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特開2023-66448農作業用台車の自動運転システム及び農作業用台車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066448
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】農作業用台車の自動運転システム及び農作業用台車
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20230509BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
G05D1/02 H
G05D1/02 N
G05D1/02 S
A01B69/00 303M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177044
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000148380
【氏名又は名称】株式会社前田製作所
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】湯沢 信介
(72)【発明者】
【氏名】太田 章一
(72)【発明者】
【氏名】丸山 達也
(72)【発明者】
【氏名】小林 一樹
(72)【発明者】
【氏名】青柳 悠也
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB20
2B043BA09
2B043BB20
2B043DA17
2B043EA37
2B043EA40
2B043EB07
2B043EB09
2B043EB16
2B043EB17
2B043EB18
2B043EC12
2B043EC14
2B043ED02
2B043ED03
2B043ED12
5H301AA03
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD01
5H301DD06
5H301DD15
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG10
5H301HH01
5H301LL01
5H301LL02
5H301LL03
5H301LL06
(57)【要約】
【課題】圃場内において、集荷所と収穫現場との間に農作業用台車を自動走行し、かつ、走行ルート上の障害物を回避して走行することを可能にし、収穫物の運搬作業の省力化を実現することが可能な「農作業用台車の自動運転システム」を提供すること。
【解決手段】農作業用台車12は、収穫現場11の位置情報である第2位置情報D2と、農作業用台車12の自己の第3位置情報D3に基づいて収穫現場11まで移動する。収穫物を積載した後、集荷所10の位置情報である第1位置情報D1と第3位置情報D3とに基づき収穫現場11から集荷所10まで移動する。集荷所10で収穫物を荷下ろしした後、収穫現場11まで移動する際には、第2位置情報D2と第3位置情報D3とに基づき集荷所10から収穫現場11まで移動する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1位置情報取得装置を有し収穫物の集荷所の位置に関する第1位置情報を送信可能な第1無線送信装置と、
第2位置情報取得装置を有し収穫現場の位置に関する第2位置情報を送信可能な第2無線送信装置と、
第3位置情報取得装置を有し自己の位置に関する第3位置情報を取得可能であり、前記第1無線送信装置からの前記第1位置情報、及び前記第2無線送信装置からの前記第2位置情報を受信する無線受信装置を有し、前記第1位置情報、前記第2位置情報及び前記第3位置情報に基づき前記収穫現場と前記集荷所との間を自動走行することが可能な農作業用台車と、を有し、
前記農作業用台車は、前記収穫現場で積んだ収穫物を前記集荷所まで運搬する際には、前記第1位置情報と前記第3位置情報とに基づき前記収穫現場から前記集荷所まで移動し、前記集荷所で収穫物を荷下ろしした後、前記収穫現場まで移動する際には、前記第2位置情報と前記第3位置情報とに基づき前記集荷所から前記収穫現場まで移動することが可能に構成されている、
ことを特徴とする農作業用台車の自動運転システム。
【請求項2】
請求項1に記載の農作業用台車の自動運転システムにおいて、
事前に圃場地図情報を作成し、前記圃場地図情報に走行路を登録することが可能な地図情報作成部をさらに有し、
前記農作業用台車は、
前記第1位置情報、前記第2位置情報及び前記走行路に基づき任意の走行ルートを作成することが可能な走行ルート作成部と、前記圃場地図情報及び前記走行路を記憶する地図情報記憶部と、
を有している、
ことを特徴とする農作業用台車の自動運転システム。
【請求項3】
請求項2に記載の農作業用台車の自動運転システムにおいて、
前記圃場地図情報には、圃場の境界線が登録されており、
前記走行ルートは、前記農作業用台車が前記境界線を越えない範囲に作成されている、
ことを特徴とする農作業用台車の自動運転システム。
【請求項4】
請求項1に記載の農作業用台車の自動運転システムにおいて、
前記農作業用台車は、走行ルート上の障害物などを検知する障害物検知センサをさらに有し、
前記走行ルートを走行中に前記障害物検知センサが前記障害物を検知した場合には、「前記障害物が検知されなくなるまで走行を停止する」又は「前記走行ルートを変更して前記障害物を回避して走行を継続する」よう走行制御される、
ことを特徴とする農作業用台車の自動運転システム。
【請求項5】
請求項4に記載の農作業用台車の自動運転システムにおいて、
前記農作業用台車は、前記障害物検知センサが前記走行ルート上に前記障害物を検知した場合には、前記障害物とすれ違いが可能な前記走行ルートを作成して走行を継続し、前記障害物を通り過ぎた位置で、事前に設定されている前記走行ルートに従って走行するよう制御される、
ことを特徴とする農作業用台車の自動運転システム。
【請求項6】
請求項2に記載の農作業用台車の自動運転システムにおいて、
前記圃場地図情報には、無人飛行体によって空撮された地図画像を重畳することが可能である、
ことを特徴とする農作業用台車の自動運転システム。
【請求項7】
請求項1に記載の農作業用台車の自動運転システムにおいて、
圃場内に、並行して作業をする複数の収穫現場がある場合、
前記複数の前記収穫現場毎に前記第2無線送信装置を有し、
前記農作業用台車は、所定の走行ルートに従って、前記集荷所から前記複数の前記収穫現場のうちのいずれかの前記収穫現場に向かって移動することが可能である、
ことを特徴とする農作業用台車の自動運転システム。
【請求項8】
請求項1に記載の農作業用台車の自動運転システムにおいて、
圃場内に複数の前記農作業用台車が同時に走行することが可能であり、
前記複数の前記農作業用台車は、それぞれが所定の手順に従って、前記集荷所から前記収穫現場まで移動し、前記収穫現場から前記集荷所まで移動することが可能に制御される、
ことを特徴とする農作業用台車の自動運転システム。
【請求項9】
収穫物の集荷所の位置に関する第1位置情報、収穫現場の位置に関する第2位置情報を、及び、自己の位置に関する第3位置情報を取得することが可能な第3位置情報取得装置を有する農作業用台車を有し、
前記農作業用台車は、前記集荷所から前記収穫現場まで移動する際には、前記第2位置情報と前記第3位置情報に基づいて前記集荷所から前記収穫現場まで移動し、前記収穫現場で積んだ収穫物を前記集荷所まで運搬する際には、前記第1位置情報と前記第3位置情報とに基づき前記収穫現場から前記集荷所まで移動し、前記集荷所で収穫物を荷下ろしした後、前記収穫現場まで移動する際には、前記第2位置情報と前記第3位置情報とに基づき前記集荷所から前記収穫現場まで移動することが可能に構成されている、
ことを特徴とする農作業用台車の自動運転システム。
【請求項10】
収穫物の集荷所の位置に関する第1位置情報、収穫現場の位置に関する第2位置情報を、及び、自己の位置に関する第3位置情報を取得することが可能な第3位置情報取得装置を有する農作業用台車であって、
前記農作業用台車は、前記収穫現場で積んだ収穫物を前記集荷所まで運搬する際には、前記第1位置情報と前記第3位置情報とに基づき前記収穫現場から前記集荷所まで移動し、前記集荷所で収穫物を荷下ろしした後、前記収穫現場まで移動する際には、前記第2位置情報と前記第3位置情報とに基づき前記集荷所から前記収穫現場まで移動することが可能に構成されている、
ことを特徴とする農作業用台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業用台車の自動運転システム及び農業用台車に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農業就業人口の減少や農業就業者の高齢化が進み、農作業における省力化が喫緊の課題となっている。農作業の負担を軽減するために、農作業を機械化、自動化するための開発が進んでいる。しかしながら、圃場内で収穫したリンゴなどの果実や野菜など重い収穫物を集荷所まで運搬する作業は、農作業者にとって大きな負担となっている。
【0003】
収穫物の運搬の省力化を担うシステムとして、収穫物を積載し運搬するための農作業用支援システムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。この農作業支援システムは、収穫作業を行う作業者が携行する無線送信装置、運搬作業を担う農作業補助ロボット(農作業用台車に置き換えることができる)が備える無線受信装置、及び収穫物を運搬するトラックが備える無線送信装置で構成されている。このような農作業支援システムにおいては、農作業用台車は作業者からの発信信号を受信すると作業者に追従して自動走行し、作業者の近傍の所定位置で停止する。そして、農作業用台車は収穫物を積載したところでトラックの発信信号に向かって自動走行し、トラックの近傍の所定位置で停止するよう構成されている。収穫物をトラックに移載した後の農作業用台車は、再び、作業者からの発信信号に向かって自動走行し、作業者の近くの所定位置で停止し、作業者は再び積載作業をする。
【0004】
また、農作業の作業精度を向上させるための農作業支援システムがある(例えば、特許文献2参照)。この農作業支援システムは、作業者が携行する第1の位置情報取得装置、作業車両(農作業用台車に置き換えることができる)が備える第2の位置情報取得装置、作業者と農作業用台車との間で送受信可能な通信ユニットを有している。農作業用台車は、作業者の位置情報を受信し、作業者に追従するように規定された走行ルートに従って自動走行する。農作業用台車の走行ルートは、作業者が歩いたり、作業車両を走行させたりして得た圃場の外周輪郭(境界線)情報と、作業車両の諸元情報とから設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-66809号公報
【特許文献2】特開2018-201342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の農作業用台車は、作業者が携行する無線送信装置の発信信号に従い作業者に向かって走行し、トラックが携行する無線送信装置の発信信号に従いトラックに向かって走行する。従って、収穫対象の植栽物の畝が多数列存在する場合又は複数位置に散在する圃場においては、農作業用台車を任意の走行ルートで自動走行させることは困難である。
【0007】
また、特許文献2に記載の作業車両は、圃場の外周輪郭情報と農作業用台車の諸元(サイズや走行手段の仕様)から作成した走行ルートに基づき走行する。このように作成される走行ルートは、直線的又は周回的、もしくは一定の間隔のUターンで作成されるものであるから、収穫対象の植栽物の畝が不規則に多数列存在する場合又は複数位置に散在する圃場では、農作業用台車を任意の走行ルートで走行させることは困難である。
【0008】
また、特許文献2に記載の農作業支援システムは、農作業用台車の走行始点及び走行終点が事前に設定された固定位置となっている。例えば、作業車両が積載した収穫物を運搬するトラックなどは位置情報取得装置を備えていないために、トラックの待機位置(走行終点)が移動した場合などには対応することができない。
【0009】
また、特許文献1及び特許文献2に記載の農作業支援システムは、走行ルートにある障害物や走行不可能な場所などの情報を走行ルートに加えたり、障害物を検知して回避走行させたりすることができないという課題がある。
【0010】
そこで、本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、圃場内において、移動することがある集荷所と収穫現場との間に農作業用台車を自動走行させることが可能であり、かつ、走行ルート上の障害物を回避して走行することを可能にし、収穫物の運搬作業の省力化を実現することが可能な「農作業用台車の自動運転システム」及び農業用台車を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1]本発明の農作業用台車の自動運転システムは、第1位置情報取得装置を有し収穫物の集荷所の位置に関する第1位置情報を送信可能な第1無線送信装置と、第2位置情報取得装置を有し収穫現場の位置に関する第2位置情報を送信可能な第2無線送信装置と、第3位置情報取得装置を有し自己の位置に関する第3位置情報を取得可能であり、前記第1無線送信装置からの前記第1位置情報、及び前記第2無線送信装置からの前記第2位置情報を受信する無線受信装置を有し、前記第1位置情報、前記第2位置情報及び前記第3位置情報に基づき前記収穫現場と前記集荷所との間を自動走行することが可能な農作業用台車と、を有し、前記農作業用台車は、前記収穫現場で積載した収穫物を前記集荷所まで運搬する際には、前記第1位置情報と前記第3位置情報とに基づき前記収穫現場から前記集荷所まで移動し、前記集荷所で収穫物を荷下ろしした後、前記収穫現場まで移動する際には、前記第2位置情報と前記第3位置情報とに基づき前記集荷所から前記収穫現場まで移動することが可能に構成されていることを特徴とする。
【0012】
[2]本発明の農作業用台車の自動運転システムにおいては、事前に圃場地図情報を作成し、前記圃場地図情報に走行路を登録することが可能な地図情報作成部をさらに有し、前記農作業用台車は、前記走行路に基づき任意の走行ルートを作成することが可能な走行ルート作成部と、前記圃場地図情報及び前記走行路を記憶する地図情報記憶部と、を有していることが好ましい。
【0013】
[3]本発明の農作業用台車の自動運転システムにおいては、前記圃場地図情報には、圃場の境界線が登録されており、前記走行ルートは、前記農作業用台車が前記境界線を越えない範囲に作成されていることが好ましい。
【0014】
[4]本発明の農作業用台車の自動運転システムにおいては、前記農作業用台車は、走行ルート上の障害物などを検知する障害物検知センサをさらに有し、前記走行ルートを走行中に前記障害物検知センサが前記障害物を検知した場合には、「前記障害物が検知されなくなるまで走行を停止する」又は「前記走行ルートを変更して前記障害物を回避して走行を継続する」よう走行制御されることが好ましい。
【0015】
[5]本発明の農作業用台車の自動運転システムにおいては、前記農作業用台車は、前記障害物検知センサが前記走行ルート上に前記障害物を検知した場合には、前記障害物とすれ違いが可能な走行ルートを作成して走行を継続し、前記障害物を通り過ぎた位置で、事前に設定されている前記走行ルートに従って走行するよう制御されることが好ましい。
【0016】
[6]本発明の農作業用台車の自動運転システムにおいては、前記圃場地図情報には、無人飛行体によって空撮された地図画像を重畳することが可能であることが好ましい。
【0017】
[7]本発明の農作業用台車の自動運転システムにおいては、圃場内に、並行して作業をする複数の収穫現場がある場合、前記複数の前記収穫現場毎に前記第2無線送信装置を有し、前記農作業用台車は、所定の走行ルートに従って、前記集荷所から前記複数の前記収穫現場のうちのいずれかの前記収穫現場に向かって移動することが可能であることが好ましい。
【0018】
[8]本発明の農作業用台車の自動運転システムにおいては、圃場内に複数の前記農作業用台車が同時に走行することが可能であり、前記複数の前記農作業用台車は、それぞれが所定の手順に従って、前記集荷所から前記収穫現場まで移動し、前記収穫現場から前記集荷所まで移動することが可能に制御されることが好ましい。
【0019】
[9]本発明の農作業用台車の自動運転システムにおいては、収穫物の集荷所の位置に関する第1位置情報、収穫現場の位置に関する第2位置情報、及び、自己の位置に関する第3位置情報を取得することが可能な第3位置情報取得装置を有する農作業用台車を有し、前記農作業用台車は、前記収穫現場で積んだ収穫物を前記集荷所まで運搬する際には、前記第1位置情報と前記第3位置情報とに基づき前記収穫現場から前記集荷所まで移動し、前記集荷所で収穫物を荷下ろしした後、前記収穫現場まで移動する際には、前記第2位置情報と前記第3位置情報とに基づき前記集荷所から前記収穫現場まで移動することが可能に構成されていることを特徴とする。
【0020】
[10]本発明の農作業用台車は、収穫物の集荷所の位置に関する第1位置情報、収穫現場の位置に関する第2位置情報を、及び、自己の位置に関する第3位置情報を取得することが可能な第3位置情報取得装置を有する農作業用台車であって、前記農作業用台車は、前記収穫現場で積んだ収穫物を前記集荷所まで運搬する際には、前記第1位置情報と前記第3位置情報とに基づき前記収穫現場から前記集荷所まで移動し、前記集荷所で収穫物を荷下ろしした後、前記収穫現場まで移動する際には、前記第2位置情報と前記第3位置情報とに基づき前記集荷所から前記収穫現場まで移動することが可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の「農作業用台車の自動運転システム」においては、農作業用台車は移動中にリアルタイムで自己の位置情報(第3位置情報)を取得することが可能である。また、農作業用台車は、移動中に収穫現場の位置情報(第2位置情報)、及び集荷所の位置情報(第1位置情報)を受信し、自己の位置に対する収穫現場及び集荷所それぞれの相対位置を認識することが可能であることから、所定の走行ルートに従って集荷所と収穫現場との間を自動走行することが可能となる。
【0022】
また、農作業用台車は障害物検知センサを有している。障害物検知センサが走行ルート上の人、他の農作業用台車などの障害物を検知すると、農作業用台車は停止するか、障害物を回避する走行ルートを作成して障害物回避走行することが可能となる。
【0023】
また、圃場内において、並行して収穫する複数の収穫現場がある場合には、収穫現場毎に第2無線送信装置を有していることから、農作業用台車は、集荷所と複数の収穫現場との間を自動走行することが可能となる。
【0024】
また、圃場内に複数の農作業用台車が走行する構成の場合には、複数の前記農作業用台車の1台1台が所定の手順に従って所定の走行ルートを走行するよう構成されていることから、各農作業用台車は集荷所と収穫現場との間を自動走行することが可能となる。
【0025】
さらに、農作業用台車は、集荷所の第1位置情報、収穫現場の第2位置情報及び自己の第3位置情報を取得可能である。そのため、上記[1]に記載の第1無線送信装置及び第2無線送信装置をそれぞれ集荷所、収穫現場に配置しない構成であっても、農作業用台車は集荷所と収穫現場との間を自動走行することが可能となる。
【0026】
以上のことから、本発明の農作業用台車の自動運転システムによれば、圃場内において、集荷所と収穫現場との間に農作業用台車を自動走行させることが可能であり、かつ、走行ルート上の障害物を回避して走行することを可能にし、収穫物の運搬作業の省力化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】自動運転システム1の構成の関係を示すブロック図である。
図2】農作業用台車12の構成の1例を示す斜視図である。
図3】農作業用台車12の走行制御の構成を示すブロック図である。
図4】走行ルートRを作成する方法を示す説明図である。
図5】農作業用台車12の走行例の第1例を示す説明図である。
図6】農作業用台車12の走行例の第2例を示す説明図である。
図7】農作業用台車12の障害物回避走行を示す説明図である。
図8】自動運転システム2の構成を示すブロック図である。
図9】自動運転システム2における走行方法の1例を示す説明図である。
図10】自動運転システム3の構成を示すブロック図である。
図11】自動運転システム3における走行方法の1例を示す説明図である。
図12】自動運転システム4の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態に係る「農作業用台車の自動運転システム1,2,3,4」について、図1図12を参照しながら説明する。なお、以降の説明において「農作業用台車の自動運転システム1,2,3,4」を簡略化して「自動運転システム1,2,3,4」と記載することがある。
【0029】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る自動運転システム1の構成を示すブロック図である。なお、自動運転システム1は、収穫物を集荷するための集荷所10と作業者Mが果実や野菜などを収穫する収穫現場11との間において農作業用台車12を自動走行させ、収穫現場11から集荷所10まで収穫物を運搬するためのシステムである。なお、作業者Mは一人とは限らない。
【0030】
集荷所10には、一旦、収穫物を集荷する場所、収穫物を選果する選果場、圃場50(図4参照)から集出荷場まで収穫物を運搬する手段であるトラックなどの荷積み場所を含み、それらの位置は圃場50内や圃場50の付近に配置される。なお、集荷所10は移動することがある。また、農作業用台車12の走行始点54及び走行終点55(図4参照)を合わせて集荷所10とすることがある。収穫現場11は、収穫作業の進行状況によって刻々と移動していく。作業者Mは、収穫用のコンテナ34(図2参照)に収穫物を収集し、そのコンテナ34を農作業用台車12に荷積みする。
【0031】
図1に示すように、自動運転システム1は、集荷所10の位置に関する第1位置情報D1を取得する第1位置情報取得装置13を有し第1位置情報D1を農作業用台車12に送信する第1無線送信装置14、及び収穫現場11の位置に関する第2位置情報D2を取得する第2位置情報取得装置15を有し第2位置情報D2を農作業用台車12に送信する第2無線送信装置16を有している。第1無線送信装置14及び第2無線送信装置16は、それぞれがユニット化され携行可能型(移動可能型)にすることが可能である。第1無線送信装置14は集荷所10の任意の位置に配置することが可能であり、第2無線送信装置16は収穫作業の進行状況によって移動する収穫現場11において作業者Mが携行し、又は収穫現場11に置かれたコンテナ34や作業者Mの近傍に配置してもよい。
【0032】
農作業用台車12は、自己の位置に関する第3位置情報D3を取得する第3位置情報取得装置18、及び、第1無線送信装置14から第1位置情報D1を受信し、第2無線送信装置16から第2位置情報D2を受信する無線受信装置17を有している。
【0033】
第1位置情報取得装置13、第2位置情報取得装置15及び第3位置情報取得装置18は、地球上の位置情報を正確に測位するGNSS(Global Navigation Satellite System)を使用する。なお、これら各位置情報取得装置は、正確な位置情報を取得するために、RTK(Real Time Kinematic)-GNSSを使用している。
【0034】
第1位置情報取得装置13、第2位置情報取得装置15及び第3位置情報取得装置18は、リアルタイムで第1位置情報D1、第2位置情報D2、第3位置情報D3を取得することが可能である。但し、集荷所10の位置が一定時間固定された後に移動する場合には、移動した後の位置を第1位置情報D1として取得し無線受信装置17に送信する。収穫現場11においては、事前に作業者Mの収穫速度に合わせて位置情報取得間隔を決めることが可能である。農作業用台車12においては、設定されている走行速度に合わせ第3位置情報D3の取得間隔を任意に設定することが可能である。
【0035】
次いで、農作業用台車12のシステム構成について図1を参照して説明する。なお、無線受信装置17をユニット化し、農作業用台車12の先端方向、後端方向又は下部中央部など、農作業用台車12のサイズや形態を考慮した任意の位置に無線受信装置17を配置することが可能である。
【0036】
自動運転システム1は、農作業用台車12の走行に関わる圃場地図情報D4を作成し、圃場地図情報D4に走行可能な走行路53(図2参照)を登録することが可能な地図情報作成部20を有している。農作業用台車12は、第1位置情報D1、第2位置情報D2及び走行路53の情報に基づき任意の走行ルートR(図5図7参照)を作成することが可能な走行ルート作成部25、及び圃場地図情報D4及び走行路53の情報を記憶する地図情報記憶部26を有している。地図情報作成部20は、農作業用台車12の外部に配置されるPC(コンピュータ)で構成される。走行ルート作成部25には、第1位置情報D1、第2位置情報D2及び第3位置情報D3が入力される。走行ルート作成部25は、集荷所10、収穫現場11及び農作業用台車12の位置を常時認識している。地図情報作成部20は、事前に取得した圃場地図情報D4に走行路53を登録し、地図情報記憶部26に入力する。走行ルート作成部25は、地図情報記憶部26が記憶している走行路53の情報、第1位置情報D1及び第2位置情報D2から、好適な走行ルートRを作成する。農作業用台車12は、走行ルートRに従って集荷所10と収穫現場11との間を自動走行する。
【0037】
農作業用台車12は、走行ルートRに基づき農作業用台車12の走行を制御する走行制御部27、及び、走行ルートR上の障害物H(図7参照)を検知するための障害物検知センサ28を有している。障害物検知センサ28には、カメラ、レーダー装置、超音波装置、接触センサなどを使用することが可能であり、検知対象物に対応して適宜選択することが可能である。また、複数種類の障害物検知センサ28を組み合わせることも可能である。障害物Hには、農作業用台車12の走行を妨げる可能性がある収穫物の残滓、地面の凹凸や傾斜面、泥濘、走行路53の狭隘場所など走行不可能な走行路53の他、走行路53上の「人」、他の農作業用台車12などが含まれる。
【0038】
障害物検知センサ28は、走行ルートR上にある障害物Hの有無を検出し、障害物Hを検知した際には障害物Hと農作業用台車12との相対的位置関係を検出する。相対的位置関係には、障害物Hの走行路面からの高さ、走行路面内の平面位置及び障害物Hの広がり具合などの情報を含み、それらを障害物Hの位置情報D5として走行ルート作成部25に入力する。走行ルート作成部25は、農作業用台車12が走行ルートRを変えずに走行することが可能か、回避して走行することが可能か、又は回避不可能かなどを判断し、走行ルートRを作成する。農作業用台車12の障害物回避走行については、図7を参照して説明する。
【0039】
無線受信装置17、走行ルート作成部25、地図情報記憶部26、走行制御部27及び障害物検知センサ28は、コントローラ29によって制御される。図示は省略するが、農作業用台車12には駆動源としてバッテリーが搭載され、第1無線送信装置14、第2無線送信装置16及び無線受信装置17は、それぞれ充電可能なリチウムイオン電池などが搭載されている。なお、地図情報作成部20は、農作業用台車12とは分離されたPCで構成され、インターネット回線又はダイレクトに地図情報記憶部26に接続される。
【0040】
図2は、農作業用台車12の構成の1例を示す斜視図である。農作業用台車12は、走行ルート作成部25、地図情報記憶部26、走行制御部27及びコントローラ29を格納する本体部30、本体部30の上部に収穫物を載置する荷台部31、及び走行手段として車輪32で構成されている。ユニット化された無線受信装置17は、農作業用台車12の任意の位置に配置される。なお、図2に示す例では、走行手段を車輪32としているが、車輪32に替えてクローラにすることも可能である。また、荷台部31の4辺にはアオリ33が設けられていて、アオリ33の内部にコンテナ34を積載することが可能になっている。但し、アオリ33内に収穫物を直接積載することも可能である。
【0041】
本体部30の4隅には、既述した障害物検知センサ28のいずれかが配設されている。障害物検知センサ28は、農作業用台車12が前進、後進及びUターンすることが可能であることを考慮し、障害物H(図7参照)と農作業用台車12との相対位置を検出可能な適切な位置に、適切な数が配置される。
【0042】
図3は、農作業用台車12の走行制御系の構成を示すブロック図である。走行制御部27は、駆動モータ制御部40及びステアリング制御部41を有している。駆動モータ制御部40は、駆動源であるモータの起動、停止、及び回転速度(走行速度)の制御を担う。ステアリング制御部41は、ステアリングモータを制御して農作業用台車12の走行方向の制御を担う。
【0043】
走行制御部27は、走行ルート作成部25から取得した走行ルートRに基づきコントローラ29からの走行命令信号によって制御される。駆動モータ制御部40は、回転数計43を有し走行速度を計測する。ステアリング制御部41は、ポテンショメータ44などによってステアリング角度を計測する。走行速度及びステアリング角度のデータは、コントローラ29が有する走行履歴記録部45に記憶される。走行履歴記録部45を設けることによって、農作業用台車12は走行履歴記録部45に記憶されたデータに基づき繰り返し走行をしたり、走行状態を確認したりすることが可能となる。
【0044】
図1に示すように、コントローラ29は、農作業用台車12の遠隔操作を可能にするためのラジオ・コントロール受信装置46(以降、簡略化してR受信装置46と記載する)を有している。R受信装置46は、作業者Mが携行する操縦装置47からの無線信号を受信し、走行ルートRが設定されていない場合にも走行制御部27によって作業者Mの意図通りに農作業用台車12を走行させることができる。操縦装置47は、作業者Mが常時携行し、或いは、農作業用台車12の適切な位置に載置しておいて必要なときに作業者Mが携行し操作してもよい。続いて、走行ルートRの作成方法について図4を参照して説明する。
【0045】
図4は、地図情報作成部20が走行路53を作成する図である。地図情報作成部20は、事前に圃場地図情報D4を取り込む。圃場地図情報D4は、国土地理院が提供する航空写真やGIS(Geographic Information System:地理情報システム)、Googleが提供するウェブマッピング・プラットフォームから入手可能な地図情報、衛星写真及び航空写真などである。これらの地図情報から植栽列や圃場50の外縁58が判別可能な圃場領域を切り取って圃場地図情報D4とする。図4に示す圃場50は、リンゴなどの果樹51の高密植栽の例であって、果樹51の植栽列を畝52A,52B,52C,52Dとし、畝間及び畝全体の周囲に農作業用台車12が走行可能なスペースを有し、このスペースが走行路53となる。
【0046】
まず、走行路53の作成について図4を参照して説明する。走行路53は、走行ルートRを作成する際の基礎情報となる。地図情報作成部20には、圃場地図情報D4が取り込まれている。地図情報作成部20のコンピュータディスプレイには、畝52A~52Dの配置、及び圃場50の外縁58が分かる地図画像が表示される。走行路53は、圃場地図情報D4に複数の基準点Pを登録することによって作成することができる。基準点Pは、集荷所10の走行始点54(走行終点55と同じ位置)、畝52A~52Dの外縁58との間、畝52Aと外縁58の間、畝52Dと外縁58との間、及び各畝間の農作業用台車12が走行可能なスペースの中間位置又は任意位置に設定される。地図情報作成部20は、登録された複数の基準点Pを線で結び走行路53を作成する。圃場地図情報D4及び走行路53は、地図情報記憶部26に記憶される。
【0047】
畝52A~52Dが曲がっている場合には、数に拘らずに曲がり具合に合わせて登録する基準点Pを設定することによって、曲がりを含んだ走行路53を作成することが可能である。一般に、植栽物が果実などの場合には植栽配列が固定される。但し、野菜などは、種類や季節によって植栽の配置が変わったり、不規則配置になったりする場合があり、随時、圃場地図情報D4に反映されない場合がある。このような場合には、作業者Mが無線受信装置17、第1無線送信装置14、第2無線送信装置16のいずれかを携行し、又は、農作業用台車12を遠隔操作し、想定される走行路53をなぞりながら移動し、自身の判断で基準点Pを登録することが可能である。このようにすれば、地図情報作成部20は植栽配置状況に対応した走行路53を作成することが可能となる。
【0048】
なお、農作業用台車12は、圃場50の境界線57を超えて走行させることは避けなければならない。つまり、圃場地図情報D4には、境界線57を特定することが求められる。境界線57の作成方法について図4を参照して説明する。
【0049】
境界線57は、走行路53と同じ考え方で作成することが可能である。図4に示す例は、圃場50は長方形である。地図情報作成部20のコンピュータディスプレイには圃場50の外縁58が認識できる画像が表示される。境界線57は、圃場地図情報D4に外縁58に沿った複数の境界基準点P0を登録することによって作成することができる。境界基準点P0は、圃場50の4隅に配置される。図4に示す例では、地図情報作成部20は、圃場50の4隅が円弧で構成されているため、4隅部分には境界基準点P0の数を増やす。登録された境界基準点P0を線で結ぶことによって境界線57を特定することが可能となる。圃場地図情報D4及び境界線57は、地図情報記憶部26に記憶される。
【0050】
なお、圃場50の外縁58が複雑な形状をしており、地図情報作成部20のコンピュータディスプレイでは境界基準点P0の登録が困難な場合には、以下の方法で境界線57を作成することが可能になる。例えば、作業者Mは、第1無線送信装置14、第2無線送信装置16又は無線受信装置17のいずれかを携行し、圃場50の外縁58をなぞりながら移動する。第1位置情報取得装置13又は第2位置情報取得装置15が取得した現時点の位置情報は、作業者Mの判断で境界基準点P0として圃場地図情報D4に登録する。地図情報作成部20は、境界基準点P0を線で結び境界線57を作成し、地図情報記憶部26に記憶させる。
【0051】
或いは、作業者Mが農作業用台車12を操縦装置47及びR受信装置46によって遠隔操作し、無線受信装置17を搭載した農作業用台車12を圃場50の外縁58をなぞりながら移動させ、第3位置情報D3から境界基準点P0を登録することも可能である。このように、境界線57を特定することによって、走行ルート作成部25は、農作業用台車12が境界線57を超えないように走行ルートRを作成することが可能となる。続いて、農作業用台車12による収穫物の運搬について図5を参照して説明する。
【0052】
図5は、農作業用台車12の走行例の第1例を示す説明図である。図6は、農作業用台車12の走行例の第2例を説明する説明図である。集荷所10には第1無線送信装置14が配置されている。収穫現場11では、無線受信装置17は作業者Mが携行し、又は収穫現場11の任意の位置に配置される。圃場地図情報D4には、走行路53が作成されている。図5に示すように、走行ルート作成部25は、集荷所10の第1位置情報D1、収穫現場11の第2位置情報D2、及び走行路53の情報に基づき最短の走行ルートRを作成する。農作業用台車12は、この走行ルートRに従って収穫現場11まで移動する。なお、走行ルートRは、走行路53の曲がり角では、農作業用台車12が事前に設定された曲率半径で走行方向を切換えるように作成される。
【0053】
なお、農作業用台車12は、作業者Mが操縦装置47から往路走行開始信号を発信することによって集荷所10から走行を開始する。或いは、集荷所10において、作業者M又は他の作業者が農作業用台車12に走行開始の指示を出すことが可能である。作業者Mが操作した場合には農作業用台車12は作業者Mが携行する第2無線送信装置16から第2位置情報D2を受信して作業者Mの移動に追従して走行する。なお、農作業用台車12が、最初に走行を開始する場所は集荷所10とは限らないが、第2位置情報D2及び第3位置情報D3によって、収穫現場11まで移動することが可能である。
【0054】
収穫現場11において、農作業用台車12に所定量の収穫物を積載した後、作業者Mは農作業用台車12に集荷所10まで戻るよう復路走行指示を出す。このことによって、農作業用台車12は収穫現場11から集荷所10に向かう。収穫物を積載した農作業用台車12は、第1位置情報D1と第3位置情報D3とに基づいて走行ルートRに従って収穫現場11から集荷所10まで自動走行し集荷所10で停止する。
【0055】
農作業用台車12は、集荷所10で収穫物の荷下ろしをした後、収穫現場11まで戻る。例えば、集荷所10において荷下ろしをした集荷所10の作業者が農作業用台車12の往路走行の命令を入力すると、農作業用台車12は、第2位置情報D2と第3位置情報D3とに基づいて走行ルートRに従い集荷所10から収穫現場11までの走行を開始する。なお、農作業用台車12が集荷所10又は収穫現場11に移動している間に収穫現場11は移動していることがある。そこで、第2例として収穫現場11が収穫現場11Aから収穫現場11Bに移動している場合について図6を参照して説明する。
【0056】
図6に示す例は、収穫現場11が収穫現場11Aから収穫現場11Bに移動している例である。走行ルート作成部25は、集荷所10の第1位置情報D1、収穫現場11Bの第2位置情報D2に基づき、走行路53上に最短の走行ルートR(図6において点線で示す)を作成する。農作業用台車12は、第2位置情報D2と自己の第3位置情報D3に基づき、走行ルートRに従い集荷所10から収穫現場11Bまで走行して停止する。収穫物を積載した後、農作業用台車12は、第1位置情報D1と第3位置情報D3に基づき、走行ルートRを逆走して集荷所10まで自動走行し停止する。
【0057】
続いて、走行路53に農作業用台車12の走行を妨げる障害物Hがある場合について図7を参照して説明する。障害物Hには、走行路53を作成するときに認識可能なものと、農作業用台車12が走行中に検知可能なものとがある。また、障害物Hには、農作業用台車12が回避することが可能なものと、回避することが不可能なものとがある。
【0058】
図7は、農作業用台車12の障害物回避走行を示す説明図である。まず、走行路53を作成時に障害物Hを認識することが可能な場合について説明する。地図情報作成部20のコンピュータディスプレイ上で圃場50に障害物Hがあることを認識したときには、障害物Hを回避することできるような基準点P1を地図情報作成部20に登録する。地図情報作成部20は、元の走行路53に基準点P1を線で結んだ走行路53を作成する。走行ルート作成部25は、第1位置情報D1、第2位置情報D2及び走行路53の情報に基づき基準点P1を通る走行ルートR1を作成する。なお、基準点P1の数は1点に限らない。農作業用台車12は、第2位置情報D2及び自己の第3位置情報D3に基づき、走行ルートR1に従い集荷所10から収穫現場11まで自動走行し、第1位置情報D1及び第3位置情報D3に基づき、走行ルートR1を逆走して収穫現場11から集荷所10まで自動走行する。
【0059】
地図情報作成部20のコンピュータディスプレイ上で障害物Hを回避することが不可能であると認識した場合には、走行路53上に回避不可能な障害物Hがあることを圃場地図情報D4に登録する。走行ルート作成部25は、第1位置情報D1、第2位置情報D2及び回避不可能な障害物Hが登録された走行路53の情報に基づき走行ルートR2を作成する(図7において点線で示す)。農作業用台車12は、走行ルートR2に従い集荷所10と収穫現場11との間を自動走行する。
【0060】
続いて、農作業用台車12が走行中に障害物検知センサ28によって障害物Hを検知した場合について図7を参照して説明する。障害物検知センサ28は、障害物Hを回避して走行可能か、走行不可能かを判断する。障害物検知センサ28が、障害物Hを回避することが可能と判断した場合には、走行ルート作成部25は、走行路53の情報に基づき障害物Hを回避することが可能な走行ルートR1を作成する。農作業用台車12は、走行ルートR1に従い走行し、障害物検知センサ28が障害物Hを通り過ぎたことを検知したところで事前に作成された走行ルートRに従い走行する。
【0061】
障害物検知センサ28が障害物Hを回避することが不可能と判断した場合には、一旦、農作業用台車12を停止させ、停止位置Qを走行ルート作成部25に登録する。農作業用台車12は、障害物Hが除去されるまで停止している。走行ルート作成部25は、第1位置情報D1、第2位置情報D2及び走行路53の情報から障害物Hを回避することが可能な新たな走行ルートR3を作成する(図7において二点鎖線で示す)。農作業用台車12は、この障害物回避可能な走行ルートR3に従い自動走行する。なお、走行ルートR3を登録した後に、農作業用台車12を再び走行させる場合には、走行ルート作成部25は、第1位置情報D1、第2位置情報D2及び走行路53の情報に基づき走行ルートR2を作成し、走行ルートR2に従い農作業用台車12を走行させることが可能である。
【0062】
回避不可能な障害物Hを検知し農作業用台車12が停止した後、農作業用台車12が再起動できない場合、農作業用台車12は、所定時間経過後に走行停止中であることを警報音で作業者Mに知らせることが可能である。或いは、障害物検知センサ28の検知情報と走行制御部27の走行停止情報とによって、走行が不可能になっていることを無線受信装置17から第1無線送信装置14又は第2無線送信装置16に発信するシステムを自動運転システム1に加えることが可能である。
【0063】
なお、図示は省略するが、圃場地図情報D4に無人飛行体(通称ドローン)によって空撮された地図画像を重畳することが可能である。無人飛行体によって空撮された地図画像は、圃場50の実態を表すものであって、地図情報作成部20は、空撮された地図画像をマッピングソフトによって圃場地図情報D4に加える。そのことによって、地図情報作成部20は地図画像に基づき走行路53を作成することが可能となり、画像情報を加えない圃場地図情報D4だけの場合に比べ、圃場50の地形に対応した適切な走行路53を作成することが可能となる。また、空撮された地図画像によって走行路53に障害物Hがあることを推測することができ、地図情報作成部20は、事前に障害物Hを回避することが可能な走行路53を作成することが可能となる。
【0064】
以上説明した第1の実施の形態による「農作業用台車の自動運転システム1」においては、農作業用台車12は、収穫現場11の位置情報である第2位置情報D2と、農作業用台車12の自己の第3位置情報D3に基づいて集荷所10から収穫現場11まで移動する。収穫物を積載した後、農作業用台車12は、集荷所10の位置情報である第1位置情報D1と第3位置情報D3とに基づき収穫現場11から集荷所10まで移動し、集荷所10で収穫物を荷下ろしする。荷下ろし後、農作業用台車12は、第2位置情報D2と第3位置情報D3とに基づき集荷所10から収穫現場11まで移動する。
【0065】
このように構成することによって、農作業用台車12は、集荷所10と収穫現場11との間を自動走行することが可能となり、収穫物の運搬作業の省力化を実現することが可能となる。農作業用台車12は、自己の第3位置情報D3は勿論、集荷所10の第1位置情報D1及び収穫現場11の第2位置情報D2をリアルタイムで取り込む。このことによって、農作業用台車12が走行中に集荷所10の位置や収穫現場11の位置が移動しても、農作業用台車12は、集荷所10と収穫現場11との間を自動走行することが可能となる。
【0066】
また、地図情報作成部20は、事前に圃場地図情報D4を作成し、圃場地図情報D4に走行路53を登録する。走行ルート作成部25は、第1位置情報D1,第2位置情報D2及び走行路53の情報に基づき最短の走行ルートRを作成する。圃場地図情報D4及び走行ルートRは、地図情報記憶部26に記憶される。農作業用台車12は、地図情報記憶部26に記憶された最短の走行ルートRに従って集荷所10と収穫現場11との間を往復移動することが可能となる。
【0067】
なお、圃場地図情報D4には、圃場50の境界線57が登録される。このことによって、走行ルートRは、農作業用台車12が境界線57を越えない範囲内に作成される。圃場地図情報D4に境界線57を加えることによって、農作業用台車12は、境界線57を超えない範囲で走行することが可能となる。
【0068】
農作業用台車12は、走行ルートR上の障害物Hを検知する障害物検知センサ28を有している。農作業用台車12が走行ルートRを走行中に障害物検知センサ28が障害物Hを検知した場合には、障害物Hが検知されなくなるまで走行を停止させる。或いは、走行ルート作成部25が走行ルートRを変更して走行ルートR1,R2,R3のいずれかを作成することによって、農作業用台車12は障害物Hを回避して走行を継続することが可能となる。
【0069】
また、農作業用台車12が走行中に障害物Hを検知した場合には、障害物Hとのすれ違いが可能な走行ルートR1を作成して走行を継続する。そして、障害物Hなどを通り過ぎた位置で、事前に設定されている走行ルートRに従って走行することによって、農作業用台車12は障害物Hを回避しながら走行することが可能となる。
【0070】
また、圃場地図情報D4には、無人飛行体によって空撮された地図画像を重畳することが可能である。地図情報作成部20は、空撮された地図画像を圃場地図情報D4に加える。そのことによって、圃場50の地形に対応した適切な走行ルートRを作成することが可能となる。また、作業者Mは、空撮された地図画像によって走行路53に障害物Hがあることを認識することができ、事前に障害物Hを回避することが可能な走行路53を作成することが可能となる。
【0071】
(第2の実施の形態)
続いて、第2の実施の形態に係る自動運転システム2について図8図9を参照して説明する。既述した第1の実施の形態が、収穫現場11が1か所の場合の例であることに対して、第2の実施の形態は、収穫作業を並行して行っている複数の収穫現場11がある場合の例である。図8及び図9は、並行して収穫作業を行う収穫現場11が3か所ある場合を例示している。なお、集荷所10に配置される第1無線送信装置14、及び農作業用台車12の構成は、第1の実施の形態で説明した構成と同じであり、詳細な説明は省略するが、共通部分には図1と同じ符号を付している。
【0072】
図8は、第2の実施の形態に係る自動運転システム2の構成を示すブロック図である。なお、自動運転システム2は、集荷所10と、収穫現場11A,11B,11Cとの間において1台の農作業用台車12を自動走行させるための制御システムである。
【0073】
自動運転システム2は、第1無線送信装置14、無線受信装置17、収穫現場11Aの位置に関する情報を取得する第2位置情報取得装置15Aを有する第2無線送信装置16A、収穫現場11Bの位置に関する情報を取得する第2位置情報取得装置15Bを有する第2無線送信装置16B、及び収穫現場11Cの位置に関する情報を取得する第2位置情報取得装置15Cを有する第2無線送信装置16Cによって構成される。第1無線送信装置14は集荷所10に配置される。無線受信装置17は農作業用台車12に配置される。第1無線送信装置14及び無線受信装置17は、共に既述した第1の実施の形態と同じ構成である。農作業用台車12は、第1の実施の形態と同じ構成であるため説明を省略する。
【0074】
第1無線送信装置14は、集荷所10の第1位置情報D1を取得し無線受信装置17に送信する。第2無線送信装置16Aは、収穫現場11Aの第2位置情報D2aを取得し無線受信装置17に送信する。第2無線送信装置16Bは、収穫現場11Bの第2位置情報D2bを取得し無線受信装置17に送信する。また、第2無線送信装置16Cは、収穫現場11Cの第2位置情報D2cを取得し無線受信装置17に送信する。
【0075】
第2位置情報D2a,D2b,D2cには、それぞれを区別するために付与される認識番号(ID)が含まれる。収穫現場11A,11B,11Cは、固定されているものではなく移動するが、識別番号によって位置を判別することができる。農作業用台車12は、第3位置情報D3と第2位置情報D2a,D2b,D2cとに基づき所定の走行ルートRに従い集荷所10から各収穫現場まで自動走行し停止する。集荷物を積載した農作業用台車12は、第3位置情報D3と第1位置情報D1とに基づき所定の走行ルートRに従い各収穫現場から集荷所10まで自動走行し停止する。
【0076】
図9は、自動運転システム2における走行方法の1例を説明する説明図である。圃場地図情報D4には、図4で示したような走行路53及び境界線57が登録されている。図9に示す例では、畝52Aと畝52Bとの間に収穫現場11A、畝52Bと畝52Cとの間に収穫現場11B、畝52Cと畝52Dとの間に収穫現場11Cがあり、並行して収穫作業が行われている。農作業用台車12は、事前に決められた手順に従って収穫現場11A,11B,11Cのいずれか1か所に向かって走行する。例えば、収穫現場11A、収穫現場11B、収穫現場11Cの順番で走行するようにシーケンスを組むことができる。
【0077】
図9に示す例においては、農作業用台車12は、第2位置情報D2aと第3位置情報D3とに基づき走行ルートRs1に従い集荷所10から収穫現場11Aに走行する。農作業用台車12は、第2位置情報D2bと第3位置情報D3に基づき走行ルートRs2に従い集荷所10から収穫現場11Bに走行する。また、農作業用台車12は、第2位置情報D2cと第3位置情報D3とに基づき走行ルートRs3に従い集荷所10から収穫現場11Cに走行する。収穫物を積載した後、農作業用台車12は、第1位置情報D1と第3位置情報D3とに基づき各収穫現場からそれぞれの走行ルートRs1,Rs2,Rs3を逆走して集荷所10まで走行する。
【0078】
なお、農作業用台車12は、収穫作業の進捗状況に合わせて、収穫現場11Aから収穫現場11Bに直接向かい、収穫物が所定量になったときに集荷所10に移動する。或いは、農作業用台車12は、収穫現場11A、収穫現場11B、収穫現場11Cの順に移動し、収穫物を積載した後、集荷所10に移動するように事前に走行順を設定することも可能である。また、農作業用台車12が、各収穫現場に向かう順番は、収穫量、集荷作業速度や集荷所10から各収穫現場の距離などから任意に設定することが可能である。
【0079】
また、障害物検知センサ28が、走行路53に障害物Hがあることを検知した場合には、図7で説明したように、各走行ルートに障害物Hを回避することが可能な走行ルートR1を作成し、或いは、障害物Hを回避することが可能な新たな走行ルートを作成することによって、収穫現場11が複数個所になる場合においても、農作業用台車12は障害物Hを回避して走行することが可能となる。
【0080】
以上説明したように、自動運転システム2においては、圃場50内に、並行して作業をする収穫現場11A,11B,11Cがある場合、収穫現場11A,11B,11C毎に第2無線送信装置16A,16B,16Cのいずれかを有し、それぞれの第2位置情報D2a,D2b,D2cを取得する。第2位置情報D2a,D2b,D2cには、各収穫現場の位置を特定する識別番号が付与される。走行ルート作成部25は、第1位置情報D1、第2位置情報D2a,D2b,D2c及び事前に作成されている走行路53に基づき、各収穫現場に適切な走行ルートRs1,Rs2,Rs3を作成する。農作業用台車12は、事前に作成された走行ルートRs1,Rs2,Rs3のいずれかを認識番号に従い走行し、収穫現場11A,11B,11Cと集荷所10との間を自動走行することが可能となる。
【0081】
(第3の実施の形態)
続いて、第3の実施の形態に係る自動運転システム3について図10及び図11を参照して説明する。既述した第1の実施の形態及び第2の実施の形態は、圃場50内で農作業用台車12が1台ずつ走行する例であることに対して、第3の実施の形態は、圃場50内に複数の農作業用台車12が並行して走行することを可能にしていることに特徴を有している。図10及び図11は、並行して3台の農作業用台車12A,12B,12Cが走行する場合を例示している。なお、集荷所10に配置される第1無線送信装置14、及び収穫現場11に配置される第2無線送信装置16の構成は自動運転システム1(図1参照)と同じである。また、農作業用台車12A~12Cのそれぞれの構成は、農作業用台車12と構成と同じであり、図10では、農作業用台車12A,12B、12Cは、農作業用台車12(図1参照)との相違箇所のみ図示している。
【0082】
図10は、第3の実施の形態に係る自動運転システム3の構成を示すブロック図である。自動運転システム3は、集荷所10と、収穫現場11の間において3台の農作業用台車12A,12B,12Cを自動走行させるための制御システムである。
【0083】
自動運転システム3は、第1無線送信装置14、第2無線送信装置16及び3台の農作業用台車12のそれぞれに配置される無線受信装置17A,17B,17Cを有している。集荷所10の第1位置情報D1及び収穫現場11の第2位置情報D2は走行ルート作成部25に送信される。無線受信装置17A,17B,17Cの構成は無線受信装置17と同じであるが、農作業用台車12A、12B,12Cそれぞれを区別するために付与される認識番号(ID)が登録されている。農作業用台車12Aの第3位置情報取得装置18で取得した第3位置情報D3a、農作業用台車12Bの第3位置情報取得装置18で取得した第3位置情報D3b、及び、農作業用台車12Cの第3位置情報取得装置18で取得した第3位置情報D3cは、走行ルート作成部25に入力される。なお、圃場地図情報D4に障害物Hが登録されている場合、及び、走行中に障害物検知センサ28が障害物Hを検知したときには、図7で説明した手順に従って障害物Hを回避して走行することが可能である。
【0084】
図11は、自動運転システム3における走行方法の1例を示す説明図である。図11に示すように、各農作業用台車事前に作成された手順に従い走行する。農作業用台車12Aは最短の走行ルートRp1を走行し、農作業用台車12Bは走行ルートRp2を走行し、農作業用台車12Cは走行ルートRp3を走行する。農作業用台車12Aは、第2位置情報D2と第3位置情報D3aとに基づき走行ルートRp1に従い集荷所10から収穫現場11まで自動走行し、収穫物を積載後に第1位置情報D1と第3位置情報D3aとに基づき走行ルートRp1を逆走して収穫現場11から集荷所10まで自動走行する。
【0085】
農作業用台車12Bは、第2位置情報D2と第3位置情報D3bとに基づき走行ルートRp2に従い集荷所10から収穫現場11まで自動走行し、収穫物を積載後に第1位置情報D1と第3位置情報D3bに基づき走行ルートRp2を逆走して収穫現場11から集荷所10まで自動走行する。同様に、農作業用台車12Cは、第2位置情報D2と第3位置情報D3cとに基づき走行ルートRp3に従い集荷所10から収穫現場11まで自動走行し、収穫物を積載後に第1位置情報D1と第3位置情報D3cに基づき走行ルートRp3を逆走して収穫現場11から集荷所10まで自動走行する。
【0086】
RTK-GNSSは、位置情報と時刻情報とを取得することが可能であることから、走行ルート作成部25には、農作業用台車12A,12B,12Cそれぞれの第3位置情報D3a,D3b,D3c、及び現在時刻情報を取得する。また、走行ルート作成部25には、認識番号が登録されている。従って、現在時刻における農作業用台車12A,12B,12Cが、どの走行ルート上のどの位置にいるかを認識できる。走行ルート作成部25は、農作業用台車12A,12B,12Cが相互にすれ違わないように、現在時刻と農作業用台車12A,12B,12Cの第3位置情報D3に基づきコントローラ29を介して走行速度を変えたり、一旦停止させたりして各農作業用台車の走行を制御することが可能である。
【0087】
なお、農作業用台車12A,12B,12Cは、障害物検知センサ28を有している。障害物検知センサ28は、農作業用台車12A,12B,12Cがすれ違うことがある場合には、他の農作業用台車12を障害物Hとして検知し、図7で説明したように障害物Hを回避可能な走行ルートR1を作成し、障害物Hを回避して走行することが可能である。図示は省略するが、農作業用台車12Aと農作業用台車12Bがすれ違うことがある場合、走行ルート作成部25は、それぞれが備える障害物検知センサ28によって対向車両を検知し、例えば、互いに走行方向左側に回避するように走行ルートR1を作成することが可能である。
【0088】
以上説明した自動運転システム3においては、圃場50内に農作業用台車12A,12B,12Cが同時に走行させることが可能である。農作業用台車12A,12B,12Cは、所定の手順に従って集荷所10から収穫現場11まで移動し、集荷所10から収穫現場11まで移動することが可能に制御される。無線受信装置17A,17B,17Cそれぞれが取得する第3位置情報D3a,D3b,D3cには、農作業用台車12A、12B,12Cを特定するために認識番号が付与され、第3位置情報D3a,D3b,D3cと共に時刻情報が走行ルート作成部25に入力される。このようにすることによって、農作業用台車12A,12B,12Cそれぞれがすれ違いを避けて走行することや、障害物Hを回避して走行することが可能となる。
【0089】
なお、図11に示す走行ルートRp1,Rp2,Rp3は1例であって、走行ルート作成部25は、所定の手順に従って様々な走行ルートを作成することが可能である。例えば、走行ルートRp1に従い農作業用台車12A,12B,12Cを順列させてもよい。このような場合には、走行ルート作成部25は、往路とは別の新たな走行ルートを作成し、復路とすることが可能である。
【0090】
(第4の実施の形態)
続いて、第4の実施の形態に係る自動運転システム4について図12を参照して説明する。既述した第1の実施の形態、第2の実施の形態、及び第3の実施の形態は、集荷所10に配置する第1無線送信装置14、及び、収穫現場11に配置する第2無線送信装置16を有している。そのことに対して、第4の実施の形態は、第1無線送信装置14及び第2無線送信装置16が担う位置情報取得機能を無線受信装置17に代替させていることに特徴を有している。
【0091】
図12は、第4の実施の形態に係る自動運転システム4の構成を示すブロック図である。自動運転システム4は、集荷所10と、収穫現場11との間において1台の農作業用台車12を自動走行させるためのシステムである。図12において、第1の実施の形態の農作業用台車12と同じ構成要素には図1と同じ符号を付している。
【0092】
農作業用台車12は、集荷所10の位置に関する第1位置情報D1、収穫現場11の位置に関する第2位置情報D2、及び、自己の位置に関する第3位置情報D3を取得することが可能な第3位置情報取得装置18を有している。農作業用台車12は、集荷所10に移動して第3位置情報取得装置18によって第1位置情報D1を取得し、走行ルート作成部25に入力する。さらに、農作業用台車12は、収穫現場11に移動して第3位置情報取得装置18によって第2位置情報D2を取得し走行ルート作成部25に入力する。第1位置情報D1及び第2位置情報D2の取得は、作業者Mが農作業用台車12に備えている位置取得操作部(図示は省略)を操作することによって可能となる。圃場地図情報D4には、走行路53が登録されている(図4参照)。
【0093】
農作業用台車12は、既述した第1の実施の形態と同じ考え方で自動走行することが可能である。走行ルート作成部25は、集荷所10の位置を示す第1位置情報D1、収穫現場11の位置を示す第2位置情報D2及び走行路53の情報に基づき走行ルートRを作成する(図5参照)。農作業用台車12は、第2位置情報D2及び第3位置情報D3に基づき走行ルートRに従い集荷所10から収穫現場11まで自動走行し、集収穫物を積載後、第1位置情報D1及び第3位置情報D3に基づき走行ルートRに従い収穫現場11から集荷所10まで自動走行する。
【0094】
自動運転システム4においては、農作業用台車12が、第3位置情報取得装置18によって、集荷所10において集荷所10の位置に関する第1位置情報D1を取得し、収穫現場11において収穫現場11の位置に関する第2位置情報D2を取得し、走行ルート作成部25に入力する。また、農作業用台車12は、第3位置情報取得装置18によって走行中の自己の位置に関する第3位置情報D3を取得し走行ルート作成部25に入力する。自動運転システム4においては、第1無線送信装置14及び第2無線送信装置16を有しないシステム構成である。すなわち、第3位置情報取得装置18によって第1位置情報D1,第2位置情報D2及び第3位置情報D3を取得できることから、農作業用台車12は、集荷所10と収穫現場11との間を自動走行することが可能となる。
【0095】
なお、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。例えば、既述した第2の実施の形態は、並行して収穫作業を行う複数の収穫現場11A,11B,11Cがある場合の構成例であり、第3の実施の形態は、圃場50内に複数の農作業用台車12A,12B,12Cが走行可能な構成である。これらの各実施の形態に対し、同様な考え方で圃場50内に複数の収穫現場を有し、かつ、複数の農作業用台車12を走行させる自動運転システムを構成することが可能である。
【符号の説明】
【0096】
1,2,3,4…農作業用台車の自動運転システム、10…集荷所、11,11A,11B,11C…収穫現場、12,12A,12B,12C…農作業用台車、13…第1位置情報取得装置、14…第1無線送信装置、15,15A,15B,15C…第2位置情報取得装置、16,16A,16B,16C…第2無線送信装置、17,17A,17B,17C…無線受信装置、18…第3位置情報取得装置、20…地図情報作成部、25…走行ルート作成部、26…地図情報記憶部、27…走行制御部、28…障害物検知センサ、29…コントローラ、46…R受信装置(コントロール受信装置)、47…操縦装置、50…圃場、52A,52B,52C,52D…畝、53…走行路、57…境界線、58…圃場の外縁、D1…第1位置情報、D2,D2a,D2b,D2c…第2位置情報、D3,D3a,D3b,D3c…第3位置情報、D4…圃場地図情報、D5…障害物の位置情報、H…障害物、M…作業者、P…基準点、P0…境界基準点、R,R1,R2,R3,Rp1,Rp2,Rp3…走行ルート、Q…停止位置
図1
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図7
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図10
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図12