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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066730
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】道路照明器具
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/08 20060101AFI20230509BHJP
   F21S 9/02 20060101ALI20230509BHJP
   F21V 33/00 20060101ALI20230509BHJP
   H04N 23/45 20230101ALI20230509BHJP
   H04N 23/66 20230101ALI20230509BHJP
   H04N 23/56 20230101ALI20230509BHJP
   H04N 23/65 20230101ALI20230509BHJP
   F21W 131/103 20060101ALN20230509BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230509BHJP
【FI】
F21S8/08 120
F21S9/02
F21V33/00 400
H04N5/225 800
H04N5/232 030
H04N5/225 600
H04N5/232 410
F21W131:103
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177496
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000192
【氏名又は名称】岩崎電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東藤 毅
(72)【発明者】
【氏名】福田 大海
【テーマコード(参考)】
3K014
5C122
【Fターム(参考)】
3K014AA01
3K014RB00
5C122EA63
5C122EA67
5C122FA18
5C122GC77
5C122GE07
5C122GF04
5C122GG09
5C122HA77
(57)【要約】      (修正有)
【課題】煩雑な処理を要することなく道路の広範囲を撮影できる道路照明器具を提供する。
【解決手段】道路を照明する照明部を有した器具本体20を備えた道路照明器具において、前記器具本体20は、前記道路の延長方向Daの一方側Da1を撮影する第1カメラと、前記延長方向Daの他方側Da2を撮影する第2カメラと、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路を照明する照明部を有した器具本体を備えた道路照明器具において、
前記器具本体は、
前記道路の延長方向の一方側を撮影する第1カメラと、
前記延長方向の他方側を撮影する第2カメラと、
を備えることを特徴とする道路照明器具。
【請求項2】
前記器具本体は、
前記器具本体を支持する支柱が接続される支柱接続部を有し、
前記支柱接続部に前記第1カメラと前記第2カメラとが設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の道路照明器具。
【請求項3】
前記支柱接続部は、
前記照明部よりも下方に張り出した張出部を有し、
前記張出部に前記第1カメラ及び前記第2カメラが設けられている、
ことを特徴とする請求項2に記載の道路照明器具。
【請求項4】
前記支柱接続部は蓋体で覆われ、当該蓋体を開けることで、前記第1カメラ及び前記第2カメラの交換作業が可能である、ことを特徴とする請求項2または3に記載の道路照明器具。
【請求項5】
前記第1カメラ及び前記第2カメラはそれぞれ撮影レンズ部を備え、
前記撮影レンズ部のそれぞれが前記器具本体に形成された貫通孔を通じて外部に露出する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の道路照明器具。
【請求項6】
前記第1カメラ及び前記第2カメラのそれぞれの上方を覆う傘部を備える
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の道路照明器具。
【請求項7】
前記器具本体には、当該器具本体の上面の水を排水する排水箇所が設けられ、
前記排水箇所は、前記第1カメラ及び前記第2カメラのそれぞれの光軸を外れて排水が落下するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の道路照明器具。
【請求項8】
前記道路に設置された状態において、
前記第1カメラ及び前記第2カメラのそれぞれの光軸は、
水平方向から下方に35度±15度で傾き、かつ、前記道路の横断方向から延長方向に45度±15度で傾いている
ことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の道路照明器具。
【請求項9】
前記器具本体を支持する支柱には、
前記第1カメラを駆動する第1カメラ制御器と、
前記第2カメラを駆動する第2カメラ制御器と、
前記第1カメラ制御器、及び前記第2カメラ制御器が通信ケーブルによって接続されるスイッチングハブと、
が設けられ、
前記スイッチングハブは、給電機能を有し、前記通信ケーブルを通じて、前記第1カメラ制御器、及び前記第2カメラ制御器に、前記第1カメラ及び第2カメラの動作電力を供給する、
ことを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の道路照明器具。
【請求項10】
前記支柱には、
バッテリが内設され、
外部からの電力供給が停止している間、前記バッテリの蓄電電力によって前記照明部が所定の調光量で点灯し、前記第1カメラ及び前記第2カメラが撮影を行う
ことを特徴とする請求項9に記載の道路照明器具。
【請求項11】
前記第1カメラ及び前記第2カメラが揺れている場合、前記第1カメラ及び前記第2カメラのフレームレートを下げる
ことを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の道路照明器具。
【請求項12】
前記第1カメラ及び前記第2カメラの撮影データを、前記器具本体を支持する支柱に設置された第1無線通信機器に送信し、当該第1無線通信機器から当該支柱から離れた場所に設置された第2無線通信機器に送信する、ことを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の道路照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
監視カメラを内蔵した照明器具を用いて、高速道路等における道路状況あるいは駅前広場等の状況を監視する技術が知られている(例えば、特許文献1から特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4235791号公報
【特許文献2】特開2001-35246号公報
【特許文献3】特開2013-222558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、カメラのレンズに魚眼レンズを採用することで、道路の走行方向に沿った広範囲をカメラで撮影して監視できる。
しかしながら、魚眼レンズを用いて撮影された撮影像には大きな歪みが生じる。このため、撮影像の目視による状況把握を容易にするために、当該歪み補正などの画像処理が必要となり処理が煩雑になる。
【0005】
本発明は、煩雑な処理を要することなく道路の広範囲を撮影できる道路照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、道路を照明する照明部を有した器具本体を備えた道路照明器具において、前記器具本体は、前記道路の延長方向の一方側を撮影する第1カメラと、前記延長方向の他方側を撮影する第2カメラと、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様は、上記道路照明器具において、前記器具本体は、前記器具本体を支持する支柱が接続される支柱接続部を有し、前記支柱接続部に前記第1カメラと前記第2カメラとが設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様は、上記道路照明器具において、前記支柱接続部は、前記照明部よりも下方に張り出した張出部を有し、前記張出部に前記第1カメラ及び前記第2カメラが設けられている、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様は、上記道路照明器具において、前記支柱接続部は蓋体で覆われ、当該蓋体を開けることで、前記第1カメラ及び前記第2カメラの交換作業が可能である、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様は、上記道路照明器具において、前記第1カメラ及び前記第2カメラはそれぞれ撮影レンズ部を備え、前記撮影レンズ部のそれぞれが前記器具本体に形成された貫通孔を通じて外部に露出する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様は、上記道路照明器具において、前記第1カメラ及び前記第2カメラのそれぞれの上方を覆う傘部を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様は、上記道路照明器具において、前記器具本体には、当該器具本体の上面の水を排水する排水箇所が設けられ、前記排水箇所は、前記第1カメラ及び前記第2カメラのそれぞれの光軸を外れて排水が落下するように構成されている、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様は、上記道路照明器具において、前記道路に設置された状態において、前記第1カメラ及び前記第2カメラのそれぞれの光軸は、水平方向から下方に35度±15度で傾き、かつ、前記道路の横断方向から延長方向に45度±15度で傾いていることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様は、上記道路照明器具において、前記器具本体を支持する支柱には、前記第1カメラを駆動する第1カメラ制御器と、前記第2カメラを駆動する第2カメラ制御器と、前記第1カメラ制御器、及び前記第2カメラ制御器が通信ケーブルによって接続されるスイッチングハブと、が設けられ、前記スイッチングハブは、給電機能を有し、前記通信ケーブルを通じて、前記第1カメラ制御器、及び前記第2カメラ制御器に、前記第1カメラ及び第2カメラの動作電力を供給する、ことを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様は、上記道路照明器具において、前記支柱には、バッテリが内設され、外部からの電力供給が停止している間、前記バッテリの蓄電電力によって前記照明部が所定の調光量で点灯し、前記第1カメラ及び前記第2カメラが撮影を行う。
【0016】
本発明の一態様は、上記道路照明器具において、前記第1カメラ及び前記第2カメラが揺れている場合、前記第1カメラ及び前記第2カメラのフレームレートを下げることを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様は、上記道路照明器具において、前記第1カメラ及び前記第2カメラの撮影データを、前記器具本体を支持する支柱に設置された第1無線通信機器に送信し、当該第1無線通信機器から当該支柱から離れた場所に設置された第2無線通信機器に送信する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、煩雑な処理を要することなく道路の広範囲を撮影できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る道路照明器具の構成を示す図である。
図2】道路照明器具の設置の一態様を示す図である。
図3】道路照明器具の電気的構成を示すブロック図である。
図4】道路照明器具の器具本体の側面図である。
図5】器具本体の底面図である。
図6】器具本体の正面図である。
図7】器具本体を上側から視た斜視図である。
図8】第1カメラ及び第2カメラの取付構造を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は本実施形態に係る道路照明器具1の構成を示す図である。図2は道路照明器具1の設置の一態様を示す図である。
道路照明器具1は、図1及び図2に示すように、道路Aの脇に設置され、路面A1を照明する。かかる道路照明器具1は、図1に示すように、道路Aの脇の地面や構造物に立設された中空の支柱(照明柱とも称される)10と、当該支柱10の上部10Aに支持され、照明光を路面A1に向けて照射する器具本体20と、を備えている。
道路照明器具1は、図2に示すように、道路Aの延長方向Daの両方向に向けて照明光を照射することで、当該延長方向Daに沿った広い範囲を照明している。
なお、図1に示す支柱10は、鉛直方向に延びたストレート型のポールであるが、上部10Aが道路Aの側に曲がったアーム型でもよい。また、図2に示す道路Aは、上下線のそれぞれで2つの車線A2を含んでいるが、車線A2の数や道路Aの横断方向Dbの長さは任意である。
【0021】
図3は道路照明器具1の電気的構成を示すブロック図である。
同図に示すように、道路照明器具1は、照明光を出射する照明部30と、道路Aを撮影する第1カメラ31及び第2カメラ32と、を備え、これらが器具本体20に内蔵されている。照明部30は、調光可能な光源と、光を制御する光制御部材と、光源を点灯させるための電気的な装置と、を備えている。光源は、発光素子の一例であるLEDなどが用いられる。光制御部材は反射鏡やレンズなどが用いられる。
【0022】
また、道路照明器具1は、電源部40と、点灯制御部50と、カメラ制御部60と、を備え、これらが支柱10に内設されており、また支柱10に設置された第1無線通信機F1を備えている。
電源部40は、外部の商用電源に電力ケーブルBを通じて接続され、商用電源に基づく電力を各部に供給するユニットであり、SPD41と、電源制御回路42と、点灯電源回路43と、バッテリ44と、スイッチングレギュレータ45と、遮断防止装置46と、を備える。
【0023】
SPD41は、サージ防護デバイス(Surge protective device)であり、電力ケーブルBに生じた雷サージを接地点に放出する。電源制御回路42は、SPD41を介して電力ケーブルBに接続され、商用電源から供給される電力を点灯電源回路43、バッテリ44、及びスイッチングレギュレータ45のそれぞれに供給する回路である。点灯電源回路43は、光源を点灯させるための電力を照明部30に出力する回路(すなわち照明部30の電源)である。バッテリ44は商用電源の電力を蓄電する装置であり、停電時(商用電源からの電力供給の遮断時)に電源制御回路42を通じて、点灯電源回路43及びスイッチングレギュレータ45へ蓄電電力を供給する。スイッチングレギュレータ45は、カメラ制御部60に電力を供給する電源回路であり、供給する電力を商用電源の電力に基づいて生成する。遮断防止装置46は、カメラ制御部60(より正確には、後述するPoEスイッチングハブ61)への電力供給において、商用電源からバッテリ44の蓄電電力への切り替えが発生したときに、短期的な電力遮断の発生を防止する装置である。
【0024】
この電源部40は、停電の間、バッテリ44の蓄電電力を照明部30、及び、スイッチングレギュレータ45に供給することで、照明部30及びカメラ制御部60に加え、第1カメラ31及び第2カメラ32が動作を継続可能になっている。
【0025】
点灯制御部50は、周囲の明るさに応じて照明部30の点灯を制御するユニットであり、周囲の明るさを検出する光センサ51と、当該光センサ51の検出値51Aに基づく点灯制御信号52Aを点灯電源回路43へ出力する点灯制御回路52と、を備えている。点灯制御信号52Aは、明るさに応じた照明部30の調光量を指示する信号である。点灯制御回路52は、周囲の明るさが昼間に相当する所定の明るさ以上である場合、消灯(調光量=0%)を指示する。また、点灯制御回路52は、周囲の明るさが当該所定の明るさを下回っている場合、非停電時には100%の光出力(調光量=100%)での点灯を指示し、停電時には、蓄電電力の消費を抑えるために、例えば10%程度まで光出力を下げた点灯(調光量=10%)を指示する。点灯電源回路43が点灯制御信号52Aに基づいて、照明部30に供給する電力を可変することで、点灯制御信号52Aが示す調光量で照明部30が点灯する。
【0026】
カメラ制御部60は、第1カメラ31及び第2カメラ32の駆動制御機能と、これら第1カメラ31及び第2カメラ32への電力供給機能と、撮影データを外部へ送信する外部送信機能と、を備えたユニットであり、具体的には、PoEスイッチングハブ61と、第1カメラ制御器62と、第2カメラ制御器63と、を備えている。
【0027】
PoEスイッチングハブ61は、接続機器への給電機能を有したネットワークスイッチの一例であって、通信ケーブルCを通じて接続機器へ給電する給電機能を有したスイッチングハブであり、第1カメラ制御器62及び第2カメラ制御器63と、第1無線通信機器F1のそれぞれが通信ケーブルCによって接続されている。第1無線通信機器F1は、図1に示すように、外側に露出した状態で支柱10に設置されている。かかる第1無線通信機器F1は、図3に示すように、道路照明器具1とは別に道路Aの周辺の適宜の場所(支柱10から離れた場所)に設置された第2無線通信機器F2と無線通信する。第2無線通信機器F2は、遠隔地に設置された監視室との間で通信する機器である。ネットワークスイッチとしてPoEスイッチングハブ61が用いられることで、第1カメラ制御器62及び第2カメラ制御器63の動作電力の給電が通信ケーブルCを用いて行われるため、別途に給電のための配線を設ける必要がなく設置作業が容易になる。
【0028】
第1カメラ制御器62及び第2カメラ制御器63はそれぞれ、所定の信号線を通じて第1カメラ31及び第2カメラ32に給電及び通信可能に接続されている。
第1カメラ制御器62は、PoEスイッチングハブ61から供給される電力を第1カメラ31へ供給し、また、当該第1カメラ31を駆動する電子機器である。第2カメラ制御器63は、PoEスイッチングハブ61から供給される電力を第2カメラ32へ供給し、また、当該第2カメラ32を駆動する電子機器である。これら第1カメラ制御器62、及び第2カメラ制御器63は、駆動制御として、第1カメラ31及び第2カメラ32の撮影実行や、撮影データ(映像信号)の取得、遠隔地の監視室などへの撮影データの送信といった処理を実行する。
【0029】
また、陸橋などの比較的大きな振動が発生する箇所に道路照明器具1が設置されている場合、第1カメラ制御器62、及び第2カメラ制御器63は、所定値以上の振幅の揺れが第1カメラ31及び第2カメラ32に発生していることを振動センサ(図示せず)によって検知した場合、第1カメラ31及び第2カメラ32のフレームレートを通常時よりも低下させる制御を実行する。これにより、第1カメラ31及び第2カメラ32が振動によって大きく揺れたとしても、撮影像の揺れが抑えられ、視認性の低下が抑えられる。
【0030】
遠隔地においては、この撮影データに基づいて道路Aの監視が行われる。例えば監視室に設置されたモニタに撮影データに基づく映像(動画像)が表示され、監視員などがモニタの映像を通じて道路Aの状況を監視したり、把握したりする。
上述の通り、本実施形態の道路照明器具1は、停電時でも、蓄電電力によって照明部30の点灯と、第1カメラ31及び第2カメラ32の撮影とが継続されるため、災害が発生して大規模な停電が生じた場合でも、遠隔地から道路Aの監視を継続できる。また、停電が夜間であっても照明部30が点灯することで、監視に必要な明るさが点灯によって確保されるため、映像が暗くて監視が困難になる、といった事態を防止できる。
【0031】
本実施形態の道路照明器具1は、設置状態において、図2に示すように、第1カメラ31の撮影方向を示す第1光軸E1は、道路Aの延長方向Daの一方側Da1を指向し、第2カメラ32の撮影方向を示す第2光軸E2は、当該一方側Da1と反対の方向である他方側Da2を指向し、第1カメラ31及び第2カメラ32のそれぞれが撮影方向の百~数百メートル先(本実施形態では200メートル先)まで撮影する。かかる第1カメラ31及び第2カメラ32により、道路Aの延長方向Daの一方側Da1から他方側Da2に亘る広い範囲を撮影することができるため、魚眼レンズを用いて撮影する必要がなく、魚眼レンズによって生じた歪みを補正する処理なども不要となる。
なお、複数の道路照明器具が道路Aに沿って並んで設置されている場合、本実施形態の道路照明器具1の構成は、必ずしも全ての道路照明器具に適用される必要はなく、道路Aの監視のために選択された道路照明器具のみに適用してもよい。
【0032】
次いで、道路照明器具1の機械的構成を詳述する。
以下の説明において、道路照明器具1の「正面」は道路Aの側に臨む面を言い、道路照明器具1の「背面」は道路Aと反対の側に臨む面を言う。
【0033】
図4は道路照明器具1の器具本体20の側面図、図5は当該器具本体20の底面図、図6は当該器具本体20の正面図である。
器具本体20は、アルミダイカスト等で形成され、正面側の前端20Aから背面側の後端20Bにかけて長い平面視略矩形の箱型の筐体21を有し、後端20Bの側に、支柱10が接続されるクランプ74を有した支柱接続部70が設けられている。
【0034】
図5に示すように、器具本体20の底面20Cには照射開口76が形成され、この照射開口76には平板状の透明なグローブガラス(図示せず)が嵌められている。器具本体20の内部には、この照射開口76を臨む箇所に上述の照明部30が収められている。本実施形態の照明部30は、調光可能な光源を構成する多数のLEDと、当該光源の光を制御する光制御部材(レンズなど)と、を備え、多数のLEDが照射開口76の略全域に亘って平面状に配列されることで、当該照射開口76の略全域から光が照射される構成となっている。
【0035】
図7は器具本体20を上側から視た斜視図である。
器具本体20の上面には、後端20Bの側に蓋体77が設けられており、道路照明器具1の設置時などには、当該蓋体77を開放して、支柱10に内設された機器と器具本体20との間の配線作業などが行われる。
さらに詳述すると、器具本体20の内部は、図7に示すように、後端20Bの側の支柱接続室71と、前端20Aの側の光源室72とに仕切壁73によって仕切られている。光源室72には上述した照明部30が収められている。また、支柱接続室71には、支柱10が締結されるクランプ74が配設され、当該支柱接続室71のみが蓋体77によって開閉される構成となっており、配線作業などを容易に行うことができる。
【0036】
クランプ74は、支柱10の内部と連通し、当該支柱10の内部を通る配線を引き出す孔部を有し、当該孔部から引き出された配線が支柱接続室71に設けられた端子台(図示せず)に結線される。本実施形態において、かかる配線は、カメラ制御部60と第1カメラ31及び第2カメラ32とを接続する配線、並びに、電源部40と照明部30とを接続する配線などである。仕切壁73には、支柱接続室71と光源室72とを連通する連通孔73Aが形成されており、照明部30の各配線が連通孔73Aを通って支柱接続室71の端子台に結線される。
【0037】
さらに本実施形態では、第1カメラ31及び第2カメラ32は、光源室72ではなく、支柱接続室71に取り付けられている。これにより、第1カメラ31及び第2カメラ32の寿命(例えば7年)よりも長い寿命(例えば15年など)の発光素子で光源が構成されている場合に、当該光源よりも先に第1カメラ31及び第2カメラ32の交換作業が必要となったときでも、光源室72の側に手を加えることなく、支柱接続室71のみで交換作業を行うことができる。
【0038】
図8は、第1カメラ31及び第2カメラ32の取付構造を模式的に示す図である。なお、図8はあくまでも模式図であり、部材の大きさや位置が実際と異なる場合がある。
第1カメラ31及び第2カメラ32の構成は互いに同一であり、CCD(Charge-Coupled Device)などの撮像素子(イメージセンサとも称される)を内蔵したカメラ本体34Aと、当該カメラ本体34Aの先端に設けられた撮影レンズ部34Bと、を備えている。撮影レンズ部34Bは筒状のケースに撮影レンズ(図示せず)を内設して構成され、防水構造を有し、撮影レンズには魚眼レンズほどの大きな歪みを生じさせない適宜のレンズが用いられる。
【0039】
一方、器具本体20の筐体21には外部に貫通する貫通孔80が2箇所に形成されており、それぞれの貫通孔80に第1カメラ31及び第2カメラ32の撮影レンズ部34Bが挿入されることで外部に露出し、第1カメラ31及び第2カメラ32が外部を撮影可能となっている。上述の通り、第1カメラ31及び第2カメラ32は支柱接続部70の側に設けられているため、貫通孔80を器具本体20に形成しても、照明部30の側の防水構造に影響を与えることがなく、器具本体20の防水設計が容易となる。
【0040】
第1カメラ31及び第2カメラ32のカメラ本体34Aには、リング状の金属製のカメラ支持具82が、弾性を有したゴム材86を間に挟んで装着されている。カメラ支持具82には、カメラ本体34Aの周面の一部に設けられた凹凸形状に係合する部位が設けられており、この係合によってカメラ本体34Aの第1光軸E1、及び第2光軸E2周りの位置決めが行われ、また、ゴム材86はカメラ本体34Aの滑り防止材としても機能する。
【0041】
支柱接続室71には取付部材87が固定されており、この取付部材87にカメラ支持具82を固定することで、第1カメラ31及び第2カメラ32が支柱接続室71に固定される。
取付部材87は、一方向に延びた板状の金属製の部材であり、器具本体20の幅方向Dw(設置状態において道路Aの延長方向Daに略一致)に延びる姿勢で、支柱接続室71に立設されたボス75にネジ止め固定されている。取付部材87は、幅方向Dwの両方の端部に、第1カメラ31及び第2カメラ32をネジ止めするネジ止め部84が設けられており、第1カメラ31及び第2カメラ32の交換作業時には、ネジ止め部84のネジを外すことで簡単に交換作業が実施できるようになっている。また、第1カメラ31及び第2カメラ32は、ネジ止め部84に固定された状態で、筐体21の貫通孔80に撮影レンズ部34Bが係合することで、それぞれの撮影方向(第1光軸E1、及び第2光軸E2)が設計値に合わせられる。
【0042】
撮影方向の設計値は、第1カメラ31及び第2カメラ32の画角や道路照明器具1の設置位置、道路Aにおける撮影範囲などに基づいて決定される。本実施形態では、撮影方向(第1光軸E1、及び第2光軸E2)の設計値は、道路照明器具1が設置された状態において、水平方向から下方に35度±15度で傾き、かつ、横断方向Dbから延長方向Da(一方側Da1又は他方側Da2)に45度±15度で傾いた値に設定される。かかる設計値によれば、第1カメラ31及び第2カメラ32が延長方向Daの遠方まで十分に撮影することができ、なおかつ、下方に生じる死角の範囲を抑えることができる。
【0043】
図4に示すように、器具本体20において、支柱接続部70は、照明部30(光源室72)の照射開口76の開口面よりも下方に張り出した形状の張出部78を有し、この張出部78に、上記2つの貫通孔80が設けられ、さらに張出部78には、各貫通孔80(すなわち、第1カメラ31及び第2カメラ32)の上方を覆う板状の傘部79が設けられている。
各貫通孔80が張出部78に設けられることで、それぞれに配置される第1カメラ31及び第2カメラ32の撮影レンズ部34Bに、照射開口76から出射される照明光が届き難くなり、加えて、傘部79によって、第1カメラ31及び第2カメラ32の上方の撮影範囲が遮られることで、これら第1カメラ31及び第2カメラ32よりも上方に位置する照射開口76の映り込み(照明光の入り込み)が確実に抑えられ、ハレーションの発生を防止できる。
【0044】
器具本体20の底面20Cには、図5に示すように、排水口83が開口している。本実施形態の排水口83は、器具本体20の上面に連通し、当該上面に降り注ぐ雨水や、上面に堆積した雪が融けた雪どけ水などの排水を排水口83から下方に滴下させるための孔部である。そして、排水口83から落ちる排水が映り込み難くなるように、貫通孔80の位置と、第1カメラ31及び第2カメラ32の撮影方向(第1光軸E1及び第2光軸E2)と、が設定されている。本実施形態では、長孔状の2つの排水口83が底面20Cに開口し、各排水口83は、器具本体20の幅方向Dw(延在方向Da)に沿った直線上に設けられている。そして、各排水口83は、排水が器具本体20の幅方向Dwの中央に近い排水箇所83Pから落下するように構成されており、第1カメラ31の第1光軸E1及び第2カメラ32の第2光軸E2がいずれも、図5に示すように、排水箇所83Pを外れるように設定されている。具体的には、本実施形態の張出部78は、図4及び図6に示すように、設置時に延長方向Daと略平行になる正面部78Aと、左右一対の側面部78Bとを有し、正面部78Aの正面側に上記2つの排水口83が設けられ、各貫通孔80は各側面部78Bと正面部78Aとのそれぞれの角部に設けられ、各角部の貫通孔80から延長方向Daの遠方(器具本体20の幅方向Dw)に向くように第1光軸E1及び第2光軸E2が設定されている。
これにより、第1光軸E1及び第2光軸E2が正面部78Aの正面に位置する排水口83(排水箇所83P)から外れ、排水の映り込みが抑えられる。ただし、貫通孔80が角部に位置する場合、正面部78Aの面内に設けられた場合に比べて降雨時に水滴が撮影レンズ部34Bに付着し易くなる。これに対し、各貫通孔80の上方に傘部79が設けられているため、撮影レンズ部34Bへの水滴の付着が抑えられる。
【0045】
なお、排水箇所83Pは、器具本体20の底面20Cに形成された排水口83に限定されない。器具本体20の側面や支柱接続部70に排水箇所83Pを設けた構成もあり得る。この構成においても、排水箇所83Pを外れるように第1カメラ31の第1光軸E1及び第2カメラ32の第2光軸E2を設定することが好ましい。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば次の効果を奏する。
【0047】
本実施形態の道路照明器具1は、道路Aの延長方向Daの一方側Da1を撮影する第1カメラ31と、当該延長方向Daの他方側Da2を撮影する第2カメラ32と、を備える。
この構成によれば、魚眼レンズなどを用いずとも、第1カメラ31及び第2カメラ32によって道路Aの延長方向Daの一方側Da1から他方側Da2に亘る広い範囲を撮影することができ、魚眼レンズを用いた場合に必要となる、歪み補正などの煩雑な処理が不要となる。
【0048】
本実施形態の道路照明器具1は、照明の光源を収める器具本体20を備え、当該器具本体20は、当該光源を有する照明部30と、前記器具本体を支持する支柱が接続される支柱接続部70と、を有し、当該支柱接続部70に第1カメラ31と第2カメラ32とが設けられている。
この構成によれば、第1カメラ31及び第2カメラ32の寿命よりも長い寿命の光源が用いられている場合に、当該光源よりも先に第1カメラ31及び第2カメラ32の交換作業が必要となったときでも、照明部30の側に手を加えることなく、支柱接続部70のみで交換作業を行うことができる。
【0049】
本実施形態の道路照明器具1は、第1カメラ31及び第2カメラ32はそれぞれ撮影レンズ部34Bを備え、これら撮影レンズ部34Bのそれぞれが器具本体20に形成された貫通孔80を通じて外部に露出する。
この構成によれば、貫通孔80は、第1カメラ31及び第2カメラ32が設けられ支柱接続部70に形成されるため、貫通孔80が照明部30の側の防水構造に影響を与えることがなく、器具本体20の防水設計が容易となる。
【0050】
本実施形態の道路照明器具1は、支柱接続部70が、照明部30よりも下方に張り出した張出部78を有し、当該張出部78に第1カメラ31及び第2カメラ32が設けられている。
この構成によれば、第1カメラ31及び第2カメラ32の撮影レンズ部34Bに照射開口76から出射される照明光を届き難くできる。
【0051】
本実施形態の道路照明器具1は、第1カメラ31及び第2カメラ32のそれぞれの上方を覆う傘部79を備える。
この構成によれば、傘部79によって、第1カメラ31及び第2カメラ32が遮られることで、照射開口76の映り込み(照明光の入り込み)が抑えられ、ハレーションの発生を防止できる。また、降雨時などに第1カメラ及び第2カメラ32の撮影レンズ部34Bへの水滴の付着を防止できる。
【0052】
本実施形態の道路照明器具1は、器具本体20の底面20Cに排水口83が開口し、当該排水口83は、第1カメラ31及び第2カメラ32のそれぞれの第1光軸E1及び第2光軸E2を外れて排水が落下するように構成されている。
この構成によれば、排水の映り込みが抑えられる。
【0053】
本実施形態の道路照明器具1は、道路Aに設置された状態において、第1カメラ31及び第2カメラ32の第1光軸E1及び第2光軸E2は、水平方向から下方に35度±15度で傾き、かつ、道路Aの横断方向Dbから延長方向Daに45度±15度で傾いている。
この構成によれば、第1カメラ31及び第2カメラ32が延長方向Daの遠方まで十分に撮影することができ、また、下方に生じる死角の範囲を抑えることができる。
【0054】
本実施形態の道路照明器具1は、器具本体20を支持する支柱10を備え、当該支柱10には、第1カメラ31を駆動する第1カメラ制御器62と、第2カメラ32を駆動する第2カメラ制御器63と、第1カメラ制御器62及び第2カメラ制御器63が通信ケーブルCによって接続されるPoEスイッチングハブ61と、が設けられている。そして、PoEスイッチングハブ61は、給電機能を有し、通信ケーブルCを通じて、第1カメラ制御器62及び第2カメラ制御器63に、前記第1カメラ及び前記第2カメラの動作電力を供給する。
この構成によれば、給電のための配線を通信ケーブルCと別途に設ける必要がないため、設置時の配線作業などが容易となる。
【0055】
本実施形態の道路照明器具1は、支柱10には、バッテリ44が内設され、外部からの電力供給が停止している間、バッテリ44の蓄電電力によって照明部30が所定の調光量で点灯し、第1カメラ31及び第2カメラ32が撮影を行う。
この構成によれば、外部からの電力供給が停止しても撮影が行われ、また、周囲が暗い場合でも照明部30の点灯によって撮影に必要な明るさが確保される。これにより、道路Aの監視が不能になるといった事態を防止できる。
【0056】
本実施形態の道路照明器具1は、第1カメラ31及び第2カメラ32が揺れている場合、第1カメラ31及び第2カメラ32のフレームレートを下げる。
この構成によれば、第1カメラ31及び第2カメラ32が揺れた場合でも、撮影像の揺れが抑えられ、視認性の低下が抑えられる。
【0057】
本実施形態の道路照明器具1は、第1カメラ31及び第2カメラ32の撮影データを、支柱10に設置された第1無線通信機器F1に送信し、当該第1無線通信機器F1から当該支柱10から離れた場所に設置された第2無線通信機器F2に送信する。
この構成によれば、例えば遠隔地の監視室などとの通信のための通信線(例えば光ファイバなど)が敷設できない場所に道路照明器具1が設置される場合でも、当該監視室などと通信可能な第2無線通信機器F2を通信線が敷設可能な場所に設置することで、当該第2無線通信機器F2を介して当該監視室に撮影データを送信できる。
【0058】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様の例示であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において任意に変形、及び応用が可能である。
【0059】
また、上述した実施形態における水平、及び垂直等の方向や各種の数値、形状、材料は、特段の断りがない限り、それら方向や数値、形状、材料と同じ作用効果を奏する範囲(いわゆる均等の範囲)を含む。
【符号の説明】
【0060】
1 道路照明器具
10 支柱
20 器具本体
30 照明部
31 第1カメラ
32 第2カメラ
34A カメラ本体
34B 撮影レンズ部
44 バッテリ
61 PoEスイッチングハブ(スイッチングハブ)
62 第1カメラ制御器
63 第2カメラ制御器
70 支柱接続部
76 照射開口
78 張出部
79 傘部
80 貫通孔
83 排水口
83P 排水箇所
A 道路
C 通信ケーブル
Da 延長方向
Db 横断方向
E1 第1光軸
E2 第2光軸
F1 第1無線通信機器
F2 第2無線通信機器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8