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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066567
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】毛髪用組成物、及び染毛方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20230509BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20230509BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20230509BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/41
A61K8/55
A61Q5/00
A61Q5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177225
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】592255176
【氏名又は名称】株式会社ミルボン
(72)【発明者】
【氏名】藤田 諭
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC531
4C083AC532
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC791
4C083AC792
4C083AC891
4C083AC892
4C083CC31
4C083CC36
4C083DD06
4C083DD23
4C083EE06
4C083EE26
(57)【要約】
【課題】銅イオンなどの金属イオンが存在する毛髪に対して、酸化染毛剤による毛髪の染色性を向上させることができる毛髪用組成物の提供、及び、前記毛髪用組成物を用いた染毛方法の提供。
【解決手段】
酸化染毛剤により染毛する前の毛髪に用いられる毛髪用組成物であって、グリシン又はその塩、タウリン又はその塩、セリン又はその塩、スレオニン又はその塩、アラニン又はその塩、ヒスチジン又はその塩、リシン又はその塩、グルタミン酸又はその塩、アルギニン又はその塩、フェニルアラニン又はその塩、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸又はその塩、エチレンジアミンジコハク酸又はその塩、及びジエチレントリアミン五酢酸又はその塩の群から選ばれる1種又は2種以上が配合された毛髪用組成物、並びに、当該毛髪用組成物を毛髪に用いた後に、酸化染毛剤で毛髪を染毛する染毛方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化染毛剤により染毛する前の毛髪に用いられる毛髪用組成物であって、
グリシン又はその塩、タウリン又はその塩、セリン又はその塩、スレオニン又はその塩、アラニン又はその塩、ヒスチジン又はその塩、リシン又はその塩、グルタミン酸又はその塩、アルギニン又はその塩、フェニルアラニン又はその塩、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸又はその塩、エチレンジアミンジコハク酸又はその塩、及びジエチレントリアミン五酢酸又はその塩の群から選ばれる1種又は2種以上が配合された毛髪用組成物。
【請求項2】
前記グリシン又はその塩、タウリン又はその塩、セリン又はその塩、スレオニン又はその塩、アラニン又はその塩、ヒスチジン又はその塩、リシン又はその塩、グルタミン酸又はその塩、アルギニン又はその塩、フェニルアラニン又はその塩、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸又はその塩、エチレンジアミンジコハク酸又はその塩、及びジエチレントリアミン五酢酸又はその塩の群から選ばれる1種又は2種以上の配合量が1質量%以上である、請求項1に記載の毛髪用組成物。
【請求項3】
少なくとも、グリシン又はその塩、タウリン又はその塩、セリン又はその塩、スレオニン又はその塩、及びアラニン又はその塩の群から選ばれる1種又は2種以上が配合された、請求項1又は2に記載の毛髪用組成物。
【請求項4】
グリシン又はその塩、タウリン又はその塩、セリン又はその塩、スレオニン又はその塩、及びアラニン又はその塩の群から選ばれる1種又は2種以上、並びに、
エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸又はその塩、及びエチレンジアミンジコハク酸又はその塩の群から選ばれる1種又は2種以上が配合された、請求項1~3のいずれか1項に記載の毛髪用組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の毛髪用組成物を毛髪に用いた後に、酸化染毛剤で毛髪を染毛する染毛方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化染毛剤により染毛する前の毛髪に用いられる毛髪用組成物、及び前記毛髪用組成物を用いた染毛方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪を染毛するために用いられる酸化染毛剤は、毛髪内に浸透させた酸化染料を酸化重合により染着させる染毛原理によるものであり、酸性染毛料等の他のヘアカラーリング剤に比して毛髪の色持ちの長期持続を実現する。
【0003】
酸化染毛剤を用いた染毛の例として、下記特許文献1には、ポリアクリル酸アミド、ベヘニルアルコール、及びポリオキシエチレンベヘニルエーテルを特定の量で酸化染毛剤等に含有させることで、染毛後の毛髪の艶等に優れた酸化染毛剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-043873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
染毛の対象となる毛髪は、美容習慣によって日常的に洗髪されているが、洗髪に使用される水道水には、銅イオンなどの金属イオンが含まれている。そのため、日常的な洗髪を通じて、毛髪に銅イオンなどの金属イオンが蓄積されている。
【0006】
そのような銅イオンなどの金属イオンが存在する毛髪に対して、酸化剤が配合された酸化染毛剤により染毛処理を行うと、染毛処理中に金属イオンの影響により酸化剤の酸化反応が促進されて酸化染料の分解が起こり、染色が薄くなることや、均一な染色とならないことや、変色(所望する色味とは異なる色味への染色)が生じるといった毛髪の染色性が低下する問題が生じることがあった。そのため、銅イオンなどの金属イオンが存在する毛髪に対して、酸化染毛剤による毛髪の染色性を向上することが要望されている。
【0007】
また、酸化染毛剤による毛髪の染色性を向上させるために、酸化染毛剤の配合成分などの種々の工夫がされている。しかし、酸化染毛剤を用いる前の毛髪に対して酸化染毛剤とは別の毛髪用組成物を用いて毛髪の状態を変化させ、酸化染毛剤による毛髪の染色性を向上する技術については、改善の余地があり、より新たな提案が要望されている。
【0008】
本発明の課題は、銅イオンなどの金属イオンが存在する毛髪に対しても、酸化染毛剤による毛髪の染色性を向上させることができる毛髪用組成物の提供である。また、本発明の別の課題は、前記毛髪用組成物を用いた染毛方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、酸化染毛剤により染毛される前の毛髪に対して、グリシン又はその塩、タウリン又はその塩、セリン又はその塩、スレオニン又はその塩、アラニン又はその塩、ヒスチジン又はその塩、リシン又はその塩、グルタミン酸又はその塩、アルギニン又はその塩、フェニルアラニン又はその塩、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸又はその塩、エチレンジアミンジコハク酸又はその塩、及びジエチレントリアミン五酢酸又はその塩の群から選ばれる1種又は2種以上が配合された毛髪用組成物を用いた後に、酸化染毛剤を用いた染毛処理を行えば、酸化染毛剤による毛髪の染色性が向上するという知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の毛髪用組成物は、酸化染毛剤により染毛される前の毛髪に用いられる毛髪用組成物であって、グリシン又はその塩、タウリン又はその塩、セリン又はその塩、スレオニン又はその塩、アラニン又はその塩、ヒスチジン又はその塩、リシン又はその塩、グルタミン酸又はその塩、アルギニン又はその塩、フェニルアラニン又はその塩、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸又はその塩、エチレンジアミンジコハク酸又はその塩、及びジエチレントリアミン五酢酸又はその塩の群から選ばれる1種又は2種以上が配合されたものである。
【0011】
本発明の毛髪用組成物は、酸化染毛剤による毛髪の染色性がより向上する観点から、グリシン又はその塩、タウリン又はその塩、セリン又はその塩、スレオニン又はその塩、アラニン又はその塩、ヒスチジン又はその塩、リシン又はその塩、グルタミン酸又はその塩、アルギニン又はその塩、フェニルアラニン又はその塩、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸又はその塩、エチレンジアミンジコハク酸又はその塩、及びジエチレントリアミン五酢酸又はその塩の群から選ばれる1種又は2種以上の配合量が1質量%以上であると好ましい。
【0012】
本発明の毛髪用組成物は、酸化染毛剤による毛髪の染色性がより向上する観点から、少なくとも、グリシン又はその塩、タウリン又はその塩、セリン又はその塩、スレオニン又はその塩、及びアラニン又はその塩の群から選ばれる1種又は2種以上が配合されたものが好ましい。
【0013】
本発明の毛髪用組成物は、酸化染毛剤による毛髪の染色性がより向上する観点から、グリシン又はその塩、タウリン又はその塩、セリン又はその塩、スレオニン又はその塩、及びアラニン又はその塩の群から選ばれる1種又は2種以上、並びに、
エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸又はその塩、及びエチレンジアミンジコハク酸又はその塩の群から選ばれる1種又は2種以上が配合されたものが好ましい。
【0014】
本発明の染毛方法は、上記のいずれかの毛髪用組成物を毛髪に用いた後に、酸化染毛剤により毛髪を染毛する染毛方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、酸化染毛剤による毛髪の染色性を向上させることができる毛髪用組成物を提供できる。また、本発明は、前記毛髪用組成物を用いた染毛方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態(以下、本実施形態という)に基づき、本発明を以下に説明する。
【0017】
<毛髪用組成物>
本実施形態の毛髪用組成物は、酸化染毛剤により染毛する前の毛髪に用いられ、グリシン又はその塩、タウリン又はその塩、セリン又はその塩、スレオニン又はその塩、アラニン又はその塩、ヒスチジン又はその塩、リシン又はその塩、グルタミン酸又はその塩、アルギニン又はその塩、フェニルアラニン又はその塩、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸又はその塩、エチレンジアミンジコハク酸又はその塩、及びジエチレントリアミン五酢酸又はその塩の群から選ばれる1種又は2種以上が配合された毛髪用組成物である。
酸化染毛剤により染毛する前の毛髪に本実施形態の毛髪用組成物を用いた後、酸化染毛剤による染毛処理を行えば、酸化染毛剤による毛髪の染色性が向上する。
【0018】
なお、用語「酸化染毛剤による毛髪の染色性」とは、酸化染毛剤を用いて毛髪を染毛した際の、濃染性(毛髪の染色の濃さ)、均染性(毛髪全体における均一な染色)、及び、変色の有無又はその程度(変色の有無、及び、変色がある場合はその程度)をいう。なお、「変色」とは、所望する色味とは異なる色味への染色をいう。以下の記載において、前記酸化染毛剤による毛髪の染色性を、単に「毛髪の染色性」と表記することがある。
また、用語「酸化染毛剤による毛髪の染色性の向上(毛髪の染色性の向上)」とは、比較する対象に比べて、濃染性及び均染性に優れ、変色がない又はその程度が少ないことをいう。
【0019】
以下の記載において、グリシン又はその塩、タウリン又はその塩、セリン又はその塩、スレオニン又はその塩、アラニン又はその塩、ヒスチジン又はその塩、リシン又はその塩、グルタミン酸又はその塩、アルギニン又はその塩、フェニルアラニン又はその塩、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸又はその塩、エチレンジアミンジコハク酸又はその塩、及びジエチレントリアミン五酢酸又はその塩を総称して、「グリシン等の特定成分」ということがある。
【0020】
本実施形態の毛髪用組成物におけるグリシン又はその塩、タウリン又はその塩、セリン又はその塩、スレオニン又はその塩、アラニン又はその塩、ヒスチジン又はその塩、リシン又はその塩、グルタミン酸又はその塩、アルギニン又はその塩、フェニルアラニン又はその塩、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸又はその塩、エチレンジアミンジコハク酸又はその塩、及びジエチレントリアミン五酢酸又はその塩の群から選ばれる1種又は2種以上の配合量(以下、グリシン等の特定成分の合計配合量と表記する場合がある)の下限値としては、毛髪の染色性がより向上する観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、2質量%以上がさらにより好ましく、3質量%以上が特に好ましい。また、本実施形態の毛髪用組成物におけるグリシン等の特定成分の合計配合量の上限値は、低コスト化の観点から、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
【0021】
(グリシン又はその塩)
本実施形態の毛髪用組成物は、1種又は2種以上のグリシン又はその塩が配合されたものとしてよい。前記グリシン又はその塩としては、例えば、グリシン、グリシン塩(グリシンのナトリウム塩、グリシンのカリウム塩、グリシンの塩酸塩など)が挙げられる。
【0022】
本実施形態の毛髪用組成物にグリシン又はその塩が配合される場合、毛髪の染色性がより向上する観点から、その配合量(グリシン及びグリシンの塩の両方が配合される場合はその合計配合量、次の上限値の配合量の記載において同じ)の下限値は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましい。また、本実施形態の毛髪用組成物にグリシン又はその塩が配合される場合、低コスト化の観点から、その配合量の上限値は、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
【0023】
(タウリン又はその塩)
本実施形態の毛髪用組成物は、1種又は2種以上のタウリン又はその塩が配合されたものとしてよい。前記タウリン又はその塩としては、例えば、タウリン、タウリン塩(タウリンのナトリウム塩、タウリンのカリウム塩、タウリンの塩酸塩、タウリンのタウリンナトリウム塩など)が挙げられる。
【0024】
本実施形態の毛髪用組成物にタウリン又はその塩が配合される場合、毛髪の染色性がより向上する観点から、その配合量(タウリン及びその塩の両方が配合される場合はその合計配合量、次の上限値の配合量の記載において同じ)の下限値は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましい。また、本実施形態の毛髪用組成物にタウリン又はその塩が配合される場合、低コスト化の観点から、その配合量の上限値は、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、7質量%以下がさらに好ましい。
【0025】
(セリン又はその塩)
本実施形態の毛髪用組成物は、1種又は2種以上のセリン又はその塩が配合されたものとしてよい。前記セリン又はその塩としては、例えば、セリン、セリン塩(セリンの塩酸塩など)が挙げられる。
【0026】
本実施形態の毛髪用組成物にセリン又はその塩が配合される場合、毛髪の染色性がより向上する観点から、その配合量(セリン及びその塩の両方が配合される場合はその合計配合量、次の上限値の配合量の記載において同じ)の下限値は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましい。また、本実施形態の毛髪用組成物にセリン又はその塩が配合される場合、低コスト化の観点から、その配合量の上限値は、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、7質量%以下がさらに好ましい。
【0027】
(スレオニン又はその塩)
本実施形態の毛髪用組成物は、1種又は2種以上のスレオニン又はその塩が配合されたものとしてよい。前記スレオニン又はその塩としては、例えば、スレオニン、スレオニン塩(スレオニンの塩酸塩など)が挙げられる。
【0028】
本実施形態の毛髪用組成物にスレオニン又はその塩が配合される場合、毛髪の染色性がより向上する観点から、その配合量(スレオニン及びスレオニンの塩の両方が配合される場合はその合計配合量、次の上限値の配合量の記載において同じ)の下限値は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましい。また、本実施形態の毛髪用組成物にスレオニン又はその塩が配合される場合、低コスト化の観点から、その配合量の上限値は、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、7質量%以下がさらに好ましい。
【0029】
(アラニン又はその塩)
本実施形態の毛髪用組成物は、1種又は2種以上のアラニン又はその塩が配合されたものとしてよい。前記アラニン又はその塩としては、例えば、アラニン、アラニン塩(アラニンのナトリウム塩、アラニンのカリウム塩、アラニンの塩酸塩など)が挙げられる。
【0030】
本実施形態の毛髪用組成物にアラニン又はその塩が配合される場合、毛髪の染色性がより向上する観点から、その配合量(アラニン及びアラニンの塩の両方が配合される場合はその合計配合量、次の上限値の配合量の記載において同じ)の下限値は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましい。また、本実施形態の毛髪用組成物にアラニン又はその塩が配合される場合、低コスト化の観点から、その配合量の上限値は、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、7質量%以下がさらに好ましい。
【0031】
(ヒスチジン又はその塩)
本実施形態の毛髪用組成物は、1種又は2種以上のヒスチジン又はその塩が配合されたものとしてよい。前記ヒスチジン又はその塩としては、例えば、ヒスチジン、ヒスチジン塩(ヒスチジンの塩酸塩など)が挙げられる。
【0032】
本実施形態の毛髪用組成物にヒスチジン又はその塩が配合される場合、毛髪の染色性がより向上する観点から、その配合量(ヒスチジン及びヒスチジンの塩の両方が配合される場合はその合計配合量、次の上限値の配合量の記載において同じ)の下限値は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましい。また、本実施形態の毛髪用組成物にヒスチジン又はその塩が配合される場合、低コスト化の観点から、その配合量の上限値は、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、7質量%以下がさらに好ましい。
【0033】
(リシン又はその塩)
本実施形態の毛髪用組成物は、1種又は2種以上のリシン又はその塩が配合されたものとしてよい。前記リシンは、HN-CH(CNH)-COOHで表される成分である。前記リシン又はその塩としては、例えば、リシン、リシン塩(リシンの塩酸塩など)が挙げられる。
【0034】
本実施形態の毛髪用組成物にリシン又はその塩が配合される場合、毛髪の染色性がより向上する観点から、その配合量(リシン及びリシンの塩の両方が配合される場合はその合計配合量、次の上限値の配合量の記載において同じ)の下限値は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましい。また、本実施形態の毛髪用組成物にリシン又はその塩が配合される場合、低コスト化の観点から、その配合量の上限値は、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、7質量%以下がさらに好ましい。
【0035】
(グルタミン酸又はその塩)
本実施形態の毛髪用組成物は、1種又は2種以上のグルタミン酸又はその塩が配合されたものとしてよい。前記グルタミン酸又はその塩としては、例えば、グルタミン酸、グルタミン酸(グルタミン酸のナトリウム塩、グルタミン酸のカリウム塩など)が挙げられる。
【0036】
本実施形態の毛髪用組成物にグルタミン酸又はその塩が配合される場合、毛髪の染色性がより向上する観点から、その配合量(グルタミン酸及びグルタミン酸の塩の両方が配合される場合はその合計配合量、次の上限値の配合量の記載において同じ)の下限値は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましい。また、本実施形態の毛髪用組成物にグルタミン酸又はその塩が配合される場合、低コスト化の観点から、その配合量の上限値は、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、7質量%以下がさらに好ましい。
【0037】
(アルギニン又はその塩)
本実施形態の毛髪用組成物は、1種又は2種以上のアルギニン又はその塩が配合されたものとしてよい。前記リシン又はその塩としては、例えば、アルギニン、アルギニン塩(アルギニンの塩酸塩など)が挙げられる。
【0038】
本実施形態の毛髪用組成物にアルギニン又はその塩が配合される場合、毛髪の染色性がより向上する観点から、その配合量(アルギニン及びアルギニンの塩の両方が配合される場合はその合計配合量、次の上限値の配合量の記載において同じ)の下限値は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましい。また、本実施形態の毛髪用組成物にアルギニン又はその塩が配合される場合、低コスト化の観点から、その配合量の上限値は、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、7質量%以下がさらに好ましい。
【0039】
(フェニルアラニン又はその塩)
本実施形態の毛髪用組成物は、1種又は2種以上のフェニルアラニン又はその塩が配合されたものとしてよい。前記フェニルアラニン又はその塩としては、例えば、フェニルアラニン、フェニルアラニン塩(フェニルアラニンの塩酸塩など)が挙げられる。
【0040】
本実施形態の毛髪用組成物にフェニルアラニン又はその塩が配合される場合、毛髪の染色性がより向上する観点から、その配合量(フェニルアラニン及びフェニルアラニンの塩の両方が配合される場合はその合計配合量、次の上限値の配合量の記載において同じ)の下限値は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。また、本実施形態の毛髪用組成物にフェニルアラニン又はその塩が配合される場合、低コスト化の観点から、その配合量の上限値は、2質量%以下が好ましく、1.8質量%以下がより好ましく、1.5質量%以下がさらに好ましい。
【0041】
(エチレンジアミン四酢酸又はその塩)
本実施形態の毛髪用組成物は、1種又は2種以上のエチレンジアミン四酢酸又はその塩が配合されたものとしてよい。前記エチレンジアミン四酢酸又はその塩としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸塩(例えば、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウムなど)、エチレンジアミン四酢酸のカリウム塩(エチレンジアミン四酢酸二カリウム、エチレンジアミン四酢酸三ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸四カリウムなど)など)が挙げられる。
【0042】
本実施形態の毛髪用組成物にエチレンジアミン四酢酸又はその塩が配合される場合、毛髪の染色性がより向上する観点から、その配合量(エチレンジアミン四酢酸及びエチレンジアミン四酢酸の塩の両方が配合される場合はその合計配合量、次の上限値の配合量の記載において同じ)の下限値は、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上がさらに好ましい。また、本実施形態の毛髪用組成物にエチレンジアミン四酢酸又はその塩が配合される場合、その配合量の上限値は、低コスト化の観点から、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。なお、配合量の上限値としては、上記別の観点である毛髪の染色性がより向上する観点から、8質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下がより好ましく、0.8質量%以下が特に好ましい。
【0043】
(ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩)
本実施形態の毛髪用組成物は、1種又は2種以上のヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩が配合されたものとしてよい。前記ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩としては、例えば、ヒドロキシエタンジホスホン酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸の塩(例えば、ヒドロキシエタンジホスホン酸のナトリウム塩(ヒドロキシエタンジホスホン酸三ナトリウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウムなど)、ヒドロキシエタンジホスホン酸のカリウム塩(ヒドロキシエタンジホスホン酸三カリウム、ヒドロキシエタンジホスホン酸四カリウムなど)など)が挙げられる。
【0044】
本実施形態の毛髪用組成物にヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩が配合される場合、毛髪の染色性がより向上する観点から、その配合量(ヒドロキシエタンジホスホン酸及びヒドロキシエタンジホスホン酸の塩の両方が配合される場合はその合計配合量、次の上限値の配合量の記載において同じ)の下限値は、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上がさらに好ましい。また、本実施形態の毛髪用組成物にヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩が配合される場合、低コスト化の観点から、その配合量の上限値は、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
【0045】
(エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸又はその塩)
本実施形態の毛髪用組成物は、1種又は2種以上のエチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸又はその塩が配合されたものとしてよい。
前記エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸又はその塩としては、例えば、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸塩(例えば、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸のナトリウム塩(エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三ナトリウムなど)、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸のカリウム塩(エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸三カリウムなど)など)が挙げられる。
【0046】
本実施形態の毛髪用組成物にエチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸又はその塩が配合される場合、毛髪の染色性がより向上する観点から、その配合量(エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸及びエチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸の塩の両方が配合される場合はその合計配合量、次の上限値の配合量の記載において同じ)の下限値は、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上がさらに好ましい。また、本実施形態の毛髪用組成物にエチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸又はその塩が配合される場合、低コスト化の観点から、その配合量の上限値は、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
【0047】
(エチレンジアミンジコハク酸又はその塩)
本実施形態の毛髪用組成物は、1種又は2種以上のエチレンジアミンジコハク酸又はその塩が配合されたものとしてよい。前記エチレンジアミンジコハク酸又はその塩としては、例えば、エチレンジアミンジコハク酸、エチレンジアミンジコハク酸塩(例えば、エチレンジアミンジコハク酸のナトリウム塩(エチレンジアミンジコハク酸三ナトリウムなど)、エチレンジアミンジコハク酸のカリウム塩(エチレンジアミンジコハク酸三カリウムなど)など)が挙げられる。
【0048】
本実施形態の毛髪用組成物にエチレンジアミンジコハク酸又はその塩が配合される場合、毛髪の染色性がより向上する観点から、その配合量(エチレンジアミンジコハク酸及びエチレンジアミンジコハク酸の塩の両方が配合される場合はその合計配合量、次の上限値の配合量の記載において同じ)の下限値は、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上がさらに好ましい。また、本実施形態の毛髪用組成物にエチレンジアミンジコハク酸又はその塩が配合される場合、低コスト化の観点から、その配合量の上限値は、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
【0049】
(ジエチレントリアミン五酢酸又はその塩)
本実施形態の毛髪用組成物は、1種又は2種以上のジエチレントリアミン五酢酸又はその塩が配合されたものとしてよい。前記ジエチレントリアミン五酢酸又はその塩としては、例えば、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸塩(例えば、ジエチレントリアミン五酢酸のナトリウム塩(ジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウムなど)、ジエチレントリアミン五酢酸のカリウム塩(ジエチレントリアミン五酢酸五カリウムなど)など)が挙げられる。
【0050】
本実施形態の毛髪用組成物にジエチレントリアミン五酢酸又はその塩が配合される場合、毛髪の染色性がより向上する観点から、その配合量(ジエチレントリアミン五酢酸及びジエチレントリアミン五酢酸の塩の両方が配合される場合はその合計配合量、次の上限値の配合量の記載において同じ)の下限値は、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上がさらに好ましい。また、本実施形態の毛髪用組成物にジエチレントリアミン五酢酸又はその塩が配合される場合、低コスト化の観点から、その配合量の上限値は、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
【0051】
(群1)
本実施形態の毛髪用組成物は、毛髪の染色性がより向上する観点から、グリシン等の特定成分として、少なくとも、グリシン又はその塩、タウリン又はその塩、セリン又はその塩、スレオニン又はその塩、及びアラニン又はその塩の群(以下、群1ということがある)から選ばれる1種又は2種以上が配合されたものが好ましい。
本実施形態の毛髪用組成物におけるグリシン又はその塩、タウリン又はその塩、セリン又はその塩、スレオニン又はその塩、及びアラニン又はその塩の群から選ばれる1種又は2種以上の配合量(群1から2種以上が配合される場合はその合計配合量、次の上限値の配合量の記載において同じ)の下限値としては、毛髪の染色性がより向上する観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、3質量%以上が特に好ましい。また、本実施形態の毛髪用組成物におけるグリシン又はその塩、タウリン又はその塩、セリン又はその塩、スレオニン又はその塩、及びアラニン又はその塩の群から選ばれる1種又は2種以上の配合量の上限値は、低コスト化の観点から、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
【0052】
本実施形態の毛髪用組成物は、毛髪の染色性がより向上する観点から、グリシン等の特定成分として、少なくともグリシン又はその塩が配合されたものがより好ましい。また、本実施形態の毛髪用組成物は、上記同様の観点から、グリシン等の特定成分として、少なくとも、グリシン又はその塩、及び、タウリン又はその塩の組み合わせが配合されたものが好ましい。
【0053】
(群2)
本実施形態の毛髪用組成物は、毛髪の染色性がより向上する観点から、グリシン等の特定成分として、少なくとも、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸又はその塩、及びエチレンジアミンジコハク酸又はその塩の群(以下、群2ということがある)から選ばれる1種又は2種以上が配合されたものが好ましい。
本実施形態の毛髪用組成物におけるエチレンジアミン四酢酸又はその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸又はその塩、及びエチレンジアミンジコハク酸又はその塩の群から選ばれる1種又は2種以上の配合量(群2から2種以上が配合される場合はその合計配合量、次の上限値の配合量の記載において同じ)の下限値としては、毛髪の染色性がより向上する観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、1質量%以上が特に好ましい。また、本実施形態の毛髪用組成物におけるエチレンジアミン四酢酸又はその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸又はその塩、及びエチレンジアミンジコハク酸又はその塩の群から選ばれる1種又は2種以上の配合量の上限値は、低コスト化の観点から、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
【0054】
本実施形態の毛髪用組成物は、毛髪の脱色力に優れる観点から、グリシン等の特定成分として、少なくともヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩が配合されたものがより好ましい。なお、脱色力とは、酸化染毛剤による染毛処理における毛髪に存在するメラニン色素の脱色性をいう。
【0055】
(群1及び群2の組み合わせ)
本実施形態の毛髪用組成物は、毛髪の染色性がより向上する観点から、グリシン等の特定成分として、グリシン又はその塩、タウリン又はその塩、セリン又はその塩、スレオニン又はその塩、及びアラニン又はその塩の群から選ばれる1種又は2種以上、並びに、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸又はその塩、及びエチレンジアミンジコハク酸又はその塩の群から選ばれる1種又は2種以上が配合されたものが好ましい。
【0056】
本実施形態の毛髪用組成物は、毛髪の染色性がより向上する観点から、グリシン等の特定成分として、グリシン又はその塩、及び、タウリン又はその塩の組み合わせと、エチレンジアミン四酢酸又はその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸又はその塩、及びエチレンジアミンジコハク酸又はその塩の群から選ばれる1種又は2種以上が配合されたものがより好ましい。
【0057】
本実施形態の毛髪用組成物は、均染性及び毛髪の脱色力に優れる観点から、グリシン等の特定成分として、以下[1]~[3]の組み合わせのいずれかが少なくとも配合されたものが好ましい。
[1]グリシン又はその塩、及び、ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩の組み合わせ
[2]タウリン又はその塩、及び、ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩の組み合わせ
[3]グリシン又はその塩、及び、タウリン又はその塩、及び、ヒドロキシエタンジホスホン酸又はその塩の組み合わせ
【0058】
(任意成分)
本実施形態の毛髪用組成物は、グリシン等の特定成分以外の成分(以下、任意成分という)が任意に配合されたものとしてよい。任意成分は、本実施形態の毛髪用組成物の剤型などに応じて、種類、配合量を適宜設定することができる。任意成分としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、アルコール、多価アルコール、糖類、油脂、エステル油、脂肪酸、炭化水素、ロウ、シリコーン、合成高分子化合物、半合成高分子化合物、天然高分子化合物、蛋白、動植物抽出物、微生物由来物、無機化合物、香料、防腐剤、紫外線吸収剤、色素、還元剤、酸化剤、酸、アルカリ、色素、水などである。
【0059】
(水)
本実施形態の毛髪用組成物には、グリシン等の特定成分の配合を容易にする観点から、水が配合されたものが好ましい。本実施形態の毛髪用組成物に配合される水の配合量は、特に限定されず、適宜設定すればよいが、例えば、下限値が60質量%以上であり、上限値が99質量%以下である。
【0060】
(多価アルコール)
本実施形態の毛髪用組成物には、毛髪用組成物の低温での保存安定性を高める観点から、多価アルコールの1種又は2種以上が配合されたものが好ましい。前記多価アルコールとしては、例えば、炭素数2~8の多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ブチレングリコール)などが挙げられる。前記多価アルコールの配合量としては、例えば、下限値が0.1質量%以上であり、上限値が15質量%以下である。
【0061】
(剤型)
本実施形態の毛髪用組成物の剤型は、特に制限はなく、液状、クリーム状、ゲル状、スプレー状、フォーム状などの各種の剤型とすることができる。本実施形態の毛髪用組成物の剤型は、毛髪用組成物を毛髪に対して均一に塗布しやすい観点から液状が好ましく、適度な粘性により毛髪への塗布が容易となる観点からクリーム状又はゲル状が好ましい。
【0062】
(粘度)
本実施形態の毛髪用組成物の粘度は、毛髪用組成物の剤型などに応じて適宜設定すればよい。毛髪用組成物の粘度は、特に限定されないが、B型粘度計を使用して、適宜のローターを用いて25℃で計測した60秒後の粘度が、例えば、1mPa・s以上50000mPa・s以下である。
なお、本実施形態の毛髪用組成物をクリーム状又はゲル状とした場合における2剤の粘度は、例えば、1000mPa・s以上50000mPa・s以下である。また、本実施形態の毛髪用組成物を液状とした場合における1剤の粘度は、例えば、100mPa・s以下である。
【0063】
(pH)
本実施形態の毛髪用組成物の25℃におけるpHの値は、適宜設定すればよく、例えば、5以上12以下である。前記25℃におけるpHの値は、25℃とした本実施形態の毛髪用組成物を、公知のpHメーターで測定した値である。
【0064】
(製品形態)
本実施形態の毛髪用組成物の製品形態としては、例えば、酸化染毛剤の染毛処理前に用いられる前処理剤である。
【0065】
(製造方法)
本実施形態の毛髪用組成物の製造方法は、毛髪用組成物の公知の製造方法により、製造することができる。前記製造方法の一例としては、任意成分として水を用いた場合に、適宜の配合量としたグリシン等の特定成分と水とを混合して製造する方法である。
【0066】
(使用方法)
本実施形態の毛髪用組成物は、酸化染毛剤により染毛される前の毛髪に、適宜の量で塗布、噴霧などの方法により用いることができる。本実施形態の毛髪用組成物は、毛髪に用いた後に洗い流す使用態様としてもよく、洗い流さない使用態様としてもよい。本実施形態の毛髪用組成物は、毛髪の染色性がより向上する観点から、毛髪に用いた後に洗い流さない使用態様が好ましい。
本実施形態の毛髪用組成物を用いた後は、続いて、後述する酸化染毛剤による公知の染毛処理により、毛髪が染毛される。
【0067】
本実施形態の毛髪用組成物を毛髪に用いた後は、毛髪を濡れた状態で酸化染毛剤を用いて染毛処理してもよく、毛髪を乾燥させた状態で酸化染毛剤を用いて染毛処理してもよい。なお、本実施形態の毛髪用組成物を毛髪に用いた後は、毛髪を濡れた状態で酸化染毛剤を用いて染毛処理すると、酸化染毛剤が毛髪に塗布しやすく染毛処理が容易となる観点から好ましい。
【0068】
(対象毛髪)
本実施形態の毛髪用組成物を用いる対象の毛髪は、酸化染毛剤により染毛される前の毛髪である。なお、「酸化染毛剤により染毛される前の毛髪」とは、毛髪を染毛する施術工程において、酸化染毛剤により染毛処理が行われる前の毛髪を意味する。
前記酸化染毛剤により染毛される前の毛髪としては、酸化染毛剤により染毛された履歴のある毛髪であってもよく、酸化染毛剤などの化学処理履歴のない毛髪であってもよい。
【0069】
(酸化染毛剤)
前記酸化染毛剤としては、公知の酸化染毛剤であるとよい。酸化染毛剤は、例えば、酸化染料、アルカリ剤及び酸化剤が配合されたアルカリ性のものが挙げられる。なお、酸化染毛剤の剤型は、毛髪への塗布、垂れ落ち等のハンドリング性の観点から、クリーム状がよい。
【0070】
前記酸化染料は、酸化反応により単独で発色する公知の染料中間体から選択した1種又は2種以上を用いることができる。染料中間体としては、フェニレンジアミン誘導体(例えば、硫酸トルエン-2,5-ジアミン、塩酸ニトロパラフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミンなど)などが挙げられる。また、酸化染料として、染料中間体により酸化されて色調を呈する公知のカップラーから選択された1種又は2種以上を用いても良い。カップラーとしては、フェニレンジアミン誘導体(塩酸2,4-ジアミノフェノキシエタノール、塩酸メタフェニレンジアミンなど)、アミノフェノール誘導体(5-アミノオルトクレゾール、メタアミノフェノールなど)、レゾルシンなどが挙げられる。
酸化染毛剤における前記酸化染料の配合量は、適宜設定すればよいが、例えば、下限値が0.001質量%以上であり、上限値が5質量%以下である。
【0071】
前記アルカリ剤は、酸化染毛剤に含まれる酸化剤の作用を促進するとともに、毛髪を膨潤させて毛髪への染料の浸透性を向上させることにより、毛髪の染色性を向上させる。前記アルカリ剤としては、例えば、金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)、金属リン酸塩(例えば、リン酸ナトリウムなど)、アンモニア、アンモニウム塩(例えば、炭酸アンモニウム、硫酸アンモニウムなど)、アルカノールアミン(例えば、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミンなど)が挙げられる。酸化染毛剤における前記アルカリ剤の配合量は、適宜設定すればよいが、例えば、下限値が0.1質量以上であり、上限値が10質量以下である。
【0072】
前記酸化剤は、例えば、過酸化水素が挙げられる。酸化染毛剤における前記酸化剤の配合量は、適宜設定すればよいが、例えば、下限値が0.1質量%以上であり、上限値が5質量%以下である。
【0073】
酸化染毛剤としては、例えば、酸化染料及びアルカリ剤が配合された剤と、酸化剤が配合された別の剤とを混合して染毛に用いる2剤式酸化染毛剤が挙げられる。2剤式酸化染毛剤における各剤の酸化染料、アルカリ剤、酸化剤の配合量は、剤型などに応じて適宜設定すればよい。
【0074】
<染毛方法>
本実施形態の染毛方法は、上述した本実施形態の毛髪用組成物を毛髪に用いた後に、酸化染毛剤で毛髪を染毛する染毛方法である。
【0075】
本実施形態の染毛方法は、本実施形態の毛髪用組成物を酸化染毛剤により染毛される前の毛髪に用いる染毛前処理工程と、本実施形態の毛髪用組成物を用いた後の毛髪に酸化染毛剤を用いる酸化染毛処理工程とを備える。
【0076】
(染毛前処理工程)
前記染毛前処理工程は、上述した本実施形態の毛髪用組成物の使用方法と同様に、酸化染毛剤により染毛される前の毛髪に、適宜の量で塗布、噴霧などの方法により用いる工程である。本実施形態の毛髪用組成物は、毛髪に用いた後に洗い流す使用態様としてもよく、洗い流さない使用態様としてもよい。本実施形態の毛髪用組成物は、毛髪の染色性がより向上する観点から、毛髪に用いた後に洗い流さない使用態様が好ましい。
【0077】
(酸化染毛処理工程)
前記酸化染毛処理工程は、本実施形態の毛髪用組成物を用いた後の毛髪に、上述した酸化染毛剤を用いて毛髪を染毛する工程である。染毛方法としては、酸化染毛剤を用いた公知の染毛処理により毛髪を染毛すればよい。
【実施例0078】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0079】
(実施例1~25、比較例1~2、参考例1)
実施例1~25、比較例1~2、参考例1の毛髪用組成物を、下記表1~8の組成となるように、常法により各成分を混合して調製した。なお、表1~8に示す成分の数値は質量%である。また、成分の欄の「-」の表記は、その成分が未配合であることを示す。
【0080】
調製した各毛髪用組成物を用いて、次に示す毛髪処理を行って、毛髪の染色性を評価した。
【0081】
(毛髪処理)
水道水を入れたヘアカラーカップ(容量300mL)を2つ用意し、一方に十円硬貨(10円青銅貨幣)を1枚入れ、他方には十円硬貨を入れなかった。
つぎに、実施例1~25、比較例1~2の毛髪用組成物の評価に用いるため、十円硬貨を入れたヘアカラーカップ中に、複数のヤク毛の毛束(ビューラックス社製:品番BM―YK―A、長さ10cm、重さ1g)を3~7日間浸漬させて、毛束の銅処理を行った。また、参考例1dの毛髪用組成物の評価に用いるため、十円硬貨を入れていないヘアカラーカップ中に、ヤク毛の毛束(ビューラックス社製:品番BM―YK―A、長さ10cm、重さ1g)を3~7日間浸漬させた。
銅処理を行った毛束又は銅処理を行わなかった毛束をヘアカラーカップから取り出し、それぞれタオルドライした。次に、銅処理を行った毛束を用いて、表1~8に示す組成の実施例又は比較例の各毛髪用組成物を毛束に対してそれぞれ1g塗布し、均一に馴染ませた。また、銅処理を行わなかった毛束に、表8に示す組成の参考例1の毛髪用組成物を1g塗布し、均一に馴染ませた。続いて、ミルボン社製のオルディーブ アディクシー 9-SA(酸化染料及びアルカリ剤を配合)と、オルディーブ アディクシー オキシダン 6.0(過酸化水素を配合)とを等量で混合した酸化染毛剤を、各毛束に対して2g塗布し、室温で20分静置して酸化染毛処理を行った。酸化染毛処理後、毛束を水ですすいで酸化染毛剤を洗い流し、ドライヤーで各毛束を乾燥させた。
乾燥後の各毛束を用いて、下記評価方法及び評価基準に従い、毛髪の染色性の評価を行った。
【0082】
(評価方法)
毛髪の染色性の評価は、日常的に酸化染毛剤の評価を行っているパネラー5名が目視の官能評価で染色性(濃染性(毛髪の染色の濃さ)、均染性(毛髪全体における均一な染色)、変色の有無又はその程度(変色の有無、及び、変色がある場合はその程度)の3要素)を総合的に判断した後、パネラー5名の合議により、下記の評価基準に従って評価した。なお、変色とは、所望する色味とは異なる色味への染色をいう。
【0083】
(評価基準)
○ :評価対象とした毛束が、基準とした毛束に比べて、毛髪の染色性に優れる。
同等:評価対象とした毛束が、基準とした毛束に比べて、毛髪の染色性が同等。
× :評価対象とした毛束が、基準とした毛束に比べて、毛髪の染色性に劣る。
【0084】
(評価結果)
実施例1~25、比較例1~2、参考例1の各毛髪用組成物を用いた際の毛髪の染色性の評価結果を以下の表1~8に示す。なお、表1~8において、評価の欄が基準と表記されているのは各例を用いた毛束を基準にしたことを示しており、評価の欄が斜線表記と表記されているのは便宜のためであり、いずれも評価の各基準に比べて×の評価であることを示している。
【0085】
(実施例1~9、比較例1、2)
実施例1~9、比較例1、2の毛髪用組成物を用いた際の評価結果を表1に示す。評価の基準は、比較例1、実施例9、実施例6、又は実施例5の毛髪用組成物である。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示す結果から、実施例1~9の毛髪用組成物を用いた場合は、比較例1、2の毛髪用組成物を用いた場合に比べて、毛髪の染色性に優れることが分かる。また、評価の基準を実施例5、6、9の毛髪用組成物とした場合、毛髪の染色性により優れる順としては、実施例1、実施例2~5、実施例6、実施例7~9の毛髪用組成物の順であることが分かる。
【0088】
(実施例10、比較例1、3)
実施例10、比較例1、3の毛髪用組成物を用いた際の評価結果を表2に示す。評価の基準は、比較例1の毛髪用組成物である。
【0089】
【表2】
【0090】
表2に示す結果から、実施例10の毛髪用組成物を用いた場合は、比較例1、3の毛髪用組成物を用いた場合に比べて、毛髪の染色性に優れることが分かる。
【0091】
(実施例2、実施例11~13、比較例1)
実施例2、実施例11~13、比較例1の毛髪用組成物を用いた際の評価結果を表3に示す。評価の基準は、比較例1又は実施例13の毛髪用組成物である。
【0092】
【表3】
【0093】
表3に示す結果から、実施例2、実施例11~13の毛髪用組成物を用いた場合は、比較例1の毛髪用組成物を用いた場合に比べて、毛髪の染色性に優れることが分かる。また、実施例2、11、12の毛髪用組成物は、実施例13の毛髪用組成物に比べて、毛髪の染色性により優れることが分かる。
【0094】
(実施例14~18、比較例1)
実施例14~18、比較例1の毛髪用組成物を用いた際の評価結果を表4に示す。評価の基準は、比較例1又は実施例18の毛髪用組成物である。
【0095】
【表4】
【0096】
表4に示す結果から、実施例14~18の毛髪用組成物を用いた場合は、比較例1の毛髪用組成物を用いた場合に比べて、毛髪の染色性に優れることが分かる。また、実施例14~17の毛髪用組成物は、実施例18の毛髪用組成物に比べて、毛髪の染色性により優れることが分かる。
【0097】
(実施例14、実施例19~21、比較例1)
実施例14、実施例19~21、比較例1の毛髪用組成物を用いた際の評価結果を表5に示す。評価の基準は、比較例1又は実施例21の毛髪用組成物である。
【0098】
【表5】
【0099】
表5に示す結果から、実施例14、実施例19~21の毛髪用組成物を用いた場合は、比較例1の毛髪用組成物を用いた場合に比べて、毛髪の染色性に優れることが分かる。また、実施例14の毛髪用組成物をは、実施例21の毛髪用組成物に比べて、毛髪の染色性により優れることが分かる。
【0100】
(実施例22、比較例1)
実施例22、比較例1の毛髪用組成物を用いた際の評価結果を表6に示す。評価の基準は、比較例1の毛髪用組成物である。
【0101】
【表6】
【0102】
表6に示す結果から、実施例22の毛髪用組成物を用いた場合は、比較例1の毛髪用組成物を用いた場合に比べて、毛髪の染色性に優れることが分かる。
【0103】
(実施例23~25、比較例1)
実施例23~25、比較例1の毛髪用組成物を用いた際の評価結果を表7に示す。評価の基準は、比較例1又は実施例25の毛髪用組成物である。
【0104】
【表7】
【0105】
表7に示す結果から、実施例23~25の毛髪用組成物を用いた場合は、比較例1の毛髪用組成物を用いた場合に比べて、毛髪の染色性に優れることが分かる。また、実施例23、24の毛髪用組成物は、実施例25の毛髪用組成物に比べて、毛髪の染色性により優れることが分かる。
【0106】
(比較例1、参考例1)
比較例1、参考例1の毛髪用組成物を用いた際の評価結果を表8に示す。評価の基準は、参考例1の毛髪用組成物である。
【0107】
【表8】
【0108】
表8に示す結果から、銅処理を行った毛束に対して比較例1の毛髪用組成物を用いた染毛処理は、銅処理を行わなかった毛束に対して参考例1の毛髪用組成物を用いた染毛処理に比べて、毛髪の染色性が劣ることが分かる。なお、比較例1及び参考例1は、いずれも毛髪用組成物として精製水のみを用いており、酸化染毛処理を行った毛束が銅処理の有無において相違する。そして、銅処理を行わなかった参考例1の毛髪用組成物を用いた染毛処理の結果は、毛束全体が濃い青色に均一に染色されていたが、その一方、銅処理を行った毛束を用いた比較例1の毛髪用組成物を用いた染毛処理の結果は、毛束において薄い青色に染色される箇所や、薄い黄色に染色される箇所があり、不均一で変色が見られ、毛髪の染色性が低下していた。また、比較例1の酸化染毛処理において、処理中に毛束に泡立ちが生じたことから、過酸化水素の酸化反応が過剰に起きたと考えられる(参考例1の酸化染毛処理は泡立ちが起きなかった)。
【0109】
以下に本実施形態の毛髪用組成物の処方例1~4を示す。
【0110】
(処方例1)
グリシン 2質量%
タウリン 3質量%
ヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム 1質量%
精製水 94質量%
【0111】
(処方例2)
グリシン 5質量%
ヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム 1質量%
精製水 94質量%
【0112】
(処方例3)
グリシン 3質量%
タウリン 3質量%
精製水 94質量%
【0113】
(処方例4)
タウリン 3質量%
ヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム 3質量%
精製水 94質量%