(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066508
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】撮像装置及び移動体
(51)【国際特許分類】
G02B 13/00 20060101AFI20230509BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20230509BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20230509BHJP
H04N 23/67 20230101ALI20230509BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20230509BHJP
【FI】
G02B13/00
G03B15/00 V
G03B15/00 U
H04N5/225 400
H04N5/232 120
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177146
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(74)【代理人】
【識別番号】100143786
【弁理士】
【氏名又は名称】根岸 宏子
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 嘉人
【テーマコード(参考)】
2H087
5C122
【Fターム(参考)】
2H087KA02
2H087KA03
2H087LA01
2H087MA04
2H087MA07
2H087MA08
2H087PA05
2H087PA07
2H087PA08
2H087PA17
2H087PA18
2H087PB06
2H087PB07
2H087PB08
2H087PB10
2H087QA02
2H087QA03
2H087QA06
2H087QA07
2H087QA12
2H087QA17
2H087QA19
2H087QA21
2H087QA25
2H087QA26
2H087QA34
2H087QA37
2H087QA41
2H087QA42
2H087QA45
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087RA42
2H087RA43
2H087RA44
2H087UA09
5C122DA14
5C122EA02
5C122FB03
5C122FD01
5C122FD06
5C122FD07
5C122HA75
5C122HA81
5C122HA82
5C122HB01
5C122HB10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】移動体に搭載される撮像装置に好適であり、高性能且つ耐久性の高い撮像装置を提供する。
【解決手段】移動体の状況を把握する状況把握手段と、移動体に装備される光学系と、前記光学系の結像位置を変更する合焦群を有し、移動体の状況に応じた結像位置を設定する設定値と、前記状況把握手段で把握された移動体の状況から算出された位置に結像位置を変更し、光学系は所定の条件式を満足するものとする。また、移動体は当該撮像装置を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の状況を把握する状況把握手段と、前記移動体に装備される光学系と、前記光学系の結像位置を変更する合焦群を有し、
前記移動体の状況に応じた結像位置を設定する設定値と、前記状況把握手段で把握された前記移動体の状況から算出された位置に結像位置を変更し、
前記光学系は以下の条件式を満足することを特徴とする撮像装置。
0.20 <|(1-βf2)×βr2|< 12.00 ・・・(1)
但し、
βf:前記合焦群の横倍率
βr:前記合焦群より像側のレンズ群の横倍率
【請求項2】
前記状況把握手段で把握される前記移動体の状況が、当該移動体の速度であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記状況把握手段で把握される前記移動体の状況が、当該移動体の温度であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記状況把握手段で把握される前記移動体の状況が、当該移動体の高度であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記状況把握手段で把握される前記移動体の状況が、前記光学系の光軸に対する当該移動体の向きであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記移動体の状況に対応付けられ、前記移動体の状況に応じて前記結像位置の範囲を制限するための閾値を有し、前記状況把握手段で把握された前記移動体の状況と前記閾値とから前記合焦群の駆動範囲が設定されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記光学系は、負の屈折力を有するレンズを少なくとも1枚有し、以下の条件式を満足する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の撮像装置。
1.54 < Ndn < 2.30 ・・・(2)
但し、
Ndn:前記負の屈折力を有するレンズのd線における屈折率
【請求項8】
前記光学系は、正の屈折力を有するレンズを少なくとも1枚有し、以下の条件式を満足する請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の撮像装置。
45.0 < νdp < 98.0 ・・・(3)
但し、
νdp:前記正の屈折力を有するレンズのd線におけるアッベ数
【請求項9】
前記光学系は以下の条件式を満足する請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の撮像装置。
|βf|< 6.00 ・・・(4)
【請求項10】
前記光学系は以下の条件式を満足する請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の撮像装置。
-10.00 < fL1/f < -0.10 ・・・(5)
但し、
fL1:前記光学系の最も物体側レンズの焦点距離
f :前記光学系の焦点距離
【請求項11】
前記光学系が形成する光学像を受光して電気的画像信号に変換する撮像素子を備え、以下の条件を満足する請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の撮像装置。
500 < f×tanω/P ・・・(6)
但し、
f :前記光学系の焦点距離
ω :前記光学系の半画角
P :前記撮像素子の隣り合う画素の画素中心間隔
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の撮像装置を備えることを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、撮像装置及び移動体に関し、特に移動体に搭載する上で好適な撮像装置及び該撮像装置を備える移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両等の移動体には、周囲の情報を得ることを目的とした撮像装置が搭載されている。また無人航空機等の移動体においては、周囲の撮像を目的とした撮像装置が搭載されている。これらの撮像装置には、目的とする情報を得るため、或いは、撮像対象を良好に撮像するため、種々の情報を得ることが求められるようになってきている。そのため、光学系には小型軽量を維持しつつ、高い解像性能が求められるようになってきている。また、移動体に搭載される撮像装置は、移動体の移動に応じて撮像環境が大きく変化するため、高い耐久性も求められている。
【0003】
車両等の移動体に搭載される撮像装置の光学系として、例えば、負の屈折力を有する第1レンズ群と、後続レンズ群とで構成され、樹脂レンズを使用しながら、樹脂レンズの条件を満足することで、温度環境が変化しても良好な光学性能を確保できる光学系が提案されている(「特許文献1」参照)。
【0004】
固体撮像素子として、例えば、複数の画素により構成されるブロックに位相差検波用画素を有し、2以上のブロック内において互いに対応する位置に位相差検波用画素が配置することで、撮像画像の劣化を抑制することができる固体撮像素子が提案されている(「特許文献2」参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-174848号公報
【特許文献2】国際公開第2018/003501号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示の光学系は、温度環境が変化しても良好な光学性能を確保できる光学系を実現しているものの、特許文献1に開示の光学系では、パワー配置の制約が強く、高性能化の点で好ましくない。
【0007】
特許文献2に開示の撮像素子は、位相差検波用画素を有していながら撮像画像の劣化を抑制することができる固体撮像素子を実現している。しかしながら、特許文献2に開示の固体撮像素子で位相差検波を行うと、検波した後に合焦群の移動を行うこととなり、合焦の高速化点で好ましくない。また、被写体までの距離に応じて合焦群の移動を行うことは、移動体が移動している状況において合焦作動が多くなり、耐久性の点で好ましくない。
【0008】
本件発明の課題は、移動体に搭載される撮像装置に好適であり、高性能且つ耐久性の高い撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る撮像装置は、移動体の状況を把握する状況把握手段と、前記移動体に装備される光学系と、前記光学系の結像位置を変更する合焦群を有し、前記移動体の状況に応じた結像位置を設定する設定値と、前記状況把握手段で把握された前記移動体の状況から算出された位置に結像位置を変更し、
前記光学系は、以下の条件式を満足することを特徴とする。
0.20 <|(1-βf2)×βr2|< 12.00 ・・・(1)
但し、
βf:前記合焦群の横倍率
βr:前記合焦群より像側のレンズ群の横倍率
【0010】
また、上記課題を解決するため、本件発明に係る移動体は、上記記載の撮像装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、移動体に搭載される撮像装置に好適であり、高性能且つ耐久性の高い撮像装置及び移動体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本件発明の合焦群駆動の一例を示すフローチャートである。
【
図2】本件発明の実施例1の光学系のレンズ構成例を示す断面図である。
【
図3】本件発明の実施例1の無限遠被写体撮像時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図4】本件発明の実施例2の光学系のレンズ構成例を示す断面図である。
【
図5】本件発明の実施例2の無限遠被写体撮像時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図6】本件発明の実施例3の光学系のレンズ構成例を示す断面図である。
【
図7】本件発明の実施例3の無限遠被写体撮像時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【
図8】本件発明の実施例4の光学系のレンズ構成例を示す断面図である。
【
図9】本件発明の実施例4の無限遠被写体撮像時の球面収差図、非点収差図及び歪曲収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る撮像装置及び移動体の実施の形態を説明する。
【0014】
1.移動体
まず、本発明に係る移動体の実施の形態を説明する。本発明に係る移動体は、有人無人に係わらず、車両、航空機、人工衛星、船舶等の移動することを前提とした装置のことであり、自立航行ロボット等も含まれる。
【0015】
当該移動体は、例えば車両、航空機、人工衛星、船舶、自立航行ロボット等なので、人が保持しながら撮像する一眼レフやミラーレス等のカメラやカムコーダー、または所定の位置に固定した状態で設置される監視カメラ等などの撮像装置とは異なり、撮像状況の変化が大きい。本発明は、撮像状況の変化が大きく変化しても高い解像性能を確保すること目的としている。よって、本願では人は移動体に含まれず、人が保持しながら撮像する形態で用いられる撮像装置は、本願にいう移動体に搭載される撮像装置には含まれないものとする。
【0016】
2.状況把握手段
本発明において状況把握手段は、移動体の状況を把握するための手段であり、例えば後述するCPUなどの制御装置から構成することができる。把握される移動体の状況は、移動体の速度であることが好ましい。移動体の速度を把握するための手段としては、車速センサや車輪の回転センサ、またはピトー静圧管を用いて動圧を検出、更にはGPS等を用いて速度を計測することが可能であるが、具体的な手段は問わない。
【0017】
また、把握される移動体の状況は、移動体の温度であることが好ましい。移動体の温度を把握するための手段としては、サーミスター電気抵抗値の計測、またはゼーベック効果を用いた方法、更には赤外放射の計測等で温度を計測することが可能であるが、具体的な手段は問わない。
【0018】
また、把握される移動体の状況は、移動体の高度であることが好ましい。移動体の高度を把握するための手段としては、気圧の測定、または電波やレーザーを用いて対象物からの反射時間を測定、またはGPS等を用いて高度を計測することが可能であるが、具体的な手段は問わない。
【0019】
また、把握される移動体の状況は、光学系の光軸に対する移動体の向きであることが好ましい。光学系の光軸に対する移動体の向きを把握するための手段としては、角速度センサや光学系を保持するためのジンバルからの情報等を利用することで可能であるが、具体的な手段は問わない。
【0020】
2-1.状況把握内容と設定値
状況把握手段により把握される移動体の状況が速度である場合、例えば、次のようにして光学系の結像位置を設定することが好ましい。例えば、低速で移動する移動体において重要な情報は移動体に近い範囲にあることが多い。また高速で移動する移動体において重要な情報は移動体から遠い範囲にあることが多い。そのため移動体の速度に対応した合焦群の位置、もしくは移動体の速度に対応した撮像距離、もしくは移動体の速度に対応した電力量等のデータを設定値として保有することが好ましい。この設定値から結像位置を変更することが可能となる。この設定値をもとにして合焦群の駆動状態を算出し、算出された駆動状態に合焦群を駆動することが可能となる。このように移動体の速度に対応した結像位置を変更するためのデータであればよく、具体的なデータの内容は問わない。
【0021】
また、状況把握手段により把握される移動体の状況が移動体の温度である場合、例えば、次のようにして光学系の結像位置を設定することが好ましい。光学系や光学系を保持するための鏡筒は温度の変化に応じて結像位置が変化する。そのため移動体の温度に対応した合焦群の位置、もしくは移動体の温度に対応した撮像距離、もしくは移動体の温度に対応した電力量等のデータを設定値として保有することが好ましい。この設定値から結像位置を変更することが可能となる。この設定値をもとにして合焦群の駆動状態を算出し、算出された駆動状態に合焦群を駆動することが可能となる。このように移動体の温度に対応した結像位置を変更するためのデータであればよく、具体的なデータの内容は問わない。
【0022】
また、状況把握手段により把握される移動体の状況が移動体の高度である場合、次のようにして光学系の結像位置を設定することが好ましい。低い高度で移動する移動体において重要な情報は移動体に近い範囲にあることが多い。また高い高度で移動する移動体において重要な情報は移動体から遠い範囲にあることが多い。そのため移動体の高度に対応した合焦群の位置、もしくは移動体の高度に対応した撮像距離、もしくは移動体の高度に対応した電力量等のデータを設定値として保有することが好ましい。この設定値から結像位置を変更することが可能となる。この設定値をもとにして合焦群の駆動状態を算出し、算出された駆動状態に合焦群を駆動することが可能となる。このように移動体の速度に対応した結像位置を変更するためのデータであればよく、具体的なデータの内容は問わない。
【0023】
また、状況把握手段により把握される移動体の状況が光学系の光軸に対する移動体の向きである場合、次のようにして光学系の結像位置を設定することが好ましい。車両等の移動体において移動体の進行方向に対して光学系の光軸が斜め方向及び横方向を向いている場合、重要情報は移動体に近い範囲にあることが多い。また高い高度で移動している飛行体が進行方向と光学系の光軸が斜め方向及び同じ方向を向いている場合、重要情報は移動体に遠い範囲にあることが多い。そのため光学系の光軸に対する移動体の向きに対応した合焦群の位置、もしくは光学系の光軸に対する移動体の向きに対応した撮像距離、もしくは光学系の光軸に対する移動体の向きに対応した電力量等のデータを設定値として保有することが好ましい。この設定値から結像位置を変更することが可能となる。この設定値をもとにして合焦群の駆動状態を算出し、算出された駆動状態に合焦群を駆動することが可能となる。このように光学系の光軸に対する移動体の向きに対応した結像位置を変更するためのデータであればよく、具体的なデータの内容は問わない。
【0024】
上記のように移動体の状況を把握することで移動体の状況に応じた結像位置となるように合焦群の駆動状態を変更することが可能となる。すなわち被写体の情報がなくても撮像面と結像位置とのずれを小さくすることが可能となる。被写体の情報を得る前に合焦群の位置をより好ましい状態に駆動させることで、高解像の画像を高速に得ることが可能となる。また被写体の情報を得ながら合焦群の位置を最適化していく方法に比べて、合焦群の駆動回数を減らすことができる。そのため高い耐久性を確保することが可能となる。
【0025】
3.閾値
本発明において閾値は、移動体の状況に応じて光学系の結像位置を変更するための合焦群の駆動範囲を制限するためのデータである。合焦群の駆動範囲とは、合焦群の移動可能な範囲や、合焦群又は合焦群の位置等を移動させるための駆動手段(例えば、不図示のモータなど)に与える電圧量、ピント敏感度から算出される像面の変動量等をいうものとする。閾値は想定される移動体の状況と予め対応付けられた値であり、適宜、更新可能な値とすることができる。閾値の更新はディープラーニングにより行ってもよい。そして、状況把握手段で測定された実際の移動体の状況と閾値とから、合焦群の駆動範囲を設定することが可能となる。
【0026】
本発明は、被写体の情報がなくても合焦群を駆動することが可能であるが、オートフォーカス機能を備えた撮像装置に本発明を応用し、合焦群の駆動範囲を設定するようにしてもよい。位相差AFやコントラストAF等のオートフォーカス機能により被写体に合焦する場合に、上記状況把握手段により移動体の状況を把握することで、結像位置の設定や合焦群の駆動範囲を制限することが可能となる。それにより、効率良く合焦群の駆動制御を行うことができ、合焦群の駆動量の削減が可能となり、その結果、高い耐久性を確保することが可能となる。
【0027】
また、位相差AFやコントラストAF等のオートフォーカス機能を利用して被写体に合焦する場合、移動体と被写体の間にゴミやフロントガラスの汚れ等の不要な被写体が存在すると、それらに合焦する可能性がある。そこで、これらのオートフォーカス機能により被写体の情報を得つつ被写体に合焦する場合も、本発明を適用し、合焦群の駆動範囲を設定することで、合焦群の駆動範囲を制限し、不要な被写体に合焦することを避けることが可能となる。それにより、移動体の周囲における取得すべき重要な情報を高解像で得ることが可能となる。
【0028】
また、合焦群の駆動量を変更すると、合焦群の駆動誤差が生じることがあり、想定した位置に合焦群が駆動しないことがある。そのため、合焦群の駆動範囲を設定することで、駆動誤差による合焦群の駆動ずれを修正するための指示を出すことが可能となる。ここでも、本発明では被写体の情報を必要としないため、低電力で最小の駆動量で結像位置を変更することが可能となる。そのため必要な情報を高解像で得ることが可能となり、さらに高い耐久性を確保することが可能となる。
【0029】
ここで、合焦群の駆動量が目標としている駆動量からずれているかの判断をする必要が出てくる。そのため合焦群の駆動範囲を制限することをより効果的にするためには、合焦群の駆動状態を検出する手段を有することが好ましい。
【0030】
合焦群の駆動状態を検出する手段は、ロータリーエンコーダやフォトトランジスタ等を使用することで可能となるが、具体的な手段は問わない。
【0031】
4.光学系
4-1.光学系の光学構成
まず、本発明に係る撮像装置の光学系の実施の形態を説明する。本実施の形態の光学系は、光学系に含まれる一部のレンズもしくは一部のレンズ群を結像位置の変更を行うための合焦群としてもよいし、光学系全体を結像位置の変更を行うための合焦群としてもよいし、像面を駆動させて像面を合焦群としてもよい。光学系は像面に結像できればよく、光学系の具体的な構成は問わない。また、結像位置の変更とは光学系における結像する位置と撮像面との距離を変更することである。すなわち像面を合焦群としても結像位置の変更に相当する。また、焦点距離が可変のズームレンズでも焦点距離が固定の単焦点でも、本発明は実施可能である。
【0032】
4-2.合焦群の構成
本発明において、合焦群は、光学系の結像位置を変更するための手段である。光学系に含まれる一部のレンズもしくは一部のレンズ群を合焦群とした場合、この合焦時可動のレンズ群を光軸方向に移動させることで、結像位置を変更することが可能となる。または、合焦群を光学系全体とした場合、像面に対して光学系全体を光軸方向に移動させることで、結像位置を変更することが可能となる。または合焦群を像面とした場合、像面を光学系に対して光軸方向に移動させることで、結像位置を変更することが可能となる。また、合焦群を液体レンズとすることができ、液体レンズに電力を与えて液体レンズの界面形状を変更させることで結像位置を変更するようにしてもよい。このように結像位置を変更する手段は複数あるが、本発明において合焦群はこれらのいずれの手段であってもよく、結像位置を変更できる限り合焦群の具体的な構成は問わない。
【0033】
本発明にいう合焦群を、光学系に含まれる一部のレンズもしくは一部のレンズ群により構成した場合、光学系全体を合焦群とする場合と比較すると、合焦時に一部のレンズもしくは一部のレンズ群のみを駆動すればよいため、合焦群が軽量になる。そのため、当該光学系の鏡筒構成含めた全体の小型化及び軽量化を図ることが容易となる。
【0034】
この場合、合焦時可動のレンズ群のレンズ枚数に制限はないが、1つの単レンズユニットで構成されることが好ましい。ここで、単レンズユニットとは、1枚の単レンズ、或いは、複数の単レンズを空気間隔を介することなく一体化した接合レンズなどのレンズユニットをいう。すなわち、単レンズユニットは、複数の光学面を有する場合であっても、その最物体側面及び最像側面のみ空気と接し、その他の面は空気とは接していないものとする。また、当該明細書において、単レンズは、球面レンズ及び非球面レンズのいずれであってもよい。また、非球面レンズには、表面に非球面層が貼設されたいわゆる複合非球面レンズも含まれるものとする。このような構成をとることで、偏芯誤差や、単レンズ間の間隔の誤差等、種々の製造誤差を小さくすることができる。そのため、製造誤差に起因する光学性能の低下を小さくすることができ、製品毎の性能のバラツキを小さくすることができる。その結果、高性能化を実現することが容易となる。さらに好ましくは、合焦群は単レンズ、すなわち1枚の単レンズや1枚の非球面レンズで構成することで、製造誤差に起因する光学性能の低下をさらに小さくすることができ、高性能化を実現することが容易となる。
【0035】
本発明にいう合焦群を、光学系全体とした場合、光学系に含まれるレンズ全体を一体で像面に対して光軸方向に移動させることで結像位置を変更することが可能となる。光学系全体を合焦群とし、レンズ全体を一体で合焦を行う方が、レンズを保持する枠構成が簡易になると共にメカ構成が簡易となるため、当該光学系の鏡筒構成含めた全体の低コスト化を図ることが容易となる。
【0036】
本発明にいう合焦群を像面とした場合、合焦群すなわち像面を光軸方向に移動させることで結像位置を変更することが可能となる。このとき光学系全体が合焦時光軸方向に位置固定となるため、レンズを保持する枠構成が簡易になると共にメカ構成が簡易となり、当該光学系の鏡筒構成含めた全体の低コスト化を図ることが容易となる。
【0037】
本発明にいう合焦群を液体レンズとした場合、合焦群すなわち液体レンズの界面の形状を変形させることで結像位置を変更することが可能となる。このとき光学系全体が合焦時光軸方向に位置固定となるため、レンズを保持する枠構成が簡易になると共にメカ構成が簡易となり、当該光学系の鏡筒構成含めた全体の低コスト化を図ることが容易となる。
【0038】
本発明にいう合焦群は結像位置を変更する手段であるため、当該撮像装置に設けられる合焦群の個数は制限がない。合焦群が1つのみであれば、合焦群を駆動するための機構が簡易となり、小型化や低コスト化に効果的となる。また2つ以上の複数の合焦群を有し各々を駆動することで収差変動を小さくすることが可能となり、必要な情報を高解像で得ることが可能となる。なお、複数の合焦群は、同種の合焦群を複数備える構成としてもよいし、異種の合焦群を1つ以上備える構成としてもよい。また、合焦群を駆動するとは、合焦群に動力を与えて合焦群の位置を移動させること、或いは、合焦群が液体レンズの場合は、電力を与えて界面形状を変化させることをいう。
【0039】
このように、合焦群が光学系や像面である場合には、駆動手段は光学系や像面を駆動(光軸方向に移動)させるためのモータなどであればよく、合焦群が液体レンズである場合には、駆動手段は液体レンズの界面の形状を変化させるための電圧源となる電極などであればよい。なお、モータの駆動量や電極への電圧量は、例えばCPUなどの制御装置により制御することができる。なお、合焦群の具体的な駆動の処理については後述する。
【0040】
4-3.条件式
本発明において上記光学系は、次に説明する条件式を1つ以上満足することが好ましい。
【0041】
4-3-1.条件式(1)
当該光学系は以下の条件式を満足することが好ましい。
0.20 < |(1-βf2)× βr2|< 12.00 ・・・(1)
但し、
βf:合焦群の横倍率
βr:合焦群より像側のレンズ群の横倍率
【0042】
上記条件式(1)は、本発明にいう合焦群のピント敏感度の絶対値、すなわち合焦群が単位量駆動した場合の像面移動量を規定するための式である。条件式(1)を満足することで、駆動量が最適となり、駆動のためのスペースを小型化することが可能になる。また、駆動のために高精度の制御が不要となるため、制御が容易となる。但し、像面を本発明にいう合焦群とする場合、合焦群の横倍率βfを0、合焦群より像側のレンズ群の横倍率を1とする。
【0043】
これに対し、上記条件式(1)の数値が上限以上となると、すなわち合焦群のピント敏感度が大きくなりすぎると、結像位置のずれを補正するための合焦の駆動量が小さくなり過ぎるため、高精度の制御が必要となるため好ましくない。上記条件式(1)の数値が下限以下となると、すなわち合焦群のピント敏感度が小さくなりすぎると、結像位置のずれを補正するための合焦時の駆動量が大きくなり、光学全長の小型化が困難となり好ましくない。
【0044】
上記効果を得る上で、上記条件式(1)の上限値は11.00であることが好ましく、10.00であることがより好ましく、9.00であることがさらに好ましく、8.00であることがよりさらに好ましく、7.00であることが一層好ましい。また、上記条件式(1)の下限値は0.25であることが好ましく、0.30であることがより好ましく、0.35であることがさらに好ましく、0.40であることがよりさらに好ましく、0.45であることが一層好ましい。
【0045】
4-3-2.条件式(2)
当該光学系は、負の屈折力を有するレンズを少なくとも1枚有し、以下の条件式を満足することが好ましい。
1.54 < Ndn < 2.30 ・・・(2)
但し、
Ndn:上記負の屈折力を有するレンズのd線における屈折率
【0046】
上記条件式(2)は、当該光学系に含まれる負の屈折力を有するレンズのd線(波長λ=587.56nm)における屈折率を規定する式である。撮像装置の光学系は全体で正の屈折力を有するため、負の屈折力が相対的に弱い。そのため、負の屈折率を有するレンズに高い屈折率の硝材を用いることでペッツバール和の補正が可能となる。その結果、像面性が補正される。よって、当該光学系に含まれる負の屈折力を有するレンズが条件式(2)を満足する場合、像面性が補正され必要な情報を高解像で得ることが可能となる。
【0047】
これに対し、上記条件式(2)の数値が上限以上となると、すなわち負の屈折力を有するレンズのd線における屈折率が大きくなる場合、ペッツバール和の補正は有利となるが、負の屈折力を有するレンズが高価となるため、低コスト化の点で好ましくない。上記条件式(2)の数値が下限以下となると、負の屈折力を有するレンズのd線における屈折率が小さくなる場合、ペッツバール和の補正不足になるため、像面性が補正不足となる。そのため高性能化の点で好ましくない。
【0048】
上記効果を得る上で、上記条件式(2)の上限値は2.20であることが好ましく、2.15であることがより好ましい。また、上記条件式(2)の下限値は1.55であることが好ましく、1.56であることがより好ましく、1.58であることがさらに好ましく、1.60であることがよりさらに好ましく、1.62であることが一層好ましい。
【0049】
当該光学系中に負の屈折力を有するレンズが複数ある場合、負の屈折力を有するレンズの少なくとも1枚が上記条件式(2)を満足することが好ましい。上記効果を得る上では、当該光学系に含まれる負の屈折力を有するレンズの中で最も屈折率の高いレンズが、上記条件式(2)を満足することがさらに好ましい。
【0050】
4-3-3.条件式(3)
当該光学系は、正の屈折力を有するレンズを少なくとも1枚有し、以下の条件式を満足することが好ましい。
45.0 < νdp < 98.0 ・・・(3)
但し、
νdp:上記正の屈折力を有するレンズのd線におけるアッベ数
【0051】
上記条件式(3)は、当該光学系に含まれる正の屈折力を有するレンズのd線(波長λ=587.56nm)におけるアッベ数を規定する式である。光学系に含まれる正の屈折力有するレンズの少なくとも1枚に比較的アッベ数の大きな硝材を用いることで色収差の分散を小さくすることが可能となる。よって条件式(3)を満足すると、色収差が補正され必要な情報を高解像で得ることが可能となる。
【0052】
これに対し、上記条件式(3)の数値が上限以上となると、すなわち正の屈折力を有するレンズのd線におけるアッベ数が大きくなる場合、色収差の補正は有利となるが、正の屈折力を有するレンズが高価となるため、低コスト化の点で好ましくない。上記条件式(3)の数値が下限以下となると、正の屈折力を有するレンズのd線におけるアッベ数が小さくなる場合、色収差の補正不足となる。そのため高性能化の点で好ましくない。
【0053】
上記効果を得る上で、上記条件式(3)の上限値は95.5であることが好ましく、91.0であることがより好ましく、82.0であることがさらに好ましく、77.0であることがよりさらに好ましく、75.0であることが一層好ましい。また、上記条件式(3)の下限値は45.0であることが好ましく、47.0であることがより好ましく、49.0であることがさらに好ましく、51.0であることがよりさらに好ましく、53.0であることが一層好ましい。
【0054】
当該光学系中に正の屈折力を有するレンズが複数ある場合、正の屈折力を有するレンズの少なくとも1枚が上記条件式(3)を満足することが好ましい。上記効果を得る上では、当該光学系に含まれる正の屈折力を有するレンズの中で最もアッベ数の大きいレンズが、上記条件式(3)を満足することがさらに好ましい。
【0055】
4-3-4.条件式(4)
当該光学系は以下の条件式を満足することが好ましい。
|βf|< 6.00 ・・・(4)
但し、
βf:上記合焦群の横倍率
【0056】
上記条件式(4)は、合焦群の横倍率を規定する式である。ここで、条件式(4)を満足することで、合焦群で発生する収差量を小さくすることが可能となる。また、合焦群より像側のレンズ群の横倍率をβr、合焦群の横倍率をβfとすると、合焦群が単位量駆動した場合の像面移動量は、(1-βf2)×βr2と表すことができる。そのため、βfを比較的小さくすることで、合焦群の駆動量を小さくすることが可能となる。その結果、小型化が達成できると共に、高性能化が達成される。
【0057】
これに対し、上記条件式(4)の数値が上限以上となると、合焦群の横倍率が大きくなりすぎ、合焦群での収差発生量が大きくなり、高性能化の点で好ましくない。また、上記条件式(4)の数値が上限以上となると、合焦群の駆動量が大きくなるため、小型化の点で好ましくない。
【0058】
上記効果を得る上で、上記条件式(4)の上限値は5.50であることが好ましく、5.00であることがより好ましく、4.60であることがさらに好ましく、4.30であることがよりさらに好ましく、4.00であることが一層好ましい。
【0059】
4-3-5.条件式(5)
当該光学系は、以下の条件式を満足することが好ましい。
-10.00 < fL1/f < -0.10 ・・・(5)
但し、
fL1:当該光学系の最も物体側レンズの焦点距離
f :当該光学系の焦点距離
【0060】
上記条件式(5)は、当該光学系の最も物体側レンズの焦点距離と、当該光学系の焦点距離との比を規定する式である。上記条件式(5)が負の値を持つことから、当該光学系の最も物体側レンズは負の屈折力を有することになる。最も物体側レンズが負の屈折力を有することで、入射瞳位置が物体側に配置しやすくなり、広い画角を有する光学系の前玉径を小さくすることが可能となる。それにより、条件式(5)を満足する場合、小型化と低コスト化が達成できる。
【0061】
これに対し、上記条件式(5)の数値が上限以上となると、当該光学系の最も物体側レンズの焦点距離が短くなりすぎ、像面湾曲とコマ収差が大きく発生し、高性能化の点で好ましくない。上記条件式(5)の数値が下限以下となると、当該光学系の最も物体側レンズの焦点距離が長くなりすぎ、入射瞳位置が物体側から遠くなる。それにより、前玉径の大型化を招くため、小型化と低コスト化の点で好ましくない。
【0062】
上記効果を得る上で、上記条件式(5)の上限値は-0.25であることが好ましく、-0.40であることがより好ましく、-0.55であることがさらに好ましく、-0.70であることがよりさらに好ましく、-0.85であることが一層好ましい。また、上記条件式(5)の下限値は-8.00であることが好ましく、-6.00であることがより好ましく、-4.50であることがさらに好ましく、-3.50であることがよりさらに好ましく、-2.50であることが一層好ましい。
【0063】
4-3-6.条件式(6)
当該撮像装置は、当該光学系が形成する光学像を受光して電気的画像信号に変換する撮像素子を備え、以下の条件を満足することが好ましい。
500 < f×tanω/P ・・・(6)
但し、
f :当該光学系の焦点距離
ω :当該光学系の半画角
P :当該撮像素子の隣り合う画素の画素中心間隔
【0064】
上記条件式(6)は、当該光学系の像面の大きさと画素ピッチの比を規定した式である。すなわち、撮像素子の画素数を規定する式である。情報を高解像で得るためには、上記光学系が高い結像性能を有するだけでなく、画像を電子データとして取り込む撮像素子の画素数も多くある必要がある。条件式(6)を満足する場合、撮像素子の画素数が適正となり、必要な情報量が確保できる。
【0065】
これに対し、上記条件式(6)の数値が下限以下となると、撮像素子の画素数が少なくなる。そのため、必要な情報量の確保が困難となる点で好ましくない。
【0066】
上記効果を得る上で、上記条件式(6)の下限値は1000であることが好ましく、1500であることがより好ましく、2000であることがさらに好ましく、2500であることがよりさらに好ましく、3000であることが一層好ましい。
【0067】
上記条件式(6)は、撮像素子の画素数を規定する式であるため上限を規定する必要はない。しかしながら、撮像素子の画素数が多くなりすぎると、情報を処理するための画像処理や消費電力の負荷が大きくなるため、上記条件式(6)に上限を定めてもよい。上限値を定めるとすると50000であることが好ましく、40000であることがより好ましく、30000であることがさらに好ましく、25000であることがよりさらに好ましく、20000であることが一層好ましい。
【0068】
ここで、前記撮像素子等に特に限定はなく、CCDセンサ(Charge Coupled Device)やCMOSセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの固体撮像素子等も用いることができる。
【0069】
次に、実施例を示して本件発明の光学系を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、各レンズ断面図において、図面に向かって左方が物体側、右方が像側である。
【実施例0070】
(1)光学系のレンズ構成
図2は、本件発明に係る実施例1の光学系の構成を示すレンズ断面図である。当該光学系は、物体側から順に物体側レンズ群G1と、合焦群Gfと、像側レンズ群Grとから構成されている。物体側レンズ群G1は物体側から順に、負の屈折力を有し物体側面が物体側に凸面であるメニスカス形状の第1レンズL1と、正の屈折力を有し両凸形状の第2レンズL2と、負の屈折力を有し物体側面が物体側に凸面であるメニスカス形状の第3レンズL3と、開口絞りSと、両凹形状の第4レンズL4と両凸形状の第5レンズL5とが接合された接合レンズと、正の屈折力を有し両凸形状の第6レンズL6とから構成されている。合焦群Gfは、負の屈折力を有し物体側面が物体側に凸面であるメニスカス形状の第7レンズL7から構成されている。像側レンズ群Grは、正の屈折力を有し両凸形状の第8レンズL8から構成されている。
【0071】
ここで、光学系の結像位置を変更するには、合焦群Gfを構成する第7レンズL7を光軸方向に移動することで行う。第7レンズL7は、負の屈折力を有するレンズの中で最も屈折率の高いレンズである。第5レンズL5は、正の屈折力を有するレンズの中で最もアッベ数の大きいレンズである。また、最も物体側のレンズである第1レンズL1は、負の屈折力を有する。
【0072】
なお、図中の「IMG」は像面を示す。上述した、CCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子の撮像面である。当該光学系の物体側から入射した光は、像面に結像する。固体撮像素子は受光した光学像を電気的画像信号に変換する。撮像装置等が備える画像処理部(画像処理プロセッサ等)により、撮像素子から出力された電気的画像信号に基づき、被写体の像に対応したデジタル画像が生成される。当該デジタル画像は、例えば、HDD(Hard Disk Device)やメモリカード、光ディスク、磁気テープなどの記録媒体に記録することが可能である。なお、像面は、銀塩フィルムのフィルム面であってもよい。
【0073】
また、図中の「CG」は像面を示す光学ブロックである。当該光学ブロックCGは、光学フィルタや、フェースプレート、水晶ローパスフィルタ、赤外カットフィルタ等に相
当する。これらの符号(IMG、CG)は、他の実施例で示す各図においても同様のものを示すため、以下では説明を省略する。
【0074】
(2)数値実施例
実施例1で採用した光学系の具体的数値を適用した数値実施例について説明する。表1に当該撮像レンズのレンズデータを示す。表1において、「面番号」は物体側から数えたレンズ面の番号、「r」はレンズ面の曲率半径(mm)(但し、rの値がINFである面は、その面が平面であることを示す。)、「d」は物体側からi番目(iは自然数)のレンズ面と、i+1番目のレンズ面とのレンズ面の光軸上の間隔(mm)、「Nd」はd線(波長λ=587.56nm)に対する屈折率、「νd」はd線に対するアッベ数、「h」は有効半径(mm)、を示している。但し、レンズ面が非球面である場合、表中の面番号の横に「ASP」を付している。また、非球面である場合には、「r」の欄にはその近軸曲率半径を示している。
【0075】
表2に、当該光学系の諸データを示す。具体的には、当該撮像レンズの焦点距離(mm)、Fナンバー(F値)、半画角(°)、像高(mm)、レンズ全長(mm)、バックフォーカス(BF(in air))(mm)を示している。ここで、レンズ全長は、第1レンズの物体側面から像面までの光軸上の距離である。また、バックフォーカスは最も像側に配置された第nレンズの像側面から像面までの光軸上の距離を空気換算した値である。
【0076】
表3に、当該光学系の可変間隔データを示す。D0は被写体から最も物体側の面までの距離である。
【0077】
表4に、当該光学系を構成する各レンズの焦点距離を示す。
【0078】
表5に、当該光学系を構成する各レンズ群の焦点距離を示す。
【0079】
また、表21に当該光学系の各条件式の数値を示す。これらの各表に関する事項は、他の実施例で示す各表においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0080】
図3に、当該光学系の無限遠合焦時における縦収差図を示す。
図3に示す縦収差図は、図面に向かって左側から順に、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)である。球面収差を表す図において、縦軸は開放F値(FNO)を表す。実線はd線(波長587.56nm)における球面収差、点線はC線(波長656.27nm)における球面収差、一点鎖線はg線(波長435.84nm)における球面収差を示している。非点収差を表す図において、縦軸は像高(mm)を表す。実線はd線(波長587.56nm)におけるサジタル方向を示し、点線はd線におけるメリディオナル方向を示している。歪曲収差を表す図において、縦軸に像高(mm)を取り、d線(波長587.56nm)における歪曲収差(%)を示している。これらの縦収差図に関する事項は、他の実施例で示す縦収差図においても同様であるため、以下では説明を省略する。
【0081】
[表1]
面番号 r d Nd vd h
1 133.3156 1.000 1.51680 64.20 8.967
2 9.6236 10.483 7.110
3 16.2366 2.870 1.74330 49.22 5.170
4 -33.0454 0.165 4.700
5 8.4613 0.800 1.48749 70.44 4.328
6 6.0832 3.580 3.991
7 S INF 3.150 3.850
8 -6.6339 0.600 1.67270 32.17 3.759
9 19.9164 3.197 1.69680 55.46 4.290
10 -9.2868 0.100 4.634
11 66.5750 1.910 1.83481 42.72 4.660
12 -24.9888 D14 4.912
13 21.5424 0.593 1.85451 25.15 5.672
14 11.5208 D16 5.632
15 19.5637 3.030 1.72916 54.67 7.626
16 -58.0110 9.054 7.696
17 INF 2.000 1.51680 64.20 7.945
18 INF 1.000 7.979
【0082】
[表2]
焦点距離 11.112
Fナンバー 1.867
半画角 38.481
像高 8.000
レンズ全長 48.488
BF(in air) 11.373
【0083】
[表3]
可変間隔データ
D0 INF 417.286 101.115
D12 1.028 1.516 2.969
D14 3.928 3.440 1.987
【0084】
[表4]
レンズ 面番号 焦点距離
L1 1-2 -20.126
L2 3-4 15.020
L3 5-6 -49.900
L4L5 8-10 -121.512
L6 11-12 21.973
L7 13-14 -29.794
L8 15-16 20.400
【0085】
[表5]
群 面番号 焦点距離
G1 1-12 13.017
Gf 13-14 -29.794
Gr 15-16 20.400
ここで、光学系の結像位置を変更するには、合焦群Gfを構成する第1レンズL1から第7レンズL7を一体で、すなわち当該光学系全体を光軸方向に移動することで行う。ここで、光学系全体で移動することにより光学系の結像位置を変更することと、像面を移動させることで結像位置を変更することは等価である。すなわち、像面が合焦群とすることと等価である。このように像面を合焦群とする場合、合焦群の横倍率βfを0、合焦群より像側のレンズ群の横倍率を1とすることができる。第4レンズL4は、負の屈折力を有するレンズの中で最も屈折率の高いレンズである。第2レンズL2は、正の屈折力を有するレンズの中で最もアッベ数の大きいレンズである。また、最も物体側のレンズである第1レンズL1は、負の屈折力を有する。
表8-1、表8-2、表8-3、に、非球面データを示す。非球面データとして、表6に示した非球面について、その形状を下記式で定義した場合の非球面係数を示す。なお、非球面係数は、光軸からの高さhの位置での光軸方向の変位量を面頂点基準として、以下の非球面式により表すことができる。