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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066532
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20230509BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20230509BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
C08L77/00
C08L23/26
C08K7/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177182
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】児玉 斉
(72)【発明者】
【氏名】安井 哲也
(72)【発明者】
【氏名】堀池 勇馬
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB212
4J002CL031
4J002DL006
4J002FA046
4J002FB276
4J002FD016
4J002GM00
4J002GM04
4J002GM05
(57)【要約】
【課題】 機械的特性及び摺動性に優れる、ポリアミド樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 本発明は、脂肪族ポリアミド樹脂(A)50.00~85.00質量%、
酸変性ポリオレフィン(B)2.00~6.00質量%、ポリウレタン樹脂と酸共重合体とを含む集束剤が塗布されたガラス繊維(C)10.00~45.00質量%、並びに(A)~(C)以外の成分(D)0~38.00質量%を含む、ポリアミド樹脂組成物に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)50.00~85.00質量%、
酸変性ポリオレフィン(B)2.00~6.00質量%、
ポリウレタン樹脂と酸共重合体とを含む集束剤が塗布されたガラス繊維(C)10.00~45.00質量%、並びに
(A)~(C)以外の成分(D)0~38.00質量%を含む、
ポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)の数平均分子量が10,000~30,000である、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
135℃のデカリン酸溶媒中で測定される、酸変性ポリオレフィン(B)の平均極限粘度[η]が10~40dl/gである、請求項1又は2に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物を含む成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、エンジニアリングプラスチックとして優れた特性を有し、自動車、機械、電気・電子など各種の工業分野において広く使用されている。また、摺動性等の機械的性質を向上させる目的で、ポリアミド樹脂にガラス繊維等の無機充填剤や変性ポリエチレンを配合する技術が知られている。特許文献1には、ポリアミド樹脂及び変性ポリエチレンを含むポリアミド樹脂組成物が開示されている。特許文献2には、脂肪族ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂及び繊維状無機充填剤を含むポリアミド樹脂組成物が開示されている。そして、特許文献3には、共重合化合物とアミノシランとポリウレタン樹脂とを含有するガラス繊維集束剤で処理されたガラス繊維、及びポリアミド樹脂を複合化させた、ガラス繊維強化ポリアミド樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-199789号公報
【特許文献2】特開2006-28231号公報
【特許文献3】特開2014-231452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1~3に開示されているようなポリアミド樹脂を含む組成物は、機械的特性及び摺動性の点において、更なる向上の余地があることが見いだされた。
【0005】
よって、本発明の課題は、機械的特性及び摺動性に優れる、ポリアミド樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の[1]~[4]に関する。
[1]脂肪族ポリアミド樹脂(A)50.00~85.00質量%、
酸変性ポリオレフィン(B)2.00~6.00質量%、
ポリウレタン樹脂と酸共重合体とを含む集束剤が塗布されたガラス繊維(C)10.00~45.00質量%、並びに
(A)~(C)以外の成分(D)0~38.00質量%を含む、
ポリアミド樹脂組成物。
[2]脂肪族ポリアミド樹脂(A)の数平均分子量が10,000~30,000である、[1]のポリアミド樹脂組成物。
[3]135℃のデカリン酸溶媒中で測定される、酸変性ポリオレフィン(B)の平均極限粘度[η]が10~40dl/gである、[1]又は[2]のポリアミド樹脂組成物。
[4][1]~[3]のいずれかのポリアミド樹脂組成物を含む成形体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、機械的特性及び摺動性に優れる、ポリアミド樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。例えば、「2.00~6.00質量%」は、「2.00質量%以上6.00質量%以下」を意味する。
【0009】
[ポリアミド樹脂組成物]
ポリアミド樹脂組成物は、脂肪族ポリアミド樹脂(A)50.00~85.00質量%、酸変性ポリオレフィン(B)2.00~6.00質量%、ポリウレタン樹脂と酸共重合体とで、表面処理及び/又は集束されたガラス繊維(C)10.00~45.00質量%、並びに(A)~(C)以外の成分(D)0~38.00質量%を含む。
ポリアミド樹脂組成物は、機械的特性において、特に疲労特性に優れる。
【0010】
〔脂肪族ポリアミド樹脂(A)〕
脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、芳香環及び脂環式基を有さない、脂肪族ポリアミド樹脂である。脂肪族ポリアミド樹脂(A)としては、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)及び脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)が挙げられる。
【0011】
<脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)>
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)は、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、1種であるポリアミド樹脂を意味する。ここで、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分としては、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との組み合わせ、ラクタム又はアミノカルボン酸が挙げられる。また、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が、脂肪族ジアミン及び脂肪族ジカルボン酸の組み合わせである場合は、1種の脂肪族ジアミンと1種の脂肪族ジカルボン酸の組合せで1種のモノマー成分とみなすものとする。
【0012】
脂肪族ジアミンの炭素原子数は、2~20であることが好ましく、4~12であることが特に好ましい。脂肪族ジカルボン酸の炭素原子数は、2~20であることが好ましく、6~12であることが特に好ましい。ラクタムの炭素原子数は、6~12であることが好ましい。アミノカルボン酸の炭素原子数は、6~12であることが好ましい。
【0013】
脂肪族ジアミンとしては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン等が挙げられる。また脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸等が挙げられる。
【0014】
脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸の組合せとして、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の組合せ、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の組合せ、ヘキサメチレンジアミンとドデカンジオン酸の組合せ等が挙げられ、これらの組合せの等モル塩が好ましく用いられる。
【0015】
ラクタムとしては、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム、α-ピロリドン、α-ピペリドン等が挙げられる。また、アミノカルボン酸としては6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸が挙げられる。ラクタムは、生産性の観点から、ε-カプロラクタム、ウンデカンラクタム又はドデカンラクタムであることが好ましい。
【0016】
脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)の具体例としては、ポリカプロラクタム(ポリアミド6)、ポリエナントラクタム(ポリアミド7)、ポリウンデカンラクタム(ポリアミド11)、ポリラウリルラクタム(ポリアミド12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリテトラメチレンドデカミド(ポリアミド412)、ポリペンタメチレンアゼラミド(ポリアミド59)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリペンタメチレンドデカミド(ポリアミド512)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリノナメチレンアジパミド(ポリアミド96)、ポリノナメチレンアゼラミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリデカメチレンアジパミド(ポリアミド106)、ポリデカメチレンアゼラミド(ポリアミド109)、ポリデカメチレンデカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリドデカメチレンアジパミド(ポリアミド126)、ポリドデカメチレンアゼラミド(ポリアミド129)、ポリドデカメチレンセバカミド(ポリアミド1210)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリドデカメチレンオキサミド(ポリアミド122)等が挙げられる。
【0017】
<脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)>
脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)は、脂肪族ポリアミド樹脂を構成するモノマー成分が2種以上であり、かつ、芳香環及脂環式基を有さない脂肪族ポリアミド樹脂である。よって、脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)としては、脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸との組合せ、ラクタム及びアミノカルボン酸からなる群から選択される2種以上のモノマーの共重合体である脂肪族共重合ポリアミド樹脂が挙げられる。
【0018】
脂肪族共重合ポリアミド樹脂(A-2)の具体例としては、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸共重合体(ポリアミド6/66)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアゼライン酸共重合体(ポリアミド6/69)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノウンデカン酸共重合体(ポリアミド6/611)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノドデカン酸共重合体(ポリアミド6/612)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ポリアミド6/11)、カプロラクタム/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ラウリルラクタム共重合体(ポリアミド6/66/12)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノセバシン酸共重合体(ポリアミド6/66/610)、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/ヘキサメチレンジアミノドデカンジカルボン酸共重合体(ポリアミド6/66/612)、ヘキサメチレンジアミノアジピン酸/カプロラクタム共重合体(ポリアミド66/6)等が挙げられる。
【0019】
<好ましい態様>
脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、生産性の観点から、脂肪族ホモポリアミド樹脂(A-1)であることが好ましく、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11及びポリアミド12からなる群から選択される1種以上であることがより好ましく、ポリアミド6、ポリアミド46及び/又はポリアミド66であることが特に好ましい。
【0020】
<数平均分子量>
脂肪族ポリアミド樹脂(A)の数平均分子量は、摺動性の観点から、数平均分子量が10,000~30,000であることが好ましく、13,000~29,000あることがより好ましく、22,000~29,000であることがより好ましい。数平均分子量は、相対粘度(JIS K 6920)から算出した値である。
【0021】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)は、1種の成分又は2種以上の組合せの成分であってもよい。
【0022】
〔酸変性ポリオレフィン(B)〕
酸変性ポリオレフィン(B)は、酸変性基を含有する化合物で変性されたポリオレフィンである。酸変性ポリオレフィン(B)は、更に、酸変性基以外の変性基を含有する化合物で変性されていてもよい。
【0023】
<ポリオレフィン>
ポリオレフィンは、オレフィンの単独重合体又は共重合体である。オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィンが挙げられる。ポリオレフィンは、エチレンの単独重合体、及び、エチレンとエチレン以外のα-オレフィンとの共重合体であることが好ましい。
【0024】
<変性基>
ポリオレフィンの酸変性基として、カルボキシル基、カルボキシル金属塩、酸無水物基、スルホン酸基等が挙げられる。酸変性基は、カルボキシル基であることが好ましい。また、酸変性基以外の変性基としては、アミノ基、水酸基、シラノール基、アルコキシ基、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基、メルカプト基、オキサゾリン基等が挙げられる。
【0025】
<酸変性ポリオレフィン(B)の製造方法>
酸変性ポリオレフィン(B)は、ポリオレフィン及び酸変性基を含有する化合物を溶融混練し、ポリオレフィンをグラフト変性して酸変性基を導入することにより得ることができる。また、酸変性ポリオレフィン(B)は、押出機や二軸混練機等を用いて、無溶媒で、ポリオレフィンと酸変性基を含有する化合物とを反応させて製造することにより得ることもできる。
【0026】
酸変性基を含有する化合物としては、不飽和カルボン酸又はその誘導体、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、ビニル基含有有機ケイ素化合物等の化合物が挙げられる。不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、カルボキシル基を1以上有する不飽和化合物、カルボキシル基を有する化合物とアルキルアルコールとのエステル、無水カルボキシル基を1以上有する不飽和化合物等が挙げられる。不飽和基としては、ビニル基、ビニレン基、不飽和環状炭化水素基等が挙げられる。酸変性基を含有する化合物は、反応性の観点から、不飽和カルボン酸又はその誘導体であることが好ましい。
【0027】
不飽和カルボン酸の具体例としては、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エンドシス-ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸等の不飽和ジカルボン酸が挙げられる。また、不飽和カルボン酸の誘導体としては、前記不飽和カルボン酸の酸ハライド、アミド、イミド、無水物、エステル等が挙げられ、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエート等が好ましい。不飽和カルボン酸又はその誘導体は、反応性の観点から、無水マレイン酸及び/又はアクリル酸であることがより好ましく、無水マレイン酸であることが特に好ましい。
酸変性基を含有する化合物は、1種の成分又は2種以上の成分であってもよい。
【0028】
酸変性基以外の変性基を含有する化合物は、前記した変性基を含有する化合物から適宜選択できる。
【0029】
ポリオレフィンを酸変性する際の、前記酸変性基を含有する化合物及び酸変性基以外の変性基を含有する化合物の添加量は、所望とするポリオレフィンの変性量に応じて適宜設定できる。
【0030】
酸変性ポリオレフィン(B)を、ポリオレフィン及び酸変性基を含有する化合物を溶融混練し、ポリオレフィンをグラフト変性して変性基を導入することにより得る場合、ポリオレフィンのグラフト変性は、例えば、ポリオレフィンを有機溶媒に溶解し、次いで酸変性基を含有する化合物及びラジカル開始剤などを溶液に加えて、反応させることにより行うことができる。反応温度は、70℃~200℃であることが好ましく、80℃~190℃であることが特に好ましい。また、反応時間は、0.5時間~15時間であることが好ましく、1~10時間であることが特に好ましい。
【0031】
酸変性ポリオレフィン(B)を、押出機や二軸混練機などを用いて、無溶媒で、ポリオレフィンと変性基を含有する化合物とを反応させて得る場合、反応温度は、ポリオレフィンの融点以上で行われることが好ましく、160℃~330℃であることが特に好ましい。また、前記反応は、0.5分間~10分間溶融混練することにより行なわれることが好ましい。
【0032】
<好ましい態様>
酸変性ポリオレフィン(B)は、135℃のデカリン酸溶媒中で測定される平均極限粘度[η]が10~40dl/gであることが好ましく、15~35dl/gであることがより好ましく、20~30dl/gであることがより好ましい。平均極限粘度[η]が10以上である場合、ポリアミド樹脂組成物の動摩擦係数が低くなり、摺動性がより向上する傾向がある。酸変性ポリオレフィン(B)の平均極限粘度[η]は、重合条件により調節することができる。
【0033】
酸変性ポリオレフィン(B)は、上記した以外に、特開2018-199789号公報、特開2006-28231号公報に記載された成分が挙げられる。
酸変性ポリオレフィン(B)は、1種の成分又は2種以上の組合せの成分であってもよい。
【0034】
〔ポリウレタン樹脂と酸共重合体とを含む集束剤が塗布されたガラス繊維(C)〕
ポリウレタン樹脂と酸共重合体とを含む集束剤が塗布されたガラス繊維(C)は、ポリアミド樹脂組成物に、優れた摺動性及び機械特性を付与する成分である。
【0035】
<ガラス繊維>
ガラス繊維を構成するガラスとしては、Aガラス、ARガラス、Cガラス、Dガラス、Eガラス、Hガラス、Sガラス、Tガラス、Mガラス、NEガラス等の組成からなるものが挙げられる。
【0036】
ガラス繊維の形状は特に限定されず、フラットファイバー、チョップドストランド、等が挙げられる。ガラス繊維の断面の形状は特に限定されず、真円形、まゆ形、長円形、長方形又はこれらの類似形が挙げられる。
【0037】
ガラス繊維の平均繊維径は特に制限されない。ガラス繊維の平均繊維径は2μm~15μmであることが好ましく、5μm~12μmであることが特に好ましい。また、ガラス繊維の断面が長方形又はその類似形である場合、断面の一辺の長さは、0.5μm~50μmであることが好ましく、1~40μmであることが特に好ましい。ガラス繊維の数平均繊維長は、250μm~400μmであることが好ましく、300μm~360μmであることが特に好ましい。ガラス繊維の重量平均繊維長は、350μm~550mであることが好ましく、380μm~500μmであることが特に好ましい。ガラス繊維の数平均繊維長及び重量平均繊維長は、実施例に記載の方法で測定された値である。ガラス繊維の平均繊維径で数平均繊維長を除して得られるアスペクト比は、剛性、機械的強度、流動性の観点から、10以上であることが好ましく、15~100であることが特に好ましい。
【0038】
<ポリウレタン樹脂>
ポリウレタン樹脂は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とをウレタン反応させることにより得られる樹脂である。
【0039】
≪ポリオール成分≫
ポリオール成分としては、ポリエステルポリオール(縮合系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール)、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0040】
縮合系ポリエステルポリオールとしては、ジカルボン酸又はその低級アルキルエステルと、脂肪族ジオールとを反応させたもの等が挙げられる。ここで、ジカルボン酸又はその低級アルキルエステルとしては、アジピン酸、コハク酸、アゼライン酸、ピメリン酸、セバシン酸、フタル酸等が挙げられる。脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカメチレングリコール等の側鎖を有しない脂肪族ジオール、及び、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール等の側鎖を有する脂肪族ジオール等が挙げられる。
【0041】
ラクトン系ポリエステルポリオールとしては、β-プロピオラクトン、ピバロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、メチル-ε-カプロラクトン、ジメチル-ε-カプロラクトン、トリメチル-ε-カプロラクトン等のラクトン化合物を、短鎖のポリオール等のヒドロキシ化合物と共に反応させたものなどが挙げられる。
【0042】
ポリカーボネートポリオールとしては、短鎖のポリオール等のヒドロキシ化合物と、ジアリルカーボネート、ジアルキルカーボネート又はエチレンカーボネートからエステル交換反応によって得られたものが使用される。例えば、ポリ-1,6-ヘキサメチレンカーボネート、ポリ-2,2’-ビス(4-ヒドロキシヘキシル)プロパンカーボネートなどが工業的に生産されており入手しやすい。ポリカーボネートポリオールを得る別の方法としては、いわゆるホスゲン法(又は溶剤法)によることができる。
【0043】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、グリセリンベースポリアルキレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0044】
≪ポリイソシアネート成分≫
ポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0045】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2-イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2-イソシアナトエチル)カーボネート、2-イソシアナトエチル-2,6-ジイソシアナトヘキサノエートが挙げられる。
【0046】
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水素添加MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水素添加TDI)、ビス(2-イソシアナトエチル)-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボキシレート、2,5-ノルボルナンジイソシアネート、2,6-ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
【0047】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4’’-トリフェニルメタントリイソシアネート、m-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、p-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-3,5-フェニレンジイソシアネート、1-エチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-イソプロピル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-4,6-フェニレンジイソシアネート、1,4-ジメチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート、1-メチル-3,5-ジエチルベンゼンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ジエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、1,3,5-トリエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、1-メチル-ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート、ナフタレン-2,7-ジイソシアネート、1,1-ジナフチル-2,2’-ジイソシアネート、ビフェニル-2,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0048】
ポリイソシアネートは、1分子当たりイソシアナト基を2個有するジイソシアネートであることが好ましい。
【0049】
ウレタン化反応に際しては、多価アルコール、多価アミン等の鎖延長剤を使用することもできる。
【0050】
<酸共重合体>
酸共重合体としては、酸基を有するモノマーの共重合体、又は、酸基を有するモノマーと、酸基を有さないモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0051】
酸基を有するモノマーとしては、不飽和カルボン酸、カルボン酸無水物、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等が挙げられる。不飽和カルボン酸は、変性基を含有する化合物において前記したとおりである。カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水フタル酸、無水グルタル酸、無水ドデセニルコハク酸、無水クロレンディック酸等の無水ジカルボン酸等が挙げられる。カルボン酸無水物は、共重合時における立体障害が少なく、化合物の極性が小さいため、無水マレイン酸であることが好ましい。
【0052】
酸基を有さないモノマーとしては、スチレン、エチレン、アセチレン等が挙げられる。
【0053】
酸共重合体としては、不飽和ジカルボン酸及び/又はカルボン酸無水物、アク
リル酸メチル、メタクリル酸メチルが共重合した共重合化合物であることが好ましい。
【0054】
不飽和ジカルボン酸及び/又はカルボン酸無水物の共重合割合は、共重合体を製造する際の反応性、機械的特性の観点から、20~60質量%であることが好ましく、25~55質量%であることが特に好ましい。アクリル酸メチルの共重合割合は、共重合体を製造する際の反応性、機械的特性の観点から、20~75質量%であることが好ましく、30~65質量%であることが特に好ましい。また、メタクリル酸メチルの共重合割合は、共重合体を製造する際の反応性、機械的特性の観点から、5~20質量%であることが好ましく、7~17質量%であることが特に好ましい。酸基を有さないモノマーの共重合割合は、10質量%以下であることが好ましく、1質量%以下ことが特に好ましい。
【0055】
共重合化合物の重量平均分子量は、共重合体を製造する際の反応性、機械的特性の観点から、10,000~60,000であることが好ましく、20,000~50,000であることが特に好ましい。共重合化合物の重量平均分子量は、ガスパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量である。
【0056】
<集束剤のその他の成分>
集束剤は、ポリウレタン樹脂及び酸共重合体以外に更なる成分を含んでいてもよい。更なる成分としては、潤滑剤、ノニオン性界面活性剤、帯電防止剤、水、有機溶媒等が挙げられる。潤滑剤としては、脂肪酸アミド、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。また、ノニオン性界面活性剤としては、合成アルコール系、天然アルコール系、脂肪酸エステル系等が挙げられる。水及び有機溶媒は、潤滑剤、ノニオン性界面活性剤、帯電防止剤等を溶解させる成分である。有機溶媒としては、エタノール等が挙げられる。
【0057】
集束剤における各成分の含有量は、得られるガラス繊維の特性に応じて、適宜設定できる。
【0058】
〔塗布〕
ガラス繊維は、ポリウレタン樹脂と酸共重合体とを含む集束剤が塗布されている。ガラス繊維は、前記集束剤が塗布されることにより、表面処理される。また、ガラス繊維は、前記集束剤が塗布されることにより、2本以上のガラス繊維を1本にまとめるようにする集束処理が行われていてもよい。また、集束処理は、溶融ガラスを複数のノズルから引き出すことによって形成された複数のガラス繊維モノフィラメントに、前記集束剤を塗布した後、束ねられて1本のガラス繊維ストランドとし、その後ケーキとして巻き取ることにより行うこともできる。
【0059】
前記集束剤が塗布されたガラス繊維(C)は、更なる成分で表面処理されていてもよい。このような成分としては、集束剤に含まれる更なる成分が挙げられる。
【0060】
ポリウレタン樹脂と酸共重合体とを含む集束剤が塗布されたガラス繊維(C)は、上記した以外に、特開2014-231452号公報に記載された成分が挙げられる。
ポリウレタン樹脂と酸共重合体とを含む集束剤が塗布されたガラス繊維(C)は、1種の成分又は2種以上の組合せの成分であってもよい。
【0061】
〔(A)~(C)以外の成分(D)〕
ポリアミド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、(A)~(C)以外の成分(D)を含むことが出来る。成分(D)としては、その他の樹脂、及び、機能性付与剤が挙げられる。その他の樹脂としては、低密度、中密度、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル系エラストマーなどのポリエステル樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂などのビニル芳香族系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリビニルアルコール、ロジン系樹脂等が挙げられる。
【0062】
機能性付与剤は、ポリアミド樹脂組成物に通常配合される各種添加剤が挙げられる。機能性付与剤の具体例としては、可塑剤、耐熱剤、発泡剤、耐候剤、結晶核剤、酸化防止剤、結晶化促進剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、顔料、染料等が挙げられる。ここで、機能性付与剤が耐熱剤である場合、耐熱剤は、無機化合物と含窒素化合物との組み合わせであることが好ましい。
【0063】
無機化合物としては、ハロゲン化金属及びハロゲン化金属以外の無機化合物が挙げられる。
【0064】
ハロゲン化金属は、ハロゲンと金属との化合物である。ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。金属としては、第1族元素(アルカリ金属)、第2族元素(アルカリ土類金属)、第3族元素~第12族元素(例えば、遷移金属)等が挙げられる。ハロゲン化金属における金属は、第1族元素(アルカリ金属)、第11族元素(銅族)の金属であることが好ましい。金属が第1族元素(アルカリ金属)である場合のハロゲン化金属としては、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム又は塩化ナトリウム等が挙げられる。また、金属が第11族元素(銅族)である場合のハロゲン化金属としては、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅等が挙げられる。ハロゲン化金属は、ヨウ化カリウム及び/又はヨウ化第一銅であることが特に好ましい。
【0065】
ハロゲン化金属以外の無機化合物としては、金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属窒化物、リン酸金属塩、亜リン酸金属塩、炭酸金属塩、ケイ酸金属塩、チタン酸金属塩、ホウ酸金属塩、硫酸金属塩、硝酸金属塩等が挙げられる。ハロゲン化金属以外の無機化合物の具体例としては、タルク、マイカ、合成マイカ、ガラスフレーク、非膨潤性雲母、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、クレー、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、水酸化アルミニウム、ドロマイト、カオリン、シリカ、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、水酸化マグネシウム、石膏、ノバキュライト、ドーソナイト、白土、ガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラステナイト、セピオライト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維及び硼素繊維等が挙げられる。
【0066】
含窒素化合物としては、メラミン、ベングアナミン、ジメチロール尿素及びシアヌール酸等が挙げられる。
【0067】
上記した以外の機能性付与剤としては、例えば、特開2002-370551号公報に記載された成分が挙げられる。
【0068】
成分(D)は、それぞれ、1種の成分又は2種以上の組合せの成分であってもよい。
【0069】
≪含有量≫
ポリアミド樹脂組成物の全質量に対する、各成分の含有量は以下の通りである。なお、ポリアミド樹脂組成物において、(A)~(D)の合計は100質量%である。
【0070】
脂肪族ポリアミド樹脂(A)の含有量は、50.00~85.00質量%である。脂肪族ポリアミド樹脂(A)の含有量は、機械物性や成形加工性の観点から、55.00~80.00質量%であることが好ましく、更には55.00~70.00質量%であることが好ましい。
【0071】
酸変性ポリオレフィン(B)の含有量は、2.00~6.00質量%である。酸変性ポリオレフィン(B)の含有量が前記範囲外である場合、摺動性と機械強度が劣る傾向がある。
【0072】
ガラス繊維(C)の含有量は、10.00~45.00質量%である。ガラス繊維(C)の含有量が前記範囲外である場合、機械的特性が劣る傾向がある。また、ガラス繊維(C)の含有量が45.00質量%超である場合、相手方を傷つける恐れがある。ガラス繊維(C)の含有量は、成型加工性や機械的強度の観点から、20.00~40.00質量%であることが好ましく、25.00~35.00質量%であることが特に好ましい。
【0073】
(A)~(C)以外の成分(D)の含有量は、0~38.00質量%である。機械物性や成形加工性の観点から、0~20.00質量%であることが好ましく、0~15.00質量%であることがより好ましく、0~5.00質量%であることが特に好ましい。
【0074】
≪ポリアミド樹脂組成物の製造方法≫
ポリアミド樹脂組成物の製造方法として、各成分を混練できる方法であれば特に制限はなく、例えば、二軸押出機、単軸押出機、多軸押出機等によって製造する方法を挙げることができる。
【0075】
[ポリアミド樹脂組成物等の用途]
ポリアミド樹脂組成物は、特に制限されず、公知の方法を利用する成形体の製造に用いることができる。また、ポリアミド樹脂組成物を含む成形体は、摺動部品に用いることができる。摺動部品としては、例えば、ギア、カム、プーリー、軸受、ベアリングリテーナー、ドアチェック、タイミングチェーンガイド、ケーブル・ホース支持・案内装置用品などの動的用途を目的とするものが挙げられる。ポリアミド樹脂組成物を含む成形体は、ポリアミド樹脂組成物を成形することにより、所望の形状の成形体として得ることができる。例えば、射出成形法等により製造することができる。成形方法としては、押出成形法、ブロー成形法、射出成形法等が挙げられる。ポリアミド樹脂組成物を含む成形体は、自動車や機械のギア、プーリー、カム、軸受、ケーブルハウジング等に用いられるものであるが、他の同様の機能を要求される部材に用いても差し支えはない。
【実施例0076】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において使用した成分及び成形品の物性測定方法を以下に示す。
【0077】
[使用成分]
1.脂肪族ポリアミド樹脂(A)
PA66-1 : 数平均分子量20,000のポリアミド66
PA66-2 : 数平均分子量29,000のポリアミド66
2.酸変性ポリオレフィン(B)
無水マレイン酸変性超高分子量ポリエチレン(三井化学株式会社製、リュブマー(登録商標)LY1040(135℃のデカリン酸溶媒中で測定される極限粘度[η]:25dl/g))
3.ポリウレタン樹脂と酸共重合物とを含む集束剤が塗布されたガラス繊維(C)
丸チョップ NEG T-275H Φ10.5ミクロン(日本電気硝子株式会社製。直径10.5μm)
丸チョップ NEG T-211H Φ10.5ミクロン(日本電気硝子株式会社製。直径10.5μm)
フラットファイバーNEG 920EW(7×28μm)(日本電気硝子株式会社製。断面7μm×28μm)
4.(C)以外のガラス繊維(C’)
丸チョップ NEG T-249H Φ10.5ミクロン(日本電気硝子株式会社製、ポリウレタン樹脂を含み、酸共重合物を含まない集束剤が塗布されたガラス繊維。直径10.5μm)
フラットファイバーCSG-3PE-820S(日東紡績株式会社製、ポリウレタン樹脂を含み、酸共重合物を含まない集束剤が塗布されたガラス繊維。断面7μm×28μm)
5.(A)~(C)以外の成分(D)
耐熱剤として、CuI/KI=1/6(質量比)
CuI:ヨウ化第一銅(伊勢化学工業株式会社製)
KI:粉末ヨウ化カリウム(三井ファイン株式会社製)
【0078】
[機械的特性]
(1)引張応力、引張破壊ひずみ、及び引張弾性率
前記ペレットを用いて、ISO294-1に基づきタイプA型試験片を作製し、ISO527-1,2に基づき23℃雰囲気下引張試験を実施した。
(2)曲げ強さ、及び曲げ弾性率
前記ペレットを用いて、ISO294-1に基づきタイプB型試験片を作製し、ISO178に基づき23℃雰囲気下曲げ試験を実施した。
(3)シャルピー衝撃強さ
前記ペレットを用いて、ISO294-1に基づきタイプB型試験片を作製し、後加工にてISO 179/1eAに基づきVノッチ加工した。ハンマー容量1J、23℃雰囲気下シャルピー衝撃試験を実施した。
(4)疲労限度
前記ペレットを用いて、FANUC社製 FAS-T100D射出成形機を用いて、JIS K 7118III号の片持ち曲げ疲労試験片を作製した。JIS K 7119に準拠し、90℃にセットした恒湿槽付き繰り返し振動疲労試験機(東洋精機製B50)で、JIS K 7118III号の片持ち曲げ疲労試験片に任意の応力を1800回/分にて負荷し、破壊に至る繰り返し回数を測定した。10の7乗回の繰り返し破壊となる回数を疲労限度(応力振幅)として求めた。
【0079】
なお、引張応力が140MPa以上であり、引張破壊ひずみが3.5%以上であり、引張弾性率が8,000MPa以上であり、曲げ強さが260MPa以上であり、曲げ弾性率が5,000MPa以上であり、シャルピー衝撃強さが14KJ/m以上であり、かつ、疲労限度が30MPa以上である場合は、「機械的特性と疲労特性」に優れると判断した。
【0080】
[摺動性]
(1)限界PV試験値
前記ペレットを用いて、FANUC社製 FAS-T100D射出成形機を用いて、60mm×40mm×3mmの試験片を作製した。JISK7218A法に準拠し、鈴木式摩擦摩耗試験機(オリエンテック社製、EFM-III-EN)で、材質がJIS規格G4051に記載のS45Cの炭素鋼である外径25.6mm、内径20mm、高さ15mmのリングを用いて、リングオンディスク方式で、試験速度(周速度)を700mm/sとし、試験荷重を試験開始時に25kgf(245N)を掛け、5分毎に荷重を25kgf(245N)上昇させていく条件で、作成した試験片の限界PV値を測定した。試験片が溶融した荷重の直前の荷重と試験速度(周速度)700mm/sより限界PV試験値を求めた。
限界PV値=(試験片にかけた圧力)×試験速度(周速度)
【0081】
(2)動摩擦係数
前記ペレットを用いて、FANUC社製 FAS-T100D射出成形機を用いて、60mm×40mm×3mmの試験片を作製した。鈴木式摩擦摩耗試験機(オリエンテック社製、EFM-III-EN)を用いてリングオンディスク方式で、試験速度(周速度)を700mm/sとし、試験荷重を試験開始時に25kgf(245N)を掛け、10分毎に荷重を25kgf(245N)上昇させていく条件で、作製した試験片の限界PV値となる直前の摩擦抵抗力の測定を行った。動摩擦係数は、以下の式(1)から算出される値である。
動摩擦係数=(摩擦抵抗力)/(試験片にかけた荷重) (1)
【0082】
なお、動摩擦係数が0.20以下であり、限界PV試験値が170MPa・cm/sec以上である場合は、「摺動性」に優れると判断した。
【0083】
[(C)成分又は(C’)成分の繊維長]
<数平均繊維長>
前記ペレットを硫酸に溶解させて沈殿したガラス繊維をスライドガラス上に滴下した後カバーガラスに挟み、透過顕微鏡にて観察しオリンパス社画像処理ソフトに撮影する、撮影した画像のガラス繊維長を旭エンジニアリング製画像解析ソフトA像くんにて、数平均繊維長を測定した。
【0084】
<重量平均繊維長>
前記ペレットを硫酸に溶解させて沈殿させたガラス繊維をスライドガラス上に滴下した後、カバーガラスに挟み、透過顕微鏡にて観察しオリンパス社画像処理ソフトに撮影する、撮影した画像のガラス繊維長を旭エンジニアリング製画像解析ソフトA像くんにて、重量平均繊維長を測定した。
【0085】
実施例1~8、比較例1~10
表1に記載した各成分をコペリオン社製ZSK32Mc二軸混練機で溶融混練し、目的とするポリアミド樹脂組成物ペレットを作製した。次に、得られたペレットをシリンダー温度290℃、金型温度80℃で射出成形し、各種試験片を製造し、各種物性を評価した。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
表1の結果から明らかなとおり、実施例のポリアミド樹脂組成物は、機械的特性及び摺動性に優れており、特に疲労特性に優れていた。一方で、比較例1~9の樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂と酸共重合体とで、表面処理及び/又は集束されたガラス繊維(C)を含まないため、機械的特性及び摺動性のいずれかで劣っていた。ここで、比較例7の樹脂組成物は、更に酸変性ポリオレフィン(B)を含まないため、摺動性が劣っていた。また、比較例10の樹脂組成物は、酸変性ポリオレフィン(B)を含まないため、摺動性が劣っていた。