(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066728
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】設計装置および設計方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/27 20200101AFI20230509BHJP
G06F 30/10 20200101ALI20230509BHJP
【FI】
G06F30/27
G06F30/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177492
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】川口 大輔
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146DC01
5B146DC03
5B146DL08
5B146EA11
(57)【要約】
【課題】教師形状符号以外の指定した新規形状符号に相当する新たな形状データを生成することが可能な設計装置を提供する。
【解決手段】設計装置1は、エンコーダ部3は、形状データ2と形状データ2に対応する値である形状符号7を受け取り、形状データ2の特徴情報を算出し、特徴情報と形状符号7を対応付けた情報である特徴群情報4を記憶する。デコーダ部5は、特徴群情報4から新規形状符号8に対応する新規形状データ6を生成する。これによって、教師形状符号以外の指定した新規形状符号8に相当する新たな新規形状データ6を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状データと該形状データに対応する値である形状符号を受け取り、前記形状データの特徴情報を算出し、前記特徴情報と前記形状符号を対応付けた情報である特徴群情報を記憶するエンコーダ部と、
前記特徴群情報から新規形状符号に対応する新規形状データを生成するデコーダ部と、
を備えることを特徴とする設計装置。
【請求項2】
請求項1に記載の設計装置において、
前記デコーダ部は、複数の前記形状符号に対応する前記特徴群情報を合成して前記新規形状符号に対応する前記新規形状データを生成することを特徴とする設計装置。
【請求項3】
請求項1に記載の設計装置において、
前記デコーダ部は、前記形状符号に基づいて形状データ生成式により、前記新規形状符号を変換し、前記特徴群情報から変換した前記新規形状符号に対応する前記新規形状データを生成することを特徴とする設計装置。
【請求項4】
請求項2に記載の設計装置において、
前記デコーダ部は、前記新規形状符号をワンホットベクトルに変換し、前記ワンホットベクトルを合成割合に従って変更し、前記特徴群情報を合成して前記新規形状データを生成することを特徴とする設計装置。
【請求項5】
請求項3に記載の設計装置において、
前記エンコーダ部及び前記デコーダ部は、畳み込み層を使ったニューラルネットワーク構造を有し、前記デコーダ部は、前記形状データ生成式として正規化の式を用いて前記形状符号の最大値で前記新規形状符号を正規化し、正規化した前記新規形状符号に対応する前記新規形状データを生成することを特徴とする設計装置。
【請求項6】
請求項1に記載の設計装置において、
生成した前記新規形状データを表示する表示部を備えることを特徴とする設計装置。
【請求項7】
形状データと該形状データに対応する値である形状符号を受け取り、前記形状データの特徴情報を算出し、前記特徴情報と前記形状符号を対応付けた情報である特徴群情報を記憶し、
記憶した前記特徴群情報から新規形状符号に対応する新規形状データを生成することを特徴とする設計方法。
【請求項8】
請求項7に記載の設計方法において、
複数の前記形状符号に対応する前記特徴群情報を合成して前記新規形状符号に対応する前記新規形状データを生成することを特徴とする設計方法。
【請求項9】
請求項7に記載の設計方法において、
前記形状符号に基づいて形状データ生成式により、前記新規形状符号を変換し、前記特徴群情報から変換した前記新規形状符号に対応する前記新規形状データを生成することを特徴とする設計方法。
【請求項10】
請求項8に記載の設計方法において、
前記新規形状符号をワンホットベクトルに変換し、前記ワンホットベクトルを合成割合に従って変更し、前記特徴群情報を合成して前記新規形状データを生成することを特徴とする設計方法。
【請求項11】
請求項9に記載の設計方法において、
前記形状データ生成式として正規化の式を用いて前記形状符号の最大値で前記新規形状符号を正規化し、正規化した前記新規形状符号に対応する前記新規形状データを生成することを特徴とする設計方法。
【請求項12】
請求項7に記載の設計方法において、
生成した前記新規形状データを表示部に表示することを特徴とする設計方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状についての設計装置および設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から機械設計においては、工学的な知見や独自の設計基準に基づいたルールベースの設計手法が一般的であり、その手法は、これまで機械設計の分野において多大な成果を挙げてきた。
【0003】
一方で、このようなルールベースの設計手法はノウハウの塊とも言うべきものであり、設計ツールの使い方はもとより、設計基準の適用方法に至るまで熟練者のスキルが要求される。そして、隅々まで熟知した担当者の育成が困難な昨今においては、ノウハウの継承が大きな課題となっている。
【0004】
そこで、機械学習技術のひとつである、畳込ニューラルネットワークを用いた特徴群情報抽出技術に着目する。
【0005】
従来のルールベースによる設計手法では、データから人間が抽出すべき設計パターンを定義していたが、畳込ニューラルネットワークを用いた深層学習ではこれを自動で行うことができる。
【0006】
したがって、これまでのように熟練者のノウハウに依存することのない、客観的な判断に基づいた設計プロセスが確立できる。
【0007】
特許文献1には、教師形状データを畳込ニューラルネットワークに学習させ、その特徴群情報を抽出し、目標性能値を入力した後に、同一の形状データを復元させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された従来技術では、教師形状データを畳込ニューラルネットワークに学習させていることから、教師データ以外の新規な形状データの生成は困難であった。
【0010】
本発明の目的は、教師形状符号以外の指定した形状符号に相当する新たな形状データを生成することが可能な設計装置及び設計方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は次のように構成される。
【0012】
設計装置において、形状データと該形状データに対応する値である形状符号を受け取り、前記形状データの特徴情報を算出し、前記特徴情報と前記形状符号を対応付けた情報である特徴群情報を記憶するエンコーダ部と、前記特徴群情報から新規形状符号に対応する新規形状データを生成するデコーダ部と、を備える。
【0013】
また、設計方法において、形状データと該形状データに対応する値である形状符号を受け取り、前記形状データの特徴情報を算出し、前記特徴情報と前記形状符号を対応付けた情報である特徴群情報を記憶し、記憶した前記特徴群情報から新規形状符号に対応する新規形状データを生成する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、教師形状符号以外の指定した新規形状符号に相当する新たな形状データを生成することが可能な設計装置及び設計方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1によるアルゴリズムを実行する設計装置を示す図である。
【
図2】実施例1におけるエンコーダ部の処理を示したフローチャートである。
【
図3】実施例1におけるデコーダ部の処理を示したフローチャートである。
【
図4】教師データである形状データ群の一例を示す図である。
【
図5】実施例1の設計装置によって得られる形状データの一例を示す図である。
【
図6】実施例2におけるデコーダ部の処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に示す実施形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
【実施例0017】
(実施例1)
本発明の実施例1について述べる。
【0018】
図1は、本発明に係る実施例1によるアルゴリズムを実行する設計装置1を示す図である。
【0019】
図1において、実施例1の設計装置1は、形状データ群2と、形状符号群7と、エンコーダ部3と、デコーダ部5とを備える。
【0020】
エンコーダ部3は、教師データである形状データ群2と形状データ群2の各形状に対応する値である形状符号群7とを受け取り、形状データ群2の特徴情報を算出し、特徴情報と形状符号群7を対応付けた情報である特徴群情報4を記憶する。デコーダ部5は、特徴群情報4から新規形状符号8に対応する新規形状データ6を生成する。
【0021】
また、エンコーダ部3、デコーダ部5は、それぞれ特徴抽出器、形状データ生成器として独立に用いることができる。実施例1ではエンコーダ部3及びデコーダ部5は畳み込み層を使ったニューラルネットワーク構造を有しており、多数の形状データ群2に対して迅速に特徴群情報4の抽出が行える。
【0022】
ユーザは、まず、教師データである形状データ群2とそれに対応する形状符号群7を設定したアルゴリズムを有する設計装置1に入力する。
【0023】
つづいて、形状データ群2と、それに対応する形状符号群7は、エンコーダ部3を介して、形状データ群2と形状符号群7とを対応付けた情報である特徴群情報4として、エンコーダ部3に一旦記憶される。さらに、ユーザは設計装置1に生成したい新規形状符号8に入力すると、デコーダ部5において生成したい新規形状符号8に対応する新規形状データ6が構築され、設計装置1より出力される。
【0024】
図2は、本発明の実施例1におけるエンコーダ部3の処理を示したフローチャートである。また、
図3は、本発明の実施例1におけるデコーダ部5の処理を示したフローチャートである。
【0025】
図2において、形状データ群2と、形状データ群2に対応する形状符号群7とを設計装置1のエンコーダ部3に入力する(ステップS1)。次に、エンコーダ部3が形状データ群2と形状符号群7とに基いて特徴群情報4を生成する。
【0026】
図3において、デコーダ部5は生成したい新規形状符号8をワンホットベクトルに変換する(ステップS10)。
【0027】
次に、デコーダ部5は、ワンホットベクトルを設計装置1に入力する(ステップS11)。
【0028】
そして、デコーダ部5は、特徴群情報4を合成した新規形状データ6を生成するステップ(S12)。この新規形状データ6は、教師データである形状データ群2とは異なるデータを含むデータとなっている。
【0029】
そして、デコーダ部5は、新規形状データ6を出力する(ステップS13)。
【0030】
実施例1においてデコーダ部5は、複数の形状符号に対応した特徴群情報4を合成したイメージを生成することで教師データである形状データ群2とは異なる新規形状データ6の生成を可能とする。
【0031】
特徴群情報4の合成には、デコーダ部5においてデータを構築する際に入力する特徴ベクトルの割合を変える。例えば、n=1、2、3、4の形状符号が与えられた場合、n=1は[1 0 0 0]、n=2は[0 1 0 0]などというように生成したい形状符号情報をワンホットベクトルに変換し入力するが、これを合成したい割合応じて、例えば合成したい割合が50%であれば、[0.5 0.5 0 0]といった具合に変更することで実現する。
【0032】
前述の例[0.5 0.5 0 0]は、n=1.5を出力したい場合のワンホットベクトルの与え方であり、n=1とn=2の特徴情報をデコーダ部5でそれぞれ50%ずつ合成した形状が新規形状データ6として得られる。
【0033】
図4は、教師データである形状データ群の一例を示す図であり、
図5は、実施例1の設計装置1によって得られる形状データの一例を示す図である。
【0034】
図5に示す形状データは、
図4に示した教師データに、教師データとは異なる新規形状データが追加されている。新規形状データは、教師データである形状データ群における、ある形状データと次の形状データとの間の形状値に対応する形状データである。合成する割合を50%として説明する。
【0035】
図4に示す教師データである形状データ群は、長方形状の部材が水平方向に対して25度傾斜するデータ(A)と、長方形状の部材が水平方向に対して0度傾斜するデータ(B)と、長方形状の部材が水平方向に対して-25度傾斜するデータ(C)とからなる形状データ群である。
【0036】
図5に示した形状データは、
図4のデータ(A)とデータ(B)とを50%ずつ合成した、水平方向に対して12.5度傾斜したデータ(A-B)と、
図4のデータ(B)とデータ(C)とを50%ずつ合成した、水平方向に対して-12.5度傾斜したデータ(B-C)が、データ(A)、(B)、(C)に追加されている。
【0037】
新規形状データ6は、
図5に示したデータ(A-B)及びデータ(B-C)に対応する。
【0038】
このように、本発明の実施例1によれば、教師データを合成することで、教師データ群には含まれていない形状データを追加した新規形状データ6を得ることができる。
【0039】
以上のように、本発明の実施例1によれば、形状データ群2と形状データ群2に対応する値である形状符号群7を、ニューラルネットワーク構造を有するエンコーダ部3に学習させ、形状データの特徴情報を算出し、この特徴情報と形状符号を対応付けた情報である特徴群情報4を抽出し、抽出した特徴群情報4に基づき、デコーダ部5により教師形状符号以外の指定した新規形状符号8に相当する新規形状データ6を生成することが可能な設計装置及び設計方法を提供することができる。
【0040】
また、本発明の実施例1によれば、流体工学的な知見や設計基準に基づいた個人のスキルに依存した設計手法を利用することない簡便な設計装置および設計方法を提供することができる。
【0041】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について説明する。
【0042】
実施例2の全体構成は実施例1と同様であるが、実施例2のエンコーダ部3及びデコーダ部5の機能が実施例1と異なっている。実施例2の全体構成は
図1に示す同様であるので、実施例2の全体構成の図示は省略する。
【0043】
実施例2の設計装置1は、形状データ群2と形状データ群2の各形状に対応する値である形状符号群7を受け取り、形状データ群2の特徴情報を算出し、特徴情報と形状符号群7とを対応付けた情報である特徴群情報4を記憶するエンコーダ部3と、特徴群情報4から新規形状符号8に対応する新規形状データ6を生成するデコーダ部5とを備える。
【0044】
また、エンコーダ部3、デコーダ部5は、それぞれ特徴抽出器、形状データ生成器として独立に用いることができる。
【0045】
本実施例2ではエンコーダ部3及びデコーダ部5は畳み込み層を使ったニューラルネットワーク構造を有しており、多数の形状データ群2に対して迅速に特徴群情報4の抽出が行える。
【0046】
ユーザは、まず、教師データである形状データ群2とそれに対応する形状符号群7を設計装置1に入力する。
【0047】
つづいて、形状データ群2と、それに対応する形状符号群7は、エンコーダ部3を介して、形状データ群2と形状符号群7とを対応付けた情報である特徴群情報4として、エンコーダ部3に一旦記憶される。さらに、ユーザは設計装置1に生成したい新規形状符号8に入力すると、デコーダ部5において生成したい新規形状符号8に対応する新規形状データ6が構築され、設計装置1より出力される。
【0048】
実施例2において、デコーダ部5は、特徴群情報4に基づき、教師データである形状データ群2とは異なる新規形状データ6を帰納的に生成する。実施例1においては、生成したい新規形状符号8をワンホットベクトルに変換していたが、実施例2においては、ワンホットベクトルに替えて入力をスカラ値とする。
【0049】
スカラ値はいくら大きくても小さくてもよいが、学習のしやすさのため形状符号群7における最大値で正規化した値(0から1の範囲に納める)を入力値とする。
【0050】
実施例1では、離散的な形状符号群7に対応した特徴群情報4が保存されているが、実施例2では連続尺度に基づき、応答曲面のような連続状態でデコーダ部5に特徴群情報4が保存されており特徴群情報4より帰納的に新規形状データ6を生成することができる。
【0051】
したがって、例えば、n=1、2、3、4の連続データを処理する場合、n =1.5を出力したいときにはデコーダ部5に1.5を直接指定することで、実施例1と同様な新規形状データ6が得られる。
【0052】
図6は、実施例2におけるデコーダ部5の処理を示したフローチャートである。
【0053】
図6において、新規形状符号8を正規化し(ステップS20)、正規化したスカラ値を設計装置1に入力する(ステップS21)。
【0054】
つまり、ステップS21にて、デコーダ部5は、正規化したスカラ値を特徴群情報4に対応させる。そして、デコーダ部5は、正規化したスカラ値に対応する特徴群情報4から新規形状データ6を生成し(ステップS22)、出力する(ステップS23)。
【0055】
実施例2においても、実施例1と同様な効果を得ることができる。
【0056】
ユーザは、設計対象の相違により、実施例1と実施例2のいずれを任意に選択することができる。
【0057】
上述した実施例1及び実施例2において、生成した新規形状データを表示するように構成することができる。
【0058】
図7は、表示部9を有する設計装置1を示す図である。表示部9に、新規形状データ6を表示することができる。
【0059】
なお、実施例2においては、新規形状符号8を正規化し、正規化したスカラ値を特徴群情報4に対応させて、新規形状データ6を生成するように構成したが、正規化に限らず、他の数式を用いて、新規形状符号8を変換し、特徴群情報4に対応させて、新規形状データ6を生成することも可能である。
【0060】
つまり、正規化の式を代表とする形状データ生成式を用いて、新規形状データ6を生成することも可能である。
【0061】
また、上述した実施例1及び実施例2の設計装置1及び設計方法において、エンコーダ部3に記憶された特徴群情報4は既存形状のデータベースといえるものとなり、新規形状設計だけでなくラインアップ設計にも有効活用可能である。
【0062】
また、本発明は上記した実施例1及び実施例2に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。
【0063】
例えば、上記した実施例1及び実施例2は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0064】
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。
【0065】
また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
1・・・設計装置、2・・・形状データ群、3・・・エンコーダ部、4・・・特徴群情報、5・・・デコーダ部、6・・・新規形状データ、7・・・形状符号群、8・・・新規形状符号、9・・・表示部