(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066771
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】電池モジュール用断熱緩衝材
(51)【国際特許分類】
H01M 10/658 20140101AFI20230509BHJP
H01M 10/6555 20140101ALI20230509BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20230509BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20230509BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20230509BHJP
H01M 10/6557 20140101ALI20230509BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20230509BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M10/6555
H01M10/651
H01M10/625
H01M10/613
H01M10/6557
H01M10/647
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177559
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森原 康滋
(72)【発明者】
【氏名】木村 健二
(72)【発明者】
【氏名】田口 祐太朗
(72)【発明者】
【氏名】大西 將博
(72)【発明者】
【氏名】片山 和孝
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031EE02
5H031EE04
5H031HH03
5H031HH06
5H031KK02
(57)【要約】
【課題】断熱性能および弾性性能を向上させることができる電池モジュール用断熱緩衝材を提供する。
【解決手段】電池モジュール用断熱緩衝材4は、第一断熱層11と、第二断熱層12と、第一断熱層11と第二断熱層12との間に挟まれて配置され、第一断熱層11および第二断熱層12よりも弾性率の高い材料により構成される弾性層13とを備える。第一断熱層11および第二断熱層12の少なくとも一方は、熱伝導率が弾性層13よりも低い材料により構成され、空孔を有する主断熱層21,31と、熱伝導率が弾性層13よりも低い材料により構成され、空孔を有し、前記主断熱層よりも前記弾性層側に配置される進入抑制層22とを備える。進入抑制層22は、弾性層13に対して加熱かつ加圧した時に、弾性層13を構成する材料の進入深さが主断熱層21,31の材料よりも浅くなる材料により構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルと相手部材との間に配置される電池モジュール用断熱緩衝材であって、
前記電池セル側に配置される第一断熱層と、
前記相手部材側に配置される第二断熱層と、
前記第一断熱層と前記第二断熱層との間に挟まれて配置され、前記第一断熱層および前記第二断熱層よりも弾性率の高い材料により構成される弾性層と、
を備え、
前記第一断熱層および前記第二断熱層の少なくとも一方は、
熱伝導率が前記弾性層よりも低い材料により構成され、空孔を有する主断熱層と、
熱伝導率が前記弾性層よりも低い材料により構成され、空孔を有し、前記弾性層に対して加熱かつ加圧した時に前記弾性層を構成する材料の進入深さが前記主断熱層の材料よりも浅くなる材料により構成され、前記主断熱層よりも前記弾性層側に配置される進入抑制層と、
を備える、電池モジュール用断熱緩衝材。
【請求項2】
前記進入抑制層は、熱伝導率が前記主断熱層と同等もしくは前記主断熱層よりも高い材料により構成される、請求項1に記載の電池モジュール用断熱緩衝材。
【請求項3】
前記第一断熱層および前記第二断熱層の少なくとも一方は、少なくとも1つの前記主断熱層を挟むように配置された複数の前記進入抑制層を備える、請求項1に記載の電池モジュール用断熱緩衝材。
【請求項4】
前記進入抑制層の1つは、前記第一断熱層および前記第二断熱層の少なくとも一方において、最も前記弾性層寄りに位置する、請求項3に記載の電池モジュール用断熱緩衝材。
【請求項5】
前記第一断熱層および前記第二断熱層の少なくとも一方は、
1つの前記主断熱層および1つの前記進入抑制層を備える1つの断熱ユニットを含んで構成され、
複数の前記断熱ユニットを重ね合わせて配列することにより構成された、請求項3または4に記載の電池モジュール用断熱緩衝材。
【請求項6】
前記第一断熱層および前記第二断熱層の両者は、前記主断熱層および前記進入抑制層を備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の電池モジュール用断熱緩衝材。
【請求項7】
前記主断熱層は、シリカエアロゲル複合断熱材、シリカ複合断熱材、アルミナ複合断熱材、前記複合断熱材の少なくとも1つの繊維材料強化断熱材、前記断熱材の少なくとも1つに赤外線不透過材としてジルコン、炭化ケイ素、チタニア、硫化バリウムのいずれか1つが添加された断熱材の中から選択された1つを含み、
前記進入抑制層は、ケイ酸マグネシウム、ガラス繊維不織布、セラミック繊維不織布、PAN、PPSの中から選択された1つを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の電池モジュール用断熱緩衝材。
【請求項8】
前記弾性層は、ゴムまたはエラストマーにより構成され、前記電池セル側の面および前記相手部材側の面の少なくとも一方に凹凸面を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の電池モジュール用断熱緩衝材。
【請求項9】
前記弾性層は、
ゴムまたはエラストマーにより構成され、前記第一断熱層と前記第二断熱層との間に挟まれて配置される複数の弾性塊と、
ゴムまたはエラストマーにより構成され、前記複数の弾性塊における前記第一断熱層側同士を連結し、前記第一断熱層に接触する第一連結膜と、
ゴムまたはエラストマーにより構成され、前記複数の弾性塊における前記第二断熱層側同士を連結し、前記第二断熱層に接触する第二連結膜と、
を備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の電池モジュール用断熱緩衝材。
【請求項10】
前記弾性層は、発泡材料により構成される、請求項1~7のいずれか1項に記載の電池モジュール用断熱緩衝材。
【請求項11】
前記弾性層は、
金属製または樹脂製の板バネにより構成され、少なくとも2回の折り返し部を有して構成された主弾性部と、
前記主弾性部の表面においてゴムまたはエラストマーをバインダーとして構成された機能層であって、低放射率、高放射率性、高耐熱性の少なくとも1つを有する前記機能層を構成する副弾性層と、
を備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の電池モジュール用断熱緩衝材。
【請求項12】
前記第一断熱層および前記第二断熱層の熱分解開始温度は、前記弾性層の熱分解開始温度より高い、請求項1~11のいずれか1項に記載の電池モジュール用断熱緩衝材。
【請求項13】
前記弾性層の熱分解開始温度は、250℃以上である、請求項12に記載の電池モジュール用断熱緩衝材。
【請求項14】
前記主断熱層の熱伝導率は、0.5W/mK以下である、請求項1~13のいずれか1項に記載の電池モジュール用断熱緩衝材。
【請求項15】
前記進入抑制層の熱伝導率は、0.8W/mK以下である、請求項14に記載の電池モジュール用断熱緩衝材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュール用断熱緩衝材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車などに搭載される電池モジュールは、複数の電池セルを配列した構造を有する。当該電池モジュールにおいて、電池セルは、充電によって膨張し、放電によって収縮する。そこで、電池セルの膨張と収縮による変形を吸収するため、隣接する電池セルの間に断熱緩衝材を配置することが知られている。また、電池セルは、発熱するため、ある電池セルの熱が、隣りの電池セルに伝達されにくくするために、断熱緩衝材は高い断熱機能を有することが求められる。
【0003】
特許文献1には、断熱緩衝材は、一対の断熱シートと、一対の断熱シートの間に配置されたゴムシートとを備えることが記載されている。ゴムシートは、例えば、断熱シートを介して伝わる熱によって溶融あるいは分解などせずに、その形態を維持できる程度の耐熱性の高い材料から構成されることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、両側に凸状を有する一対の弾性層と、一対の弾性層の間に配置された断熱層とを備えることが記載されている。特許文献3には、弾性層が凸状に形成されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6916976号公報
【特許文献2】国際公開第2020/262081号
【特許文献3】特開2021-128841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のように、ゴムシートを断熱シートにより挟む構造であっても、電池セルが高温となりかつ膨張した場合には、断熱シートを介してゴムシートに熱が伝わり、ゴムシートの温度がゴムシートの熱分解開始温度以上に達すると、ゴムシートは形状維持が困難となる。そうすると、ゴムシートの厚みが薄くなることにより、発熱した一方の電池セルの熱が、他方の電池セルに伝達され、他方の電池セルへ熱影響を及ぼしてしまう。
【0007】
そのため、断熱緩衝材の断熱性能を向上するためには、一方の電池セルの高温環境下であってもゴムシートなどの弾性層が厚みをできる限り維持することが求められる。特許文献1のように、弾性層を断熱層により挟む構造とすることにより、断熱層によって、一方の電池セルの熱が弾性層に伝達することをある程度は抑制することができる。しかしながら、十分ではないため、改善の必要性が求められている。
【0008】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、断熱性能および弾性性能を向上させることができる電池モジュール用断熱緩衝材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、電池セルと相手部材との間に配置される電池モジュール用断熱緩衝材であって、
前記電池セル側に配置される第一断熱層と、
前記相手部材側に配置される第二断熱層と、
前記第一断熱層と前記第二断熱層との間に挟まれて配置され、前記第一断熱層および前記第二断熱層よりも弾性率の高い材料により構成される弾性層と、
を備え、
前記第一断熱層および前記第二断熱層の少なくとも一方は、
熱伝導率が前記弾性層よりも低い材料により構成され、空孔を有する主断熱層と、
熱伝導率が前記弾性層よりも低い材料により構成され、空孔を有し、前記弾性層に対して加熱かつ加圧した時に前記弾性層を構成する材料の進入深さが前記主断熱層の材料よりも浅くなる材料により構成され、前記主断熱層よりも前記弾性層側に配置される進入抑制層と、
を備える、電池モジュール用断熱緩衝材にある。
【発明の効果】
【0010】
上述したように、電池モジュール用断熱緩衝材は、第一断熱層、第二断熱層、第一断熱層と第二断熱層の間に挟まれて配置された弾性層とを備える。従って、第一断熱層が、電池セルからの熱を、弾性層に伝達することを抑制する機能を発揮する。そして、電池セルから弾性層に直接熱が伝達されることはなく、弾性層の温度が熱分解開始温度に早期に達することを抑制できる。さらに、第二断熱層が、弾性層に伝達された熱を相手部材に伝達することを抑制する機能を発揮する。従って、弾性層に伝達された熱は、相手部材に直接伝達されることはなく、相手部材に熱が伝達されることを抑制できる。
【0011】
さらに、第一断熱層および第二断熱層の少なくとも一方が、主断熱層および進入抑制層を備える。主断熱層および進入抑制層は、熱伝導率が弾性層よりも低い材料により構成されている。そして、進入抑制層は、主断熱層よりも弾性層側に配置されている。つまり、第一断熱層が主断熱層および進入抑制層を有する場合には、電池セル側から、主断熱層、進入抑制層、弾性層の順に配列された状態となる。第二断熱層が主断熱層および進入抑制層を有する場合には、相手部材側から、主断熱層、進入抑制層、弾性層の順に配列された状態となる。
【0012】
ここで、第一断熱層および第二断熱層の少なくとも一方を構成する主断熱層および進入抑制層は、高い断熱性能を発揮するために、空孔を有する。そして、弾性層に対して加熱かつ加圧した場合、弾性層を構成する材料が熱分解を開始し、弾性層の材料の一部が、第一断熱層または第二断熱層の空孔に進入して行く。ここで、弾性層の熱伝導率は第一断熱層および第二断熱層よりも高い。そのため、弾性層の材料が第一断熱層および第二断熱層の空孔に進入すると、弾性層が第一断熱層および第二断熱層の空孔に進入していない場合に比べて、第一断熱層および第二断熱層が位置する部位における熱伝導率が高くなる。
【0013】
第一断熱層に弾性層の材料の一部が進入すると、電池セルの熱が弾性層により伝達しやすい状態となる。その結果、弾性層の温度がさらに高くなり、弾性層における熱分解が進んでしまう。そうすると、弾性層の厚みが薄くなり、電池セルと相手部材との距離が短くなることにより、電池セルの熱が相手部材に伝達されやすい状態となる。その結果、相手部材の温度が高くなってしまう。また、第二断熱層に弾性層の材料の一部が進入すると、弾性層に伝わった熱が相手部材に伝達しやすい状態となる。その結果、相手部材の温度が高くなってしまう。
【0014】
そこで、進入抑制層は、弾性層に対して加熱かつ加圧した時に弾性層を構成する材料の進入深さが主断熱層の材料よりも浅くなる材料により構成されることとした。さらに、進入抑制層は、主断熱層よりも弾性層側に配置することとした。
【0015】
ここで、進入抑制層が弾性層に接触した状態と、主断熱層が弾性層に接触した状態とを比較する。それぞれの状態において、弾性層に対して加熱かつ加圧した時に、弾性層が熱分解を開始し、弾性層に接触する相手、すなわち進入抑制層または主断熱層に、弾性層の材料の一部が進入して行く。このときの弾性層の材料が弾性層に接触する相手に進入して行く深さを、「進入深さ」と定義する。
【0016】
そして、上述したように、進入抑制層は、主断熱層よりも弾性層の進入深さが浅くなる材料により構成され、かつ、主断熱層よりも弾性層側に配置されている。従って、弾性層が熱分解を開始した時に、弾性層は、進入抑制層の空孔に進入しようとするものの、その進入深さを浅くすることができる。そして、主断熱層に弾性層の材料の一部が進入するためには、弾性層の材料が進入抑制層を通過する必要がある。そのため、進入抑制層は、主断熱層に弾性層の材料が進入することを抑制する機能を発揮する。
【0017】
このように、進入抑制層によって、弾性層の材料が主断熱層に進入することを抑制できることにより、少なくとも主断熱層による断熱機能を発揮し続けることができる。従って、第一断熱層が主断熱層および進入抑制層を有する場合には、電池セルの熱が弾性層に伝達されにくくなり、弾性層の熱分解の進行を遅くすることができる。弾性層に熱が伝達されにくいということは、当然に、相手部材に熱が伝達されることを抑制することができる。また、第二断熱層が主断熱層および進入抑制層を有する場合には、弾性層に伝達された熱が相手部材に伝達されにくくできる。従って、相手部材に熱が伝達されることを抑制することができる。
【0018】
以上のごとく、上記態様によれば、断熱性能および弾性性能を向上させることができる電池モジュール用断熱緩衝材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態1の電池モジュールを示す図である。
【
図2】実施形態1の断熱緩衝材の部分断面図である。
【
図3】実施形態1の断熱緩衝材の分解断面図である。
【
図5】実施形態2の断熱緩衝材の部分断面図である。
【
図6】実施形態2の断熱緩衝材の分解断面図である。
【
図7】実施形態3の断熱緩衝材の部分断面図である。
【
図8】実施形態4の断熱緩衝材の部分断面図である。
【
図9】実施形態5の断熱緩衝材の部分断面図である。
【
図10】実施形態6の断熱緩衝材の部分断面図である。
【
図11】実施形態7の断熱緩衝材の部分断面図である。
【
図12】実施形態8の電池モジュールを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態1)
1.電池モジュール1の構成
電池モジュール1の構成について
図1を参照して説明する。電池モジュール1は、例えば、自動車用や家庭用におけるリチウムイオン二次電池などの蓄電池、燃料電池システムのセルスタックなどを例に挙げることができる。電池モジュール1は、
図1に示すように、並べて配列された複数の電池セル2と、支持部材3と、複数の断熱緩衝材4とを備える。
【0021】
電池セル2は、例えば、扁平状に形成されている。個々の電池セル2が扁平面の法線方向に配列されている。
図1においては、電池セル2は、図の横方向に配列されている。電池セル2は、直方体の扁平箱形状に形成された筐体5と、筐体5の内部に配置された電極体6とを備える。筐体5は、例えば、アルミニウムなどの金属、もしくは、放熱性および耐熱性が良好な硬質樹脂などにより成形されている。電極体6は、正極電極と、負極電極と、正極電極と負極電極との間に挟まれたセパレータとを備え、扁平状に形成されている。例えば、電極体6は、
図1の破線にて示すように巻回される構成や、各シートを重ね合わせた構成などを有する。
【0022】
電極体6は、充電に伴って発熱し、主として扁平面法線方向に膨張する。電極体6は、放電に伴って膨張量が減少する。従って、電極体6を収容する筐体5は、充電時に、扁平面法線方向に膨張する。特に、筐体5が直方体の扁平箱形状に形成されているため、筐体5の扁平面が湾曲凸状に膨張変形する。電池セル2の放電時には、電極体6の膨張量が減少することに伴って、筐体5の扁平面は、理想的には、平面状に復帰する。このように、電池セル2の筐体5は、充放電により膨張と収縮を繰り返す。
【0023】
支持部材3は、複数の電池セル2を、電池セル2の積層方向の両端から支持する。つまり、支持部材3は、各電池セル2が充電によって膨張した場合に各電池セル2に対して反力を付与することにより、電池セル2を基準状態(膨張していない状態)に戻すように作用する。
【0024】
支持部材3は、例えば、第一支持部材3a、第二支持部材3bおよび連結部材3cを備える。ただし、支持部材3の構成は、本例に限られず、例えば箱型の筐体など種々の態様を適用することができる。支持部材3は、拘束力を発揮することができれば良く、硬質樹脂、金属などにより成形される。
【0025】
支持部材3は、例えば、閉塞された空間を形成するような筐体とすることもできる。筐体は、電池モジュール1の外枠を構成する。この場合、支持部材3としての筐体の内部空間は、筐体の外部に対して全面において区画されている。
【0026】
第一支持部材3aは、例えばL字状に形成されており、水平方向に配列された複数の電池セル2を載置する台座部分と、複数の電池セル2の配列方向の第一端側(
図1の右側)を支持する部分とを備える。第二支持部材3bは、例えば平板状に形成されており、複数の電池セル2の配列方向において第一端の反対である第二端側(
図1の左側)に配置される。従って、配列された複数の電池セル2は、第一支持部材3aと第二支持部材3bとにより、配列方向に挟まれる状態となる。連結部材3cは、第一支持部材3aと第二支持部材3bとを連結する。
【0027】
断熱緩衝材4は、複数の電池セル2の配列方向において、隣接する電池セル2の隙間、電池セル2と第一支持部材3aとの隙間、電池セル2と第二支持部材3bとの隙間のそれぞれに配置される。断熱緩衝材4は、隙間を形成する両部材に接触した状態で配置される。
図1においては、断熱緩衝材4は、全ての隣接する電池セル2の間に配置する場合を例に挙げるが、一部の隣接する電池セル2の間のみに配置しても良い。
【0028】
断熱緩衝材4は、弾性変形可能な弾性層を含んでおり、弾性層の弾性変形により電池セル2の膨張および収縮に伴う隙間変動を吸収する。そして、断熱緩衝材4は、
図1に示すように、電池セル2の膨張量が小さい場合において、電池セル2に接触することにより電池セル2を弾性支持する。また、断熱緩衝材4は、
図2に示すように、電池セル2の充電に伴う膨張時において、電池セル2を弾性支持するとともに、電池セル2の放電に伴う膨張量減少時に電池セル2に対して押圧力を付与する。このように、断熱緩衝材4は、電池セル2の正常動作時において、電池セル2の変形に伴う隙間変動吸収機能を発揮する。
【0029】
さらに、断熱緩衝材4は、断熱性能を発揮する断熱層を含んでいる。従って、断熱緩衝材4は、一方に配置される電池セル2が発熱した場合において、当該電池セル2から他方に配置される相手部材である電池セル2に、熱が伝達されることを抑制する断熱機能を発揮する。
【0030】
2.実施形態1の断熱緩衝材4の構成
実施形態1の断熱緩衝材4の構成について
図2および
図3を参照して説明する。
図2においては、断熱緩衝材4は、第一電池セル2aと相手部材としての第二電池セル2bとの間に配置される場合を示す。
【0031】
断熱緩衝材4は、第一電池セル2a側に配置された第一断熱層11と、第二電池セル2b側に配置された第二断熱層12と、第一断熱層11と第二断熱層12との間に挟まれて配置された弾性層13とを備える。第一断熱層11および第二断熱層12が、断熱機能を発揮し、弾性層13が、弾性変形により隙間変動吸収機能を発揮する。
【0032】
図3に示すように、第一断熱層11は、平板状に形成されている。第一断熱層11は、第一電池セル2aの扁平面のほぼ全面に亘って対向して配置される。第一断熱層11の一方の面が、第一電池セル2aの扁平面に接触している。第一断熱層11は、主断熱層21と、進入抑制層22とを備える。
【0033】
図2に示すように、主断熱層21は、平板状に形成されている。主断熱層21は、第一断熱層11における第一電池セル2a側を構成する。従って、主断熱層21の一方の面のほぼ全面が、第一電池セル2aの扁平面に接触している。また、主断熱層21は、高い断熱性能を発揮するために、複数の空孔を有する。
【0034】
主断熱層21は、例えば、シリカエアロゲル複合断熱材、シリカ複合断熱材、アルミナ複合断熱材、またこれらの複合断熱材のいずれかの繊維材料強化断熱材や、これらの断熱材に赤外線不透過材としてジルコン、炭化ケイ素、チタニア、硫化バリウム等が添加された断熱材の中から選択された少なくとも1つを適用できる。主断熱層21は、熱伝導率が弾性層13よりも低い材料により構成される。主断熱層21の熱伝導率は、0.5W/mK以下であり、好ましくは、0.3W/mK以下である。主断熱層21の厚みは、0.5mm以上であり、好ましくは、2.0mm以上である。主断熱層21の厚みは、10mm以下である。
【0035】
主断熱層21は、熱分解開始温度が弾性層13よりも高い材料により構成される。主断熱層21の熱分解開始温度は、300℃以上であり、好ましくは、400℃以上である。例えば、シリカエアロゲルの熱分解開始温度は、1000~1300℃である。アルミナ複合断熱材の熱分解開始温度は、1300~1600℃である。
【0036】
進入抑制層22は、平板状に形成されている。進入抑制層22は、第一断熱層11における弾性層13側を構成する。つまり、進入抑制層22の一方面は、主断熱層21よりも弾性層13側に配置される。進入抑制層22の他方面は、弾性層13に接触している。進入抑制層22の一方面のほぼ全面が、主断熱層21に接触している。さらに、進入抑制層22は、高い断熱性能を発揮するために、複数の空孔を有する。
【0037】
また、進入抑制層22は、弾性層13に対して加熱かつ加圧した時に弾性層13を構成する材料の進入深さが主断熱層21の材料よりも浅くなる材料により構成されている。「進入深さ」については、後述する。
【0038】
進入抑制層22は、例えば、ケイ酸マグネシウム、ガラス繊維不織布、セラミック繊維不織布、PAN、PPSの中から選択された少なくとも1つを含む。例えば、進入抑制層22は、主断熱層21の表面に塗布される塗料とすることができる。また、進入抑制層22は、主断熱層21を被担持体として担持する不織布基材を含むように構成することができる。この場合、進入抑制層22は、不織布基材と、不織布基材の孔に存在する主断熱層21の材料の一部とにより構成される。
【0039】
例えば、ケイ酸マグネシウムなどにより構成される進入抑制層22は、シリカエアロゲルなどにより構成される主断熱層21の表面に塗布することにより形成される。また、進入抑制層22がガラス繊維などの不織布基材を含むように構成される場合には、当該不織布基材が、シリカエアロゲルなどにより構成される主断熱層21を被担持体として担持することができる。この場合、進入抑制層22は、ガラス繊維などの不織布基材と、当該不織布基材の孔に存在するシリカエアロゲルなどにより構成される主断熱層21の材料の一部とを含む。
【0040】
進入抑制層22は、熱伝導率が弾性層13よりも低い材料により構成されている。さらに、進入抑制層22は、熱伝導率が主断熱層21と同等もしくは主断熱層21よりも高い材料により構成されている。進入抑制層22の熱伝導率は、0.8W/mK以下であり、好ましくは、0.5W/mK以下である。進入抑制層22の厚みは、0.01mm以上であり、好ましくは、0.1mm以上である。進入抑制層22の厚みは、5mm以下である。
【0041】
また、進入抑制層22は、熱分解開始温度が弾性層13よりも高い材料により構成される。進入抑制層22の熱分解開始温度は、300℃以上であり、好ましくは、400℃以上である。例えば、ケイ酸マグネシウムの熱分解開始温度は、850~900℃である。ガラス繊維不織布の熱分解開始温度は、900~1000℃である。セラミック繊維不織布の熱分解開始温度は、1000~1400℃である。
【0042】
図3に示すように、第二断熱層12は、平板状に形成されている。第二断熱層12は、第二電池セル2bの扁平面のほぼ全面に亘って対向して配置される。第二断熱層12の一方の面が、第二電池セル2bの扁平面に接触している。第二断熱層12は、主断熱層31と、進入抑制層32とを備える。
【0043】
図2に示すように、主断熱層31は、平板状に形成されている。主断熱層31は、第二断熱層12における第二電池セル2b側を構成する。従って、主断熱層31の一方の面のほぼ全面が、第二電池セル2bの扁平面に接触している。主断熱層31は、第一断熱層11の主断熱層21と同様に構成される。
【0044】
進入抑制層32は、平板状に形成されている。進入抑制層32は、第二断熱層12における弾性層13側を構成する。つまり、進入抑制層32の一方面は、主断熱層31よりも弾性層13側に配置される。進入抑制層32の他方面は、弾性層13に接触している。進入抑制層32の一方面のほぼ全面が、主断熱層21に接触している。進入抑制層32は、第一断熱層11の進入抑制層22と同様に構成される。
【0045】
弾性層13は、第一断熱層11および第二断熱層12よりも弾性率の高い材料により構成される。本形態において、弾性層13は、ゴム、エラストマーまたは発泡材料により構成される。本形態では、弾性層13は、下記形状に形成されることより、ゴムまたはエラストマーが好適である。弾性層13は、第一断熱層11と第二断熱層12との間に挟まれた複数の弾性塊41と、隣り合う弾性塊41を連結する連結膜42とを備える。
【0046】
弾性塊41は、長尺形状に形成しても良いし、柱形状に形成しても良い。弾性塊41は、断面台形の長尺形状、または、円錐台の柱形状に形成されている。弾性塊41の台形短辺は、第一断熱層11の進入抑制層22に接触する。弾性塊41の台形長辺は、第二断熱層12の進入抑制層32に接触する。なお、弾性塊41の台形短辺と台形長辺の向きは、反対にすることもできる。
【0047】
連結膜42は、隣り合う弾性塊41の台形側面の長辺側同士を連結する。連結膜42の一方面は、第二断熱層12の進入抑制層32から距離を隔てて配置されている。つまり、弾性層13は、一方面(
図2の左面)に、凹凸面を有する。そして、弾性層13の凹面部分と第一断熱層11の進入抑制層22との間に空間14が形成される。連結膜42の他方面は、第二断熱層12の進入抑制層32に接触する。つまり、弾性層13の他方面(
図2の右面)は、全面に亘って、第二断熱層12の進入抑制層32に接触する。なお、当該空間14は、第二断熱層12側に形成するようにしても良い。この場合、連結膜42は、第一断熱層11の進入抑制層22に接触することになる。
【0048】
弾性層13は、例えば、EPDM、ミラブルシリコーン、NR、IR、BR、NBR、SBR、ECO、ACM、CR、EVA、FKM、CSM、Uなど、または、それらの発泡体の中から選択された少なくとも1つを含む。弾性層13の最大厚み、すなわち弾性塊41の厚みは、3~20mmであり、好ましくは、5~10mmである。弾性層13の熱分解開始温度は、150℃以上であり、好ましくは、250℃以上である。弾性層13の熱伝導率は、1.5W/mK以下であり、好ましくは、0.8W/mK以下である。
【0049】
3.断熱層11,12の構成部材21,22の試験
上述したように、進入抑制層22は、弾性層13に対して加熱かつ加圧した時に弾性層13を構成する材料の進入深さが主断熱層21の材料よりも浅くなる材料により構成されている。以下に、「進入深さ」についての試験およびその結果について、
図4を参照して説明する。
【0050】
図4に示すように、試験装置7は、台座7aと、加熱加圧部材7bとを備える。試験方法としては、台座7aの上面に、試験体Wを配置し、試験体Wの上面を、加熱加圧部材7bにより加熱すると共に加圧する。試験体Wにおける台座7a側に配置される断熱試験体W1は、主断熱層21の材料または進入抑制層22の材料とする。断熱試験体W1の1つである主断熱層21の材料としては、例えば、シリカエアロゲルを用いる。また、断熱試験体W1の他の1つである進入抑制層22の材料としては、例えば、ケイ酸マグネシウムを用いる。
【0051】
断熱試験体W1は、平板状に形成される。また、試験体Wにおける加熱加圧部材7b側に配置される弾性試験体W2は、弾性層13の材料とする。弾性試験体W2は、例えば、EPDMを用いる。弾性試験体W2も平板状に形成される。ただし、弾性試験体W2は、
図2に示すような弾性層13と同様の凹凸面を有する形状とすることもできる。
【0052】
つまり、断熱試験体W1を進入抑制層22の材料とした場合には、
図2に示すように、進入抑制層22が弾性層13に接触した状態に相当し、断熱試験体W1を主断熱層21の材料とした場合には、図示しないが、主断熱層21が弾性層13に接触した状態に相当する。そして、両者を比較する。
【0053】
それぞれの状態において、加熱加圧部材7bを例えば650℃に加熱することにより弾性試験体W2を加熱する。さらに、加熱加圧部材7bを
図4の下方へ移動することにより弾性試験体W2を例えば0.1~3.0MPaで加圧する。ただし、加熱加圧部材7bの温度は、初期温度が650℃の加熱加圧部材7bを接触させ、時間経過につれて成行きで温度を低下させる。また、断熱試験体W1の厚みは、2.5mmとし、弾性試験体W2の厚みは、6mmとする。
【0054】
上記試験を行うことにより、弾性試験体W2が熱分解開始温度に達し、弾性試験体W2が変形し始める。さらに、弾性試験体W2が熱分解開始温度に達すると、弾性試験体W2の一部が、断熱試験体W1の空孔に進入して行く。試験終了後において、断熱試験体W1に進入した弾性試験体W2の材料の深さを計測する。
【0055】
試験の結果、断熱試験体W1が進入抑制層22の材料である場合には、断熱試験体W1が主断熱層21の材料である場合に比べて、進入深さが浅くなった。例えば、断熱試験体W1の1つである進入抑制層22の材料をケイ酸マグネシウムとし、断熱試験体W1の他の1つである主断熱層21の材料をシリカエアロゲルとし、弾性試験体W2をEPDMとする。この場合、断熱試験体W1が進入抑制層22の材料である場合の進入深さは、0.2mmであった。一方、断熱試験体W1が主断熱層21の材料である場合の進入深さは、0.5mmであった。
【0056】
弾性試験体W2に対して加熱かつ加圧した時に、弾性試験体W2の材料が熱分解を開始し、弾性試験体W2に接触する相手、すなわち進入抑制層22または主断熱層21の材料により構成される断熱試験体W1に、弾性試験体W2の材料の一部が進入して行く。このときの弾性試験体W2の材料が弾性試験体W2に接触する相手に進入して行く深さを、「進入深さ」と定義する。
【0057】
そして、上述したように、断熱試験体W1が進入抑制層22の材料である場合には、断熱試験体W1が主断熱層21の材料である場合に比べて、進入深さが浅くなった。つまり、弾性層13に対して加熱かつ加圧した時に弾性層13を構成する材料の進入深さが主断熱層21の材料よりも浅くなる材料により構成されていることが言える。換言すると、弾性層13に対して加熱かつ加圧した時に弾性層13を構成する材料の浸入度合いが主断熱層21の材料よりも小さくなる材料により構成されている。
【0058】
4.効果
断熱緩衝材4は、第一断熱層11、第二断熱層12、第一断熱層11と第二断熱層12の間に挟まれて配置された弾性層13とを備える。従って、例えば第一電池セル2aが異常発熱した場合に、第一断熱層11が、第一電池セル2aからの熱を、弾性層13に伝達することを抑制する機能を発揮する。そして、第一電池セル2aから弾性層13に直接熱が伝達されることはなく、弾性層13の温度が熱分解開始温度に早期に達することを抑制できる。さらに、第二断熱層12が、弾性層13に伝達された熱を第二電池セル2bに伝達することを抑制する機能を発揮する。従って、弾性層13に伝達された熱は、第二電池セル2bに直接伝達されることはなく、第二電池セル2bに熱が伝達されることを抑制できる。
【0059】
さらに、第一断熱層11および第二断熱層12が、主断熱層21,31および進入抑制層22,32を備える。主断熱層21,31および進入抑制層22,32は、熱伝導率が弾性層13よりも低い材料により構成されている。そして、進入抑制層22,32は、主断熱層21,31よりも弾性層13側に配置されている。つまり、第一断熱層11が主断熱層21および進入抑制層22を有する場合には、第一電池セル2a側から、主断熱層21、進入抑制層22、弾性層13の順に配列された状態となる。第二断熱層12が主断熱層31および進入抑制層32を有する場合には、第二電池セル2b側から、主断熱層31、進入抑制層32、弾性層13の順に配列された状態となる。
【0060】
ここで、第一断熱層11および第二断熱層12を構成する主断熱層21,31および進入抑制層22,32は、高い断熱性能を発揮するために、空孔を有する。そして、弾性層13に対して加熱かつ加圧した場合、弾性層13を構成する材料が熱分解を開始し、弾性層13の材料の一部が、第一断熱層11または第二断熱層12の空孔に進入して行く。ここで、弾性層13の熱伝導率は第一断熱層11および第二断熱層12よりも高い。そのため、弾性層13の材料が第一断熱層11および第二断熱層12の空孔に進入すると、弾性層13が第一断熱層11および第二断熱層12の空孔に進入していない場合に比べて、第一断熱層11および第二断熱層12が位置する部位における熱伝導率が高くなる。
【0061】
第一断熱層11に弾性層13の材料の一部が進入すると、第一電池セル2aの熱が弾性層13により伝達しやすい状態となる。その結果、弾性層13の温度がさらに高くなり、弾性層13における熱分解が進んでしまう。そうすると、弾性層13の厚みが薄くなり、第一電池セル2aと第二電池セル2bとの距離が短くなることにより、第一電池セル2aの熱が第二電池セル2bに伝達されやすい状態となる。その結果、第二電池セル2bの温度が高くなってしまう。また、第二断熱層12に弾性層13の材料の一部が進入すると、弾性層13に伝わった熱が第二電池セル2bに伝達しやすい状態となる。その結果、第二電池セル2bの温度が高くなってしまう。
【0062】
そこで、進入抑制層22,32は、弾性層13に対して加熱かつ加圧した時に弾性層13を構成する材料の進入深さが主断熱層21,31の材料よりも浅くなる材料により構成されることとした。さらに、進入抑制層22,32は、主断熱層21,31よりも弾性層13側に配置することとした。
【0063】
従って、弾性層13が熱分解を開始した時に、弾性層13は、進入抑制層22,32の空孔に進入しようとするものの、その進入深さを浅くすることができる。そして、主断熱層21,31に弾性層13の材料の一部が進入するためには、弾性層13の材料が進入抑制層22,32を通過する必要がある。そのため、進入抑制層22,32は、主断熱層21,31に弾性層13の材料が進入することを抑制する機能を発揮する。
【0064】
このように、進入抑制層22,32によって、弾性層13の材料が主断熱層21,31に進入することを抑制できることにより、少なくとも主断熱層21,31による断熱機能を発揮し続けることができる。従って、第一断熱層11が主断熱層21および進入抑制層22を有する場合には、第一電池セル2aの熱が弾性層13に伝達されにくくなり、弾性層13の熱分解の進行を遅くすることができる。弾性層13に熱が伝達されにくいということは、当然に、第二電池セル2bに熱が伝達されることを抑制することができる。また、第二断熱層12が主断熱層31および進入抑制層32を有する場合には、弾性層13に伝達された熱が第二電池セル2bに伝達されにくくできる。従って、第二電池セル2bに熱が伝達されることを抑制することができる。以上より、断熱緩衝材4は、断熱性能および弾性性能を向上させることができる。
【0065】
また、弾性層13は、一方面に凹凸面を有するように形成した。これにより、弾性層13の凹面部分と第一断熱層11の進入抑制層22との間、または、弾性層13の凹面部分と第二断熱層12の進入抑制層32との間に、空間14が形成される。当該空間14を形成することにより、断熱性能を向上することができる。さらに、当該空間14に、冷却流体を流通可能とすることにより、冷却機能を付与することができる。
【0066】
(実施形態2)
電池モジュール1を構成する実施形態2の断熱緩衝材101の構成について
図5および
図6を参照して説明する。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素などを表す。
【0067】
本形態の断熱緩衝材101は、
図5に示すように、第一電池セル2a側に配置された第一断熱層11と、第二電池セル2b側に配置された第二断熱層12と、第一断熱層11と第二断熱層12との間に挟まれて配置された弾性層13とを備える。第一断熱層11は、主断熱層111と進入抑制層112とを備える。第二断熱層12は、主断熱層121と進入抑制層122とを備える。なお、主断熱層111,121は、実施形態1における主断熱層21,31と同様の材料を用いる。進入抑制層112,122は、実施形態1における進入抑制層22,32と同様の材料を用いる。
【0068】
本形態では、
図6に示すように、第一断熱層11の進入抑制層112および第二断熱層12の進入抑制層122が、弾性層13の表面に配置されて構成される。例えば、進入抑制層112,122は、弾性層13の表面に塗布されることにより、弾性層13の表面に密着した状態で配置される。第一断熱層11の進入抑制層112は、弾性層13の弾性塊41の台形短辺の面および側面と、弾性層13の連結膜42の一方面とに密着して配置される。第二断熱層12の進入抑制層122は、弾性層13の弾性塊41の台形長辺の面と、弾性層13の連結膜42の他方面とに密着して配置される。
【0069】
第一断熱層11の主断熱層111は、平板状に形成される。従って、第一断熱層11の主断熱層111は、第一断熱層11の進入抑制層112の一部に接触し、進入抑制層112の他の一部との間に空間14を有する。第二断熱層12の主断熱層121は、平板状に形成される。従って、第二断熱層12の主断熱層121は、ほぼ全面に亘って、第二断熱層12の進入抑制層122に接触する。
【0070】
本形態の断熱緩衝材101については、実施形態1の断熱緩衝材4と同様の効果を発揮することができる。
【0071】
(実施形態3)
電池モジュール1を構成する実施形態3の断熱緩衝材102の構成について
図7を参照して説明する。本形態の断熱緩衝材102は、
図7に示すように、第一電池セル2a側に配置された第一断熱層11と、第二電池セル2b側に配置された第二断熱層12と、第一断熱層11と第二断熱層12との間に挟まれて配置された弾性層13とを備える。
【0072】
第一断熱層11は、複数の断熱ユニット131a,131bを重ね合わせて配列することにより構成されている。断熱ユニット131a,131bのそれぞれは、1つの主断熱層21と、1つの進入抑制層22とを備えて構成される。主断熱層21および進入抑制層22は、実施形態1の主断熱層21および進入抑制層22と同様である。
【0073】
従って、断熱ユニット131aにおいて、進入抑制層22が、主断熱層21より弾性層13側に配置される。また、断熱ユニット131bにおいて、進入抑制層22が、主断熱層21より弾性層13側に配置される。つまり、第一断熱層11において、第一電池セル2a側から、主断熱層21、進入抑制層22、主断熱層21、進入抑制層22、弾性層13の順に配列される。従って、第一断熱層11において、複数の進入抑制層22,22が1つの主断熱層21を挟むように配置されている。そして、進入抑制層22の1つは、第一断熱層11において最も弾性層13寄りに位置する。
【0074】
第二断熱層12は、複数の断熱ユニット132a,132bを重ね合わせて配列することにより構成されている。断熱ユニット132a,132bのそれぞれは、1つの主断熱層31と、1つの進入抑制層32とを備えて構成される。主断熱層31および進入抑制層32は、実施形態1の主断熱層31および進入抑制層32と同様である。
【0075】
従って、断熱ユニット132aにおいて、進入抑制層32が、主断熱層31より弾性層13側に配置される。また、断熱ユニット132bにおいて、進入抑制層32が、主断熱層31より弾性層13側に配置される。つまり、第二断熱層12において、第二電池セル2b側から、主断熱層31、進入抑制層32、主断熱層31、進入抑制層32、弾性層13の順に配列される。従って、第二断熱層12において、複数の進入抑制層32,32が1つの主断熱層31を挟むように配置されている。そして、進入抑制層32の1つは、第一断熱層11において最も弾性層13寄りに位置する。
【0076】
本形態の断熱緩衝材102については、実施形態1の断熱緩衝材4と同様の効果を発揮することができる。また、本形態の断熱緩衝材102は、第一断熱層11が複数の断熱ユニット131a,131bを重ねて配列した。弾性層13の材料が第一断熱層11に進入する際において、第一段として最も弾性層13側に位置する断熱ユニット131aの進入抑制層22が、弾性層13の材料の進入抑制効果を発揮する。
【0077】
弾性層13が第一断熱層11にさらに深く進入した場合において、異なる材料による多層構造とすることにより、次の層である断熱ユニット131bの進入抑制層22が弾性層13の材料の進入深さを変化させることができる。従って、次の層である断熱ユニット131bの進入抑制層22が、弾性層13の材料の進入抑制効果を好適に発揮する。
【0078】
つまり、第一断熱層11において、主断熱層21と進入抑制層22のそれぞれの総厚みが同等である場合に、1つの断熱ユニット131aにより構成する場合に比べて、複数の断熱ユニット131a,131bにより構成する場合の方が、断熱効果が高くなる。また、第二断熱層12についても、第一断熱層11と同様の効果を発揮する。
【0079】
(実施形態4)
電池モジュール1を構成する実施形態4の断熱緩衝材103の構成について
図8を参照して説明する。本形態の断熱緩衝材103は、
図8に示すように、第一電池セル2a側に配置された第一断熱層11と、第二電池セル2b側に配置された第二断熱層12と、第一断熱層11と第二断熱層12との間に挟まれて配置された弾性層13とを備える。
【0080】
第一断熱層11は、主断熱層141と、主断熱層141を挟むように配置された2つの進入抑制層142,143とを備える。主断熱層141は、実施形態1における主断熱層21と同様の材料を用いる。進入抑制層142,143は、実施形態1における進入抑制層22と同様の材料を用いる。
【0081】
従って、第一断熱層11において、第一電池セル2a側から、進入抑制層143、主断熱層141、進入抑制層142、弾性層13の順に配列される。従って、第一断熱層11において、複数の進入抑制層142,143が1つの主断熱層141を挟むように配置されている。そして、進入抑制層142が、第一断熱層11において最も弾性層13側に位置する。
【0082】
第二断熱層12は、主断熱層151と、主断熱層151を挟むように配置された2つの進入抑制層152,153とを備える。主断熱層151は、実施形態1における主断熱層31と同様の材料を用いる。進入抑制層152,153は、実施形態1における進入抑制層32と同様の材料を用いる。
【0083】
従って、第二断熱層12において、第二電池セル2b側から、進入抑制層153、主断熱層151、進入抑制層152、弾性層13の順に配列される。従って、第二断熱層12において、複数の進入抑制層152,153が1つの主断熱層151を挟むように配置されている。そして、進入抑制層152が、第二断熱層12において最も弾性層13側に位置する。
【0084】
本形態の断熱緩衝材103については、実施形態1の断熱緩衝材4と同様の効果を発揮することができる。特に、第一断熱層11および第二断熱層12のそれぞれが対称構造を有することにより、第一電池セル2aが異常発熱した場合にも所望の効果を発揮すると共に、第二電池セル2bが異常発熱した場合にも所望の効果を発揮する。
【0085】
(実施形態5)
電池モジュール1を構成する実施形態5の断熱緩衝材104の構成について
図9を参照して説明する。本形態の断熱緩衝材104は、
図9に示すように、第一電池セル2a側に配置された第一断熱層11と、第二電池セル2b側に配置された第二断熱層12と、第一断熱層11と第二断熱層12との間に挟まれて配置された弾性層13とを備える。
【0086】
弾性層13は、複数の弾性塊161と、連結膜162とを備える。弾性塊161は、長尺形状に形成しても良いし、柱形状に形成しても良い。弾性塊161は、例えば、断面樽型の長尺形状、または、樽型の柱形状に形成されている。樽型とは、先端幅が中央幅よりも狭い形状を意味する。
【0087】
連結膜162は、隣り合う弾性塊161の側面同士を連結する。本形態では、連結膜162は、弾性塊161の側面中間部分同士を連結する。従って、弾性層13は、両面に凹凸面を有する。従って、弾性層13の一方面の凹面部分と第一断熱層11の進入抑制層22との間に空間14が形成される。さらに、弾性層13の他方面の凹面部分と第二断熱層12の進入抑制層32との間に空間14が形成される。
【0088】
本形態の断熱緩衝材104については、実施形態1の断熱緩衝材4と同様の効果を発揮することができる。弾性層13の両側の空間14,14に、冷却流体を流通可能とすることにより、冷却機能を付与することができる。特に、弾性層13が対称構造を有することにより、第一電池セル2aが異常発熱した場合にも所望の効果を発揮すると共に、第二電池セル2bが異常発熱した場合にも所望の効果を発揮する。
【0089】
(実施形態6)
電池モジュール1を構成する実施形態6の断熱緩衝材105の構成について
図10を参照して説明する。本形態の断熱緩衝材105は、
図10に示すように、第一電池セル2a側に配置された第一断熱層11と、第二電池セル2b側に配置された第二断熱層12と、第一断熱層11と第二断熱層12との間に挟まれて配置された弾性層13とを備える。
【0090】
弾性層13は、複数の弾性塊171と、第一連結膜172と、第二連結膜173とを備える。弾性塊171は、長尺形状に形成しても良いし、柱形状に形成しても良い。弾性塊171は、例えば、断面逆樽型の長尺形状、または、逆樽型の柱形状に形成されている。逆樽型とは、先端幅が中央幅よりも広い形状を意味する。
【0091】
第一連結膜172は、隣り合う弾性塊171における第一断熱層11側同士を連結し、第一断熱層11に接触する。第二連結膜173は、隣り合う弾性塊171における第二断熱層12側同士を連結し、第二断熱層12に接触する。さらに、第一連結膜172と、第二連結膜173とは、距離を隔てて対向して配置されている。つまり、弾性塊171の側面、第一連結膜172と第二連結膜173との対向面により、空間14が形成される。
【0092】
本形態の断熱緩衝材105については、実施形態1の断熱緩衝材4と同様の効果を発揮することができる。弾性層13の両側の空間14に、冷却流体を流通可能とすることにより、冷却機能を付与することができる。特に、弾性層13が対称構造を有することにより、第一電池セル2aが異常発熱した場合にも所望の効果を発揮すると共に、第二電池セル2bが異常発熱した場合にも所望の効果を発揮する。
【0093】
(実施形態7)
電池モジュール1を構成する実施形態7の断熱緩衝材106の構成について
図11を参照して説明する。本形態の断熱緩衝材106は、
図11に示すように、第一電池セル2a側に配置された第一断熱層11と、第二電池セル2b側に配置された第二断熱層12と、第一断熱層11と第二断熱層12との間に挟まれて配置された弾性層13とを備える。
【0094】
本形態では、弾性層13が、発泡材料により形成されている。この場合、弾性層13は、両面に凹凸面を有しない形状、いわゆる平板状に形成すると良い。つまり、弾性層13の一方面のほぼ全面が、平板状に形成された第一断熱層11に接触する。また、弾性層13の他方面のほぼ全面が、平板状に形成された第二断熱層12に接触する。本形態の断熱緩衝材106については、実施形態1の断熱緩衝材4と同様の効果を発揮することができる。弾性層13が発泡体の場合、熱により内圧上昇し、断熱層11,12へ浸入し易い為、進入抑制層22,32による効果が顕著となる。
【0095】
(実施形態8)
電池モジュール1を構成する実施形態8の断熱緩衝材107の構成について
図12~
図14を参照して説明する。本形態の断熱緩衝材107は、
図12および
図13に示すように、板材を折り返した形状に形成されている。断熱緩衝材107は、上記実施形態と同様に、隙間変動吸収機能および断熱機能を発揮する。
【0096】
断熱緩衝材107は、
図13に示すように、第一電池セル2a側に配置された第一断熱層181と、第二電池セル2b側に配置された第二断熱層182と、第一断熱層11と第二断熱層12との間に挟まれて配置された弾性層183とを備える。
【0097】
第一断熱層181は、
図14に示すように、主断熱層181aと進入抑制層181bとを備える。第二断熱層182は、主断熱層182aと進入抑制層182bとを備える。なお、主断熱層181a,182aは、実施形態1における主断熱層21,31と同様に構成される。進入抑制層181b,182bは、実施形態1における進入抑制層22,32と同様に構成される。
【0098】
弾性層183は、
図13に示すように、第一平板部191、第一折り返し部192、第二平板部193、第二折り返し部194、第三平板部195を備える。なお、弾性層183は、2回の折り返し部192,194を有する。ただし、弾性層183は、少なくとも2回の折り返し部192,194を有する構成であれば良く、3回以上の折り返し部192,194を有する構成としても良い。
【0099】
第一平板部191、第二平板部193、第三平板部195は、ほぼ同形状の大きさに形成されている。第一平板部191と第二平板部193とは、距離を隔てて対向して配置される。従って、
図14に示すように、第一平板部191と第二平板部193との間には、空間184が形成される。第二平板部193と第三平板部195とは、距離を隔てて対向して配置される。従って、第二平板部193と第三平板部195との間には、空間185が形成されている。
【0100】
第一折り返し部192は、U字状に形成されており、第一平板部191と第二平板部193とを接続する。第一折り返し部192は、弾性変形可能に構成されている。第二折り返し部194は、U字状に形成されており、第二平板部193と第三平板部195とを接続する。第二折り返し部194は、弾性変形可能に構成されている。
【0101】
また、弾性層183は、芯材を構成する主弾性部183aと、主弾性部183aの一方の表層を構成する第一副弾性層183bと、主弾性部183aの他方の表層を構成する第二副弾性層183cとを備える。主弾性部183aは、金属製または樹脂製の板バネにより構成されている。従って、折り返し部192,194を構成する主弾性部183aが、特に弾性力を発揮する。また、平板部191,193,195を構成する主弾性部183aは、平板部191,193,195が容易に変形しにくくするための剛性を有する。
【0102】
第一副弾性層183bおよび第二副弾性層183cは、主弾性部183aの表面においてゴムまたはエラストマーをバインダーとして構成された機能層であって、低放射率、高放射率性、高耐熱性の少なくとも1つを有する機能層を構成する。第一副弾性層183bおよび第二副弾性層183cは、例えば、中外商工株式会社製のサーモレジン(登録商標)SV600、株式会社アサヒペン社製の耐熱塗料スプレー黒などにより構成される。そして、第一平板部191を構成する第一副弾性層183bが、第一断熱層181の進入抑制層181bに接触している。第三平板部195を構成する第二副弾性層183cが、第二断熱層182の進入抑制層182bに接触している。
【0103】
従って、第一断熱層181と第一副弾性層183bとの関係は、実施形態1における第一断熱層11と弾性層13との関係と同様の関係となる。また、第二断熱層182と第二副弾性層183cとの関係は、実施形態1における第二断熱層12と弾性層13との関係と同様の関係となる。従って、本形態の断熱緩衝材107については、実施形態1の断熱緩衝材4と同様の効果を発揮することができる。
【0104】
(その他)
上述した実施形態2~4における第一断熱層11および第二断熱層12の構成は、実施形態5~8の構成に適用することができる。また、上記実施形態においては、第一断熱層11および第二断熱層12の両者が、主断熱層21,31および進入抑制層22,32を有する構成とした。この他に、第一断熱層11および第二断熱層12の一方のみが、主断熱層21,31および進入抑制層22,32を有する構成とすることもできる。ただし、第一断熱層11および第二断熱層12の両者が、主断熱層21,31および進入抑制層22,32を有する構成とする方が、高い効果を発揮する。
【符号の説明】
【0105】
1 電池モジュール
2,2a,2b 電池セル
4,101,102,103,104,105,106,107 断熱緩衝材
11,181 第一断熱層
12,182 第二断熱層
13,183 弾性層
21,31,111,121,141,151,181a 主断熱層
22,32,112,122,142,143,152,153,181b 進入抑制層