(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066497
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20230509BHJP
B60K 15/03 20060101ALI20230509BHJP
F02M 37/20 20060101ALI20230509BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
E02F9/00 Q
B60K15/03 B
F02M37/20 N
F02M37/00 321B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177125
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】石井 信行
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 優
(72)【発明者】
【氏名】原澤 広平
(72)【発明者】
【氏名】小山 由人
【テーマコード(参考)】
2D015
3D038
【Fターム(参考)】
2D015CA00
3D038CA26
3D038CB09
3D038CD12
(57)【要約】
【課題】燃料戻り配管に空気が混入することを抑制できるショベルを提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態に係るショベルは、上部旋回体と、前記上部旋回体に設けられる燃料タンクと、前記燃料タンクの底部を貫通して設けられる燃料供給ポートと、前記底部を貫通して設けられる燃料戻りポートと、を有し、前記燃料戻りポートは、前記燃料供給ポートから100mm以上離間して設けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部旋回体と、
前記上部旋回体に設けられる燃料タンクと、
前記燃料タンクの底部を貫通して設けられる燃料供給ポートと、
前記底部を貫通して設けられる燃料戻りポートと、
を有し、
前記燃料戻りポートは、前記燃料供給ポートから100mm以上離間して設けられる、
ショベル。
【請求項2】
前記燃料供給ポートとエンジンとを接続する燃料供給配管を有し、
前記燃料供給配管は、前記上部旋回体の旋回フレームの一部を貫通して設けられる、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記燃料戻りポートは、前記燃料供給ポートよりも高い位置で前記燃料タンク内と連通する、
請求項1又は2に記載のショベル。
【請求項4】
前記燃料供給ポート及び前記燃料戻りポートの少なくともいずれかは、L字管である、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のショベル。
【請求項5】
前記底部を貫通して設けられる燃料排出ポートを有し、
前記燃料供給ポート及び前記燃料排出ポートは、同じフランジを介して前記底部に取り付けられ、
前記燃料戻りポートは、前記フランジを介さずに前記底部に取り付けられる、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のショベル。
【請求項6】
前記旋回フレームは、作動油タンクを支持する梁部材を有し、
前記燃料供給配管は、前記梁部材を貫通して設けられる、
請求項2に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料タンクの下部に燃料供給配管が配置され、燃料タンクの上部に燃料戻り配管が配置されるショベルが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、燃料タンクの上部に燃料戻り配管が配置される場合、燃料戻り配管から空気が混入し、燃料供給配管を介してエンジンに空気が混入した燃料が送られる場合がある。
【0005】
そこで、燃料戻り配管に空気が混入することを抑制できるショベルを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係るショベルは、上部旋回体と、前記上部旋回体に設けられる燃料タンクと、前記燃料タンクの底部を貫通して設けられる燃料供給ポートと、前記底部を貫通して設けられる燃料戻りポートと、を有し、前記燃料戻りポートは、前記燃料供給ポートから100mm以上離間して設けられる。
【発明の効果】
【0007】
上述の手段により、燃料戻り配管に空気が混入することを抑制できるショベルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】ショベルの上部旋回体を概略的に示す平面図である。
【
図3】ショベルの上部旋回体の右側後部を概略的に示す斜視図である。
【
図4】ショベルの燃料供給系の一例を示す回路図である。
【
図5】ショベルの燃料タンクの下部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。各図面において同一の構成要素に対しては同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
まず、
図1~
図3を参照して、本実施形態に係るショベルの基本構成について説明する。以下、上部旋回体2の中央から見てブーム4が取り付けられている方向、即ち、上部旋回体2に対してブーム4が延在する方向を「前」とし、その反対方向を「後」とする。
【0011】
図1は、本実施形態に係るショベルの一例を示す側面図である。
【0012】
本実施形態に係るショベルは、下部走行体1、上部旋回体2、キャブ3、ブーム4、アーム5、及びバケット6を備える。
【0013】
上部旋回体2は、旋回機構(不図示)を介して下部走行体1上に搭載される。上部旋回体2の左側前部にキャブ3が設けられる。上部旋回体2の前部中央にブーム4の一端が俯仰可能に枢着される。アーム5は、ブーム4の先端部に上下回動可能に取り付けられる。エンドアタッチメントであるバケット6は、アーム5の先端部に上下回動可能に取り付けられる。
【0014】
尚、掘削アタッチメントであるバケット6の代わりに、ブレーカや破砕機のようなエンドアタッチメントがアーム5の先端部に取り付けられてもよい。
【0015】
上部旋回体2の後部には、ディーゼルエンジン(以下、単に「エンジン」と称する)8(
図2参照)及びエンジン8に付随する構成部品(以下、「付随部品」と称する)が搭載され、エンジン8及び付随部品を上方から覆うようにエンジンフード200が取り付けられる。
【0016】
【0017】
上部旋回体2の後部には、エンジン8及び付随部品等が収容されるエンジンルーム7が形成される。
【0018】
尚、エンジンルーム7の上方は、上述の如く、エンジンフード200により覆われているが、
図2では、エンジンルーム7の内部を図示するため、エンジンフード200が取り外された状態が示されている。
【0019】
エンジンルーム7の中央(即ち、上部旋回体2の後部中央)には、エンジン8が搭載される。また、エンジン8の近傍、例えば、エンジンルーム7の右側の上部には、消音器(マフラ)、排気ガス処理装置であるSCR(Selective Catalytic Reduction:選択触媒還元)システム(不図示)等が配置される。具体的には、エンジン8には、排気ガスを外部に放出するための排気管9が接続され、排気管9の下流側の端部には、当該排気ガス処理装置等が接続される。
【0020】
上部旋回体2の旋回フレーム14(
図3参照)には、前後に縦断する一対の中央フレーム17(17L,17R)が設けられ、エンジン8は、中央フレーム17L,17Rに取り付けられたブラケット(不図示)上にマウントラバー等を介して搭載される。また、上部旋回体2におけるエンジン8の下方、即ち、エンジン8の下方の旋回フレーム14(フロア部)には、メンテナンス開口7a(開口部の一例)が設けられる。作業者は、メンテナンス開口7aを通じて、エンジン8のオイル交換作業等を行うことができる。
【0021】
尚、
図2は、排気ガス処理装置(SCRシステム及び/又はDPF(Diesel Particulate Filter)等)の下方に設けられるポンプ室40の内部を図示するため、排気ガス処理装置が取り外された状態が示されている。また、
図2に示すように、中央フレーム17L,17Rは、その前端部において、ブーム4を支持する。具体的には、ブーム4は、中央フレーム17Rの前端部及び中央フレーム17Lの前端部との間に挟まれた状態で、中央フレーム17R、ブーム4、中央フレーム17Lを貫通するブームフートピン100により上下回動可能に支持される。
【0022】
エンジンルーム7の左側(即ち、上部旋回体2の左側後部)には、冷却ファン12と、ラジエータ等を含む熱交換器ユニット13が搭載される。具体的には、エンジンルーム7内におけるエンジン8の左端部には、エンジン8の動力で駆動される冷却ファン12が設けられると共に、冷却ファン12の左方には、熱交換器ユニット13が搭載されている。
【0023】
また、エンジン8と熱交換器ユニット13の間には、エンジン8の冷却水(以下、「エンジン冷却水」と称する)が流れる冷却水配管15が設けられる。
【0024】
また、冷却水配管15には、水温センサ16が設けられる。水温センサ16は、冷却水配管15を流れる冷却水の温度を検出し、検出信号を後述するコントローラ30に供給する。
【0025】
エンジンルーム7の右側(即ち、上部旋回体2の右側後部)には、ポンプ室40が設けられる。以下、更に
図3を参照しつつ、ポンプ室40を含む上部旋回体2の右側後部について説明する。
【0026】
図3は、上部旋回体2の右側後部を概略的に示す斜視図である。尚、
図3は、ポンプ室40の内部を図示するため、上部旋回体2(ハウス部)の右側面後部に設けられるポンプ室40への図示しないアクセスドア(カバー部の一例)を開放した状態が示されている。また、
図3は、梁部材14A,14Bを図示するため、梁部材14A,14Bに設置される作動油タンク120が取り外された状態が示されている。
【0027】
図2及び
図3に示すように、ポンプ室40には、ショベルの油圧システムにおける作動油を循環させるための油圧ポンプ66がエンジン8の動力で駆動可能な態様で配置される。具体的には、油圧ポンプ66は、その駆動軸がエンジン8のクランク軸と同軸の状態で、エンジン8の右端部に接続されると共に、仕切り板40bに設けられる切欠き部(不図示)に挿通されることにより、ポンプ室40内にその大部分が配置される。
【0028】
また、ポンプ室40には、燃料をエンジン8に供給するための燃料供給系の各種構成部品が配置される。具体的には、プレフィルタ43、燃料ポンプ44、メインフィルタ45、及びそれらを接続する燃料供給配管41等がポンプ室40内に配置される。より具体的には、燃料タンク19からエンジン8まで延在する燃料供給配管41がポンプ室40内を通過し、ポンプ室40内の燃料供給配管41の途中に、プレフィルタ43、燃料ポンプ44、メインフィルタ45等が設けられる。また、ポンプ室40から延出し、エンジン8に接続される部分の燃料供給配管41には、燃料フィルタ56が設けられる。
【0029】
燃料供給配管41は、一端が燃料タンク19の下部に設けられる燃料供給ポートP1に接続され、他端がエンジン8に接続される。燃料供給配管41は、燃料タンク19の下部から上部旋回体2の左右方向における中央部を通ることなく、上部旋回体2の右側部を通りポンプ室40へと配索される。これにより、燃料供給配管41の長さを短くでき、コストを削減できる。燃料供給配管41は、旋回フレーム14の一部を貫通して配索される。具体的には、旋回フレーム14は作動油タンク120を支持する梁部材14A,14Bを有し、燃料供給配管41は燃料タンク19の下部から梁部材14A,14Bを貫通してポンプ室40へと配索される。
【0030】
また、ポンプ室40の四隅には、上部旋回体2の旋回フレーム14(フロア部)から立設された支柱40aが配置される。また、ポンプ室40には、4つの支柱40aのうちのエンジン8と隣接する側(エンジンルーム7の中央側)の2本の間を接続する仕切り板40bが設けられる。仕切り板40bには、上述の如く、油圧ポンプ66が貫通する切欠き部が設けられる。
【0031】
プレフィルタ43、燃料ポンプ44、及びメインフィルタ45は、
図3に示すように、ポンプ室40において、アクセスドアを開放することにより、視認可能な位置に配置される。これにより、作業者は、プレフィルタ43、メインフィルタ45の交換作業等のメンテナンスを容易に行うことができる。また、プレフィルタ43、燃料ポンプ44、及びメインフィルタ45は、例えば、ポンプ室40の後側の2本の支柱40aに架設される支持フレーム40cに取り付けられてよい。
【0032】
また、燃料フィルタ56は、エンジンルーム7におけるポンプ室40の左方(
図3の仕切り板40bの奥側)において、エンジン8の下方、即ち、エンジン8のクランク軸よりも下方に配置される。燃料フィルタ56は、ポンプ室40の奥、即ち、仕切り板40bの切欠き部の奥に配置される。通常、作業者の視点は、油圧ポンプ66が配置される高さ付近にあるため、ポンプ室40へのアクセスドアを開放しても、比較的高い位置にある作業者の視点からは、仕切り板40bが遮って、燃料フィルタ56を視認することができない。一方、燃料フィルタ56は、メンテナンス開口7aを通じて、上部旋回体2(旋回フレーム14)の下方から作業者がアクセス可能な位置に配置される。燃料フィルタ56は、例えば、中央フレーム17L等の上部旋回体2の構造物に直接或いはブラケット等を介して間接的に取り付けられてよい。これにより、上部旋回体2への各種部品の搭載作業を行う際、燃料フィルタ56を含む燃料供給系と、エンジン8とを別々に搭載することができる。
【0033】
図2に戻り、エンジンルーム7の前方、具体的には、エンジンルーム7の左側に配置される熱交換器ユニット13の前方には、エアクリーナ63(エアフィルタ)が配置される。エアクリーナ63は、吸気管64を介してエンジン8に接続されている。これにより、エアクリーナ63で濾過された空気が吸気管64を通じてエンジン8に供給される。
【0034】
キャブ3は、エアクリーナ63の前方、即ち、上部旋回体2の左側前部に配置されている。キャブ3には、運転席(不図示)が設けられ、キャブ3内の運転席の前方には、例えば、液晶ディスプレイ等で構成されるモニタ3aが設けられる。
【0035】
モニタ3aは、コントローラ30からの表示信号に応じて、例えば、ショベルの運転状況や各部の動作状態などを表す各種情報を表示する。オペレータは、モニタ3aに表示される各種情報を確認しながら、ショベルを操作する。
【0036】
コントローラ30は、ショベルの全体及び各部の動作を制御する制御装置であり、例えば、キャブ3内に搭載される。コントローラ30は、例えば、演算装置としてのCPU及びROM,RAM等の内部メモリを含むコンピュータ等を中心に構成される。
【0037】
エンジンルーム7の前方、具体的には、エンジンルーム7の右側に設けられるポンプ室40の前方に、油圧システムで用いられる作動油を貯蔵する作動油タンク120が配置される。
【0038】
また、作動油タンク120の前方には、軽油等のエンジン8の燃料(以下、単に「燃料」と称する)を貯蔵する燃料タンク19が配置される。燃料タンク19に貯蔵された燃料は、燃料供給配管41を介してエンジン8に供給される。
【0039】
燃料タンク19の前方には、上述した排気ガス処理装置が使用する処理剤(例えば、液体還元剤としての尿素水溶液等)を貯蔵する貯蔵タンク20が配置される場合がある。貯蔵タンク20に貯蔵された処理剤は、処理剤供給配管(不図示)により排気ガス処理装置(不図示)に供給される。
【0040】
次に、
図4を参照して、燃料フィルタ56を含む燃料供給系の具体的な構成について説明をする。
図4は、燃料供給系の一例を示す回路図である。
【0041】
本実施形態に係るショベルの燃料供給系は、燃料ポンプ44が、例えば、電気駆動されることにより、燃料タンク19に貯留されている燃料をエンジン8に供給する。
【0042】
具体的には、燃料ポンプ44が駆動されると、燃料タンク19内の燃料が燃料供給配管41を流れて、プレフィルタ43に流入する。
【0043】
尚、燃料タンク19とプレフィルタ43との間の燃料供給配管41には、閉止弁42が設けられている。閉止弁42は、通常、開放されており、燃料は、閉止弁42を通過することができる。
【0044】
プレフィルタ43に流入した燃料は、濾過され、比較的大きいゴミ等の異物が取り除かれる。また、プレフィルタ43には、水位検出装置52を含む水分離装置50が設けられ、水分離装置50により燃料に含まれる水分が分離され、分離された水分の量は、水位検出装置52により水位として検出される。
【0045】
プレフィルタ43を通過した燃料は、燃料供給配管41を流れて、燃料ポンプ44に吸い込まれ、燃料ポンプ44から吐出される。燃料ポンプ44から吐出された燃料は、燃料供給配管41を流れて、メインフィルタ45に流入する。
【0046】
メインフィルタ45に流入した燃料は、濾過され、比較的細かいゴミ等の異物が更に取り除かれる。メインフィルタ45を通過した燃料は、燃料供給配管41を流れて、燃料フィルタ56に流入する。
【0047】
燃料フィルタ56は、プレフィルタ43、メインフィルタ45と同様、燃料に含まれるゴミ等の異物を取り除く(濾過)する機能を有する。燃料フィルタ56は、例えば、メインフィルタ45と同等、或いは、メインフィルタ45よりも目の粗い濾過器である。上述の如く、プレフィルタ43により比較的大きなゴミ等が取り除かれると共に、メインフィルタ45により比較的細かいゴミ等が取り除かれるため、燃料フィルタ56に流入する燃料内には、通常、燃料フィルタ56が濾過すべきゴミ等の異物は殆ど含まれない。一方、メインフィルタ45の交換時には、メインフィルタ45が取り外された部分から燃料供給系(燃料供給配管41)にゴミ等の異物が侵入する可能性がある。そのため、燃料フィルタ56が燃料供給系におけるメインフィルタ45の下流に配置されることにより、メインフィルタ45が取り外された部分から燃料供給配管41に侵入したゴミ等をエンジン8に侵入する前に除去(濾過)することができる。
【0048】
尚、上述の如く、通常、プレフィルタ43及びメインフィルタ45により燃料内のゴミ等が殆ど除去されるため、燃料フィルタ56は、交換する必要がない、或いは、プレフィルタ43及びメインフィルタ45に比べて交換頻度が非常に低い。
【0049】
燃料フィルタ56を通過した燃料は、エンジン8に供給される。
【0050】
エンジン8に供給された燃料は、燃料噴射装置(不図示)により、エンジン8の気筒内に噴射される。エンジン8の気筒内に噴射されなかった燃料は、燃料戻り配管48を流れて、燃料タンク19に戻される。
【0051】
燃料戻り配管48は、一端がエンジン8に接続され、他端が燃料タンク19の下部に設けられる燃料戻りポートP2に接続される。燃料戻り配管48は、エンジン8から上部旋回体2の左右方向における中央部を通って燃料タンク19の下部へと配索される。より具体的には、燃料戻り配管48は、上部旋回体2の後方においてカウンタウェイトに沿って配索されている。また、燃料戻り配管48は、ポンプ室40と燃料タンク19との間において中央フレーム17Rに沿って配索されている。燃料戻り配管48は、旋回フレーム14の一部を貫通して配索されてもよい。燃料戻り配管48には、燃料クーラ49が設けられ、燃料クーラ49は、燃料タンク19への戻り燃料の温度を下げる。燃料クーラ49は、冷却ファン12の上流に配置される。
【0052】
このように、本例では、燃料供給経路(燃料供給配管41)におけるメインフィルタ45とエンジン8との間に、燃料フィルタ56が設けられる。これにより、メインフィルタ45の交換時に、メインフィルタ45が取り外された部分から混入するゴミ等のエンジン8への侵入を抑制することができる。
【0053】
また、上述の如く、燃料フィルタ56は、ポンプ室40へのアクセスドアを開放しても視認不可な位置に配置される。そのため、ポンプ室40内のメインフィルタ45の交換時に、作業者が、誤って、燃料フィルタ56も交換してしまうような事態の発生を抑制することができる。
【0054】
また、上述の如く、燃料フィルタ56は、エンジン8の下方のメンテナンス開口7aからアクセス可能であるため、交換がどうしても必要な場合、作業者は、メンテナンス開口7aを通じて、交換作業を行うことができる。
【0055】
次に、
図5を参照して、燃料タンク19に接続される燃料供給ポートP1及び燃料戻りポートP2の位置関係の一例について説明する。
図5は、ショベルの燃料タンク19の下部の拡大図であり、
図2におけるV-V線矢視断面を示す。
【0056】
燃料タンク19は、ボルトBT1で旋回フレーム14(
図3参照)に締結される。燃料タンク19の底部19aには、燃料供給ポートP1、燃料戻りポートP2及び燃料排出ポートP3が設けられる。
【0057】
燃料供給ポートP1は、燃料タンク19の底部19aを貫通して設けられる。具体的には、燃料タンク19の底部19aにフランジFR1が溶接されており、燃料供給ポートP1は、燃料供給ポートP1が挿通されたフランジFR2をボルトBT2でフランジFR1に締結することにより、燃料タンク19の底部19aを貫通して設けられる。燃料供給ポートP1は、燃料タンク19内の燃料をエンジン8に送るためのポートであり、例えばL字管である。燃料供給ポートP1は、上端が燃料タンク19内と連通し、下端が上部旋回体2の外側に向けてL字状に屈曲して燃料タンク19外に位置する。燃料供給ポートP1の下端には、燃料供給配管41が接続される。
【0058】
燃料戻りポートP2は、燃料タンク19の底部19aを貫通して設けられる。具体的には、燃料戻りポートP2は、フランジFR1,FR2を介さずに燃料タンク19の底部19aに取り付けられる。ただし、燃料戻りポートP2は、フランジFR1,FR2を介して燃料タンク19の底部19aに取り付けられてもよい。燃料戻りポートP2は、エンジン8の気筒内に噴射されなかった燃料を燃料タンク19内に戻すためのポートであり、例えばL字管である。燃料戻りポートP2は、上端が燃料タンク19内と連通し、下端が上部旋回体2の内側に向けてL字状に屈曲して燃料タンク19外に位置する。燃料戻りポートP2の下端には、燃料戻り配管48が接続される。このように、燃料戻り配管48が燃料タンク19の下方に位置する燃料戻りポートP2に接続されるので、燃料戻り配管48内は常に燃料で満たされた状態となる。これにより、燃料タンク19内への空気の混入を抑制できる。その結果、空気が混入した燃料がエンジン8に送られることが抑制されるので、エンジン始動不良やエンジン機器破損を防止できる。また、燃料が空気に触れることによる燃料の劣化(例えば酸化)が抑制されるので、燃料噴射装置の詰まりや、燃料供給配管41に粘り付きを抑制できる。その結果、エンジン出力の低下を抑制できる。
【0059】
燃料戻りポートP2の上下方向に延びる部位の中心軸C2は、燃料供給ポートP1の上下方向に延びる部位の中心軸C1から100mm以上、好ましくは120mm以上離間して設けられる。これにより、燃料戻りポートP2から燃料タンク19に戻される高温の燃料が燃料タンク19内において燃料供給ポートP1に直ぐに送られることを抑制できる。その結果、高温の燃料がエンジン8に送られることに起因するエンジンの損傷を防止できる。燃料戻りポートP2は、例えば燃料供給ポートP1よりも高い位置で燃料タンク19内と連通する。具体的には、燃料戻りポートP2の上端位置T2は、燃料供給ポートP1の上端位置T1よりも高くなるように設けられる。
【0060】
燃料排出ポートP3は、燃料タンク19の底部19aを貫通して設けられる。具体的には、燃料排出ポートP3は、フランジFR2に挿通されており、フランジFR2をボルトBT2でフランジFR1に締結することにより、燃料タンク19の底部19aを貫通して設けられる。即ち、燃料排出ポートP3は、燃料供給ポートP1と同じフランジFR2を介して燃料タンク19の底部19aに取り付けられる。燃料排出ポートP3は、燃料タンク19内から燃料を排出するためのポートであり、例えばコックである。
【0061】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に制限されることはない。上述した実施形態は、本発明の範囲を逸脱することなしに、種々の変形、置換等が適用され得る。また、別々に説明された特徴は、技術的な矛盾が生じない限り、組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 下部走行体
2 上部旋回体
3 キャブ
3a モニタ
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
7 エンジンルーム
7a メンテナンス開口
8 ディーゼルエンジン
9 排気管
12 冷却ファン
13 熱交換器ユニット
14 旋回フレーム
14A 梁部材
14B 梁部材
15 冷却水配管
16 水温センサ
17,17L,17R 中央フレーム
19 燃料タンク
19a 底部
20 貯蔵タンク
30 コントローラ
40 ポンプ室
40a 支柱
40b 板
40c 支持フレーム
41 燃料供給配管
42 閉止弁
43 プレフィルタ
44 燃料ポンプ
45 メインフィルタ
48 燃料戻り配管
49 燃料クーラ
50 水分離装置
52 水位検出装置
56 燃料フィルタ
63 エアクリーナ
64 吸気管
66 油圧ポンプ
100 ブームフートピン
120 作動油タンク
200 エンジンフード
P1 燃料供給ポート
P2 燃料戻りポート
P3 燃料排出ポート
T1 上端位置
T2 上端位置