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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066498
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】シート切断装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 1/04 20060101AFI20230509BHJP
   B26D 7/01 20060101ALI20230509BHJP
   B26D 7/26 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
B26D1/04 Z
B26D7/01 C
B26D7/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177126
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000178619
【氏名又は名称】アーキヤマデ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】高野 昌平
(72)【発明者】
【氏名】赤木 大介
【テーマコード(参考)】
3C021
3C027
【Fターム(参考)】
3C021BB08
3C021JA04
3C021JA08
3C021JA10
3C027GG02
3C027GG08
(57)【要約】
【課題】シート材のバタつきを抑制しやすく、作業者の技量にかかわらず高精度の切断が可能なシート切断装置を提供する。
【解決手段】シート材S1を切断する切断部材2を支持する本体部1を備え、本体部1は、上側本体部3と、下側本体部4と、上側本体部3と下側本体部4とを繋ぐ繋ぎ部5と、を有しており、上側本体部3と下側本体部4との間に、シート材S1を挿入可能な空間であるシート挿入空間9が形成されており、切断部材2の少なくとも一部はシート挿入空間9に位置しており、上側本体部3及び下側本体部4のうちの少なくとも一方は、建物における壁面Eに接当可能な接当部12を有しており、切断部材2によるシート材S1の切断方向に沿う方向視において切断部材2に対して接当部12の位置する側に位置すると共にシート材S1を上下方向に押さえるように突出した突出部7が設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を切断する切断部材と、
前記切断部材を支持する本体部と、を備え、
前記本体部は、上側本体部と、前記上側本体部よりも下側に位置する下側本体部と、前記上側本体部と前記下側本体部とを繋ぐ繋ぎ部と、を有しており、
前記上側本体部と前記下側本体部との間に、前記シート材を挿入可能な空間であるシート挿入空間が形成されており、
前記切断部材の少なくとも一部は前記シート挿入空間に位置しており、
前記上側本体部及び前記下側本体部のうちの少なくとも一方は、建物における壁面に接当可能な接当部を有しており、
前記切断部材による前記シート材の切断方向に沿う方向視において前記切断部材に対して前記接当部の位置する側に位置すると共に前記シート材を上下方向に押さえるように突出した突出部が設けられているシート切断装置。
【請求項2】
前記本体部に、前記切断部材を保持する保持機構が設けられており、
前記保持機構は、前記本体部に対する前記切断部材の位置を変更可能に構成されており、
前記切断部材の位置が変更されることによって、平面視における前記接当部と前記切断部材との間の距離が変化するように構成されている請求項1に記載のシート切断装置。
【請求項3】
前記保持機構は、前記切断部材を支持する支持部と、前記支持部を挟持する挟持部と、を有しており、
前記支持部は、前記挟持部から取り外された状態で、上下方向に沿う第1回転軸芯周りに回転させることにより、第1姿勢と、前記第1姿勢に対して反転した姿勢である第2姿勢と、の間で姿勢変更可能であり、
前記挟持部は、前記支持部が前記第1姿勢と前記第2姿勢との何れの姿勢であっても前記支持部を挟持可能に構成されており、
前記切断部材は、前記切断方向に沿う方向視において、前記第1回転軸芯に対して所定間隔を空けた位置に配置されており、
前記保持機構は、前記支持部の姿勢を前記第1姿勢と前記第2姿勢との間で変更することによって、前記本体部に対する前記切断部材の位置を変更可能に構成されている請求項2に記載のシート切断装置。
【請求項4】
前記切断部材は、前記上側本体部に取り付けられると共に、多角形の形状を有しており、
前記切断部材において、前記多角形のうちの互いに隣接する二つの辺に対応する部位に、それぞれ、前記シート材を切断可能な刃部が設けられており、
前記切断部材は、前記二つの辺に挟まれた角に対応する角部が下方へ向けられた状態で設けられている請求項1から3の何れか一項に記載のシート切断装置。
【請求項5】
前記切断部材において、前記多角形のうちの全ての辺に対応する部位に、それぞれ、前記刃部が設けられており、
前記切断部材は、前記上側本体部への取り付け姿勢を、前記多角形の中心を通る第2回転軸芯周りに変更可能に構成されている請求項4に記載のシート切断装置。
【請求項6】
前記切断部材は、前記上側本体部に支持されると共に、前記上側本体部から下側へ向けて延びる状態で配置されており、
前記下側本体部の上面において、平面視で前記切断部材と重複する部分に、下方へ凹入する凹部が形成されている請求項1から5の何れか一項に記載のシート切断装置。
【請求項7】
前記上側本体部に、作業者が把持可能な把持部が取り付けられており、
前記突出部は、前記上側本体部に支持されると共に、前記上側本体部から下側へ向けて突出する状態で配置されており、
平面視において、前記繋ぎ部に対して前記突出部の位置する側に前記把持部が配置されている請求項1から6の何れか一項に記載のシート切断装置。
【請求項8】
前記下側本体部は、平面視において前記突出部と重複しない請求項7に記載のシート切断装置。
【請求項9】
前記把持部は、平面視において前記切断部材と前記繋ぎ部との間に配置されている請求項7または8に記載のシート切断装置。
【請求項10】
前記突出部はローラーである請求項1から9の何れか一項に記載のシート切断装置。
【請求項11】
前記切断方向における前記下側本体部の両端部のうち少なくとも一方の下端部に、面取り部が形成されている請求項1から10の何れか一項に記載のシート切断装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材を切断するためのシート切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなシート切断装置として、例えば、特許文献1に記載のものが既に知られている。このシート切断装置は、シート材を切断する切断部材(特許文献1では「切断刃」)と、建物における壁面に接当可能な接当部と、を備えている。尚、特許文献1において、建物の屋上における立ち上がり壁の内周側の面が、シート材によって覆われている。そのため、シート材のうち立ち上がり壁の内周側の面を覆う部分の表面が、建物の壁面となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-165742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシート切断装置では、シート材のうち、接当部が接当している部位よりも切断部材の位置する側の部分(言い換えれば、シート材の入隅部分、及び、当該入隅部分よりもシート材の端部側の部分)に、バタつき(即ち、ねじれや皺や浮き上がり等)が生じることが想定される。その結果、作業者の技量によっては、切断位置の精度が低くなってしまう事態が想定される。
【0005】
本発明の目的は、シート材のバタつきを抑制しやすく、作業者の技量にかかわらず高精度の切断が可能なシート切断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は、シート材を切断する切断部材と、前記切断部材を支持する本体部と、を備え、前記本体部は、上側本体部と、前記上側本体部よりも下側に位置する下側本体部と、前記上側本体部と前記下側本体部とを繋ぐ繋ぎ部と、を有しており、前記上側本体部と前記下側本体部との間に、前記シート材を挿入可能な空間であるシート挿入空間が形成されており、前記切断部材の少なくとも一部は前記シート挿入空間に位置しており、前記上側本体部及び前記下側本体部のうちの少なくとも一方は、建物における壁面に接当可能な接当部を有しており、前記切断部材による前記シート材の切断方向に沿う方向視において前記切断部材に対して前記接当部の位置する側に位置すると共に前記シート材を上下方向に押さえるように突出した突出部が設けられていることにある。
【0007】
本構成によれば、突出部によって、シート材が上側または下側へ押さえられる。これにより、シート材のバタつきを抑制しやすい。従って、本構成によれば、シート材のバタつきを抑制しやすく、作業者の技量にかかわらず高精度の切断が可能なシート切断装置を実現できる。
【0008】
さらに、本発明において、前記本体部に、前記切断部材を保持する保持機構が設けられており、前記保持機構は、前記本体部に対する前記切断部材の位置を変更可能に構成されており、前記切断部材の位置が変更されることによって、平面視における前記接当部と前記切断部材との間の距離が変化するように構成されていると好適である。
【0009】
従来のシート切断装置では、シート部材の切断位置を変更することができなかった。そのため、建物の構造や作業の状況等によっては、シート部材の切断位置が最適ではない位置となってしまう場合があった。
【0010】
ここで、本構成によれば、平面視における接当部と切断部材との間の距離を変更可能となる。これにより、シート部材の切断位置を状況に応じて変更可能なシート切断装置を実現できる。
【0011】
さらに、本発明において、前記保持機構は、前記切断部材を支持する支持部と、前記支持部を挟持する挟持部と、を有しており、前記支持部は、前記挟持部から取り外された状態で、上下方向に沿う第1回転軸芯周りに回転させることにより、第1姿勢と、前記第1姿勢に対して反転した姿勢である第2姿勢と、の間で姿勢変更可能であり、前記挟持部は、前記支持部が前記第1姿勢と前記第2姿勢との何れの姿勢であっても前記支持部を挟持可能に構成されており、前記切断部材は、前記切断方向に沿う方向視において、前記第1回転軸芯に対して所定間隔を空けた位置に配置されており、前記保持機構は、前記支持部の姿勢を前記第1姿勢と前記第2姿勢との間で変更することによって、前記本体部に対する前記切断部材の位置を変更可能に構成されていると好適である。
【0012】
本構成によれば、支持部の姿勢を第1姿勢と第2姿勢との間で変更するだけで、平面視における接当部と切断部材との間の距離を変更可能となる。これにより、シート部材の切断位置を容易に変更可能なシート切断装置を実現できる。
【0013】
さらに、本発明において、前記切断部材は、前記上側本体部に取り付けられると共に、多角形の形状を有しており、前記切断部材において、前記多角形のうちの互いに隣接する二つの辺に対応する部位に、それぞれ、前記シート材を切断可能な刃部が設けられており、前記切断部材は、前記二つの辺に挟まれた角に対応する角部が下方へ向けられた状態で設けられていると好適である。
【0014】
本構成によれば、建物における壁面に沿ってシート切断装置を移動させながらシート材を切断する場合、一方向への移動による切断だけではなく、当該方向とは逆方向への移動による切断も行うことができる。言い換えれば、作業者は、シート切断装置を押しながらの作業と、引きながらの作業と、の何れも行うことができる。そのため、一方向への移動による切断しかできない構成に比べて、作業性が向上する。
【0015】
さらに、本発明において、前記切断部材において、前記多角形のうちの全ての辺に対応する部位に、それぞれ、前記刃部が設けられており、前記切断部材は、前記上側本体部への取り付け姿勢を、前記多角形の中心を通る第2回転軸芯周りに変更可能に構成されていると好適である。
【0016】
本構成によれば、何れかの刃部が摩耗した場合、切断部材の取り付け姿勢を変更するだけで、その摩耗した刃部の位置していた位置に、別の刃部が位置する状態となる。これにより、摩耗した刃部と、まだ摩耗していない刃部と、の入れ替えを容易に行うことが可能となる。
【0017】
さらに、本発明において、前記切断部材は、前記上側本体部に支持されると共に、前記上側本体部から下側へ向けて延びる状態で配置されており、前記下側本体部の上面において、平面視で前記切断部材と重複する部分に、下方へ凹入する凹部が形成されていると好適である。
【0018】
本構成によれば、切断部材の下端位置が比較的低い位置に位置していても、凹部により、切断部材と下側本体部との干渉を回避しやすくなる。そのため、切断部材の下端位置を比較的低い位置に位置させることによってシート材の切断状態を良好にしながらも、切断部材と下側本体部との干渉を回避しやすいシート切断装置を実現することが可能となる。
【0019】
さらに、本発明において、前記上側本体部に、作業者が把持可能な把持部が取り付けられており、前記突出部は、前記上側本体部に支持されると共に、前記上側本体部から下側へ向けて突出する状態で配置されており、平面視において、前記繋ぎ部に対して前記突出部の位置する側に前記把持部が配置されていると好適である。
【0020】
本構成によれば、作業者が把持部に下向きの力を加えることにより、上側本体部が下側へしなりやすくなる。そして、上側本体部が下側へしなると、突出部が下側へ移動することとなる。その結果、突出部によるシート材の押さえ作用が確実に発揮されやすい。
【0021】
さらに、本発明において、前記下側本体部は、平面視において前記突出部と重複しないと好適である。
【0022】
下側本体部が平面視において突出部と重複する構成では、シート材のうち突出部に押さえられている部分が、突出部と下側本体部の上面との間で挟まれることとなる。その結果、シート材とシート切断装置との間で比較的大きな摩擦力が生じがちとなる。これにより、シート切断装置を壁面に沿ってスムーズに移動させにくくなる。
【0023】
ここで、本構成によれば、シート材のうち突出部に押さえられている部分が、突出部と下側本体部の上面との間で挟まれることがない。そのため、シート材とシート切断装置との間で比較的大きな摩擦が生じてしまう事態を回避しやすい。これにより、シート切断装置を壁面に沿ってスムーズに移動させやすくなる。
【0024】
さらに、本発明において、前記把持部は、平面視において前記切断部材と前記繋ぎ部との間に配置されていると好適である。
【0025】
本構成によれば、把持部が平面視において切断部材または繋ぎ部の前方または後方に位置する場合に比べて、把持部、切断部材、繋ぎ部の配置が前後方向(シート材の切断方向)においてコンパクトに収まりやすい。そのため、シート切断装置の前後長さを短くすることが可能となる。その結果、コンパクトで取り扱いやすいシート切断装置を実現できる。
【0026】
さらに、本発明において、前記突出部はローラーであると好適である。
【0027】
本構成によれば、突出部とシート材との間で比較的大きな摩擦が生じてしまう事態を回避しやすい。これにより、シート切断装置を壁面に沿ってスムーズに移動させやすくなる。
【0028】
さらに、本発明において、前記切断方向における前記下側本体部の両端部のうち少なくとも一方の下端部に、面取り部が形成されていると好適である。
【0029】
本構成によれば、シート材の切断作業中に、下側本体部が下地の凹凸等に引っ掛かりにくい。そのため、シート切断装置を壁面に沿ってスムーズに移動させやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】シート切断装置の平面図である。
図2】シート切断装置の左側面図である。
図3】シート切断装置の背面図である。
図4】シート切断装置の背面図である。
図5】第1シートの設置が完了した状態を示す縦断面図である。
図6】保持機構等の構成を示す縦断背面図である。
図7】支持部の姿勢変更を示す図である。
図8】保持機構等の構成を示す縦断背面図である。
図9】切断部材及び支持部の構成を示す図である。
図10】切断部材の姿勢変更を示す図である。
図11】下側本体部等の構成を示す平面図である。
図12】面取り部等の構成を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、図1図2図11図12に示す矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」として、図1図3から図6図8図11に示す矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。また、図2から図6図8図12に示す矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0032】
〔シート切断装置の全体構成〕
図1から図3に示すように、シート切断装置Kは、本体部1を備えている。本体部1は、上側本体部3、下側本体部4、繋ぎ部5を有している。
【0033】
上側本体部3及び下側本体部4は、何れも、水平姿勢の板状の部材である。下側本体部4は、上側本体部3よりも下側に位置している。
【0034】
繋ぎ部5は、本体部1の右端部に位置している。繋ぎ部5は、上側本体部3と下側本体部4との間に挟まれている。そして、上側本体部3、繋ぎ部5、下側本体部4は、上下方向に重なった状態で、複数の締結具によって互いに締結されている。これにより、繋ぎ部5は、上側本体部3と下側本体部4とを繋いでいる。
【0035】
即ち、本体部1は、上側本体部3と、上側本体部3よりも下側に位置する下側本体部4と、上側本体部3と下側本体部4とを繋ぐ繋ぎ部5と、を有している。
【0036】
また、シート切断装置Kは、複数の突出部7を備えている。尚、本実施形態において、突出部7の設けられる個数は二つである。しかしながら、本発明はこれに限定されず、突出部7の設けられる個数は、一つでも良いし、三つ以上のいかなる個数であっても良い。
【0037】
突出部7は、上側本体部3に支持されている。突出部7は、上側本体部3の下面よりも下側へ突出している。
【0038】
即ち、突出部7は、上側本体部3に支持されると共に、上側本体部3から下側へ向けて突出する状態で配置されている。
【0039】
上側本体部3の上面に、把持部8が取り付けられている。把持部8は、前後方向に延びると共に、作業者が把持可能に構成されている。
【0040】
即ち、上側本体部3に、作業者が把持可能な把持部8が取り付けられている。
【0041】
図1に示すように、平面視において、繋ぎ部5に対して突出部7の位置する側に把持部8が配置されている。
【0042】
また、図1から図3に示すように、本実施形態において、突出部7は、ローラーである。突出部7は、左右方向に沿う軸芯P周りに回転可能に構成されている。尚、図2及び図3に示すように、軸芯Pは、上側本体部3の上面よりも上側に位置している。
【0043】
〔第1シート材の切断について〕
以下では、シート切断装置Kを利用した第1シートS1(本発明に係る「シート材」に相当)の切断について説明する。第1シートS1は、例えば、建物における屋上に敷設される防水シートや、プールの内面に敷設される防水シート等である。
【0044】
勿論、シート切断装置Kによる切断対象となる第1シートS1は、上述のような場面で敷設される防水シートに限るものではなく、他の箇所に設置される防水シートであったり、全く異なる環境下で切断される他のシート材(防水シートでないものを含む)であっても良い。
【0045】
図4では、屋上のパラペット部が示されている。図4に示す例では、屋上スラブ10の外縁部分に立ち上がり壁11が一体に形成されている。屋上スラブ10上には、平坦なスラブ面に沿わせて、第2シートS2が敷設されている。
【0046】
一方、立ち上がり壁11の内周側の面に、第1シートS1が接着されている。第2シートS2の端縁部上に、第1シートS1の下縁部を接着一体化することにより、図5に示すように、屋上スラブ10と立ち上がり壁11とに渡った一連の防水層が形成される。
【0047】
シート切断装置Kは、第2シートS2上に第1シートS1を接着する前に、第1シートS1の下縁部を切り揃えるのに使用することができる。
【0048】
図3及び図4に示すように、上側本体部3と下側本体部4との間に、シート挿入空間9が形成されている。シート挿入空間9には、第1シートS1の下縁部を挿入することができる。
【0049】
即ち、上側本体部3と下側本体部4との間に、第1シートS1を挿入可能な空間であるシート挿入空間9が形成されている。
【0050】
図1及び図4に示すように、上側本体部3は、接当部12を有している。接当部12は、上側本体部3の左端に形成されている。接当部12は、建物の壁面Eに接当可能である。尚、この例では、第1シートS1のうち立ち上がり壁11の内周側の面を覆う部分の表面が、建物の壁面Eとなっている。
【0051】
ただし、本発明はこれに限定されず、接当部12は、上側本体部3及び下側本体部4のうち、下側本体部4のみに形成されていても良いし、上側本体部3及び下側本体部4の両方に形成されていても良い。
【0052】
即ち、上側本体部3及び下側本体部4のうちの少なくとも一方は、建物における壁面Eに接当可能な接当部12を有している。
【0053】
図2から図4に示すように、シート切断装置Kは、切断部材2を備えている。切断部材2は、第1シートS1を切断できるように構成されている。また、切断部材2は、本体部1に支持されている。
【0054】
即ち、シート切断装置Kは、第1シートS1を切断する切断部材2と、切断部材2を支持する本体部1と、を備えている。
【0055】
図3図4図6に示すように、切断部材2の下端部は、シート挿入空間9に位置している。尚、本発明はこれに限定されず、切断部材2の全体がシート挿入空間9に位置していても良い。
【0056】
即ち、切断部材2の少なくとも一部はシート挿入空間9に位置している。
【0057】
図4に示すように、突出部7は、切断部材2による第1シートS1の切断方向に沿う方向視において、切断部材2に対して接当部12の位置する側に位置している。また、突出部7は、第1シートS1を上下方向に押さえるように突出している。
【0058】
尚、本実施形態において、突出部7は、第1シートS1を下方向に押さえるように突出している。しかしながら、本発明はこれに限定されず、突出部7が、下側本体部4に支持されると共に、第1シートS1を上方向に押さえるように突出していても良い。
【0059】
即ち、シート切断装置Kには、切断部材2による第1シートS1の切断方向に沿う方向視において切断部材2に対して接当部12の位置する側に位置すると共に第1シートS1を上下方向に押さえるように突出した突出部7が設けられている。
【0060】
以上の構成により、図1及び図4に示すように、第1シートS1がシート挿入空間9に挿入されており、且つ、接当部12が壁面Eに接当している状態で、シート切断装置Kを壁面Eに沿って移動させれば、切断部材2によって第1シートS1を切断することができる。
【0061】
尚、本明細書では、図1に示すように、シート切断装置Kの切断方向を前後方向としている。
【0062】
図4及び図5に記載の例では、第2シートS2の上に第1シートS1の余り部分が重なっており、当該余り部分の端部がシート切断装置Kにより切断されている。しかしながら、本発明はこれに限定されない。第1シートS1のうち立ち上がり壁11の内周側の面を覆う部分に、第2シートS2の余り部分が重ねられていても良い。この場合、第2シートS2の余り部分は、垂直に立ち上がることになる。そして、この場合、シート切断装置Kを垂直に立てた状態であれば、第2シートS2の余り部分をシート挿入空間9に挿入し、シート切断装置Kを切断方向に移動させることにより、当該余り部分の端部を切断することができる。本実施形態のシート切断装置Kは、比較的コンパクトで取り扱いやすいため、このような作業も容易に行うことができる。
【0063】
尚、シート切断装置Kを垂直に立てた状態とは、下側本体部4の底面を壁面Eに接当させ、且つ、第2シートS2のうち屋上スラブ10を覆う部分の上面に接当部12を接当させた状態である。
【0064】
〔保持機構について〕
図1から図3に示すように、本体部1に、保持機構6が設けられている。保持機構6は、切断部材2を保持する。
【0065】
即ち、本体部1に、切断部材2を保持する保持機構6が設けられている。
【0066】
図6に示すように、保持機構6は、支持部13及び挟持部14を有している。支持部13は、垂直姿勢の板状の部材である。支持部13は、落とし込み部19(図6及び図9参照)を有している。落とし込み部19は、支持部13の厚み方向に凹入している。また、落とし込み部19は、切断部材2の外形に沿う形状を有している。
【0067】
落とし込み部19に切断部材2が嵌め込まれることにより、切断部材2が支持部13に支持される。また、切断部材2が支持部13に支持された状態において、切断部材2の下端部は、支持部13の下端よりも下側に突出している。
【0068】
図6に示すように、挟持部14は、互いに対向する二つのL字部材15を含んでいる。各L字部材15は、上側本体部3の上面に溶接固定されている。ただし、本発明はこれに限定されず、各L字部材15は、溶接以外の方法(例えばビスやボルト・ナットによる固定方法)によって上側本体部3の上面に固定されていても良い。また、各L字部材15の縦板部分の間に、支持部13が挟持されている。
【0069】
即ち、保持機構6は、切断部材2を支持する支持部13と、支持部13を挟持する挟持部14と、を有している。
【0070】
二つのL字部材15のうち、右側のL字部材15に、ナット17が固定されている。尚、L字部材15にナット17が溶接固定されている場合、ナット17を紛失することを防止できる。そして、左側のL字部材15の左方から、ボルト16が挿入されている。ボルト16は、左側のL字部材15、切断部材2、支持部13、右側のL字部材15、ナット17を貫通する状態で取り付けられる。ボルト16とナット17との締結により、支持部13及び切断部材2が、上側本体部3に取り付けられる。
【0071】
これにより、切断部材2は、上側本体部3に支持される。また、図6に示すように、切断部材2は、上側本体部3から下側へ向けて延びる状態で配置されている。
【0072】
即ち、切断部材2は、上側本体部3に支持されると共に、上側本体部3から下側へ向けて延びる状態で配置されている。
【0073】
ここで、支持部13は、挟持部14から取り外された状態で、上下方向に沿う第1回転軸芯Q1周りに回転させることにより、図7の左側に示す第1姿勢と、図7の右側に示す第2姿勢と、の間で姿勢変更可能である。第2姿勢は、第1姿勢に対して左右に反転した姿勢である。
【0074】
即ち、支持部13は、挟持部14から取り外された状態で、上下方向に沿う第1回転軸芯Q1周りに回転させることにより、第1姿勢と、第1姿勢に対して反転した姿勢である第2姿勢と、の間で姿勢変更可能である。
【0075】
図6に示すように、第1回転軸芯Q1は、左右方向で支持部13の中央に位置している。尚、第1回転軸芯Q1は、前後方向でも支持部13の中央に位置している。
【0076】
図6に示した支持部13は、第1姿勢である。そして、図7に示すように、支持部13を挟持部14から取り外して、第1姿勢から第2姿勢へ反転させた後、挟持部14に取り付けて、ボルト16とナット17とを締結することにより、支持部13は、図8に示す状態となる。図8に示す支持部13は、第2姿勢である。
【0077】
図6及び図8に示すように、挟持部14は、支持部13が第1姿勢と第2姿勢との何れの姿勢であっても支持部13を挟持可能に構成されている。
【0078】
図6に示すように、シート切断装置Kの切断方向に沿う方向視において、切断部材2と第1回転軸芯Q1との間隔は、所定間隔Wである。即ち、切断部材2は、切断方向に沿う方向視において、第1回転軸芯Q1に対して所定間隔Wを空けた位置に配置されている。
【0079】
図6及び図8に示すように、支持部13が第2姿勢であるときの上側本体部3に対する切断部材2の位置は、支持部13が第1姿勢であるときの上側本体部3に対する切断部材2の位置よりも右側である。
【0080】
この構成により、保持機構6は、本体部1に対する切断部材2の位置を変更可能に構成されている。より具体的には、保持機構6は、支持部13の姿勢を第1姿勢と第2姿勢との間で変更することによって、本体部1に対する切断部材2の位置を変更可能に構成されている。
【0081】
そして、図11では、支持部13が第1姿勢であるときの切断部材2が実線で示されている。また、支持部13が第2姿勢であるときの切断部材2が仮想線で示されている。支持部13が第1姿勢であるとき、平面視における接当部12と切断部材2の刃先との間の距離は、第1距離D1である。また、支持部13が第2姿勢であるとき、平面視における接当部12と切断部材2の刃先との間の距離は、第2距離D2である。第2距離D2は、第1距離D1よりも長い。
【0082】
このように、シート切断装置Kは、切断部材2の位置が変更されることによって、平面視における接当部12と切断部材2との間の距離が変化するように構成されている。
【0083】
また、図6及び図9に示すように、支持部13の上部には、絞り部18が形成されている。絞り部18は、水平に延びる溝状の部位である。支持部13において、落とし込み部19の設けられている面と、落とし込み部19の設けられていない面と、の両方に、絞り部18が形成されている。
【0084】
〔切断部材について〕
図9に示すように、切断部材2は、多角形の板状の形状を有している。即ち、切断部材2は、上側本体部3に取り付けられると共に、多角形の形状を有している。
【0085】
より具体的には、本実施形態における切断部材2は、第1辺21、第2辺22、第3辺23、第4辺24の四つの辺から構成された四角形の板状の形状を有している。しかしながら、本発明はこれに限定されず、切断部材2の形状は、四角形以外のいかなる多角形であっても良い。
【0086】
図9に示すように、切断部材2において、第1辺21、第2辺22、第3辺23、第4辺24に対応する部位に、それぞれ、第1刃部31(本発明に係る「刃部」に相当)、第2刃部32(本発明に係る「刃部」に相当)、第3刃部33(本発明に係る「刃部」に相当)、第4刃部34(本発明に係る「刃部」に相当)が設けられている。第1刃部31、第2刃部32、第3刃部33、第4刃部34は、何れも、第1シートS1(図1参照)を切断可能である。
【0087】
即ち、切断部材2において、上述の多角形のうちの全ての辺に対応する部位に、それぞれ、第1刃部31、第2刃部32、第3刃部33、第4刃部34が設けられている。
【0088】
特に、切断部材2において、上述の多角形のうち、互いに隣接する二つの辺である第1辺21及び第2辺22に対応する部位に、それぞれ、第1刃部31及び第2刃部32が設けられている。即ち、切断部材2において、上述の多角形のうちの互いに隣接する二つの辺に対応する部位に、それぞれ、第1シートS1を切断可能な第1刃部31及び第2刃部32が設けられている。
【0089】
また、図9に示すように、切断部材2は、第1角部35、第2角部36、第3角部37、第4角部38を有している。第1角部35は、第1辺21と第2辺22とに挟まれた角に対応する角部である。第2角部36は、第2辺22と第3辺23とに挟まれた角に対応する角部である。第3角部37は、第3辺23と第4辺24とに挟まれた角に対応する角部である。第4角部38は、第4辺24と第1辺21とに挟まれた角に対応する角部である。
【0090】
そして、図9に示すように、切断部材2は、第1角部35が下方へ向けられた状態で設けられている。即ち、切断部材2は、上述の二つの辺(第1辺21及び第2辺22)に挟まれた角に対応する角部が下方へ向けられた状態で設けられている。
【0091】
図9及び図10に示すように、切断部材2は、落とし込み部19に嵌め込まれる際に、支持部13に支持される姿勢を、第2回転軸芯Q2周りに変更可能である。第2回転軸芯Q2は、上述の多角形の中心を通っている。即ち、第2回転軸芯Q2は、第1辺21、第2辺22、第3辺23、第4辺24の四つの辺から構成された四角形の中心を通っている。
【0092】
そして、切断部材2の姿勢を第2回転軸芯Q2周りに変更すると、上側本体部3への取り付け姿勢が、第2回転軸芯Q2周りに変化することとなる。即ち、切断部材2は、上側本体部3への取り付け姿勢を、上述の多角形の中心を通る第2回転軸芯Q2周りに変更可能に構成されている。
【0093】
例えば、図10の左側に示す状態において、切断部材2は、第1角部35が下方へ向けられた姿勢である。この状態では、シート切断装置Kを切断方向における一方側に移動させると、第1刃部31が第1シートS1に作用して、第1シートS1が切断される。また、シート切断装置Kを切断方向における他方側に移動させると、第2刃部32が第1シートS1に作用して、第1シートS1が切断される。
【0094】
そして、切断部材2を、第2回転軸芯Q2を中心として時計周りに90°回転させると、切断部材2は、図10の右側に示す状態となる。この状態において、切断部材2は、第2角部36が下方へ向けられた姿勢である。この状態では、シート切断装置Kを切断方向における一方側に移動させると、第2刃部32が第1シートS1に作用して、第1シートS1が切断される。また、シート切断装置Kを切断方向における他方側に移動させると、第3刃部33が第1シートS1に作用して、第1シートS1が切断される。
【0095】
〔下側本体部について〕
図6及び図11に示すように、下側本体部4の上面に、下方へ凹入する凹部41が形成されている。図11に示すように、凹部41は、平面視で切断部材2と重複する部分に形成されている。尚、本実施形態において、凹部41は、平面視で、支持部13が第1姿勢であるときの切断部材2と、支持部13が第2姿勢であるときの切断部材2と、の何れとも重複する。
【0096】
即ち、下側本体部4の上面において、平面視で切断部材2と重複する部分に、下方へ凹入する凹部41が形成されている。
【0097】
図11に示すように、各突出部7は、下側本体部4の左端よりも左側に位置している。そのため、下側本体部4は、平面視において突出部7と重複しない。
【0098】
また、図11に示すように、把持部8は、平面視において切断部材2と繋ぎ部5との間に配置されている。
【0099】
図12に示すように、下側本体部4の前端部の下端部に、面取り部42が形成されている。尚、図12には示されていないが、下側本体部4の後端部の下端部にも、面取り部42が形成されている。
【0100】
ただし、本発明はこれに限定されない。面取り部42は、下側本体部4の前端部の下端部のみに形成されていても良いし、下側本体部4の後端部の下端部のみに形成されていても良い。
【0101】
即ち、シート切断装置Kの切断方向における下側本体部4の両端部のうち少なくとも一方の下端部に、面取り部42が形成されている。
【0102】
下側本体部4の前端部の面取り部42は、前上がりに傾斜した面である。下側本体部4の後端部の面取り部42は、後上がりに傾斜した面である。尚、面取り部42は、図12に示すように直線的に形成されていなくても良く、例えば、丸みを帯びていても良い。
【0103】
以上で説明した構成によれば、突出部7によって、第1シートS1が上側または下側へ押さえられる。これにより、第1シートS1のバタつきを抑制しやすい。従って、以上で説明した構成によれば、第1シートS1のバタつきを抑制しやすく、作業者の技量にかかわらず高精度の切断が可能なシート切断装置Kを実現できる。
【0104】
〔その他の実施形態〕
(1)突出部7は、第1シートS1を押さえるように突出していれば、ローラーでなくても良い。例えば、突出部7は、上側本体部3の下面に固定された突起状の部材であっても良い。
【0105】
(2)切断部材2は、下側本体部4に取り付けられていても良い。
【0106】
(3)切断部材2は、本体部1から取り外すことができないように構成されていても良い。
【0107】
(4)本体部1に対する切断部材2の位置を変更できないように構成されていても良い。
【0108】
(5)切断部材2に設けられる刃部の個数は、一つであっても良いし、二つ以上のいかなる個数であっても良い。
【0109】
(6)切断部材2は、多角形の形状を有していなくても良い。例えば、切断部材2は円形であっても良い。
【0110】
(7)上側本体部3は、板状でなくても良い。例えば、上側本体部3は、複数のフレーム部材により構成されたフレーム構造体であっても良い。
【0111】
(8)下側本体部4は、板状でなくても良い。例えば、下側本体部4は、複数のフレーム部材により構成されたフレーム構造体であっても良い。
【0112】
(9)接当部12や下側本体部4の底面に、第1シートS1や第2シートS2等に対する摩擦を低減する摩擦低減部が設けられていても良い。摩擦低減部は、例えば、樹脂等によって構成することができる。
【0113】
尚、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、シート材を切断するためのシート切断装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0115】
1 本体部
2 切断部材
3 上側本体部
4 下側本体部
5 繋ぎ部
6 保持機構
7 突出部
8 把持部
9 シート挿入空間
12 接当部
13 支持部
14 挟持部
31 第1刃部(刃部)
32 第2刃部(刃部)
33 第3刃部(刃部)
34 第4刃部(刃部)
41 凹部
42 面取り部
E 壁面
K シート切断装置
Q1 第1回転軸芯
Q2 第2回転軸芯
S1 第1シート(シート材)
W 所定間隔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12