を基礎とすることができ、かつ時間的に変化する種々の受信電力レベルを有することができる。受信信号610の受信された電力レベルに対応するサンプル値が、メモリアレイ608のN個の行(例えばR1,R2,…,RN)およびM個の列(例えばC1,C2,…,CM)に記憶される。よって、第1の受信電力レベルを表す第1のサンプル値を行R1、列C1に記憶することができ、第2の受信電力レベルを表す第2のサンプル値を行R1、列C2に記憶可能とすることができ、以降も同様である。
【0020】
第1の1D検出器600aおよび第2の1D検出器600bは、メモリアレイ608上を移動して、このメモリアレイ608に記憶されたサンプリング値を評価し、これにより、サンプリング値に基づいて決定が形成される。いくつかの実施例によれば、第1の1D検出器600aおよび第2の1D検出器600bを、当該決定のために、メモリアレイ608上を同時に移動させることができる。第1の1D検出器および第2の1D検出器の移動が同時に行われるいくつかの実施形態によれば、第1の1D検出器600aおよび第2の1D検出器600bは双方ともメモリアレイ上の同一の移動経路を辿ることができ、一方の1D検出器が他方の1D検出器に重ね合わされる。なお、他の例では、第1の1D検出器600aは、その検出を実行するために、第1の時間間隔中にメモリアレイ608上を移動することができる。次いで、第1の1D検出器が第1の時間間隔中にその検出を完了した後、第2の1D検出器600bがメモリアレイ608上を移動して、第2の時間間隔中にその検出を実行することができる。いくつかの事例では第1の1D検出器と第2の1D検出器とは共に同一の移動経路に追従することができるが、他の実施例では第1の1D検出器と第2の1D検出器とがメモリアレイ上の異なる移動経路に追従してもよい。
【0021】
典型的には、第1の1D検出器600aは、第1の被試験セル602aと、メモリアレイ608の行に対応する第1の方向616に沿って配向された第1のトレーニングセル606a1および第2のトレーニングセル606a2と、を含む。第1のトレーニングセル606a1および第2のトレーニングセル606a2は、第1の被試験セル602aの両側に配置されており、それぞれ第1の保護セル604a1および第2の保護セル604a2によって第1の被試験セル602aから分離されていてよい。第1の1D検出器600aは、その移動中の複数の時点でメモリアレイ上を第1の方向616に移動される。第1の1D検出器600aによって行われる検出ごとに、第1の1D検出器は第1のビット値を記憶する。
【0022】
第2の1D検出器600bもメモリアレイ608上を移動し、インプリメンテーションに応じて、第1の方向616および/または第1の方向616に対して垂直な第2の方向618で移動することができる。第2の1D検出器600bは、第2の被試験セル602bと、この第2の被試験セル602bの両側に配置され、かつこの第2の被試験セル602bから第3の保護セル604b1および第4の保護セル604b2によってそれぞれ分離可能な第3のトレーニングセル606b1および第4のトレーニングセル606b2と、を有することができる。第2の被試験セル602bならびに第2の1D検出器600bの第3のトレーニングセル606b1および第4のトレーニングセル606b2は、第1の方向616に対して垂直な第2の方向618にアライメントされている。第2の1D検出器600bによって実行される各検出に対して、第2の1D検出器600bは第2のビット値を記憶可能であり、かつ/または第1の1D検出器によって形成された予備決定を改訂して、改訂決定を形成することができる。第1の1D検出器600aおよび第2の1D検出器600bのこうした協調移動は、格段に安価な価格点で、しかし検出精度に関して第1の1D検出器600aおよび第2の1D検出器600bが2D検出器を近似することを可能にする。
【0023】
第1の1D検出器600aおよび第2の1D検出器600bは、ハードウェア、ソフトウェアなどで実現可能である。例えばいくつかのケースでは、第1の1D検出器600aおよび第2の1D検出器600bは、バスを介してメモリアレイ608に結合されたダイレクトメモリアクセス(DMA)ハードウェアモジュールを介して、メモリアレイ608からサンプリング値を受け取るハードウェアモジュールとして実装されている。他のケースでは、第1の1D検出器および第2の1D検出器の全部または一部を、メモリに記憶されてマイクロプロセッサまたは他のコントローラによって実行されるソフトウェア命令によって実装することができる。
【0024】
さらに、図6ではメモリアレイ608が正方形(M=N)で示されているが、他のケースでは、MおよびNを異ならせることができ、メモリアレイ608を任意のサイズとすることもできる。さらに、第1の1D検出器は単一の検出器または異なる種類の1D検出器の集合体であってよく、かつ/または第2の1D検出器は単一の検出器または異なる種類の1D検出器の集合体であってよい。第1の1D検出器および第2の1D検出器のうちの1つの、複数のもしくは任意の検出器からの結果を、予備決定および/または改訂決定を形成するために使用することができる。第1の1D検出器および第2の1D検出器は異なる種類のものであってよく、かつ/または第1の1D検出器および第2の1D検出器は異なる長さを有していてよく、かつ/または異なる数の保護セルおよび/またはトレーニングセルを有していてよい。第1の1D検出器および第2の1D検出器は、異なる領域において動作することができる(例えば第1の1D検出器が対数領域において動作する一方、第2の1D検出器が線形領域において動作することができ、または逆に第1の1D検出器が線形領域において動作する一方、第2の1D検出器が対数領域において動作することができる)。第1の1D検出器および第2の1D検出器は、同じ種類または異なる種類のサンプリング値で動作することができる。例えば、面積電力最適化のために、一方の1D検出器は高解像度サンプルを使用することができ、他方の1D検出器は低解像度サンプルを使用することができる。例えば、第1の1D検出器は32ビットサンプリング値を使用することができ、第2の1D検出器は場合により丸められた8ビットサンプリング値を使用することができる。さらに、場合によっては、第1の1D検出器と第2の1D検出器とが検出のために異なる閾値を使用することもできる。
【0025】
図7には、図6の第1の1D検出器600aがどのようにCFAR検出を実行しうるかの一例が示されている。第2の1D検出器600bも、いくつかの実施例では同様に動作可能である。第1の1D検出器600aがアレイ上を移動すると、この第1の1D検出器600aは、被試験セル602aで測定された受信電力レベルを、(波形702によって表現された)種々のレンジビンおよびドップラービンに対して分析し、(図7の704によって表されている)第1のトレーニングセル606a1および第2のトレーニングセル606a2に記憶された平均受信電力レベルに対応する第1の閾値と比較する。第1の1D検出器600aはまた、被試験セル602aで測定された受信電力レベルを、(図7の706で表されている)所定の値に対応する固定の閾値と比較することもできる。一例として、図7のプロットが図6の列2(C2)に対応するメモリアレイ608の「スライス」に対応する場合、種々のドップラービン(図6の行)は図7のx軸に沿って延在する。したがって、このような例において、第1の被試験セル602aが第1のメモリ位置C2,R3に対応する場合、第1の被試験セル602aが708の第1の受信電力レベルを測定し、第1のトレーニングセル606a1および第2のトレーニングセル606a2がそれぞれメモリ位置C2,R1およびC2,R5に対応し、710の第1の平均受信電力レベル(およびこれにいくつかの付加的な固定のマージンを加えたもの)を測定する。第1の被試験セル708における第1の受信電力レベルは第1の平均受信電力レベル710よりも大きいので、第1の1D検出器は、C2,R3に対応するレンジおよびドップラーシフトに実際の目標物が存在する可能性が高いという第1の予備決定を表す「1」の単一ビットを出力する。さらに、このような例において、第1の被試験セル602aがC2,R4に対応するように移動する場合、この第1の被試験セル602aは712の第2の受信電力レベルを測定し、第1のトレーニングセル606a1および第2のトレーニングセル606a2がそれぞれメモリ位置C2,R2およびC2,R6に対応し、714の第2の平均受信電力レベル(およびこれにいくつかの付加的な固定のマージンを加えたもの)を測定する。第2の受信電力レベル712が第2の平均受信電力レベル714よりも小さいため、第1の1D検出器は、C2,R4に対応するレンジおよびドップラーシフトに実際の目標物が存在しないという第2の予備決定を表す「0」の単一ビットを出力する。
【0026】
図8および図9A図9Hをここで参照すると、レーダーシステム800のいくつかの実施形態と、第1の1D CFAR検出器810aおよび第2の1D CFAR検出器810bを使用した目標物検出のための対応する技術と、を見ることができる。図8から見て取れるように、レーダーシステム800は、信号発生器802と、送信アンテナ806を含む送信機804と、受信アンテナ811を含む受信機814と、を含んでいる。典型的には受信アンテナ811と送信アンテナ806とは物理的に別個であるが、他のケースではこれらは同じアンテナであってもよい。
【0027】
動作中、送信機804は、1つまたは複数の目標物を含むフィールドにわたる送信信号809を送信するために送信アンテナ806を使用する。送信信号809は、1つまたは複数の目標物で反射して戻り、送信信号809に対して時間遅延および/または周波数/ドップラーシフトを有する受信信号810として、受信機814の受信アンテナ811で受信される。時間遅延は1つまたは複数の目標物のレンジを表し、周波数/ドップラーシフトは1つまたは複数の目標物の相対速度を表す。受信信号810は、時間変化する受信電力を有しており、受信機814によって時間サンプリングされるので、処理されたサンプル値がメモリアレイ808に記憶される。典型的には、サンプリング値は、レンジビン(列)およびドップラービン(行)に従ってメモリアレイ808に記憶されるが、他の例では、レンジビンはメモリアレイの行であってよく、ドップラービンはメモリアレイ808の列に対応していてよい。
【0028】
第1の1D CFAR検出器810aおよび第2の1D CFAR検出器810bは、メモリアレイ808に記憶されたサンプルを分析し、第1の予備目標物決定および第2の予備目標物決定をそれぞれ第1の内部メモリ812aおよび第2の内部メモリ812bに記憶させる。予備目標物決定は、目標物が所与のレンジおよびドップラーシフトに存在するとの予備決定を第1の1D CFAR検出器810aおよび第2の1D CFAR検出器810bが行ったか否かに関し、各予備決定は、レーダーシステム800のメモリ要求を低減するために、第1の内部メモリ812aおよび第2の内部メモリ812bにおいて、検出器あたり1ビットとして表現される。いくつかの事例では、各1D検出器は複数の検出器を含みうるが、所与の1D検出器のすべての検出器を1つのビットに集約することができる。その後、転置および比較ブロック816が、第1の内部メモリ812aおよび第2の内部メモリ812bのうちの一方のビットを転置する一方、第1の内部メモリ812aおよび第2の内部メモリ812bのうちの他方のビットを転置しないままとする。次いで、転置および比較ブロック816は、818において、転置された内部メモリの画像を転置されていない内部メモリの画像とビットごとに比較して、改訂目標物決定を形成する。こうした改訂目標物決定818により、いくつかの予備目標物決定に対応する種々のレンジビンおよびドップラービンに実際の目標物が存在するか否かが確認可能となる一方、他の予備目標物決定が他のレンジビンおよびドップラービンでの実際の目標物ではないファントム目標物として破棄される。改訂目標物決定818は、予備目標物決定よりも高い、正確な目標物検出のための精度を有する。したがって、第1の1D CFAR検出器810aおよび第2の1D CFAR検出器810bの使用は、レーダーシステム800のための良好な信頼性を提供し、一般に単一の2D CFAR検出器よりも安価である。
【0029】
図9A図9Hは、図8のレーダーシステム800がどのように機能するかのより詳細な例を提供している。図9A図9Hには、全体として、メモリアレイ808、第1の内部メモリ812aおよび第2の内部メモリ812bの種々の時点と、所定の目標物、確認された目標物および/またはファントム目標物がフィールド内に存在すると決定されたか否かを表す2Dプロット904と、が示されている。
【0030】
より具体的には、図9Aは、時点T1におけるレーダーシステムを示し、サンプリング値は、レンジビン(行)およびドップラー/周波数シフトビン(列)に従ってメモリアレイ808に記憶される。これらのサンプリング値のそれぞれは、長さ8ビット、長さ16ビット、長さ32ビット、または別の長さなどの複数ビットとすることができる。いくつかの例では、メモリアレイ808のそれぞれの列は一定のレンジビン値に対応させることができ、レンジビン値は、メモリアレイ全体にわたって左から右に移動して増減させることができる(例えば、列1のすべてのメモリ位置は150mの第1のレンジビン値R1に対応させることができ、列2のすべてのメモリ位置は100mの第2のレンジビン値R2に対応させることができ、列3のすべてのメモリ位置は50mの第3のレンジビン値R3に対応させることができ、以下同様である)。同様に、メモリアレイ808の各行は、一定のドップラーシフトビン値に対応させることができ、メモリアレイ全体にわたって上下に移動してドップラーシフトビン値を増減させることができる(例えば、行1のすべてのメモリ位置は-300m/sの第1のドップラーシフトビン値D1に対応させることができ、行2のすべてのメモリ位置は-200m/sの第2のドップラーシフトビン値D2に対応させることができ、行3のすべてのメモリ位置は-100m/sの第3のドップラーシフトビン値D3に対応させることができ、以下同様である)。
【0031】
サンプリング値がメモリアレイ808に記憶されると、第1の1D CFAR検出器810aは、第1の時間間隔(例えばT1~T3)中、第1の移動経路900に従ってメモリアレイ808上を移動する。よって、図9Aの時点T1では、メモリアレイの列に対応する第1の方向に配向された第1の1D CFAR検出器810aが第1の移動経路900に沿って2つのメモリ位置上を移動し、(例えば、図7に関して前述したように)CFARアルゴリズムを使用して、R1,D2に事前に第1の目標物が存在しかつR1,D2には事前に目標物が存在せずかつ対応する第1のビットが内部メモリ812aに記憶されたことを決定する。図9Bの時点T2では、第1の1D CFAR検出器810aが、第1の移動経路900の2.5列に沿って進行し、CFARアルゴリズムを使用して各メモリ位置に対する第1の予備目標物決定を形成し、第1の内部メモリ812a内の各メモリ位置に対する第1のビットを記憶している。したがって、この例では、論理「1」は、第1の予備目標物決定が潜在的な目標物の存在を示すレンジ/ドップラービン(概念を表す目的のために五角形で示されている)を表しており、論理「0」は、潜在的な目標物が存在しないレンジ/ドップラービンを表している。図9Cの時点T3では、第1の1D CFAR検出器810aが第1の移動経路900に沿った移動を完了し、CFARアルゴリズムを使用して各メモリ位置に関する第1の予備目標物決定を形成し、第1の内部メモリ812a内の各メモリ位置に対する第1のビットを記憶している。よって、第1の内部メモリ812aの各ビットは、潜在的な目標物が種々のレンジビンおよびドップラービンに存在するか否かを示す圧縮表現である。
【0032】
次に、図9D図9Fにおいて、第1の時間間隔と重ならない第2の時間間隔(例えば時点T4~時点T6)中、第2の1D CFAR検出器810bは、第1の移動経路900とは異なる第2の移動経路902に従って、メモリアレイ808上を移動する。第2の1D CFAR検出器810bは、メモリアレイの行に対応する第2の方向に配向されており、第1の1D CFAR検出器の配向に対して垂直である。図9Dの時点T4では、第2の1D CFAR検出器810bが第2の移動経路902に沿って2つのメモリ位置上を移動し、CFARアルゴリズムを使用して、R1,D1に事前に第2の目標物が存在しかつR2,D1に目標物が存在せず、対応する第2のビットが第2の内部メモリ812bに記憶されたことを決定する。図9Eの時点T5では、第2の1D CFAR検出器810bが第2の移動経路902の3つの行に沿って進行し、CFARアルゴリズムを使用して第2の移動経路902上の各メモリ位置に関する第2の予備目標物決定を形成し、第2の内部メモリ812b内の各メモリ位置に対する第2のビットを記憶している。図9Fの時点T6では、第2の1D CFAR検出器810bが第2の移動経路902に沿った移動を完了し、CFARアルゴリズムを使用して各メモリ位置に関する第2の予備目標物決定を形成し、第2の内部メモリ812b内の各メモリ位置に対する第2のビットを記憶している。
【0033】
特に、第1の移動経路900は第2の移動経路902とは異なるので、第1の内部メモリ812aおよび第2の内部メモリ812b内のビットの画像は、レンジビンおよびドップラービンに関して転置される。記憶されたビットを比較して、目標物が存在するか否かについての第1の予備決定および第2の予備決定に基づく改訂決定を形成するために、転置および比較ブロック816は、第1の内部メモリ812aおよび第2の内部メモリ812bのうちの一方におけるビットを転置する。例えば、図9Gに示されているように、第2の内部メモリ812bのビットは、第1の内部メモリ812aおよび第2の内部メモリ812bの両方における画像816が種々のレンジビンおよびドップラービンに対する検出の観点で位置合わせされるように転置可能である。概念を表す目的のために第2の内部メモリ812bにおける第2のビットに対応する三角形のシンボルが図9Gにおいて転置されている一方、第1の内部メモリ812aにおける第1のビットに対応する五角形のシンボルは転置されていないままであることに注意されたい。
【0034】
最後に、図9Hの時点T8において、予備決定のうちいずれが正確であるかについての改訂決定を形成するために、図9Gのメモリ画像816に対してビットごとの比較が実施される。したがって、種々のビット位置に記憶されているビットが第1の内部メモリに対してと転置された第2の内部メモリに対してとで同じである場合(例えば両方ともR1,D1;R1,D4;R3,D2およびR3,D3の位置において「1」を有する場合)、そのレンジおよびドップラーシフトについて実際の目標物が確認される。しかし、ビット位置のうちの1つのみが正の予備決定を有し、他が正の予備決定を有さない場合(例えばR1,D3の位置が正の予備決定を有し、R3,D1の位置がこれを有さない場合)、そのレンジビンおよびドップラービンに対する改訂決定は、実際には目標物が存在せず、単にファントム/誤った目標物である、ということである。
【0035】
図10は、全体として図8および図9A図9Hと一致するタイミング波形図を示しており、ここでは、送受信機は、初期時間間隔1002中に無線電波を送受信し、その後、受信信号が高速フーリエ変換ブロックによって処理され、メモリアレイ(1004)においてサンプリング値として保存される。次に、第1の時間間隔1006中、第1の1D検出器がメモリアレイの列に沿って通過し、各ドップラービンおよびレンジビンについて、目標物がそのレンジビンおよびドップラービンに存在するか否かの第1の予備決定に対応する第1のビット値を出力する。これらの第1のビット値は、レーダーシステム内の第1の内部メモリに記憶される。次いで、第2の時間間隔1008中、第2の1D検出器がこの場合メモリアレイの行に沿って通過し、レンジビンおよびドップラービンごとに目標物が当該ドップラービンおよびレンジビンに存在するか否かの第2の予備決定に対応する第2のビット値を出力する。これらの第2のビット値は、レーダーシステム内の第2の内部メモリに記憶される。次に、第3の時間間隔1010中に、転置および比較ブロックが、第1の内部メモリまたは第2の内部メモリを読み出してそのメモリのビットを転置し、例えば転置された第1の内部メモリと第2の内部メモリとの間で比較が行われる。転置された第1の内部メモリのビットと第2の内部メモリのビットが一致した画像を有する場合には実際の目標物が確認されるが、一致しない場合には目標物はファントム目標物であって実際の目標物ではないとされる。1010の後部において、アドバンスト到来方向(DoA)、クラスタリングおよび目標物トラッキングなどのさらなる処理を行うこともできる。
【0036】
次に図11図12A図12Eおよび図13を参照すると、別のレーダーシステム1100のいくつかの実施形態と、第1の1D CFAR検出器1100aおよび第2の1D CFAR検出器1100bを用いた目標物検出のための対応する技術と、を見ることができる。第1の1D CFAR検出器810aおよび第2の1D CFAR検出器810bがそれぞれ異なる移動経路に従って重ならない時点で移動する図8図10と比較して、図11図12A図12Eおよび図13のレーダーシステムでは、第1の1D CFAR検出器1100aと第2の1D CFAR検出器1100bとがメモリアレイ808上を同時に移動する。さらに、第1の1D CFAR検出器1100aは、第1の時間間隔にわたり、第1の移動経路(図12、1200を参照)に従ってメモリアレイ808上を移動し、第2の1D CFAR検出器1100bは、第1の時間間隔よりも遅い第2の時間間隔にわたり、第1の移動経路に従ってメモリアレイ808上を移動する。このアプローチの結果、図8図10のレーダーシステム800と比較してメモリ要求が低減され、処理時間が著しく高速化される。
【0037】
図11から見て取れるように、図8のレーダーシステム800と同様に、レーダーシステム1100は、信号発生器1102と、送信アンテナ806を含む送信機1104と、受信アンテナ811を含む受信機814と、を含む。送信機および受信機は、図8に関して説明したように動作し、処理されたサンプリング値を、前述したように、レンジビン(列)およびドップラービン(行)に従ってメモリアレイ808に記憶する。第1の方向(例えばアレイの列に対応する第1の方向に沿った方向)に配向された第1の1D CFAR検出器1100aが第1の移動経路に沿って第1のメモリアレイ上を移動し、記憶されたサンプルを分析し、これにより、目標物のレンジおよび相対速度に関する第1の予備目標物決定がそれぞれ内部メモリ1102に記憶される。次いで、第1の方向に対して垂直な第2の方向に配向された第2の1D CFAR検出器1100bが第1の移動経路を再トレースし、記憶されたサンプルを再評価して、内部メモリ1102に記憶された予備目標物決定を改訂する。こうした改訂目標物決定により、いくつかの予備目標物決定に対して実際の目標物が種々のレンジビンおよびドップラービンに存在するか否かを確認することができる一方、他のレンジビンおよびドップラービンに実際の目標物でないファントム目標物が存在するという他の予備目標物決定が破棄される。改訂目標物決定は、予備目標物決定よりも、正確な検出のための精度が高い。したがって、第1の1D CFAR検出器1100aおよび第2の1D CFAR検出器1100bを使用することは、レーダーシステム1100のための良好な信頼性を提供する。
【0038】
図12A図12Eは、図11のレーダーシステム1100がどのように機能するかのより詳細な例を提供する。図12A図12Eは、全体としてメモリアレイ808および内部メモリ1102を示しており、この内部メモリは、所定の目標物、確認された目標物および/またはファントム目標物が種々の時点でフィールド内に存在すると決定されるか否かを示している。
【0039】
より具体的には、図12Aは、時点T1におけるレーダーシステムを示しており、ここでは、サンプリング値がレンジビン(行)およびドップラー/周波数シフトビン(列)に従ってメモリに記憶される。サンプリング値がメモリアレイ808に記憶されると、第1の1D CFAR検出器1100aが、第1の時間間隔(例えばT1~T5)中、第1の移動経路1200に従ってメモリアレイ808上を移動する。よって、図12Aの時点T1では、メモリアレイ808の列に対応する第1の方向に配向された第1の1D CFAR検出器が、第1の移動経路1200に沿って3つのメモリ位置上を移動し、CFARアルゴリズムを使用して、R1,D1に事前に第1の目標物が存在しかつR1,D2に目標物が存在せずかつR1,D3に事前に第2の目標物が存在しかつ対応する第1のビットが第1の内部メモリに記憶されることが決定される。これらの第1のビットは、R1,D1およびR1,D3において目標物が存在する可能性が高いという予備決定に対応する。
【0040】
図12Bの時点T2では、第1の1D CFAR検出器1100aが、第1の移動経路1200の第2の列に沿って進行し、目標物が存在する可能性が高い(R1,D4およびR2,D4)との2つの付加的な予備決定を形成した。同時に、第2の1D CFAR検出器1100bが第1の移動経路1200に沿って始動し、第1の列の第1の3つの行に対して改訂決定を形成した。特に、第2の1D CFAR検出器は(第2の方向ではあるが)CFARアルゴリズムを実行し、R1,D1およびR1,D3に対して実際の目標物が存在することを確認した。したがって、第2の検出器は、T2のレンジおよびドップラー位置に対して記憶された「1」ビットをそのままとする。
【0041】
図12Cの時点T3では、第1の1D CFAR検出器1100aがさらに進行しており、この第1の1D CFAR検出器1100aは第1の移動経路1200の第4の列に位置しており、目標物が存在する可能性が高い(R3,D3およびR4,D1)との付加的な予備決定を形成した。同時に、第2の1D CFAR検出器1100bは第1の移動経路1200に沿ってさらに進行し、第1の列および第2の列の残りの部分に対する改訂決定を形成した。特に、第2の1D CFAR検出器1100bはCFARアルゴリズムを実行しており、当該CFARアルゴリズムは、第2の方向で実行された場合、R1,D4またはR2,D4に実際の目標物が存在しないことを決定している。したがって、第2の1D CFAR検出器1100bは、これらの位置における「1」ビットを「オンザフライ」で第1の内部メモリ1102の「0」へフリップする。
【0042】
図12Dの時点T4では、第1の1D CFAR検出器1100aが第1の移動経路1200に関する分析を完了しており、第4の列の残りの部分は、目標物が存在する可能性が高いとの付加的な予備決定を有していない。同時に、第2の1D CFAR検出器1100bは、第1の移動経路1200に沿ってさらに進行し、R3,D3における予備決定を確認することによって改訂決定を形成している。したがって第2の1D CFAR検出器は、R3,D3において「1」を脱する。
【0043】
図12Eの時点T5では、第2の1D CFAR検出器1100bは、第1の移動経路1200に関する分析を完了している。この例で示されているように、第2の1D CFAR検出器1100bは、R4,D1に実際の目標物は存在しないとの改訂決定を形成した。したがって、第2の1D CFAR検出器1100bは、内部メモリ1102内のこの位置における「1」ビットをオンザフライで「0」へフリップする。この場合、1102に示されているビットマップを、図4において先に示したような観察用の2Dプロットにプロットして、レーダーシステムのフィールド内に存在する目標物をダイナミックに示すことができる。
【0044】
特に、第1の1D CFAR検出器1100aおよび第2の1D CFAR検出器1100bがそれぞれ相互にラグを有するにもかかわらず同じ第1の移動経路1200上を移動するので、図12A図12Eのアプローチにより、図8のレーダーシステム800と比較して、レーダーシステム1100のためのメモリ要求が低減される。さらに、図12A図12Eのこのアプローチは、図9A図9Hのアプローチよりも迅速にサンプルを処理するので、特に有利である。
【0045】
図13は、図11および図12A図12Eとおおよそ一致するタイミング波形図を示している。初期時間間隔1002中、送受信機は無線電波を送受信し、受信信号が高速フーリエ変換ブロックで処理され、メモリアレイにサンプリング値として保存される。次に、第1の時間間隔1300中、第1の1D検出器および第2の1D検出器が同時にメモリアレイ上を移動し、アレイ内に記憶されたサンプリング値を分析する。より具体的には、第1の1D検出器は、各ドップラービンおよびレンジビンに対して、目標物が当該レンジビンおよびドップラービンに存在するか否かの第1の予備決定に対応する第1のビット値を出力する。当該第1のビット値は、レーダーシステム内の第1の内部メモリに記憶される。その後、第1の時間間隔中、さらに、第2の1D検出器がアレイ上を移動するとき、第2の1D検出器が第1のビット値を変更し、所与のレンジビンおよびドップラービンに対して実際の目標物が存在しないことを示すためにいくつかの予備決定を改訂することができる。ここでもまた、このアプローチは、図8のレーダーシステム800に比べてレーダーシステム1100のためのメモリ要求を低減する。サンプリング値は、図10の値よりも高速に処理されるので、特に有利である。
【0046】
開示したいくつかの方法では、受信信号に基づくサンプリング値がメモリアレイの行および列に記憶される。第1の1次元(1D)検出器は、第1の方向でメモリアレイ上を移動する。第1の1D検出器は、第1の被試験セルと、この第1の被試験セルの両側に配置された第1のトレーニングセルおよび第2のトレーニングセルと、を含む。第1の1D検出器の第1の被試験セルと第1のトレーニングセルおよび第2のトレーニングセルとは、第1の方向にアライメントされている。第2の1D検出器は、メモリアレイ上を移動する。第2の1D検出器は、第2の被試験セルと、この第2の被試験セルの両側に配置された第3のトレーニングセルおよび第4のトレーニングセルと、を含む。第2の1D検出器の第2の被試験セルと第3のトレーニングセルおよび第4のトレーニングセルとは、第1の方向に対して垂直な第2の方向にアライメントされている。
【0047】
開示のいくつかのシステムでは、受信機は、受信信号を受信するように構成されている。メモリは受信機に結合されており、受信機からのサンプリング値をメモリの行および列に記憶するように構成されている。第1の1次元(1D)検出器は、メモリの行に対応する第1の方向に沿って配向された被試験セルおよび第1のトレーニングセルを含む。第2の1D検出器は、メモリの列に対応する第2の方向に沿って配向された第2の被試験セルおよび第2のトレーニングセルを含む。第2の方向は、第1の方向に対して垂直である。
【0048】
開示のいくつかのレーダーシステムでは、送信機は送信信号を送信するように構成されており、受信機は送信信号に基づく受信信号を受信するように構成されている。メモリは、受信機に結合されており、レンジビンおよびドップラービンに従ってレーダーサンプルを記憶するように構成されている。第1の1次元一定誤警報確率(1D CFAR)検出器は、レンジビンおよびドップラービンに記憶されたレーダーサンプルに基づいて予備目標物決定を形成するように構成されている。第2の1D CFAR検出器は、予備目標物決定に基づいて改訂目標物決定を形成するように構成されている。
【0049】
さらに、本開示のいくつかの例は、レーダーサンプリングされた値をレンジビンおよびドップラービンに従ってアレイに記憶する方法に対応する。レンジビンがアレイの行に対応しかつドップラービンがアレイの列に対応するか、または逆にドップラービンがアレイの行に対応しかつレンジビンがアレイの列に対応する。第1の1次元(1D)一定誤警報確率(1D CFAR)検出器は、アレイの第1の列に沿った第1の方向でレーダーサンプルを評価するために移動される。第1の1D CFAR検出器は、第1の方向にアライメントされた第1の被試験セルおよび第1の保護セルを有するように配向されている。第1の1D CFAR検出器がアレイの第1の列に沿って移動している間、第2の1D CFAR検出器は、アレイの第2の列に沿ったレーダーサンプルを評価するために同時に移動される。第2の1D CFAR検出器は、アレイの行に対応する第2の方向にアライメントされた第2の被試験セルおよび第2の保護セルを有するように配向されている。第2の方向は、第1の方向に対して垂直である。
【0050】
要約における記載を含む、主題を開示した図示の実施形態の上記の説明は、網羅的であることを意図するものでなく、または開示の実施形態を開示の正確な形式に限定することを意図したものでもない。特定の実施形態および実施例を本明細書において例示の目的で記載したが、当業者が認識可能であるように、こうした実施形態および実施例の範囲内にあるとみなされるさまざまな変更形態が可能である。
【0051】
このことに関して、開示の主題をさまざまな実施形態および対応する図に関連して説明したが、適用可能であるならば、開示の主題から逸脱することなく、開示の主題についての同一の、類似の、代替のもしくは代替的な機能を行うために、他の類似の実施形態を使用できること、または説明した実施形態に対して変更および付加を行えることを理解されたい。したがって、開示の主題は、本明細書に記載したいずれかの実施形態に限定されるべきではなく、むしろ、以下に添付の特許請求の範囲に従ってその広がりおよび範囲において解釈されるべきである。
【0052】
本願において使用される場合、「または」なる用語は、排他的な「または」ではなく、包括的な「または」を意味することが意図されている。すなわち、特に別段の規定がない限り、または文脈から明らかでない限り、「XはAまたはBを使用する」とは、自然な非排他的包含の順列のいずれかを意味することを意図するものである。つまり、XがAを使用し、XがBを使用し、またはXがAおよびBの両方を使用する場合、「XはAまたはBを使用する」が前述のいずれかの事例を満たす。さらに、本出願および添付の特許請求の範囲において使用される冠詞“a”および“an”は、特に別段の規定がない限り、または単数形に向けられるべきことが文脈から明らかでない限り、概して「1つまたは複数」を意味すると解釈されるべきである。さらに、「含んでいる」、「含む」、「有している」、「有する」、「と共に」なる用語またはその変化形が詳細な説明および特許請求の範囲において用いられる場合、このような用語は「備えている」なる用語と同様に非排他的包含を意図するものである。
図1
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【外国語明細書】