(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066542
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】遊技機
(51)【国際特許分類】
A63F 7/02 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
A63F7/02 320
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177195
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000135210
【氏名又は名称】株式会社ニューギン
(74)【代理人】
【識別番号】100104514
【弁理士】
【氏名又は名称】森 泰比古
(72)【発明者】
【氏名】川島 英将
【テーマコード(参考)】
2C333
【Fターム(参考)】
2C333AA11
2C333BA02
2C333CA26
2C333CA49
2C333CA55
2C333CA58
2C333CA77
(57)【要約】
【課題】変動時間に影響を与えることなく大当たり信頼度の報知又は示唆を行う特殊表示演出を実行する。
【解決手段】原点座標が異なる複数層の表示レイヤに対して同一タイミングにおいて同一の背景表示用データを表示し得る構成となっていて、表示レイヤデータDHn6cにより、複数層の表示レイヤの内のどの表示レイヤを背景画像の表示に用いるかを決定する。疑似連発生タイミングで表示レイヤを切り換えることにより、背景画像を上下、左右、斜め等に背景画像を振動させる特殊表示演出を実行する。このとき、視認可能範囲VWRに余白部分を生じさせない様に背景画像の振動幅を設定することにより、遊技者に違和感を抱かせることなく背景画像が振動した状態の特殊表示演出を楽しませることができる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図柄の変動制御が可能であって所定の抽選に当選したことを契機に特典を与える主制御手段と、演出実行手段と、演出データを記憶した演出データ記憶手段と、前記演出データ記憶手段に記憶されている演出データを用いた演出を前記演出実行手段に実行させる演出制御手段とを備えた遊技機であって、さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする遊技機。
(1A)前記演出実行手段として複数層の表示レイヤを備える表示手段を備え、前記演出データ記憶手段には、少なくとも背景画像とキャラクタ画像とが異なる表示レイヤに表示されて重なり合った状態を視認させる表示演出を実行し得る様に前記複数層の表示レイヤと対応付けられた表示演出用データが記憶されていること。
(1B)前記演出制御手段は、前記複数層の表示レイヤの内のいずれかに対応付けられた表示演出用データに基づいて表示される画像に対し、表示座標の移動による振動状態を発生させる特殊表示演出を前記表示手段に実行させることにより、大当たり信頼度の報知又は示唆を伴う演出として実行し得る手段として構成されていること。
【請求項2】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項1に記載の遊技機。
(2)前記演出制御手段は、前記特殊表示演出を、同一変動回の変動ゲーム中演出の間に複数回実行し得る手段として構成されていること。
【請求項3】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の遊技機。
(3)前記演出制御手段は、前記表示演出用データの内、特定の表示演出用データ又は特定の表示レイヤの内の少なくとも一方を対象とする前記特殊表示演出は、特定の遊技状態の場合以外では実行されない設定とされていること。
【請求項4】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の遊技機。
(4A)前記表示手段の複数層の表示レイヤの内の複数個の表示レイヤを、同一の表示演出用データについて表示レイヤ毎に表示座標をずらして表示させ得る一群の特殊表示用レイヤ群として構成したこと。
(4B)前記演出制御手段を、前記特殊表示用表示レイヤ群の中で前記同一の表示演出用データを表示する表示レイヤを切り換えることにより、前記特殊表示演出を実行する手段として構成したこと。
【請求項5】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の遊技機。
(5)前記演出制御手段は、前記表示座標の移動による振動状態における振動数及び振動幅の少なくとも一方を、当該特殊表示演出によって報知又は示唆する大当たり信頼度に応じて異ならせて前記特殊表示演出を実行する手段として構成されていること。
【請求項6】
さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の遊技機。
(6A)前記演出制御手段は、前記背景画像をそれぞれ座標原点を異ならせた複数層の表示レイヤに表示させ、当該複数層の表示レイヤの切り換えによって前記特殊表示演出を実行する様に構成されていること。
(6B)前記表示手段の表示画面の一部を視認可能範囲とし、前記背景画像を表示する複数層の表示レイヤの座標原点が、前記演出制御手段による表示レイヤの切り換えがなされたときに前記視認可能範囲内に余白部分を生じさせない範囲内に設定されていること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ機やスロットマシンなどの遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スロットマシーン又はパチスロ機の画像表示装置に於て、表示手段に画像情報を表示するに際し、画像処理手段にモーションブラー処理手段を付加したり(特許文献1)、停止図柄のアラビア数字に縁取りによるエフェクト処理を施して強調表示する技術が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-233828 (0027、
図2,
図3)
【特許文献2】特開2018-33764(0340-0349、
図36,
図37)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、モーションブラー処理による動きを感じさせる演出ができる反面、画像を描画するごとにモーションブラー処理を実行する結果として変動時間の乱れが生じるおそれが懸念される。同様に、特許文献2によれば、変動ごとにエフェクト処理を実行することで、縁取りによる強調表示を任意に実行することができる反面、変動時間の乱れを生じさせるおそれが懸念される。
【0005】
そこで、本発明は、変動時間に影響を与えることなく大当たり信頼度の報知又は示唆を行う特殊表示演出を実行し得る遊技機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた本発明の遊技機は、図柄の変動制御が可能であって所定の抽選に当選したことを契機に特典を与える主制御手段と、演出実行手段と、演出データを記憶した演出データ記憶手段と、前記演出データ記憶手段に記憶されている演出データを用いた演出を前記演出実行手段に実行させる演出制御手段とを備えた遊技機であって、さらに、以下の構成をも備えていることを特徴とする。
(1A)前記演出実行手段として複数層の表示レイヤを備える表示手段を備え、前記演出データ記憶手段には、少なくとも背景画像とキャラクタ画像とが異なる表示レイヤに表示されて重なり合った状態を視認させる表示演出を実行し得る様に前記複数層の表示レイヤと対応付けられた表示演出用データが記憶されていること。
(1B)前記演出制御手段は、前記複数層の表示レイヤの内のいずれかに対応付けられた表示演出用データに基づいて表示される画像に対し、表示座標の移動による振動状態を発生させる特殊表示演出を前記表示手段に実行させることにより、大当たり信頼度の報知又は示唆を伴う演出として実行し得る手段として構成されていること。
【0007】
本発明の遊技機によれば、演出データ記憶手段には、例えば、背景画像を表示するための背景表示演出用データが複数層の表示レイヤの内の1~2以上の表示レイヤに表示し得るものと対応付けて記憶され、キャラクタ画像を表示するためのキャラクタ表示演出用データが、背景表示演出用データが対応付けられた表示レイヤ以外の表示レイヤの内の1~2以上の表示レイヤに表示し得るものと対応付けて記憶される。なお、背景表示演出用データに対応付けられる背景表示レイヤは、キャラクタ表示演出用データに対応付けられるキャラクタ表示レイヤよりも背面側の層から選ばれる。これにより、演出制御手段は、背景画像を背面側の背景表示レイヤに表示し、所定のタイミングでキャラクタ表示レイヤにキャラクタ画像を表示することで、背景画像の前面側にキャラクタ画像が重なった表示演出を実行することができる。そして、本発明の遊技機では、演出制御手段が、「大当たり信頼度の報知又は示唆を伴う演出」を実行する際に、表示手段の複数層の表示レイヤの内のいずれかに対応付けられた表示演出用データに基づいて表示される画像に対し、表示座標の移動による振動状態を発生させる特殊表示演出を表示手段に実行させる。この画像の振動状態の発生により、遊技者に、大当たり信頼度の高低などを認識させることができる。
【0008】
なお、この様な振動演出を「ガガガッ」といった音声と「揺れを表現したエフェクト画像」の出現によって実行する方法もあるが、実際には画像が振動する訳ではなく、臨場感に欠ける。一方、表示演出用データとして振動演出を実行させるための特殊表示演出用の動画を用意しておく方法もあり得るが、この方法では、表示演出用データの組合せの変更によってデータ量を抑えつつ様々な表示演出を実行させる遊技機においては、振動による特殊表示演出の単調化を招くか、データ量の増大を招くという問題が考えられる。これに対し、本発明の遊技機は、表示座標の移動による振動状態を発生させることで特殊表示演出を実行するから、変動時間に影響を与えたりデータ量の増大を招くことなく、多種多様の特殊表示演出を可能にし、振動演出にマンネリ化を感じさせ難くすることができる。
【0009】
ここで、本発明の遊技機は、さらに、以下の構成をも備えた遊技機として構成することができる。
(2)前記演出制御手段は、前記特殊表示演出を、同一変動回の変動ゲーム中演出の間に複数回実行し得る手段として構成されていること。
【0010】
かかる構成をも備えた遊技機によれば、例えば、「すべり変動」「疑似連」と称される変動演出を実行する際に、「すべり」や「疑似連」の発生を報知又は示唆する際に特殊表示演出を所定のタイミングで複数回繰り返すことで、大当たりへの期待感を昂揚させるといった演出を実行することができる。この際、変動パターン毎の振動状態の動画を用意するならデータ量が膨大となり、逆に、同じ動画を用いるならマンネリ化を招くが、本発明の遊技機は、「振動状態の対象とする画像」に対し、「表示座標の移動による振動状態」を発生させることで「特殊表示演出」を実行するから、データ量を抑制しつつもマンネリ化を感じさせることのない演出を実行することができる。
【0011】
これら本発明の遊技機は、さらに、以下の構成をも備えた遊技機として構成することができる。
(3)前記演出制御手段は、前記表示演出用データの内、特定の表示演出用データ又は特定の表示レイヤの内の少なくとも一方を対象とする前記特殊表示演出は、特定の遊技状態の場合以外では実行されない設定とされていること。
【0012】
かかる構成をも備えた遊技機によれば、特定の表示演出用データ及び/又は特定の表示レイヤに対して、特定の遊技状態においてだけ特殊表示を実行し得る様に設定することで、「大当たり後の変短状態であること」、「いわゆるラッシュに突入したこと」、「プレミアム演出であること」などを遊技者に適確に報知や示唆を行うことができる。ここで、特定の表示演出用データを、特定の遊技状態の場合においてだけ特殊表示演出を実行する設定とすることで、特定の背景画像(動画を含む)の特殊表示演出が実行されたときは「ラッシュ突入」であることを遊技者に報知するといった演出や、特定のキャラクタ画像の特殊表示演出が実行されたときは「高信頼度のプレミアム演出」であることを遊技者に報知するといった演出を実行することができる。あるいは、特定の表示レイヤについては特定の遊技状態の場合においてだけ特殊表示演出を実行する設定とすることで、背景画像(動画を含む)の特殊表示演出が実行されているときは「変短状態」であることを遊技者に報知するといった演出を実行することができる。
【0013】
これら本発明の遊技機は、さらに、以下の構成をも備えた遊技機として構成することができる。
(4A)前記表示手段の複数層の表示レイヤの内の複数個の表示レイヤを、同一の表示演出用データについて表示レイヤ毎に表示座標をずらして表示させ得る一群の特殊表示用レイヤ群として構成したこと。
(4B)前記演出制御手段を、前記特殊表示用表示レイヤ群の中で前記同一の表示演出用データを表示する表示レイヤを切り換えることにより、前記特殊表示演出を実行する手段として構成したこと。
【0014】
かかる構成をも備えた遊技機によれば、一群の特殊表示用レイヤ群に属する各表示レイヤは同一の表示演出用データを、表示レイヤ毎に表示座標をずらして表示させ得る構成となっていて、演出制御手段が、特殊表示用表示レイヤ群の中で同一の表示演出用データを表示する表示レイヤを切り換える結果、演出表示用の画像(動画を含む)が表示レイヤ毎の表示座標のずれに対応して移動した状態を遊技者に視認させることとなる。このとき、演出制御手段による表示レイヤの切り換えは、表示演出用データの出力先表示レイヤを切り換える手法としてもよいし、各表示レイヤに同時に表示演出用データを出力しておき、最も前に表示させる表示レイヤを切り換える手法としたり、これら複数の表示レイヤの中で一つの表示レイヤ以外は入力時に表示演出用データをキャンセルする手段を介在させ、表示演出用データをキャンセルする表示レイヤを切り換える手法とするなど、種々の手法を採用することができる。なお、かかる構成をも備えさせることにより、静止画に限ることなく動画に対しても自然な振動状態を生じさせることができる。
【0015】
これら本発明の遊技機は、さらに、以下の構成をも備えた遊技機として構成することができる。
(5)前記演出制御手段は、前記表示座標の移動による振動状態における振動数及び振動幅の少なくとも一方を、当該特殊表示演出によって報知又は示唆する大当たり信頼度に応じて異ならせて前記特殊表示演出を実行する手段として構成されていること。
【0016】
かかる構成をも備えた遊技機によれば、大当たり信頼度が高いほど速く振動させたり、大きく振動させたり、速く大きく振動させるといった特殊表示演出を実行することができる。
【0017】
これら本発明の遊技機は、さらに、以下の構成をも備えた遊技機として構成することができる。
(6A)前記演出制御手段は、前記背景画像をそれぞれ座標原点を異ならせた複数層の表示レイヤに表示させ、当該複数層の表示レイヤの切り換えによって前記特殊表示演出を実行する様に構成されていること。
(6B)前記表示手段の表示画面の一部を視認可能範囲とし、前記背景画像を表示する複数層の表示レイヤの座標原点が、前記演出制御手段による表示レイヤの切り換えがなされたときに前記視認可能範囲内に余白部分を生じさせない範囲内に設定されていること。
【0018】
かかる構成をも備えた遊技機によれば、背景画像の全体が振動する特殊表示演出を遊技者に違和感を抱かせることなく実行することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、変動時間に影響を与えることなく大当たり信頼度の報知又は示唆を行う特殊表示演出を実行し得る遊技機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例1のパチンコ機を示し、(A)は正面図、(B)は右側面図、(C)は前枠を開いた状態の正面図である。
【
図2】実施例1のパチンコ機の遊技盤組立体を示し、(A)は分解斜視図、(B)は正面図、(C)は垂直断面図である。
【
図3】実施例1のパチンコ機の遊技盤の正面図である。
【
図4】実施例1のパチンコ機の制御装置の全体の構成を示すブロック図である。
【
図5】実施例1のパチンコ機における表示制御処理の概要を示し、(A)は表示例の正面図、(B1)~(B2)はラスタ走査情報生成の様子を示す模式図である。
【
図6】実施例1のパチンコ機の演出制御基板の記憶部を示し、(A)は演出データ記憶手段の構成を示す模式図、(B)は変動ゲーム中演出データの構成を示す模式図、(C)は特殊表示演出用データの構成を示す模式図、(D)は先読み記憶部の構成を示す模式図である。
【
図7】実施例1のパチンコ機の特殊表示演出用データの一例を示し、(A)はデータ構成の模式図、(B)は遊技者が視認する特殊表示演出の実行画面を示す正面図である。
【
図8】実施例1のパチンコ機において疑似連に際して特殊表示演出を実行するためのキャラクタ画像用データの一例を示し、(A)は当該データ構成の模式図、(B)は当該データの時間軸に対して表示が変化する様子を示す正面図である。
【
図9】実施例1のパチンコ機において疑似連に際して特殊表示演出を実行するためのデータの一例を示す模式図である。
【
図10】実施例1のパチンコ機において疑似連に際して実行される特殊表示演出による画像表示の変化の様子を時系列に沿って例示した正面図である。
【
図11】実施例2のパチンコ機において背景画像の一部を振動状態とする特殊表示演出用データ等の一例を示し、(A)は元となる背景画像の正面図、(B)は振動させる範囲を特定するデータの模式図、(C)は背景画像を表示する複数層の表示レイヤ毎の座標原点の設定例を示す模式図、(D)は時間軸に沿って特殊表示演出用データの設定例を示す模式図、(E)は当該設定例に基づいて遊技者が視認する特殊表示演出の実行画面を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態として、具体的な実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【実施例0022】
[1 遊技機全体の概要]
実施例1のパチンコ機P1は、
図1に示す様に、外枠A、中枠B、遊技盤C、前枠D、上の球受け皿E、下の球受け皿F、発射装置G及び施錠装置Hを備えている。
【0023】
前枠Dには遊技盤Cのガラス板が嵌め込まれた透視保護窓Wが備えられ、音声演出に用いるスピーカSPl,SPr、発光演出に用いる装飾ランプLDl,LDr,LDuも備えられている。
図1(C)に示す様に、前枠Dの裏面には、スピーカSPl,SPr、装飾ランプLDl,LDr,LDu、発射装置Gの駆動制御用の基板KBspl,KBspr,KBldl,KBldr,KBldu,KBgが設置されている。
【0024】
これら駆動制御用の基板KBspl,KBspr,KBldl,KBldr,KBldu,KBgには、中枠Bに設置した本体側コネクタCNT1と前枠Dに設置した組付部材側コネクタCNT2とを接合させることにより、中枠Bから電源及び制御信号等が入力される構成となっている。前枠Dは、透視保護窓W以外は不透明な素材で構成され、各基板KBspl等とコネクタCNT2との間は、この不透明素材に隠れて正面からは見えない様に配線されたワイヤハーネスで接続されている。
【0025】
遊技盤Cは、透明な合成樹脂板に障害釘等を設置したものであり、
図1(C)に示す様に、その裏側に液晶表示装置LCD及び裏ユニットBUTを取り付けた状態で中枠Bに組み付けられる。
【0026】
[2 遊技盤の概要]
図2(A)に示す様に、裏ユニットBUTは、側枠BUT1と背面枠BUT2とを備え前面開放とされた箱型の成形体からなる。液晶表示装置LCDとして、汎用ワイド液晶モニタを、
図2(A)~(C)に示す様に、表示領域が縦長となる様に上下を裏ユニットBUTの内面に支持する状態で取り付けられている。この際、液晶表示装置LCDは、遊技盤Cとの間に間隔をあける様に裏ユニットBUTの奥側に設置される。そして、背面枠BUT2の中央に設けられた開口BUT3を介して、背面枠BUT2の背面に取り付けられる基板ケース内の演出制御基板等(図示略)に対して接続される。この開口BUT3は、画像表示窓ではなく信号線や電源線の接続のためのものであるから、必要最小限のサイズとすることができる。
【0027】
また、液晶表示装置LCDは、
図2(B)に示す様に、遊技盤Cの遊技領域(障害釘及び各種役物を配置して発射レールの出口からアウト口に至る領域)の全体に重なり得る大きさの表示領域を備え、この表示領域が遊技領域の全体に重なる様に、裏ユニットBUTの幅方向中央に位置する様に設置されている。この結果、裏ユニットBUTの内部には、遊技盤Cの裏側及び液晶表示装置LCDの左右に比較的大きな空所を確保することができている。本実施例では、この空所を利用し、液晶表示装置LCDと遊技盤Cとの間に可動空間を確保した状態で落下可動体KDdwnや振り子可動体KDswingを設置している。これら可動体役物は、
図1(A)と
図1(C),
図2(C)とを比較すると分かる様に、動作前の待機状態においては前枠Dの背後に隠れた状態となる様に設置している。また、これら可動体役物への信号線や電源線等は、液晶表示装置LCDの左右の空所を利用して配線することができる。なお、本実施例においては可動体役物を光透過性を有する色付き透明プラスチックによる成形体とし、動作位置に落下したり振り出された状態においても裏側の液晶表示が見える様にしている。
【0028】
遊技盤Cは、
図3に示す様に、矩形の透明ベース板1の前面に、障害釘11や風車12が植設された遊技領域10の中央にセンター飾り30が取り付けられ、センター飾り30の中央直下に始動入賞装置7が備えられ、大入賞口15、誘導レール17、普通入賞口18、アウト口19等が備えられている。センター飾り30は、仕切り装飾体31、ステージ32、ワープ通路33を備えるリング状を呈し、左上部には障害釘に代わる障害ブロック34が設けられている。パチンコ機P1は、大当たり等の際には「右打ち遊技」とするタイプであって、右打ち通路35を備え、右側遊技領域20には、ゲート37と第2始動入賞装置27が設置されている。この第2始動入賞装置27は、ゲート37を遊技球が通過したことを契機に実行される普通図柄抽選結果に基づいて開閉動作される電動式チューリップを備えている。また、概略円形の遊技領域10を区画する様に、左コーナー飾り41と右コーナー飾り42も備えられている。
【0029】
本実施例においては、コーナー飾り41,42の外周で規定される矩形領域よりも広い透明ベース板1を採用し、裏ユニットBUTの前面開放部分を塞いでいる。これは、横転させた縦長の状態にて収容した液晶表示装置LCDの表示領域を遊技盤Cの遊技領域の全体に重なる様にする関係から裏ユニットBUTが大型化することに対応するものである。なお、透明ベース板1は一枚板ではなく、二枚を前後に貼り合わせたものとすることもできる。例えば、コーナー飾り41,42の外周までの前側透明板と裏ユニットBUTの前面開放部分を塞ぐに足る広さの後側透明板とを貼り合わせた構造とすることもできる。
【0030】
本実施例においては、始動入賞装置7、風車12、大入賞口15、普通入賞口18、アウト口19、第2始動入賞装置27、仕切り装飾体31、ステージ32、ワープ通路33、障害ブロック34、ゲート37、左コーナー飾り41及び右コーナー飾り42といった盤面役物を透明合成樹脂製の成形体で構成している。従って、これら各種役物を通しても背面の液晶表示装置LCDによる画像や動画を視認することができ、遊技領域内における液晶表示の妨げになることがない。
【0031】
なお、障害釘11や風車12の釘、誘導レール17は点や線として視認されるが、遊技領域内の液晶表示に対する大きな妨げにならない。逆に、遊技球が様々な方向に跳ね返りつつ流下していく様子を遊技者に楽しませる上で、障害釘11が点々として視認される方が望ましい。
【0032】
また、透明ベース板1の裏面には、入賞口やアウト口に侵入した遊技球を排出するための玉排出通路51が取り付けられている。玉排出通路51もまた透明合成樹脂成形体で構成している。これにより、玉排出路51を通しても背面の液晶表示装置LCDによる画像や動画を視認することができ、遊技領域内における液晶表示の妨げになることがない。
【0033】
玉排出通路51には、始動入賞装置7,27への入球を検知するための特
図1スイッチSW1、特
図2スイッチSW2、普通入賞口18への入球を検出するための入賞検知スイッチSW11~SW13、大入賞口15への入球を検出するための入賞検知スイッチSW7、及び排出球を検知するための排出球検知センサSW21が備えられている。これら検知スイッチは、一点鎖線で示した視認領域VWARの外側に位置する様に取り付けられている。これにより、特図スイッチSW1等は遊技領域内における液晶表示の妨げにならない。
【0034】
また、ゲート37の普図スイッチSW37は、透明ベース板1の裏面の対応する位置に、透明導電膜形成材料(ITO(酸化インジウムスズ)やIZO(酸化インジウム酸化亜鉛))を用いた印刷によって形成され、配線WHについても同じく透明導電膜形成材料にて透明ベース板1の周縁部へと伸びる様に印刷によって形成されている。これにより、普図スイッチSW37や配線WHが遊技領域内における液晶表示の妨げになることがない。
【0035】
大入賞口15の開閉用のリンク部材L7及び第2始動入賞装置27のチューリップ開閉用のリンク部材L27もまた透明合成樹脂製とされている。これらリンク部材L7,L27を駆動するためのソレノイドSOL7,SOL27は、視認領域VWARの外側に取り付けられている。これにより、リンク部材L7,L27が遊技領域内における液晶表示の妨げになることがない。
【0036】
三つの普通入賞口18,18,18は透明合成樹脂により一体品として成形されている。その平板部分には、透明ベース板1の裏面側に電飾装置LD1,LD2が取り付けられている。これら電飾装置LD1,LD2を駆動するための電飾基板KBld1,KBld2は透明導電膜形成材料にて基板内配線が印刷された透明合成樹脂が用いられ、配線WHについても同じく透明導電膜形成材料にて透明ベース板1の周縁部へと伸びる様に印刷によって形成されている。これにより、電飾基板KBld1,KBld2や配線WHが遊技領域内における液晶表示の妨げになることがない。なお、
図1(A)に示す様に、液晶表示装置LCDの全画面の一部が遊技者から視認可能な範囲となる。この視認可能範囲VRWを
図3に一点鎖線で示す。
【0037】
[3 制御装置の概要]
次に、本実施例のパチンコ機P1のゲーム性等について説明する。まず、制御系統について
図4に基づいて説明する。CPU,ROM,RAM,クロック等を備えた主制御基板310に対して、始動入賞装置7に備えられている第1特図スイッチSW1、第2始動入賞装置27に備えられている第2特図スイッチSW2、ゲート37に備えられている普図スイッチSW37、大入賞口15に備えられた入賞検知スイッチSW7、普通入賞口18に備えられた入賞検知スイッチSW11~SW13、及び排出球検知スイッチSW21からの検知信号が入力される様になっている。主制御基板310には、前枠Dの開閉状態を示す開閉検知スイッチ50の検出信号も入力されている。
【0038】
また、主制御基板310からは、演出制御基板320、払出制御基板330、発射制御基板340、特図表示器TKZ、性能表示モニタ600、大入賞口15の開閉用ソレノイドSOL7、第2始動入賞装置27の普通電動役物開閉用ソレノイドSOL27へとコマンドが出力される様になっている。払出制御基板330は、主制御基板310に対して信号を入力する様にも接続されている。また、払出制御基板330と発射制御基板340との間でも互いに信号の入出力がなされている。この結果、本実施例においては、発射制御基板340から払出制御基板330を経由して主制御基板310に対して信号入力が可能となっている。
【0039】
制御系統には、この他、BCユニット335、インタフェース基板350、電源基板360、演出表示制御基板370、電源中継基板380、球貸し操作基板390、ホールコンピュータ400、カードユニットCDU等も備えられている。
【0040】
演出制御基板320は、主制御基板310からの演出指令信号に基づいて、可動体役物を駆動するモータやソレノイドを駆動制御するモータ駆動制御基板KBmt、ソレノイド駆動制御基板KBsol、スピーカーSPl,SPrによる音声出力を制御するスピーカ駆動制御基板KBspl,KBspr、前枠Dに設置された装飾ランプLDl、LDr、LDuを発光制御する前枠発光制御基板KBldl,KBldr,KBlduや盤面役物の電飾装置LD1,LD2を発行制御する電飾基板KBld1,KBld2等に対して制御信号を出力して役物発光演出、枠発光演出、音声演出、可動体演出等を実行すると共に、演出表示制御基板370へと演出表示のためのコマンドを出力し、液晶表示装置LCDによる表示演出を実行させている。
【0041】
なお、前枠Dに設置されたプッシュボタンPBの押下信号、カーソルキーCKの操作信号は演出制御基板320に入力され、貸し玉ボタンQ,カード取り出しボタンRの押下信号は球貸し操作基板390に入力されている。
【0042】
主制御基板310は、特
図1スイッチSW1からの検知信号の入力を契機として取得した特
図1判定用乱数を最大4個、特
図2スイッチSW2の検知信号入力を契機として取得した特
図2判定用乱数を最大4個、それぞれ保留記憶しておくため、RAM内に、特
図1保留記憶部311及び特
図2保留記憶部312を備えている。特
図1判定用乱数及び特
図2判定用乱数は、それぞれ、「当たり/はずれ判定用乱数(乱数1:SW1-1,SW2-1)」、「特図振分判定用乱数(乱数2:SW1-2,SW2-2)」、「演出実行判定用乱数(乱数3:SW1-3,SW2-3)」、及び「変動パターン振分用乱数(乱数4:SW1-4,SW2-4)」から構成される。乱数1は、特図スイッチ検知信号の入力を契機としてハードウェアロジックによって取得され、乱数2~4は、特図スイッチ検知信号の入力を契機としてソフトウェアロジックによって取得される。
【0043】
主制御基板310は、所定のタイミングで実行する判定処理において、乱数1が予め設定された「大当たり判定値」と一致するときに「大当たり」と判定し、一致しない場合は「はずれ」と判定する。特図振分判定用乱数(乱数2)は、特別遊技のラウンド数など、大当たり種別を振り分けるための乱数である。演出実行判定用乱数(乱数3)は、リーチ演出を行うか否かを決定するための乱数である。リーチ演出は、「当たり」の場合だけでなく、「はずれ」においても所定の割合で実行する構成となっている。変動パターン振分用乱数(乱数4)は、変動パターンを振り分けるための乱数である。なお、乱数1で「大当たり」となった場合、乱数2による大当たり種別振り分けにより、例えば、「2R」「7R」「15R」など、遊技者に対する有利さの異なる複数種類の当たり種別のいずれかに振り分けられる。
【0044】
演出制御基板320には、音声演出、表示演出、発光演出、及び可動体演出を実行するための演出データ記憶手段325が備えられている。演出データ記憶手段325には、特別図柄変動ゲーム中に実行する変動ゲーム中演出データDH、大当たり遊技中に実行する大当たり中演出データDV、デモ中に実行するデモ中演出データDM、特図変動ゲームにおいて実行される変動パターンに応じた飾り図柄変動ゲームを表示するための飾り図柄変動演出データDKZが記憶されている。
【0045】
変動ゲーム中演出データDHは、背景表示用データ、キャラクタ表示用データ、発光演出用データ、音声演出用データ、及び可動体演出用データの組み合わせとなっている。変動ゲーム中演出データDHは、主制御基板310による抽選結果(ノーマルはずれ、ノーマル当たり、リーチはずれ、リーチ当たり、スーパーリーチはずれ、スーパーリーチ当たりなど)に対して、それぞれ複数種類のパターンが備えられている。これらのパターンにおいて、例えば、可動体演出を伴わない変動ゲーム中演出を行うデータは、可動体演出データがブランクデータで構成される。
【0046】
大当たり中演出データDVも、変動ゲーム中演出データDHと同様に、背景表示用データ、キャラクタ表示用データ、発光演出用データ、音声演出用データ、及び可動体演出用データの一部又は複数の組み合わせ又は全部の組み合わせによって構成され、大当たり種別に応じて複数パターンが備えられている。
【0047】
デモ中演出データDMも、変動ゲーム中演出データDHと同様に、背景表示用データ、キャラクタ表示用データ、発光演出用データ、音声演出用データ、及び可動体演出用データの一部又は複数の組み合わせ又は全部の組み合わせによって構成され、デモ1用、デモ2用など複数パターンが備えられている。
【0048】
飾り図柄変動演出データDKZは、ノーマルはずれ、ノーマル当たり、リーチはずれ、リーチ当たり、スーパーリーチはずれ、スーパーリーチ当たりなど、主制御基板310による抽選の結果に基づいて指令される変動パターンに対応したデータとして記憶されている。このため、本実施例においては、通常状態用変動パターンテーブル315に対応する飾り図柄変動時間となる通常状態用飾り図柄変動演出データDKZaと、変短状態用変動パターンテーブル316に対応する飾り図柄変動時間となる変短状態用飾り図柄変動演出データDKZbとが、演出制御基板320の演出データ記憶手段325に記憶されている。
【0049】
演出表示制御基板370は、演出制御基板320から指令される背景表示用データに従って液晶表示装置LCDに表示した背景画像に対して重ね合わせる様にして、変動パターンに対応する飾り図柄変動演出データDKZを表示する。また、この表示演出においては、キャラクタ表示データが存在する場合はキャラクタ画像を重ねて表示する演出も実行される。
【0050】
ここで、本実施例においては、変動ゲーム中演出データDHは、変動パターンに対して1対1対応となっている訳ではなく、例えば、変動パターン1に対して演出1,演出2,…などと複数の中から振り分けによって演出制御基板320側で決定する構成となっている。同じく、飾り図柄変動演出データDKZも、例えば、変動パターン1に対しては変動時間1、変動パターン1に対しては変動時間2、…、と1対1の対応であるが、各変動時間に対して複数の飾り図柄変動パターンが備えられていて、これら複数の中から振り分けによって演出制御基板320が決定する構成となっている。これら振り分け可能な演出データDHや飾り図柄変動パターンDKZは、変動パターンが大当たりの場合に振り分けられ易く、はずれの場合に振り分けられ難いグループと、その逆のグループといった具合に、信頼度グループを構成する様に振り分け確率を設定している。
【0051】
[4 主制御基板における遊技性に関する制御処理の概要]
主制御基板310は、特図スイッチSW1,SW2、入賞検知センサSW7,SW11,SW12からの入賞検知信号が入力されると、各スイッチに対応する賞球払出個数に対応する賞球払出コマンドを払出制御基板330に対して出力する賞球払出処理を実行している。これを受けて、払出制御基板330は、遊技球の入賞口に対応して予め定められた個数の賞球の払出動作を実行する。主制御基板310は、この賞球の払い出し個数は、「通常遊技」、「時短遊技」「大当たり遊技」等の遊技状態ごとに累積値を記憶する。主制御基板310は、また、これら遊技状態ごとの排出球の個数を排出球検知スイッチSW21からの検知信号に基づいて累積値として記憶している。そして、主制御基板310は、これら賞球払出個数の累積値と排出球数の累積値に基づいて、各遊技状態におけるベース(払出数/(発射数=排出数))を算出している。これら遊技状態ごとのベースの内、「通常遊技」について算出した値は、主制御基板310から性能表示モニタ600のマイコン基板へと送信され、性能表示モニタ600に数値表示される。なお、所定の操作をすることにより、性能表示モニタ600を用いて、「時短遊技」や「大当たり遊技」におけるベースの表示をすることもできる様になっている。
【0052】
また、主制御基板310は、特図スイッチSW1,SW2のいずれかから検知信号が入力されると、特別図柄を決定するための乱数を取得し、その結果を始動保留情報としてRAMに記憶する特図入力処理を実行している。本実施例においては、始動保留情報として第1特図スイッチSW1による検知信号に基づく始動保留情報(特
図1始動保留情報)を最大4個、第2特図スイッチSW2による検知信号に基づく始動保留情報(特
図2始動保留情報)を最大4個記憶することができる構成となっている。
【0053】
主制御基板310は、こうしてRAM内に記憶された始動保留情報を読み出し、「当たり/はずれ」に応じた特別図柄変動を特図表示器TKZに実行させると共に、演出制御基板320を介して音声演出、発光演出、表示演出、可動体演出等を実行させるための特図開始処理を実行している。この特図開始処理では、始動保留情報に基づく抽選処理の結果により、「変動パターン」および「最終停止図柄」を決定し、演出制御基板320に対し、所定の制御コマンドを所定のタイミングで出力する。具体的には、主制御基板310は、変動パターンを指定すると共に図柄変動の開始を指示する変動パターン指定コマンドを出力すると共に、変動パターンで特定された演出時間の計測を開始する。これと同時に、主制御基板310は、特図変動表示を開始させるように特図表示器TKZを制御する。また、主制御基板310は、最終停止図柄となる特別図柄を指示するための特図指定コマンドを出力する。こうして、主制御基板310は、特図開始処理を終了する。その後、特図開始処理とは別の処理において、主制御基板310は、指定した変動パターンに定められている演出時間に基づいて、決定した最終停止図柄を表示させるように特図表示器TKZの表示内容を制御する。また、主制御基板310は、指定した変動パターンに定められている演出時間に基づいて、演出制御基板320に対して飾図の変動停止を指示し、図柄組み合わせを確定停止表示させるための全図柄停止コマンドを出力する。
【0054】
[5 演出御基板における遊技性に関する制御処理の概要]
演出制御基板320は、主制御基板310からの変動コマンドを受信することによって変動演出を実行する。この変動演出は、特別遊技中でなく、デモ表示状態でもないときに実行される。演出制御基板320は、変動コマンドを受信したら、今回の表示演出に用いる飾り図柄変動演出データDKZと変動ゲーム中演出データDHとを決定する。
【0055】
ここで、本実施例においては、演出データ記憶手段325には、各変動パターン(変動時間)に対して、それぞれ複数個の飾り図柄変動演出データDKZが記憶されているから、主制御基板310からの入力によって変動パターンが特定されたことにより、当該変動パターンについて選択し得る複数個のDKZの中から、今回の変動ゲーム中演出において使用する一つのDKZを抽選によって決定する。
【0056】
また、演出データ記憶手段325には、各変動パターン(変動時間)に対して、それぞれ複数個の変動ゲーム中演出データDHが記憶されているから、主制御基板310からの入力によって変動パターンが特定されたことにより、当該変動パターンについて選択し得る複数個のDHの中から、今回の変動ゲーム中演出において使用する一つのDHを抽選によって決定する。
【0057】
こうして決定したDH,DKZに対応するデータを演出データ記憶手段325から読み出し、変動演出を開始する。変動ゲーム中演出データDHによる演出は、主制御基板310から全図柄停止コマンドを受信したときに、飾り図柄変動演出における確定図柄の停止を行って終了する。この飾り図柄変動表示における確定図柄停止のタイミングは、主制御基板310による特図表示器TKZへの特別図柄確定のタイミングと同期している。
【0058】
なお、特別遊技中であるときは、変動ゲーム中演出データDHではなく大当たり中演出データDVを読み出し、大当たり中演出を実行する。また、デモ表示タイミングであるときは、デモ中演出データDMを読み出し、デモ中演出を実行する。
【0059】
本実施例においては、これら変動ゲーム中演出、大当たり中演出、デモ中演出での発光演出として、遊技盤Cに備えた装飾ランプによる役物発光演出に加えて、前枠Dに備えた装飾ランプによる枠発光演出も実行している。演出制御基板320の演出データ記憶手段325には、変動ゲーム中演出において実行する枠発光演出のためのデータについても、変動パターンが大当たりの場合に振り分けられ易く、はずれの場合に振り分けられ難いグループと、その逆のグループといった具合に、信頼度グループを構成する様に振り分け確率を設定した複数の演出データを記憶させてある。
【0060】
[6 表示制御処理]
本実施例では、液晶表示装置LCDとして汎用ワイド液晶モニタを横転させた縦長状態にて設置している。このため、表示演出において、
図5(A)に示す様に、液晶表示装置LCDに背景用画像情報IMGbgr、飾り図柄用画像情報IMGkz及びキャラクタ図柄用画像情報IMGchを重ねる様にして表示するに当たり、演出表示制御基板370は、
図5(B1)~(B3)に示す様に、メモリに記憶してある画像情報IMGbgr,IMGkz,IMGchの縦方向を主走査方向とするラスタ走査情報RSCbgr,RSCkz,RSCchを生成し、液晶表示装置LCDに出力する処理を実行している。
【0061】
この処理により、汎用のワイド液晶モニタを縦置きにして用いるために横転状態の画像情報を記憶させておかなくても正しい画像情報を表示することができる。この結果、画像情報の作成における労力を低減し、あるいは既存の画像情報の全部又は一部を用いた表示演出を可能にすることができる。
【0062】
[7 演出データの詳細]
次に、演出制御基板320の演出データ記憶手段325に記憶されている演出データの詳細について説明する。
【0063】
演出制御基板320には、音声演出、表示演出、発光演出、可動体演出、及び特殊表示演出のための演出データが、演出用制御ROMの演出データ記憶部320gの所定領域に予め記憶されている。この演出データ記憶部320gには、
図6(A)に示す様に、演出データとして、特別図柄変動ゲーム中に実行する変動ゲーム中演出データDH、大当たり遊技中に実行する大当たり中演出データDVと、デモ中に実行するデモ中演出データDMとが記憶されている。また、特図変動ゲームにおいて実行される変動パターンに応じた飾り図柄変動ゲームを表示するための飾り図柄変動演出データDKZも記憶されている。
【0064】
本実施例においては、演出制御基板320において保留先読みによる特殊ゾーン演出も実行する様に構成されている。このため、変動ゲーム中演出データDHの中に、特殊ゾーン演出用のデータDHSZが記憶されている。
【0065】
変動ゲーム中演出データDHnは、
図6(B)に示す様に、背景表示用データ(DHn1)、キャラクタ表示用データ(DHn2)、発光演出用データ(DHn3)、音声演出用データ(DHn4)、可動体演出用データ(DHn5)、及び特殊表示演出用データ(DHn6)の組み合わせとなっている。なお、変動ゲーム中演出データDHnにおいてDHn1~DHn6の内、例えば、可動体演出を行わない場合はDHn5がブランクデータとなり、特殊表示演出を実行しない場合はDHn6がブランクデータとなる。特殊表示演出用データDHn6は、
図6(C)に示す様に、特殊表示用キャラクタ画像データDHn6a、関連画像データDHn6b、及び背景表示レイヤデータDHn6cとを組み合わせた特殊表示演出用のデータとして構成されている。
【0066】
ここで、本実施例においては、液晶表示装置LCDは、背景画像を表示するための表示レイヤを複数層備えている。これら複数層の表示レイヤには同一のタイミングにおいては同一の背景表示用データDHn1が表示され得る様に構成されている。その一方、背景画像表示用の各表示レイヤは、表示レイヤ毎に原点座標が異なるものとされている。表示レイヤデータDHn6cは、この原点座標の異なる複数層の表示レイヤの内のどの表示レイヤを背景画像の表示用に用いるかを決定するためのデータとなっている。
【0067】
[7.1 データ構成例1(表示レイヤデータ)]
原点座標の異なる複数層の表示レイヤの内のどの表示レイヤを背景画像の表示用に用いるかを決定する表示レイヤデータDHn6cによって同一の背景画像がどの様な態様で液晶表示装置LCDに表示されるかを
図7(A)に例示する。
【0068】
本実施例においては、表示レイヤデータDHn6c0は原点座標(0,0)の表示レイヤを、表示レイヤデータDHn6c1は原点座標(0,+△y)の表示レイヤを、表示レイヤデータDHn6c2は原点座標(0,-△y)の表示レイヤを、表示レイヤデータDHn6c3は原点座標(+△x,0)の表示レイヤを、表示レイヤデータDHn6c4は原点座標(-△x,0)の表示レイヤを、表示レイヤデータDHn6c5は原点座標(+△x,+△y)の表示レイヤを、表示レイヤデータDHn6c6は原点座標(-△x,-△y)の表示レイヤを、それぞれ特定するデータとしている。
【0069】
表示レイヤデータDHn6cと、視認可能範囲VRWに表示される背景画像との関係を
図7(B)に示す。表示レイヤデータDHn6c0に対応する表示レイヤによって視認可能範囲VWRに表示される基本背景画像となる。これに対し、表示レイヤデータDHn6c1に対応する表示レイヤによって視認可能範囲VRWに表示される背景画像は基本背景画像をy方向に+△yだけずらしたものとなり、表示レイヤデータDHn6c2に対応する表示レイヤによって視認可能範囲VRWに表示される背景画像は基本背景画像をy方向に-△yだけずらしたものとなり、表示レイヤデータDHn6c3に対応する表示レイヤによって視認可能範囲VRWに表示される背景画像は基本背景画像をx方向に+△xだけずらしたものとなり、表示レイヤデータDHn6c4に対応する表示レイヤによって視認可能範囲VRWに表示される背景画像は基本背景画像をx方向に-△yだけずらしたものとなり、表示レイヤデータDHn6c5に対応する表示レイヤによって視認可能範囲VRWに表示される背景画像は基本背景画像をx方向に+△x、y方向に+△yだけずらしたものとなり、表示レイヤデータDHn6c6に対応する表示レイヤによって視認可能範囲VRWに表示される背景画像は基本背景画像をx方向に-△x、y方向に-△yだけずらしたものとなる。
【0070】
[7.2 データ構成例2]
データ構成例2の特殊表示演出用データDHn6は、
図8(A)に示す様に、変動時間内の時刻t11に対して特殊表示用キャラクタ画像データDHn6a11とその表示位置座標(x11,y11)が、変動時間内の時刻t12に対して特殊表示用キャラクタ画像データDHn6a12と表示位置座標(x12,y12)が、変動時間内の時刻t13に対して特殊表示用キャラクタ画像データDHn6a13と表示位置座標(x13,y13)及び関連画像データDHn6b13と表示位置座標(x13’,y13’)が、記録されたものとなっている。
【0071】
この特殊表示演出用データDHn6が設定された変動ゲーム中演出データDHが実行されると、当該データの背景表示用データに対応する背景画像の前面側において飾り図柄の変動表示が開始される。その後、背景画像及び変動図柄の前面側において、
図8(B)に示す様に、時刻t11になると表示位置座標(x11,y11)に特殊表示用キャラクタ画像データDHn6a11に対応する特殊表示用キャラクタ画像が、時刻t12になると表示位置座標(x12,y12)に特殊表示用キャラクタ画像データDHn6a12に対応する特殊表示用キャラクタ画像が、時刻t13になると表示位置座標(x13,y13)に特殊表示用キャラクタ画像データDHn6a13に対応する特殊表示用キャラクタ画像と表示位置座標(x13’,y13’)に関連画像データDHn6b13に対応する関連画像とが、それぞれ表示される。
【0072】
ここで、関連画像データDHn6b13に対応する関連画像は特殊表示用キャラクタ画像データDHn6a13に対応する特殊表示用キャラクタ画像の影絵となり得るものであって、特殊表示用キャラクタ画像の表示レイヤよりも背面側の表示レイヤに表示される。このとき、関連画像データDHn6b13に対応する関連画像が特殊表示用キャラクタ画像データDHn6a13に対応する特殊表示用キャラクタ画像から部分的にはみ出した状態で重なる様に、表示位置座標(x13,y13)と表示位置座標(x13’,y13’)とが設定されている。
【0073】
この結果、「キャラクタ画像に対するエフェクト処理」を変動ごとに施すことなく、変動中の適切なタイミングにおいて、縁取り付きのキャラクタ画像を出現させることができる。なお、これらDH6na,DH6nbによる特殊表示も視認可能範囲VRW内に表示される。
【0074】
[7.3 データ構成例3]
データ構成例3の特殊表示演出用データDHn6は、
図9に示す様に、変動時間内の時刻t11に対して特殊表示用キャラクタ画像データDHn6a11とその表示位置座標(x11,y11)が、変動時間内の時刻t12に対して特殊表示用キャラクタ画像データDHn6a12と表示位置座標(x12,y12)が、変動時間内の時刻t13に対して特殊表示用キャラクタ画像データDHn6a13と表示位置座標(x13,y13)及び関連画像データDHn6b13と表示位置座標(x13’,y13’)が、記録されると共に、時刻t12-△t~時刻t12+△tと、時刻t13-△t~時刻t13+△tとの間に、表示レイヤデータDHn6cが記録されたものとなっている。
【0075】
表示レイヤデータDHn6cとしては、
図9に例示する様に、視認可能範囲VRW内において背景画像を上下に振動させるDHn6cy、左右に動させるDHn6cxy、斜めに振動させるDHn6cxyのいずれかあるいはこれらの組合せを設定することが可能である。なお、図では、それぞれ1回の振動をイメージした例示をしたが、背景画像を複数回振動させる設定としても構わないし、振動を生じさせる期間に長短を設けても構わない。
【0076】
データ構成例3によって実行される特殊表示演出のイメージを
図10に例示する。
【0077】
図10(A)は、時刻t12-△t~t12+△tの期間について表示レイヤデータDHn6cyが設定されている場合の特殊表示演出のイメージを例示したものである。図示の様に、特殊表示用キャラクタデータDHn6a11が表示されるタイミングt12の前後において背景画像の表示レイヤが切り替えられることにより、視認可能範囲VRW内の背景画像が上下方向に振動する特殊表示演出が重なって実行される。
【0078】
図10(B)は、時刻t12-△t~t12+△tの期間について表示レイヤデータDHn6cxが設定されている場合の特殊表示演出のイメージを例示したものである。図示の様に、特殊表示用キャラクタデータDHn6a11が表示されるタイミングt12の前後において背景画像の表示レイヤが切り替えられることにより、視認可能範囲VRW内の背景画像が左右方向に振動する特殊表示演出が重なって実行される。
【0079】
図10(C)は、時刻t13-△t~t13+△tの期間について表示レイヤデータDHn6cxyが設定されている場合の特殊表示演出のイメージを例示したものである。図示の様に、特殊表示用キャラクタデータDHn6a13が表示されるタイミングt13の前後において背景画像の表示レイヤが切り替えられることにより、視認可能範囲VRW内の背景画像が斜め方向に振動する特殊表示演出が重なって実行された後に「リーチ!」の表示がなされる。
【0080】
本実施例においては、視認可能範囲VRWを、液晶表示装置LCDの全画面の一部が遊技者から視認可能な範囲となる様に構成されているから、
図7(A)に例示した様に、原点座標(0,0)から原点位置をx方向、y方向、xy方向にずらすことで液晶表示装置LCDの画面に生じる余白部分の影響を受けることなく、
図7(B),
図10(A)~(C)に例示する様に背景画像を振動させる特殊表示演出を実行することができる。言い換えるなら、視認可能範囲VWRに余白部分を生じさせない様に背景画像の振動幅を設定することにより、遊技者に違和感を抱かせることなく背景画像が振動した状態の特殊表示演出を楽しませることができる。
【0081】
なお、振動状態を生じさせる期間及びその間の表示レイヤの切り換え回数により、様々な振動数に対応した背景画像の振動状態を特殊表示することができる。この結果、本実施例によれば、背景画像の振動が生じるタイミング、振動方向、振動数、振動幅を大当たり信頼度の報知又は示唆と関連付けた設定とすることにより、背景画像の振動状態による大当たり信頼度の報知又は示唆を適確に実施することができる。例えば、大当たり信頼度が高いほど、背景画像を速く振動させたり、背景画像を大きく振動させたり、背景画像を速く大きく振動させるといった特殊表示演出を実行することができる。
以上、発明を実施するための最良の形態としての実施例を説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内における種々の変更が可能である。
例えば、実施例1,2は疑似連における特殊表示演出を説明したが、「大当たり後の変短状態であること」、「いわゆるラッシュに突入したこと」、「プレミアム演出であること」などを遊技者に報知や示唆を行う際にだけ発生させる様にすることもできる。また、液晶表示装置を裏ユニットの背面に備え、裏ユニットに形成した窓開口から表示演出を視認させる様に構成した遊技機に適用することもできる。加えて、パチンコ機ではなくスロットマシーンにおける表示演出においても、背景画像全体を振動させたり、背景画像の一部を振動させるといった特殊表示演出によって大当たり信頼度の報知又は示唆を行う様に構成することができる。