(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066581
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】装置の吊り上げ機構
(51)【国際特許分類】
B66F 9/06 20060101AFI20230509BHJP
B66F 9/18 20060101ALI20230509BHJP
B66F 9/14 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
B66F9/06 F
B66F9/18 T
B66F9/14 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177248
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】521400763
【氏名又は名称】株式会社 SPロジック
(74)【代理人】
【識別番号】100099047
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】後藤 僚治
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AE02
3F333AE35
(57)【要約】
【課題】クレーンで吊り上げる場合に装置の重心が必ずしも装置全体の中央付近になくとも傾かずにクレーンで吊り上げが可能な装置の吊り上げ機構を提供すること。
【解決手段】装置のベースに対向配置された通路を水平方向に有する一対のフォークガイド1と、両端に吊り上げ金具8を備えた吊り上げビーム7をフォークガイド1の左右の通路ボックス4の通路内に配置する。吊り上げビーム7にはロックフレーム11A、11Bが遊嵌され左右の通路ボックス4間に配置される。当該装置を持ち上げる際に所定の重心が定まった位置でロックフレーム11A、11Bを吊り上げビーム7に対してボルトで固定するようにする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置のベースに対向配置される通路を水平方向に有する一対のガイド部材と、
吊り上げられるための部分が両端あるいは両端寄りに設けられ、前記ガイド部材の前記通路内に長手方向に進退可能に配置される長尺材と、
前記長尺材を前記ガイド部材に対して移動不能に固定する固定手段とを備えた装置の吊り上げ機構。
【請求項2】
前記一対のガイド部材の前記通路は平行に配置されることを特徴とする請求項1に記載の吊り上げ機構。
【請求項3】
前記通路は、水平かつ直線方向に離間して複数配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の吊り上げ機構。
【請求項4】
前記固定手段は、2つの前記通路間に配置するための前記通路間の間隔となるように構成された干渉部材を有し、前記干渉部材を前記長尺材に対して連結手段によって連結することで前記長尺材を前記ガイド部材に対して移動不能に固定するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の吊り上げ機構。
【請求項5】
前記固定手段は前記長尺材を前記通路内において前記通路の長手方向と交差する方向への移動を阻止する移動阻止部材を有していることを特徴とする請求項4に記載の吊り上げ機構。
【請求項6】
前記固定手段は、前記長尺材に形成された第1の透孔と、前記ガイド部材の前記通路を構成する壁面に形成された前記第1の透孔と照合されるように形成された第2の透孔と、前記第1の透孔と前記第2の透孔とを照合させた状態で透孔間を貫挿させるボルト部材であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の吊り上げ機構。
【請求項7】
前記長尺材の前記吊り上げられるための部分は前記長尺材の両端あるいは両端寄りに設けられた吊り上げ用の金具であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の吊り上げ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばワイヤーのような吊り上げ用の索条によって大型の装置を吊り上げる際に使用される吊り上げ機構等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ロボットのような重量のある大型装置を移動させる場合に備えて、装置の台座や架台等の側面に移動用の治具としてのフォークガイドが設けられている。フォークガイドはフォークリフトのフォークを挿入して片持ち梁状に持ち上げるための治具である。フォークリフトでのフォークガイドの使用の一例として特許文献1を示す。
大型装置を移動させる場合では、例えば
図7のように装置Mの台座101にフォークガイド102を180度対向する位置に通路103が水平かつ平行となるように配置し、フォークリフト104のフォーク105を通路103に挿入し持ち上げて移動させる。フォークリフト104で持ち上げる場合には重心が中心からずれて、かつ装置Mの重量がある場合には持ち上げが困難な場合がある。一般にフォークガイド102には吊り上げ用のワイヤー取り付け穴106が形成されているため、フォークリフト104に代わって、あるいはフォークリフト104を用いながら同時にこのワイヤー取り付け穴106にワイヤーを通してクレーンで吊り上げるようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、クレーンで吊り上げる場合でもワイヤー取り付け穴106があまり間隔が離れておらず、かつ装置Mの重心が必ずしも装置M全体の中央付近にあるともいえないため、クレーンだけで吊り上げた場合には装置Mが傾いてしまい持ち上げが困難となる。
このように従来の重量のある大型装置のフォークリフトやクレーンを使用した移動には様々な問題があった。
本発明は、このような課題を解決した装置の吊り上げ機構等を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために手段1として、装置のベースに対向配置される通路を水平方向に有する一対のガイド部材と、吊り上げられるための部分が両端あるいは両端寄りに設けられ、前記ガイド部材の前記通路内に長手方向に進退可能に配置される長尺材と、前記長尺材を前記ガイド部材に対して移動不能に固定する固定手段とを備えるようにした。
これによって、クレーンによって吊り上げる際に、ガイド部材に対して長尺材を進退させ、吊り上げた際に概ね装置の水平バランスの取れる位置で移動しないように長尺材を保持させることができ、装置の重心位置を考慮した索条の取り付けが可能となり、概ね装置の水平を保ったままクレーンの吊り上げ作業をすることが可能となる。
【0006】
「装置のベース」は、例えば装置と一体化した筐体の下部でもよく、装置の台座でもよく、装置が取り付けられる架台でもよい。
「ガイド部材」は、上記背景技術から演繹されるのはフォークガイドであるが、フォークリフト用ではないクレーン専用のガイド部材を用いるようにしてもよい。
「対向配置された通路」は、手段1の上位概念では通路を水平方向に有していればよく、必ずしも平行である必要はないが、平行であればなおよい。また、長い通路が1つだけある場合でも複数の通路が直列に間隔をおいて配置されていてもよい。
「長尺材」は、ガイド部材の通路内に収容されるため、通路の壁面に干渉しないように通路内部の上下左右の間隔よりも小さい断面形状であることがよい。また、金属製でもよく木製でもよい。
「吊り上げられるための部分」は吊り上げ用の索条を取り付けることができればよい。つまり、例えばリング状に先端が加工された索条であれば長尺材の端部寄りに引っ掛けるだけでよいため、特になんらかの部材や形状ではなくとも長尺材の端寄り領域を吊り上げられるための部分としてもよい。吊り上げられるための部分はなるべく長尺材の端に近い位置にあることがよい。索条を二箇所に掛けて吊り上げる際にその間隔が広い方が安定性がよいからである。
「固定手段」は、例えばネジとネジ孔による固定や、ボルトとナットによる固定のようにネジ手段によるものでもよく、例えばクランプのように2つの部材(例えばガイド部材と長尺材)を挟み込んで相互の移動を防止するようなクランプ手段でもよい。また、隙間にクサビを打ち込んで固定するような手段でもよい。また、突っ張り棒を用いる手段でもよい。長尺材を長手方向への移動を不能にするだけでなく、それと交差する方向への移動も不能にできるとなおよい。
【0007】
また、手段2として、前記一対のガイド部材の前記通路は平行に配置されるようにした。
通路が平行でないとフォークリフトを併用する際にフォークを挿入することができなくなってしまうからである。但し、完全に平行でなくとも幅が十分あってフォーク幅よりも広ければ完全に平行でなくともよい。
また、手段3として、前記通路は、水平かつ直線方向に離間して複数配置されるようにした。
1つの長い通路とした場合には通常合金製のガイド部材の重量が増えてしまうため、このように複数の通路とすることがよい。
また、手段4として、前記固定手段は、2つの前記通路間に配置するための前記通路間の間隔となるように構成された干渉部材を有し、前記干渉部材を前記長尺材に対して連結手段によって連結することで前記長尺材を前記ガイド部材に対して移動不能に固定するようにした。
このような固定手段であれば、長尺材に連結固定された干渉部材が2つの通路間に配置されて通路に干渉して通路の長手方向への長尺材の移動を阻止することとなるため、長尺材をつり上げの際の装置のバランスの取れた位置で保持することができる。
【0008】
また、手段5として、前記固定手段は前記長尺材を前記通路内において前記通路の長手方向と交差する方向への移動を阻止する移動阻止部材を有しているようにした。
長尺材の幅が通路の幅よりも狭い場合に固定されていないと幅方向に長尺材が滑って移動してしまうことがあるが、このように移動阻止部材を有する構成とすればそのような長尺材の通路の長手方向への移動が防止されることとなる。
また、手段6として、前記固定手段は、前記長尺材に形成された第1の透孔と、前記ガイド部材の前記通路を構成する壁面に形成された前記第1の透孔と照合されるように形成された第2の透孔と、前記第1の透孔と前記第2の透孔とを照合させた状態で透孔間を貫挿させるボルト部材であるようにした。
このような固定手段であれば、長尺材は通路内部で通路壁面に接した状態で移動できないように固定されるため、長尺材の通路との間の移動が防止されることとなる。
また、手段7として、前記長尺材の前記吊り上げられるための部分は前記長尺材の両端あるいは両端寄りに設けられた吊り上げ用の金具であるようにした。
上記のように吊り上げられるための部分は特に変わった形状や部材でなくともよいが、実際にはこのように吊り上げ用の金具を用いることが索条の取り付けや取り外しの点からよい。
【0009】
上述の手段1~手段7に示した発明は、任意に組み合わせることができる。例えば、手段1に示した発明の全てまたは一部の構成に手段2以降の少なくとも1つの発明の少なくとも一部の構成を加える構成としてもよい。特に、手段1に示した発明に、手段2以降の少なくとも1つの発明の少なくとも一部の構成を加えた発明とするとよい。また、手段1から手段7に示した発明から任意の構成を抽出し、抽出された構成を組み合わせてもよい。本願の出願人は、これらの構成を含む発明について権利を取得する意思を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、クレーンによって吊り上げる際に、ガイド部材に対して長尺材を進退させ、吊り上げた際に概ね装置の水平バランスの取れる位置で移動しないように長尺材を保持させることができ、装置の重心位置を考慮した索条の取り付けが可能となり、概ね装置の水平を保ったままクレーンの吊り上げ作業をすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態1の吊り上げ機構において使用されるフォークガイドの正面図。
【
図2】同じ実施の形態1の吊り上げ機構においてフォークガイドに吊り上げビームとロックフレームを装着した状態の正面図。
【
図3】同じ実施形態1の吊り上げ機構におけるフォークガイド、吊り上げビーム及びロックフレームの斜視図。
【
図4】同じ実施の形態1の吊り上げ機構においてフォークガイドに吊り上げビームとロックフレームを装着した状態の斜視図。
【
図5】同じ実施形態1の吊り上げ機構を装置の台座に取り付けた状態を説明する平面図。
【
図6】実施形態2の吊り上げ機構におけるフォークガイド、吊り上げビーム及びロックフレームの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態1)
以下、本発明の一実施の形態である吊り上げ機構について図面に基づいて説明する。
まず、吊り上げ機構を構成するフォークガイド1について説明する。
図1~
図4に示すように、本実施の形態1で使用されるガイド部材としてのフォークガイド1は大型装置を移動させる場合に備えて、装置の台座にとりつける合金製の金具である。
フォークガイド1は横長の略長方形形状の背板2を備えている。背板2には厚み方向に連通する左右一対の取り付け孔3が形成されている。背板2の前面には間隔を空けて左右一対の通路ボックス4が溶接によって固着形成されている。通路ボックス4はリボン状の板体をリング状に巻き、端面が長方形に現れるように四隅が90度に屈曲された上下に扁平なトンネル状の部材である。左右の通路ボックス4の底板4aの上面は同じ平面上に存在し、背板2を長手方向が水平になるように後述する装置の台座21に装着した際に同様に水平に配置される。また、左右の通路ボックス4の軸線は一致する。つまり、直列に左右の通路ボックス4は配置されている。
通路ボックス4の天板4bの外面には吊り上げ用の透孔5が形成された吊り上げ板6が溶接によって固着形成されている。。このように構成されたフォークガイドは
図1に示すように、左右方向中央を通る線分を境界に左右が鏡像対称とされる。
【0013】
次に吊り上げ機構を構成する吊り上げビーム7について説明する。
図2~
図4に示すように、長尺材としての吊り上げビーム7は端面がロの字状に現れる金属製の長尺フレームである。吊り上げビーム7の左右両端寄り天板7aにはリングを備えた吊り上げ金具8が立設形成されている。左右一対の吊り上げ金具8の間には雌ネジが形成された複数のネジ穴9が一定間隔で直列に配設されている。
次に吊り上げ機構を構成するロックフレーム11A、11Bについて説明する。
図2~
図4に示すように、固定手段を構成する合金製の第1のロックフレーム11Aは吊り上げビーム7に嵌合されるフレーム本体12と、移動阻止部材としての移動規制板13とから構成されている。フレーム本体12は吊り上げビーム7の外形よりも一回り大きな端面が正方形に現れるように四隅が90度に屈曲されたトンネル状の部分である。フレーム本体12の天板12aには長孔14が形成されている。移動規制板13はフレーム本体12の前面板12bから側方に延出された長方形形状の板体である。前面板12bと移動規制板13とは一体的に形成されている。
図3に示すように第2のロックフレーム11Bは第1のロックフレーム11Aと鏡像対称となる形状である。個々の構成の説明は第1のロックフレーム11Aと同様であるため図面上、第1のロックフレーム11Aと同じ符号を付して説明は省略する。ロックフレーム11A、11Bは吊り上げビーム7に対して
図3に示すように移動規制板13が
図3のようにそれぞれ外方を向くように遊嵌される。それぞれのロックフレーム11A、11Bのフレーム本体12の天板12aの長さL2は
図1に示す左右の通路ボックス4間の幅L1の1/2とされている(厳密には2枚の天板12aを左右の通路ボックス4間に納めるためわずかに1/2より短い)。
【0014】
次にこのように構成される吊り上げ機構(フォークガイド1、吊り上げビーム7、ロックフレーム11)の使用方法について説明する。
装置Mの台座21にはフォークガイド1がボルト22を使用して前もって取り付けられている(但し、
図4及び
図5は吊り上げ機構として組み立てが完了した状態を示す)。
図5に示すように、フォークガイド1は台座21の180度対向する同じ高さの位置に配置され、通路ボックス4の軸線同士が平行となるように固定されている。
このようなフォークガイド1は単独でフォークリフトのフォークを挿通させて持ち上げることも可能となっている。本実施の形態1ではクレーンでの吊り上げをするための吊り上げ機構の一部として使用される。
それぞれのフォークガイド1に吊り上げビーム7を通路ボックス4に対して吊り上げビーム7を挿通させる際には、吊り上げビーム7をロックフレーム11A、11Bにも挿通させるために次のように通路ボックス4とロックフレーム11を配置する。まず、2つのロックフレーム11A、11Bを左右の通路ボックス4間に配置し、吊り上げビーム7を一方の通路ボックス4から直列に配置された2つのロックフレーム11A、11Bに通し、最後に他方の通路ボックス4に挿通させるようにする(
図2、
図4の状態)。これによって吊り上げビーム7は2つの通路ボックス4間にロックフレーム11を遊嵌させた状態で通路ボックス4の底板4a上に載置されることとなる。この配置状態でロックフレーム11A、11Bの移動規制板13はそれぞれ各通路ボックス4の前面に配置されることとなる。
【0015】
この段階で固定はされていないもののフォークガイド1に吊り上げビーム7が配置されることとなるためワイヤーを取り付けることで吊り上げ可能状態となる。作業者は経験則によって大体の重心位置を想定してその重心位置が吊り上げビーム7の中央となるように吊り上げビーム7を通路ボックス4内で長手方向に移動させる(ロックフレーム11A、11Bは通路ボックス4間にあって移動しない)。そして、左右の吊り上げ金具8(つまり4つの吊り上げ金具8)に図示しないワイヤーを取り付け、クレーンでわずかに(数mmから数cm程度)吊り上げる。これは当業者が「地切り」と呼ぶ実際にクレーンで吊り上げる前に行う試験的な「仮の」吊り上げ動作であって、この段階で想定した重心位置が正しいかどうかを吊り上げた際の装置Mの傾きを見てチェックする。地切りで重心位置の目測が違っていれば一旦装置Mを降ろし、吊り上げビーム7の通路ボックス4内の位置を調整する。
吊り上げビーム7の位置が決定された段階で照合するロックフレーム11A、11Bの長孔14と吊り上げビーム7のネジ穴9に上方から固定手段としてのネジ23をあてがい、ネジ穴9に螺合させる。これによってロックフレーム11A、11Bを吊り上げビーム7に連結固定することができ、吊り上げビーム7は長手方向の移動ができなくなる。また、ロックフレーム11が通路ボックス4間にあって吊り上げビーム7に嵌挿された状態では移動規制板13は通路ボックス4の前板4cに面した位置に配置されることとなる。そのため、吊り上げビーム7は移動規制板13によって通路ボックス4内で前後方向にも移動しないように規制されることとなる。
このように吊り上げビーム7が重心を考慮した位置に配置され移動しないように固定された状態で改めてクレーンで吊り上げビーム7のワイヤーを吊り上げて装置Mを移動させるようにする。
尚、クレーンで吊り上げる際に吊り上げ板6の透孔5に補助的なワイヤーを取り付けて上記の吊り上げビーム7側のワイヤーと一緒に装置Mを持ち上げるようにしてもよい。
装置M移動後は上記と逆の作業によってワイヤーを吊り上げビーム7から取り外し、吊り上げビーム7とロックフレーム11A、11Bをフォークガイド1から取り外す。
【0016】
以上のような構成によって、実施の形態1の吊り上げ機構では次のような効果が奏されることとなる。
(1)ワイヤーのような索条を使用して大型の装置をクレーンで吊り上げる場合に、重心が必ずしも台座21の中央になくとも、吊り上げビーム7の位置を修正することで吊り上げビーム7に対する重心の位置を調整することができ、装置を傾けることなく吊り上げることができる。
(2)吊り上げビーム7は長さが十分あるため、従来のようにフォークガイドにワイヤーを取り付ける場合に比べて取り付け位置同士が接近せず、離間した状態で吊り上げることができるため、吊り上げた際の安定性がよくなる。
(3)フォークガイド1の通路ボックス4に対して吊り上げビーム7はかなり余裕をもって挿通されている。そのため両者間には無視できないほどの隙間ができてしまう。吊り上げビーム7を長手方向に動かないように固定しても前後方向にも隙間があるため、吊り上げビーム7が前後方向に動いてしまうと吊り上げた際の装置Mの安定性に影響が生じる。しかし、本実施の形態1では左右のロックフレーム11A、11Bの移動規制板13によって吊り上げビーム7が前後方向に移動しないようになっているためそのような問題は生じない。
【0017】
(実施の形態2)
実施の形態2は実施の形態1の吊り上げ機構のバリエーションである。実施の形態2の吊り上げ機構はロックフレーム11A、11Bを有していない。
図6に示すように、実施の形態1のフォークガイド1と同じ形状のフォークガイド31の通路枠32の前板32aには透孔33が形成されている。
実施の形態1の吊り上げビーム7と同じ形状の吊り上げビーム35の前板35aには複数の透孔36が一定間隔で直列に配設されている。また、吊り上げビーム35の背板35bにも透孔36に対応する位置に図示しない透孔が形成されている。つまり、吊り上げビーム35の前後方向に軸方向が一致する一対の透孔が形成されている。通路枠32の内面の上下幅と吊り上げビーム7の外形の上下幅は一致し(実際には干渉しないようにごくわずかに通路枠32の内面の上下幅の方が広い)、通路枠32内に吊り上げビーム7を挿入した場合には上下のがたつきなくぴったりと収まる。
このようなフォークガイド31と吊り上げビーム35は次のように使用する。
実施の形態1と同様に一対のフォークガイド31は前もって対向位置に配置されている。そして、それぞれのフォークガイド31の左右の通路枠32に吊り上げビーム35を挿通させる。作業者は大体の重心位置を想定してその重心位置が吊り上げビーム35の中央となるように吊り上げビーム35を通路枠32内で長手方向に移動させ実施の形態1と同様に「地切り」を行う。「地切り」によって確定した位置において吊り上げビーム35を通路枠32側の透孔33に対応する透孔36とを照合させボルト38及びナット39によって吊り上げビーム35を固定する。
このように構成することで、実施の形態2の吊り上げ機構での実施の形態1の(1)と同様の効果が奏される。また、ロックフレーム11A、11Bが不要となる。
【0018】
本発明は、例えば次のように変更した態様で具体化することも可能である。
・上記実施の形態1及び2の吊り上げ機構を構成する部材の形状や材質は一例である。例えばビーム2,31は上記では筒状のフレーム材であったがH形状のフレームであってもよい。
・上記実施の形態1では前後方向の移動を防止するためロックフレーム11に移動規制板13を設けるようにしたが、例えば吊り上げビーム7をもっと扁平幅広にして通路ボックス4内においてそれほど前後方向に大きく移動しないようであれば移動規制板13はなくともよい。
・実施の形態1では吊り上げビーム7を固定するために上方からネジ23をねじ込むようにしていたが、例えばピンを落とし込むようにするだけでもよい。
・実施の形態2ではボルト38を通路枠32の前板32aから水平方向にねじ込むようにしていたが、ボルト38を他の方向、例えば上や下からねじ込んで固定するようにしてもよい。
・吊り上げられるための部分となる吊り上げ金具8は上記以外の形状であってもよい。
・例えばクランプを用いて例えばロックフレーム11A、11Bと通路ボックス4を挟んで固定するようにしてもよい。
・上記実施の形態1では2つのロックフレーム11A、11Bを使用したが左右に分割せずに1つのロックフレームのみで使用するようにしてもよい。
・通路ボックス4内であって例えば吊り上げビーム7と通路ボックス4の天板4bの間にクサビを打ち込んだり、例えば吊り上げビーム7と通路ボックス4の天板4bの間に突っ張り棒を配置して吊り上げビーム7を通路ボックス4側に押し付けるようにして吊り上げビーム7を固定してもよい。
【0019】
本願発明は上述した実施の形態に記載の構成には限定されない。上述した各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と、発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。
また、意匠出願への変更出願により、全体意匠または部分意匠について権利取得する意思を有する。図面は本装置の全体を実線で描画しているが、全体意匠のみならず当該装置の一部の部分に対して請求する部分意匠も包含した図面である。例えば当該装置の一部の部材を部分意匠とすることはもちろんのこと、部材と関係なく当該装置の一部の部分を部分意匠として包含した図面である。当該装置の一部の部分としては、装置の一部の部材としてもよいし、その部材の部分としてもよい。
【符号の説明】
【0020】
1,31…ガイド部材としてのフォークガイド、7,35…長尺材としての吊り上げビーム、8…吊り上げられるための部分としての吊り上げ金具、11A、11B…固定手段としてのロックフレーム、23,38…固定手段としてのボルト、39…固定手段としてのナット、23…固定手段としてのボルト。