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特開2023-66417一酸化炭素及び水素を含む混合ガスを製造する方法、固体炭素を捕集する方法、及び気相反応装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066417
(43)【公開日】2023-05-15
(54)【発明の名称】一酸化炭素及び水素を含む混合ガスを製造する方法、固体炭素を捕集する方法、及び気相反応装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/40 20170101AFI20230508BHJP
   C01B 3/38 20060101ALI20230508BHJP
   C01B 32/05 20170101ALI20230508BHJP
【FI】
C01B32/40
C01B3/38
C01B32/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022172638
(22)【出願日】2022-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2021176303
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】福原 長寿
(72)【発明者】
【氏名】渡部 綾
(72)【発明者】
【氏名】赤間 弘
【テーマコード(参考)】
4G140
4G146
【Fターム(参考)】
4G140EA03
4G140EA05
4G140EA06
4G140EB32
4G146AA01
4G146AB01
4G146BA08
4G146BA48
4G146JA01
4G146JB02
4G146JB04
4G146JC21
4G146JC22
4G146JC24
4G146JD02
(57)【要約】
【課題】本開示の一側面は、二酸化炭素からメタン化反応により生成するメタンを、生成時の水素の消費量を抑制するとともに、メタンからの二酸化炭素の生成を抑えながら、効率的に利用する方法に関する。
【解決手段】メタン化反応触媒を有する第一反応部1に水素及び二酸化炭素を供給し、メタン及び二酸化炭素を含む反応生成ガスG1を第一反応部1から排出することと、反応生成ガスG1を含むガスを、ドライ改質触媒を有する第二反応部2に供給し、一酸化炭素及び水素を含む混合ガスG2を第二反応部2から排出することとを含む、一酸化炭素及び水素を含む混合ガスを製造する方法が開示される。第一反応部1に供給される水素の物質量がX(H)で、第一反応部1に供給される二酸化炭素の物質量がX(CO)であるとき、比率X(H)/X(CO)が4.0未満である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素及び二酸化炭素からメタンを生成するメタン化反応を促進するメタン化反応触媒を有する第一反応部に、水素及び二酸化炭素を供給し、メタン及び二酸化炭素を含む反応生成ガスを前記第一反応部から排出することと、
前記反応生成ガスを含むガスを、メタン及び二酸化炭素から一酸化炭素及び水素を生成するドライ改質反応を促進するドライ改質触媒を有する第二反応部に供給し、一酸化炭素及び水素を含む混合ガスを前記第二反応部から排出することと、
を含み、
前記第一反応部に供給される水素の物質量がX(H)で、前記第一反応部に供給される二酸化炭素の物質量がX(CO)であるとき、比率X(H)/X(CO)が4.0未満である、
一酸化炭素及び水素を含む混合ガスを製造する方法。
【請求項2】
前記第二反応部に供給される、前記反応生成ガスを含むガスにおいて、二酸化炭素の物質量がY(CO)で、メタンの物質量がY(CH)であるとき、比率Y(CO)/Y(CH)が1.0以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法によって、一酸化炭素及び水素を含む混合ガスを製造することと、
前記混合ガスを含むガスを、一酸化炭素から固体炭素及び二酸化炭素を生成する不均化反応、又は一酸化炭素から固体炭素及び水を生成する還元反応のうち少なくとも一方を促進する炭素捕集用触媒を有する炭素捕集部に供給し、前記炭素捕集部内で固体炭素を生成させることと、
を含む、固体炭素を捕集する方法。
【請求項4】
前記炭素捕集部内の水素を含むガスから、水素を選択的に透過する水素分離膜によって、水素を含むリサイクル水素含有ガスを生成させることと、
前記リサイクル水素含有ガスを前記第一反応部に供給することと、
を更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記炭素捕集部内で固体炭素及び二酸化炭素が生成され、
当該方法が、前記炭素捕集部内の二酸化炭素を含むリサイクル二酸化炭素含有ガスを、前記第一反応部、前記第二反応部、又はこれらの両方に供給することを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
水素及び二酸化炭素からメタンを生成するメタン化反応を促進するメタン化反応触媒を有する第一反応部と、
メタン及び二酸化炭素から一酸化炭素及び水素を生成するドライ改質反応を促進するドライ改質触媒を有する第二反応部と、
を備え、
前記第一反応部から排出されるガスが第二反応部に供給されるように、前記第一反応部と前記第二反応部とが接続されている、
気相反応装置。
【請求項7】
当該気相反応装置が、前記第一反応部にメタン及び水素を供給できるように前記第一反応部に接続されたガス供給部を更に備え、
前記ガス供給部が、前記第一反応部に供給される水素の物質量がX(H)で、前記第一反応部に供給される二酸化炭素の物質量がX(CO)であるとき、比率X(H)/X(CO)を4.0未満に調節できるように構成されたガス調節部を有する、請求項6に記載の気相反応装置。
【請求項8】
当該気相反応装置が、一酸化炭素から固体炭素及び二酸化炭素を生成する不均化反応、又は一酸化炭素から固体炭素及び水を生成する還元反応のうち少なくとも一方を促進する炭素捕集用触媒を有する炭素捕集部を更に備え、
前記第二反応部から排出されるガスが前記炭素捕集部に供給されるように、前記第二反応部と前記炭素捕集部とが接続されている、
請求項6又は7に記載の気相反応装置。
【請求項9】
当該気相反応装置が、水素を選択的に透過する水素分離膜を含むガス分離部を更に備え、
前記水素分離膜が、前記水素分離膜の一方の面が前記炭素捕集部内で生成したガスと接触するように設けられ、前記ガス分離部が、前記水素分離膜を透過したガスが前記第一反応部に供給されるように前記第一反応部に接続されている、
請求項6又は7に記載の気相反応装置。
【請求項10】
前記炭素捕集部内から排出されるガスが前記第一反応部、前記第二反応部又はその両方に供給されるように、前記炭素捕集部と前記第一反応部、前記第二反応部又はその両方とが接続されている、
請求項6又は7に記載の気相反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一酸化炭素及び水素を含む混合ガスを製造する方法、固体炭素を捕集する方法、及び気相反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所等の各種の産業設備から排出される二酸化炭素を資源化するために、二酸化炭素をメタンに転化するメタン化反応の利用が検討されている(例えば、特許文献1)。生成したメタンは燃料として利用可能であるが、その際に二酸化炭素が発生するため、二酸化炭素の発生しないメタンの利用法に関して開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-100597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一側面は、二酸化炭素からメタン化反応により生成するメタンを、生成時の水素の消費量を抑制するとともに、メタンからの二酸化炭素の生成を抑えながら、効率的に利用する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面は、一酸化炭素及び水素を含む混合ガスを製造する方法に関する。この方法は、水素及び二酸化炭素からメタンを生成するメタン化反応を促進するメタン化反応触媒を有する第一反応部に、水素及び二酸化炭素を供給し、メタン及び二酸化炭素を含む反応生成ガスを前記第一反応部から排出することと、前記反応生成ガスを含むガスを、メタン及び二酸化炭素から一酸化炭素及び水素を生成するドライ改質反応を促進するドライ改質触媒を有する第二反応部に供給し、一酸化炭素及び水素を含む混合ガスを前記第二反応部から排出することとを含む。前記第一反応部に供給される水素の物質量がX(H)で、前記第一反応部に供給される二酸化炭素の物質量がX(CO)であるとき、比率X(H)/X(CO)が4.0未満である。
【0006】
本開示の別の一側面は、上記方法によって、一酸化炭素及び水素を含む混合ガスを製造することと、前記混合ガスを、一酸化炭素から固体炭素及び二酸化炭素を生成する不均化反応、又は一酸化炭素の水素還元で固体炭素と水を生成する還元反応のうち少なくとも一方を促進する炭素捕集用触媒を有する炭素捕集部に供給し、前記炭素捕集部内で固体炭素を生成させることとを含む、固体炭素を捕集する方法に関する。
【0007】
本開示の更に別の一側面は、水素及び二酸化炭素からメタンを生成するメタン化反応を促進するメタン化反応触媒を有する第一反応部と、メタン及び二酸化炭素から一酸化炭素及び水素を生成するドライ改質反応を促進するドライ改質触媒を有する第二反応部と、を備える気相反応装置に関する。前記第一反応部から排出されるガスが前記第二反応部に供給されるように、前記第一反応部と前記第二反応部とが接続されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一側面によれば、二酸化炭素からメタン化反応により生成するメタンを、水素の消費量を抑制するとともに、メタンからの二酸化炭素の生成を抑えながら、効率的に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】気相反応装置の一例を示すブロック図である。
図2】第一反応部又は第二反応部として用いられる反応装置の一例を示す模式図である。
図3】気相反応装置の一例を示すブロック図である。
図4】X(H)/X(CO)が2.0、3.0又は4.0である場合のメタン化反応におけるCO転化率を示すグラフである。
図5】Y(CO)/Y(CH)が0.5、0.8、1.0、1.2、1.5又は2.0である場合のドライ改質反応におけるCH転化率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は以下の例に限定されるものではない。
【0011】
図1は、気相反応装置の一例を示すブロック図である。図1に示される気相反応装置100は、メタン化反応のための第一反応部1と、ドライ改質反応のための第二反応部2とを備える。第一反応部1は、第一反応器と、第一反応器内に配置された、メタン化反応を促進するメタン化反応触媒とを有する。第二反応部2は、第二反応器と、第二反応器内に配置された、ドライ改質反応を促進するドライ改質触媒とを有する。メタン化反応は、水素及び二酸化炭素からメタンを生成する反応である。ドライ改質反応は、メタン及び二酸化炭素から一酸化炭素及び水素を生成する反応である。
メタン化反応:CO+4H→CH+2H
ドライ改質反応:CH+CO→2CO+2H
【0012】
第一反応部1及び第二反応部2は、それぞれ、ガス入口及びガス出口を有する。第一反応部1のガス出口から排出されるガスが、第二反応部2のガス入口から第二反応部2に供給されるように、第一反応部1と第二反応部2とが、ガス流路を形成する配管等を介して接続されている。
【0013】
図2は、第一反応部1又は第二反応部2として用いられる反応装置の一例を示す模式図である。図2に示される反応装置10は、円筒形の反応管11(第一反応器又は第二反応器)と、反応管11内に収容された構造体触媒13と、反応管11の両端にそれぞれ設けられたガス入口15A及びガス出口15Bとを備える。構造体触媒13は、基材及び基材上に形成された触媒層を有する。触媒層は、メタン化反応触媒、又はドライ改質触媒を含む。触媒層が、触媒を担持する担体を含んでもよい。原料ガスGがガス入口15Aから反応管11に導入される。反応管11内の原料ガス中で、構造体触媒13が有する触媒の作用によってメタン化反応又はドライ改質反応が進行する。反応によって生成した生成物ガスGが、ガス出口15Bから排出される。
【0014】
構造体触媒13の基材は、ねじれた長尺の板状体であり、スパイラル型と称されることがある。構造体触媒の基材の形態はこれに限られず、例えばハニカムであってもよい。
【0015】
図1に示される気相反応装置100を、一酸化炭素及び水素を含む混合ガスを製造するために用いることができる。気相反応装置100を用いて混合ガスを製造する方法は、例えば、第一反応部1に水素及び二酸化炭素を供給し、メタン及び二酸化炭素を含む反応生成ガスG1を第一反応部1から排出することと、反応生成ガスG1を含むガスを、第二反応部2に供給し、一酸化炭素及び水素を含む混合ガスG2を第二反応部2から排出することとを含む。
【0016】
第一反応部1において進行するメタン化反応の化学量論的関係によれば、二酸化炭素の物質量に対する水素の物質量の比率(モル比)は4である。これよりも水素の比率を減少させると、消費されるCOの比率(CO転化率)が低下する。ただし、消費された二酸化炭素のうち、メタンに転化された部分の割合(CH選択性)は十分に高く維持される。CO転化率が低下すると、第一反応部1から排出される反応生成ガスG1が二酸化炭素を高い比率で含むことができる。本発明者らの知見によれば、二酸化炭素を高い比率で含むガスを用いることにより、ドライ改質反応をより効率的に且つ長期間にわたって進行させることができる。すなわち、メタン化反応のために供給される水素の量を低く抑えることにより、かえって、メタン化反応に続くドライ改質反応をより効率的に且つ長期間にわたって進行させることができる。
【0017】
以上の観点から、第一反応部1に供給される水素の物質量(モル)がX(H)で、第一反応部に供給される二酸化炭素の物質量(モル)がX(CO)であるとき、比率X(H)/X(CO)が4.0未満であることができる。X(H)/X(CO)は、3.9以下、3.8以下、3.7以下、3.6以下、3.5以下、3.4以下、3.3以下、3.2以下、3.1以下、3.0以下、2.9以下、2.8以下、2.7以下、2.6以下、2.5以下、2.4以下、2.3以下、2.2以下、2.1以下又は2.0以下であってもよい。X(H)/X(CO)は、0.5以上であってもよい。
【0018】
水素及び二酸化炭素を含む原料ガスを予め形成し、これを第一反応部1に供給してもよいし、水素を含む原料ガス、及び二酸化炭素を含む原料ガスを、それぞれ第一反応部1に供給してもよい。水素、及び二酸化炭素が第一反応部1に連続的に又は断続的に供給される場合、比率X(H)/X(CO)は、単位時間当たり(例えば、1分当たり)に第一反応部1に供給される水素及び二酸化酸素の物質量の比率であることができる。比率X(H)/X(CO)は、メタン化反応の間、一定でも変動してもよい。第一反応部1に供給される二酸化炭素は、火力発電所等の各種の産業設備から排出された排ガスに由来する二酸化炭素を含んでもよい。
【0019】
第一反応部1にメタン及び水素を供給できるように、第一反応部1に接続されたガス供給部が設けられる。ガス供給部は、例えば、メタン及び水素の供給源にそれぞれ接続された配管と、メタン及び水素の供給量を制御するガス調節部とを有する。ガス調節部は、比率X(H)/X(CO)を4.0未満に調節できるように構成される。ガス調節部は、例えば、配管に装着された流量調整器であってもよい。
【0020】
第一反応部1に供給される原料ガスの総量は、例えば1分当たり1~10Lであってもよい。メタン化反応の間、第一反応部1を、第一反応部1の周囲に設けられた加熱装置によって加熱してもよい。メタン化反応のための加熱温度は、例えば30~500℃であってもよい。
【0021】
第一反応部1内に配置されるメタン化反応触媒は、メタン化反応を促進する触媒として通常用いられるものから選択することができる。メタン化反応触媒は、例えば、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、及びジルコニウムから選ばれる1種以上の金属を含んでもよい。メタン化反応触媒が、多孔質担体(例えば酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化ケイ素、及びこれらから選ばれる2種以上を含む複合化合物)に担持されていてもよい。
【0022】
反応生成ガスG1を、そのまま第二反応部2に供給してもよい。あるいは、反応生成ガスG1と、二酸化炭素等の追加のガスとを混合し、形成された混合ガスを第二反応部2に供給してもよい。第二反応部2に供給される、反応生成ガスG1を含むガスにおいて、二酸化炭素の物質量(モル)がY(CO)で、メタンの物質量(モル)がY(CH)であるとき、比率Y(CO)/Y(CH)が1.0以上であってもよい。第二反応部2において進行するガス改質反応の化学量論的関係によれば、比率Y(CO)/Y(CH)は1であるが、過剰量のCOを含むガスを用いることにより、ガス改質反応をより効率的且つ長期間にわたって進行させることができる。係る観点から、Y(CO)/Y(CH)が1.1以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上、1.5以上、1.6以上、1.7以上、1.8以上、1.9以上、又は2.0以上であってもよい。Y(CO)/Y(CH)は、3.0以下であってもよい。例えば、第一反応部1のメタン化反応におけCO転化率が5~50%であると、Y(CO)/Y(CH)が1.0以上であるガスが形成され易い。
【0023】
反応生成ガスG1は、通常、メタン化反応によって生成する水(水蒸気)を含む。第二反応部2に水も供給されると、ドライ改質反応だけでなく、下記反応式(1)及び(2)で表される水蒸気改質反応によっても第二反応部2において一酸化炭素及び水素が生成することが多い。水蒸気改質反応によって、更に効率的に、一酸化炭素及び水素を含む混合ガスを生成させることができる。第二反応部2において、下記反応式(1)及び(2)で表される水蒸気改質反応も進行することから、水蒸気を高い割合で含むガスを第二反応部2に供給することにより、主に水蒸気改質反応によって生成するガスを固体炭素の捕集等のために利用することもできる。
水蒸気改質反応:
(1)CH+HO→CO+3H
(2)CH+2HO→CO+4H
【0024】
第二反応部2に供給されるガスの総量は、例えば1分当たり1~10Lであってもよい。ドライ改質反応の間、第二反応部2を、第二反応部2の周囲に設けられた加熱装置によって加熱してもよい。ドライ改質反応のための加熱温度は、例えば400~1000℃であってもよい。
【0025】
第二反応部2内に配置されるドライ改質触媒は、ドライ改質反応を促進する触媒として通常用いられるものから選択することができる。ドライ改質触媒は、例えば、ニッケル、コバルト、モリブデン、ロジウム、マグネシウム、鉄、アルミニウム又はこれらの酸化物を含んでもよい。ドライ改質触媒が、多孔質担体(例えば酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化ケイ素、及びこれらから選ばれる2種以上を含む複合化合物)に担持されていてもよい。ドライ改質触媒は、水蒸気改質反応を促進する触媒としても機能することが多い。
【0026】
第二反応部2から排出される、一酸化炭素及び水素を含む混合ガスG2を、例えば、一酸化炭素の不均化反応又は還元反応によって固体炭素を捕集するために利用することができる。図3は、固体炭素を捕集するために用いることのできる気相反応装置の一例を示すブロック図である。図3に示される気相反応装置101は、図1の気相反応装置100と同様の第一反応部1及び第二反応部2に加えて、第二反応部2の下流側に設けられた炭素捕集部3と、ガス分離部4とを備える。
【0027】
炭素捕集部3は、一酸化炭素から固体炭素及び二酸化炭素を生成する不均化反応(CO不均化反応)、又は一酸化炭素から固体炭素及び水を生成する還元反応(CO還元反応)のうち少なくとも一方を促進する炭素捕集用触媒を有する。第二反応部2から排出される混合ガスG2、又は、混合ガスG2に必要により他のガスが混合されたガスが炭素捕集部3に供給されるように、炭素捕集部3と第二反応部2とが配管等を介して接続されている。
CO不均化反応:2CO→C+CO
CO還元反応:CO+H→C+H
【0028】
炭素捕集部3において、主としてCO不均化反応により、固体炭素が析出するとともに、二酸化炭素のガスが生成する。第一反応部におけるメタン化反応、第二反応部におけるドライ改質反応、及び炭素捕集部における炭素捕集の組み合わせにより、第一反応部1に供給された二酸化炭素を、固体炭素の形態で効率的に回収することができる。ドライ改質部における反応の効率化は、より効率的な固体炭素捕集を可能にする。
【0029】
炭素捕集部3内に配置される炭素捕集用触媒は、CO不均化反応又はCO還元反応を促進する触媒として通常用いられるものから選択することができる。炭素捕集用触媒は、例えば、酸化鉄、酸化コバルト、酸化マグネシウム、酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化マンガン、金属鉄、金属コバルト、金属マグネシウム、金属モリブデン、金属ニッケル及び金属マンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属含有成分を含んでもよい。炭素捕集部3は、反応管と、反応管の内壁面の全体又は一部を覆う、炭素捕集用触媒を含む触媒層とを有していてもよい。これにより、触媒層上に効率的に固体炭素を析出させることができる。
【0030】
炭素捕集部3に供給されるガスの総量は、例えば1分当たり1~10Lであってもよい。CO不均化反応又はCO還元反応による固体炭素の捕集の間、炭素捕集部3を、炭素捕集部3の周囲に設けられた加熱装置によって加熱してもよい。CO不均化反応又はCO還元反応のための加熱温度は、例えば200~900℃であってもよい。
【0031】
ガス分離部4は、水素を選択的に透過する水素分離膜を有する。水素分離膜は、水素分離膜の一方の面が炭素捕集部3内で生成したガスと接触するように設けられる。ガス分離部4は、水素分離膜を透過したガスが第一反応部1に供給されるように、配管等を介して第一反応部1に接続されている。ガス分離部4は、炭素捕集部3内の水素ガスを、第一反応部1におけるメタン化反応のために効率的に利用することを可能にする。水素ガスを利用する方法は、例えば、混合ガスG2に含まれる水素と炭素捕集部3内で生成した二酸化炭素とを含むガスから、水素を選択的に透過する水素分離膜によって、水素を含むリサイクル水素含有ガスG3を生成させることと、リサイクル水素含有ガスG3を第一反応部1に供給することとを含む。この方法により、気相反応装置全体における水素の消費量をより一層低減することができる。水素分離膜は、水素を選択的に透過する膜として通常用いられているものであることができ、その例としてはバナジウム合金膜及びパラジウム合金膜が挙げられる。
【0032】
炭素捕集部3において生成した二酸化炭素を、第一反応部1におけるメタン化反応、第二反応部2におけるドライ改質反応、又はこれらの両方のために利用してもよい。その場合、炭素捕集部3内で生成した二酸化炭素を含むリサイクル二酸化炭素含有ガスG4を、第一反応部1、第二反応部2、又はこれらの両方に供給してもよい。そのために、気相反応装置101が、炭素捕集部3と第一反応部1、第二反応部2又はこれらの両方との間を接続するガス流路を形成する配管等を備えていてもよい。この方法により、気相反応装置全体において、二酸化炭素を、より一層効率的に固体炭素として回収することができる。リサイクル二酸化炭素含有ガスG4は、ガス分離部4の水素分離膜との接触により水素の濃度が低下したガスであってもよい。
【実施例0033】
本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
1.メタン化反応試験
図2に示したような、ねじれた長尺の板状体であるアルミニウム成形品(幅7mm、長さ45mm)を、基材として準備した。この基材の表面上に、Ru及びCeOを含む触媒層を形成し、スパイラル型の構造体触媒を得た。同様の構造体触媒を複数作製した。
【0035】
2本の反応管(内径8mm)に、それぞれ4本の構造体触媒を挿入した。反応管内に全長180mmの構造体触媒が配置された。2本の反応管を、配管を介して直列に接続した。
【0036】
反応管を200℃に加熱しながら、CO、H、O及びNを含む原料ガスを反応管内に供給した。ガス供給量は2L/分であった。各ガスの体積比を、CO:H:O:N=10:(26~56):3:(41~61)の間で調整し、それによりHとCOとの物質量の比率X(H)/X(CO)を2.0、3.0又は4.0に設定した。2本目の反応管の入口において3体積%のOを追加した。
【0037】
2本目の反応管から流出したガスの成分をガスクロマトグラフィーで分析し、それによりCOの転化率、及びCH生成の選択率を求めた。図4は、原料ガスにおける比率X(H)/X(CO)が2.0、3.0又は4.0である場合のCO転化率を示すグラフである。グラフ中の括弧内の数値はCH生成の選択率である。COに対するHの当量比が4.0未満であると、CHの生成の高い選択率を維持しながらCO転化率が低下する傾向が確認された。CO転化率が低下すると、反応管からCOを比較的高い比率で含むガスが排出される。
【0038】
2.ドライ改質反応試験
ねじれた長尺の板状体であるアルミニウム成形品(幅7mm、長さ55mm)を、基材として準備した。この基材の表面上に、アルミナ多孔質体、及びアルミナ多孔質体に担持された金属ニッケルを含む触媒層を形成し、スパイラル型の構造体触媒を得た。同様の構造体触媒を複数作製した。
【0039】
反応管(内径8mm)に6本の構造体触媒を挿入した。反応管内に全長330mmの構造体触媒が配置された。反応管を700℃に加熱しながら、CO及びCHを含む原料ガスを反応管内に供給した。ガス供給量は70mL/分であった。原料ガスにおけるCOとCHとの物質量の比率Y(CO)/Y(CH)を0.5、0.8、1.0、1.2、1.5又は2.0に設定した。
【0040】
反応管から流出したガスの成分をガスクロマトグラフィーで分析し、それによりCHの転化率、HとCOとの比率H/CO(モル比)を求めた。図5は、CHの転化率、及び比率H/COと、反応時間との関係を示すグラフである。比率Y(CO)/Y(CH)が、1.2、1.5又は2.0であるときのCHの転化率が、比率Y(CO)/Y(CH)がドライ改質反応の量論比である1.0であるときのCHの転化率と比較して高いことが確認された。このことから、メタン化反応の反応器から排出される、COを比較的高い比率で含むガスを用いることにより、ドライ改質反応を効率的に且つ長期間にわたって進行させることが可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0041】
1…第一反応部、2…第二反応部、3…炭素捕集部、4…ガス分離部、100,101…気相反応装置、G1…反応生成ガス、G2…混合ガス、G3…リサイクル水素含有ガス、G4…リサイクル二酸化炭素含有ガス。
図1
図2
図3
図4
図5