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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066626
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】診断システムおよび診断方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/08 20060101AFI20230509BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
H05K13/08 B
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177311
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】多田 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】田原 充
(72)【発明者】
【氏名】兼高 巌
(72)【発明者】
【氏名】横田 潤一
(72)【発明者】
【氏名】中村 謙太
【テーマコード(参考)】
3C100
5E353
【Fターム(参考)】
3C100AA27
3C100AA59
3C100AA63
3C100BB15
3C100BB19
3C100CC02
3C100EE07
5E353CC12
5E353CC21
5E353EE51
5E353EE89
5E353JJ41
5E353JJ60
5E353LL04
5E353NN18
5E353QQ08
(57)【要約】
【課題】作業者による生産設備のメンテナンスをより適切に支援することができる診断システムを提供する。
【解決手段】診断システム100は、移載ヘッド8によって部品Dを吸着して基板3に装着する部品装着装置1におけるその移載ヘッド8に流れるエアの流量に関する流量情報d1を取得する取得部101と、流量情報d1に基づいて、移載ヘッド8に含まれる少なくとも1つの構成部材のそれぞれの劣化状態を特定する劣化特定部130と、特定された劣化状態を示す劣化情報dbを出力する出力部104とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移載ヘッドによって部品を吸着して基板に装着する部品装着装置における前記移載ヘッドに流れるエアの流量に関する流量情報を取得する取得部と、
前記流量情報に基づいて、前記移載ヘッドに含まれる少なくとも1つの構成部材のそれぞれの劣化状態を特定する劣化特定部と、
特定された前記劣化状態を示す劣化情報を出力する出力部と、
を備える診断システム。
【請求項2】
前記劣化特定部は、
前記少なくとも1つの構成部材のそれぞれの劣化の度合いを示す劣化度を推定することによって、前記劣化状態を特定する、
請求項1に記載の診断システム。
【請求項3】
前記劣化特定部は、
前記移載ヘッドに含まれる1つ以上の構成部材のそれぞれに異常があるか否かを判定し、前記1つ以上の構成部材のうち、異常があると判定された前記少なくとも1つの構成部材のそれぞれの前記劣化度を推定する、
請求項2に記載の診断システム。
【請求項4】
前記劣化度は、前記劣化の度合いが大きいほど大きい値を示し、
前記診断システムは、さらに、
前記少なくとも1つの構成部材のそれぞれについて、当該構成部材に対して推定された劣化度が閾値を超えるか否かを判定し、前記閾値を超えると判定された劣化度を有する構成部材のメンテナンスに関するメンテナンス情報を生成するメンテナンス処理部を備え、
前記出力部は、前記メンテナンス情報をさらに出力する、
請求項2または3に記載の診断システム。
【請求項5】
前記劣化度は、前記劣化の度合いが大きいほど大きい値を示し、
前記診断システムは、さらに、
前記少なくとも1つの構成部材のそれぞれについて、当該構成部材に対して推定された劣化度が第1閾値を超えるか否かを判定し、前記第1閾値を超えると判定された劣化度を有する構成部材のメンテナンスの実施を促す内容のメンテナンス警報情報を生成するメンテナンス処理部を備え、
前記出力部は、前記メンテナンス警報情報をさらに出力する、
請求項2または3に記載の診断システム。
【請求項6】
前記メンテナンス処理部は、
前記少なくとも1つの構成部材のそれぞれについて、当該構成部材に対して推定された劣化度が前記第1閾値以下であり、かつ、前記劣化度が前記第1閾値よりも小さい第2閾値を超えるか否かを判定し、前記第1閾値以下でかつ前記第2閾値を超えると判定された劣化度を有する構成部材のメンテナンスの実施のための準備を促す内容のメンテナンス予報情報をさらに生成し、
前記出力部は、前記メンテナンス予報情報をさらに出力する、
請求項5に記載の診断システム。
【請求項7】
前記劣化特定部は、
前記流量情報と前記少なくとも1つの構成部材のそれぞれの劣化状態との関係を示す診断モデルを用いることによって、前記劣化状態を特定する、
請求項1~5の何れか1項に記載の診断システム。
【請求項8】
前記診断モデルは、
前記流量情報の入力に対して前記少なくとも1つの構成部材のそれぞれの劣化状態を示す情報が出力されるように機械学習を行うことによって生成されている、
請求項7に記載の診断システム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの構成部材のそれぞれは、前記エアが通過する部材である、
請求項1~8の何れか1項に記載の診断システム。
【請求項10】
移載ヘッドによって部品を吸着して基板に装着する部品装着装置における前記移載ヘッドに流れるエアの流量に関する流量情報を取得し、
前記流量情報に基づいて、前記移載ヘッドに含まれる少なくとも1つの構成部材のそれぞれの劣化状態を特定し、
特定された前記劣化状態を示す劣化情報を出力する、
診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば部品装着装置などの生産設備を診断するシステムなどに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、切換バルブが正常か否かを判定する部品実装装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。なお、部品実装装置は、部品に基板が実装または装着された装着基板を生産する生産設備であって、部品装着装置とも呼ばれる。切換バルブは、部品実装装置に備えられている構成部材であり、真空ポンプとエア供給源とを選択的に吸着ノズルに接続させる。吸着ノズルは、部品を基板に装着するためにその部品を吸着して保持するノズルである。切換バルブによって真空ポンプが吸着ノズルに接続され、その真空ポンプが駆動すれば、吸着ノズルは周囲の空気を吸引する。一方、切換バルブによってエア供給源が吸着ノズルに接続され、そのエア供給源が駆動すれば、吸着ノズルは周囲に空気を吹き出す。このような部品実装装置は、切換バルブである構成部材が正常か否かを判定する診断システムを備えていると言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-194986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の診断システムでは、作業者による生産設備のメンテナンスを十分に支援することが難しいという課題がある。
【0005】
そこで、本開示は、作業者による生産設備のメンテナンスをより適切に支援することができる診断システムなどを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る診断システムは、移載ヘッドによって部品を吸着して基板に装着する部品装着装置における前記移載ヘッドに流れるエアの流量に関する流量情報を取得する取得部と、前記流量情報に基づいて、前記移載ヘッドに含まれる少なくとも1つの構成部材のそれぞれの劣化状態を特定する劣化特定部と、特定された前記劣化状態を示す劣化情報を出力する出力部と、を備える。
【0007】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROM(Compact Disc Read-Only Memory)などの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。また、記録媒体は、非一時的な記録媒体であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示の診断システムは、作業者による生産設備のメンテナンスをより適切に支援することができる。
【0009】
なお、本開示の一態様における更なる利点および効果は、明細書および図面から明らかにされる。かかる利点および/または効果は、いくつかの実施の形態並びに明細書および図面に記載された特徴によってそれぞれ提供されるが、1つまたはそれ以上の同一の特徴を得るために必ずしも全てが提供される必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態における部品装着装置の平面図である。
図2図2は、実施の形態における部品装着装置に用いられる移載ヘッドの斜視図である。
図3図3は、実施の形態におけるエア制御機構の構成の一例を示す図である。
図4図4は、実施の形態における部品装着装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図5図5は、実施の形態における診断システムの機能構成の一例を示すブロック図である。
図6図6は、実施の形態における学習部および診断モデルを説明するための図である。
図7図7は、実施の形態における劣化特定部および診断モデルを説明するための図である。
図8図8は、実施の形態における劣化情報の具体的な一例を示す図である。
図9図9は、実施の形態における異常処理部、分類処理部、および劣化度処理部の入出力を説明するための図である。
図10図10は、実施の形態における予測部の処理を説明するための図である。
図11図11は、実施の形態における診断システムによる劣化状態の特定に関する処理動作の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、実施の形態における診断システムによるメンテナンス指示に関する処理動作の一例を示すフローチャートである。
図13図13は、実施の形態における診断システムによるメンテナンス時期予測に関する処理動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の一態様に係る診断システムは、移載ヘッドによって部品を吸着して基板に装着する部品装着装置における前記移載ヘッドに流れるエアの流量に関する流量情報を取得する取得部と、前記流量情報に基づいて、前記移載ヘッドに含まれる少なくとも1つの構成部材のそれぞれの劣化状態を特定する劣化特定部と、特定された前記劣化状態を示す劣化情報を出力する出力部と、を備える。例えば、前記少なくとも1つの構成部材のそれぞれは、前記エアが通過する部材であってもよい。
【0012】
これにより、移載ヘッドに含まれる少なくとも1つの構成部材のそれぞれの劣化状態が特定されて、その劣化状態を示す劣化情報が出力される。したがって、部品装着装置を用いて作業を行う作業者は、その出力された劣化情報から、移載ヘッドに含まれる少なくとも1つの構成部材のそれぞれの劣化状態を把握することができる。その結果、構成部材が正常か否かのような単純な状態よりも移載ヘッドの詳細な状態を診断することができる。少なくとも1つの構成部材のそれぞれの劣化状態が診断されるため、作業者は、それらの構成部材のメンテナンスが必要か、そのメンテナンスの準備をしておく必要があるのかを容易に判断することができる。したがって、作業者は、メンテナンスが必要でない構成部材に対して、メンテナンスを無駄に行ってしまうことを抑制することができる。あるいは、作業者は、メンテナンスの準備が必要でない構成部材に対して、メンテナンスまたはその準備を無駄に行ってしまうことを抑制することができる。その結果、メンテナンスの効率化、メンテナンス時間の短縮化、および、メンテナンスに係る費用の削減を図ることができる。このように、生産設備である部品装着装置の作業者によるメンテナンスをより適切に支援することができる。
【0013】
また、前記劣化特定部は、前記少なくとも1つの構成部材のそれぞれの劣化の度合いを示す劣化度を推定することによって、前記劣化状態を特定してもよい。
【0014】
これにより、作業者は劣化状態をより詳細に把握することができる。
【0015】
また、前記劣化特定部は、前記移載ヘッドに含まれる1つ以上の構成部材のそれぞれに異常があるか否かを判定し、前記1つ以上の構成部材のうち、異常があると判定された前記少なくとも1つの構成部材のそれぞれの前記劣化度を推定してもよい。
【0016】
これにより、異常と判定された構成部材に対して劣化度が推定されるため、劣化している可能性が比較的に高いと想定される構成部材に対して劣化度を推定し、劣化している可能性が比較的に低いと想定される構成部材に対する劣化度の推定を省くことができる。その結果、劣化度の推定の処理負担を軽減することができる。また、異常と判定された構成部材に対して劣化度が推定されるため、作業者は、その異常と判定された構成部材に対して、どのようなメンテナンスが必要か、あるいはメンテナンスが不要かを容易に把握することができる。例えば、構成部材の経過観察、構成部材の清掃、構成部材の補修、構成部材に含まれる部品の交換、構成部材そのものの交換など、必要とされるメンテナンスの態様を容易に把握することができる。
【0017】
また、前記劣化度は、前記劣化の度合いが大きいほど大きい値を示し、前記診断システムは、さらに、前記少なくとも1つの構成部材のそれぞれについて、当該構成部材に対して推定された劣化度が閾値を超えるか否かを判定し、前記閾値を超えると判定された劣化度を有する構成部材のメンテナンスに関するメンテナンス情報を生成するメンテナンス処理部を備え、前記出力部は、前記メンテナンス情報をさらに出力してもよい。
【0018】
これにより、例えば劣化した構成部材に対しては、その構成部材のメンテナンスに関するメンテナンス情報が生成されて出力される。その結果、メンテナンス情報が作業者に通知され、作業者は、その構成部材のメンテナンスを迅速に、あるいは適切に行うことができる。
【0019】
また、前記劣化度は、前記劣化の度合いが大きいほど大きい値を示し、前記診断システムは、さらに、前記少なくとも1つの構成部材のそれぞれについて、当該構成部材に対して推定された劣化度が第1閾値を超えるか否かを判定し、前記第1閾値を超えると判定された劣化度を有する構成部材のメンテナンスの実施を促す内容のメンテナンス警報情報を生成するメンテナンス処理部を備え、前記出力部は、前記メンテナンス警報情報をさらに出力してもよい。
【0020】
これにより、例えば激しく劣化した構成部材に対しては、その構成部材のメンテナンスの実施を促す内容のメンテナンス警報情報が生成されて出力される。その結果、メンテナンス警報情報が作業者に通知され、作業者は、その構成部材のメンテナンスを迅速かつ適切に行うことができる。
【0021】
また、前記メンテナンス処理部は、前記少なくとも1つの構成部材のそれぞれについて、当該構成部材に対して推定された劣化度が前記第1閾値以下であり、かつ、前記劣化度が前記第1閾値よりも小さい第2閾値を超えるか否かを判定し、前記第1閾値以下でかつ前記第2閾値を超えると判定された劣化度を有する構成部材のメンテナンスの実施のための準備を促す内容のメンテナンス予報情報をさらに生成し、前記出力部は、前記メンテナンス予報情報をさらに出力してもよい。
【0022】
これにより、例えば、激しく劣化していなくても、激しい劣化の状態に近づいている構成部材に対しては、その構成部材のメンテナンスの実施のための準備を促す内容のメンテナンス予報情報が生成されて出力される。その結果、メンテナンス予報情報が作業者に通知され、作業者は、その構成部材のメンテナンスの準備を事前に余裕をもって適切に行うことができる。
【0023】
また、前記劣化特定部は、前記流量情報と前記少なくとも1つの構成部材のそれぞれの劣化状態との関係を示す診断モデルを用いることによって、前記劣化状態を特定してもよい。
【0024】
これにより、適切に劣化状態を特定することができる。
【0025】
また、前記診断モデルは、前記流量情報の入力に対して前記少なくとも1つの構成部材のそれぞれの劣化状態を示す情報が出力されるように機械学習を行うことによって生成されていてもよい。
【0026】
これにより、機械学習を適切に行うことによって、劣化状態の特定の精度を高めることができる。
【0027】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0028】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0029】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
【0030】
(実施の形態)
[部品装着装置の構成]
図1は、本実施の形態における部品装着装置の平面図である。つまり、図1は、部品装着装置の内部構成を上方から見た状態を示す。なお、本開示において、鉛直方向をZ軸方向または上下方向と称し、鉛直方向に対して垂直な面における一方向をY軸方向または奥行き方向と称し、その垂直な面においてY軸方向と垂直な方向をX軸方向、左右方向または横方向と称す。また、本開示において、Z軸方向の正側は、上向きまたは上であり、Z軸方向の負側は、下向きまたは下である。また、本開示において、Y軸方向の正側は、奥側または奥であり、Y軸方向の負側は、手前側または手前である。また、本開示において、X軸方向の正側は、右側または右であり、X軸方向の負側は左側または左である。
【0031】
本実施の形態における部品装着装置1は、移載ヘッド8によって部品を吸着して基板3に装着することにより、装着基板を生産する生産設備である。このような部品装着装置1は、基台1aと、基板搬送機構2と、2つの部品供給部4と、Y軸ビーム6と、2つのX軸ビーム7と、2つの移載ヘッド8と、2つの基板認識カメラ12と、2つの部品認識カメラ11とを備える。
【0032】
基台1aは、基板搬送機構2と、Y軸ビーム6と、2つのX軸ビーム7と、2つの部品認識カメラ11とを配設するための台である。
【0033】
基板搬送機構2は、X軸方向に沿う2つのレールを備え、基台1aのY軸方向中央に配設される。基板搬送機構2は、上流側(例えばX軸方向負側)から搬入された基板3を搬送し、部品実装作業を実行するための位置である実装ステージにその基板3を位置決めして保持する。
【0034】
2つの部品供給部4は、基板搬送機構2をY軸方向に挟むように配置されている。部品供給部4には、複数のテープフィーダ5がX軸方向に沿って配列されている。テープフィーダ5は、単にフィーダとも呼ばれ、部品を供給する。具体的には、テープフィーダ5は、部品を収納したキャリアテープをテープ送り方向にピッチ送りすることによってその部品を供給する。なお、部品は、例えばIC(Integrated Circuit)チップなどの電子部品である。
【0035】
Y軸ビーム6は、基台1a上面におけるX軸方向の正側(図1に示す例では右端)に、Y軸方向に沿うように配設されている。
【0036】
2つのX軸ビーム7は、それぞれX軸方向に沿った状態で、Y軸方向に移動自在にY軸ビーム6に配設されている。例えば、2つのX軸ビーム7のそれぞれは、Y軸ビーム6の駆動機構による駆動によって、Y軸方向に水平移動する。
【0037】
2つの移載ヘッド8のそれぞれは、結合プレート8aを介してX軸ビーム7に、X軸方向に移動自在に装着されている。したがって、移載ヘッド8は、Y軸ビーム6とX軸ビーム7とによって、X軸方向およびY軸方向に移動する。移載ヘッド8には、部品を吸着して保持し昇降可能な複数のノズルユニット9が着脱自在に装着されている。移載ヘッド8は、X軸方向およびY軸方向に移動することによって、部品供給部4から供給される部品をノズルユニット9によって吸着し、基板搬送機構2によって位置決めされている基板3の実装点にその部品を実装または装着する。
【0038】
2つの基板認識カメラ12のそれぞれは、X軸ビーム7の下面側に位置し、移載ヘッド8と一体的に移動するように結合プレート8aに配設されている。具体的には、基板認識カメラ12は、撮像方向を下向きにした姿勢で結合プレート8aに配設されている。基板認識カメラ12は、基板搬送機構2によって位置決めされている基板3上に移載ヘッド8と共に移動し、その基板3の位置および種別などを認識するために、その基板3を撮像する。
【0039】
2つの部品認識カメラ11は、基板搬送機構2をY軸方向に挟むように基台1a上に配設されている。2つの部品認識カメラ11のそれぞれは、その部品認識カメラ11に対応する移載ヘッド8が部品を吸着した状態でその部品認識カメラ11上を移動するときに、その部品をZ軸方向負側から撮像する。この撮像によって得られた画像に対して認識処理が行われることによって、移載ヘッド8に吸着保持されている部品の位置、角度および種類などが識別される。
【0040】
図2は、部品装着装置1に用いられる移載ヘッド8の斜視図である。
【0041】
移載ヘッド8は、上述のように、結合プレート8aを介してX軸ビーム7に装着されている。移載ヘッド8には、複数のノズルユニット9が並設されている。それぞれのノズルユニット9は、ノズル駆動部9a、ノズル軸13、ノズル装着部14、および吸着ノズル15を有する。
【0042】
ノズル駆動部9aは、昇降軸をリニアモータにより昇降させるノズル昇降機構を有している。ノズル軸13は、ノズル駆動部9aから下方に延びるように、そのノズル駆動部9aの昇降軸に結合されている。ノズル装着部14は、そのノズル軸13の下端部に結合される。吸着ノズル15は、そのノズル装着部14の下方側に着脱自在に装着され、真空吸引によって部品を吸着して保持する。このような移載ヘッド8では、複数のノズルユニット9のそれぞれで、ノズル駆動部9aのリニアモータが駆動することにより、ノズル装着部14に装着された吸着ノズル15は個別に昇降する。なお、各ノズル装着部14には、吸着される部品のサイズおよび形状に応じた種類の吸着ノズル15が装着されている。
【0043】
また、部品装着装置1は、吸着ノズル15におけるエアの吸引と、その吸着ノズル15からのエアの吹き出しとを行うためのエア制御機構を備える。
【0044】
図3は、本実施の形態におけるエア制御機構の構成の一例を示す図である。
【0045】
部品装着装置1のエア制御機構は、真空ポンプ19、エア供給源21、大気供給源22、上述の複数のノズルユニット9、およびノズル制御部23を備える。
【0046】
真空ポンプ19は、負の圧力(真空とも呼ばれる)を発生させる。この真空ポンプ19は、エアの流路を介してノズルユニット9の切換バルブ18の入力ポートP1に接続されている。エア供給源21は、エアの流路を介してノズルユニット9のブローバルブ20の入力ポートP3に接続され、正の圧力のエアをブローバルブ20に供給する。大気供給源22は、エアの流路を介してブローバルブ20の入力ポートP4に接続され、例えば大気圧のエアをブローバルブ20に供給する。なお、大気供給源22は、ブローバルブ20の入力ポートP4を開放状態にすることでも実現される。
【0047】
ノズル制御部23は、ノズルユニット9の切換バルブ18およびブローバルブ20を制御する。
【0048】
ノズルユニット9は、切換バルブ18、ブローバルブ20、流量センサ16、ノズル軸13、ノズル装着部14、吸着ノズル15、エアチューブ40、およびフィルタ41を備える。
【0049】
エアチューブ40は、ノズル軸13に接続されている。そして、エアチューブ40、ノズル軸13、ノズル装着部14および吸着ノズル15のそれぞれの内部に形成されている空洞は連通している。したがって、エアチューブ40の上端側から吸着ノズル15の下端へはエアが流れることが可能であり、逆に、吸着ノズル15の下端からエアチューブ40の上端側へもエアが流れることが可能である。
【0050】
また、フィルタ41は、ノズル装着部14の内部に配設され、その内部を通過するエアを浄化する。
【0051】
ブローバルブ20は、2つの入力ポートP3およびP4と出力ポートA2とを有する電磁弁などで構成される。ブローバルブ20の出力ポートA2は、エアの流路を介して切換バルブ18の入力ポートP2に接続されている。このようなブローバルブ20は、ノズル制御部23による制御に応じて、電磁弁を開閉することによって、エアの流路を切り換える。つまり、ブローバルブ20は、エアの流路を第1流路と第2流路とに切り換える。
【0052】
第1流路は、ブローバルブ20を介してエア供給源21と切換バルブ18との間でエアが流れる流路である。例えば、正の圧力のエアが、エア供給源21から第1流路に沿って切換バルブ18に供給される。第2流路は、ブローバルブ20を介して大気供給源22と切換バルブ18との間でエアが流れる流路である。例えば、大気圧のエアが、大気供給源22から第2流路に沿って切換バルブ18に供給される。
【0053】
切換バルブ18は、2つの入力ポートP1およびP2と出力ポートA1とを有する電磁弁などで構成される。切換バルブ18の出力ポートA1は、エアの流路である出力経路17、エアチューブ40、ノズル軸13、およびノズル装着部14を介して吸着ノズル15に接続されている。このような切換バルブ18は、ノズル制御部23による制御に応じて、電磁弁を開閉することによって、エアの流路を切り換える。つまり、切換バルブ18は、エアの流路を第3流路と第4流路とに切り換える。
【0054】
第3流路は、ノズル装着部14、エアチューブ40、出力経路17、および切換バルブ18を介して、吸着ノズル15と真空ポンプ19との間でエアが流れる流路である。真空ポンプ19の駆動によってこの第3流路に沿ってエアが流れるときには、図3の矢印bによって示される向きにエアが流れる。そして、吸着ノズル15の下端にある吸着保持面15aに形成されている吸着孔に、周囲のエアが吸引される。これによって、部品Dが吸着保持面15aに吸着されて保持される。
【0055】
第4流路は、切換バルブ18、出力経路17、エアチューブ40、ノズル軸13、およびノズル装着部14を介して、吸着ノズル15とブローバルブ20との間でエアが流れる流路である。ブローバルブ20によってエアの流路が第1流路に切り換えられ、かつ、切換バルブ18によってエアの流路が第4流路に切り換えられる場合、図3の矢印aによって示される向きにエアが流れ、吸着ノズル15の吸着孔からエアが吹き出る。つまり、エア供給源21の駆動によって、正の圧力のエアが、エア供給源21からブローバルブ20および切換バルブ18などを介して吸着ノズル15に流れて、吸着ノズル15の吸着保持面15aに形成されている吸着孔から吹き出る。また、ブローバルブ20によってエアの流路が第2流路に切り換えられ、かつ、切換バルブ18によってエアの流路が第4流路に切り換えられる場合、第2流路および第4流路の気圧が大気圧になるようにエアが流れる。つまり、大気供給源22、ブローバルブ20、切換バルブ18、エアチューブ40、ノズル軸13、ノズル装着部14、および吸着ノズル15のそれぞれの内部の気圧が大気圧になる。
【0056】
流量センサ16は、出力経路17に流れるエアの流量を計測し、その計測結果を示す流量情報d1を出力する。例えば、図3の矢印aによって示される向きに流れるエアの流量は、正の流量として計測され、図3の矢印bによって示される向きに流れるエアの流量は、負の流量として計測される。流量情報d1は、例えば、流量の経時的な変化を波形として示す。このような流量情報d1は、移載ヘッド8に含まれる複数のノズルユニット9のそれぞれの流量センサ16から出力される。
【0057】
吸着保持面15aに部品Dが当接している状態で吸着ノズル15がエアを吸引すると、吸着ノズル15によって部品Dが真空吸着される。このとき、流量センサ16によって計測されるエアの流量は、ほぼゼロである。吸着保持面15aに部品Dが当接していない状態で吸着ノズル15が周囲のエアを吸引しているときには、流量センサ16によって計測されるエアの流量は、負の流量となる。また、吸着ノズル15からエアが吹き出ているときには、流量センサ16によって計測されるエアの流量は、正の流量である。また、大気供給源22、ブローバルブ20、切換バルブ18、エアチューブ40、ノズル軸13、ノズル装着部14、および吸着ノズル15のそれぞれの内部の気圧が大気圧である場合には、流量センサ16によって計測されるエアの流量は、ほぼゼロである。
【0058】
図4は、本実施の形態における部品装着装置1の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0059】
部品装着装置1は、上述のように、基板搬送機構2、部品供給部4、ヘッド移動機構10、部品認識カメラ11、基板認識カメラ12、真空ポンプ19、エア供給源21、大気供給源22、および移載ヘッド8を備える。部品装着装置1は、さらに、装置制御部30、装置記憶部31、入力部32、提示部33、および診断システム100を備える。
【0060】
ヘッド移動機構10は、上述のY軸ビーム6およびX軸ビーム7などを含む機構である。
【0061】
装置制御部30は、部品装着装置1の各構成要素を制御する。例えば、装置制御部30は、CPU(Central Processing Unit)またはプロセッサなどによって構成されている。
【0062】
装置記憶部31は、部品装着装置1が基板3に部品Dを実装するための各種データを格納している記録媒体である。例えば、装置記憶部31は、ハードディスクドライブ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、または半導体メモリなどである。なお、このような装置記憶部31は、揮発性であっても不揮発性であってもよい。また、装置記憶部31は、装置制御部30によって読み出されて実行されるコンピュータプログラムを格納していてもよい。この場合、装置制御部30は、そのコンピュータプログラムを読み出して実行することによって、部品装着装置1の各構成要素を制御する。
【0063】
入力部32は、例えばキーボード、タッチセンサ、タッチパッドまたはマウスなどとして構成されている。このような入力部32は、部品装着装置1を用いて装着基板の生産を行う作業者による入力操作を受け付け、その入力操作に応じた信号を装置制御部30または診断システム100などに出力する。
【0064】
提示部33は、装置制御部30または診断システム100からの提示信号を受け付け、その提示信号に応じた画像および音声のうちの少なくとも一方を出力する。具体的には、提示部33は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどのディスプレイである。この場合、提示部33は、提示信号に応じた画像を表示する。また、提示部33は、スピーカーなどであってもよい。この場合、提示部33は、提示信号に応じた音声を出力する。また、提示部33は、ディスプレイおよびスピーカーを備えていてもよい。
【0065】
診断システム100は、移載ヘッド8の複数のノズルユニット9のそれぞれについて、そのノズルユニット9に含まれる各構成部材の劣化状態を診断する。つまり、診断システム100は、上記各構成部材の現在の劣化度を推定し、さらに、将来の劣化度を推定する。また、診断システム100は、それらの構成部材のメンテナンス時期を予測する。そのノズルユニット9に含まれる各構成部材は、エアが通過する部材である。具体的には、各構成部材は、エアチューブ40、フィルタ41、バルブ、またはシャフトなどである。バルブは、切換バルブ18およびブローバルブ20のうちの少なくとも一方である。シャフトは、例えばノズル軸13である。
【0066】
[診断システムの構成および動作]
図5は、本実施の形態における診断システム100の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0067】
診断システム100は、流量情報d1、生産計画情報d2、および生産実績情報d3を用いて、複数のノズルユニット9のそれぞれに含まれる各構成部材の劣化状態を診断し、その診断結果を示す提示信号を提示部33に出力する。これにより、その診断結果が画像、音声などによって提示部33から提示される。
【0068】
このような診断システム100は、取得部101、メンテナンス処理部102、予測部103、出力部104、学習部110、モデル格納部120、および劣化特定部130を備える。
【0069】
取得部101は、流量情報d1、生産計画情報d2、および生産実績情報d3を取得する。流量情報d1は、移載ヘッド8によって部品Dを吸着して基板3に装着する部品装着装置1におけるその移載ヘッド8に流れるエアの流量に関する情報である。生産計画情報d2は、部品装着装置1を用いて装着基板を生産する計画を示す情報である。つまり、生産計画情報d2は、部品Dが装着された基板3である装着基板を、生産設備を用いて生産する生産計画を示す情報である。例えば、生産計画情報d2は、部品装着装置1の複数のノズルユニット9のそれぞれについて、そのノズルユニット9によって部品Dが吸着されて基板3に装着される回数(以下、装着回数と呼ばれる)を上述の計画として示す。より具体的には、生産計画情報d2は、将来の複数の時点のそれぞれにおける装着回数を示す。生産実績情報d3は、生産計画情報d2にしたがって装着基板を生産するために部品装着装置1が稼働した実績を示す情報である。つまり、生産実績情報d3は、生産設備を用いて装着基板が生産された実績を示す情報である。例えば、生産実績情報d3は、部品装着装置1の複数のノズルユニット9のそれぞれについて、現時点までに、そのノズルユニット9によって部品Dが吸着されて基板3に装着された過去の装着回数を上述の実績として示す。より具体的には、生産実績情報d3は、過去の複数の時点のそれぞれにおける装着回数を示す。
【0070】
取得部101は、流量情報d1を学習部110および劣化特定部130に出力する。さらに、取得部101は、生産計画情報d2および生産実績情報d3を予測部103に出力する。
【0071】
学習部110は、取得部101から流量情報d1を訓練データとして取得し、その流量情報d1を用いた機械学習によって診断モデルを生成し、その診断モデルをモデル格納部120に格納する。診断モデルは、ノズルユニット9に含まれる各構成部材のそれぞれの劣化状態を診断するために用いられる機械学習モデルである。具体的な一例では、診断モデルは、ニューラルネットワークである。このような診断モデルは、流量情報d1の入力に対して、その流量情報d1に対応するノズルユニット9に含まれる各構成部材のそれぞれの劣化状態を示す情報が出力されるように、学習部110が機械学習を行うことによって生成されている。つまり、診断モデルは、流量情報d1と、ノズルユニット9に含まれる各構成部材のそれぞれの劣化状態との関係を示していると言える。
【0072】
モデル格納部120は、診断モデルを格納するための記録媒体である。このようなモデル格納部120は、ハードディスクドライブ、RAM、ROM、または半導体メモリなどである。
【0073】
劣化特定部130は、流量情報d1に基づいて、移載ヘッド8のその流量情報d1に対応するノズルユニット9に含まれる複数の構成部材のそれぞれの劣化状態を特定する。具体的には、劣化特定部130は、取得部101から流量情報d1を取得し、モデル格納部120から診断モデルを取得する。そして、劣化特定部130は、その流量情報d1を診断モデルに入力し、その診断モデルから出力される劣化情報を取得する。この劣化情報は、ノズルユニット9に含まれる各構成部材のそれぞれの劣化状態を示す。劣化特定部130は、このような劣化情報を取得することによって、その各構成部材の劣化状態を特定する。つまり、劣化特定部130は、診断モデルを用いることによって劣化状態を特定する。劣化特定部130は、その特定された劣化状態を示す劣化情報を出力部104、メンテナンス処理部102および予測部103に出力する。なお、劣化情報は、部品装着装置1である生産設備に含まれる各構成部材の過去または現在の劣化状態を示す情報である。また、劣化情報は、複数の過去の時点のそれぞれにおける各構成部材の劣化状態を示していてもよい。
【0074】
メンテナンス処理部102は、劣化特定部130から劣化情報を取得し、その劣化情報に基づいて、ノズルユニット9に含まれる構成部材のメンテナンスに関するメンテナンス情報を生成する。そして、メンテナンス処理部102は、そのメンテナンス情報を出力部104に出力する。
【0075】
予測部103は、移載ヘッド8のノズルユニット9に含まれる各構成部材の将来の劣化状態を推定する。さらに、予測部103は、その劣化状態が規定劣化状態に到達する到達時期をメンテナンス時期として予測する。つまり、予測部103は、劣化特定部130によって特定された劣化状態を示す情報を劣化情報として取得する。そして、予測部103は、その劣化情報と、取得部101によって取得された生産計画情報d2および生産実績情報d3とに基づいて、各構成部材の将来の劣化状態が、予め定められた劣化状態である規定劣化状態に到達する到達時期を予測する。予測部103は、その予測された到達時期を示す到達時期情報を出力部104に出力する。
【0076】
出力部104は、特定された劣化状態を示す劣化情報を出力する。つまり、出力部104は、劣化特定部130から劣化情報を取得すると、その劣化情報を提示信号として提示部33に出力する。これにより、提示部33からは劣化情報の内容(すなわち劣化状態)が提示される。また、出力部104は、予測された到達時期を示す到達時期情報を出力する。つまり、出力部104は、予測部103から到達時期情報を取得すると、その到達時期情報を提示信号として提示部33に出力する。これにより、提示部33からはその到達時期情報の内容(すなわち到達時期)が提示される。さらに、出力部104は、メンテナンス情報を出力する。つまり、出力部104は、メンテナンス処理部102からメンテナンス情報を取得すると、そのメンテナンス情報を提示信号として提示部33に出力する。これにより、提示部33からはそのメンテナンス情報の内容(すなわちメンテナンスに関する内容)が提示される。
【0077】
図6は、学習部110および診断モデルを説明するための図である。
【0078】
学習部110は、特徴量抽出部111と、学習処理部112とを備える。特徴量抽出部111は、訓練データである流量情報d1を取得部101から取得すると、その流量情報d1からエアの流量に関する複数種の特徴量を抽出し、その複数種の特徴量を示す訓練用の特徴量データda1を学習処理部112に出力する。
【0079】
流量情報d1は、例えば、流量センサ16によって計測されたエアの流量の経時変化を示す流量波形である。この流量波形は、例えば、部品装着装置1が装着基板の生産を行っていないときに、ノズル制御部23による制御によってノズルユニット9にエアの吸引または吹き出しを断続的に繰り返し実行させることによって得られる波形であってもよい。また、その流量波形は、吸着ノズル15がノズル装着部14に装着されていないときに得られる波形であってもよい。特徴量抽出部111は、例えば、その流量波形によって示される特徴的な時間または流量を特徴量として抽出する。具体的には、特徴量は、正側のピーク流量、負側のピーク流量、定常流量、応答時間、または定常時間などの数値である。あるいは、特徴量は、それらの数値のうちの2つ以上の数値を用いた演算によって算出される値であってもよく、それらの数値からなるベクトルであってもよい。応答時間は、例えば、切換バルブ18およびブローバルブ20によってエアの流路が切り換えられたときから、エアの流量が安定するまでの時間である。定常時間は、その安定している流量が継続している時間である。定常流量は、その安定している流量である。
【0080】
学習処理部112は、訓練用の特徴量データda1を特徴量抽出部111から取得し、その特徴量データda1を用いた機械学習を行うことによって、診断モデル121を生成し、その診断モデル121をモデル格納部120に格納する。機械学習は、例えば、ニューラルネットワークまたはディープニューラルネットワークなどを用いた学習である。また、機械学習は、教師あり学習であってもよく、教師なし学習であってもよい。また、機械学習は、ランダムフォレスト、SVM(Support Vector Machine)、ガウス過程回帰、SVR(Support Vector Regression)、またはランダムフォレスト回帰であってもよい。機械学習は、指数モデル、パワーモデル、対数モデル、Gompertzモデル、またはLloyd-Lipowモデルを診断モデル121として生成する学習であってもよい。
【0081】
このような学習処理部112は、異常学習部112a、分類学習部112b、および劣化度学習部112cを備えている。異常学習部112aは、訓練用の特徴量データda1を用いた機械学習によって異常判定モデル121aを生成する。この異常判定モデル121aは、例えば、特徴量データda1の入力に対して、その特徴量データda1に対応するノズルユニット9が異常であるか否かを示す異常判定結果情報を出力するモデルである。教師あり学習の場合、異常学習部112aは、訓練用の特徴量データda1と、その特徴量データda1に示される少なくとも1つの特徴量に対応する教師データとを用いて学習を行う。教師データは、ノズルユニット9が異常であるか否かを示す。異常判定モデル121aは、例えば、2種類の特徴量のそれぞれを座標軸とする二次元空間において、ノズルユニット9が異常である領域と、ノズルユニット9が正常である領域とを示す。
【0082】
分類学習部112bは、訓練用の特徴量データda1を用いた機械学習によって異常分類モデル121bを生成する。この異常分類モデル121bは、少なくとも特徴量データda1の入力に対して、その特徴量データda1に対応するノズルユニット9のうちの何れの構成部材が異常であるかを示す異常分類情報を出力するモデルである。教師あり学習の場合、分類学習部112bは、訓練用の特徴量データda1と、その特徴量データda1に示される少なくとも1つの特徴量に対応する教師データとを用いて学習を行う。教師データは、ノズルユニット9のうちの何れの構成部材が異常であるかを示す。
【0083】
劣化度学習部112cは、訓練用の特徴量データda1を用いた機械学習によって劣化度推定モデル121cを生成する。この劣化度推定モデル121cは、少なくとも特徴量データda1の入力に対して、その特徴量データda1に対応するノズルユニット9の構成部材の劣化度を示す劣化度情報を出力するモデルである。教師あり学習の場合、劣化度学習部112cは、訓練用の特徴量データda1と、その特徴量データda1に示される少なくとも1つの特徴量に対応する教師データとを用いて学習を行う。教師データは、ノズルユニット9の構成部材の劣化度を示す。
【0084】
図7は、劣化特定部130および診断モデルを説明するための図である。
【0085】
劣化特定部130は、特徴量抽出部131と、特定処理部132とを備える。特徴量抽出部131は、流量情報d1を取得部101から取得すると、その流量情報d1からエアの流量に関する複数種の特徴量を抽出し、その複数種の特徴量を示す特徴量データda1を特定処理部132に出力する。つまり、劣化特定部130の特徴量抽出部131は、学習部110の特徴量抽出部111と同様の構成および機能を有する。
【0086】
特定処理部132は、特徴量データda1を特徴量抽出部131から取得し、診断モデル121をモデル格納部120から取得する。そして、特定処理部132は、その特徴量データda1を診断モデル121に入力することによって、その診断モデル121から出力される劣化情報dbを取得する。これにより、その特徴量データda1に対応するノズルユニット9に含まれる各構成部材の劣化状態が特定される。具体的には、特定処理部132は、異常処理部132a、分類処理部132b、および劣化度処理部132cを備える。
【0087】
異常処理部132aは、診断モデル121のうちの異常判定モデル121aをモデル格納部120から取得し、特徴量データda1をその異常判定モデル121aに入力する。これにより、異常処理部132aは、その異常判定モデル121aから出力される異常判定結果情報db1を取得する。この異常判定結果情報db1は、その特徴量データda1に対応するノズルユニット9が異常であるか否かを示す。つまり、異常処理部132aは、特徴量データda1に対応するノズルユニット9が異常であるか否かを判定する。
【0088】
分類処理部132bは、診断モデル121のうちの異常分類モデル121bをモデル格納部120から取得し、特徴量データda1をその異常分類モデル121bに入力する。これにより、分類処理部132bは、その異常分類モデル121bから出力される異常分類情報db2を取得する。この異常分類情報db2は、その特徴量データda1に対応するノズルユニット9のうちの何れの構成部材が異常であるかを示す。つまり、分類処理部132bは、特徴量データda1に対応するノズルユニット9に含まれる複数の構成部材のそれぞれについて、その構成部材の状態を正常および異常の何れかに分類する。
【0089】
劣化度処理部132cは、診断モデル121のうちの劣化度推定モデル121cをモデル格納部120から取得し、特徴量データda1をその劣化度推定モデル121cに入力する。これにより、劣化度処理部132cは、その劣化度推定モデル121cから出力される劣化度情報db3を取得する。この劣化度情報db3は、ノズルユニット9の構成部材の劣化度を示す。つまり、劣化度処理部132cは、劣化度推定モデル121cを用いて、ノズルユニット9の構成部材の劣化度を推定する。このように、劣化特定部130は、ノズルユニット9に含まれる少なくとも1つの構成部材のそれぞれの劣化の度合いを示す劣化度を推定することによって、劣化状態を特定する。また、その劣化度は、劣化の度合いが大きいほど大きい値を示す。
【0090】
図8は、劣化情報dbの具体的な一例を示す図である。
【0091】
劣化特定部130は、移載ヘッド8に含まれる複数のノズルユニット9のそれぞれについて、そのノズルユニット9の劣化情報dbを生成して出力する。劣化情報dbは、図8に示すように、異常判定結果情報db1、異常分類情報db2、および劣化度情報db3を含む。具体的な例では、異常判定結果情報db1は、その異常判定結果情報db1に対応するノズルユニット9が異常であることを示す。そして、異常分類情報db2は、そのノズルユニット9に含まれる各構成部材が正常であるか、異常であるかを示す。例えば、異常分類情報db2は、フィルタ41が正常であり、切換バルブ18などのバルブが正常であり、エアチューブ40が異常であり、ノズル軸13であるシャフトが正常であることを示す。劣化度情報db3は、そのノズルユニット9に含まれる各構成要素の劣化度を0~10の整数値によって示す。劣化度が10に近いほど、その劣化度は、劣化の度合いが大きいことを示し、劣化度が0に近いほど、その劣化度は、劣化の度合いが小さいことを示す。例えば、劣化度情報db3は、フィルタ41の劣化度「1」と、バルブの劣化度「5」と、エアチューブ40の劣化度「9」と、シャフトの劣化度「6」とを示す。
【0092】
本実施の形態では、このような劣化情報dbの内容が提示部33から提示される。したがって、部品装着装置1を用いて作業を行う作業者は、その出力された劣化情報dbから、移載ヘッド8に含まれる少なくとも1つの構成部材のそれぞれの劣化状態を把握することができる。その結果、構成部材が正常か否かのような単純な状態よりも移載ヘッド8の詳細な状態を診断することができる。複数の構成部材のそれぞれの劣化状態が診断されるため、作業者は、それらの構成部材のメンテナンスが必要か、そのメンテナンスの準備をしておく必要があるのかを容易に判断することができる。したがって、作業者は、メンテナンスが必要でない構成部材に対して、メンテナンスを無駄に行ってしまうことを抑制することができる。あるいは、作業者は、メンテナンスの準備が必要でない構成部材に対して、メンテナンスまたはその準備を無駄に行ってしまうことを抑制することができる。その結果、メンテナンスの効率化、メンテナンス時間の短縮化、および、メンテナンスに係る費用の削減を図ることができる。このように、生産設備である部品装着装置1の作業者によるメンテナンスをより適切に支援することができる。
【0093】
メンテナンス処理部102は、このような劣化情報dbに基づいて、その劣化情報dbに対応するノズルユニット9に含まれる構成部材のメンテナンスに関するメンテナンス情報を生成する。具体的には、メンテナンス処理部102は、ノズルユニット9に含まれる複数の構成部材のそれぞれについて、当該構成部材に対して推定された劣化度が閾値を超えるか否かを判定し、その閾値を超えると判定された劣化度を有する構成部材のメンテナンスに関するメンテナンス情報を生成する。そのメンテナンス情報は、例えば、構成部材のメンテナンスの実施を促す内容のメンテナンス警報情報、または、構成部材のメンテナンスの実施のための準備を促す内容のメンテナンス予報情報である。メンテナンス警報情報は、メンテナンスが今すぐに必要であることを作業者に知らせるための警報または警告であるとも言える。メンテナンス予報情報は、メンテナンスが必要なタイミングが迫っていることを作業者に事前に知らせるための予報または予告であるとも言える。メンテナンス処理部102は、メンテナンス警報情報、メンテナンス予報情報などのメンテナンス情報を生成すると、そのメンテナンス情報を出力部104に出力する。
【0094】
出力部104は、メンテナンス処理部102からメンテナンス情報を取得すると、そのメンテナンス情報を提示信号として提示部33に出力する。これにより、メンテナンス情報の内容が画像または音声などによって提示部33に提示される。
【0095】
また、劣化特定部130は、移載ヘッド8のノズルユニット9に含まれる1つ以上の構成部材のそれぞれに異常があるか否かを判定し、その1つ以上の構成部材のうち、異常があると判定された少なくとも1つの構成部材のそれぞれの劣化度を推定してもよい。言い換えれば、劣化特定部130は、構成部材に異常があるか否かを判定し、異常があると判定した場合に、その構成部材の劣化度を推定してもよい。
【0096】
図9は、異常処理部132a、分類処理部132b、および劣化度処理部132cの入出力を説明するための図である。
【0097】
異常処理部132a、分類処理部132b、および劣化度処理部132cのそれぞれは、入力データに対して、新たな情報をその入力データに付加して出力してもよい。つまり、異常処理部132aは、特徴量抽出部131から出力された特徴量データda1を入力データとして取得し、その入力データに新たな情報である異常判定結果情報db1を付加して出力する。
【0098】
分類処理部132bは、異常処理部132aから出力された特徴量データda1および異常判定結果情報db1を入力データとして取得し、その入力データに新たな情報である異常分類情報db2を付加して出力する。
【0099】
劣化度処理部132cは、分類処理部132bから出力された特徴量データda1、異常判定結果情報db1、および異常分類情報db2を入力データとして取得し、その入力データに新たな情報である劣化度情報db3を付加して出力する。このとき出力される劣化度情報db3は、異常分類情報db2において異常に分類されている構成部材(異常部材とも呼ばれる)の劣化度を示していてもよい。さらに、劣化度処理部132cは、特徴量抽出部131から出力された特徴量データda1を入力データとして取得してもよい。この場合、劣化度処理部132cは、その特徴量データda1に基づいて、異常分類情報db2において正常に分類されている構成部材(正常部材とも呼ばれる)の劣化度を示す劣化度情報db3を出力してもよい。
【0100】
図10は、予測部103の処理を説明するための図である。
【0101】
予測部103は、取得部101から生産実績情報d3を取得し、劣化特定部130から劣化情報dbを取得する。生産実績情報d3は、移載ヘッド8の複数のノズルユニット9のそれぞれについて、そのノズルユニット9によって部品Dが基板3に装着された装着回数を示す装着回数情報を含む。そして、予測部103は、その装着回数情報と劣化情報dbとに基づいて、複数のノズルユニット9のそれぞれについて、そのノズルユニット9に含まれる各構成部材の将来の劣化状態を推定する。
【0102】
例えば、図10のグラフは、1つのノズルユニット9に含まれる1つの構成部材の劣化度と、そのノズルユニット9によって部品Dが基板3に装着される装着回数との関係を示す。そのグラフの横軸は装着回数を示し、縦軸は劣化度を示す。
【0103】
予測部103は、現在または過去の装着回数と、その装着回数における劣化度とを示す劣化点(図10中の黒丸印)を、生産実績情報d3および劣化情報dbから特定する。具体的には、予測部103は、現在または過去の時点ごとに、生産実績情報d3の装着回数情報に示されるその時点の装着回数と、その時点で得られた劣化情報dbに示される劣化度とを関連付けることによって、現在または過去の各時点における劣化点を特定する。
【0104】
予測部103は、1つ以上の劣化点を特定すると、それらの劣化点に対する近似曲線を劣化近似曲線として算出する。なお、その劣化近似曲線は、例えば最小二乗法によって算出されてもよい。つまり、予測部103は、その劣化近似曲線を算出することによって、将来の劣化状態を推定する。具体的には、予測部103は、現時点の装着回数m0よりも多い装着回数と、構成部材の劣化度との関係がその劣化近似曲線によって示されると推定する。したがって、予測部103は、装着回数mよりも多い装着回数における劣化度を示す予測劣化点(図10中の四角印)が、その劣化近似曲線上にあると判断する。このように、予測部103は、構成部材の現時点以降の将来の劣化状態として、その構成部材の劣化の度合いが大きいほど大きい値を示す将来の劣化度を推定する。
【0105】
次に、予測部103は、構成部材の将来の劣化状態が、予め定められた劣化状態である規定劣化状態に到達する到達時期を予測する。その規定劣化状態は、構成部材のメンテナンスの実施が必要な第1規定劣化状態、または、そのメンテナンスの実施のための準備が必要な第2規定劣化状態である。つまり、第1規定劣化状態は、構成部材に対して上述のメンテナンス警報情報が生成されて、そのメンテナンス警報情報の内容が提示部33から提示されるときの、その構成部材の劣化状態である。また、第2規定劣化状態は、構成部材に対して上述のメンテナンス予報情報が生成されて、そのメンテナンス予報情報の内容が提示部33から提示されるときの、その構成部材の劣化状態である。
【0106】
具体的には、予測部103は、将来の劣化度が、第1規定劣化状態に対応する第1閾値に到達する到達時期、または、第2規定劣化状態に対応する第2閾値に到達する到達時期を、生産計画情報d2に基づいて予測する。つまり、予測部103は、劣化近似曲線において劣化度が第1閾値であるときの装着回数m1を特定する。そして、予測部103は、生産計画情報d2を参照し、現時点の装着回数m0から装着回数m1に至るまでの期間T1をその生産計画情報d2から特定する。なお、生産計画情報d2には、ノズルユニット9ごとの時間経過と装着回数との関係が示されている。予測部103は、現時点からその特定された期間T1経過後のタイミングを、構成部材の将来の劣化状態が第1規定劣化状態に到達する到達時期として予測する。この到達時期は、メンテナンス実施時期とも呼ばれる。
【0107】
同様に、予測部103は、劣化近似曲線において劣化度が第2閾値であるときの装着回数m2を特定する。なお、第2閾値は、第1閾値よりも小さい値である。そして、予測部103は、生産計画情報d2を参照し、現時点の装着回数m0から装着回数m2に至るまでの期間T2をその生産計画情報d2から特定する。予測部103は、現時点からその特定された期間T2経過後のタイミングを、構成部材の将来の劣化状態が第2規定劣化状態に到達する到達時期として予測する。この到達時期は、メンテナンス準備時期とも呼ばれる。なお、上述のメンテナンス実施時期およびメンテナンス準備時期は、メンテナンス時期と総称される。また、到達時期情報は、そのメンテナンス時期を示す。
【0108】
このように、本実施の形態では、劣化した構成部材のメンテナンスの実施が必要となる時期、またはそのメンテナンスの実施のための準備が必要となる時期が到達時期として予測され、その到達時期を示す到達時期情報が出力される。したがって、生産設備である部品装着装置1を用いて作業を行う作業者は、その到達時期、すなわちメンテナンス実施時期またはメンテナンス準備時期を把握することができる。その結果、作業者は、それらの時期を見越して作業を行うことができ、作業効率を向上することができる。また、メンテナンスの効率化を図ることができる。このように、作業者による生産設備のメンテナンスをより適切に支援することができる。
【0109】
[診断システムの処理の流れ]
図11は、診断システム100による劣化状態の特定に関する処理動作の一例を示すフローチャートである。
【0110】
まず、診断システム100の取得部101は、流量情報d1を取得する(ステップS1)。次に、劣化特定部130の特徴量抽出部131は、その流量情報d1から特徴量を抽出することによって特徴量データda1を生成する(ステップS2)。
【0111】
そして、劣化特定部130の特定処理部132は、ステップS3、S4およびS5の処理を実行する。つまり、特定処理部132の異常処理部132aは、ノズルユニット9に異常があるか否かを判定する(ステップS3)。特定処理部132の分類処理部132bは、ノズルユニット9に含まれる各構成部材の状態を異常と正常とに分類する(ステップS4)。特定処理部132の劣化度処理部132cは、ノズルユニット9に含まれる各構成部材の劣化度を推定する(ステップS5)。
【0112】
出力部104は、その劣化特定部130の特定処理部132によって行われたステップS3、S4およびS5の処理の結果を示す劣化情報dbを、診断結果として提示部33に出力する(ステップS6)。これにより、劣化情報dbの内容が提示部33から提示される。
【0113】
図12は、診断システム100によるメンテナンス指示に関する処理動作の一例を示すフローチャートである。
【0114】
まず、診断システム100は、診断処理を実行する(ステップS10)。この診断処理は、図11のフローチャートに含まれるステップS1~S5の処理である。
【0115】
そして、診断システム100のメンテナンス処理部102は、ステップS10の診断処理で得られた各構成部材の劣化度が第1閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS11)。ここで、メンテナンス処理部102は、構成部材の劣化度が第1閾値よりも大きいと判定すると(ステップS11のYes)、出力部104および提示部33を介してメンテナンスの実行を作業者に指示する(ステップS12)。つまり、メンテナンス処理部102は、ノズルユニット9に含まれる複数の構成部材のそれぞれについて、当該構成部材に対して推定された劣化度が第1閾値を超えるか否かを判定する。そして、メンテナンス処理部102は、第1閾値を超えると判定された劣化度を有する構成部材のメンテナンスの実施を促す内容のメンテナンス警報情報を生成する。その後、メンテナンス処理部102は、そのメンテナンス警報情報を出力部104に出力し、出力部104は、そのメンテナンス警報情報を提示部33に出力する。これにより、提示部33からはそのメンテナンス警報情報の内容が提示される。
【0116】
このように、本実施の形態では、例えば激しく劣化した構成部材に対しては、その構成部材のメンテナンスの実施を促す内容のメンテナンス警報情報が生成されて出力される。その結果、メンテナンス警報情報が作業者に通知され、作業者は、その構成部材のメンテナンスを迅速かつ適切に行うことができる。
【0117】
一方、ステップS11において、メンテナンス処理部102は、構成部材の劣化度が第1閾値以下であると判定すると(ステップS11のNo)、さらに、その劣化度が第2閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS13)。ここで、メンテナンス処理部102は、構成部材の劣化度が第2閾値よりも大きいと判定すると(ステップS13のYes)、出力部104および提示部33を介してメンテナンスの準備を作業者に指示する(ステップS14)。この第2閾値は、第1閾値未満の数値である。つまり、メンテナンス処理部102は、ノズルユニット9に含まれる複数の構成部材のそれぞれについて、当該構成部材に対して推定された劣化度が第1閾値以下であり、かつ、その劣化度が第1閾値よりも小さい第2閾値を超えるか否かを判定する。そして、メンテナンス処理部102は、第1閾値以下で第2閾値を超えると判定された劣化度を有する構成部材のメンテナンスの実施のための準備を促す内容のメンテナンス予報情報を生成する。その後、メンテナンス処理部102は、そのメンテナンス予報情報を出力部104に出力し、出力部104は、そのメンテナンス予報情報を提示部33に出力する。これにより、提示部33からはそのメンテナンス予報情報の内容が提示される。
【0118】
このように、本実施の形態では、例えば、激しく劣化していなくても、激しい劣化の状態に近づいている構成部材に対しては、その構成部材のメンテナンスの実施のための準備を促す内容のメンテナンス予報情報が生成されて出力される。その結果、メンテナンス予報情報が作業者に通知され、作業者は、その構成部材のメンテナンスの準備を事前に余裕をもって適切に行うことができる。
【0119】
さらに、出力部104は、ステップS10の診断処理の結果を示す劣化情報dbを、診断結果として提示部33に出力する(ステップS6)。これにより、劣化情報dbの内容が提示部33から提示される。
【0120】
図13は、診断システム100によるメンテナンス時期予測に関する処理動作の一例を示すフローチャートである。
【0121】
まず、診断システム100は、診断処理を実行する(ステップS10)。この診断処理は、図11のフローチャートに含まれるステップS1~S5の処理である。
【0122】
そして、診断システム100の取得部101は、生産計画情報d2を取得し(ステップS21)、生産実績情報d3を取得する(ステップS22)。予測部103は、その取得された生産実績情報d3に基づいて、ノズルユニット9に含まれる各構成部材の将来の劣化度を推定する(ステップS23)。この将来の劣化度は、そのノズルユニット9が将来の部品Dの装着に用いられる装着回数に対して推定される。そして、予測部103は、その将来の劣化度と、ステップS21で取得された生産計画情報d2とに基づいて、ノズルユニット9の各構成部材のメンテナンス時期を予測する(ステップS24)。このメンテナンス時期は、将来の劣化度が第1規定劣化状態に対応する第1閾値に到達するメンテナンス実施時期、または、将来の劣化度が第2規定劣化状態に対応する第2閾値に到達するメンテナンス準備時期である。
【0123】
次に、出力部104は、ステップS24で予測されたメンテナンス時期を示す到達時期情報を提示部33に出力する(ステップS25)。これにより、到達時期情報の内容(すなわちメンテナンス時期)が提示部33から提示される。
【0124】
以上のように、本実施の形態における診断システム100では、移載ヘッド8に含まれる少なくとも1つの構成部材のそれぞれの劣化状態が特定されて、その劣化状態を示す劣化情報dbが出力される。その結果、生産設備である部品装着装置1の作業者によるメンテナンスをより適切に支援することができる。
【0125】
また、劣化特定部130は、構成部材の劣化の度合いを示す劣化度を推定することによって、その構成部材の劣化状態を特定する。これにより、作業者は劣化状態をより詳細に把握することができる。
【0126】
また、劣化特定部130は、移載ヘッド8に含まれる1つ以上の構成部材のそれぞれに異常があるか否かを判定し、その1つ以上の構成部材のうち、異常があると判定された少なくとも1つの構成部材のそれぞれの劣化度を推定してもよい。これにより、異常と判定された構成部材に対して劣化度が推定されるため、劣化している可能性が比較的に高いと想定される構成部材に対して劣化度を推定し、劣化している可能性が比較的に低いと想定される構成部材に対する劣化度の推定を省くことができる。その結果、劣化度の推定の処理負担を軽減することができる。また、異常と判定された構成部材に対して劣化度が推定されるため、作業者は、その異常と判定された構成部材に対して、どのようなメンテナンスが必要か、あるいはメンテナンスが不要かを容易に把握することができる。例えば、構成部材の経過観察、構成部材の清掃、構成部材の補修、構成部材に含まれる部品の交換、構成部材そのものの交換など、必要とされるメンテナンスの態様を容易に把握することができる。
【0127】
また、メンテナンス処理部102は、少なくとも1つの構成部材のそれぞれについて、当該構成部材に対して推定された劣化度が閾値を超えるか否かを判定し、閾値を超えると判定された劣化度を有する構成部材のメンテナンスに関するメンテナンス情報を生成する。そして、出力部104は、そのメンテナンス情報を出力する。これにより、例えば劣化した構成部材に対しては、その構成部材のメンテナンスに関するメンテナンス情報が生成されて出力される。その結果、メンテナンス情報が作業者に通知され、作業者は、その構成部材のメンテナンスを迅速に、あるいは適切に行うことができる。
【0128】
また、劣化特定部130は、流量情報d1と少なくとも1つの構成部材のそれぞれの劣化状態との関係を示す診断モデル121を用いることによって、劣化状態を特定する。これにより、適切に劣化状態を特定することができる。
【0129】
また、その診断モデル121は、流量情報d1の入力に対して少なくとも1つの構成部材のそれぞれの劣化状態を示す情報が出力されるように機械学習を行うことによって生成されている。これにより、機械学習を適切に行うことによって、劣化状態の特定の精度を高めることができる。
【0130】
また、本実施の形態における診断システム100では、劣化した構成部材のメンテナンスの実施が必要となる時期、またはそのメンテナンスの実施のための準備が必要となる時期が到達時期として予測され、その到達時期を示す到達時期情報が出力される。したがって、作業者による生産設備のメンテナンスをより適切に支援することができる。
【0131】
また、劣化情報dbは、複数の過去の時点のそれぞれにおける構成部材の劣化状態を示す。これにより、劣化状態の経時的な変化に基づいて将来の劣化状態を適切に推定することができ、その結果、到達時期の予測精度を向上することができる。
【0132】
また、診断システム100では、移載ヘッド8に含まれる構成部材の劣化状態が流量情報d1に基づいて特定されて、その特定された劣化状態が到達時期の予測に用いられる。したがって、その劣化状態を適切に特定することができ、到達時期の予測精度を向上することができる。
【0133】
また、診断システム100では、劣化状態が劣化度としてより詳細に推定されるため、到達時期の予測精度をさらに向上することができる。
【0134】
また、診断システム100では、異常と判定された構成部材に対して劣化度が推定される場合には、劣化の兆候があると想定される構成部材に対して到達時期を予測し、劣化の兆候がないと想定される構成部材に対する到達時期の予測を省くことができる。その結果、到達時期の予測の処理負担を軽減することができる。
【0135】
また、生産実績情報d3は、移載ヘッド8によって部品Dが基板3に装着された装着回数を示す装着回数情報を含み、予測部103は、装着回数情報と劣化情報dbとに基づいて構成部材の将来の劣化状態を推定する。これにより、過去の装着回数に対する劣化度に基づいて、将来の装着回数に対する劣化度を適切に推定することができる。
【0136】
(その他の形態)
以上、本開示に係る診断システムおよび診断方法などについて、上記実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を上記実施の形態に施したものも、本開示の範囲に含まれてもよい。
【0137】
例えば、上記実施の形態では、診断システム100は、部品装着装置1の内部に備えられているが、部品装着装置1の外部に備えられていてもよく、部品装着装置1に接続された例えばパーソナルコンピュータとして構成されていてもよい。
【0138】
例えば、上記実施の形態では、移載ヘッド8には複数のノズルユニット9が備えられているが、移載ヘッド8に備えられるノズルユニット9の数は、1つであってもよい。また、上記実施の形態では、ノズルユニット9に含まれるエアチューブ40、フィルタ41、バルブなどの複数の構成部材のそれぞれについて、劣化状態が特定され、メンテナンス時期が予測されるが、1つの構成部材に対して劣化度の特定、メンテナンス時期の予測などが行われてもよい。言い換えれば、移載ヘッド8に含まれる少なくとも1つの構成部材に対して特定、予測などの各処理が行われてもよい。
【0139】
また、上記実施の形態では、学習部110が特徴量抽出部111を備え、劣化特定部130が特徴量抽出部131を備えるが、特徴量抽出部111および131は備えられていなくてもよい。言い換えれば、上記実施の形態は、流量情報d1から各種の特徴量が抽出され、それらの特徴量を示す特徴量データda1が、学習処理部112および特定処理部132に用いられる。しかし、流量情報d1が学習処理部112および特定処理部132に直接用いられてもよい。つまり、流量情報d1に示される流量波形が、機械学習に直接用いられてもよく、劣化状態の特定などに直接用いられてもよい。
【0140】
また、上記実施の形態では、劣化特定部130に異常処理部132aおよび分類処理部132bが備えられているが、これらの構成要素が備えられていなくてもよい。つまり、移載ヘッド8の少なくとも1つの構成部材に対して劣化度が推定されれば、ノズルユニット9が異常であるか否かの判定、および、それらの構成部材の異常または正常の分類は、行われなくてもよい。また、異常処理部132aによって判定される異常、および、分類処理部132bによって分類される異常は、構成部材の劣化に起因する異常であってよく、劣化と異なる要因に基づく異常であってもよい。
【0141】
また、上記実施の形態では、部品装着装置1は生産設備の一例であるが、生産設備は、部品装着装置1と異なる装置であってもよい。また、生産設備は、作業設備と呼ばれてもよい。さらに、上記実施の形態では、生産設備を用いて生産を行う作業者に対して各種の情報が提示されて、その作業者が生産設備のメンテナンスを行うが、そのような作業者以外の人にそれらの情報が提示され、作業者以外の人がメンテナンスを行ってもよい。
【0142】
また、上記実施の形態では、診断システム100は、メンテナンス処理部102および予測部103を備えているが、これらのうちの一方のみを備えていてもよい。また、図12に示す、メンテナンス処理部102に用いられる第1閾値および第2閾値と、図10に示す、予測部103に用いられる第1閾値および第2閾値とは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0143】
また、上記実施の形態では、診断モデル121は、機械学習モデルであるが、各種の特徴量とノズルユニット9の状態とを関連付けて示すテーブルであってもよい。ノズルユニット9の状態は、ノズルユニット9の正常または異常であってもよく、ノズルユニット9に含まれる各構成部材の正常または異常であってもよく、その各構成部材の劣化度であってもよい。
【0144】
なお、上記実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)またはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。ここで、上記実施の形態の診断システム100などを実現するソフトウェアは、図11図13に示すフローチャートに含まれる各ステップをコンピュータに実行させるプログラムである。
【0145】
なお、以下のような場合も本開示に含まれる。
【0146】
(1)上記の各装置は、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、ハードディスクユニット、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムである。前記RAMまたはハードディスクユニットには、コンピュータプログラムが記憶されている。前記マイクロプロセッサが、前記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、各装置は、その機能を達成する。ここでコンピュータプログラムは、所定の機能を達成するために、コンピュータに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
【0147】
(2)上記の各装置を構成する構成要素の一部または全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしてもよい。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどを含んで構成されるコンピュータシステムである。前記RAMには、コンピュータプログラムが記憶されている。前記マイクロプロセッサが、前記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0148】
(3)上記の各装置を構成する構成要素の一部または全部は、各装置に脱着可能なICカードまたは単体のモジュールから構成されているとしてもよい。前記ICカードまたは前記モジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどから構成されるコンピュータシステムである。前記ICカードまたは前記モジュールは、上記の超多機能LSIを含むとしてもよい。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、前記ICカードまたは前記モジュールは、その機能を達成する。このICカードまたはこのモジュールは、耐タンパ性を有するとしてもよい。
【0149】
(4)本開示は、上記に示す方法であるとしてもよい。また、これらの方法をコンピュータにより実現するコンピュータプログラムであるとしてもよいし、前記コンピュータプログラムからなるデジタル信号であるとしてもよい。
【0150】
また、本開示は、前記コンピュータプログラムまたは前記デジタル信号をコンピュータ読み取り可能な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、半導体メモリなどに記録したものとしてもよい。また、これらの記録媒体に記録されている前記デジタル信号であるとしてもよい。
【0151】
また、本開示は、前記コンピュータプログラムまたは前記デジタル信号を、電気通信回線、無線または有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送するものとしてもよい。
【0152】
また、本開示は、マイクロプロセッサとメモリを備えたコンピュータシステムであって、前記メモリは、上記コンピュータプログラムを記憶しており、前記マイクロプロセッサは、前記コンピュータプログラムにしたがって動作するとしてもよい。
【0153】
また、前記プログラムまたは前記デジタル信号を前記記録媒体に記録して移送することにより、または前記プログラムまたは前記デジタル信号を前記ネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしてもよい。
【0154】
(5)上記実施の形態及びその他の形態を組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本開示は、例えば生産設備を管理するシステムなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0156】
1 部品装着装置
1a 基台
2 基板搬送機構
3 基板
4 部品供給部
5 テープフィーダ
6 Y軸ビーム
7 X軸ビーム
8 移載ヘッド
8a 結合プレート
9 ノズルユニット
9a ノズル駆動部
10 ヘッド移動機構
11 部品認識カメラ
12 基板認識カメラ
13 ノズル軸
14 ノズル装着部
15 吸着ノズル
15a 吸着保持面
16 流量センサ
17 出力経路
18 切換バルブ
19 真空ポンプ
20 ブローバルブ
21 エア供給源
22 大気供給源
23 ノズル制御部
30 装置制御部
31 装置記憶部
32 入力部
33 提示部
40 エアチューブ
41 フィルタ
100 診断システム
101 取得部
102 メンテナンス処理部
103 予測部
104 出力部
110 学習部
111 特徴量抽出部
112 学習処理部
112a 異常学習部
112b 分類学習部
112c 劣化度学習部
120 モデル格納部
121 診断モデル
121a 異常判定モデル
121b 異常分類モデル
121c 劣化度推定モデル
130 劣化特定部
131 特徴量抽出部
132 特定処理部
132a 異常処理部
132b 分類処理部
132c 劣化度処理部
d1 流量情報
d2 生産計画情報
d3 生産実績情報
da1 特徴量データ
db 劣化情報
db1 異常判定結果情報
db2 異常分類情報
db3 劣化度情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13