(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066746
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】加飾シートおよびその製法、並びにそれを用いた加飾成形体
(51)【国際特許分類】
B32B 3/30 20060101AFI20230509BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
B32B3/30
B32B15/08 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177526
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000158781
【氏名又は名称】紀伊産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507224853
【氏名又は名称】山本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 親典
(72)【発明者】
【氏名】服部 美千代
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB01D
4F100AK07A
4F100AK42B
4F100AR00C
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100CB03
4F100DD01A
4F100GB16
4F100HB21A
4F100HB31C
4F100JK12B
4F100JK13A
4F100JL10C
4F100JL12
4F100JM02D
4F100JN01A
4F100JN01B
4F100JN01C
4F100JN24D
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】美麗で印象的な凹凸模様付きの加飾を施すことのできる加飾シートおよびその製法、並びに上記加飾シートを用いた加飾成形体を提供する。
【解決手段】表面シート部30と、上記表面シート部30の裏面側に設けられ上記表面シート部30の表面側から視認可能な着色模様層31と、上記着色模様層31の裏面側に設けられた金属薄膜層32と、上記金属薄膜層32の裏面側に設けられる裏面シート部33とを備え、上記表面シート部30の表面が部分的に凹んで凹凸模様が付与されており、上記凹凸模様における模様の輪郭部の少なくとも一部が、上記着色模様層31における模様の輪郭部の少なくとも一部と重なる配置になっている加飾シート20である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する表面シート部と、上記表面シート部の裏面側に設けられ上記表面シート部の表面側から視認可能でそれ自体透光性を有する着色模様層と、上記着色模様層の裏面側に設けられ上記表面シート部の表面側から視認可能な金属光沢を有する金属薄膜層と、上記金属薄膜層の裏面側に設けられる裏面シート部とを備え、
上記表面シート部の表面が部分的に凹んで凹凸模様が付与されており、上記凹凸模様の輪郭部の少なくとも一部が、上記着色模様層における模様の輪郭部の少なくとも一部と重なる配置になっていることを特徴とする加飾シート。
【請求項2】
上記表面シート部の表面側が軟質シートによって構成され、同じく上記表面シート部の裏面側が硬質シートによって構成されていることを特徴とする請求項1記載の加飾シート。
【請求項3】
上記軟質シートの厚みが100~500μmであり、上記硬質シートの厚みが5~30μmであることを特徴とする請求項2記載の加飾シート。
【請求項4】
上記着色模様層が、その一部に、厚盛インキによる厚み30~150μmの厚盛部を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の加飾シート。
【請求項5】
上記金属薄膜層と裏面シート部の間に、白押さえ層が形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の加飾シート。
【請求項6】
上記裏面シート部が、厚み100~500μmの軟質シートによって構成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の加飾シート。
【請求項7】
上記表面シート部の表面の、部分的に凹む部分が、加飾シート全体において厚み方向に凹んで上記裏面シート部の裏面から下向きに突出し、それによって上記裏面シート部の裏面にも凹凸模様が付与されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の加飾シート。
【請求項8】
透光性と凹凸加工に対する追従性を有し、裏面側において印刷適正を有する表面シート部を準備する工程と、
上記表面シート部の裏面側に、透光性を有するインキによって着色模様を印刷することによって、上記表面シート部の表面側から視認可能な着色模様層を形成する工程と、
上記着色模様層の、上記表面シート部と接する側と反対側の面に、上記表面シート部の表面側から視認可能な金属光沢を有する金属薄膜層を形成する工程と、
上記金属薄膜層の、着色模様層と接する側と反対側の面に、凹凸加工に対する追従性を有する裏面シート部を設けることにより、表面シート部、着色模様層、金属薄膜層、裏面シート部を有する多層体を得る工程と、
上記多層体に高周波ウェルダー加工を施し、上記表面シート部の表面を部分的に凹ませることにより凹凸模様を付与する工程とを備え、
上記凹凸模様の輪郭部の少なくとも一部を、上記着色模様層における模様の輪郭部の少なくとも一部と重なるように配置したことを特徴とする加飾シートの製法。
【請求項9】
上記表面シート部を準備する工程において、軟質シートと硬質シートを、接着層を介してラミネートすることにより、表面側が上記軟質シートで構成され、裏面側が上記硬質シートで構成された表面シート部を得ることを特徴とする請求項8記載の加飾シートの製法。
【請求項10】
上記軟質シートとして厚みが100~500μmのものを用い、上記硬質シートとして厚みが5~30μmのものを用いることを特徴とする請求項9記載の加飾シートの製法。
【請求項11】
上記着色模様層を形成する工程において、オフセット印刷によって着色模様を印刷する工程と、厚盛インキを用いたスクリーン印刷によって厚み30~150μmの厚盛部を形成する工程とを組み合わせて着色模様層を得ることを特徴とする請求項8~10のいずれか一項に記載の加飾シートの製法。
【請求項12】
上記金属薄膜層を形成する工程の後、上記多層体を得る工程の前に、上記金属薄膜層の、着色模様層と接する側の面と反対側の面に、白色インキによる白押さえ層を形成する工程を設け、上記多層体を得る工程において、上記白押さえ層の、金属薄膜層と接する側と反対側の面に、上記裏面シート部を設けることを特徴とする請求項8~11のいずれか一項に記載の加飾シートの製法。
【請求項13】
上記多層体を得る工程において、上記裏面シート部として、厚み100~500μmの軟質シートを用い、上記軟質シートを、ホットメルト接着剤シートを介して、上記金属薄膜層もしくは白押さえ層に重ねた後、上記多層体に高周波ウェルダー加工を施すことにより、上記表面シート部の表面に凹凸模様を付与するとともに、上記裏面シート部を金属薄膜層もしくは白押さえ層に一体化させることを特徴とする請求項8~12のいずれか一項に記載の加飾シートの製法。
【請求項14】
上記多層体に高周波ウェルダー加工を施して凹凸模様を付与する工程において、上記表面シート部の表面を部分的に凹ませると同時に多層体全体を厚み方向に凹ませて上記裏面シート部の裏面を部分的に下向きに突出させ、それによって上記裏面シート部の裏面にも凹凸模様を付与することを特徴とする請求項8~13のいずれか一項に記載の加飾シートの製法。
【請求項15】
表面の少なくとも一部に加飾部が設けられた成形体であって、上記加飾部が、請求項1~7のいずれか一項に記載の加飾シートによって構成されていることを特徴とする加飾成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の成形体に対して美麗で印象的な加飾を施すことのできる、加飾シートおよびその製法、並びに上記加飾シートを用いた加飾成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧料を収容したコンパクト容器や口紅容器等に用いられる樹脂成形体には、単に機能性だけでなく、見栄えがよい、商品イメージを反映したデザインである、といった意匠性も要求される。このため、容器表面に、奇抜なデザインの着色模様を付与したり、緻密な凹凸模様を付与したりして、アイキャッチ効果を高め、他社商品との差別化を図ることが重要な課題となっている。
【0003】
このような加飾成形体として、例えば、
図9に示すように、基材1上に離形剤2を特定の印刷パターンで印刷し、離形剤2が印刷されていない部分に樹脂インク3を厚盛印刷することにより、厚盛印刷部分の輪郭を鮮明にして、そのレンズ効果を高めたもの(後記の特許文献1を参照)があげられる。
【0004】
また、
図10(a)に示すように、コンパクトタイプの化粧料容器の蓋体4において、容器本体と連結するためのヒンジ部6aが設けられた蓋枠体6と嵌合させる蓋板8に、複雑な凹凸模様の加飾を施したものがあげられる(後記の特許文献2を参照)。この蓋板8の凹凸模様は、上記蓋体4の縦断面図である
図10(b)に示すように、透明な基材層8aの裏面に不透明な着色層8bを形成し、さらにその着色層8bにレーザ照射を行って凹状の透かし模様Pを形成し、その透かし模様Pと重なる配置で、表面側に厚盛部9を形成することによって構成されている。そして、上記蓋板8と蓋枠体6の間に金属光沢シート7を挟み込むことによって、表面側から視認される凹凸模様を、より立体的に見せるようになっている。なお、6bは蓋枠体6の下面に貼付される鏡である。
【0005】
しかしながら、これらの加飾成形体は、成形体の表面側に厚盛部(
図9の符号3、
図10の符号9)が突出形成されているため、繰り返し手で触れたり他の容器と一緒にバッグに入れて携帯したりすると、厚盛部が脱落したり損傷したりして、美麗な外観を長期にわたって維持することが難しいという問題がある。
【0006】
また、上記
図10(a)、(b)に示す加飾成形体のように、レーザ照射等によって凹状模様(凹凸模様)を形成する場合、凹凸模様を形成する加工面の強度の問題から、加飾を施す樹脂板をある程度厚くする必要があるため、近年、特に課題となっている「脱プラスチック化への動き」からすれば、より樹脂の厚みを薄くしつつ、より印象的な加飾を施すことが求められている。
【0007】
そこで、「脱プラスチック化への動き」に対応するために、成形体の厚みをより薄くしつつ印象的な加飾を付与する、との観点から、例えば下記の特許文献3に示すような加飾シートを成形体の加飾に利用することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016-221030号公報
【特許文献2】特開2002-177045号公報
【特許文献3】特許第6409153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献3に記載された加飾シートは、例えば
図11に示すように、透明な表面層10の下面に着色層11と厚盛部12を設け、その厚盛部12の突出面を金属薄膜層13で被覆し、上記厚盛部12の凹凸感と金属薄膜層13による光沢感を、着色層11とともに表から透かして見せるようにしたものである。なお、14は見栄えをよくするための白押さえ層であり、その下に、調整層15を介して、加飾対象物にこの加飾シートを貼付するための接着層16と剥離シート17が設けられている。
【0010】
上記加飾シートは、シート内側の着色層11と厚盛部12と金属薄膜層13の組み合わせによって立体感があり見栄えもよいが、シート自体の表面が平坦であることから、表面に直接凹凸模様を付与した加飾成形体と比べるとどうしても立体的な印象が弱くなるという課題がある。
【0011】
そこで、上記加飾シートに凹凸をつけるために、例えば加飾対象物を樹脂成形する際に、上記加飾シートを、凹凸面を有する金型内に配置してピンゲートによるインサート成形を行うことを検討したが、成形時の熱で、加飾シート内の金属薄膜層が流れて立体感が損なわれることがわかった。また、加飾シートの表面側からウェルダー加工を施して凹凸を付与することも検討したが、一般に、加飾シートに用いられる樹脂シートは、印刷適性に優れた硬質シートであるため、凹凸形状を付与しにくいことがわかった。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、各種の成形体に対して美麗で印象的な、凹凸を有する加飾シートおよびその製法、並びに上記加飾シートを用いた加飾成形体の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明は、以下の[1]~[15]を提供する。
[1] 透光性を有する表面シート部と、上記表面シート部の裏面側に設けられ上記表面シート部の表面側から視認可能でそれ自体透光性を有する着色模様層と、上記着色模様層の裏面側に設けられ上記表面シート部の表面側から視認可能な金属光沢を有する金属薄膜層と、上記金属薄膜層の裏面側に設けられる裏面シート部とを備え、上記表面シート部の表面が部分的に凹んで凹凸模様が付与されており、上記凹凸模様の輪郭部の少なくとも一部が、上記着色模様層における模様の輪郭部の少なくとも一部と重なる配置になっている加飾シート。
[2] 上記表面シート部の表面側が軟質シートによって構成され、同じく上記表面シート部の裏面側が硬質シートによって構成されている上記[1]記載の加飾シート。
[3] 上記軟質シートの厚みが100~500μmであり、上記硬質シートの厚みが5~30μmである上記[2]記載の加飾シート。
[4] 上記着色模様層が、その一部に、厚盛インキによる厚み30~150μmの厚盛部を有する上記[1]~[3]のいずれかに記載の加飾シート。
[5] 上記金属薄膜層と裏面シート部の間に、白押さえ層が形成されていることを特徴とする上記[1]~[4]のいずれかに記載の加飾シート。
[6] 上記裏面シート部が、厚み100~500μmの軟質シートによって構成されている上記[1]~[5]のいずれかに記載の加飾シート。
[7] 上記表面シート部の表面の、部分的に凹む部分が、加飾シート全体において厚み方向に凹んで上記裏面シート部の裏面から下向きに突出し、それによって上記裏面シート部の裏面にも凹凸模様が付与されている上記[1]~[6]のいずれかに記載の加飾シート。
[8] 透光性と凹凸加工に対する追従性を有し、裏面側において印刷適正を有する表面シート部を準備する工程と、上記表面シート部の裏面側に、透光性を有するインキによって着色模様を印刷することによって、上記表面シート部の表面側から視認可能な着色模様層を形成する工程と、上記着色模様層の、上記表面シート部と接する側と反対側の面に、上記表面シート部の表面側から視認可能な金属光沢を有する金属薄膜層を形成する工程と、上記金属薄膜層の、着色模様層と接する側と反対側の面に、凹凸加工に対する追従性を有する裏面シート部を設けることにより、表面シート部、着色模様層、金属薄膜層、裏面シート部を有する多層体を得る工程と、上記多層体に高周波ウェルダー加工を施し、上記表面シート部の表面を部分的に凹ませることにより凹凸模様を付与する工程とを備え、上記凹凸模様の輪郭部の少なくとも一部を、上記着色模様層における模様の輪郭部の少なくとも一部と重なるように配置した加飾シートの製法。
[9] 上記表面シート部を準備する工程において、軟質シートと硬質シートを、接着層を介してラミネートすることにより、表面側が上記軟質シートで構成され、裏面側が上記硬質シートで構成された表面シート部を得る上記[8]記載の加飾シートの製法。
[10] 上記軟質シートとして厚みが100~500μmのものを用い、上記硬質シートとして厚みが5~30μmのものを用いる上記[9]記載の加飾シートの製法。
[11] 上記着色模様層を形成する工程において、オフセット印刷によって着色模様を印刷する工程と、厚盛インキを用いたスクリーン印刷によって厚み30~150μmの厚盛部を形成する工程とを組み合わせて着色模様層を得る上記[8]~[10]のいずれかに記載の加飾シートの製法。
[12] 上記金属薄膜層を形成する工程の後、上記多層体を得る工程の前に、上記金属薄膜層の、着色模様層と接する側の面と反対側の面に、白色インキによる白押さえ層を形成する工程を設け、上記多層体を得る工程において、上記白押さえ層の、金属薄膜層と接する側の面と反対側の面に、上記裏面シート部を設けるようにした上記[8]~[11]のいずれかに記載の加飾シートの製法。
[13] 上記多層体を得る工程において、上記裏面シート部として、厚み100~500μmの軟質シートを用い、上記軟質シートを、ホットメルト接着剤シートを介して、上記金属薄膜層もしくは白押さえ層に重ねた後、上記多層体に高周波ウェルダー加工を施すことにより、上記表面シート部の表面に凹凸模様を付与するとともに、上記裏面シート部を金属薄膜層もしくは白押さえ層に一体化させる上記[8]~[12]のいずれかに記載の加飾シートの製法。
[14] 上記多層体に高周波ウェルダー加工を施して凹凸模様を付与する工程において、上記表面シート部の表面を部分的に凹ませると同時に多層体全体を厚み方向に凹ませて上記裏面シート部の裏面を部分的に下向きに突出させ、それによって上記裏面シート部の裏面にも凹凸模様を付与する上記[8]~[13]のいずれかに記載の加飾シートの製法。
[15] 表面の少なくとも一部に加飾部が設けられた成形体であって、上記加飾部が、上記[1]~[7]のいずれかに記載の加飾シートによって構成されている加飾成形体。
【発明の効果】
【0014】
すなわち、本発明の加飾シートは、美麗な印象を与えるための着色模様層とその裏面に側に設けられる金属薄膜層とを、表面シート部と裏面シート部とで挟み、その多層体全体に対して、ウェルダー加工等の加工を施すことによって、その表面に、凹凸模様を付与したものである。特に、上記凹凸模様の輪郭部と、上記着色模様における模様の輪郭部とが、少なくとも部分的に重なる配置になっていることから、シート表面に付与された凹凸模様とシート内部の色模様とが相俟って、模様の輪郭がくっきりした立体的な加飾となり、アイキャッチ効果の高いものとなる。
【0015】
そして、この加飾シートを、加飾したい成形体の所定の面に貼付するだけで、簡単に、成形体の表面に直接凹凸模様を付与することができ、あたかも成形体自体を凹凸加工したかのような、鮮明で美麗な凹凸模様を得ることができる。しかも、この凹凸形状は、上記加飾シートの表面を部分的に凹ませて賦形したものであり、成形体の表面をレーザ加工等で彫り込んだものではないため、凹凸の段差部分がひび割れたり欠落したりすることがない。また、色模様を構成する着色模様層と金属薄膜層が加飾シートの内側にあるため、これらについても劣化や損傷がない。したがって、美麗な加飾部の外観を長期にわたって良好に維持することができる。
【0016】
さらに、上記加飾シートを用いて加飾を行うことにより、成形体に凹凸加工を施す場合のように加工面となる樹脂部分の厚みを厚くする必要がなく、加飾成形体全体に用いる樹脂量を減らすことができるという利点を有する。
【0017】
そして、本発明の加飾シートの製法によれば、上記加飾シートを、高周波ウェルダー加工を利用して、簡単に得ることができる。
【0018】
さらに、本発明の、上記加飾シートを用いた加飾成形体によれば、すでに述べたとおり、成形体の表面に直接凹凸加工を施す必要がなく、この加飾シートを取り付けるだけで優れた加飾効果を得ることができる。そして、成形体の加飾部における樹脂の厚みを薄くすることができ、樹脂量を大幅に低減することができるため、「脱プラスチック」を目指す、環境に配慮した樹脂製品を提供することができる。
【0019】
なお、本発明において、「透光性を有する」とは、完全な無色透明に限らず、反対側を透かしてみることができる程度に透明である場合も含む趣旨である。そして、その色も有色無色を問わない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施の形態である加飾シートを用いたコンパクト容器を示す斜視図である。
【
図2】上記コンパクト容器における蓋体の分解斜視図である。
【
図5】上記加飾シートの製法において、着色模様層の形成に用いられる着色模様の図案の説明図である。
【
図6】上記加飾シートの製法において、着色模様層の形成に用いられる厚盛部の図案の説明図である。
【
図7】上記加飾シートの製法において、高周波ウェルダー加工に用いられる金型図案の説明図である。
【
図8】本発明の他の実施の形態である加飾シートの模式的な縦断面図である。
【
図9】従来の加飾成形体の一例を示す説明図である。
【
図10】従来の加飾成形体の他の例を示す説明図であり、(a)は上記加飾成形体を用いた蓋体の分解斜視図、(b)はその縦断面図である。
【
図11】従来の加飾シートの一例を示す模式的な縦断面である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0022】
図1は、本発明の一実施の形態である加飾シート20を用いて蓋体21の表面に加飾を施したコンパクト容器の斜視図であり、
図2は、上記蓋体21の分解斜視図である。すなわち、このコンパクト容器は、アイカラー等の化粧料を収容保持する本体部22と、ヒンジ部23(
図2を参照)を介して本体部22と回動自在に連結される蓋体21とで構成されており、コンパクト容器としての基本的な構成は、一般的なコンパクト容器と同じである。なお、上記蓋体21の内側面には、鏡24が貼着されている。
【0023】
上記蓋体21は、その分解斜視図である
図2に示すように、後端部にヒンジ部23が突設された蓋枠体21aと、その表面を加飾するための加飾シート20とで構成されている。より詳しく説明すると、上記蓋枠体21aの上面には、上記加飾シート20の厚みを考慮した凹部25が形成されており、この凹部25内に上記加飾シート20が、接着層26(
図3を参照)を介して接合一体化されている。
【0024】
上記加飾シート20は、その表面において、金属光沢を有する幅の広いラインを組み合わせた模様Aと、その下に濃い赤色から淡いオレンジ色にグラデーションを有する濃淡模様B(ライン模様Aを除くシート面全面に形成されている)と、濃淡模様Bから透けてみえる細かい泡のようなシボ模様C(ライン模様Aを除くシート面全面に、濃淡模様Bと重ねて形成されている)が視認されるようになっている。
【0025】
そして、
図3に示すように、上記ライン模様Aの部分が凹状に凹んでおり、その凹みが加飾シート20全体を厚み方向に凹ませて、シート裏面から下向きに突出しており、全体として、加飾シート20は凹凸形状を有している。なお、接着層26は、通常、上記加飾シート20を蓋枠体21aに取り付ける前は、剥離シートで被覆されており、上記加飾シート20を蓋枠体21aに取り付けるときに、上記剥離シートを剥がして上記接着層26を露出させて蓋枠体21aに取り付けるようになっている。
以下、上記加飾シート20の構成について詳細に説明する。
【0026】
<加飾シート20の構成>
上記加飾シート20は、その模式的な断面図である
図4に示すように、透光性を有する表面シート部30と、その裏面側(図における下面側、以下同じ)に設けられる着色模様層31と、その裏面側に設けられる金属薄膜層32と、その裏面側に設けられる裏面シート部33とを備えている。
【0027】
上記表面シート部30は、無色透明で比較的軟質であるポリプロピレン(PP)からなる第1表面層34と、上記第1表面層34の裏面側に設けられ、同じく無色透明で比較的硬質であるポリエチレンテレフタレート(PET)からなる第2表面層35、の二層を備え、二層の間には接着層(図示せず)が設けられている。
【0028】
上記第1表面層34は、この層の表面を凹状に凹ませて凹凸模様を形成することを考慮して設けられるもので、上記PPに限らず、透光性があり、凹凸形状を付与する際、その凹凸に追従しうる程度に軟質であれば、特に限定されない。上記PP以外に、例えばポリ塩化ビニル、軟質ポリエチレン、ポリウレタン等があげられる。また、その厚みは、付与したい凹凸の深さや加飾シート20全体に要求される厚みにもよるが、通常、50~1000μm、なかでも100~500μmであることが好適である(上記実施の形態では300μm)。
【0029】
また、上記第2表面層35は、上記第1表面層34に用いられるPPの印刷適性が低いことから、その裏面側に着色模様層31を形成することを考慮して設けられるもので、上記PETに限らず、透光性があり、印刷適性を有するものであれば特に限定されない。例えば、ポリカーボネート、ポリウレタン等があげられる。なお、印刷適性を有するには、通常、その印刷面が凹んだり動いたりしないことが望ましいことから、上記のとおり比較的硬質であることが求められる。また、その厚みは、上記第1表面層34に付与される凹凸形状に追従して変形できるように、ごく薄く設定することが好ましく、通常、1~100μm、なかでも5~30μmであることが好適である(上記実施の形態では12μm)。そして、第1表面層34の厚みをT1とし、第2表面層35の厚みをT2とすると、T2:T1は、通常、1:10~1:100、なかでも1:20~1:30であることが好適である。
【0030】
ただし、上記第1表面層34が、印刷適性のある材料で形成される場合、あるいは上記第1表面層34の裏面に、印刷適性を高めるコーティング剤を塗布する等して、印刷適性を付与する場合は、上記第2表面層35を設ける必要はない。
【0031】
また、上記着色模様層31は、透光性インキを用いて上記濃淡模様B(模様については
図2を参照、以下同じ)が形成された第1の模様層36と、上記第1の模様層36の裏面側において、同じく透光性の厚盛インキを用いた厚盛部によって上記ライン模様Aとシボ模様Cとが形成された第2の模様層37、の二層で構成されている。
【0032】
上記第1の模様層36は、上記第2表面層35の裏面に、オフセット印刷によって上記濃淡模様Bを形成したものである。模様は、このような濃淡模様に限らず、さまざまな色合いの色模様や、単色の色が所定の配置で配置された模様や文字、図形等があげられる。この第1の模様層36の厚みは、特に限定されないが、第2の模様層37の厚盛部による模様を際立たせるために、あまり厚くないことが好ましく、例えは1~50μm、なかでも、3~20μmであることが好ましい。
【0033】
また、上記第2の模様層37は、上記第1の模様層36の裏面に、スクリーン印刷によって、厚盛部からなる上記ライン模様Aとシボ模様Cとを形成したものである。模様は、これに限らず、上記第1の模様層36による模様との重なりを考慮して設定される。この第2の模様層37は、厚盛部からなり、模様に独特の陰影を与えて立体感を強調するものである。したがって、上記第2の模様層37の厚みは、通常、10~300μm、なかで30~150μmであることが好ましい。ただし、模様のデザインによっては、必ずしもこの第2の模様層37を設ける必要はない。
【0034】
そして、上記金属薄膜層32は、上記第2の模様層37の、厚盛部と重なる部分のみに形成されており、上記金属薄膜層32の金属光沢が、上記ライン模様Aとシボ模様Cに重なる形で、加飾シート20の表面側から視認されるようになっている。この金属薄膜層32は、金属箔の転写によって形成されており、その厚みは、通常、1~50μm、なかでも3~20μmであることが好適である。
【0035】
なお、上記金属薄膜層32の裏面側と、金属薄膜層32が形成されていない部分における第1の模様層36の裏面側、すなわち裏面側の全面に、白押さえ層38が形成されている。この白押さえ層38は、透光性を有する表面シート部30の表面側から、その裏面側に設けられた上記着色模様層31や金属薄膜層32を透かしてみたときに、これらの重なった色模様が、さらにその下に重なる層の色味や凹凸の陰影に影響されて鮮明に見えなくなることを防ぐために設けられている。
【0036】
上記裏面シート部33は、比較的軟質なポリウレタンからなる層で構成されており、ホットメルト接着剤からなる接着層39(厚み100μm)を介して、上記白押さえ層38の裏面側に取り付けられている。この裏面シート部33は、加飾シート20の表面側において、上記ライン模様Aが表れている部分を凹状に凹ませる加工を行う際、その加工時の押圧を吸収して鮮明な凹部を形成するために設けられている。
【0037】
上記裏面シート部33は、上記の理由から、比較的軟質であることが好ましく、上記ポリウレタン以外に、ポリ塩化ビニル、軟質ポリエチレン等を用いることができる。また、その厚みは、通常50~2000μm、なかでも100~500μmであることが好適である(上記実施の形態では200μm)。
【0038】
そして、上記構造の加飾シート20は、前述のとおり、その表面側において、上記ライン模様Aが表れている部分が凹状に凹んで、
図3に示すような凹凸形状が付与されている。
【0039】
このように、上記加飾シート20は、第1の模様層36と厚盛部による第2の模様層37とからなる着色模様層31と、その裏面側に設けられる金属薄膜層32とを組み合わせた、複雑で美麗な色模様(ライン模様A+濃淡模様B+シボ模様C)が、透光性のある表面シート部30と、裏面シート部33とで挟み込まれた状態で、上記表面シート部30の表面側から凹状に凹んだ凹凸模様が付与された構成になっている。
【0040】
特に、上記凹凸模様の輪郭部が、上記第2の模様層37によって形成された厚盛部からなる模様のうちライン模様Aの輪郭部と重なっているため、加飾シート20の表面から透かして見えるふっくらしたライン模様Aの輪郭線が、シート表面の凹凸模様の段差として強調され、実際には凹んでいるのにその段差の陰影と相俟って、逆に、ふっくらと表面から浮き上がっているかのように見える。また、上記ライン模様Aによって区切られたように見える、濃淡模様Bとシボ模様Cの重なり模様も、シート表面から透かしてみると、シボ模様Cの細かいシボと金属薄膜層32の金属光沢によって独特の陰影があり、深みのある美麗な色模様として視認されるため、アイキャッチ効果の高いものとなる。
【0041】
そして、この加飾シート20に付与された凹凸形状は、シート表面を部分的に凹ませて賦形したものであり、成形体の表面をレーザ加工等で彫り込んだものではないため、凹凸の段差部分がひび割れたり欠落したりすることがない。また、色模様となる着色模様層31と金属薄膜層32も加飾シート20の内側にあるため、劣化や損傷がない。したがって、美麗な加飾部の外観を長期にわたって良好に維持することができる。
【0042】
そして、上記加飾シート20を用いて蓋体21の加飾を施した、
図1に示すコンパクト容器によれば、蓋体21自体に凹凸模様を付したかのような立体感と、複雑な色模様が組み合わせられた、独特の美麗な加飾部を有しているため、顧客に対するアイキャッチ効果が高い。そして、実際に使用すると、上記のとおり、その美麗な加飾部の外観が長期にわたって良好に維持されるため、容器としての高い品質を示す。
【0043】
さらに、上記コンパクト容器によれば、すでに述べたとおり、蓋体21の加飾部が上記加飾シート20で構成されており、蓋体21の加飾部における樹脂の厚みを薄くすることができるため、蓋体21の全体に使用する樹脂量を大幅に低減することができる。したがって、「脱プラスチック」を目指す、環境に配慮したものとなる。そして、蓋体21を、直接凹凸加工を施したものに比べて薄く設計することができるため、容器全体が、より軽量でコンパクトなものになるという利点を有する。
つぎに、上記加飾シート20の製法について説明する。
【0044】
<加飾シート20の製法>
図4に示す加飾シート20は、例えば以下のようにして得ることができる。
まず、表面シート部30(
図4を参照)の第1表面層34となるPPシートと、同じく第2表面層35となるPETシートとを、所定寸法(複数枚の加飾シート20が縦横に並んだ状態のシートとして得ることを想定した寸法)に切断し、接着剤を介して枚葉でラミネートすることにより、表面シート部30を得る。
【0045】
つぎに、上記表面シート部30の裏面側、すなわち上記第2表面層35側を上に向けて、この面に、透光性を有する着色インキを用いてオフセット印刷することにより、第1の模様層36を形成する。この模様の図案は、
図5に示すとおりであり、濃い赤色から淡いオレンジ色にグラデーションを有する濃淡模様Bになるものである。
【0046】
つぎに、上記第1の模様層36の上(
図4では上下が逆)に、透光性のある厚盛インキ(この例では無色透明な樹脂インキ)を用いてスクリーン印刷することにより、第2の模様層37を形成する。この模様の図案は、
図6に示すとおりであり、ライン模様Aとシボ模様Cになるものである。
【0047】
そして、上記第1の模様層36と第2の模様層37からなる着色模様層31の上(
図4では上下が逆)において、上記第2の模様層37を構成する各厚盛部の盛り上がった表面を、金属箔の転写層によって被覆することにより、金属薄膜層32を形成する。この金属薄膜層32の形成領域は、上記第2の模様層37の各厚盛部と重なるため、
図6に示す図案と同じく、ライン模様Aとシボ模様Cに一致するパターンとなる。
【0048】
つぎに、上記金属薄膜層32が形成された面(ところどころ第1の模様層36が露出)の上に、白色インキを用いたシルク印刷により、白押さえ層38を形成する。
【0049】
そして、裏面シート部33となるポリウレタンシートの上に接着層39となるホットメルト接着シートを重ね、その上に、上記表面シート部30から白押さえ層38まで形成された中間体を、上記白押さえ層38を下にして、すなわち、上記白押さえ層38の下面が上記ホットメルト接着シートに重なるように配置して、高周波ウェルダー加工機にかけることにより、上記表面シート部30の表面から凹状に凹む凹凸模様を付与する。
【0050】
なお、上記高周波ウェルダー加工機における加工条件は、例えば以下のとおりである。
[加工条件]
機械:油圧式10tonプレス/発振出力7kw/スライドテーブル式
金型:3丁付き1ブロック(面積=145mm×98mm)銅製
金型設定温度:常温(23℃)
加圧:約2ton/cm
発振出力:550mA
溶着時間:5秒
冷却期間:3秒
【0051】
上記高周波ウェルダー加工によって付与される凹凸模様の図案(ウェルダー加工の金型図案)は、
図7に示すように、ライン模様Aと重なるものであり、このライン模様Aの各ラインの長手方向に延びる両縁部が、その内側部分よりも一段深く押し込まれるようになっており、帯状の各ラインが、よりくっきりと見えるようになっている。また、シート全体の周縁部Wも同様に、上記ライン模様Aと同じ深さの凹部になるよう設定されている。この周縁部Wの凹部によって、シート全体が厚み方向に押し固められて一体化するため、端部から剥がれることがない。
【0052】
このようにして、凹凸模様が付与された加飾シート20が複数枚連続的に並ぶ大判シートが得られる。そして、この大判シートから、所定寸法の加飾シート20を切り出すことにより、上記実施の形態である加飾シート20を得ることができる。
【0053】
なお、上記大判シートから加飾シート20を切り出す前に、上記大判シートの裏面に両面接着シートを貼付して、接着層と剥離シート付きの加飾シート20とすることが好適である。この形態にしておけば、加飾対象とする成形体(本実施の形態ではコンパクト容器の蓋体21)の表面に、この加飾シート20を簡単に取り付けることができるからである。
【0054】
上記製法において、表面シート部30を準備するために、第1表面層34となるPPシートと、同じく第2表面層35となるPETシートとを、枚葉でラミネートしたが、必ずしも枚葉でラミネートする必要はなく、ロール状のPPシートとロール状のPETシートを繰り出しながら重ねてラミネートし、所定間隔で切断してもよい。
【0055】
また、すでに述べたように、上記表面シート部30は、必ずしも第1表面層34と第2表面層35とを重ねる必要はなく、凹凸加工に対する追従性を有し、かつ片面に印刷適性があるシートを準備すれば、上記のような二層のラミネートは不要である。
【0056】
さらに、上記製法において、着色模様層31を得るために、第1の模様層36をオフセット印刷で形成し、厚盛部からなる第2の模様層37をスクリーン印刷で形成したが、上記第1の模様層36の形成は、オフセット印刷に限らず、グラビア印刷、インクジェット印刷等、適宜の印刷方法を適用することができる。また、印刷に限らず、直接コーティングによって模様層を形成したり、模様層が形成された転写シートから模様層を転写したりして得ることもできる。そして、上記第2の模様層37の形成も、部分的に厚盛部をつくることができればどのような形成方法であっても差し支えない。
【0057】
また、上記第1の模様層36の形成領域と、第2の模様層37の形成領域は、互いに重なっていてもよいし、
図8に示すように、互いに重ならないように設定することもできる。このように、両者が重ならないように形成すると、厚盛部による立体感をさらに強調することができる。なお、
図8において、他の構成は
図4と同じであり、同一部分に同一符号をしている。
【0058】
なお、すでに述べたように、上記厚盛部による第2の模様層37の形成は必ずしも必要ではないが、シート内側に厚盛部を設けて着色模様層31に立体感を与えると、その裏面側の金属薄膜層32の金属光沢の反射と相俟って、より複雑な印象の着色模様を得ることができ、好適である。
【0059】
また、上記製法において、上記着色模様層31の裏面側の金属薄膜層32は、上記着色模様層31のうち、第2の模様層37を構成する厚盛部の突出面のみを被覆する形で形成したが、金属薄膜層32の形成領域は、上記に限らず、表側から見える着色模様のデザインに応じて、適宜のパターンで形成することができる。もちろん、着色模様層31の裏面全面に形成してもよい。そして、上記金属薄膜層32の形成方法は、金属箔の転写に限らず、蒸着、スパッタリング、メッキ、ホットスタンプ等、適宜の方法を選択することができる。
【0060】
さらに、上記製法において、上記金属薄膜層32の裏面側に、見栄えをよくするための白押さえ層38を設けたが、すでに述べたとおり、この白押さえ層38は必ずしも必要ない。例えば、その下の、接着層39を介して設けられる裏面シート部33の接合面が凹凸や汚れのない白色面である場合は、その面が上記白押さえ層38の役割を果たすため、白押さえ層38は設けなくても差し支えない。
【0061】
そして、上記製法において、上記表面シート部30と裏面シート部33で着色模様層31および金属薄膜層32、白押さえ層38を挟んだ多層体を、高周波ウェルダー加工にかけて、その表面に凹凸模様を付与したが、上記凹凸模様の付与は、必ずしも高周波ウェルダー加工による必要はなく、プレス装置による型押し等によっても行うことができる。
【0062】
ただし、本発明では、加飾シート20の内部に設けられた着色模様層31の模様の輪郭部の少なくとも一部と、その表面の付与する凹凸模様の輪郭部の少なくとも一部を、互いに重なる配置で得ることにより、着色模様層31の模様の輪郭を際立たせてより立体感を強調することが重要である。このため、上記輪郭部と輪郭部を高い精度で重なるには、上記高周波ウェルダー加工が好適である。そして、付与する凹凸模様の凹部の深さを精密にコントロールできる点においても、上記高周波ウェルダー加工が好適である。
【0063】
なお、本発明において、「高周波ウェルダー加工」とは、通常、3MHz~30GHzの高周波を用いて誘電加熱を対象物の内部に生じさせ、対象物を溶融させて凹凸形状を賦形するものである。
【0064】
また、上記の製法では、表面シート部30以下の各層を順次積層形成したが、印刷適性を有する上記第2表面層35と、着色模様層31と、金属薄膜層32(+白押さえ層38)を備えたシートとして、例えば、前述の特許文献3に開示された加飾シートを用い、この加飾シートの表面側に、上記表面シート部30の第1表面部34を重ね、同じくその裏面側に、上記裏面シート部33を重ねて得られる多層体を、高周波ウェルダー加工等にかけて、上記第1表面部34の表面に凹凸模様を施すことにより、本発明の加飾シート20とすることができる。
【0065】
なお、上記の例は、本発明をコンパクト容器に適用したものであるが、本発明を適用する成形体は、容器に限らず、各種の樹脂成形体、あるいは樹脂成形体に他の部材を組み合わせた成形体等、特に限定するものではない。例えば、携帯電話、文房具、家電製品、各種ケース等に広く適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、各種の成形体に対して美麗で印象的な、表面に凹凸を有する加飾を施すことのできる加飾シートおよびその製法、並びに上記加飾シートを用いた加飾成形体に利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
20 加飾シート
30 表面シート部
31 着色模様層
32 金属薄膜層
33 裏面シート部