IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パイオニア株式会社の特許一覧

特開2023-66646音声出力装置、音声出力方法、プログラム及び記憶媒体
<>
  • 特開-音声出力装置、音声出力方法、プログラム及び記憶媒体 図1
  • 特開-音声出力装置、音声出力方法、プログラム及び記憶媒体 図2
  • 特開-音声出力装置、音声出力方法、プログラム及び記憶媒体 図3
  • 特開-音声出力装置、音声出力方法、プログラム及び記憶媒体 図4
  • 特開-音声出力装置、音声出力方法、プログラム及び記憶媒体 図5
  • 特開-音声出力装置、音声出力方法、プログラム及び記憶媒体 図6
  • 特開-音声出力装置、音声出力方法、プログラム及び記憶媒体 図7
  • 特開-音声出力装置、音声出力方法、プログラム及び記憶媒体 図8
  • 特開-音声出力装置、音声出力方法、プログラム及び記憶媒体 図9
  • 特開-音声出力装置、音声出力方法、プログラム及び記憶媒体 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066646
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】音声出力装置、音声出力方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/36 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
G01C21/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177343
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】藤原 稔樹
(72)【発明者】
【氏名】飯澤 高志
(72)【発明者】
【氏名】倉持 敬太
(72)【発明者】
【氏名】山中 敦博
(72)【発明者】
【氏名】福井 孝太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩田 匡弘
(72)【発明者】
【氏名】椎野 多貴
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 愛帆
(72)【発明者】
【氏名】白川 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】曽根 崇
【テーマコード(参考)】
2F129
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB02
2F129BB34
2F129BB40
2F129BB70
2F129EE43
2F129EE52
2F129EE73
2F129EE80
2F129FF11
2F129GG17
2F129GG18
2F129GG28
2F129HH02
2F129HH03
2F129HH12
2F129HH18
2F129HH20
2F129HH21
2F129HH24
2F129HH40
(57)【要約】
【課題】ユーザにとってわかりやすい方法で音声による経路案内を行うことが可能な音声出力装置を提供する。
【解決手段】上記の音声出力装置において、発話地点決定部は、移動体の案内経路に含まれる各案内地点に対して、案内音声の発話を行う複数の発話地点を決定する。案内音声生成部は、各案内地点に対応する複数の発話地点について、同一種類の目印を用いた案内音声を生成する。音声出力部は、複数の発話地点において、生成された案内音声を出力する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の案内経路に含まれる各案内地点に対して、案内音声の発話を行う複数の発話地点を決定する発話地点決定部と、
前記各案内地点に対応する複数の発話地点について、同一種類の目印を用いた案内音声を生成する案内音声生成部と、
前記複数の発話地点において、生成された案内音声を出力する音声出力部と、
を備える音声出力装置。
【請求項2】
前記目印の1つの種類は概念的目印であり、他の1つの種類は具体的目印である請求項1に記載の音声出力装置。
【請求項3】
前記概念的目印は、前記案内地点までの距離又は時間を含み、前記具体的目印は、特徴的な道路形状、信号機、交差点、建物、ランドマークの少なくとも1つを含む請求項2に記載の音声出力装置。
【請求項4】
前記案内音声生成部は、前記発話地点と前記案内地点との間に具体的目印が存在する場合には、具体的目印を用いた音声案内を生成する請求項2に記載の音声出力装置。
【請求項5】
前記案内地点が市街地に属するか、郊外に属するかを判定するエリア判定部を備え、
前記案内音声生成部は、前記案内地点が市街地に属する場合は前記具体的目印を用い、前記案内地点が郊外に属する場合は前記概念的目印を用いる請求項1乃至4のいずれか一項に記載の音声出力装置。
【請求項6】
移動体の案内経路に含まれる各案内地点に対して、案内音声の発話を行う複数の発話地点を決定し、
前記各案内地点に対応する複数の発話地点について、同一種類の目印を用いた案内音声を生成し、
前記複数の発話地点において、生成された案内音声を出力する音声出力方法。
【請求項7】
移動体の案内経路に含まれる各案内地点に対して、案内音声の発話を行う複数の発話地点を決定し、
前記各案内地点に対応する複数の発話地点について、同一種類の目印を用いた案内音声を生成し、
前記複数の発話地点において、生成された案内音声を出力する処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムを記憶したことを特徴とする記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声による経路案内に関する。
【背景技術】
【0002】
主として音声により目的地への経路案内を行うナビゲーション装置が知られている。例えば、特許文献1には、現在地から目的地までの距離が小さいほど、音場の広がりを大きくし、かつ、スピーカから出力される音が使用者の頭部に対して目的地の方向から音が聞こえるように定位させることで、現在地から目的地までのおおよその距離や方位を通知する音声ナビゲーションシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-138277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
音声による経路案内では、案内地点をユーザに正しく伝えるために各種の目印が利用される。例えば、目印としては、案内地点までの距離又は時間、信号機、交差点、建物、ランドマークなどが用いられる。しかし、異なる種類の目印を用いた案内が混在すると、ユーザにとってはわかりにくくなる傾向がある。例えば、1つの案内地点について、距離を用いた案内、信号機を用いた案内、時間を用いた案内などが混ざると、ユーザにとってわかりにくい案内となってしまう。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ユーザにとってわかりやすい方法で音声による経路案内を行うことが可能な音声出力装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項に記載の発明は、音声出力装置であって、移動体の案内経路に含まれる各案内地点に対して、案内音声の発話を行う複数の発話地点を決定する発話地点決定部と、前記各案内地点に対応する複数の発話地点について、同一種類の目印を用いた案内音声を生成する案内音声生成部と、前記複数の発話地点において、生成された案内音声を出力する音声出力部と、を備える。
【0007】
また、請求項に記載の発明は、音声出力方法であって、移動体の案内経路に含まれる各案内地点に対して、案内音声の発話を行う複数の発話地点を決定し、前記各案内地点に対応する複数の発話地点について、同一種類の目印を用いた案内音声を生成し、前記複数の発話地点において、生成された案内音声を出力する。
【0008】
また、請求項に記載の発明は、プログラムであって、移動体の案内経路に含まれる各案内地点に対して、案内音声の発話を行う複数の発話地点を決定し、前記各案内地点に対応する複数の発話地点について、同一種類の目印を用いた案内音声を生成し、前記複数の発話地点において、生成された案内音声を出力する処理をコンピュータに実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施例に係る音声案内システムの構成例を示す。
図2】音声案内装置の概略構成の一例を示す。
図3】第1の音声案内方法において音声案内に使用する目印の例を示す。
図4】ある案内地点に関する音声案内の例を説明する図である。
図5】第1の音声案内方法による経路案内処理のフローチャートである。
図6】第2の音声案内方法において音声案内に使用する目印の例を示す。
図7】第2の音声案内方法による経路案内処理のフローチャートである。
図8】案内地点に優先順位の高い具体的目印が無い場合の案内の例を示す。
図9】第2実施例に係る音声案内システムの構成例である。
図10】サーバ装置の概略構成の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の1つの好適な実施形態では、音声出力装置は、移動体の案内経路に含まれる各案内地点に対して、案内音声の発話を行う複数の発話地点を決定する発話地点決定部と、前記各案内地点に対応する複数の発話地点について、同一種類の目印を用いた案内音声を生成する案内音声生成部と、前記複数の発話地点において、生成された案内音声を出力する音声出力部と、を備える。
【0011】
上記の音声出力装置において、発話地点決定部は、移動体の案内経路に含まれる各案内地点に対して、案内音声の発話を行う複数の発話地点を決定する。案内音声生成部は、各案内地点に対応する複数の発話地点について、同一種類の目印を用いた案内音声を生成する。音声出力部は、複数の発話地点において、生成された案内音声を出力する。上記の音声出力装置によれば、各発話地点において同一種類の目印を使用することにより、ユーザにわかりやすい音声案内が可能となる。
【0012】
上記の音声出力装置の一態様では、目印の1つの種類は概念的目印であり、他の1つの種類は具体的目印である。また、好適な例では、概念的目印は、案内地点までの距離又は時間を含み、具体的目印は、特徴的な道路形状、信号機、交差点、建物、ランドマークの少なくとも1つを含む。
【0013】
上記の音声出力装置の他の一態様では、前記案内音声生成部は、前記発話地点と前記案内地点との間に具体的目印が存在する場合には、具体的目印を用いた音声案内を生成する。これにより、各発話地点において、具体的目印を用いた音声案内が行われる。
【0014】
上記の音声出力装置の他の一態様は、前記案内地点が市街地に属するか、郊外に属するかを判定するエリア判定部を備え、前記案内音声生成部は、前記案内地点が市街地に属する場合は前記具体的目印を用い、前記案内地点が郊外に属する場合は前記概念的目印を用いる。この態様では、案内地点が市街地か郊外かに応じて、具体的目印と概念的目印のいずれを使用するかが決定される。
【0015】
本発明の他の好適な実施形態では、音声出力方法は、移動体の案内経路に含まれる各案内地点に対して、案内音声の発話を行う複数の発話地点を決定し、前記各案内地点に対応する複数の発話地点について、同一種類の目印を用いた案内音声を生成し、前記複数の発話地点において、生成された案内音声を出力する。この方法によれば、各発話地点において同一種類の目印を使用することにより、ユーザにわかりやすい音声案内が可能となる。
【0016】
本発明の他の好適な実施形態では、プログラムは、移動体の案内経路に含まれる各案内地点に対して、案内音声の発話を行う複数の発話地点を決定し、前記各案内地点に対応する複数の発話地点について、同一種類の目印を用いた案内音声を生成し、前記複数の発話地点において、生成された案内音声を出力する処理をコンピュータに実行させる。このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記の音声出力装置を実現することができる。このプログラムは記憶媒体に記憶して使用することができる。
【実施例0017】
以下、図面を参照して本発明の好適な各実施例について説明する。
<第1実施例>
[システム構成]
図1は、本発明の音声出力装置の第1実施例に係る音声案内システムの構成例を示す。音声案内システムは、車両Veと、音声案内装置1とを有する。
【0018】
音声案内装置1は、車両Veと共に移動し、案内対象となる経路(「案内経路」とも呼ぶ。)に沿って車両Veが走行するように、音声を主とした経路案内を行う。なお、「音声を主とした経路案内」は、案内経路に沿って車両Veを運転するために必要な情報をユーザが少なくとも音声のみから把握可能な経路案内を指し、音声案内装置1が現在位置周辺の地図などを補助的に表示することを除外するものではない。
【0019】
本実施例では、音声案内装置1は、少なくとも、案内が必要な経路上の地点(「案内地点」とも呼ぶ。)に関する情報を音声により出力する。ここで、案内地点は、例えば車両Veの右左折を伴う交差点、その他、案内経路に沿って車両Veが走行するために重要な通過地点が該当する。音声案内装置1は、次の案内地点の手前の数か所において、次の案内地点での走行に関する音声案内を行う。この音声案内が行われる地点を「発話地点」とも呼ぶ。また、案内経路に対する案内に関する音声を「経路音声案内」とも呼ぶ。
【0020】
なお、音声案内装置1は、車両Veに備え付けられた又は取り付けられた車載機であってもよく、スマートフォンなどの車両に持ち込まれて利用される携帯端末であってもよい。さらに別の例では、音声案内装置1は、車両Veに組み込まれてもよい。音声案内装置1は、音声出力装置の一例である。また、車両Veは、移動体の一例である。
【0021】
[装置構成]
図2は、音声案内装置1の概略構成の一例を示す。音声案内装置1は、主に、通信部11と、記憶部12と、入力部13と、制御部14と、センサ群15と、表示部16と、音声出力部17と、を有する。音声案内装置1内の各要素は、バスライン10を介して相互に接続されている。
【0022】
通信部11は、制御部14の制御に基づき、他の端末とのデータ通信を行う。通信部11は、例えば、後述する地図DB(DataBase)4を更新するための地図データを図示しない地図管理サーバから受信してもよい。
【0023】
記憶部12は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、不揮発性メモリ(ハードディスクドライブ、フラッシュメモリなどを含む)などの各種のメモリにより構成される。記憶部12には、音声案内装置1が所定の処理を実行するためのプログラムが記憶される。上述のプログラムは、経路案内を音声により行うためのアプリケーションプログラム、音楽を再生するためのアプリケーションプログラム、音楽以外のコンテンツ(テレビ等)を出力するためのアプリケーションプログラムなどを含んでもよい。また、記憶部12は、制御部14の作業メモリとして使用される。なお、音声案内装置1が実行するプログラムは、記憶部12以外の記憶媒体に記憶されてもよい。
【0024】
また、記憶部12は、地図DB(DataBase)4を記憶する。地図DB4には、経路案内に必要な種々のデータが記録されている。地図DB4は、例えば、道路網をノードとリンクの組合せにより表した道路データ、及び、目的地、立寄地、又はランドマークの候補となる施設を示す施設データなどを含むデータベースである。地図DB4は、制御部14の制御に基づき、通信部11が地図管理サーバから受信する地図情報に基づき更新されてもよい。
【0025】
入力部13は、ユーザが操作するためのボタン、タッチパネル、リモートコントローラ、音声入力装置等である。表示部16は、制御部14の制御に基づき表示を行うディスプレイ等である。音声出力部17は、制御部14の制御に基づき音を出力するスピーカ等である。
【0026】
センサ群15は、外界センサ18と、内界センサ19とを含む。外界センサ18は、例えば、カメラ、ライダ、レーダ、超音波センサ、赤外線センサ、ソナーなどの車両Veの周辺環境を認識するための1又は複数のセンサである。内界センサ19は、車両Veの測位を行うセンサであり、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機、ジャイロセンサ、IMU(Inertial Measurement Unit)、車速センサ、又はこれらの組合せである。なお、センサ群15は、制御部14がセンサ群15の出力から車両Veの位置を直接的に又は間接的に(即ち推定処理を行うことによって)導出可能なセンサを有していればよい。
【0027】
制御部14は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)などを含み、音声案内装置1の全体を制御する。例えば、制御部14は、センサ群15の1又は複数のセンサの出力に基づき、車両Veの位置(進行方向の向きも含む)を推定する。また、制御部14は、入力部13により目的地が指定された場合に、当該目的地までの経路である案内経路を示す経路情報を生成し、当該経路情報と推定した車両Veの位置情報と地図DB4とに基づき、経路案内を行う。この場合、制御部14は、音声出力部17を制御することで、音声案内を音声出力部17に出力させる。また、制御部14は、表示部16を制御することで、再生中の音楽の情報、映像コンテンツ、又は現在位置周辺の地図などの表示を行う。制御部14は、発話地点決定部、案内音声生成部及びエリア判定部の一例である。
【0028】
なお、制御部14が実行する処理は、プログラムによるソフトウェアで実現することに限ることなく、ハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアのうちのいずれかの組み合わせ等により実現してもよい。また、制御部14が実行する処理は、例えばFPGA(field-programmable gate array)又はマイコン等の、ユーザがプログラミング可能な集積回路を用いて実現してもよい。この場合、この集積回路を用いて、制御部14が本実施例において実行するプログラムを実現してもよい。このように、制御部14は、プロセッサ以外のハードウェアにより実現されてもよい。
【0029】
図2に示す音声案内装置1の構成は一例であり、図2に示す構成に対して種々の変更がなされてもよい。例えば、地図DB4を記憶部12が記憶する代わりに、制御部14が通信部11を介して経路案内に必要な情報を、図示しない地図管理サーバから受信してもよい。他の例では、音声案内装置1は、音声出力部17を備える代わりに、音声案内装置1とは別体に構成された音声出力部17と電気的に、または公知の通信手段によって接続することで、当該音声出力部17に音声の出力を実行させてもよい。この場合、音声出力部17は、車両Veに備えられたスピーカであってもよい。さらに別の例では、音声案内装置1は、表示部16を備えなくともよい。この場合、音声案内装置1は、表示に関する制御を全く行わなくともよく、有線又は無線により、車両Ve等に備えられた表示部と電気的に接続することで、当該表示部に所定の表示を実行させてもよい。同様に、音声案内装置1は、センサ群15を備える代わりに、車両Veに備え付けられたセンサが出力する情報を、車両VeからCAN(Controller Area Network)などの通信プロトコルに基づき取得してもよい。
【0030】
[音声案内方法]
次に、音声案内装置1による音声案内方法について詳しく説明する。
(第1の音声案内方法)
(1)音声案内方法
まず、第1の音声案内方法について説明する。第1の音声案内方法では、音声案内装置1は、案内経路上の各案内地点について同一種類の目印を用いて音声案内を行う。例えば、ある案内地点について、その手前の3か所の発話地点で音声案内を行う場合、3回とも1つの種類の目印を統一して使用する。なお、ある案内地点について、その手前の3か所の発話地点で音声案内を行う場合、その案内地点での最終的な音声案内を含め、合計4回の音声案内が行われることになる。
【0031】
図3は、第1の音声案内方法において音声案内に使用する目印の例を示す。音声案内では、音声のみにより案内地点を正しくユーザに伝えるために、目印を用いて案内を行う。案内に用いられる目印は、具体的目印と概念的目印の2種類に分類することができる。図3に示すように、具体的目印としては、信号機、交差点、一時停止、特徴的な道路形状、建物、ランドマークなどが挙げられる。なお、「特徴的な道路形状」は、通常の十字路を除き、T字路、Y字路、五差路などを指す。一方、概念的目印としては、距離、時間などが挙げられる。
【0032】
第1の音声案内方法では、音声案内装置1は、案内地点毎に、具体的目印と概念的目印のいずれかを統一して使用する。図4は、ある案内地点に関する音声案内の例を説明する図である。図4の例では、車両Veが案内経路R上を走行している。この案内経路Rにおいて、次の案内地点はPxであり、音声案内装置1は、次の案内地点Pxを右折する旨の音声案内を行う。図4の例では、音声案内装置1は、案内地点Pxの200m手前の発話地点P1と、100m手前の発話地点P2と、30m手前の発話地点P3と、案内地点Pxとで音声案内を行うものとする。
【0033】
図4の例では、車両Veの現在位置から次の案内地点Pxまでの間に、交差点毎に信号機SIG1~SIG3が存在する。よって、音声案内装置1は、各発話地点P1~P3において、具体的目印である信号機を用いた音声案内を行う。例えば、音声案内装置1は、発話地点P1において「3つ目の信号を右です。」と発話し、発話地点P2において「2つ目の信号を右です。」と発話する。また、音声案内装置1は、発話地点P3において「次の信号を右です。」と発話し、案内地点Pxにおいて「この信号を右です。」と発話する。
【0034】
仮に、図4の例において信号機SIG1~SIG3が無い場合、音声案内装置1は、具体的目印である交差点を用いて音声案内を行えばよい。例えば、音声案内装置1は、発話地点P1において「3つ目の交差点を右です。」と発話し、発話地点P2において「2つ目の交差点を右です。」と発話し、発話地点P3において「次の交差点を右です。」と発話し、案内地点Pxにおいて「この交差点を右です。」と発話する。
【0035】
また、次の案内地点Pxまでに信号機や交差点が無い場合でも、建物やランドマークがある場合には、音声案内装置1は各発話地点において具体的目印である建物やランドマークを用いて音声案内を行う。なお、上記の例では、信号機又は交差点のみを使用しているが、異なる具体的目印を組みわせて使用してもよい。例えば、音声案内装置1は、発話地点P1でランドマークを用いた音声案内を行い、発話地点P2で交差点を用いた音声案内を行い、発話地点P3及び案内地点Pxで交差点を用いて音声案内を行ってもよい。即ち、1つの案内地点Pxに関する複数の音声案内に使用する目印が具体的目印に統一されていればよい。
【0036】
一方、音声案内装置1は、車両Veの現在位置から次の案内地点Pxまでに具体的目印が無い場合には、距離、時間などの概念的目印を用いて音声案内を行う。例えば、音声案内装置1は、発話地点P1で「200m先を右です。」と発話し、発話地点P2で「100m先を右です。」と発話し、発話地点P3で「30m先を右です。」と発話する。
【0037】
このように、1つの案内地点に関連する複数の発話地点において、具体的目印又は概念的目印を統一して使用することにより、音声だけでもユーザにわかりやすい案内が可能となる。
【0038】
(2)経路案内処理
図5は、第1の音声案内方法による経路案内処理のフローチャートである。この処理は、図2に示す制御部14は、予め用意されたプログラムを実行することにより実現される。なお、図5のフローチャートの実行時には、既にユーザが指定して目的地までの経路探索が行われ、案内経路が設定されているものとする。
【0039】
まず、制御部14は、設定されている案内経路と車両Veの現在位置とに基づいて、次の案内地点を決定する(ステップS11)。次に、制御部14は、次の案内地点までの発話地点を決定する(ステップS12)。例えば、制御部14は、前述のように、次の案内地点まで所定距離の地点(200m手前、100手前、30m手前)を発話地点と決定する。
【0040】
次に、制御部14は、地図DB4を参照し、ステップS12で決定された各発話地点と次の案内地点との間にある具体的目印を検索する(ステップS13)。発話地点の少なくとも1つについて、次の案内地点との間に具体的目印がある場合(ステップS13:Yes)、制御部14は、検索により見つかった具体的目印を用いた案内音声を生成し、出力する(ステップS15)。一方、発話地点のいずれについても具体的目印が無かった場合(ステップS13:No)、制御部14は、概念的目印を用いた音声案内を生成し、出力する(ステップS16)。こうして、次の案内地点までの各発話地点において、具体的目印又は概念的目印のいずれかを統一して用いた音声案内が行われる。
【0041】
次に、制御部14は、車両Veが目的地に到着したか否かを判定する(ステップS17)。車両Veが目的地に到着していない場合(ステップS17:No)、処理はステップS11へ戻り、次の案内地点についてステップS11~S16を繰り返す。一方、車両Veが目的地に到着した場合(ステップS17:Yes)、経路案内処理は終了する。
【0042】
(3)変形例
なお、上記の例では、音声案内装置1は、図5のステップS14で、次の案内地点までの複数の発話地点のうち、少なくとも1つの発話地点と次の案内地点との間に具体的目印があれば、具体的目印を用いた音声案内を行うこととしている。この場合、次の案内地点との間に具体的目印が見つからなかった発話地点については、音声案内装置1は、それより先の発話地点で用いる具体的目印を用いて音声案内を行ってもよい。例えば、ある案内地点について、100m手前の第1の発話地点と、30m手前の第2の発話地点があり、第1の発話地点と第2の発話地点の間には具体的目印が無いが、第2の発話地点と次の案内地点との間に具体的目印(目印Xとする)がある場合、音声案内装置1は、第1の案内地点と第2の案内地点の両方で目印Xを用いた音声案内を行ってもよい。
【0043】
その代わりに、音声案内装置1は、次の案内地点までの複数の発話地点のうちの所定数又は全ての発話地点と次の案内地点との間に具体的目印が見つかった場合に、具体的目印を用いた音声案内を行い、それ以外の場合は概念的目印を用いて音声案内を行うようにしてもよい。
【0044】
また、図5のステップS14において、具体的目印があるか否かを判定する代わりに、音声案内装置1は、車両Veの現在位置が市街地であるか郊外であるかを判定してもよい。通常、市街地では具体的目印が多いが、郊外では具体的目印が少ない。そして、音声案内装置1は、車両Veの現在位置が市街地である場合には具体的目印を用いて音声案内を行い、車両Veの現在位置が郊外である場合には概念的目印を用いて音声案内を行うこととしてもよい。
【0045】
(第2の音声案内方法)
(1)音声案内方法
次に、第2の音声案内方法について説明する。第2の音声案内方法では、音声案内装置1は、案内経路上の各案内地点について、目印の種類毎に予め決められた優先順位に基づいて使用する目印を決定し、各発話地点において音声案内を行う。
【0046】
図6は、第2の音声案内方法において音声案内に使用する目印の例を示す。第2の音声案内方法では、第1の音声案内方法と同様に、音声のみにより案内地点を正しくユーザに伝えるために、目印を用いて案内を行う。案内に用いられる目印は、具体的目印と概念的目印の2種類に分類することができる。ここで、第2の音声案内方法では、図6に示すように、具体的目印と概念的目印のそれぞれについて、各目印の優先順位が予め決定されている。
【0047】
図6の例では、具体的目印の優先順位は、特徴的な道路形状、信号機、一時停止、建物、交差点の順となっている。この優先順位は、一般的に運転者が目印として認識しやすいと考える順に予め決定される。言い換えると、希少な、特異な、珍しい目印ほど優先順位が高くなるように決定される。前述のように、「特徴的な道路形状」は、通常の十字路を除き、T字路、Y字路、五差路などを指す。
【0048】
概念的目印については、車両Veの現在位置と、次の案内地点との距離に基づいて、優先順位が決まる。車両Veの現在位置から次の案内地点が遠いときには、目印の優先順位は、時間、距離の順となる。一方、車両Veの現在位置から次の案内地点が近いときには、目印の優先順位は、距離、時間の順となる。これは、一般的な人間の感覚として、案内地点との距離が遠い場合は、時間で表現した方が案内地点との位置関係を認識しやすく、案内地点との距離が近い場合は、距離で表現した方が案内地点との位置関係を認識しやすいと考えらえることによる。
【0049】
このように、第2の音声案内方法では、音声案内装置1は、次の案内地点について具体的目印を用いて案内する場合には、図6に示すように、特徴的な道路形状、信号機、...という予め決められた優先順位に基づいて具体的目印を選択して案内を行う。例えば、ある発話地点と次の案内地点との間に特徴的な道路形状と、信号機の両方がある場合、音声案内装置1は、図6の優先順位に基づいて、特徴的な道路形状を用いた音声案内を行う。
【0050】
また、第2の音声案内方法では、音声案内装置1は、次の案内地点について概念的目印を用いて案内する場合には、図6に示すように、次の案内地点との距離に応じた優先順位で案内を行う。具体的に、次の案内地点との距離が予め決められた所定距離より遠い場合には、音声案内装置1は、「約5分後に右折です。」などと時間を用いた案内を行う。また、次の案内地点との距離が予め決められた所定距離より近い場合には、音声案内装置1は、「約200m先を右折です。」などと距離を用いた案内を行う。
【0051】
このように、具体的目印と概念的目印について、それぞれ予め決定された優先順位に従って使用する目印を決定して音声案内を行うことにより、ユーザによりわかりやすい案内が可能となる。
【0052】
(2)経路案内処理
図7は、第2の音声案内方法による経路案内処理のフローチャートである。この処理は、図2に示す制御部14は、予め用意されたプログラムを実行することにより実現される。第2の音声案内方法による経路案内処理は、基本的な流れは図5に示す第1の音声案内方法による経路案内処理と同一である。具体的に、ステップS21~S24は図5のステップS11~S14と同様であり、ステップS27は図5のステップS17と同様である。
【0053】
ステップS25では、制御部14は、検索により見つかった具体的目印から、図6に例示する優先順位に従って1つの具体的目印を選択し、その具体的目印を用いた案内音声を生成し、出力する(ステップS25)。また、ステップS26では、制御部14は、車両Veの現在位置と次の案内地点との距離を予め決められた所定距離と比較し、次の案内地点が所定距離より遠い場合には時間を用いた音声案内を生成し、次の案内地点が所定距離未満である場合には距離を用いた音声案内を生成し、出力する。こうして、次の案内地点までの各発話地点において、具体的目印又は概念的目印のうち、予め決められた優先順位に従って選択された目印を用いて音声案内が行われる。
【0054】
(3)変形例
第2の音声案内方法により具体的目印を用いて音声案内を行う場合において、案内地点に特徴的な道路形状や信号機などの優先順位の高い具体的目印が無いことがある。この場合、音声案内装置1は、案内経路上の案内地点より手前に、より優先順位の高い具体的目印がある場合には、その具体的目印を用いて案内を行ってもよい。
【0055】
図8は、案内地点に優先順位の高い具体的目印が無い場合の案内の例を示す。図8(A)の例では、車両Veは案内経路Rを走行しており、3つ目の交差点が案内地点Pxとなっている。案内地点Pxの手前に交差点P1、P2が存在するが、いずれの交差点にも信号機は存在しない。この場合、音声案内装置1は、交差点よりも優先順位の高い具体的目印が無いので、案内地点Pxの手間の交差点P1、P2を用いて案内を行う。例えば、音声案内装置1は、「3つ目の交差点を右折です。」と案内する。
【0056】
図8(B)の例でも、車両Veは案内経路Rを走行しており、3つ目の交差点が案内地点Pxとなっている。案内地点Pxには信号機は存在しないが、案内地点Pxの手前に交差点P1、P2が存在し、交差点P2には信号機が存在する。この場合、音声案内装置1は、交差点よりも優先順位の高い信号機、即ち、案内地点Pxの手間の交差点P2にある信号機を用いて案内を行う。例えば、音声案内装置1は、発話地点P1において、「3つ目の交差点を右折です。」と案内する代わりに、「信号を過ぎて右折です。」と案内する。
【0057】
図8(C)の例でも、車両Veは案内経路Rを走行しており、3つ目の交差点が案内地点Pxとなっている。案内地点Pxには信号機は存在しないが、案内地点Pxの手前に交差点P1、P2が存在し、交差点P1、P2には信号機が存在する。この場合、音声案内装置1は、交差点よりも優先順位の高い信号機、即ち、案内地点Pxの手間の交差点P1、P2にある信号機を用いて案内を行う。例えば、音声案内装置1は、発話地点P1において、「3つ目の交差点を右折です。」と案内する代わりに、「2つ信号を過ぎて右折です。」と案内する。
【0058】
<第2実施例>
図9は、第2実施例に係る音声案内システムの構成例である。第2実施例に係る音声案内システムは、主に、車両Veと、音声案内装置1Aと、サーバ装置2とを有する。なお、第1実施例と同様の構成要素については、第1実施例の構成要素と適宜同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0059】
音声案内装置1Aは、上述の第1実施例において説明した音声案内装置1と同様の構成(図2参照)を有する。なお、第2実施例では、地図DB4に基づく経路探索処理及び経路案内処理をサーバ装置2が行うため、音声案内装置1Aは、地図DB4を有しなくともよい。そして、音声案内装置1Aは、ユーザにより目的地等を指定する入力を入力部13により検知した場合に、センサ群15が出力する車両Veの位置情報、及び、指定された目的地に関する情報などを含むアップロード信号「S1」をサーバ装置2に送信する。
【0060】
サーバ装置2は、音声案内装置1Aから受信する目的地等を含むアップロード信号S1に基づき、車両Veが走行すべき案内経路を示す経路情報を生成する。そして、サーバ装置2は、生成した経路情報と、音声案内装置1Aから受信したアップロード信号S1に含まれる車両Veの位置情報とを用いて、図5に示す第1の音声案内方法又は図7に示す第2の音声案内方法による経路案内処理を実行する。なお、サーバ装置2は、図5のステップS15、S16及び図7のステップS25、S26においては、生成した案内音声を制御信号S2として音声案内装置1Aへ送信し、音声案内装置1Aにより音声出力させる。こうして、第1又は第2の音声案内方法による音声案内が実行される。
【0061】
図10は、サーバ装置2の概略構成の一例を示す。サーバ装置2は、主に、通信部21と、記憶部22と、制御部24とを有する。サーバ装置2内の各要素は、バスライン20を介して相互に接続されている。
【0062】
通信部21は、制御部24の制御に基づき、音声案内装置1Aなどの外部装置とのデータ通信を行う。記憶部22は、RAM、ROM、不揮発性メモリ(ハードディスクドライブ、フラッシュメモリなどを含む)などの各種のメモリにより構成される。記憶部22は、サーバ装置2が所定の処理を実行するためのプログラムが記憶される。また、記憶部22は、地図DB4を含んでいる。制御部24は、CPU、GPUなどを含み、サーバ装置2の全体を制御する。また、制御部24は、記憶部22に記憶されたプログラムを実行することで、図5又は図7に示す経路案内処理を実行する。
【0063】
このように、サーバ装置2が経路案内に関する音声案内装置1Aの制御を実質的に行う場合であっても、音声案内システムは、第1実施例と同様に、第1又は第2の音声案内方法に基づいて具体的目印又は概念的目印を用いた音声案内を実行することができる。第2実施例において、サーバ装置2は音声出力装置の一例である。
【0064】
なお、上述した各実施例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータである制御部等に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記憶媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記憶媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記憶媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。
【0065】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。すなわち、本願発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。また、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって繰り込むものとする。
【符号の説明】
【0066】
1 音声案内装置
2 サーバ装置
4 地図DB
11、21 通信部
12、22 記憶部
13 入力部
14、24 制御部
15 センサ群
16 表示部
17 音声出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10