IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 田中シビルテック株式会社の特許一覧 ▶ 石川県公立大学法人の特許一覧

<>
  • 特開-摩耗試験装置および摩耗試験方法 図1
  • 特開-摩耗試験装置および摩耗試験方法 図2
  • 特開-摩耗試験装置および摩耗試験方法 図3
  • 特開-摩耗試験装置および摩耗試験方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066576
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】摩耗試験装置および摩耗試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/56 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
G01N3/56 H
G01N3/56 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177237
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】315000098
【氏名又は名称】田中シビルテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】511169999
【氏名又は名称】石川県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】松田 展也
(72)【発明者】
【氏名】森 丈久
(57)【要約】
【課題】装置構成をコンパクト化および簡単化することができる摩耗試験装置および摩耗試験方法を提供する。
【解決手段】摩耗試験装置100は、摩耗試験の対象である供試体WKを載置する試験台101が第1水槽104a~104cを構成する有底円筒状の第1水槽本体105内に設けられている。供試体WK上には、供試体WK上を転動する転動球140が配置されている。第1水槽本体105には、転動球140に向けて転動水Wを噴射する噴射口106が形成されている。噴射口106には、配水管132を介して送水ポンプ131が接続されている。第1水槽104a~104cおよび送水ポンプ131は、上方が開口した箱状の第2水槽120内に収容されている。送水ポンプ131は、第2水槽120内に溢れ出た転動水Wを回収して第1水槽本体105に供給して転動球140を転動させる。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩耗試験の対象となる供試体を載置するための試験台と、
前記試験台上に載置された前記供試体上に載置されてこの供試体上を転動する球状の転動球と、
前記試験台および前記供試体上の前記転動球の周囲を囲む筒状に形成されてこれらを水没させる第1水槽と、
前記第1水槽内に水からなる転動水を噴射して前記転動球を転動させる水噴射装置とを備えることを特徴とする摩耗試験装置。
【請求項2】
請求項1に記載した摩耗試験装置において、
前記水噴射装置は、
前記第1水槽の壁面に前記転動水の噴射孔を有していることを特徴とする摩耗試験装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した摩耗試験装置において、さらに、
前記第1水槽を収容してこの第1水槽から溢れる前記転動水を受ける第2水槽を備えることを特徴とする摩耗試験装置。
【請求項4】
請求項3に記載した摩耗試験装置において、
前記水噴射装置は、
前記第2水槽内の前記転動水を回収して前記第1水槽に供給することを特徴とする摩耗試験装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載した摩耗試験装置において、
前記第2水槽は、
複数の前記第1水槽を収容することを特徴とする摩耗試験装置。
【請求項6】
請求項5に記載した摩耗試験装置において、
前記第2水槽は、
互いに隣接配置された2つの前記第1水槽の間における前記第1水槽の上端部間および下端部間のうちの少なくとも一方に前記転動水の流れを阻止する隔壁を有することを特徴とする摩耗試験装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のうちのいずれか1つに記載した摩耗試験装置において、
前記第1水槽は、
互いに高さの異なる複数種類の前記試験台を選択的に取り付け可能であることを特徴とする摩耗試験装置。
【請求項8】
筒状に形成された第1水槽内に設けられた試験台上に摩耗試験の対象となる供試体を配置する工程と、
前記試験台上に配置された前記供試体上に球状の転動球を配置する工程と、
前記第1水槽内に水からなる転動水を供給して前記転動球を前記供試体上で転動させる工程とを含むことを特徴とする摩耗試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物質の耐摩耗性を試験する摩耗試験装置および摩耗試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、物質、例えば、モルタル、コンクリートまたはセラミックの耐摩耗性を試験する摩耗試験装置がある。例えば、下記特許文献1には、有底筒状の容器内に配置したコンクリート製の供試体の上方に容器内の水をかき混ぜるために回転駆動する羽根状のパドルが設けられた摩耗試験装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06-80449号公報
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された摩耗試験装置においては、供試体上の鉄球を転動させるための水流を生成するために大きなパドルが必要になり装置構成が大型化かつ複雑化するという問題がある。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、装置構成をコンパクト化および簡単化することができる摩耗試験装置および摩耗試験方法を提供することにある。
【発明の概要】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、摩耗試験の対象となる供試体を載置するための試験台と、試験台上に載置された供試体上に載置されてこの供試体上を転動する球状の転動球と、試験台および供試体上の転動球の周囲を囲む筒状に形成されてこれらを水没させる第1水槽と、第1水槽内に水からなる転動水を噴射して転動球を転動させる水噴射装置とを備えることにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、摩耗試験装置は、転動球を水流によって供試体上を転動させるため、転動球(従来技術における鉄球)上にパドルおよびパドルを作動させるための機構が不要となり、装置構成をコンパクト化および簡単化することができる。特に、本発明に係る摩耗試験装置においては、大きな転動球を転動させる際においても大きなパドルが不要となり、装置構成を大幅にコンパクト化および簡単化することができ、運搬および設置も容易にすることができる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、前記摩耗試験装置において、水噴射装置は、第1水槽の壁面に転動水の噴射孔を有していることにある。
【0009】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、摩耗試験装置は、水噴射装置が第1水槽の壁面に転動水の噴射孔を有しているため、第1水槽の内部空間に転動水を噴射させるための配管およびノズルなどの機械的構成が不要となり第1水槽のコンパクト化および簡単化することができる。また、本発明に係る摩耗試験装置においては、第1水槽の内に転動水を噴射させるための機械的構成が不要となるため、この機械的構成に転動球が衝突するリスクも解消することができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記摩耗試験装置において、さらに、第1水槽を収容してこの第1水槽から溢れる転動水を受ける第2水槽を備えることにある。
【0011】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、摩耗試験装置は、第1水槽を収容してこの第1水槽から溢れる転動水を受ける第2水槽を備えているため、第1水槽内からの転動水の飛散による周囲の汚損を心配することなく第1水槽内に転動水を噴射して転動球を転動させることができるとともに、飛散した転動水を回収することもできる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記摩耗試験装置において、水噴射装置は、第2水槽内の転動水を回収して第1水槽に供給することにある。
【0013】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、摩耗試験装置は、水噴射装置が第2水槽内の転動水を回収して第1水槽に供給しているため、転動水を効率的に使用することができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記摩耗試験装置において、第2水槽は、複数の第1水槽を収容することにある。
【0015】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、摩耗試験装置は、第2水槽が複数の第1水槽を収容可能に構成されているため、複数の供試体について効率的に摩耗試験を行うことができる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、前記摩耗試験装置において、第2水槽は、互いに隣接配置された2つの第1水槽の間における第1水槽の上端部間および下端部間のうちの少なくとも一方に転動水の流れを阻止する隔壁を有することにある。
【0017】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、摩耗試験装置は、第2水槽内に互いに隣接配置された2つの第1水槽の間における第1水槽の上端部間および下端部間のうちの少なくとも一方に転動水の流れを阻止する隔壁を有しているため、第1水槽の上端部間に隔壁を有した場合には第1水槽内から飛散した転動水が他の第1水槽内に進入することを防止することができ、第1水槽の下端部間に隔壁を有した場合には第1水槽内から流出した転動水に含まれる粉塵が他の第1水槽が配置されている領域内に進入することを防止することができる。
【0018】
また、本発明の他の特徴は、前記摩耗試験装置において、第1水槽は、互いに高さの異なる複数種類の試験台を選択的に取り付け可能であることにある。
【0019】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、摩耗試験装置は、第1水槽が互いに高さの異なる複数種類の試験台を選択的に取り付け可能であるため、供試体の厚さに応じて試験台の高さを選択することで供試体の高さを調整して転動球の転がり易さを調整することができる。
【0020】
また、本発明は、摩耗試験装置の発明として実施できるばかりでなく、供試体の摩耗試験方法の発明としても実施できるものである。
【0021】
具体的には、摩耗試験方法は、筒状に形成された第1水槽内に設けられた試験台上に摩耗試験の対象となる供試体を配置する工程と、試験台上に配置された供試体上に球状の転動球を配置する工程と、第1水槽内に水からなる転動水を供給して転動球を供試体上で転動させる工程とを含むようにすればよい。これによれば、摩耗試験方法は、上記摩耗試験装置と同様の作用効果を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る摩耗試験装置の外観構成の概略を示す平面図である。
図2図1に示す摩耗試験装置の外観構成の概略を示す正面図である。
図3図2に示す摩耗試験装置における第2水槽の壁面の一部を省略して内部構成を示した断面図である。
図4図1に示す4-4線から見た摩耗試験装置の内部構成を示す片側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る摩耗試験装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る摩耗試験装置100の外観構成の概略を示す平面図である。また、図2は、図1に示す摩耗試験装置100の外観構成の概略を示す正面図である。また、図3は、図2に示す摩耗試験装置100における第2水槽120の壁面の一部を省略して内部構成を示した断面図である。また、図4は、図1に示す4-4線から見た摩耗試験装置100の内部構成を示す片側断面図である。
【0024】
この摩耗試験装置100は、水中に沈めた供試体WK上で転動球140を転がすことで供試体WKを構成するモルタルまたはコンクリートの耐摩耗性を試験する試験装置である。ここで、供試体WKは、モルタルまたはコンクリートを板状に形成して構成されている。また、供試体WKおよび転動球140は、水で構成された転動水W中に沈められる。
【0025】
(摩耗試験装置100の構成)
摩耗試験装置100は、試験台101を備えている。試験台101は、供試体WKを載置するための部品であり、主として、載置台102と脚部103とで構成されている。載置台102は、供試体WKが載置される部品であり、平坦な円板状に形成して構成されている。この場合、載置台102は、平面視において、供試体WKの大きさよりも小さい大きさに形成してもよいが、供試体WKの全面を支持することができるように供試体WKの大きさ以上の大きさに形成されるとよい。また、載置台102は、樹脂材料(例えば、ポリ塩化ビニルなど)、セラミック材(例えば、陶磁器)または金属材料(例えば、アルミニウム材またはステンレス材など)で構成されている。
【0026】
この載置台102には、取付孔102aおよび空気孔102bがそれぞれ形成されている。取付孔102aは、後述する取付具110を貫通させるための部分であり、載置台102の中央部を上下方向に貫通する貫通孔で構成されている。また、空気孔102bは、載置台102の下面側の脚部103の内部に溜まる空気を抜くための部分であり、取付孔102aの近傍位置で上下方向に貫通する2つの貫通孔で構成されている。
【0027】
脚部103は、供試体WKを所定の高さに位置させるために載置台102の高さを規定するための部分であり、載置台102の下面から鉛直方向に下垂する筒状に形成されている。また、脚部103は、樹脂材料(例えば、ポリ塩化ビニルなど)、セラミック材(例えば、陶磁器)または金属材料(例えば、アルミニウム材またはステンレス材など)で構成されている。本実施形態において、脚部103は、載置台102とともに樹脂材料で構成されており、載置台102の下面に接着固定されている。
【0028】
なお、試験台101は、載置台102自体の厚さを厚く形成することで載置台102と別体の脚部103を省略して構成することもできる。この試験台101は、3つの第1水槽104a,104b,104c内にそれぞれ収容されている。また、試験台101は、図1および図3においては、後述する第1水槽104c上で図示を省略している。
【0029】
第1水槽104a,104b,104cは、試験台101を供試体WK、転動球140および転動水Wとともに収容する容器であり、それぞれ上方に向かって開口する有底筒状に形成されている。これらの第1水槽104a,104b,104cは、主として、第1水槽本体105と底板107とで構成されている。第1水槽本体105は、試験台101の周囲を供試体WK、転動球140および転動水Wとともに囲む部品であり、鉛直方向に延びる筒状に形成されている。本実施形態においては、第1水槽本体105は、樹脂材料(例えば、ポリ塩化ビニルなど)を円筒状に形成して構成されている。
【0030】
この場合、第1水槽本体105は、供試体WK上を転がる転動球140が第1水槽本体105の外に飛び出さない高さ(深さ)(本実施形態においては、250mm)に形成されている。また、第1水槽本体105は、供試体WK上を転がる転動球140が供試体WK上から落下しない大きさの内径に形成される。なお、第1水槽本体105は、樹脂材料以外の材料、例えば、セラミック材(例えば、陶磁器)または金属材料(例えば、アルミニウム材またはステンレス材など)で構成されていてもよいことは当然である。なお、第1水槽本体105は、円筒以外の筒状に形成されていてもよいことは当然である。
【0031】
この第1水槽本体105には、噴射口106が形成されている。噴射口106は、第1水槽本体105内において、試験台101上に載置された供試体WK上に載置される転動球140に水流を噴射するための部分であり、第1水槽本体105の壁面を貫通する貫通孔で構成されている。この場合、噴射口106は、供試体WK上に載置される転動球140における上下方向中央部、同中央部に対して下方部分または上方部分に水流が当たる位置に形成されている。本実施形態においては、噴射口106は、供試体WK上に載置される転動球140における上下方向中央部に水流が当たる位置に形成されている。この噴射口106には、後述する水噴射装置130の配水管132の端部が接続されている。
【0032】
底板107は、第1水槽104a,104b,104cの各底部を構成する部品であり、第1水槽本体105の図示下方側の開口部を塞ぐ円板状に形成されている。本実施形態において、底板107は、第1水槽本体105と同じ樹脂材料で構成されており、第1水槽本体105における図示下方の端部に接着固定されている。なお、底板107は、樹脂材料以外の材料、例えば、セラミック材(例えば、陶磁器)または金属材料(例えば、アルミニウム材またはステンレス材など)で構成されていてもよいことは当然である。
【0033】
この底板107には、係止孔107aが形成されている。係止孔107aは、後述する取付具110の貫通棒111が貫通する部分であり、貫通棒111の下端部に形成されたフランジ部111aが引っ掛かる大小2つ内径を有する貫通孔で構成されている。
【0034】
取付具110は、供試体WKを試験台101上に固定するための部品であり、主として、貫通棒111、押さえプレート112およびナット113をそれぞれ備えて構成されている。貫通棒111は、第1水槽104a,104b,104cの各底板107、各試験台101、各押さえプレート112および各供試体WKをそれぞれ貫通する部品であり、ステンレス材などの金属材料を棒状に形成して構成されている。この場合、貫通棒111は、一方(図示下端部)の端部に径方向外側に広がって底板107の係止孔107aに引っ掛けられるフランジ部111aが形成されるとともに、他方(図示上端部)に雄ネジが形成されたネジ部111bが形成されている。この貫通棒111は、第1水槽104a~104cの各第1水槽本体105の底板107の中央部に起立した状態で設けられている。
【0035】
押さえプレート112は、貫通棒111に形成されたフランジ部111aと協働して供試体WKを試験台101の載置台102上に押し付けるための部品であり、ステンレス材などの金属材料を平板リング状に形成して構成されている。ナット113は、貫通棒111に形成されたネジ部111bにネジ嵌合することで押さえプレート112を供試体WKに押し付ける部品である。これらの第1水槽104a,104b,104cは、第2水槽120内にそれぞれ設けられている。
【0036】
第2水槽120は、第1水槽104a,104b,104cおよび送水ポンプ131をそれぞれ収容する容器であり、上方に向かって開口する有底箱状に形成されている。この第2水槽120は、主として、第2水槽本体121と隔壁122a,122b,123a,123b,124a,124bとで構成されている。
【0037】
第2水槽本体121は、複数(本実施形態においては、3つ)の第1水槽104a,104b,104cと1つの送水ポンプ131とを転動水Wとともに収容する容器であり、上方に向かって開口する箱状に形成されている。この場合、第2水槽本体121は、前記した3つの第1水槽本体105の高さよりも高い高さ(深さ)に形成されている。
【0038】
本実施形態においては、第2水槽本体121は、1つの長方形状の板状の樹脂材料(例えば、ポリ塩化ビニルなど)を底部として、この底部の4辺に4つの長方形状の板状の樹脂材料(例えば、ポリ塩化ビニルなど)をそれぞれ起立するように固着させた箱状に構成されている。すなわち、第2水槽本体121は、本実施形態においては、図示左右方向に延びる直方体状に形成されている。そして、第1水槽104a,104b,104cおよび送水ポンプ131は、第2水槽本体121内に長手方向に沿って等間隔に配置されている。
【0039】
隔壁122a,122b,123a,123b,124a,124bは、第2水槽本体121内において第1水槽104a,104b,104cから流出する転動水Wの流れを規制するための部品であり、樹脂材料(例えば、ポリ塩化ビニルなど)、セラミック材(例えば、陶磁器)または金属材料(例えば、アルミニウム材またはステンレス材など)を長方形状の板状体に形成して構成されている。この場合、隔壁122a,122bは、第1水槽104aと第1水槽104bとの間に配置されており、隔壁123a,123bは、第1水槽104bと第1水槽104cとの間に配置されており、隔壁124a,124bは、第1水槽104cと送水ポンプ131との間に配置されている。
【0040】
また、この場合、隔壁122a,123a,124aは、第1水槽104a,104b,104c内の転動水Wが周囲に飛散することを抑制するための部品であり、第2水槽本体121の上端部と略同じ高さ位置から下垂した状態で設けられている。また、隔壁122b,123b,124bは、第1水槽104a,104b,104cから流出する転動水W内に含まれる懸濁物が隣接する領域に流動することを抑制するための部品であり、第2水槽本体121の底部に接触して起立する状態で設けられている。したがって、第2水槽本体121内は、隔壁122a,123a,124aと隔壁122b,123b,124bとの間の領域が転動水Wが流通する流路となっている。
【0041】
水噴射装置130は、第1水槽104a,104b,104cにそれぞれ転動水Wを供給するための機械装置であり、主として、送水ポンプ131、配水管132、流量調整弁133a,133b,133cをそれぞれ備えて構成されている。送水ポンプ131は、第2水槽本体121内に貯留されている転動水Wを吸い込んで配水管132に送る機械装置である。本実施形態においては、送水ポンプ131は、第2水槽本体121の底部側の転動水Wを吸い込んで配水管132に送る電動のポンプで構成されている。
【0042】
配水管132は、送水ポンプ131から供給される転動水Wを第1水槽104a,104b,104cにそれぞれ送るための配管であり、樹脂材料(例えば、ポリ塩化ビニルなど)または金属材料(例えば、アルミニウム材またはステンレス材など)をパイプ状に形成して構成されている。この場合、配水管132は、第1水槽104a,104b,104cにそれぞれ転動水Wを給水するために3つに枝分かれした後、第2水槽本体121を貫通して各第1水槽本体105における噴射口106にそれぞれ接続されている。この場合、各配水管132は、各第1水槽本体105の周方向に沿って転動水Wを噴射するように各第1水槽本体105の外周部に対して接線方向から接続されている。
【0043】
この配水管132には、流量調整弁133a,133b,133c、流量計134a,134b,134cおよび圧力計135がそれぞれ設けられている。流量調整弁133a,133b,133cは、第1水槽104a,104b,104cにそれぞれ供給する転動水Wの水量を個別に加減するための手動式の弁であり、配水管132における第1水槽104a,104b,104cに向かってそれぞれ枝分かれした部分に設けられている。流量計134a,134b,134cは、第1水槽104a,104b,104cに供給される転動水Wの流量を表示する計測器具である。また、圧力計135は、配水管132内を流れる転動水Wの水圧を表示する計測器具である。なお、図3においては、水噴射装置130を二点鎖線で示している。また、図4においては、配水管132の一部のみを示して水噴射装置130の図示を省略している。
【0044】
転動球140は、供試体WK上を転がって摩擦接触する部品であり、セラミック材(例えば、石または陶磁器)または金属材料(例えば、アルミニウム材またはステンレス材など)を球状に形成して構成されている。この転動球140は、供試体WKに対する摩耗試験の仕様に応じて大きさおよび数が選定される。
【0045】
(摩耗試験装置100の作動)
次に、上記のように構成した摩耗試験装置100の作動について説明する。まず、摩耗試験装置100を用いて摩耗試験を行う作業者は、供試体WKを用意する。具体的には、作業者は、モルタルまたはコンクリートを板状に形成した供試体WKを用意する。ここで、供試体WKは、平面視で正方形状の板状体の4つの角部を面取りした形状に形成することができる。この場合、供試体WKの中央部には、取付具110の貫通棒111を貫通させるための貫通孔が形成されている。なお、本実施形態においては、作業者は、3つの供試体WKを用意する。この場合、3つの供試体WKは、全て同じ仕様で構成されていてもよいし、構成成分、形状または大きさが互いに異なるように構成されていてもよい。
【0046】
次に、作業者は、試験台101を第1水槽104a~104c内にそれぞれセットする。具体的には、作業者は、供試体WKの厚さおよび転動球140の大きさに応じた高さの試験台101を第1水槽104a~104cの各第1水槽本体105内に配置する。この場合、作業者は、供試体WK上に載置される転動球140の上下方向中央部に噴射口106から噴射される転動水Wが当たる高さの試験台101を第1水槽本体105内に配置する。これにより、試験台101は、第1水槽本体105内に起立した貫通棒111が載置台102を貫通した状態で配置される。
【0047】
次に、作業者は、第1水槽104a~104cにおける各試験台101上に供試体WKをそれぞれセットする(供試体を配置する工程)。具体的には、作業者は、第1水槽本体105内に配置された試験台101の載置台102上に供試体WKを載置する。この場合、作業者は、載置台102上に起立する貫通棒111を貫通させた状態で供試体WKを配置する。
【0048】
次いで、作業者は、押さえプレート112を用意した後、この押さえプレート112を供試体WK上に起立する貫通棒111を貫通させた状態で配置する。そして、作業者は、ナット113を用意した後、このナット113を貫通棒111の上端部からねじ込むことで押さえプレート112を供試体WKの上面に押さえ付ける。これにより、作業者は、第1水槽104a~104cについて、供試体WKを試験台101上に固定することできる。
【0049】
次に、作業者は、第1水槽104a~104c内にそれぞれ固定した供試体WK上に転動球140をそれぞれ配置する(転動球を配置する工程)。この場合、作業者は、摩耗試験の仕様に応じ数および大きさの転動球140を第1水槽104a~104cごとの各供試体WK上に配置する。これにより、試験台101は、配水管132が接続されていることに加えて供試体WKおよび転動球140の重量によって第1水槽本体105上に安定的に配置される。
【0050】
次に、作業者は、第1水槽104a~104c内および第2水槽120内にそれぞれ転動水Wを充填する。具体的には、作業者は、水道水を転動水Wとして第2水槽120内に導入する。この場合、作業者は、各第1水槽本体105内に転動水Wを供給して転動球140を転動させた際において、各第1水槽本体105から転動水Wの一部が溢れ出る程度であってかつ送水ポンプ131の給水口の水没状態が維持される程度の水を充填する。
【0051】
次に、作業者は、供試体WKの摩耗試験を開始する。具体的には、作業者は、送水ポンプ131の作動を開始させる。これにより、送水ポンプ131は、第2水槽本体121内に貯留されている転動水Wを吸水して配水管132を介して3つの第1水槽本体105にそれぞれ給水を開始する。これにより、3つの各第1水槽本体105内においては、噴射口106から転動水Wが各第1水槽本体105の接線方向から噴射されることで転動球140が各第1水槽本体105の周方向に沿って転動を開始する(図1および図4における破線矢印参照)(転動球を前記供試体上で転動させる工程)。
【0052】
この転動球140が供試体WK上を転動している場合においては、3つの各第1水槽本体105からはそれぞれ供給された転動水Wが飛散または溢れ出る。この場合、各第1水槽本体105の周囲には、第2水槽本体121の側壁および隔壁122a,123a,124aが設けられているため、各第1水槽本体105からそれぞれ飛散した転動水Wが第2水槽本体121の外側に飛散することが防止されて第2水槽本体121の底部側に導かれる。また、各第1水槽本体105から溢れ出た転動水Wについても第2水槽本体121の底部側に導かれる。
【0053】
この場合、第2水槽本体121の底部側には、隔壁122b,123b,124bが設けられているため、第2水槽本体121の底部に溜まった転動水Wの送水ポンプ131側への流動が妨げられる。これにより、転動水W内に含まれる供試体WKまたは転動球140の摩耗紛などからなる懸濁物を第2水槽本体121の底部に沈降させて送水ポンプ131に導かれることを防止することができる。
【0054】
作業者は、供試体WKの摩耗試験に必要な時間だけ送水ポンプ131を作動させて第1水槽104a,104b,104cと第2水槽120との間で転動水Wを循環させることで供試体WKの摩耗試験を行うことができる。なお、作業者は、流量調整弁133a~133cを手動操作することで各第1水槽本体105に供給される転動水Wの量を加減することができる。
【0055】
次に、摩耗試験を終える場合には、作業者は、送水ポンプ131の作動を停止させた後、各第1水槽本体105内から供試体WKを取り出す。この場合、作業者は、ナット113を緩めることで供試体WKを試験台101上から取り外して摩耗状況を確認することができる。なお、作業者は、供試体WKの取り外しに際して、第1水槽104a,104b,104c内および第2水槽120内にそれぞれ貯留されている転動水Wを除去してから供試体WKを取り外すこともできる。
【0056】
この場合、作業者は、送水ポンプ131とは別の吸水ポンプ(図示せず)を用いて第1水槽104a,104b,104c内および第2水槽120内にそれぞれ貯留されている転動水Wを除去してもよいし、第1水槽本体105および第2水槽本体121に排水栓を設けておいて排水するようにしてもよい。
【0057】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、摩耗試験装置100は、転動球140を水流によって供試体WK上を転動させるため、転動球(従来技術における鉄球)上にパドルおよびパドルを作動させるための機構が不要となり、装置構成をコンパクト化および簡単化することができる。特に、本発明に係る摩耗試験装置100においては、大きな転動球140を転動させる際においても大きなパドルが不要となり、装置構成を大幅にコンパクト化および簡単化することができ、運搬および設置も容易にすることができる。
【0058】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記各変形例において、上記実施形態と同様の構成部分については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0059】
例えば、上記実施形態においては、摩耗試験装置100は、第2水槽120内に3つの第1水槽104a,104b,104cを配置して構成した。しかし、摩耗試験装置100は、少なくとも1つの第1水槽(第1水槽104a,104b,104cのいずれか1つ以上)を備えて構成されていればよい。また、摩耗試験装置100は、第2水槽120内に4つ以上の第1水槽を配置して構成されていてもよいことは当然である。
【0060】
また、上記実施形態においては、摩耗試験装置100は、第1水槽104a,104b,104cを収容する第2水槽120を備えて構成した。しかし、摩耗試験装置100は、少なくとも1つの第1水槽を備えて構成されていればよく、第2水槽120を省略して構成することもできる。
【0061】
また、上記実施形態においては、摩耗試験装置100は、第1水槽104a~104cの各壁面に転動水Wの噴射口106を備えて構成した。しかし、摩耗試験装置100は、第1水槽104a~104cの各第1水槽本体105の開口部分から各第1水槽本体105内に延びて転動水Wを噴射する配管を配置するように構成することもできる。
【0062】
また、上記実施形態においては、摩耗試験装置100は、第2水槽120内に溢れ出た転動水Wを回収して再び第1水槽104a~104cに供給させて転動水Wを循環させるように構成した。しかし、摩耗試験装置100は、第1水槽104a~104cに対して常に新たな転動水Wを供給して溢れ出た転動水Wを廃棄するように構成してもよい。
【0063】
また、上記実施形態においては、摩耗試験装置100は、第2水槽120内に隔壁122a,122b,123a,123b,124a,124bを備えて構成した。しかし、摩耗試験装置100は、隔壁122a,123a,124aおよび隔壁122b,123b,124bのうちの一方を備えて構成してもよいし、隔壁122a,122b,123a,123b,124a,124bを省略して構成することもできる。
【0064】
また、上記実施形態においては、摩耗試験装置100は、高さの異なる複数種類の試験台101を選択的に取り付け可能に構成した。しかし、摩耗試験装置100は、1種類の試験台101を第1水槽本体105に対して固定的に取り付けて構成することができる。
【0065】
また、上記実施形態においては、摩耗試験装置100は、送水ポンプ131を備えて構成した。しかし、摩耗試験装置100は、送水ポンプ131を省略して構成することもできる。この場合、摩耗試験装置100は、上水道からホースなどを使って第1水槽本体105内に転動水Wを供給して転動球140を転動させることもできる。
【符号の説明】
【0066】
WK…供試体、W…転動水、
100…摩耗試験装置、101…試験台、102…載置台、102a…取付孔、102b…空気孔、103…脚部、104a~104c…第1水槽、105…第1水槽本体、106…噴射口、107…底板、107a…係止孔、
110…取付具、111…貫通棒、111a…フランジ部、111b…ネジ部、112…押さえプレート、113…ナット、
120…第2水槽、121…第2水槽本体、122a,122b,123a,123b,124a,124b…隔壁、
130…水噴射装置、131…送水ポンプ、132…配水管、133a,133b,133c…流量調整弁、134a,134b,134c…流量計、135…圧力計、
140…転動球。
図1
図2
図3
図4