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特開2023-66555三次元計測用治具及び三次元計測システム
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  • 特開-三次元計測用治具及び三次元計測システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066555
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】三次元計測用治具及び三次元計測システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 3/00 20060101AFI20230509BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20230509BHJP
   G21F 7/06 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
B25J3/00 Z
B25J13/08 A
G21F7/06 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177212
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 彰
(72)【発明者】
【氏名】深野 健太
(72)【発明者】
【氏名】府金 央
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707DS01
3C707JT04
3C707JU12
3C707KS03
3C707KS04
3C707KT03
3C707KT05
3C707MT01
(57)【要約】
【課題】マニピュレータを用いた遠隔操作であっても計測用ターゲットを容易に配置することができる三次元計測用治具及び三次元計測システムを提供する。
【解決手段】
三次元計測システム1は、マニピュレータ11を用いた遠隔操作により孔12に配置される三次元計測用治具2と、三次元計測用治具2を撮像するカメラ3と、カメラ3の撮像データを処理する処理装置4と、を備えている。三次元計測用治具2は、孔12の想定される孔径よりも大きな径を有する球面形状を備えた脚部21と、三次元計測用のターゲット22aが配置される頭部22と、を備えている。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マニピュレータを用いた遠隔操作により孔に配置される三次元計測用治具であって、
想定される孔径よりも大きな径を有する球面形状を備えた脚部と、
三次元計測用のターゲットが配置される頭部と、
を備えたことを特徴とする三次元計測用治具。
【請求項2】
前記頭部は、前記ターゲットを配置する平面部を備えている、請求項1に記載の三次元計測用治具。
【請求項3】
前記頭部は、前記マニピュレータの把持部を備えている、請求項1に記載の三次元計測用治具。
【請求項4】
前記頭部は、落下防止用の係止部を備えている、請求項1に記載の三次元計測用治具。
【請求項5】
前記頭部は、面の向きを識別する目印を備えている、請求項1に記載の三次元計測用治具。
【請求項6】
前記目印は、落下防止用の係止部の位置を規制するストッパにより構成されている、請求項5に記載の三次元計測用治具。
【請求項7】
前記脚部を前記孔に押し付けた状態で支持する支持手段を有する、請求項1に記載の三次元計測用治具。
【請求項8】
マニピュレータを用いた遠隔操作により孔に配置される三次元計測用治具と、該三次元計測用治具を撮像するカメラと、該カメラの撮像データを処理する処理装置と、を備えた三次元計測システムであって、
前記三次元計測用治具は、想定される孔径よりも大きな径を有する球面形状を備えた脚部と、三次元計測用のターゲットが配置される頭部と、を備え、
前記処理装置は、前記ターゲットの中心と前記球面形状の中心との相対位置関係を予め記憶しておき、前記撮像データと照合することにより前記孔の中心位置を算出するように構成されている、
ことを特徴とする三次元計測システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元計測用治具及び三次元計測システムに関し、特に、孔の中心位置を遠隔操作で計測するための三次元計測用治具及び該三次元計測用治具を用いた三次元計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、人が立ち入ることができない処理区画(高放射線区域)における連結管の交換作業を処理区画内に配置されたマニピュレータを用いて遠隔操作で処理する方法が開示されている。かかる特許文献1では、フランジの位置を計測するためにボルト孔に挿入可能な軸部材を備えた計測用ターゲットを使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-329796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に記載されたように、連結管の交換時にはボルト孔を一致させる必要があるところ、古い施設では精密な寸法情報が存在しない場合があり、処理区画内の施設のボルト孔の中心位置を事後的に計測しなければならない。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された計測用ターゲットでは、マニピュレータを用いて計測用ターゲットの軸部材をボルト孔に挿入することが困難であるという問題がある。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、マニピュレータを用いた遠隔操作であっても計測用ターゲットを容易に配置することができる三次元計測用治具及び三次元計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、マニピュレータを用いた遠隔操作により孔に配置される三次元計測用治具であって、想定される孔径よりも大きな径を有する球面形状を備えた脚部と、三次元計測用のターゲットが配置される頭部と、を備えたことを特徴とする三次元計測用治具が提供される。
【0008】
前記頭部は、前記ターゲットを配置する平面部を備えていてもよい。
【0009】
前記頭部は、前記マニピュレータの把持部を備えていてもよい。
【0010】
前記頭部は、落下防止用の係止部を備えていてもよい。
【0011】
前記頭部は、面の向きを識別する目印を備えていてもよい。
【0012】
また、前記目印は、落下防止用の係止部の位置を規制するストッパにより構成されていてもよい。
【0013】
前記三次元計測用治具は、前記脚部を前記孔に押し付けた状態で支持する支持手段を有していてもよい。
【0014】
また、本発明によれば、マニピュレータを用いた遠隔操作により孔に配置される三次元計測用治具と、該三次元計測用治具を撮像するカメラと、該カメラの撮像データを処理する処理装置と、を備えた三次元計測システムであって、前記三次元計測用治具は、想定される孔径よりも大きな径を有する球面形状を備えた脚部と、三次元計測用のターゲットが配置される頭部と、を備え、前記処理装置は、前記ターゲットの中心と前記球面形状の中心との相対位置関係を予め記憶しておき、前記撮像データと照合することにより前記孔の中心位置を算出するように構成されている、ことを特徴とする三次元計測システムが提供される。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明に係る三次元計測用治具及び三次元計測システムによれば、孔に配置される脚部に球面形状を採用したことにより、マニピュレータを用いた遠隔操作であっても三次元計測用治具を容易に配置することができる。
【0016】
また、三次元計測用治具の脚部を孔に配置したときに球面形状の中心と孔の中心とが必ず一致するため、三次元計測用治具が傾いていた場合であっても、ターゲットと脚部(球面形状)の中心位置との相対位置関係を予め算出しておくことにより、容易に孔の中心位置を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係る三次元計測システムを示す全体構成図である。
図2図1に示した三次元計測用治具を斜視図である。
図3】処理装置の処理フローを示す図である。
図4】三次元計測用治具の第一変形例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図、である。
図5】三次元計測用治具の第二変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図1図5を用いて説明する。ここで、図1は、一実施形態に係る三次元計測システムを示す全体構成図である。図2は、図1に示した三次元計測用治具を斜視図である。図3は、処理装置の処理フローを示す図である。
【0019】
図1に示した三次元計測システム1は、マニピュレータ11を用いた遠隔操作により孔12に配置される三次元計測用治具2と、三次元計測用治具2を撮像するカメラ3と、カメラ3の撮像データを処理する処理装置4と、を備えている。
【0020】
三次元計測システム1は、例えば、高放射線区域等の人が立ち入ることができない処理区画13に使用される。なお、図1では、説明の便宜上、処理区画13を一点鎖線で図示してある。
【0021】
マニピュレータ11は、例えば、物を把持するハンド部と、ハンド部の姿勢を制御する多関節アーム部と、を備えている。また、マニピュレータ11は、処理区画13内に配置された台車等によって移動可能に構成されていてもよい。
【0022】
孔12は、例えば、処理区画13内の施設、設備、機械等に形成されたボルト孔である。なお、孔12は、中心位置を算出したい対象物であればボルト孔以外の孔(穴)であってもよいし、配管等の円筒形状の構造物であってもよい。
【0023】
三次元計測用治具2は、例えば、図2に示したように、孔12の想定される孔径よりも大きな径を有する球面形状を備えた脚部21と、三次元計測用のターゲット22aが配置される頭部22と、を備えている。脚部21は、孔12に載置可能な大きさの球面形状を備えていれば、半球体形状であってもよいし、全球体形状であってもよい。
【0024】
頭部22は、計測用のターゲット22aを貼付するための平面部22bを備えている。頭部22は、例えば、直方体形状である。なお、頭部22は、平面部22bを備えていれば、他の角柱体形状であってもよい。
【0025】
ターゲット22aは、例えば、白黒の円形状を有している。ターゲット22aは、どの面に配置されたターゲットであるか認識できるようにナンバリングされていてもよい。また、図2では、平面部22bの各々に四つのターゲット22aを配置しているが、配置するターゲット22aの個数は任意である。
【0026】
脚部21は、球面形状を備えていることから、図1に示したように、孔12の上部に容易に三次元計測用治具2を載置することができる。また、脚部21を孔12に載置するだけで球面形状の中心と孔12の中心とを一致させることができる。したがって、マニピュレータ11を用いた遠隔操作であっても三次元計測用治具2を容易に計測対象の孔12に配置することができる。
【0027】
カメラ3は、例えば、高放射線区域等でも使用可能な撮像手段である。カメラ3は、三次元計測用治具2のターゲット22aを撮像し、処理装置4に撮像画像を送信するように構成されている。カメラ3は、例えば、マニピュレータ11により遠隔操作される。
【0028】
処理装置4は、処理区画13の外部に配置されるコンピュータである。処理装置4は、ターゲット22aの中心と脚部21の球面形状の中心との相対位置関係を予め記憶しておき、カメラ3の撮像データと照合することにより孔12の中心位置を算出するように構成されている。
【0029】
具体的には、図3に示した処理フローにより孔12の中心位置を算出する。かかる処理フローを実行するに際し、事前に、三次元計測用治具2のターゲット22aの中心と脚部21の球面形状の中心との相対位置関係を計測等により算出しておき、処理装置4の記憶部に保存しておく。
【0030】
マニピュレータ11により三次元計測用治具2を遠隔操作して計測対象の孔12に配置する。次に、マニピュレータ11によりカメラ3を遠隔操作して三次元計測用治具2のターゲット22aを撮像する。
【0031】
処理装置4は、ターゲット22aの撮像データを取得した後、ターゲット22aの三次元座標値を算出する。次に、処理装置4は、予め記憶しておいたターゲット22a及び球面形状の中心の相対位置関係データと照合し、孔12の中心位置を算出する。
【0032】
このとき、三次元計測用治具2のターゲット22aと脚部21の球面形状の中心との相対位置関係は、一義的に決定していることから、三次元計測用治具2が傾いた状態で孔12に配置されていたとしても、ターゲット22aの座標値を照合することにより容易に孔12の中心位置を算出することができる。
【0033】
なお、処理装置4は、ターゲット22aの撮像データと既知データ(三次元計測用治具2のターゲット22aの中心と脚部21の球面形状の中心との相対位置関係)とを用いて孔12の径を算出するように構成されていてもよい。
【0034】
次に、三次元計測用治具2の変形例について、図4及び図5を参照しつつ説明する。ここで、図4は、三次元計測用治具の第一変形例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図、である。図5は、三次元計測用治具の第二変形例を示す図である。
【0035】
図4(a)及び図4(b)に示した三次元計測用治具2の第一変形例は、マニピュレータ11の把持部23と、落下防止用の係止部24と、を備えたものである。なお、説明の便宜上、図4(a)では係止部24を寝かした状態を図示し、図4(b)では係止部24を立てた状態を図示してある。
【0036】
把持部23は、例えば、頭部22に形成された鍔部により構成される。かかる把持部23を三次元計測用治具2に形成することにより、マニピュレータ11で頭部22を把持しやすくすることができる。なお、把持部23を形成する位置及び形状は、図示した構成に限定されるものではない。
【0037】
係止部24は、頭部22に回動可能に配置されたワイヤベイルである。かかる係止部24を三次元計測用治具2に形成することにより、処理区画13内のクレーンによって三次元計測用治具2を吊り下げることができ落下防止対策を図ることができる。なお、係止部24を形成する位置及び形状は、図示した構成に限定されるものではない。
【0038】
また、頭部22は、面の向きを識別する目印を備えていてもよい。目印は、例えば、係止部24を構成するワイヤベイルの位置を規制するストッパ25により構成される。ストッパ25は、例えば、頭部22の側面に配置されたボルトであり、ワイヤベイルの倒れ止めの機能も有している。
【0039】
かかるストッパ25(目印)を配置することにより、ワイヤベイルの倒れる方向を一定にしてターゲット22aの位置(頭部22の面の向き)を見分けやすくすることができる。なお、ターゲット22aを非対称に設置した場合やストッパ25以外の構成部品により目印を形成した場合にはストッパ25を省略することができる。また、目印はボルト以外の部品で構成してもよいし、係止部24を有しない頭部24に目印を配置してもよい。
【0040】
また、頭部22が直方体形状の場合には、一対の側面に把持部23を形成し、残りの一対の側面に係止部24の両端部を配置することにより、把持部23と係止部24とを干渉させずに配置することができる。
【0041】
また、三次元計測用治具2を孔12に設置する際には把持部23を使用し、三次元計測用治具2を孔12から取り外す際には係止部24を使用してもよい。また、三次元計測用治具2は、把持部23及び係止部24の何れか一方のみを備えていてもよい。
【0042】
図5に示した三次元計測用治具2の第二変形例は、脚部21を孔12に押し付けた状態で支持する支持手段26を備えたものである。孔12が水平面や傾斜度が小さい傾斜面に形成されている場合には、脚部21を孔12の上部に載置するだけで三次元計測用治具2を配置することができる。
【0043】
一方、図5に示したように、孔12が鉛直面や傾斜度が大きい傾斜面に形成されている場合には三次元計測用治具2の位置を保持することが難しい。そこで、図5に示したように、三次元計測用治具2の頭部22に支持手段26を接続し、支持手段26をマニピュレータ11で把持することにより、三次元計測用治具2を孔12に押し付けることができ、三次元計測用治具2の位置を保持することができる。
【0044】
支持手段26は、例えば、三次元計測用治具2に接続されるユニバーサルジョイント26aと、ユニバーサルジョイント26aに接続された本体部26bと、本体部26bに配置された把持部26cと、を備えている。なお、支持手段26の構成は単なる一例であり、図示した構成に限定されるものではない。
【0045】
三次元計測用治具2と支持手段26とをユニバーサルジョイント26aで接続することにより孔12の向きや傾斜に合わせて容易に脚部21を孔12に宛がうことができる。本体部26bは、ユニバーサルジョイント26aに弾性力を付加するバネ等の弾性体を備えていてもよい。本体部26bに弾性体を配置することにより、三次元計測用治具2を孔12に容易に押し付けることができる。把持部26cは、マニピュレータ11で把持する部分である。
【0046】
本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
1 三次元計測システム
2 三次元計測用治具
3 カメラ
4 処理装置
11 マニピュレータ
12 孔
13 処理区画
21 脚部
22 頭部
22a ターゲット
22b 平面部
23 把持部
24 係止部
25 ストッパ(目印)
26 支持手段
26a ユニバーサルジョイント
26b 本体部
26c 把持部
図1
図2
図3
図4
図5