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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066736
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20230509BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20230509BHJP
【FI】
A01B69/00 301
A01B69/00 303A
G05D1/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177509
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内山 直人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勇介
【テーマコード(参考)】
2B043
5H301
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB07
2B043BA09
2B043BB01
2B043DA01
2B043EA33
2B043EB18
2B043EC12
2B043EE01
5H301AA03
5H301BB01
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG09
(57)【要約】
【課題】手動操舵モードから自動操舵モードに切り替えられた際に走行機体が蛇行して走行するのを抑制することができる作業車両を提供する。
【解決手段】トラクタは、圃場を走行可能な走行機体と、走行機体を操舵する操舵部と、走行機体の前方の地面及び遠景を撮像可能なカメラと、を備える。また、作業車両は、オペレータが走行機体を操舵する手動操舵モードと、カメラの撮像動作により得られた画像データに基づいて操舵部を制御する自動操舵モードと、を実行可能な制御部と、画像を表示可能なディスプレイ206と、を備える。制御部は、手動操舵モードにおいて、カメラの撮像動作によって得られた画像データに対応する撮像画像D1に、圃場において作業経路上を走行する際に基準となるガイドラインGLを重ねた表示画像D0をディスプレイ206に表示させる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行可能な走行機体と、
前記走行機体を操舵する操舵部と、
前記走行機体の前方の地面及び遠景を撮像可能な撮像部と、
オペレータが前記走行機体を操舵する手動操舵モードと、前記撮像部の撮像動作により得られた画像データに基づいて前記操舵部を制御する自動操舵モードと、を実行可能な制御部と、
画像を表示可能な表示部と、を備え、
前記制御部は、前記手動操舵モードにおいて、前記撮像部の撮像動作によって得られた画像データに対応する撮像画像に、前記圃場において作業経路上を走行する際に基準となるガイドラインを重ねた表示画像を前記表示部に表示させる、
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記制御部は、オペレータに入力された入力データに基づいて、前記撮像画像の底辺に対する前記ガイドラインの角度を設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記入力データが、前記撮像部の取り付け高さのデータ、前記走行機体に取り付けられる作業機の幅のデータ、及び前記作業機を前記圃場における作業跡とオーバーラップさせるラップ代のデータを含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
前記入力データが、前記ガイドラインの角度のデータを含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1、2に開示されているように、圃場内において撮像画像を用いて作業車両を走行制御する技術が知られている。圃場の枕地において作業車両を旋回させる際には、オペレータは作業車両の走行制御をオフにし、操舵部を操舵することで作業車両を手動で旋回させる必要がある。そして、作業車両の旋回が完了したら再び走行制御をオンにすることで、圃場内において作業車両を自動で走行させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-146061号公報
【特許文献2】特開2017-211893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、例えば枕地においては、オペレータが走行機体を操舵する必要がある。このため、圃場内において作業車両が作業跡の端に対して平行となっていない状態で走行制御が実行されると、作業車両の走行方向を調整するために作業車両が蛇行して走行することがあった。
【0005】
そこで、本発明は、手動操舵モードから自動操舵モードに切り替えられた際に走行機体が蛇行して走行するのを抑制することができる作業車両を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の作業車両(1)は、圃場(F1)を走行可能な走行機体(4)と、
前記走行機体(4)を操舵する操舵部(25)と、
前記走行機体(4)の前方の地面及び遠景を撮像可能な撮像部(15)と、
オペレータが前記走行機体(4)を操舵する手動操舵モードと、前記撮像部(15)の撮像動作により得られた画像データに基づいて前記操舵部(25)を制御する自動操舵モードと、を実行可能な制御部(101)と、
画像を表示可能な表示部(206)と、を備え、
前記制御部(101)は、前記手動操舵モードにおいて、前記撮像部(15)の撮像動作によって得られた画像データに対応する撮像画像(D1)に、前記圃場(F1)において作業経路上を走行する際に基準となるガイドライン(GL)を重ねた表示画像(D0)を前記表示部(206)に表示させる。
【0007】
例えば、図5及び図8を参照し、前記制御部(101)は、オペレータに入力された入力データに基づいて、前記撮像画像(D1)の底辺(B1)に対する前記ガイドライン(GL)の角度(θ)を設定する。
【0008】
例えば、図8図9及び図10を参照し、前記入力データが、前記撮像部(15)の取り付け高さ(H)のデータ、前記走行機体(4)に取り付けられる作業機(6)の幅(W)のデータ、及び前記作業機(6)を前記圃場における作業跡(T1)とオーバーラップさせるラップ代(Δ)のデータを含む。
【0009】
例えば、図8を参照し、前記入力データが、前記ガイドライン(GL)の角度(θ)のデータを含む。
【0010】
なお、上述カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、何ら本発明の構成を限定するものではない。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る本発明によると、手動操舵モードから自動操舵モードに切り替えられた際に走行機体が蛇行して走行するのを抑制することができる。
【0012】
請求項2に係る本発明によると、オペレータがガイドラインの角度を状況に応じて適切に調整することができる。
【0013】
請求項3に係る発明によると、オペレータが、走行機体、走行機体に取り付けられる作業機、及びラップ代に適したガイドラインの角度を手計算しなくてもよく、操作性が向上する。
【0014】
請求項4に係る発明によると、例えばガイドラインの角度を微調整する場合など、オペレータが角度のデータを入力することで、ガイドラインの角度を直接調整することができ、操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態に係る作業車両の一例であるトラクタの側面図。
図2】(a)はトラクタを前方から見た斜視図、(b)はトラクタを後方から見た斜視図。
図3】操作パネルの平面図。
図4】トラクタの制御系の要部のブロック図。
図5】携帯端末のブロック図。
図6】(a)及び(b)は制御モジュールのCPUによる制御処理を示すフローチャート。
図7】(a)及び(b)は圃場におけるトラクタの作業例の模式図。
図8】ディスプレイに表示される表示画像の一例を示す説明図。
図9】遷移画像の説明図。
図10】(a)及び(b)は入力データを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。図1は、実施の形態に係る作業車両の一例であるトラクタ1の側面図、図2(a)は、図1のトラクタ1を前方から見た斜視図、図2(b)は、トラクタ1を後方から見た斜視図である。
【0017】
トラクタ1は、左右一対の前輪2及び後輪3を有する走行機体4と、走行機体4の後方に昇降リンク5を介して昇降可能に連結された作業機6と、を備える。走行機体4は、圃場や道路を走行可能に構成されている。走行機体4は、前輪2及び後輪3に支持された機体フレーム7と、該機体フレーム7の前部に設置されたエンジン(図示せず)の上面をカバーするボンネット8と、該ボンネット8の後方に設置され、オペレータが乗込んで操縦等を行う操縦部9が設けられたキャビン10と、を備える。エンジンは、変速機構(図示せず)を介して前輪2及び後輪3を駆動すると共に、PTO軸(図示せず)を介して作業機6に駆動力を供給している。作業機6は、圃場において播種や畝立てなどの作業をするのに用いられるものであり、例えばロータリ耕耘機である。
【0018】
上記操縦部9は、オペレータが着座する座席11と、該座席11の前方に配置されたステアリングハンドル12及び上下方向に延設されたステアリングシャフト21を含む操舵部25と、を備える。操舵部25は、オペレータ又は駆動ユニット20が走行機体4を操舵するためのものである。
【0019】
また、上記操縦部9は、該ステアリングハンドル12の前方に配置された表示パネル13と、ステアリングハンドル12の左側方に配置された前後進切換えレバー14と、ステアリングハンドル12の右側方に配置されたスロットルレバー(図示せず)と、該スロットルレバーの手前に配置されて上記作業機6の昇降作動を操作する昇降レバー(図示せず)と、該スロットルレバーの奥側に配置された方向指示器レバー16と、座席11とステアリングハンドル12の間に設けられた床面であるフロアステップ18と、座席11の右側方に配置された操作盤19と、を備える。
【0020】
キャビン10は、一対のフロントフレーム10aと、一対のリアフレーム10bと、これらフレーム10a,10bに支持された天井10cと、を有し、その内側に操縦部9が形成されている。キャビン10の天井10cの前部には、撮像部の一例であるカメラ15が設けられている。
【0021】
ステアリングハンドル12の回転軸とステアリングシャフト21の上端との間には、ステアリングシャフト21を回転駆動して走行機体4の操舵を制御(アシスト)する駆動ユニット20が設けられている。該駆動ユニット20は、ステアリングシャフト21の上端側に装着されるとともに、該ステアリングシャフト21を覆うステアリングコラム22の上部側とに取り付け固定されている。これにより、ステアリングシャフト21は、ステアリングハンドル12を介してオペレータによって軸回転操作(操向操作)されるとともに、駆動ユニット20によって軸回転駆動されることによって操向操作が制御(アシスト)可能に構成されている。トラクタ1は、駆動ユニット20のケース上に配置された操作パネル27と、駆動ユニット20のケース内に配置された制御モジュール100と、を備える。
【0022】
図3は、実施の形態に係る操作パネル27の平面図である。操作パネル27は、動作ON/OFFスイッチ31、遠景直進ボタン33、複数の追従ボタン34~36、感度調整ボタン37、報知部40、及び複数のLED43~46を有する。報知部40は、オペレータに警報を報知可能に構成されており、本実施の形態では、ランプ41及びブザー42を含む。
【0023】
図4は、実施の形態に係るトラクタ1の制御系の要部のブロック図である。制御モジュール100は、例えばマイクロコンピュータなどのコンピュータにより構成されている。制御モジュール100は、走行機体4及び作業機6を制御する不図示のECUとは異なるコンピュータで構成されている。図1に示す駆動ユニット20は、操舵角センサ30及び駆動モータ39を備える。
【0024】
制御モジュール100は、プロセッサの一例であるCPU101、記憶部の一例であるROM102及びRAM103、入出力インタフェースの一例であるI/O104、並びに通信部105を有する。通信部105は、WiFi(登録商標)やBluetooth(登録商標)等の無線、又は有線により携帯端末200とデータ通信可能に構成されている。
【0025】
制御モジュール100の入力側には、カメラ15、操舵角センサ30、動作ON/OFFスイッチ31、遠景直進ボタン33、追従ボタン34~36、及び感度調整ボタン37が接続される。一方、制御モジュール100の出力側には、駆動モータ39、報知部40、LED43~46が接続されている。
【0026】
カメラ15は、車両走行の目標となる走行機体4の進行方向の地面及び地平線を撮像可能な位置に配置されている。カメラ15は、単眼のデジタルカメラであり、被写体(風景)を撮像して画像データを生成し、該画像データを制御モジュール100に出力する。
【0027】
操舵角センサ30は前輪2の操舵角を検出するデバイスである。駆動モータ39は、ステアリングシャフト21を軸回転させる電動モータであり、例えばステッピングモータである。駆動モータ39は、制御モジュール100が後述する自動操舵モードを実行する際に制御モジュール100によって制御される。該駆動モータ39のモータ出力軸には、ギヤ減速する減速機構(図示せず)が設けられている。前記駆動モータ39による回転出力は、減速機構によって減速されて、ステアリングシャフト21へと伝動される。よって、自動操舵モードでは、前記駆動モータ39のモータ出力によりステアリングシャフト21を軸回転させることによって、ステアリング操作が制御される。
【0028】
ランプ41は、点灯、点滅などによってオペレータに警報を発報するためのものである。ブザー42は、音を発する放音装置であり、音を発することによってオペレータに警報を発報するためのものである。
【0029】
動作ON/OFFスイッチ31は、オペレータが操作可能なスイッチであり、例えばランプ付き押しボタンスイッチである。動作ON/OFFスイッチ31は、第1状態としてランプが点灯したON状態となり、第2状態としてランプが消灯したOFF状態となる。動作ON/OFFスイッチ31は、オペレータに操作される度に、ON状態とOFF状態とに交互に切り替わる。
【0030】
制御モジュール100のCPU101は、圃場で作業を行う作業モードと道路や圃場内を移動する走行モードとを選択的に実行可能である。そして、CPU101は、作業モードにおいて、オペレータが走行機体4を操舵する手動操舵モードと、カメラ15の撮像動作により得られた画像データI2に基づいて走行機体4の操舵を制御する自動操舵モードと、を選択的に実行可能に構成されている。本実施の形態において、前記自動操舵モードとして、4つの自動操舵モードがある。
【0031】
遠景直進ボタン33及び追従ボタン34~追従ボタン36のそれぞれは、4つの自動操舵モードのうち、対応する自動操舵モードをオペレータが選択可能なボタンスイッチである。動作ON/OFFスイッチ31をON状態とすることにより、遠景直進ボタン33及び追従ボタン34~36のそれぞれに対応する自動操舵モードが選択可能となる。
【0032】
以下、遠景直進ボタン33と対応する自動操舵モードを「遠景直進モード」、追従ボタン34と対応する自動操舵モードを「前工程追従モード」、追従ボタン35と対応する自動操舵モードを「畔追従モード」、追従ボタン36と対応する自動操舵モードを「V溝追従モード」という。
【0033】
感度調整ボタン37は、自動操舵モードを実行する際のステアリングの操舵感度を調整するボタンである。
【0034】
図5は、実施の形態に係る携帯端末200のブロック図である。携帯端末200は、コンピュータ端末であり、例えばタブレットPC、スマートフォンである。携帯端末200は、プロセッサの一例であるCPU201、記憶部の一例であるROM202及びRAM203、入出力インタフェースの一例であるI/O204、並びに通信部205を有する。通信部205は、制御モジュール100の通信部105と無線又は有線でデータ通信可能に構成されている。また、携帯端末200は、画像を表示可能な表示部の一例であるディスプレイ206を有する。本実施の形態では、ディスプレイ206は、タッチパネルディスプレイであり、入力部としても機能する。
【0035】
本実施の形態では、制御モジュール100のCPU101が制御部として機能する。
【0036】
以下、制御モジュール100による制御処理を図6(a)及び図6(b)に示すフローチャートに沿って説明する。図6(a)及び図6(b)に示す制御処理は、所定周期で繰り返し実行される。制御モジュール100のCPU101は、動作ON/OFFスイッチ31がON状態であるか否かを判断する(S101)。圃場においてトラクタ1により作業を行う際には、オペレータにより動作ON/OFFスイッチ31がON状態にされる。
【0037】
動作ON/OFFスイッチ31がON状態である場合(S101:YES)、CPU101は、作業モードを実行する(S102)。作業モードは、圃場において作業機6により作業を行うモードであり、CPU101は、オペレータによる遠景直進ボタン33及び追従ボタン34~36の入力操作を受け付け可能な状態となる。
【0038】
CPU101は、遠景直進ボタン33及び追従ボタン34~36のいずれかが操作されたか(即ちONされたか)否かを判断する(S103)。いずれかのボタンが操作された場合(S103:YES)、CPU101は、操作されたボタンに対応する自動操舵モードを実行する(S104)。
【0039】
動作ON/OFFスイッチ31がON状態で遠景直進ボタン33が操作された場合、CPU101は、LED43を点灯させ、遠景直進モードを実行する。動作ON/OFFスイッチ31がON状態で追従ボタン34が操作された場合、CPU101は、LED44を点灯させ、前工程追従モードを実行する。動作ON/OFFスイッチ31がON状態で追従ボタン35が操作された場合、CPU101は、LED45を点灯させ、畔追従モードを実行する。動作ON/OFFスイッチ31がON状態で追従ボタン36が操作された場合、CPU101は、LED46を点灯させ、V溝追従モードを実行する。
【0040】
ステップS104で実行される自動操舵モードについて説明する。遠景直進モードにおいて、CPU101は、カメラ15に撮像動作を行わせ、カメラ15の撮像動作により生成された画像データI2を取得する。そして、CPU101は、画像データI2に基づいて目標地点を決定し、目標地点に向けて直進するよう、走行機体4を自動走行させる。
【0041】
前工程追従モードにおいて、CPU101は、カメラ15に撮像動作を行わせ、カメラ15の撮像動作により生成された画像データI2を取得する。そして、CPU101は、画像データI2に基づいて走行機体4の側方にある直線状に延びる作業跡を検出し、作業跡に沿って走行機体4を自動走行させる。
【0042】
畔追従モードにおいて、CPU101は、カメラ15に撮像動作を行わせ、カメラ15の撮像動作により生成された画像データI2を取得する。そして、CPU101は、画像データI2に基づいて走行機体4の側方にある畔を検出し、畔に沿って走行機体4を自動走行させる。
【0043】
V溝追従モードにおいて、CPU101は、カメラ15に撮像動作を行わせ、カメラ15の撮像動作により生成された画像データI2を取得する。そして、CPU101は、画像データI2に基づいて直線状に延びるV溝を検出し、V溝に沿って走行機体4を自動走行させる。
【0044】
また、CPU101は、動作ON/OFFスイッチ31がON状態であっても(S101:YES)、ボタン33~36のいずれも操作されなければ(S103:NO)、手動操舵モードを実行する(S105)。即ち、手動操舵モードにおいて、CPU101は、駆動モータ39を用いたアシスト制御は行わず、走行機体4は、オペレータの操舵に従って走行する。
【0045】
なお、CPU101は、いずれかの自動操舵モードを実行中にオペレータにボタン33~36のうち対応するボタンが再度操作された場合、自動操舵モードを停止し、手動操舵モードに移行するようにしてもよい。また、CPU101は、いずれかの自動操舵モードを実行中にオペレータにステアリングハンドル12が回転操作された場合、自動操舵モードを停止し、手動操舵モードに移行するようにしてもよい。自動操舵モードから手動操舵モードに切り替える際、CPU101は、LED43~46のうち、点灯させていたLEDを消灯させる。
【0046】
動作ON/OFFスイッチ31がOFF状態であれば(S101:NO)、CPU101は、走行モードを実行する(S106)。走行モードは、公道などの道路や圃場内を移動するためのモードであり、手動操舵モードと同様、オペレータの操舵に従って走行するモードであるが、作業モードと異なり、オペレータによるボタン33~36の入力操作は受け付けない。走行モードにおいては、作業機6は、上昇させた状態である。トラクタ1の移動時には、オペレータにより動作ON/OFFスイッチ31がOFF状態にされる。
【0047】
図7(a)及び図7(b)は、圃場F1におけるトラクタ1の作業例の模式図である。圃場F1においては、オペレータにより動作ON/OFFスイッチ31がON状態に操作され、作業モードに設定される。圃場F1における作業エリアW1では、作業モードは、オペレータにより自動操舵モードに設定される。自動操舵モードに設定されることにより、トラクタ1は、作業エリアW1において自動で耕耘等の作業を行う。一方、圃場F1における枕地M1では、作業モードは、オペレータにより手動操舵モードに設定される。手動操舵モードに設定されることにより、オペレータはトラクタ1が枕地M1で旋回するようトラクタ1を手動で操舵する。そして、オペレータは、トラクタ1を手動で操舵することにより、トラクタ1による作業跡T1の端のラインS1と平行となるようにトラクタ1の進行方向を調整する。そして、オペレータが自動操舵モードに設定することにより、トラクタ1は作業エリアW1において自動で走行し、耕耘等の作業を行う。
【0048】
ここで、手動操舵モードから自動操舵モードに切り替えられた直後、トラクタ1の進行方向が図7(a)に示すように作業跡T1の端のラインS1と平行であれば、トラクタ1はラインS1と平行に自動走行する。しかし、手動操舵モードから自動操舵モードに切り替えられた直後、トラクタ1の進行方向が図7(b)に示すように作業跡T1の端のラインS1に対して傾斜していると、トラクタ1はラインS1と平行に走行する前に、トラクタ1が蛇行して走行することがある。特に、自動操舵モードとして前工程追従モードに切り替えられた直後にトラクタ1の蛇行が発生しやすい。そこで、本実施の形態では、ステップS105の手動操舵モードにおいて、以下の処理が実行される。
【0049】
ステップS105の手動操舵モードについて図6(b)のフローチャートに沿って具体的に説明する。CPU101は、カメラ15に撮像動作を行わせる(S201)。カメラ15による撮像周期は、制御処理と同じ所定周期である。カメラ15は、走行機体4から見た前景を撮像することにより画像データI1を生成する。前景には、走行機体4の前方の地面や遠景が含まれる。地面には、圃場F1が含まれる。
【0050】
CPU101は、通信部105を介して画像データI1を携帯端末200に送信し、画像データI1に応じた画像をディスプレイ206に表示させる(S202)。図8は、ディスプレイ206に表示される表示画像D0の一例を示す説明図である。
【0051】
表示画像D0には、画像データI1に基づく撮像画像D1と、撮像画像D1上に重ねて表示される参照画像D2と、オペレータが入力操作可能な操作画像D3と、が含まれる。撮像画像D1は、走行機体4から前方を見た風景画像であり、白黒又はカラーの濃淡画像である。撮像画像D1は、新たな画像データI1が携帯端末200に取得される度に更新される。
【0052】
参照画像D2は、オペレータが各種情報を目視可能な画像である。参照画像D2は、図7(a)に示す圃場F1においてトラクタ1が作業経路PH上を走行する際に基準となるガイドラインGLを含む。ガイドラインGLは、撮像画像D1が更新されても、表示画像D0において固定位置に表示される直線である。ガイドラインGLは、撮像画像D1において斜め方向に延びる直線である。ここで、作業経路PHは、作業跡T1の端のラインS1に沿って直線状に延びる、走行機体4の目標経路である。なお、参照画像D2には、トラクタ1の運転状況などを示す数字等の文字が含まれていてもよい。数字等の文字は、オペレータが見やすい大きさに設定されるのが好ましい。
【0053】
撮像画像D1において、作業エリアW1の作業跡T1に相当する画像は、作業前の部分に相当する画像と比較して濃くなる。したがって、オペレータは、表示画像D0を目視しながら、撮像画像D1における濃淡の濃い部分の端のラインがガイドラインGLに概ね合うようにトラクタ1を操舵することで、トラクタ1の進行方向が作業跡T1の端のラインS1と概ね平行となる。また、これにより、作業機6の端と作業跡T1の端とを揃える、又は作業機6と作業跡T1とを所定のラップ代でオーバーラップさせることができる。この状態で手動操舵モードから自動操舵モードに切り替えられると、図7(a)に示すように、トラクタ1は、作業跡T1の端のラインS1に沿って直線的に自動走行する。このとき、オペレータに設定される自動操舵モードは、遠景直進モード、前工程追従モード、畔追従モード、及びV溝追従モードのいずれであってもよい。例えば、前工程の作業跡T1を画像処理で検出し難いような場合には、2工程目以降においても、前工程追従モードではなく、遠景直進モードでトラクタ1に作業を行わせることも可能である。その際、オペレータにより、トラクタ1の走行機体4が前工程の作業跡T1の端のラインS1と概ね平行に合わせられているので、トラクタ1を作業跡T1の端のラインS1に沿って直線的に自動走行させることが可能である。これにより、作業エリアW1において作業機6による作業残しが生じるのを抑制することができる。
【0054】
ここで、作業跡T1は、走行機体4から前方を見て、トラクタ1が枕地M1で右旋回するとトラクタ1の右側、トラクタ1が枕地M1で左旋回するとトラクタ1の左側に現れる。このため、本実施の形態では、CPU101は、ガイドラインGLを、撮像画像D1の左右方向の中心に位置する中心線L1に対して左右対称に一対表示する。中心線L1は、撮像画像D1中、上下方向に延びる直線であり、仮想直線であってもよいが、撮像画像D1上に表示してもよい。なお、各ガイドラインGLは、撮像画像D1上、上から下に向かうに連れて、中心線L1から離間するように設定すればよい。
【0055】
表示画像D0において、ガイドラインGL又はガイドラインGLの延長線は、撮像画像D1における消失点V上を通過する。消失点Vは、走行機体4に対するカメラ15の取り付け高さに応じて決まる。消失点Vは、撮像画像D1上に重ねて表示してもよい。
【0056】
ガイドラインGLの角度θのデータは、携帯端末200又は制御モジュール100の記憶部に予め記憶(設定)されていてもよい。そして、記憶(設定)されているガイドラインGLの角度θのデータは、状況に応じてオペレータが適宜調整できるようにしてもよい。
【0057】
本実施の形態では、CPU101は、オペレータに入力された入力データに基づいて、撮像画像D1の底辺B1に対するガイドラインGLの角度θを設定する。入力データは、ガイドラインGLの角度θのデータを含む。本実施の形態では、操作画像D3を用いて角度θのデータを入力することができる。
【0058】
操作画像D3は、ユーザインタフェース画像であり、表示画像D0において長手方向に延びるスライドバーD31と、スライドバーD31上を移動するノブD32と、を含む。オペレータは、スライドバーD31に沿ってノブD32を長手方向にスライドさせることによって、スライドバーD31の長手方向の位置に応じた角度θの数値データを入力することができる。CPU101は、オペレータによって操作されるノブD32の位置に応じて角度θの数値データを設定する。
【0059】
また、操作画像D3には、角度θの数値が表示されるボックスD33が含まれる。ボックスD33には、設定された角度θの数値が表示される。なお、オペレータが不図示のテンキーなどでボックスD33に数値を直接入力することで、角度θの数値データを設定するように構成してもよい。
【0060】
また、操作画像D3には、ガイドラインGLの表示/非表示を切り替えるボタンD34が含まれる。オペレータにボタンD34が押されたことを検知した場合、CPU101は、ガイドラインGLを表示していたときはガイドラインGLを非表示とし、ガイドラインGLを表示していなかったときはガイドラインGLを表示する。
【0061】
また、操作画像D3には、角度θを計算するための入力データ(パラメータ)を受け付ける、図9に示す遷移画像D4に遷移するボタンD35が含まれる。ボタンD35がオペレータに押されたことを検知した場合、CPU101は、操作画像D3を遷移画像D4に遷移させる。遷移画像D4には、機体情報の入力を受け付けるウィンドウD41と、角度θの計算結果が表示されるウィンドウD42と、が含まれる。
【0062】
ウィンドウD41には、図10(a)に示すカメラ15の取り付け高さHの数値データの入力を受け付けるボックスD411と、図10(b)に示す作業機6の幅Wの数値データの入力を受け付けるボックスD412と、作業機6を作業跡T1とオーバーラップさせるラップ代Δのデータの入力を受け付けるボックスD413と、が含まれる。ここで、カメラ15の取り付け高さHは、走行機体4が接する平面に対するカメラ15のレンズの中心の高さである。また、ウィンドウD41には、ボックスD411~D413に入力されたデータに基づいてCPU101に角度θの計算を行わせるボタンD414が含まれている。CPU101は、オペレータにボタンD414が押されたことを検知した場合、ボックスD411~D413に入力されたデータに基づいて所定の演算により角度θの数値データを求める。ウィンドウD42には、演算により求めた角度θの数値データが表示されるボックスD421が含まれる。例えば、ガイドラインGLの角度θは、arctan(H/(W-Δ))で求めることができる。なお、角度θの数値は、弧度法でボックスD421に表示してもよいし、弧度法から度数法に変換してボックスD421に表示してもよい。
【0063】
以上、本実施の形態によると、手動操舵モードにおいて、ガイドラインGLが前工程の作業跡T1に相当する画像の端のラインと重なるように走行機体4を操舵することにより、走行機体4の進行方向が作業跡T1の端のラインS1と略平行にすることができる。特に、オペレータが走行機体4を枕地M1で旋回させる際に、ガイドラインGLが撮像画像D1とともにディスプレイ206に表示されることにより、走行機体4を作業跡T1に対して位置合わせするのが容易となり、位置合わせの作業性が向上する。これにより、手動操舵モードから自動操舵モードに切り替えられた際に走行機体4が圃場F1における作業エリアW1を蛇行して走行する、即ち蛇行して作業するのを抑制することができる。走行機体4の蛇行が抑制されるので、作業機6による作業跡は直線状となる。また、作業エリアW1において直線状に延びる隣り合う2つの作業跡の間に作業残しが発生するのを抑制することができる。また、次の工程で前工程の作業跡に沿って走行機体4を自動走行させる際にも、前工程の作業跡が蛇行せず直線状であるため、走行機体4が蛇行するのを抑制することができる。
【0064】
また、本実施の形態によると、オペレータが入力データを入力することによりガイドラインGLの角度θを設定することができる。これにより、ガイドラインGLの角度θを状況に合わせて適切に設定することができる。
【0065】
また、本実施の形態によると、オペレータが図9に示す各ボックスD411~D413にパラメータを入力することで、CPU101がガイドラインGLの角度θを自動的に計算する。よって、走行機体4、走行機体4に取り付けられる作業機6、及びラップ代に適したガイドラインGLの角度を、オペレータが手計算しなくてもよく、操作性が向上する。
【0066】
また、本実施の形態によると、例えばガイドラインGLの角度θを微調整する場合など、オペレータが角度θのデータを入力することで、ガイドラインGLの角度θを直接調整することができ、操作性が向上する。
【0067】
なお、以上の実施の形態では、制御部がCPU101である場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、携帯端末200のCPU201が、制御部として機能してもよいし、2つのCPU101,201が制御部として機能してもよい。その際、携帯端末200のCPU201が制御部として機能するようにアプリケーションソフトウェアが携帯端末200にインストールされるようにしてもよい。また、表示部が携帯端末200のディスプレイ206である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば表示部が走行機体4に設置されたディスプレイであってもよい。
【0068】
また、制御モジュール100がECUとは異なるコンピュータで構成される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、制御モジュール100がECUの機能の一部であってもよい。
【0069】
また、制御モジュール100のCPU101が画像処理を行う場合について説明したが、これに限定されるものではなく、別のコンピュータに画像処理を行わせてもよい。
【0070】
また、カメラ15が単眼カメラである場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えばカメラ15がステレオカメラであってもよい。
【0071】
また、表示画像D0には、隠しボタンが含まれていてもよい。そして、該隠しボタンがオペレータによって複数回タップされると、設定画面に表示が切り替わるようにしてもよい。設定画面においては、機体パラメータ、ソフトウェアの更新、画像収集など、各種の処理や設定が可能に構成されているのが好ましい。また、該隠しボタンがオペレータによって更に1回タップされると、図8に示す表示画像D0に戻るようにしてもよい。
【0072】
また、設定画面において、自動操舵モードにおける操舵感度の範囲を複数段階に設定可能に構成してもよい。そして、設定画面において設定した範囲内で、感度調整ボタン37で操舵感度を更に細かく設定可能としてもよい。
【0073】
また、設定画面において、複数の設定内容をプルダウンで表示可能とし、表示した複数の設定内容の中からオペレータがタップすることでいずれかの設定内容を選択可能に構成してもよい。
【0074】
また、走行機体4の中心を示す画像(例えば+)を撮像画像D1上に表示してもよい。また、追従対象を示す画像(例えば逆V字の線)を撮像画像D1上に表示してもよい。
【0075】
また、参照画像D2には、追従対象に向かう仮想直線である追従線に対する走行機体4の横偏差量及びその方向を示す矢印を示す画像D22が含まれていてもよい。
【0076】
また、前工程追従モードにおいて、作業跡の端を検出したか否かを示す文字画像を、撮像画像D1上に重ねて表示するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 トラクタ(作業車両)
4 走行機体
15 カメラ(撮像部)
25 操舵部
101 CPU(制御部)
206 ディスプレイ(表示部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10