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特開2023-6667転がり軸受の異常診断装置、異常診断方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006667
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】転がり軸受の異常診断装置、異常診断方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/045 20190101AFI20230111BHJP
【FI】
G01M13/045
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109383
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐原 淳太郎
(72)【発明者】
【氏名】松屋 優介
(72)【発明者】
【氏名】武藤 圭祐
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AC01
2G024BA27
2G024CA13
2G024CA26
2G024DA09
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA14
2G024FA15
(57)【要約】
【課題】非定常的な波形を適切に捉え、転がり軸受における異常診断を行う。
【解決手段】転がり軸受の異常診断装置であって、転がり軸受にて発生する振動情報から所定の周波数帯域の信号を抽出する抽出手段と、前記抽出手段にて抽出した信号を用いてスペクトル尖度を算出する算出手段と、前記所定の周波数帯域における周波数ビンのうち、前記スペクトル尖度が第1の閾値を超えた数をカウントするカウント手段と、前記カウント手段にてカウントした数に基づいて、異常診断を行う診断手段と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受にて発生する振動情報から所定の周波数帯域の信号を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段にて抽出した信号を用いてスペクトル尖度を算出する算出手段と、
前記所定の周波数帯域における周波数ビンのうち、前記スペクトル尖度が第1の閾値を超えた数をカウントするカウント手段と、
前記カウント手段にてカウントした数に基づいて、異常診断を行う診断手段と、
を有する転がり軸受の異常診断装置。
【請求項2】
前記診断手段は、前記カウント手段にてカウントした数が第2の閾値を超えた場合に、異常であると診断することを特徴とする請求項1に記載の異常診断装置。
【請求項3】
前記第2の閾値は、前記周波数帯域の範囲における周波数ビンの総数に対する所定の割合により規定されることを特徴とする請求項2に記載の異常診断装置。
【請求項4】
前記第1の閾値は、正の値であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の異常診断装置。
【請求項5】
前記振動情報は、前記転がり軸受にて発生する音の情報であり、
前記抽出手段は、前記音に対して、20k~40kHzの帯域を通過させるバンドパスフィルタを用いたフィルタ処理を行うことにより、信号を抽出することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の異常診断装置。
【請求項6】
前記転がり軸受の温度情報を取得する取得手段を更に有し、
前記診断手段は、前記温度情報にて示される温度が第3の閾値を超えた場合に、異常であると診断することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の異常診断装置。
【請求項7】
前記診断手段による診断結果を報知する報知手段を更に有することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の異常診断装置。
【請求項8】
前記診断手段により診断される異常は、前記転がり軸受の潤滑不良または焼付きの予兆であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の異常診断装置。
【請求項9】
転がり軸受にて発生する振動情報から所定の周波数帯域の信号を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程にて抽出した信号を用いてスペクトル尖度を算出する算出工程と、
前記所定の周波数帯域における周波数ビンのうち、前記スペクトル尖度が第1の閾値を超えた数をカウントするカウント工程と、
前記カウント工程にてカウントした数に基づいて、異常診断を行う診断工程と、
を有することを特徴とする転がり軸受の異常診断方法。
【請求項10】
コンピュータに、
転がり軸受にて発生する振動情報から所定の周波数帯域の信号を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程にて抽出した信号を用いてスペクトル尖度を算出する算出工程と、
前記所定の周波数帯域における周波数ビンのうち、前記スペクトル尖度が第1の閾値を超えた数をカウントするカウント工程と、
前記カウント工程にてカウントした数に基づいて、異常診断を行う診断工程と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、転がり軸受の異常診断装置、異常診断方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械に設けられる転がり軸受に対し、定期的に異常診断を行うことで、損傷や摩耗を早期に検出して転がり軸受の故障などの発生を抑制することが行われている。例えば、転がり軸受の故障の一因として潤滑剤の不足に伴う無潤滑やそれに近い潤滑不良などが挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1では、振動情報に基づいて軸受装置に供給されている油切れを検出することで、軸受装置内部での焼き付きを防ぐことが開示されている。また、特許文献2では、油不足の際に軸受にて発生する振動の周波数スペクトルが広い帯域で増加することに着目して油不足を検出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-180819号公報
【特許文献2】特開昭55-138616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法は、外輪案内方式の保持器に限定される検出方法である。特許文献2では、周波数スペクトルがホワイトノイズと類似の様相であるか否かに基づいて判定を行っている。この手法の場合、油不足以外にも面荒れ等を検出してしまうことため、誤判定するという問題がある。また、検出される振動波形は、定常的な波形と、例えば、異常などに起因する非定常的な波形から構成される。このとき、非定常的な波形が、定常的な波形によって隠されてしまうと、適切に異常検知を行うことができない。
【0006】
上記課題を鑑み、本願発明は、非定常的な波形を適切に捉え、転がり軸受の異常診断を行う方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本願発明は以下の構成を有する。すなわち、転がり軸受の異常診断装置であって、
転がり軸受にて発生する振動情報から所定の周波数帯域の信号を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段にて抽出した信号を用いてスペクトル尖度を算出する算出手段と、
前記所定の周波数帯域における周波数ビンのうち、前記スペクトル尖度が第1の閾値を超えた数をカウントするカウント手段と、
前記カウント手段にてカウントした数に基づいて、異常診断を行う診断手段と、
を有する。
【0008】
また、本願発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、転がり軸受の異常診断方法であって、
転がり軸受にて発生する振動情報から所定の周波数帯域の信号を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程にて抽出した信号を用いてスペクトル尖度を算出する算出工程と、
前記所定の周波数帯域における周波数ビンのうち、前記スペクトル尖度が第1の閾値を超えた数をカウントするカウント工程と、
前記カウント工程にてカウントした数に基づいて、異常診断を行う診断工程と、
を有する。
【0009】
また、本願発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、プログラムであって、
コンピュータに、
転がり軸受にて発生する振動情報から所定の周波数帯域の信号を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程にて抽出した信号を用いてスペクトル尖度を算出する算出工程と、
前記所定の周波数帯域における周波数ビンのうち、前記スペクトル尖度が第1の閾値を超えた数をカウントするカウント工程と、
前記カウント工程にてカウントした数に基づいて、異常診断を行う診断工程と、
を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本願発明により、非定常的な波形を適切に捉え、転がり軸受の異常診断を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】波形の非定常性を説明するための図。
図2】本願発明の一実施形態に係る装置構成の例を示す概略図。
図3】本願発明の一実施形態に係るデータ転送とデータウィンドウを説明するための図。
図4】本願発明の第1の実施形態に係る異常診断処理のフローチャート。
図5】本願発明に係るスペクトル尖度を説明するためのグラフ図。
図6】本願発明の第1の実施形態に係る異常診断におけるビン数のカウントを説明するための図。
図7】本願発明の第2の実施形態に係る異常診断処理のフローチャート。
図8】本願発明の第2の実施形態に係る異常診断における温度変化を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願発明を実施するための形態について図面などを参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本願発明を説明するための一実施形態であり、本願発明を限定して解釈されることを意図するものではなく、また、各実施形態で説明されている全ての構成が本願発明の課題を解決するために必須の構成であるとは限らない。また、各図面において、同じ構成要素については、同じ参照番号を付すことにより対応関係を示す。
【0013】
<第1の実施形態>
以下、本願発明の第1の実施形態について説明を行う。なお、以下の説明においては、転がり軸受として玉軸受を例に挙げて説明するが、これに限定するものではなく、本願発明は他の構成の転がり軸受にも適用可能である。例えば、本願発明が適用可能な転がり軸受の種類としては、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、円錐ころ軸受、円筒ころ軸受、自動調心ころ軸受などが挙げられる。
【0014】
[波形の非定常性]
まず、本実施形態にて扱う音の振動波形における非定常性について述べる。転がり軸受では、無潤滑やそれに近い潤滑不良状態で回転動作を行った場合、非定常音(振動)が観測される。更に、転がり軸受の転がり摩擦による音や振動は、潤滑が劣化して摩擦が大きくなるにつれて、定常ガウス白色性の振幅の分散が大きくなる。つまり、検出される波形は、定常的な波形に対して、非定常的な波形が合成されたような波形となり、そこに変化が生じる。
【0015】
図1は、転がり軸受を動作させた際に測定される振動波形の非定常性を説明するための図である。図1(a)は、非定常信号(非定常音や非定常振動に対応する信号)を含む波形の例を示す図であり、縦軸は振幅を示し、横軸は時間の経過を示す。ここでは、定常信号(定常音や定常振動に対応する信号)による波形と、非定常信号による波形との合成信号であり、非定常信号による波形が明瞭な形で表れている例を示す。図1(a)の線10に示すように、波形に対してエンペローブ処理を適用した場合、明確な振動の変化を突出部(すなわち、尖度)に基づいて特定でき、これにより非定常信号を捉えることができる。
【0016】
一方、定常信号の成分(振幅)が大きく、観測結果において、非定常信号が隠れてしまう場合がある。図1(b)は、非定常信号を含む波形の例を示す図であり、縦軸は振幅を示し、横軸は時間の経過を示す。ここでは、定常信号による波形と、非定常信号による波形との合成信号であり、非定常信号による波形が定常信号に隠れてしまっている場合の例を示す。図1(b)の線11に示すように、波形に対してエンペローブ処理を適用した場合、振動の変化が小さいため、非定常信号を特定することができない。つまり、非定常信号による波形が定常信号による波形に隠れてしまった場合、尖度では、非定常信号または非ガウス動作の発生を捉えることができない。
【0017】
本実施形態では、非定常信号を検出するために、スペクトル尖度を利用する。尖度は、図1(a)に示すように、実数の時系列に対して実行する。一方、スペクトル尖度は、実数をフーリエ変換した複素数に対応する。詳細については、後述する。
【0018】
なお、本実施形態において、異常とは、転がり軸受における潤滑不良や焼き付き予兆などを含んでよく、その種別は特に限定するものではない。
【0019】
[装置構成]
図2は、本実施形態に係る装置の全体構成の一例を示す概略構成図である。図1には、本実施形態に係る異常診断方法が適用される工作機械100と、異常診断を行う診断装置200の構成が示されている。図1では、説明を簡略化するために、本願発明に係る部位のみを例示しているが、他の部位が更に含まれてよい。
【0020】
工作機械100は、制御部101、スピンドル軸受部102、およびスピンドル軸受センサ部103を含んで構成される。制御部101は、例えば、工作機械100の動作全体を制御する。具体的には、制御部101は、スピンドル軸受部102により回動可能に構成された回転軸(不図示)に対する回転動作を制御する。スピンドル軸受部102は、例えば、玉軸受(不図示)である転がり軸受を含んで構成され、回転軸を回動自在に支持する。スピンドル軸受センサ部103は、音センサとしてのマイク、および、スピンドル軸受部102周辺の温度を検出するための温度センサを含んで構成される。スピンドル軸受センサ部103は、スピンドル軸受部102(より具体的には、転がり軸受)から発生する音情報や、その周辺の温度情報を取得する。スピンドル軸受センサ部103は更に、各種センサにて検出した信号を、ADC202への入力に適した電圧範囲のアナログ信号に増幅するためのアナログ増幅器を備えていてよい。
【0021】
なお、図2において、スピンドル軸受センサ部103は、工作機械100の内部に備えられた構成を示したが、検出位置に固定された構成に限定するものではなく、工作機械100に対して着脱可能もしくは移動可能な構成であってもよい。更には、スピンドル軸受部102を構成する転がり軸受は、複数が備えられてもよく、その場合には、複数の転がり軸受それぞれの情報を個別に取得可能な構成であってもよい。
【0022】
本実施形態では、スピンドル軸受センサ部103において、音センサを用いる構成について説明するが、音センサに代えて、転がり軸受にて発生する振動を検出する振動センサを用いてもよい。振動センサとしては、AE(Acoustic Emission)センサを用いてもよいが、この場合、微小な信号を増幅度の大きな増幅器で増幅する過程において、モータやインバータなどによる電気ノイズの影響を受けやすいという問題がある。そのため、本実施形態では、加速度振動センサを用いることがより好ましい。また、転がり軸受内での焼き付きが起こる過程では、潤滑剤が過小になり、金属接触の摩擦による発熱が装置の冷却能力を上回るため、温度上昇に歯止めが効かなくなることが想定される。そのため、特に高速回転が生じる装置では、温度センサを併用することが好ましい。温度センサの検出結果の利用については、第2の実施形態にて説明する。
【0023】
診断装置200は、工作機械100の状態診断を行うための情報処理装置である。診断装置200は、SCI(Serial Communication Interface)201、ADC(Analog/Digital Converter)202、フラッシュROM(Read Only Memory)203、DMAC(Direct Memory Access Controller)204、CPU(Central Processing Unit)205、SRAM(Static Random Access Memory)206、および入出力部207を含んで構成される。診断装置200を構成する各部位は、内部バス(不図示)などを介して通信可能に接続される。
【0024】
SCI201は、工作機械100と通信可能に接続するためのインターフェースであり、制御部101と各種データの送受信を行う。ADC202は、アナログ信号とデジタル信号の変換(A/D変換)を行う。ここでは、ADC202は、工作機械100が備えるスピンドル軸受センサ部103に通信可能に接続され、適時、スピンドル軸受センサ部103が検出した音情報や温度情報を取得する。そして、ADC202は、取得した各種情報に対し、後述する処理に応じた変換処理を行う。また、ADC202は、A/D変換の他、増幅器として信号の増幅処理や、フィルタ処理を行ってもよい。フィルタ処理では、スピンドル軸受センサ部103にて取得される音情報に対して、所定の高周波成分を除去するLPF(Low Pass Filter)、所定の低周波成分を除去するHPF(High Pass Filter)、もしくは所定の帯域の周波数成分を抽出するBPF(Band Pass Filter)を用いた処理が行われてよい。また、ADC202において、折り返し信号の発生を防ぐために、所定の高周波成分を除去するアンチエイリアスフィルタを用いるような構成であってもよい。
【0025】
フラッシュROM203は、不揮発性の記憶部であり、プログラムと各種データが保持、管理される。DMAC204は、DMA転送制御を行うための制御部である。CPU205は、診断装置200の制御全体を司る制御部である。SRAM206は、揮発性の記憶部であり、各種データが保持される。
【0026】
入出力部207は、スピーカやライト、或いは液晶ディスプレイ等の表示デバイス等から構成され、CPU205からの指示により利用者のユーザインタフェースとして機能する。例えば、入出力装置による出力方法は特に限定するものではないが、例えば、音声による聴覚的な出力であってもよいし、画面出力による視覚的な出力であってもよい。また、入出力装置は、通信機能を備えたネットワークインターフェースであってもよく、ネットワーク(不図示)を介した外部装置(不図示)へのデータ送信により通信処理を行ってもよい。なお、ここでの出力処理の内容は、診断結果の際に異常が検出された際の報知に限定するものではなく、スピンドル軸受部102が正常(例えば、潤滑良好)である旨の報知を含んでもよい。
【0027】
スピンドル軸受部102に含まれる転がり軸受(不図示)は、回転軸(不図示)に外嵌される回転輪である内輪、ハウジングに内嵌される固定輪である外輪、内輪及び外輪との間に配置された複数の転動体である複数の玉、および転動体を転動自在に保持する保持器を備える。なお、固定輪は、外輪と内輪のいずれであってもよい。また、保持器の案内方式についても特に限定するものではなく、外輪案内、内輪案内、または転動体案内のいずれであってもよい。
【0028】
また、転がり軸受において、所定の潤滑方式により、内輪と転動体の間、および、外輪と転動体の間の摩擦が軽減される。潤滑方式は特に限定するものではないが、例えば、グリース潤滑や油潤滑などが用いられる。また、潤滑剤の種類についても特に限定するものではない。油浴潤滑以外の油潤滑方式(オイルエア、オイルミスト、はねかけ式、塗布など)は、転がり軸受において、潤滑面および潤滑剤の劣化や装置不具合などにより潤滑不良となる可能性があるため、本実施形態に係る異常診断方法はこれらに適用可能である。
【0029】
[スペクトル尖度]
本実施形態にて用いるスペクトル尖度について説明する。本実施形態に係るスペクトル尖度は、規格化された4次のスペクトルキュムラントである。ここでの4次のキュムラントは、4次と2次のモーメントの項を有する。
【0030】
スペクトル尖度は、統計的な周波数分析ツールで、非定常・非ガウス過程を検出し、それが周波数領域のどの位置にあるのか示すことができる。スペクトル尖度に関しては、例えば、J.Antoni,“The spectral kurtosis: a useful tool for characterising non-stationary signals”, Mechanical Systems and Signal Processing 20, 2006,282-307.などを参照することができる。
【0031】
時間領域の信号をx(t)とすると、スペクトル尖度K(f)は、短時間フーリエ変換X(t,f)、窓関数w(t)を用いて以下の式(1)のように表される。なお、以下の式において、<X>はXの時間平均を表す。また、|Y|は、Yの絶対値を表す。
【0032】
【数1】
【0033】
実際の計算では、時系列データに対する離散フーリエ変換を利用し、時間・周波数ともに離散値である。信号(雑音)成分が定常ガウス過程であればスペクトル尖度K(f)の値は0になり、定常正弦波ではK(f)の値は-1、非定常過程ではK(f)の値は正の値となることが知られている。K(f)の計算結果は、短時間フーリエ変換における窓の長さ(時間)とサンプリング周波数に左右される。そのため、実際に診断する機械(ここでは、工作機械100)に対してある程度の試行錯誤で決める必要がある。ひとつのスペクトル尖度のグラフ(横軸が周波数,縦軸がスペクトル尖度)を描くためには時間をスライドさせた複数の窓データが必要となる。また、Hanning窓関数などの窓関数をかけて短時間離散フーリエ変換を求め、75~80%程度の窓間のオーバラップを行うことが好ましい。
【0034】
スペクトル尖度の計算結果はある時点における周波数の関数である。転がり軸受などに異常があると、スペクトル尖度が正の値を示し、その値が極大値を取る周波数帯域が非定常・非ガウス性を示しているために異常である可能性が高い。転がり軸受の潤滑不良状態においては主に保持器と転動体の摩擦が大きくなることで保持器の非定常振動が生じるので、本実施形態では、非定常振動・非定常音を観測できることを利用する。更に、この保持器の非定常音の周波数は、比較的広帯域であることを利用すればノイズによる誤報を防止することができる。本実施形態では、決められた周波数範囲におけるスペクトル尖度の各周波数ビンにおいて、スペクトル尖度の値が決められた閾値を超えたビンの数をカウントし、そのビン数が対象とする周波数ビン全体に占める割合が一定以上のときに警報を出す仕組みとする。
【0035】
[処理フロー]
図4は、本実施形態に係る異常診断処理のフローチャートである。本処理は、診断装置200により実行され、例えば、診断装置200が備えるCPU205が本実施形態に係る各種処理を実現するためのプログラムをフラッシュROM203等から読み出して実行することにより実現されてよい。
【0036】
S401にて、CPU205は、DMAにより区間データを取得する。図3は、本実施形態に係る異常診断の際の工作機械100と診断装置200間のデータの流れを説明するための図である。ここでは、図2に示したように、異常診断時において、工作機械100と診断装置200が通信可能なように連結されている。
【0037】
スピンドル軸受部102の動作に伴って発生する音が、スピンドル軸受センサ部103の音センサにより検出されて、ADC202へアナログ信号として入力される。ADC202は、入力されたアナログ信号に対し100kHzのサンプリング周波数で、16bitの整数のデジタル信号に変換する。変換されたデジタル信号は、DMAC204により、DMAにてSRAM206へ転送される。図3(a)に示すように、本実施形態において、1区間のデータは3秒分であるとし、この区間データを順次取得する。転送が完了するとメインプログラムに割込みが発生し、CPU205は、SRAM206に送られてきたデータに対して演算処理を行う。DMAと、CPU206による演算は並行処理であり、DMAの処理が完了までに前のデータの演算処理が終わっていれば、CPU206による演算とDMAの処理は、同時並行にて処理が可能である。CPU205は、20秒ごとに3秒分の区間データを処理する。なお、上記のサンプリング周波数は、一例であり、これに限定するものではない。
【0038】
S402にて、CPU205は、S401にて取得した区間データを32ビット浮動小数点に変換する。本実施形態において、音のデータは100kHzのサンプリング周波数であるから、3秒間の区間データでは、300×10個の16ビットデータとなる。CPU205は、これを32ビットの浮動小数点数に変換する。
【0039】
S403にて、CPU205は、S402にて変換したデータに対して、所定の周波数帯域(ここでは、20kHz~40kHz)を通過させるBPF(Band Pass Filter)を適用することでフィルタリング処理を行う。ここで用いるBPFとしては、例えば、デジタルフィルタの一種であるFIR(Finite Impulse Response)フィルタやIIR(Infinite Impulse Response)フィルタを用いることが可能である。このようなフィルタを用いることで、ノイズを除去し、ノイズによる誤判定を防止することが可能となる。
【0040】
S404にて、CPU205は、S403によるフィルタリング処理が適用された後のデータを用いて、スペクトル尖度K(f)を算出する。上述した式(1)を本実施形態に係る工作機械100に適用可能な式に変換した場合、以下の式(2)として定義できる。なお、以下に示す式は一例であり、上記の式(1)に基づくものであれば、他の式を用いてもよい。
【0041】
【数2】
【0042】
本実施形態では、スペクトル尖度を算出する際に、10ms幅の窓データを用いる。窓数をMとし、時間窓の時間順をiとすると、i=1,2,・・・,Mにて示される。窓間のオーバラップを行わないものとし、1区間のデータが3sの場合には、M=300となる。図3(b)は、この場合の各窓データ概念構成を示す。なお、窓データの幅の決め方は、回転機械の異常に伴うインパルス状の波形の周期よりも短いことが重要であると考えられているが、10msであれば問題は生じない。窓データの幅が短い場合には、FFT(Fast Fourier Transform)の分解能が粗くなるなどの問題が生じ得る。窓データの幅が10msであれば100Hzの周波数分解を行うことが可能であるため、スペクトル尖度による異常診断(例えば、潤滑不良検知)には十分となる。
【0043】
本工程では、各窓データに対してパワースペクトル(または、振幅スペクトル)を計算する。各窓データに対して、FFTによる離散フーリエ変換を行う。この時、FFTを適用するデータにHanning窓をかける。75~80%のオーバラップでウィンドウをシフトすることが好ましく、その場合、Mの値は、オーバラップしない場合に比べて、およそ4~5倍になる。図3(c)は、窓間の75~80%のオーバラップを行うものとし、1区間のデータが3sの場合の窓データの概念構成を示す。こうして1区間分(3秒)の区間データの周波数と時間の関数で表される短時間フーリエ変換の振幅スペクトルは、式(1)に基づき、以下の式(3)となる。式(3)は、M個の振幅スペクトルを表す。
X(i,f) i=1,2,・・・,M ・・・(3)
【0044】
式(2)および式(3)を用いることで、任意の区間データのスペクトル尖度を周波数の関数として求めることができる。図5は、ある区間データにおけるスペクトル尖度を表す模式的なグラフを示す。図5において、縦軸はスペクトル尖度を示し、横軸は周波数を示す。上述したように、S403にてBPFの適用処理を行っている。このBPFによる通過周波数帯域をBにて示し、その下限となる周波数をf、上限となる周波数をfにて示している。なお、ここでは簡略化のために折れ線グラフにて示しているが、算出される数値は、離散フーリエ変換に基づくため、周波数ビンの棒グラフとなる。上記の式(1)で定義されるスペクトル尖度は、定常ガウス過程であれば0を示し、非定常過程では正の値を示す。ここで、非定常振動による音から異常(例えば、潤滑不良)の検出を行うために、正の値による所定の閾値Thaを設ける。ここでの閾値Thaは、窓データの取り方やサンプリング周波数に依存するため、実験や経験則に基づいて決定される。本実施形態では、スペクトル尖度に対する所定の閾値Thaを1とする。
【0045】
S405にて、CPU205は、S404にて算出したスペクトル尖度K(f)のうち、閾値を超えた周波数ビンの数をカウントする。異常(例えば、潤滑不良)における非定常音は、広帯域に広がることに特徴がある。本実施形態では、所定の周波数帯域(ここでは、20k~40kHz)において、閾値を超えた周波数ビンの数に基づいて、異常診断を行う。ここでのカウント値をNtとする。
【0046】
S406にて、CPU205は、S405にてカウントしたビン数Ntが所定の閾値Thbよりも大きいか否かを判定する。ここでの閾値Thbは、最大ビン数Nb(所定の区間における周波数ビンの総数)に対する一定の割合の数とし、一定の割合としては0.2(Nbの20%)を用いる。なお、閾値Thbは、上記に限定するものではなく、他の値を用いてもよい。図6は、本実施形態に係るビン数のカウントを説明するための図である。図6において、縦軸は、ビン数Ntを示し、横軸は時間を示す。横軸にて示す時間は、M個の区間データの時間順に対応する。また、Nbは、Ntの上限値を示す。Nbは、着目する周波数帯域(ここでは、20k~40kHz)における最大ビン数に対応する。したがって、Nbの値は、着目する周波数帯域に応じて異なる。閾値Thbは、上述したように、本例では0.2×Nbとする。例えば、最大ビン数Nb=200である場合、その20%である40を閾値Thbとする。Ntが閾値Thb(=0.2×Nb)よりも大きい場合(S406にてYES)、CPU205の処理はS407へ進む。一方、Ntが閾値Thb以下である場合(S406にてNO)、本処理フローを終了する。
【0047】
S407にて、CPU205は、工作機械100に異常があるものとして警報を出力する。ここでの警報の出力方法は特に限定するものではなく、例えば、UI画面(不図示)上にて視覚的に表示してもよいし、音声にて聴覚的に出力してもよい。更に、異常を検出した回数をカウントしておき、その回数に基づいて、工作機械100の動作を制御するような構成であってもよい。これにより、工作機械100が破損する前に停止制御を行うような構成としてよい。そして、本処理フローを終了する。
【0048】
以上、本実施形態では、所定の周波数帯域の音情報(振動情報)に基づいて、工作機械の異常診断を実施する。上記の例では、着目する周波数帯域として、20k~40kHzを用いた。これにより、例えば、20kHzよりも低い振動や、20kHz~40kHzの範囲にあっても少ない本数の周波数ビンや単独の周波数ビンではノイズとみなして無視する。その結果、異常の診断結果に対する誤報を防止できる。
【0049】
本実施形態では、判定対象から発生している音情報を用いて判定を行う構成を示した。例えば、保持器の振動に基づいて判定を行う手法では、振動を検出するためのセンサを転がり軸受の周辺に設置する必要がある。このとき、保持器の案内方式に応じて、保持器の振動の検出精度が異なるため、設置位置を考慮する必要がある。本願発明に係る手法では、音センサによる音情報と、加速度センサによる振動情報のいずれを用いても適用可能である。音センサを用いる場合には、その設置位置は、保持器の案内方式に影響されず、より汎用的に用いることが可能である。
【0050】
また、本願発明の判定方法は、過去の測定結果は必要とせず、測定対象となるある一定の時間幅の音情報のみで実行可能である。そのため、過去の測定結果を蓄積する必要はなく、簡易な構成にて判定が可能となる。また、潤滑剤の油膜厚さや潤滑剤の劣化などの測定が不要であるため、これらの測定に必要な構成を省略でき、簡易な構成にて実現可能である。
【0051】
以上、本実施形態により、非定常的な波形を適切に捉え、軸受装置における潤滑不良などの異常診断を検出することが可能となる。
【0052】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、所定の周波数帯域における音情報に着目して工作機械100の異常診断を行う構成について説明した。本実施形態では、更に、工作機械100が備える転がり軸受周辺の温度情報に基づいて、異常診断を行う形態について説明する。なお、第1の実施形態と重複する箇所については、説明を省略し、差分に着目して説明を行う。
【0053】
工作機械100が備える転がり軸受に関し、その温度情報は、異常診断に有用な情報となる。例えば、温度情報は、転がり軸受内の焼き付きの予兆検知に利用することが可能である。具体的には、転がり軸受の外輪(不図示)に温度センサを設置しているものとする。そして、その温度が50℃以上になると焼付きの危険が高まり、55℃まで上昇すると一気に温度上昇が加速して焼付きに至るとする。ここで、40~45℃が定常温度範囲とする。
【0054】
そこで、本実施形態では、第1の実施形態にて説明した音情報に加え、温度情報に基づいて異常診断を行う。
【0055】
[処理フロー]
図7は、本実施形態に係る異常診断処理のフローチャートである。本処理は、診断装置200により実行され、例えば、診断装置200が備えるCPU205が本実施形態に係る各種処理を実現するためのプログラムをフラッシュROM203等から読み出して実行することにより実現されてよい。S401~S406の処理は、第1の実施形態の図4にて説明した内容と同じである。
【0056】
Ntが閾値Thb(=0.2×Nb)よりも大きい場合(S406にてYES)、CPU205の処理はS701へ進む。一方、Ntが閾値Thb以下である場合(S406にてNO)、CPU205の処理は、S702へ進む。
【0057】
S701にて、CPU205は、工作機械100に異常があるものとして警報Aを出力する。ここでの警報Aの出力方法は特に限定するものではなく、例えば、UI画面(不図示)上にて視覚的に表示してもよいし、音声にて聴覚的に出力してもよい。その後、CPU205の処理は、S702へ進む。
【0058】
S702にて、CPU205は、温度センサにて検出した転がり軸受(本例では、固定輪である外輪)の温度が所定の閾値Thc以上か否かを判定する。ここで閾値Thcは、上述した前提に基づき、例えば、50℃とする。なお、閾値Thcに設定する値は、工作機械100の構成に応じて変動してよい。図8は、本実施形態に係る異常診断時の温度変化を説明するための図である。図8において、縦軸を温度とし、横軸を時間とする。工作機械100(すなわち、転がり軸受)の動作に伴い、その温度が上昇する。この温度情報は、スピンドル軸受センサ部103に含まれる温度センサにより、適時検出され、診断装置200に通知される。本実施形態では、工作機械100の温度が閾値Thcを超えた場合、異常が発生する可能性が高まる。外輪の温度がThc以上となった場合(S702にてYES)、CPU205の処理はS703へ進む。一方、外輪の温度がThcより小さい場合(S702にてNO)、本処理フローを終了する。
【0059】
S703にて、CPU205は、工作機械100に異常があるものとして警報Bを出力する。ここでの警報Bの出力方法は特に限定するものではなく、例えば、UI画面(不図示)上にて視覚的に表示してもよいし、音声にて聴覚的に出力してもよい。そして、本処理フローを終了する。なお、S701における警報Aと、S703における警報Bは、出力の方法が異なっていてもよいし、同じであってもよい。また、異常であると診断した際の制御方法が異なっていてもよい。
【0060】
以上、本実施形態により、第1の実施形態の効果に加え、温度情報に基づいて、異常診断を行うことが可能となる。例えば、音情報(振動情報)にて異常が検出されていない場合でも、温度情報に基づいて異常診断を行うことができ、より精度の高い異常検知が可能となる。
【0061】
<その他の実施形態>
また、本願発明において、上述した1以上の実施形態の機能を実現するためのプログラムやアプリケーションを、ネットワーク又は記憶媒体等を用いてシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。
【0062】
また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array))によって実現してもよい。
【0063】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0064】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 転がり軸受にて発生する振動情報から所定の周波数帯域の信号を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段にて抽出した信号を用いてスペクトル尖度を算出する算出手段と、
前記所定の周波数帯域における周波数ビンのうち、前記スペクトル尖度が第1の閾値を超えた数をカウントするカウント手段と、
前記カウント手段にてカウントした数に基づいて、異常診断を行う診断手段と、
を有する転がり軸受の異常診断装置。
この構成によれば、非定常的な波形を適切に捉え、転がり軸受の異常診断を行うことが可能となる。
【0065】
(2) 前記診断手段は、前記カウント手段にてカウントした数が第2の閾値を超えた場合に、異常であると診断することを特徴とする(1)に記載の異常診断装置。
この構成によれば、スペクトル尖度のカウント数に応じて、異常診断を行うことができる。
【0066】
(3) 前記第2の閾値は、前記周波数帯域の範囲における周波数ビンの総数に対する所定の割合により規定されることを特徴とする(2)に記載の異常診断装置。
この構成によれば、スペクトル尖度のカウント数に対する閾値を周波数ビンの総数に応じて規定することができる。
【0067】
(4) 前記第1の閾値は、正の値であることを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の異常診断装置。
この構成によれば、スペクトル尖度が非定常過程である場合を適切に捉えることができる。
【0068】
(5) 前記振動情報は、前記転がり軸受にて発生する音の情報であり、
前記抽出手段は、前記音に対して、20k~40kHzの帯域を通過させるバンドパスフィルタを用いたフィルタ処理を行うことにより、信号を抽出することを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の異常診断装置。
この構成によれば、転がり軸受から発生する音における20k~40kHzの周波数帯域に基づいて、異常診断を行うことができる。
【0069】
(6) 前記転がり軸受の温度情報を取得する取得手段を更に有し、
前記診断手段は、前記温度情報にて示される温度が第3の閾値を超えた場合に、異常であると診断することを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載の異常診断装置。
この構成によれば、転がり軸受の温度に基づいて、異常診断を行うことができる。
【0070】
(7) 前記診断手段による診断結果を報知する報知手段を更に有することを特徴とする(1)~6のいずれかに記載の異常診断装置。
この構成によれば、転がり軸受の診断状況を適切に報知することができる。
【0071】
(8) 前記診断手段により診断される異常は、前記転がり軸受の潤滑不良または焼付きの予兆であることを特徴とする(1)~(7)のいずれかに記載の異常診断装置。
この構成によれば、転がり軸受の異常として、潤滑不良または焼き付きの予兆を検出することができる。
【0072】
(9) 転がり軸受にて発生する振動情報から所定の周波数帯域の信号を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程にて抽出した信号を用いてスペクトル尖度を算出する算出工程と、
前記所定の周波数帯域における周波数ビンのうち、前記スペクトル尖度が第1の閾値を超えた数をカウントするカウント工程と、
前記カウント工程にてカウントした数に基づいて、異常診断を行う診断工程と、
を有することを特徴とする転がり軸受の異常診断方法。
この構成によれば、非定常的な波形を適切に捉え、転がり軸受の異常診断を行うことが可能となる。
【0073】
(10) コンピュータに、
転がり軸受にて発生する振動情報から所定の周波数帯域の信号を抽出する抽出工程と、
前記抽出工程にて抽出した信号を用いてスペクトル尖度を算出する算出工程と、
前記所定の周波数帯域における周波数ビンのうち、前記スペクトル尖度が第1の閾値を超えた数をカウントするカウント工程と、
前記カウント工程にてカウントした数に基づいて、異常診断を行う診断工程と、
を実行させるためのプログラム。
この構成によれば、非定常的な波形を適切に捉え、転がり軸受の異常診断を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0074】
100…工作機械
101…制御部
102…スピンドル軸受部
103…スピンドル軸受センサ部
200…診断装置
201…SCI(Serial Communication Interface)
202…ADC(Analog/Digital Converter)
203…フラッシュROM(Read Only Memory)
204…DMAC(Direct Memory Access Controller)
205…CPU(Central Processing Unit)
206…SRAM(Static Random Access Memory)
207…入出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8