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  • 特開-被覆体材料およびウェザーストリップ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066703
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】被覆体材料およびウェザーストリップ
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/95 20190101AFI20230509BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20230509BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20230509BHJP
   C08K 9/10 20060101ALI20230509BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20230509BHJP
   C08J 7/046 20200101ALI20230509BHJP
   B29C 48/12 20190101ALI20230509BHJP
   B29C 48/15 20190101ALI20230509BHJP
   B32B 25/04 20060101ALI20230509BHJP
   B60J 10/17 20160101ALI20230509BHJP
   B60J 10/76 20160101ALI20230509BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20230509BHJP
   B29K 9/00 20060101ALN20230509BHJP
【FI】
B29C48/95
C08L21/00
C08L83/04
C08K9/10
C08K5/20
C08J7/046 CEQ
C08J7/046 CES
C08J7/046 CET
C08J7/046 CFD
C08J7/046 CFF
C08J7/046 CFG
B29C48/12
B29C48/15
B32B25/04
B60J10/17
B60J10/76
B29L9:00
B29K9:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177455
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000158840
【氏名又は名称】鬼怒川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】篠原 翠
(72)【発明者】
【氏名】一戸 澄人
(72)【発明者】
【氏名】林田 聡美
【テーマコード(参考)】
3D201
4F006
4F100
4F207
4J002
【Fターム(参考)】
3D201AA37
3D201BA01
3D201CA19
3D201DA31
3D201EA28
3D201EA29
3D201FA05
4F006AA04
4F006AA12
4F006AA14
4F006AA35
4F006AA37
4F006AA38
4F006AB05
4F006AB13
4F006AB15
4F006AB35
4F006AB37
4F006AB38
4F006AB65
4F006AB67
4F006BA02
4F006BA09
4F006CA04
4F006DA05
4F100AK52B
4F100AL09A
4F100AN00B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA01B
4F100CA19B
4F100DE04B
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4F100EH23B
4F100GB31
4F100JA06B
4F100JB16B
4F100JK14
4F207AA45
4F207AB07
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4F207AR12
4F207AR17
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4F207KB11
4F207KM22
4F207KM24
4J002AA011
4J002AC011
4J002AC071
4J002AC081
4J002BB151
4J002CP032
4J002EP006
4J002FA030
4J002FA102
4J002FD010
4J002FD040
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD176
4J002FD202
4J002GL00
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】被覆体材料の加工性や被覆体の摺動性,耐久摩耗性等に貢献することが技術を提供する。
【解決手段】押出成形により、基体10における被摺動対象に対して圧接する弾接部2の表面に、被覆体3を形成する。被覆体の材料は、少なくとも、ゴム材料または熱可塑性樹脂材料と、複数種類の油状物質と、が配合されているものとする。また、前記複数種類の油状物質のうち少なくとも2つは、それぞれ粘度が異なり、それぞれマイクロカプセルに内包、または混合した状態でマイクロカプセルに内包されているものとする。複数種類の油状物質のうち粘度が低いものにおいては、当該油状物質が被覆体表面に滲み出るブリード速度が比較的早くなる。一方、当該油状物質のうち粘度が高いものにおいては、ブリード速度が比較的緩やかとなる。また、油状物質を内包するマイクロカプセルに、揮発性膨張剤も内包することにより、成形後の被覆体表面に凹凸の粗面を形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形により基体の表面に形成される被覆体であって、
前記被覆体の材料は、
少なくとも、ゴム材料または熱可塑性樹脂材料と、複数種類の油状物質と、が配合されており、
前記複数種類の油状物質のうち少なくとも2つは、それぞれ粘度が異なり、それぞれマイクロカプセルに内包されている、
ことを特徴とする被覆体。
【請求項2】
押出成形により基体の表面に形成される被覆体であって、
前記被覆体の材料は、
少なくとも、ゴム材料または熱可塑性樹脂材料と、複数種類の油状物質と、が配合されており、
前記複数種類の油状物質のうち少なくとも2つは、それぞれ粘度が異なり、混合された状態でマイクロカプセルに内包されている、
ことを特徴とする被覆体。
【請求項3】
前記マイクロカプセルに内包されている各油状物質は、粘度が20~100万cStの範囲内であることを特徴とする請求項1または2記載の被覆体。
【請求項4】
前記マイクロカプセルに内包されている各油状物質のうち一部は、粘度が20~1000cSt未満の範囲内であり、当該各油状物質のうち他部は、粘度が1000以上~100万cStの範囲内であることを特徴とする請求項3記載の被覆体。
【請求項5】
前記被覆体の材料は、前記ゴム材料または熱可塑性樹脂材料の配合量を100重量部とした場合に、前記マイクロカプセルの配合量が0.5~50重量部の範囲内であることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の被覆体。
【請求項6】
前記ゴム材料または熱可塑性樹脂材料に配合される前記マイクロカプセルの配合量を100重量部とした場合に、当該マイクロカプセルに内包されている各油状物質の配合量が10~80重量部の範囲内であることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の被覆体。
【請求項7】
前記マイクロカプセルは、平均粒径が70μm以下であることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の被覆体。
【請求項8】
前記被覆体の材料は、前記マイクロカプセルに揮発性膨張剤が内包されていることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の被覆体。
【請求項9】
前記被覆体の材料において、前記揮発性膨張剤は、油状物質との重量比が1対9~9対1の範囲内とし、前記マイクロカプセル100重量部に対して10~80重量部の範囲内で配合されていることを特徴とする請求項8記載の被覆体。
【請求項10】
前記被覆体の材料は、前記ゴム材料または熱可塑性樹脂材料の配合量を100重量部とした場合に、前記マイクロカプセルの配合量が0.5~10重量部の範囲内であることを特徴とする請求項8または9記載の被覆体。
【請求項11】
前記マイクロカプセルは、平均粒径が70μm以下であり、
前記被覆体は、前記押出成形による前記マイクロカプセルの膨張により、平均セル径が200μm以下の熱膨張セルが形成されていることを特徴とする請求項8~10の何れかに記載の被覆体。
【請求項12】
前記揮発性膨張剤は、炭素数が8~15の炭化水素であることを特徴とする請求項8~11の何れかに記載の被覆体。
【請求項13】
前記被覆体の材料は、更に固体潤滑剤が配合されていることを特徴とする請求項1~12の何れかに記載の被覆体。
【請求項14】
前記被覆体の材料は、前記ゴム材料または熱可塑性樹脂材料の配合量を100重量部とした場合に、前記固体潤滑剤の配合量が0.1~5重量部の範囲内であることを特徴とする請求項13記載の被覆体。
【請求項15】
前記固体潤滑剤は、脂肪酸アミドであることを特徴とする請求項13または14記載の被覆体。
【請求項16】
前記マイクロカプセルに内包されている各油状物質は、オルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項1~15の何れかに記載の被覆体。
【請求項17】
押出成形により基体の表面に請求項1~16のうち何れかに記載の被覆体が形成され、当該被覆体が被摺動対象に対して圧接するウェザーストリップであって、
前記被摺動対象が、ガラス部材(樹脂ガラスを含む),ドアパネル,ボディパネルのうち何れかであることを特徴とするウェザーストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆体およびウェザーストリップに関するものであって、例えば自動車用ウェザーストリップ等のように摺動性を要する成形体に適用可能な技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用ウェザーストリップ等のように摺動性を要する成形体においては、当該成形体を構成する基体の表面(例えば摺動性を要する部位)に摺動性の被覆体を形成した多層構造のものが知られている。
【0003】
具体例として、車体(グラスランの場合はドアパネル等の窓枠)に取り付けるための支持部と、その支持部に設けられガラス部材等(窓ガラス等)の被摺動対象に対し弾性を有して圧接する弾接部(リップ部等)と、を基体とする成形体においては、当該基体の弾接部表面(被摺動対象側)に被覆体を形成した構成が挙げられる。
【0004】
例えば特許文献1では、基体(特許文献1ではオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる基体)の弾接部表面に設ける被覆体において、ポリオレフィン樹脂,油状物質(特許文献1ではオルガノポリシロキサン),脂肪酸アミド,シリカ等を配合した被覆体材料を適用することが開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、基体材料と被覆体材料とを押出成形することにより、基体の弾接部表面に被覆体を形成した構成が開示されている。この特許文献2の被覆体材料としては、ゴム材料または熱可塑性樹脂材料と、油状物質を内包したマイクロカプセルと、を配合したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-176408号公報
【特許文献2】特許第3184299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の場合、被覆体の摺動性を高めるには、被覆体材料における油状物質の配合量を多くすることが挙げられる。しかしながら、油状物質の配合量を多くし過ぎると、被覆体材料の加工性が低くなってしまうおそれがある。一方、油状物質の配合量を抑制することにより、被覆体材料において所望の加工性が得られる可能性はあるが、被覆体の摺動性は低くなってしまい、それに伴って耐久摩耗性も低くなってしまうおそれがある。
【0008】
特許文献2の場合、被覆体材料において、油状物質を内包したマイクロカプセルを適用しているため、特許文献1と比較すると、所望の加工性(押出成形に係る加工性)が得られ易いことが考えられる。しかしながら、特許文献2のマイクロカプセルは、単に1種類の油状物質を内包しているものであるため、その油状物質の粘度が低い場合、被覆体においては、例えば初期の摺動性は得られ易いものの、当該摺動性を長く保持することは困難となり、耐久摩耗性が低くなってしまうおそれがある。一方、マイクロカプセル内の油状物質の粘度が高い場合、被覆体の摺動性を長く保持し易くなり、所望の耐久摩耗性が得られる可能性はあるが、例えば初期の摺動性は低くなってしまうおそれがある。
【0009】
本発明においては、前記課題に基づいてなされたものであって、被覆体材料の加工性や被覆体の摺動性,耐久摩耗性等に貢献することが技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る被覆体およびウェザーストリップは、前記の課題を解決すべく創作された技術的思想であって、具体的に、この発明の被覆体の一態様は、押出成形により基体の表面に形成される被覆体であって、前記被覆体の材料は、少なくとも、ゴム材料または熱可塑性樹脂材料と、複数種類の油状物質と、が配合されており、前記複数種類の油状物質のうち少なくとも2つは、それぞれ粘度が異なり、それぞれマイクロカプセルに内包されている、ことを特徴とする。
【0011】
また、被覆体の他の態様は、押出成形により基体の表面に形成される被覆体であって、前記被覆体の材料は、少なくとも、ゴム材料または熱可塑性樹脂材料と、複数種類の油状物質と、が配合されており、前記複数種類の油状物質のうち少なくとも2つは、それぞれ粘度が異なり、混合された状態でマイクロカプセルに内包されている、ことを特徴とする。
【0012】
前記マイクロカプセルに内包されている各油状物質は、粘度が20~100万cStの範囲内であることを特徴としても良い。また、前記マイクロカプセルに内包されている各油状物質のうち一部は、粘度が20~1000cSt未満の範囲内であり、当該各油状物質のうち他部は、粘度が1000以上~100万cStの範囲内であることを特徴としても良い。また、前記被覆体の材料は、前記ゴム材料または熱可塑性樹脂材料の配合量を100重量部とした場合に、前記マイクロカプセルの配合量が0.5~50重量部の範囲内であることを特徴としても良い。また、前記ゴム材料または熱可塑性樹脂材料に配合される前記マイクロカプセルの配合量を100重量部とした場合に、前記マイクロカプセルに内包されている各油状物質の配合量が10~80重量部の範囲内であることを特徴としても良い。また、前記マイクロカプセルは、平均粒径が70μm以下であることを特徴としても良い。
【0013】
また、前記被覆体の材料は、前記マイクロカプセル(油状物質を内包しているマイクロカプゼル)に揮発性膨張剤が内包されていることを特徴としても良い。また、前記揮発性膨張剤は、油状物質との重量比が1対9~9対1の範囲内とし、前記マイクロカプセル100重量部に対して10~80重量部の範囲内で配合されていることを特徴としても良い。また、前記被覆体の材料は、前記ゴム材料または熱可塑性樹脂材料の配合量を100重量部とした場合に、前記マイクロカプセルの配合量が0.5~10重量部の範囲内であることを特徴としても良い。また、前記マイクロカプセルは、平均粒径が70μm以下であり、前記被覆体は、前記押出成形による前記マイクロカプセルの膨張により、平均セル径が200μm以下の熱膨張セルが形成されていることを特徴としても良い。また、前記揮発性膨張剤は、炭素数が8~15の炭化水素であることを特徴としても良い。
【0014】
また、前記被覆体の材料は、更に固体潤滑剤が配合されていることを特徴としても良い。また、前記被覆体の材料は、前記ゴム材料または熱可塑性樹脂材料の配合量を100重量部とした場合に、前記固体潤滑剤の配合量が0.1~5重量部の範囲内であることを特徴としても良い。また、前記固体潤滑剤は、脂肪酸アミドであることを特徴としても良い。
【0015】
また、前記マイクロカプセルに内包されている各油状物質は、オルガノポリシロキサンであることを特徴としても良い。
【0016】
ウェザーストリップの一態様は、押出成形により基体の表面に前記被覆体が形成され、当該被覆体が被摺動対象に対して圧接するウェザーストリップであって、前記被摺動対象が、ガラス部材(樹脂ガラスを含む),ドアパネル,ボディパネルのうち何れかであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上示したように本発明によれば、被覆体材料の加工性や被覆体の摺動性,耐久摩耗性等に貢献することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例により被覆体を設けたウェザーストリップの一例を示す概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施形態の被覆体および当該被覆体が形成されたウェザーストリップは、例えば特許文献2の押出成形による被覆体のように、単に1種類の油状物質をマイクロカプセルに内包している被覆体材料を適用したものとは、全く異なるものである。
【0020】
すなわち、本実施形態は、押出成形する被覆体材料において、複数種類の油状物質が配合されているものとし、当該複数種類の油状物質のうち少なくとも2つは、それぞれ粘度が異なるものとする。そして、前記の少なくとも2つの油状物質は、それぞれマイクロカプセルに内包、または混合した状態でマイクロカプセルに内包されているものとする。
【0021】
このような本実施形態によれば、被覆体材料に配合されている複数種類の油状物質のうち、少なくとも2つがマイクロカプセルに内包されているため、当該被覆体材料において所望の加工性(押出成形に係る加工性)が得られ易くなる。
【0022】
また、マイクロカプセルに内包されている油状物質(少なくとも2つの粘度の異なる油状物質)が持つ特徴を、それぞれ発揮させることが可能となる。すなわち、マイクロカプセルに内包されている油状物質のうち粘度が低いもの(以下、単に低粘度油状物質と適宜称する)によれば、当該油状物質が被覆体表面に滲み出るブリード速度が比較的早いため、例えば被覆体の初期の摺動性が得られ易くなる。一方、当該油状物質のうち粘度が高いもの(以下、単に高粘度油状物質と適宜称する)によれば、ブリード速度が比較的緩やかであるため、当該被覆体の摺動性を長く保持し、所望の耐久摩耗性が得られ易くなる。
【0023】
したがって、本実施形態によれば、例えば特許文献1,2と比較して、被覆体材料の加工性や被覆体の摺動性,耐久摩耗性等に貢献することが可能となる。
【0024】
本実施形態の被覆体およびウェザーストリップは、前述のように、被覆体材料に配合されている複数種類の油状物質のうち少なくとも2つにおいて、それぞれの粘度が異なり、それぞれマイクロカプセルに内包(または混合した状態でマイクロカプセルに内包)されていれば良い。すなわち、種々の分野(例えば自動車用部品分野,押出成形分野,ゴム材料分野,熱可塑性樹脂分野,マイクロカプセル分野等)の技術常識を適宜適用し、必要に応じて先行技術文献等を適宜参照して設計変形することが可能であり、その一例として以下に示す実施例が挙げられる。
【0025】
≪実施例≫
<押出成形により被覆体を設けた成形体の構成例>
図1のウェザーストリップAは、本実施形態による被覆体3を備えた成形体の一例を示すものであって、自動車用ウェザーストリップに適用可能な構成例を示すものである。
【0026】
このウェザーストリップAは、図外の車体パネルにおける窓枠(例えば内壁面が横断面コ字状の溝内)に組み付けることができるように成形された横断面コ字状で長尺の支持部1と、前記窓枠と図外の窓ガラス(例えば図中矢印Y方向に移動して支持部1の内壁面側に出し入れ自在な窓ガラス)との間において所望のガラスシール性(水密性,気密性等)を保持できるように前記支持部1の内壁面側から突出した複数個(図1中では、支持部1における開口側端部から互いに対向する方向に突出した2個)のリップ状の弾接部2と、を基体10とする構成となっている。
【0027】
符号1a,1bは、支持部1の外壁から突出した係止爪部を示すものであり、窓枠に組みつけられた基体10が当該窓枠から抜けないようにするためのものである。弾接部2における少なくとも窓ガラスとの接触面側、および支持部1の底壁1cの内壁面側(摺動性を要する部位)には、被覆体3が形成されている。
【0028】
このようなウェザーストリップAは、押出成形機を適宜適用して、基体10に適用する基体材料と被覆体3に適用する被覆体材料とを押出成形することにより、形成することが可能となる。また、基体10に被覆体3が形成された多層構造によれば、弾接部2(被覆体3)が窓ガラスに対し弾性を有して摺動自在に弾接し、所望のガラスシール性を保持することが可能となる。
【0029】
基体材料,被覆体材料において配合する各種成分の種類,配合量等は、ウェザーストリップAの使用態様等に応じて適宜設定することが可能であり、例えば以下に示すように設定することが挙げられる。
【0030】
<基体材料>
基体材料においては、押出成形により基体10を形成できるものであれば良く、その一例として、ゴム材料または熱可塑性樹脂材料を主として配合したものが挙げられる。
【0031】
ゴム材料の具体例としては、天然ゴム(例えばNR等),ジエン系ゴム(例えばSBR,NBR),非ジエン系ゴム(例えばEP,EPM,EPDM),ブレンドゴム(例えば、EP/SBR,NBR/PVC)等が挙げられ、これらゴム材料を単独で適用しても良く、または2種類以上組み合わせたものを適用しても良い。
【0032】
熱可塑性樹脂材料の具体例としては、ポリアミド系エラストマー,ポリエステル系エラストマー,熱可塑性ウレタン系エラストマー,オレフィン系エラストマー,スチレン系エラストマー,オレフィン/スチレン系エラストマー等が挙げられ、これら熱可塑性樹脂材料を単独で適用しても良く、または2種類以上組み合わせたものを適用しても良い。
【0033】
<被覆体材料>
被覆体材料においては、少なくとも、ゴム材料または熱可塑性樹脂材料と、複数種類の油状物質(詳細を後述する)と、が配合されているものであって、当該複数種類の油状物質のうち少なくとも2つは、それぞれ粘度が異なり、それぞれマイクロカプセル(詳細を後述する)に内包、または混合した状態でマイクロカプセルに内包されているものとする。そして、このような被覆体材料を基体材料と共に押出成形することにより、基体10の表面(図1では弾接部2における窓ガラスとの接触面側、および支持部1の底壁1cの内壁面側)に被覆体3を形成できるものとする。
【0034】
被覆体材料に配合するゴム材料または熱可塑性樹脂材料においては、特に限定されるものではなく、例えば前記基体材料と同様のものを適用することが挙げられる。
【0035】
<複数種類の油状物質>
複数種類の油状物質においては、被覆体材料に配合(少なくとも2つは後述のマイクロカプセルに内包(それぞれ内包、または混合した状態で内包)して配合)できるものであって、当該被覆体材料を押出成形して得られる被覆体3の摺動性を付与できるものであれば良く、種々の態様を適用することが可能である。この油状物質の具体例としては、オルガノポリシロキサン,アルキルアルキレート,エステル系オイル,ワックス等が挙げられる。
【0036】
また、オルガノシロキサンの更なる具体例としては、ジメチルポリシロキサン,メチルフェニルポリ・シロキサン,メチルハイドロジェンポリシロキサン等や、エポキシ変性,アルキル変性,アミノ変性,カルボキシル変性,アルコール変性,フッ素変性,アルキルアラルキルポリエーテル変性,エポキシポリエーテル変性あるいはポリエーテル変性などの変性ポリシロキサン等が挙げられ、これらを単独で適用しても良く、または2種類以上組み合わせたものを適用しても良い。
【0037】
また、複数種類の油状物質のうち少なくとも2つは、後述のマイクロカプセルに内包できるものであれば、種々の粘度のものを適用することが可能であるが、その一例として、それぞれ20~100万cStの範囲内のもの(低粘度油状物質,高粘度油状物質)を適用することが挙げられる。具体例として、マイクロカプセルに内包する各油状物質のうち一部には、粘度が20~1000cSt未満の範囲内の低粘度油状物質を適用し、当該各油状物質のうち他部には、粘度が1000以上~100万cStの範囲内の高粘度油状物質を適用することが挙げられる。
【0038】
前記のような低粘度油状物質によれば、例えば被覆体3の初期の摺動性が得られ易くなる。また、前記のような高粘度油状物質によれば、被覆体3の摺動性を長く保持し、所望の耐久摩耗性が得られ易くなる。
【0039】
<マイクロカプセル>
油状物質をマイクロカプセルに内包する手法は、種々の態様を適用することが可能であり、その一例としては、目的とする油状物質をモノマー(マイクロカプセルの殻壁形成するために重合可能なモノマー;例えば、アクリル系モノマー,塩化ビニリデン等),分散剤,触媒等と共に混合して混合溶液を得て、その混合溶液を所望の水溶液中で重合させるIn-Site重合法を適用することが挙げられる。その他、ナイロン等で知られている界面重縮合法や、ゼラチン溶液中に油状物質を乳化混合してからアラビアゴムを加えて皮膜を形成させるコアセルベート法等を適用することも挙げられる。
【0040】
また、マイクロカプセルにおいては、単に1種類の油状物質を内包しても良く、複数種類の油状物質を混合した状態で内包しても良い。
【0041】
マイクロカプセルの形状等については、適宜設定することが可能であるが、例えば被覆体材料に配合する際に平均粒径が70μm以下(好ましくは1~50μmの範囲内)程度となるように設定することが挙げられる。
【0042】
このようなマイクロカプセルを配合した被覆体材料を適用して得たウェザーストリップAによれば、例えば被覆体3と窓ガラスとの摺動が繰り返されるに連れて、当該マイクロカプセルの殻壁が順次破壊され、これにより当該マイクロカプセル内の油状物質が被覆体3表面に滲み出ることとなる。
【0043】
被覆体材料におけるマイクロカプセルの配合量も、適宜設定することが可能であり、例えば被覆体材料における熱可塑性樹脂材料またはゴム材料の配合量を100重量部とした場合、当該マイクロカプセルの配合量は0.5~50重量部で、当該マイクロカプセルに内包される各油状物質の配合量が0.05~40重量部(マイクロカプセルの配合量を100重量部とした場合、当該マイクロカプセルに内包される各油状物質の配合量が10~80重量部)の範囲内に設定することが挙げられる。
【0044】
<マイクロカプセルの熱膨張性>
マイクロカプセルにおいては、前記のような油状物質と共に、種々の材料を混合内包しても良く、その一例として炭化水素等の揮発性膨張剤を内包することが挙げられる。
【0045】
このように油状物質および揮発性膨張剤を内包しているマイクロカプセルを配合した被覆体材料を押出成形すると、当該押出成形時の成形熱により揮発性膨張剤が揮発(気体を発生)して、マイクロカプセルが熱膨張する。これにより、被覆体3中には、マイクロカプセルの熱膨張度合いに応じた形状の熱膨張セル(気泡)が形成される。そして、被覆体3表面においては、前記熱膨張セルに由来する凹凸状の粗面が形成されることとなる。
【0046】
前記のように被覆体3表面に形成された粗面によれば、当該被覆体3と窓ガラスとの両者が接触する接触面積が小さくなり、当該両者間の摩擦抵抗が低減されるため、良好な摺動性が得られ易くなる。また、熱膨張したマイクロカプセルの殻壁は、厚さが薄くなって破壊され易くなるため、例えば被覆体3の初期の摺動性が得られ易くなる。
【0047】
揮発性膨張剤においては、前記のように油状物質と共にマイクロカプセルに内包できるものであって、押出成形により被覆体3中に熱膨張セルを形成できるものであれば良く、具体例としては、炭素数が8~15程度の炭化水素を適用することが挙げられる。
【0048】
揮発性膨張剤の配合量や、当該揮発性膨張剤を配合した場合のマイクロカプセルの形状,配合量等も、適宜設定することが可能である。例えば、当該揮発性膨張剤は、油状物質との重量比が1対9~9対1の範囲内とし、マイクロカプセル100重量部に対して10~80重量部の範囲内となるように設定することが挙げられる。また、当該マイクロカプセルの形状は、平均粒径70μm以下(好ましくは1~50μmの範囲内)程度とし、当該マイクロカプセルの配合量は、0.5~10重量部の範囲内に設定することが挙げられる。
【0049】
また、熱膨張セルの大きさ等は、例えば揮発性膨張剤の種類や配合量によって適宜設定することができ、例えば平均セル径が200μm以下の範囲内に設定することが挙げられる。
【0050】
<固体潤滑剤>
被覆体材料においては、固体潤滑剤を配合したものであっても良く、その一例として脂肪酸アミドを配合することが挙げられる。
【0051】
脂肪酸アミドの具体例としては、ステアロアミド,オキシステアロアミド,オレイルアミド,エルシルアミド,ラウリルアミド,パルミチルアミド及びベヘンアミド等の高級脂肪酸のモノアミド型や、メチロールアミド,メチレンビスステアロアミド,エチレンビス・ステアロアミド,エチレンビスオレイルアミド及びエチレンビスラウリルアミド等の高級脂肪酸のアミド型や、ステアリルオレイルアミド,N-ステアリルエルクアミド及びN-オレイルパルミトアミド等の複合型アミドや、プラストロジン及びプラストロジンSの商品名(藤沢薬品)として市販されている特殊脂肪酸アミド等が挙げられ、これらを単独で適用しても良く、または2種類以上組み合わせたものを適用しても良い。
【0052】
固体潤滑剤の配合量も、適宜設定することが可能であり、例えば被覆体材料における熱可塑性樹脂材料またはゴム材料の配合量を100重量部とした場合、当該固体潤滑剤の配合量は0.1~5重量部(好ましくは0.5~5重量部)の範囲内に設定することが挙げられる。
【0053】
固体潤滑剤が少ない場合(例えば0.1重量部未満の場合)、当該固体潤滑剤により効果(摺動性,耐摩耗性)が十分には得られないことが考えられる。また、当該固体潤滑剤が多い場合(例えば5重量部を超える場合)、例えば被覆体材料に配合する段階(例えば他の配合物と共に混連するる段階)や押出成形段階においてスリップ現象が発生し易くなり、十分な加工性が得られなくなることが考えられる。
【0054】
前記のように固体潤滑剤を配合した被覆体材料を適用して得たウェザーストリップAによれば、例えば被覆体3からマイクロカプセル内の油状物質が滲み出る前(例えばマイクロカプセルの殻壁が破壊される前)であっても、当該固体潤滑剤は被覆体3表面に滲み出ることができるため、例えば被覆体3の初期の摺動性が得られ易くなる。
【0055】
<その他>
被覆体材料,基体材料においては、以上示した各種成分の他に、カーボンブラック,加工助剤,液状ポリマー(液状ゴム),酸化防止剤,老化防止剤,脱水剤,熱安定剤,光安定剤,紫外線吸収剤,摺動性パウダー(例えば、PMMA,フッ素樹脂(テフロン(登録商標)等)系パウダー,アクリル系パウダー,シリコーンゴムパウダー,シリコーン樹脂パウダー,ポリカーボネート系パウダー,超高分子系ポリエチレンパウダー等),防雲剤,アンチブロッキング剤,スリップ剤,分散剤,難燃剤,帯電防止剤,導電性付与剤,粘着付与剤,架橋助剤,着色剤(酸化チタン等),金属粉末(フェライト等),ガラス繊維,炭素繊維,有機繊維(アラミド繊維等),複合繊維,ガラスバルーン,ガラスフレーク,グラファイト,カーボンナノチューブ,フラーレン,黒粉体,各種ゴム,有機発泡剤,熱膨張カプセル,ワックス,再生ゴム等が挙げられ、何れか1種類または複数の種類のものを組み合わせ、目的とする被覆体3や基体10の特性を大きく損なわない程度であれば適宜配合しても良い。
【0056】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0057】
例えば、実施例においては、車体パネルの窓枠に組み付けられるウェザーストリップを挙げ、被摺動対象としては窓ガラスを挙げているが、当該ウェザーストリップ,被摺動対象は特に限定されるものではなく、種々の態様を適用することが可能である。被摺動対象の具体例としては、ガラス部材(樹脂ガラスを含む),ドアパネル,ボディパネル等を適用することが挙げられ、この場合も、実施例に示したものと同様の作用効果を奏することが十分可能である。
【符号の説明】
【0058】
A…ウェザーストリップ
1…支持部
1a,1b…係止爪部
1c…底壁
10…基体
2…弾接部
3…被覆体
図1