(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066620
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】診断装置
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20230509BHJP
G01M 3/24 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
G05B23/02 T
G01M3/24 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177304
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100118049
【弁理士】
【氏名又は名称】西谷 浩治
(72)【発明者】
【氏名】吉川 成雄
【テーマコード(参考)】
2G067
3C223
【Fターム(参考)】
2G067AA11
2G067AA38
2G067CC02
2G067DD13
3C223AA01
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223EB02
3C223FF12
3C223FF22
3C223FF32
3C223FF42
3C223GG01
3C223HH03
3C223HH08
(57)【要約】
【課題】ある蒸気トラップの振動特性を用いて、当該蒸気トラップと型式が同一でモデルが異なる蒸気トラップの蒸気漏洩に関する性能を精度良く診断する。
【解決手段】診断装置は、第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量と振動値との関係を示す第1振動特性と、第1振動特性の振動値に対する、第1蒸気トラップと型式が同一でモデルが異なる第2蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量と振動値との関係を示す第2振動特性の振動値の比率と、を取得する取得部と、第2蒸気トラップの振動を測定する測定部と、第2蒸気トラップの振動の測定値と第1振動特性と前記比率とに基づいて、第2蒸気トラップの蒸気漏洩に関する性能を診断する診断部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気トラップを診断する診断装置であって、
前記蒸気トラップは、第1蒸気トラップと、前記第1蒸気トラップと型式が同一でモデルが異なる第2蒸気トラップと、を含み、
前記第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量と振動値との関係を示す第1振動特性と、前記第1振動特性の振動値に対する前記第2蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量と振動値との関係を示す第2振動特性の振動値の比率と、を取得する取得部と、
前記第2蒸気トラップの振動を測定する測定部と、
前記第2蒸気トラップの振動の測定値と前記第1振動特性と前記比率とに基づいて、前記第2蒸気トラップの蒸気漏洩に関する性能を診断する診断部と、
を備える診断装置。
【請求項2】
前記測定部は、更に、前記第1蒸気トラップの振動を測定し、
前記診断部は、更に、前記第1蒸気トラップの振動の測定値と前記第1振動特性とに基づいて、前記第1蒸気トラップの蒸気漏洩に関する性能を診断する、
請求項1に記載の診断装置。
【請求項3】
前記診断部は、前記第2蒸気トラップの振動の測定値と、前記第1振動特性における基準の振動値と前記比率との積と、の比較結果に基づいて、前記第2蒸気トラップの蒸気の漏洩状態を診断する、
請求項1又は2に記載の診断装置。
【請求項4】
前記診断部は、前記第1振動特性において、前記第2蒸気トラップの振動の測定値を前記比率によって除算した結果と一致する振動値に対応する漏洩量を、前記第2蒸気トラップの蒸気の漏洩量と診断する、
請求項1又は2に記載の診断装置。
【請求項5】
外部記憶装置との間で情報を入出力するインターフェイス部を更に備え、
前記外部記憶装置は、前記インターフェイス部に着脱可能に接続されるフラッシュメモリであって、前記第1振動特性及び前記比率を記憶し、
前記取得部は、前記外部記憶装置から前記インターフェイス部を介して前記第1振動特性及び前記比率を取得する、
請求項1から4の何れか一項に記載の診断装置。
【請求項6】
外部記憶装置と通信を行う通信部を更に備え、
前記外部記憶装置は、
前記第1振動特性及び前記比率を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている前記第1振動特性及び前記比率を前記診断装置に送信する送信部と、
を備え、
前記取得部は、前記通信部が前記外部記憶装置から受信した前記第1振動特性及び前記比率を取得する、
請求項1から5の何れか一項に記載の診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気トラップの蒸気漏洩に関する性能を診断する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気配管系を備えたプラント等においては、熱交換又は放熱等によって配管系内に復水(ドレン)が生じることがある。この復水を配管系内に滞留させると運転効率が低下する原因となる。このため、一般的には、配管系の適所に蒸気トラップを設置し、この蒸気トラップによって復水を配管系の外部に排出するようにしている。
【0003】
経年劣化又は作動不良等によって蒸気トラップのシール性能が損なわれると、蒸気配管系内の蒸気が蒸気トラップを介して外部に漏出し、無駄な蒸気損失を招くこととなる。このため、一年に一回等の定期的に、特許文献1等に開示のような計測診断装置を用いて蒸気トラップの振動を測定し、その測定値と蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量と振動値との関係を示す振動特性とに基づいて、各蒸気トラップの蒸気漏洩に関する性能を診断する作業が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、蒸気トラップの振動特性は、弁の開閉方式(以降、型式)に応じて異なる。例えば、円盤状のディスクによって弁の開閉を行うディスク型の蒸気トラップは、間欠的に完全な閉弁状態となり、蒸気漏洩時に振動する特性を有する。一方、球状のフロートによって弁の開閉を行うフロート型の蒸気トラップは、完全な閉弁状態にはならず、蒸気の漏洩の有無によらずに連続的に振動する特性を有する。また、蒸気トラップの振動特性は、復水の最大排出量(以降、モデル)に応じて異なる。
【0006】
しかし、従来は、代表的な型式及びモデルの蒸気トラップの振動特性を用いて、当該蒸気トラップの診断が行われていたに過ぎず、当該蒸気トラップの型式ごとのモデルの相違を考慮した診断は行われていなかった。このため、当該蒸気トラップと型式が同一でモデルが異なる蒸気トラップの診断において、精度の良い診断結果が得られない場合があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みて成されたものであり、ある蒸気トラップの振動特性を用いて、当該蒸気トラップと型式が同一でモデルが異なる蒸気トラップの蒸気漏洩に関する性能を精度良く診断することができる診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る診断装置は、蒸気トラップを診断する診断装置であって、前記蒸気トラップは、第1蒸気トラップと、前記第1蒸気トラップと型式が同一でモデルが異なる第2蒸気トラップと、を含み、前記第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量と振動値との関係を示す第1振動特性と、前記第1振動特性の振動値に対する前記第2蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量と振動値との関係を示す第2振動特性の振動値の比率と、を取得する取得部と、前記第2蒸気トラップの振動を測定する測定部と、前記第2蒸気トラップの振動の測定値と前記第1振動特性と前記比率とに基づいて、前記第2蒸気トラップの蒸気漏洩に関する性能を診断する診断部と、を備える。
【0009】
本発明者は、第1蒸気トラップの振動特性と第1蒸気トラップと型式が同一でモデルが異なる第2蒸気トラップの振動特性との各々における、蒸気の漏洩量が同一であるときの振動値を比較した。その結果、本発明者は、第1蒸気トラップの振動値に対する第2蒸気トラップの振動値の比率が、蒸気の漏洩量によらずに一定であることを知見した。つまり、本発明者は、第2蒸気トラップの振動特性の振動値が、第1蒸気トラップの振動特性の振動値に比例することを知見した。
【0010】
この構成によれば、前記第1振動特性と前記比率との積によって、第2蒸気トラップの振動特性を算出できるので、第1蒸気トラップと型式が同一でモデルが異なる第2蒸気トラップの蒸気漏洩に関する性能を精度良く診断することができる。
【0011】
上記態様において、前記測定部は、更に、前記第1蒸気トラップの振動を測定し、前記診断部は、更に、前記第1蒸気トラップの振動の測定値と前記第1振動特性とに基づいて、前記第1蒸気トラップの蒸気漏洩に関する性能を診断してもよい。
【0012】
この構成によれば、第1蒸気トラップと型式及びモデルが同一の蒸気トラップの蒸気漏洩に関する性能を精度良く診断することができる。
【0013】
上記態様において、前記診断部は、前記第2蒸気トラップの振動の測定値と、前記第1振動特性における基準の振動値と前記比率との積と、の比較結果に基づいて、前記第2蒸気トラップの蒸気の漏洩状態を診断してもよい。
【0014】
この構成によれば、第1振動特性における基準の振動値と前記比率との積によって、第2蒸気トラップの基準の漏洩量に対応する基準の振動値を算出することができるので、第2蒸気トラップが基準の漏洩量以上の蒸気を漏洩している状態であるか否かを精度良く診断することができる。
【0015】
上記態様において、前記診断部は、前記第1振動特性において、前記第2蒸気トラップの振動の測定値を前記比率によって除算した結果と一致する振動値に対応する漏洩量を、前記第2蒸気トラップの蒸気の漏洩量と診断してもよい。
【0016】
この構成によれば、第2蒸気トラップの振動の測定値に対応する漏洩量を、第1振動特性から算出できるので、第2蒸気トラップの蒸気漏洩に関する性能を精度良く診断することができる。
【0017】
上記態様において、外部記憶装置との間で情報を入出力するインターフェイス部を更に備え、前記外部記憶装置は、前記インターフェイス部に着脱可能に接続されるフラッシュメモリであって、前記第1振動特性及び前記比率を記憶し、前記取得部は、前記外部記憶装置から前記インターフェイス部を介して前記第1振動特性及び前記比率を取得してもよい。
【0018】
この態様によれば、第1振動特性及び前記比率が記憶されているフラッシュメモリをインターフェイス部に装着することで、当該フラッシュメモリからインターフェイス部を介して取得した第1振動特性及び前記比率を用いて、第2蒸気トラップの蒸気漏洩に関する性能を精度良く診断することができる。
【0019】
上記態様において、外部記憶装置と通信を行う通信部を更に備え、前記外部記憶装置は、前記第1振動特性及び前記比率を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶されている前記第1振動特性及び前記比率を前記診断装置に送信する送信部と、を備え、前記取得部は、前記通信部が前記外部記憶装置から受信した前記第1振動特性及び前記比率を取得してもよい。
【0020】
この態様によれば、外部記憶装置から通信部を介して取得した第1振動特性及び前記比率を用いて、第2蒸気トラップの蒸気漏洩に関する性能を精度良く診断することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ある蒸気トラップの振動特性を用いて、当該蒸気トラップと型式が同一でモデルが異なる蒸気トラップの蒸気漏洩に関する性能を精度良く診断することができる診断装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態に係る診断装置を備えた蒸気トラップ管理システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】蒸気トラップの振動特性の一例を示す図である。
【
図3】比率情報のデータ構成の一例を示す図である。
【
図4】振動閾値情報のデータ構成の一例を示す図である。
【
図5】蒸気トラップ管理システムにおける処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図6】位置情報設定部及び順序設定部の処理内容を示す図である。
【
図8】特性情報の追記後の管理台帳の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。尚、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0024】
<システムの構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る診断装置1を備えた蒸気トラップ管理システム100の構成を示すブロック図である。蒸気トラップ管理システム100は、診断装置1と、ノートパソコン又はタブレット端末等のデータ処理装置2(外部記憶装置)と、クラウドサーバ等のサーバ装置3とを備えている。
【0025】
診断装置1とデータ処理装置2とは、Bluetooth(登録商標)等の任意の通信方式によって相互に無線通信が可能である。また、データ処理装置2とサーバ装置3とは、公衆回線網等の任意の通信ネットワーク4を介して、IP等の任意の通信方式によって相互に無線通信が可能である。
【0026】
蒸気配管系を備えたプラント等においては、配管系内に生じた復水(ドレン)を配管系の外部に排出するために、配管系の適所に複数の蒸気トラップ50が設置されている。蒸気トラップ50は、1年に1回等の定期診断によって、その性能が診断される。定期診断の作業者は、診断装置1を携帯してプラント内を移動することにより、診断装置1によって各蒸気トラップ50の性能を順に診断する。尚、蒸気トラップ50の性能の診断は、定期診断に限らず、不定期な診断であっても良い。以下では、定期診断を例に取り説明する。
【0027】
プラント内へのノートパソコン等の持ち込みが許可されている場合には、作業者は、診断装置1とともにデータ処理装置2を携帯して、各蒸気トラップ50の性能を順に診断することもできる。この場合には、診断装置1は、データ処理装置2及び通信ネットワーク4を介してサーバ装置3に、各蒸気トラップ50の性能の診断結果を示す診断結果情報I5(詳細は後述する)をリアルタイムで送信することができる。
【0028】
一方、プラント内へのノートパソコン等の持ち込みが禁止されている場合には、作業者は、営業車又は現場事務所等の待機場所にデータ処理装置2を保管し、診断装置1のみを携帯して各蒸気トラップ50の性能を順に診断する。この場合、各蒸気トラップ50の診断結果情報I5は、診断装置1内に保存される。作業者が待機場所に戻った後、診断装置1は、データ処理装置2及び通信ネットワーク4を介してサーバ装置3に、診断装置1内に保存した複数の蒸気トラップ50の診断結果情報I5を送信する。
【0029】
診断装置1は、測定部12、操作部13、表示部14、記憶部15、通信部16、IF部17(インターフェイス部)及び制御部11を有している。
【0030】
測定部12は、温度センサ21及び振動センサ22を含む。温度センサ21は、熱電対、増幅回路、及びAD変換回路等を用いて構成されている。作業者が診断装置1の探針(図略)を、測定対象の蒸気トラップ50(以降、対象蒸気トラップ50)に押し当てることにより、温度センサ21は、対象蒸気トラップ50の温度を測定し、その測定値を示す温度データを出力する。振動センサ22は、圧電素子、増幅回路、及びAD変換回路等を用いて構成されている。作業者が上記探針を対象蒸気トラップ50に押し当てることにより、振動センサ22は、対象蒸気トラップ50の振動を測定し、その測定値を示す振動データを出力する。
【0031】
操作部13は、作業者が各種の情報を入力するための操作スイッチ等によって構成されている。表示部14は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等を用いて構成されている。但し、タッチパネル式ディスプレイを使用することにより、操作部13と表示部14とを一体として構成してもよい。
【0032】
記憶部15は、フラッシュメモリ等の書き換え可能な半導体メモリ等を用いて構成されている。
【0033】
通信部16は、Bluetooth(登録商標)等の任意の通信方式に対応した通信回路を用いて構成され、データ処理装置2等の外部装置と通信を行う。
【0034】
IF部17は、SDカード又はUSBメモリ等のフラッシュメモリ7(外部記憶装置)が着脱自在に接続される入出力端子等によって構成されている。IF部17は、自身にフラッシュメモリ7が接続された状態で、当該フラッシュメモリ7と制御部11との間で情報を入出力する。
【0035】
具体的には、IF部17は、制御部11による制御の下、フラッシュメモリ7に記憶されている情報を読み出し、当該読み出した情報を制御部11に入力する。また、IF部17は、制御部11による制御の下、制御部11から出力された情報を、フラッシュメモリ7に出力する(書き込む)。
【0036】
制御部11は、CPU等を用いて構成されている。制御部11は、当該CPUが所定のプログラムを実行することによって実現される機能として、取得部32及び診断部31を有している。
【0037】
取得部32は、IF部17を介してフラッシュメモリ7から、複数の蒸気トラップ50の性能の診断に必要な管理台帳91を取得する。具体的には、取得部32は、IF部17を制御して、IF部17に接続されたフラッシュメモリ7に記憶されている管理台帳91を読み出させ、IF部17が制御部11に入力した当該管理台帳91を取得する。
【0038】
また、取得部32は、作業者が診断装置1とともにデータ処理装置2を携帯している場合、通信部16を介してデータ処理装置2から管理台帳91を取得する。管理台帳91の詳細については後述する。
【0039】
診断部31は、取得部32によって取得された管理台帳91と、測定部12から入力された温度データ及び振動データと、に基づいて、対象蒸気トラップ50の性能を診断し、その診断の結果を示す診断データを出力する。診断部31による診断の詳細については後述する。
【0040】
診断部31は、対象蒸気トラップ50の診断データを含めて診断結果情報I5を作成し、その対象蒸気トラップ50の絶対位置を示す絶対位置情報I1と対応付けて診断結果情報I5を記憶部15に記憶する。絶対位置情報I1及び診断結果情報I5の詳細については後述する。
【0041】
データ処理装置2は、制御部41、通信部42(送信部)、操作部43、表示部44、記憶部45、通信部46及びIF部47を有している。
【0042】
通信部42は、Bluetooth(登録商標)等の任意の通信方式に対応した通信回路を用いて構成されており、診断装置1の通信部16と相互に通信可能である。
【0043】
操作部43は、作業者が各種の情報を入力するためのキーボード又はマウス等によって構成されている。表示部44は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等を用いて構成されている。但し、タッチパネル式ディスプレイを使用することにより、操作部43と表示部44とを一体として構成してもよい。
【0044】
記憶部45は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はフラッシュメモリ等の書き換え可能な任意の記憶装置を用いて構成されている。
【0045】
通信部46は、IP等の任意の通信方式に対応した通信回路を用いて構成されており、通信ネットワーク4を介して、サーバ装置3の通信部72と相互に通信可能である。
【0046】
IF部47は、SDカード又はUSBメモリ等のフラッシュメモリ7が着脱自在に接続される入出力端子等によって構成されている。IF部47は、自身にフラッシュメモリ7が接続された状態で、当該フラッシュメモリ7と制御部41との間で情報を入出力する。
【0047】
制御部41は、CPU(Central Processing Unit)等を用いて構成されている。制御部41は、当該CPUが所定のプログラムを実行することによって実現される機能として、管理台帳作成部51及び取得部52を有している。
【0048】
取得部52は、通信部42が診断装置1から受信した情報を通信部42から取得し、当該取得した情報を記憶部45に記憶する。
【0049】
管理台帳作成部51は、複数の蒸気トラップ50を管理するための管理台帳91を作成する。管理台帳作成部51は、過去に管理台帳91が作成されていない新規のプラントに関しては、後述するエリアマップ情報に基づいて新規に管理台帳91を作成する。また、管理台帳作成部51は、過去に管理台帳91が作成されている既存のプラントに関しては、サーバ装置3によって管理されている既存の管理台帳91をサーバ装置3から取得し、最新のエリアマップ情報に基づいて当該管理台帳91を更新することによって、今回の定期診断用の管理台帳91を作成する。
【0050】
管理台帳作成部51は、その機能として位置情報設定部61及び順序設定部62を含む。位置情報設定部61及び順序設定部62の処理内容については後述する。
【0051】
サーバ装置3は、制御部71、通信部72、及び記憶部73を有している。
【0052】
通信部72は、IP等の任意の通信方式に対応した通信回路を用いて構成されており、通信ネットワーク4を介してデータ処理装置2等の外部装置と通信を行う。
【0053】
また、サーバ装置3へのアクセス権を有する任意の情報処理装置(例えばデータ処理装置2)は、通信ネットワーク4を介してサーバ装置3にアクセス可能である。大規模なプラントでは数千個から数万個の蒸気トラップ50が設置されている場合もあり、この場合には複数の作業者が手分けをして、全ての蒸気トラップ50の診断を行う。これら複数の作業者の各々が、診断装置1及びデータ処理装置2を携帯している。
【0054】
各データ処理装置2が通信ネットワーク4を介してサーバ装置3にアクセスすることにより、各診断装置1による診断結果情報I5がサーバ装置3に集約され、サーバ装置3によって複数の診断結果情報I5が統合及び一元管理される。また、各データ処理装置2が通信ネットワーク4を介してサーバ装置3にアクセスすることにより、サーバ装置3が一元管理している複数の診断結果情報I5を、各作業者が各データ処理装置2によって閲覧等することが可能となる。
【0055】
制御部71は、CPU等を用いて構成されている。制御部71は、当該CPUが所定のプログラムを実行することによって実現される機能として、取得部80及び管理台帳更新部81を有している。取得部80は、通信部72がデータ処理装置2から受信した情報を、通信部72から取得する。また、取得部80は、記憶部73に記憶されている種々の情報を取得する。管理台帳更新部81の処理内容については後述する。
【0056】
記憶部73は、HDD、SSD、又はフラッシュメモリ等の書き換え可能な任意の記憶装置を用いて構成されている。記憶部73には、管理台帳91が記憶される。管理台帳91の詳細については後述する。また、記憶部73には、蒸気トラップ50の温度状態を診断するために用いられる温度閾値(図略)等、蒸気トラップ50の種々の性能の診断に用いられる情報が予め記憶されている。例えば、記憶部73には、蒸気トラップ50の蒸気漏洩に関する性能の診断に用いられる振動特性情報92、比率情報93及び振動閾値情報94が予め記憶されている。
【0057】
以下、振動特性情報92、比率情報93及び振動閾値情報94の詳細について説明する。複数の蒸気トラップ50は、弁の開閉方式によって複数の型式の蒸気トラップ50に分類される。更に、各型式の蒸気トラップ50は、復水の最大排出量によって複数のモデルの蒸気トラップ50に分類される。蒸気トラップ50における蒸気の漏洩量と振動値との関係を示す振動特性は、型式及びモデルに応じて異なる。
【0058】
振動特性情報92は、各型式且つ基準モデルに分類される蒸気トラップ50の振動特性に関する情報である。基準モデルは、各型式の蒸気トラップ50に対して一つずつ定められている。振動特性情報92は、各型式且つ基準モデルに分類される蒸気トラップ50を用いた実験値等に基づき定められている。以下、各型式において、基準モデルの蒸気トラップ50を総称する場合、第1蒸気トラップと記載する。
【0059】
図2は、蒸気トラップ50の振動特性の一例を示す図である。
図2において、横軸は、蒸気トラップ50における蒸気漏洩量を示し、縦軸は、蒸気トラップ50の振動値(振動レベル)を示している。
図2において、振動特性G11は、型式I且つ基準モデルM11の振動特性である。振動特性G21は、型式II且つ基準モデルM21の振動特性である。振動特性G31は、型式III且つ基準モデルM31の振動特性である。振動特性G41は、型式IV且つ基準モデルM41の振動特性である。振動特性G51は、型式V且つ基準モデルM51の振動特性である。振動特性G61は、型式VI且つ基準モデルM61の振動特性である。以下、説明の便宜上、6つの振動特性G11、G21、G31、G41、G51、G61を、振動特性G11~G61と略記する。
【0060】
振動特性G11~G61が示すように、各型式において、基準モデルの振動特性は、蒸気の漏洩量が多い程、振動値が二次関数的に又は指数関数的に大きくなる特性を有する。
【0061】
振動特性情報92は、振動特性G11~G61の各々を示す二次関数又は指数関数を示す情報である。
【0062】
比率情報93は、第1蒸気トラップの振動特性の振動値に対する、第1蒸気トラップと型式が同一でモデルが異なる蒸気トラップ50の振動特性の振動値の比率を示す情報である。
【0063】
図2において、振動特性G52は、型式V且つモデルM52の振動特性である。振動特性G53は、型式V且つモデルM53の振動特性である。モデルM52は、復水の最大排出量が、基準モデルM51よりも多く、モデルM53よりも少ない。
【0064】
図2に示すように、蒸気の漏洩量が同一の場合、振動特性G52の振動値は、振動特性G51の振動値よりも小さく、振動特性G53の振動値よりも大きい。つまり、型式が同じ蒸気トラップ50は、蒸気の漏洩量が同一の場合、復水の最大排出量が多いモデル程、振動値が小さくなるという特性がある。
【0065】
図2において、比率C521は、蒸気の漏洩量がB51であるときの、振動特性G51の振動値L511に対する、振動特性G52の振動値L521の比率(=L521/L511)である。比率C522は、蒸気漏洩量B52であるときの、振動特性G51の振動値L512に対する、振動特性G52の振動値L522の比率(=L522/L512)である。比率C521及び比率C522は共に値がXであり、一致した。尚、一致するとは、所定の誤差範囲内で一致することを示し、以下の説明においても同様である。このように、振動特性G51の振動値に対する振動特性G52の振動値の比率は、蒸気の漏洩量によらずに一定であった。
【0066】
また、
図2において、比率C531は、蒸気漏洩量がB51であるときの、振動特性G51の振動値L511に対する、振動特性G53の振動値L531の比率(=L531/L511)である。比率C532は、蒸気漏洩量B52であるときの、振動特性G51の振動値L512に対する、振動特性G53の振動値L532の比率(=L532/L512)である。ここで、比率C531及び比率C532は共に値がYであり、一致した。このように、振動特性G51の振動値に対する振動特性G53の振動値の比率も、蒸気の漏洩量によらずに一定であった。
【0067】
同様に、型式I~IV、VIに分類され、且つ、基準モデルとは異なるモデルの振動特性からも上記と同様の結果が得られた。つまり、第1蒸気トラップと同じ型式で基準モデルとは異なるモデルの蒸気トラップ50(第2蒸気トラップ)の振動特性の振動値は、第1蒸気トラップの振動特性の振動値に比例する。
【0068】
そこで、本実施の形態は、第1蒸気トラップの振動特性(例えば、G51)の振動値に対する、第1蒸気トラップと型式が同一であってモデルが異なる蒸気トラップ50の振動特性(例えば、G52)の振動値の比率(例えば、C521又はC522)を示す情報を、比率情報93として定める。
【0069】
図3は、比率情報93のデータ構成の一例を示す図である。比率情報93は、型式及びモデルの組み合わせに応じた比率を規定する。例えば、比率C12~C1xは、型式Iにおいて、基準モデルM11の振動特性G11の振動値に対する、モデルM12~M1xの振動特性の振動値の比率を示す。モデルM12~M1xは、型式Iにおいて基準モデルM11とはモデルの異なるx-1個のモデルである。
【0070】
振動閾値情報94は、蒸気トラップ50の蒸気の漏洩状態を判別するために定められた、第1蒸気トラップの基準の振動値を示す情報である。第1蒸気トラップの基準の振動値は、振動特性情報92が示す第1蒸気トラップの振動特性を用いて定められる。
【0071】
図4は、振動閾値情報94のデータ構成の一例を示す図である。振動閾値情報94は、各型式の基準モデルにおける、第1振動閾値、第2振動閾値、第3振動閾値及び第4振動閾値を規定する。
【0072】
第1振動閾値は、振動特性において、蒸気漏洩量が第1基準量であるときの振動値である。第1基準量は、蒸気トラップ50が正常な状態であるか、蒸気の漏洩量が少量の状態であるかを判別する基準となる蒸気の漏洩量である。
【0073】
第2振動閾値は、振動特性において、蒸気漏洩量が第1基準量よりも多い第2基準量であるときの振動値である。第2基準量は、蒸気の漏洩量が少量の状態であるか、中量の状態であるかを判別する基準となる蒸気の漏洩量である。
【0074】
第3振動閾値は、振動特性において、蒸気の漏洩量が第2基準量よりも多い第3基準量であるときの振動値である。第3基準量は、蒸気の漏洩量が中量の状態であるか、大量の状態であるかを判別する基準となる蒸気の漏洩量である。
【0075】
第4振動閾値は、振動特性において、蒸気の漏洩量が第3基準量よりも多い第4基準量であるときの振動値である。第4基準量は、蒸気の漏洩量が大量の状態であるか、蒸気トラップ50が蒸気を吹き放しの状態であるかを判別する基準となる蒸気の漏洩量である。
【0076】
図4は、例えば、型式I且つ基準モデルM11に分類される第1蒸気トラップの振動特性G11(
図2)を用いて、第1振動閾値がVref11に定められ、第2振動閾値がVref12に定められ、第3振動閾値がVref13に定められ、第4振動閾値がVref14に定められた例を示している。
【0077】
尚、振動閾値情報94が、第1振動閾値、第2振動閾値、第3振動閾値及び第4振動閾値のうち、1以上且つ3以下の振動閾値を含むようにしてもよいし、第1基準量乃至第4基準量とは異なる基準量に対応する1以上の振動閾値を含むようにしてもよい。
【0078】
<定期診断の事前準備>
次に、作業者が複数の蒸気トラップ50の定期診断を行う場合に、蒸気トラップ管理システム100において行われる処理の流れについて説明する。
図5は、蒸気トラップ管理システム100における処理の流れを示すシーケンス図である。作業者は、今回の定期診断を実施する前に、データ処理装置2を用いて管理台帳91を作成する(ステップS1)。
【0079】
具体的には、ステップS1における管理台帳91の作成処理は、管理台帳作成部51によって実行される。管理台帳作成部51は、その機能として位置情報設定部61及び順序設定部62を含む。
【0080】
図6は、位置情報設定部61及び順序設定部62の処理内容を示す図である。蒸気配管系を備えたプラント等のエリアAR内において、複数の蒸気トラップ50が配管系の適所に設置されている。
図6では説明の簡単化のため、識別情報(ID)としてトラップナンバーT1~T9が付与された9個の蒸気トラップ50のみを示している。
【0081】
まず、位置情報設定部61は、エリアAR内における各蒸気トラップ50の設置箇所を示すエリアマップ情報を、プラントの管理端末等から取得する。当該管理端末が通信ネットワーク4に接続されている場合には、位置情報設定部61は、当該管理端末から通信ネットワーク4及び通信部46を介してエリアマップ情報を取得する。
【0082】
位置情報設定部61は、取得したエリアマップ情報に基づいて、各グリッドGに最大1つの蒸気トラップ50が含まれるように、エリアマップ情報を複数行かつ複数列に並ぶ複数のグリッドGに分割する。
図6の例では、エリアマップ情報は9行×9列の81個のグリッドGに分割されている。
【0083】
位置情報設定部61は、各行及び各列に付与した行番号Y1~Y9及び列番号X1~X9を用いて、各蒸気トラップ50の絶対位置情報I1を設定する。例えば、トラップナンバーT1の蒸気トラップ50の絶対位置情報I1は座標(X1,Y1)となり、トラップナンバーT5の蒸気トラップ50の絶対位置情報I1は座標(X6,Y4)となる。
【0084】
これにより、管理台帳作成部51は、エリアマップ情報における各蒸気トラップ50の絶対位置情報I1を、簡易かつ正確に設定することが可能となる。
【0085】
順序設定部62は、エリアマップ情報における各蒸気トラップ50の位置座標に基づき、複数の蒸気トラップ50を順に診断するための移動に要する移動距離が最短となるように、複数の蒸気トラップ50の診断順序を設定する。
【0086】
つまり、順序設定部62は、指定された一の蒸気トラップ50を起点として全ての蒸気トラップ50を一筆書きで繋ぐ最短経路を探索する。順序設定部62が使用する最短経路の探索アルゴリズムとしては、ダイクストラ法又はベルマン・フォード法等の任意のアルゴリズムを使用することができる。
図6の例では、トラップナンバーT1→T4→T5→T7→T9→T8→T6→T3→T2の順に、複数の蒸気トラップ50の診断順序が設定されている。
【0087】
これにより、作業者は、順序設定部62によって設定された診断順序に従って複数の蒸気トラップ50の性能を順に診断することにより、移動距離が最短となるため、作業効率を向上することが可能となる。
【0088】
そして、管理台帳作成部51は、順序設定部62が設定した診断順序の順に複数の蒸気トラップ50に関する情報を並べて、管理台帳91を作成する。
【0089】
図7は、管理台帳91の一例を示す図である。管理台帳91は、複数の蒸気トラップ50の各々に関し、絶対位置情報I1に関連付けて、識別情報I2、属性情報I3、特性情報I4及び診断結果情報I5を記述可能に構成されている。ステップS1では、管理台帳作成部51は、複数の蒸気トラップ50の各々について、絶対位置情報I1、識別情報I2及び属性情報I3を記述する。
【0090】
まず、管理台帳作成部51は、順序設定部62が設定した診断順序の順に、位置情報設定部61が設定した複数の蒸気トラップ50の各々の絶対位置情報I1を記述する。
図7は、絶対位置情報I1として、各蒸気トラップ50の設置箇所を示す、行番号Y1~Y9及び列番号X1~X9を用いて表された座標が記述された例を示している。
【0091】
次に、管理台帳作成部51は、各蒸気トラップ50の絶対位置情報I1に関連付けて、各蒸気トラップ50の識別情報I2を記述する。
図7は、識別情報I2として、各蒸気トラップ50を識別するトラップナンバーT1~T9が記述された例を示している。
【0092】
次に、管理台帳作成部51は、各蒸気トラップ50の絶対位置情報I1に関連付けて、各蒸気トラップ50の属性情報I3を記述する。
図7は、属性情報I3として、各蒸気トラップ50の製造メーカ名、機種、型式及びモデルが記述された例を示している。機種には、蒸気トラップ50の機種を特定する情報(例えばAB111)が記述される。型式には、蒸気トラップ50における弁の開閉方式を特定する情報(例えばI)が記述される。モデルには、蒸気トラップ50における復水の最大排出量を特定する情報(例えばM11)が記述される。
【0093】
例えば、
図7に示すトラップナンバーT1の蒸気トラップ50の属性情報I3は、当該蒸気トラップ50の製造メーカー名がミヤワキであり、機種がAB111であることを示している。また、当該蒸気トラップ50の属性情報I3は、当該蒸気トラップ50が、型式I及びモデルM11に分類される蒸気トラップ50であることを示している。尚、属性情報I3には、蒸気トラップ50のその他の属性を示す情報が含まれていてもよい。
【0094】
各蒸気トラップ50に関する識別情報I2及び属性情報I3が上記エリアマップ情報に含まれている場合には、管理台帳作成部51は、これらの情報を当該エリアマップ情報から抽出する。これらの情報が上記エリアマップ情報に含まれていない場合には、作業者による操作部43の操作に応じて、これらの情報が制御部41に入力されても良い。管理台帳91における複数の蒸気トラップ50の並び順は、診断順序に限らず、トラップナンバーの降順又は昇順等であっても良い。
【0095】
尚、特性情報I4は、各蒸気トラップ50の性能の診断に用いられる、各蒸気トラップ50の種々の特性に関する情報である。具体的には、特性情報I4は、各蒸気トラップ50の蒸気漏洩に関する性能を診断するために用いる振動特性情報92、振動閾値情報94及び比率情報93を含む。特性情報I4は、更に、各蒸気トラップの温度状態を診断するために用いる、各蒸気トラップ50の温度の特性に関する温度閾値情報(図略)を含む。診断結果情報I5は、各蒸気トラップ50の診断日及び診断結果を含む。定期診断が実施される前の事前準備の段階では、特性情報I4及び診断結果情報I5は空欄となっている。
【0096】
管理台帳作成部51は、ステップS1において、管理台帳91に、複数の蒸気トラップ50の各々についての絶対位置情報I1、識別情報I2及び属性情報I3を記述すると、サーバ装置3に対して、複数の蒸気トラップ50の各々についての特性情報I4の補充を要求する(ステップS2)。
【0097】
具体的には、ステップS2において、管理台帳作成部51は、ステップS1で作成した管理台帳91とともに特性情報I4の補充を要求する情報(以降、要求情報)を、通信部46を用いてサーバ装置3に送信する。
【0098】
サーバ装置3において、通信部72が管理台帳91及び要求情報を受信すると、取得部80は、当該管理台帳91に対し、複数の蒸気トラップ50の各々についての特性情報I4を追記する(ステップS3)。
【0099】
具体的には、ステップS3において、取得部80は、データ処理装置2から受信した管理台帳91の識別情報I2を参照する。取得部80は、記憶部73から、当該識別情報I2が示す複数の蒸気トラップ50の各々に対応する振動特性情報92、振動閾値情報94及び比率情報93を取得する。取得部80は、取得した振動特性情報92、振動閾値情報94及び比率情報93を、識別情報I2が示す複数の蒸気トラップ50の各々に対応する特性情報I4として、管理台帳91に追記する。
【0100】
例えば、ステップS2において、
図7に示す管理台帳91及び要求情報が送信されたとする。また、記憶部73には、型式I~VI且つ基準モデルに分類される第1蒸気トラップの振動特性G11~G61(
図2)を示す振動特性情報92が記憶されているとする。更に、記憶部73には、
図4に示す振動閾値情報94が記憶され、
図3に示す比率情報93が記憶されているとする。
【0101】
図8は、特性情報I4の追記後の管理台帳91の一例を示す図である。この場合、ステップS3では、
図8に示すように、識別情報I2が示すトラップナンバーT1~T9の蒸気トラップ50の各々に対応する振動特性情報92、振動閾値情報94及び比率情報93が管理台帳91に追記される。
【0102】
例えば、型式I且つ基準モデルM11に分類されるトラップナンバーT1の蒸気トラップ50に対応する振動特性情報92として、型式I且つ基準モデルM11の振動特性G11(
図2)を示す二次関数又は指数関数を示す情報が追記される。当該蒸気トラップ50に対応する振動閾値情報94として、型式Iの基準モデルM11における第1振動閾値Vref11~第4振動閾値Vref14(
図4)が追記される。尚、当該蒸気トラップ50は基準モデルM11に分類されるので、当該蒸気トラップ50に対応する比率情報93は追記されない。
【0103】
また、例えば、型式V且つモデルM52に分類される、互いに機種が異なる3個のトラップナンバーT7、T9、T8の蒸気トラップ50に対応する振動特性情報92として、型式V且つ基準モデルM51の振動特性G51(
図2)を示す二次関数又は指数関数を示す情報が追記される。当該3個の蒸気トラップ50に対応する振動閾値情報94として、型式Vの基準モデルM51における第1振動閾値Vref51~第4振動閾値Vref54(
図4)が追記される。更に、当該3個の蒸気トラップ50に対応する比率情報93として、振動特性G51(
図2)の振動値に対する振動特性G52(
図2)の振動値の比率C52(
図3)が追記される。
【0104】
尚、ステップS3では、記憶部73に記憶されている各蒸気トラップ50の温度状態を診断するために用いる温度閾値情報(図略)等も、特性情報I4として追記される。
【0105】
次に、管理台帳更新部81は、ステップS3において特性情報I4が追記された管理台帳91を記憶部73に記憶する(ステップS4)。また、管理台帳更新部81は、特性情報I4が追記された管理台帳91を、通信部72を用いてデータ処理装置2に返信する(ステップS5)。
【0106】
データ処理装置2では、通信部46が、通信部72から送信された管理台帳91を受信すると、取得部52は、通信部46から当該管理台帳91を取得する。取得部52は、当該管理台帳91を、IF部47を介してフラッシュメモリ7に記憶する(ステップS6)。作業者は、当該管理台帳91が記憶されたフラッシュメモリ7を診断装置1のIF部17に接続する(ステップS7)。
【0107】
診断装置1において、取得部32は、IF部17にフラッシュメモリ7が接続されると、IF部17を介して当該フラッシュメモリ7から管理台帳91を取得する。又は、取得部32は、IF部17にフラッシュメモリ7が接続された状態で、作業者によって操作部13が操作されたことに応じて、IF部17を介して当該フラッシュメモリ7から管理台帳91を取得する。取得部32は、当該取得した管理台帳91を記憶部15に記憶する(ステップS8)。
【0108】
尚、作業者がデータ処理装置2を携帯している場合には、ステップS6及びステップS7に代えて、取得部52が、通信部46から取得した管理台帳91を、通信部42を用いて診断装置1に送信するようにしてもよい。そして、診断装置1では、ステップS8に代えて、通信部16が、通信部42から送信された管理台帳91を受信すると、取得部32が、通信部16が受信した管理台帳91を取得するようにしてもよい。そして、取得部32が、当該取得した管理台帳91を記憶部15に記憶するようにしてもよい。
【0109】
<診断作業>
定期診断の作業者は、診断装置1(及び許可されている場合にはデータ処理装置2)を携帯してプラント内を移動することにより、診断装置1によって各蒸気トラップ50の性能を順に診断する(ステップS9)。
【0110】
その際、作業者による操作部13の操作により、制御部11は、事前準備で記憶部15に記憶した管理台帳91を表示部14に表示する。これにより、作業者は、エリアAR内に設置されている複数の蒸気トラップ50の診断順序と、各蒸気トラップ50の絶対位置情報I1、識別情報I2及び属性情報I3とを認識することができる。
【0111】
尚、作業者がデータ処理装置2を携帯している場合には、管理台帳91をデータ処理装置2の表示部44に表示させても良い。通常は表示部14よりも表示部44のほうが大きい画面を有するため、管理台帳91を表示部44に表示することにより、作業者による視認性が向上する。また、制御部11は、管理台帳91に含まれる特性情報I4を表示部44に表示しないようにしてもよい。
【0112】
作業者は、表示された管理台帳91から認識できる診断順序及び絶対位置に従って、今回の診断対象である対象蒸気トラップ50の設置箇所に移動する。また、作業者は、操作部13の操作によって、管理台帳91に含まれている複数の対象蒸気トラップ50の中から今回の測定対象である一の対象蒸気トラップ50を選択する。これにより、蒸気トラップ50の選択情報が、操作部13から制御部11に入力される。
【0113】
次に、作業者は、診断装置1の探針(図略)を、今回の測定対象である対象蒸気トラップ50に押し当てる。これにより、測定部12から制御部11に対象蒸気トラップ50の測定データ(温度データ及び振動データ)が入力される。診断部31は、管理台帳91に含まれている対象蒸気トラップ50の特性情報I4及び測定部12から入力された対象蒸気トラップ50の測定データに基づいて、対象蒸気トラップ50の性能を診断する(ステップS9)。
【0114】
例えば、診断部31は、対象蒸気トラップ50が第1蒸気トラップである場合、当該対象蒸気トラップ50の特性情報I4に含まれる振動閾値情報94を参照する。そして、診断部31は、対象蒸気トラップ50の振動データが示す、当該対象蒸気トラップ50の振動の測定値と、振動閾値情報94に含まれる第1~第4振動閾値と、の比較結果に基づいて、対象蒸気トラップ50における蒸気の漏洩状態を診断する。
【0115】
具体的には、診断部31は、対象蒸気トラップ50の振動の測定値が、第1振動閾値未満の場合、対象蒸気トラップ50が正常状態であると診断する。対象蒸気トラップ50の振動の測定値が、第1振動閾値以上且つ第2振動閾値未満の場合、診断部31は、対象蒸気トラップ50について、蒸気の漏洩量が少量の状態であると診断する。
【0116】
対象蒸気トラップ50の振動の測定値が、第2振動閾値以上且つ第3振動閾値未満の場合、診断部31は、対象蒸気トラップ50について、蒸気の漏洩量が中量の状態であると診断する。対象蒸気トラップ50の振動の測定値が、第3振動閾値以上且つ第4振動閾値未満の場合、診断部31は、対象蒸気トラップ50について、蒸気の漏洩量が大量の状態であると診断する。対象蒸気トラップ50の振動の測定値が、第4振動閾値以上の場合、診断部31は、対象蒸気トラップ50が、蒸気を吹き放しの状態であると診断する。
【0117】
一方、診断部31は、対象蒸気トラップ50が第1蒸気トラップではない場合、当該対象蒸気トラップ50の特性情報I4に含まれる振動閾値情報94及び比率情報93を参照する。診断部31は、振動閾値情報94に含まれる第1~第4振動閾値と比率情報93が示す比率との積を算出する。診断部31は、当該積と、対象蒸気トラップ50の振動データが示す、当該対象蒸気トラップ50の振動の測定値と、の比較結果に基づいて、対象蒸気トラップ50における蒸気の漏洩状態を診断する。
【0118】
例えば、対象蒸気トラップ50が、
図8に示す管理台帳91に含まれる、型式I且つモデルM12に分類される、IDがT4の蒸気トラップ50であるとする。この場合、診断部31は、当該対象蒸気トラップ50の特性情報I4に含まれる振動閾値情報94及び比率情報93を参照する。診断部31は、当該振動閾値情報94に含まれる第1~第4振動閾値Vref11~14と、当該比率情報93が示す比率C12と、の積を算出する。これにより、型式I且つモデルM12の振動特性における、蒸気漏洩量が第1~第4基準量であるときの振動値を算出することができる。
【0119】
そして、診断部31は、対象蒸気トラップ50の振動の測定値が、第1振動閾値Vref11と比率C12との積未満の場合、対象蒸気トラップ50が正常状態であると診断する。対象蒸気トラップ50の振動の測定値が、第1振動閾値Vref11と比率C12との積以上且つ第2振動閾値Vref12と比率C12との積未満の場合、診断部31は、対象蒸気トラップ50について、蒸気の漏洩量が少量の状態であると診断する。
【0120】
対象蒸気トラップ50の振動の測定値が、第2振動閾値Vref12と比率C12との積以上且つ第3振動閾値Vref13と比率C12との積未満の場合、診断部31は、対象蒸気トラップ50について、蒸気の漏洩量が中量の状態であると診断する。対象蒸気トラップ50の振動の測定値が、第3振動閾値Vref13と比率C12との積以上且つ第4振動閾値Vref14と比率C12との積未満の場合、診断部31は、対象蒸気トラップ50について、蒸気の漏洩量が大量の状態であると診断する。対象蒸気トラップ50の振動の測定値が、第4振動閾値Vref14と比率C12との積以上の場合、診断部31は、対象蒸気トラップ50が、蒸気を吹き放しの状態であると診断する。
【0121】
また、診断部31は、ステップS9において、対象蒸気トラップ50の蒸気の漏洩量を診断するようにしてもよい。本構成は、例えば、以下のようにして実現することができる。
【0122】
診断部31は、対象蒸気トラップ50が第1蒸気トラップである場合、当該対象蒸気トラップ50の特性情報I4に含まれる振動特性情報92を参照する。診断部31は、振動特性情報92が示す対象蒸気トラップ50の振動特性において、対象蒸気トラップ50の振動データが示す、対象蒸気トラップ50の振動の測定値と一致する振動値に対応する漏洩量を、対象蒸気トラップ50の蒸気の漏洩量と診断する。
【0123】
例えば、対象蒸気トラップ50が、
図8に示す管理台帳91に含まれる、型式I且つ基準モデルM11に分類される、IDがT1の第1蒸気トラップであるとする。この場合、診断部31は、当該対象蒸気トラップ50の特性情報I4に含まれる振動特性情報92を参照する。そして、診断部31は、振動特性情報92が示す対象蒸気トラップ50の振動特性G11(
図2)において、対象蒸気トラップ50の振動データが示す、対象蒸気トラップ50の振動の測定値と一致する振動値に対応する漏洩量を、対象蒸気トラップ50の蒸気の漏洩量と診断する。
【0124】
一方、診断部31は、対象蒸気トラップ50が第1蒸気トラップではない場合、当該対象蒸気トラップ50の特性情報I4に含まれる振動特性情報92及び比率情報93を参照する。診断部31は、対象蒸気トラップ50の振動データが示す、対象蒸気トラップ50の振動の測定値を、比率情報93が示す比率によって除算する。診断部31は、振動特性情報92が示す対象蒸気トラップ50の振動特性において、前記除算した結果と一致する振動値に対応する漏洩量を、対象蒸気トラップ50の蒸気の漏洩量と診断する。
【0125】
例えば、対象蒸気トラップ50が、
図8に示す管理台帳91に含まれる、型式I且つモデルM12に分類される、IDがT4の蒸気トラップ50であるとする。この場合、診断部31は、当該対象蒸気トラップ50の特性情報I4に含まれる振動特性情報92及び比率情報93を参照する。そして、診断部31は、対象蒸気トラップ50の振動データが示す、対象蒸気トラップ50の振動の測定値を、比率情報93が示す比率C12によって除算する。これにより、対象蒸気トラップ50の振動の測定値に対応する、型式I且つ基準モデルM11の振動特性G11(
図2)における振動値を算出することができる。そして、診断部31は、振動特性情報92が示す振動特性G11(
図2)において、前記除算した結果と一致する振動値に対応する漏洩量を、対象蒸気トラップ50の蒸気の漏洩量と診断する。
【0126】
また、診断部31は、対象蒸気トラップ50の温度データと、対象蒸気トラップ50の特性情報I4に含まれる温度閾値情報と、を比較する。診断部31は、当該比較結果に基づいて、対象蒸気トラップ50の温度が、当該温度閾値情報が示す温度よりも高い温度であるか否かを診断する。
【0127】
診断部31は、上記の各診断の結果を示す診断データを表示部14に入力する。これにより、測定対象である蒸気トラップ50に関する診断結果が表示部14に表示される。
【0128】
診断部31は、ステップS9における診断の結果に基づいて診断結果情報I5(診断日及び診断結果)を作成し、当該診断結果情報I5を、記憶部15に記憶されている管理台帳91における上記選択情報によって特定される対応箇所に追記する。これにより、診断部31は、当該管理台帳91を更新する(ステップS10)。つまり、診断結果情報I5が管理台帳91の対応箇所に追記されることにより、各蒸気トラップ50の診断結果情報I5が、各蒸気トラップ50の絶対位置情報I1に関連付けられて、記憶部15に記憶されることとなる。
【0129】
また、診断部31は、記憶部15に記憶されている更新後の管理台帳91を、IF部17を介してフラッシュメモリ7に記憶する。作業者は、当該更新後の管理台帳91が記憶されたフラッシュメモリ7を、データ処理装置2のIF部47に接続する(ステップS11)。
【0130】
データ処理装置2において、取得部52は、IF部47にフラッシュメモリ7が接続されると、IF部17を介して当該フラッシュメモリ7から更新後の管理台帳91を取得する。又は、取得部52は、IF部47にフラッシュメモリ7が接続された状態で、作業者によって操作部43が操作されたことに応じて、IF部47を介して当該フラッシュメモリ7から更新後の管理台帳91を取得する。管理台帳作成部51は、取得部52が取得した管理台帳91によって、記憶部45に記憶されている管理台帳91を更新する(ステップS12)。
【0131】
尚、作業者がデータ処理装置2を携帯している場合には、ステップS11に代えて、通信部16が、記憶部15に記憶されている更新後の管理台帳91を、データ処理装置2に送信するようにしてもよい。そして、データ処理装置2では、ステップS12に代えて、通信部42が、通信部16から送信された更新後の管理台帳91を受信すると、取得部52が、通信部42が受信した更新後の管理台帳91を取得するようにしてもよい。そして、管理台帳作成部51は、取得部52が取得した更新後の管理台帳91によって、記憶部45に記憶されている管理台帳91を更新するようにしてもよい。
【0132】
また、この場合、通信部16が、更新後の管理台帳91全体ではなく、ステップS10で管理台帳91に追記した各蒸気トラップ50の診断結果情報I5及び当該各蒸気トラップ50の絶対位置情報I1のみをデータ処理装置2に送信するようにしてもよい。これに応じて、データ処理装置2では、管理台帳作成部51が、記憶部45に記憶されている管理台帳91において、通信部42が診断装置1の通信部16から受信した絶対位置情報I1に対応付けられた診断結果情報I5として、通信部42が受信した診断結果情報I5を追記するようにしてもよい。
【0133】
次に、制御部41は、取得部52が取得した更新後の管理台帳91を、通信部46に入力する。通信部46は、入力された管理台帳91を、通信ネットワーク4を介してサーバ装置3に送信する(ステップS13)。
【0134】
サーバ装置3の通信部72は、通信部46から送信された管理台帳91を受信する。取得部80は、通信部72がデータ処理装置2から受信した管理台帳91を、通信部72から取得する。管理台帳更新部81は、取得部80が取得した管理台帳91によって、記憶部73に記憶されている管理台帳91を更新する(ステップS14)。
【0135】
尚、ステップS13及びステップS14に代えて、上記のステップS11及びステップS12の変形例と同様に、通信部46が、ステップS10で管理台帳91に追記された各蒸気トラップ50の診断結果情報I5及び当該各蒸気トラップ50の絶対位置情報I1のみをサーバ装置3に送信してもよい。これに応じて、サーバ装置3では、管理台帳更新部81が、記憶部73に記憶されている管理台帳91において、通信部72がデータ処理装置2の通信部46から受信した絶対位置情報I1に対応付けられた診断結果情報I5として、通信部72が受信した診断結果情報I5を追記するようにしてもよい。
【0136】
図9は、更新後の管理台帳91の一例を示す図である。管理台帳91によって管理されている全ての蒸気トラップ50に関して、診断結果情報I5の追記が完了している。これにより、今回の定期診断に伴う管理台帳91の更新処理が完了する。定期診断の度に同様の更新処理が実行されることにより、実施された定期診断に関する情報が管理台帳91に蓄積され、サーバ装置3によって管理されることとなる。
【0137】
以上のように、本実施の形態の診断装置1では、管理台帳91を介して、第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量と振動値との関係を示す振動特性(以降、第1振動特性)を示す振動特性情報92が取得される。更に、診断装置1において、管理台帳91を介して、第1振動特性の振動値に対する、第1蒸気トラップと型式が同一であってモデルが異なる蒸気トラップ50(以降、第2蒸気トラップ)の振動特性の振動値の比率を示す比率情報93が取得される。
【0138】
このため、診断装置1は、前記第1振動特性と前記比率との積によって、第2蒸気トラップの振動特性を導出することができる。これにより、診断装置1は、第2蒸気トラップの振動の測定値と、当該導出した第2蒸気トラップの振動特性と、に基づき、第2蒸気トラップの蒸気漏洩に関する性能を精度良く診断することができる。
【符号の説明】
【0139】
1:診断装置
2:データ処理装置(外部記憶装置)
7:フラッシュメモリ(外部記憶装置)
12:測定部
16:通信部
17:IF部(インターフェイス部)
31:診断部
32:取得部
42:通信部(送信部)
45:記憶部
50:蒸気トラップ