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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066839
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】重症筋無力症治療薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7036 20060101AFI20230509BHJP
   A61K 31/41 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 31/138 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 31/40 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 31/443 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 31/427 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 31/047 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 31/36 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 31/381 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 31/4738 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 31/56 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 31/7028 20060101ALI20230509BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
A61K31/7036
A61K31/41
A61K31/506
A61K31/5377
A61K31/137
A61K31/138
A61K31/40
A61K31/443
A61K31/496
A61K31/427
A61K31/047
A61K31/36
A61K31/381
A61K31/352
A61K31/4738
A61K31/56
A61K31/7028
A61P21/04
A61K45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177664
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】500409219
【氏名又は名称】学校法人関西医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100203253
【弁理士】
【氏名又は名称】村岡 皓一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100179039
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】服部 文幸
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸樹
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA941
4C084ZB082
4C084ZC202
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA13
4C086BC07
4C086BC21
4C086BC50
4C086BC62
4C086BC82
4C086CB22
4C086DA14
4C086DA15
4C086DA16
4C086EA09
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA09
4C086GA10
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA94
4C086ZB08
4C086ZC20
4C086ZC41
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA11
4C206FA17
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA94
4C206ZB08
4C206ZC20
4C206ZC41
4C206ZC75
(57)【要約】      (修正有)
【課題】免疫抑制療法に代わる、あるいは免疫抑制療法と併用して副作用を抑制できる重症筋無力症の新規な治療又は予防薬の提供。
【解決手段】下記式(I):

で示される化合物などからなる群から選択される1種以上の化合物又はその塩を含有してなる、重症筋無力症の治療又は予防薬。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I):
【化1】
〔式(I)中、
~Rは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基及び各水素原子が置換されていてもよいアミノ基又は炭素数1~3の脂肪族基からなる群から選択される原子又は基を示し、
環Aは、下記式(II-1)又は式(II-2):
【化2】
〔式(II-1)又は式(II-2)中、
~R12は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基及び各水素原子が置換されていてもよいアミノ基又は炭素数1~3の脂肪族基からなる群から選択される原子又は基を示す〕を示し、
環Bは、下記式(III-1)又は式(III-2):
【化3】
〔式(III-1)又は式(III-2)中、
13~R19は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基及び各水素原子が置換されていてもよいアミノ基からなる群から選択される原子又は基を示し、
Yは酸素原子又は-C(H)(R20)-〔R20は、水素原子、ヒドロキシ基及び各水素原子が置換されていてもよいアミノ基からなる群から選択される原子又は基を示す〕を示し、
mは0~2の整数を示し、
Lは存在してもしなくてもよく、存在する場合には、以下式(IV-1)、(IV-2)又は(IV-3):
【化4】
〔式(IV-1)、(IV-2)又は(IV-3)中、
点線はいずれかの位置に二重結合が存在してもよいことを示す〕を示し、
Xは酸素原子又は=C(R21)-若しくは-C(H)(R21)-〔R21は、水素原子、ヒドロキシ基及び各水素原子が置換されていてもよいアミノ基からなる群から選択される原子又は基を示す〕を示し、
点線はいずれかの位置に二重結合が存在してもよいことを示す〕
で示される化合物及び化合物番号1~19で表される化合物からなる群から選択される1種以上の化合物又はその塩を含有してなる、重症筋無力症の治療又は予防薬。
【請求項2】
式(I)のRが、水素原子又は各水素原子が置換されていてもよい炭素数1又は2の脂肪族基である、請求項1に記載の治療又は予防薬。
【請求項3】
式(I)のR~Rが、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基又は各水素原子が置換されていてもよいアミノ基である、請求項1又は2に記載の治療又は予防薬。
【請求項4】
式(II-1)のRが、各水素原子が置換されていてもよい炭素数1又は2の脂肪族基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の治療又は予防薬。
【請求項5】
式(II-2)のRが、各水素原子が置換されていてもよいアミノ基である、請求項1~4のいずれか1項に記載の治療又は予防薬。
【請求項6】
式(II-2)のR10が、各水素原子が置換されていてもよい炭素数1又は2の脂肪族基である、請求項1~5のいずれか1項に記載の治療又は予防薬。
【請求項7】
式(II-1)又は式(II-2)のR、R、R、R11及びR12が、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基又は各水素原子が置換されていてもよいアミノ基である、請求項1~6のいずれか1項に記載の治療又は予防薬。
【請求項8】
式(III-1)又は式(III-2)のR13~R19が、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基又は各水素原子が置換されていてもよいアミノ基である、請求項1~7のいずれか1項に記載の治療又は予防薬。
【請求項9】
式(I)で表される化合物がSisomicin、Rosarin又はRibostamycinである、請求項1~8のいずれか1項に記載の治療又は予防薬。
【請求項10】
免疫抑制薬又はコリンエステラーゼ阻害薬をさらに含有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の治療又は予防薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の化合物又はその塩を含有してなる、重症筋無力症の治療又は予防薬に関する。
【背景技術】
【0002】
重症筋無力症(myasthenia gravis:MG)は、自己免疫疾患の一種であり、アセチルコリンの筋肉側のニコチン性アセチルコリン受容体(AChR)に抗AChR抗体が結合することにより、神経筋接合部のアセチルコリンによる刺激伝達が阻害されて生じることが知られている。2006年全国臨床疫学調査によれば、日本国での有病率は人口10万人当たり11.8人であり、女性の患者数は男性の1.7倍であり、また胸腺腫合併率は32.0%である。
【0003】
MGの治療については、ステロイドを中心とした免疫抑制療法が基本とされ、シクロスポリンやタクロリムス等のカルシニューリン阻害薬である免疫抑制薬が補助療法として用いられている。また、コリンエステラーゼ阻害薬による対症療法も行われている(例えば、非特許文献1など)。しかしながら、MGの寛解率は20%未満であり、ステロイドなどの免疫抑制薬の長期投与による、患者のQOL(Quality of Life)の低下や易感染性などの副作用が問題となっている。
【0004】
ところで、昨今見られる新薬開発研究の行き詰まりを打開する方法として、ドラッグ・リポジショニング(DR)なる新しい研究概念が議論の対象となっている。ヒトでの安全性と体内動態が実績によって既に確認されている既存薬から、新たな薬効を見つけ出し、実用化につなげていこうというものである。多くの既存のデータが使用できるので、開発コストを低く抑えることができ、蓄積されたノウハウと材料(周辺化合物など)が存在するなど、の更なる利点もある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Cochrane Database Syst Rev. 2014(10):CD006986 (2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、免疫抑制療法などの従来の療法に代わる、あるいは従来の療法と併用して副作用を抑制できる重症筋無力症(MG)の新規な治療又は予防薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ニコチン性アセチルコリン受容体(AChR)と抗AChR抗体との結合を阻害する化合物であれば、MGの治療薬の候補となるのではないかとの着想を得た。かかる化合物を同定するため、MGの患者の50%以上において、自己抗体の結合部位であるAChR α1の主要免疫原性領域(main immunogenic region: MIR)(J Neurosci. 29(44):13898-908 (2009))に着目した。本発明者らはまず、前記MIRの付近に存在する化合物ポケットをコンピューターシミレーションにより予測し、かかる化合物ポケットに対して結合し得る化合物を一次スクリーニングした後、スコアが上位の化合物に対して、二次スクリーニング(ドッキングシミレーション)を行った。コンピューターシミレーションには、Namiki Virtual Chemical library及びFDA認可化合物のライブラリーを用いた。そして、上記スクリーニングによりリストアップした化合物(ヒット化合物)の中から代表化合物を複数選択し、ラジオイムノアッセイ(Ridioimmunoassay:RIA)を行うことで、該化合物が組み換えアセチルコリン受容体に対する患者自己抗体の結合を阻害できることを確認した。さらにヒトiPS細胞由来神経筋接合部に対する患者自己抗体の結合を阻害できること、さらには該自己抗体との結合によるAChRの内在化(internalization)を抑制できることを確認した。本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
[1]
下記式(I):
【0009】
【化1】
【0010】
〔式(I)中、
~Rは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基及び各水素原子が置換されていてもよいアミノ基又は炭素数1~3の脂肪族基からなる群から選択される原子又は基を示し、
環Aは、下記式(II-1)又は式(II-2):
【0011】
【化2】
【0012】
〔式(II-1)又は式(II-2)中、
~R12は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基及び各水素原子が置換されていてもよいアミノ基又は炭素数1~3の脂肪族基からなる群から選択される原子又は基を示す〕を示し、
環Bは、下記式(III-1)又は式(III-2):
【0013】
【化3】
【0014】
〔式(III-1)又は式(III-2)中、
13~R19は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基及び各水素原子が置換されていてもよいアミノ基からなる群から選択される原子又は基を示し、
Yは酸素原子又は-C(H)(R20)-〔R20は、水素原子、ヒドロキシ基及び各水素原子が置換されていてもよいアミノ基からなる群から選択される原子又は基を示す〕を示し、
mは0~2の整数を示し、
Lは存在してもしなくてもよく、存在する場合には、以下式(IV-1)、(IV-2)又は(IV-3):
【0015】
【化4】
【0016】
〔式(IV-1)、(IV-2)又は(IV-3)中、
点線はいずれかの位置に二重結合が存在してもよいことを示す〕を示し、
Xは酸素原子又は=C(R21)-若しくは-C(H)(R21)-〔R21は、水素原子、ヒドロキシ基及び各水素原子が置換されていてもよいアミノ基からなる群から選択される原子又は基を示す〕を示し、
点線はいずれかの位置に二重結合が存在してもよいことを示す〕
で示される化合物及び化合物番号1~19で表される化合物からなる群から選択される1種以上の化合物又はその塩を含有してなる、重症筋無力症の治療又は予防薬。
[2-1]
式(I)のRが、水素原子又は各水素原子が置換されていてもよい炭素数1~3の脂肪族基である、[1]に記載の治療又は予防薬。
[2-2]
式(I)のRが、少なくとも1つのアミノ基を有する脂肪族基である、[1]又は[2-1]に記載の治療又は予防薬。
[2-3]
脂肪族基がメチル基である、[2-1]又は[2-2]に記載の治療又は予防薬。
[3-1]
式(I)のRが、各水素原子が置換されていてもよいアミノ基である、[1]~[2-3]のいずれか1つに記載の治療又は予防薬。
[3-2]
式(I)のRが、置換基を有さないアミノ基である、[1]~[3-1]のいずれか1つに記載の治療又は予防薬。
[3-3]
式(I)のR及びRが、共に、水素原子である、[1]~[3-2]のいずれか1つに記載の治療又は予防薬。
[3-4]
式(I)のR及びRが、共に、ヒドロキシ基である、[1]~[3-2]のいずれか1つに記載の治療又は予防薬。
[4-1]
式(II-1)のRが、各水素原子が置換されていてもよい炭素数1又は2の脂肪族基である、[1]~[3-4]のいずれか1つに記載の治療又は予防薬。
[4-2]
式(II-1)のRが、少なくとも1つのヒドロキシ基を有する脂肪族基である、[1]~[4-1]のいずれか1つに記載の治療又は予防薬。
[4-3]
脂肪族基がメチル基である、[4-1]又は[4-2]に記載の治療又は予防薬。
[5-1]
式(II-2)のRが、各水素原子が置換されていてもよいアミノ基である、[1]~[4-3]のいずれか1つに記載の治療又は予防薬。
[5-2]
式(II-2)のRが、少なくとも1つのメチル基を有するアミノ基である、[1]~[5-1]のいずれか1つに記載の治療又は予防薬。
[6-1]
式(II-2)のR10が、各水素原子が置換されていてもよい炭素数1又は2の脂肪族基である、[1]~[5-2]のいずれか1つに記載の治療又は予防薬。
[6-2]
式(II-2)のR10が、置換基を有さない脂肪族基である、[1]~[6-1]のいずれか1つに記載の治療又は予防薬。
[6-2]
脂肪族基がメチル基である、[6-1]又は[6-2]に記載の治療又は予防薬。
[7-1]
式(II-1)又は式(II-2)のR、R、R、R11及びR12が、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基又は各水素原子が置換されていてもよいアミノ基である、[1]~[6-2]のいずれか1つに記載の治療又は予防薬。
[7-2]
式(II-1)のR及びRの少なくとも1つがヒドロキシ基である、[1]~[7-1]のいずれか1つに記載の治療又は予防薬。
[7-3]
式(II-2)のR及びR11の少なくとも1つがヒドロキシ基である、[1]~[7-2]のいずれか1つに記載の治療又は予防薬。
[7-4]
式(II-2)のR12が水素原子である、[1]~[7-3]のいずれか1つに記載の治療又は予防薬。
[8-1]
式(III-1)又は式(III-2)のR13~R19が、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基又は各水素原子が置換されていてもよいアミノ基である、[1]~[7-4]のいずれか1つに記載の治療又は予防薬。
[8-2]
式(III-1)のR13及びR15が、置換基を有さないアミノ基である、[1]~[8-1]のいずれか1つに記載の治療又は予防薬。
[8-3]
式(III-1)のR14が水素原子である、[1]~[8-2]のいずれか1つに記載の治療又は予防薬。
[8-4]
式(III-1)のYのR20がヒドロキシ基である、[1]~[8-3]のいずれか1つに記載の治療又は予防薬。
[8-5]
式(III-1)のR13~R15がすべてヒドロキシ基である、[1]~[8-1]のいずれか1つに記載の治療又は予防薬。
[8-6]
式(III-1)のYが酸素原子である、[1]~[8-1]及び[8-5]のいずれか1つに記載の治療又は予防薬。
[8-7]
式(III-2)のR16がヒドロキシ基である、[1]~[8-1]のいずれか1つに記載の治療又は予防薬。
[8-8]
式(III-2)のR17及びR19が、置換基を有さないアミノ基である、[1]~[8-1]及び[8-7]のいずれか1つに記載の治療又は予防薬。
[8-9]
式(III-2)のR18が水素原子である、[1]~[8-1]、[8-7]及び[8-8]のいずれか1つに記載の治療又は予防薬。
[9]
式(I)で表される化合物がSisomicin、Rosarin又はRibostamycinである、[1]~[8-9]のいずれか1つに記載の治療又は予防薬。
[10]
免疫抑制薬又はコリンエステラーゼ阻害薬をさらに含有する、[1]~[9]のいずれか1つに記載の治療又は予防薬。
[11]
哺乳動物に対して、上記式(I)で示される化合物及び化合物番号1~19で表される化合物からなる群から選択される1種以上の化合物又はその塩の有効量を投与することを特徴とする、該哺乳動物における重症筋無力症の治療または予防方法。
[12]
重症筋無力症の治療又は予防における使用のための、上記式(I)で示される化合物及び化合物番号1~19で表される化合物からなる群から選択される1種以上の化合物又はその塩。
[13]
重症筋無力症の治療又は予防薬の製造のための、上記式(I)で示される化合物及び化合物番号1~19で表される化合物からなる群から選択される1種以上の化合物又はその塩の使用。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、MGに対する治療が可能となる。また、既存薬の補助薬として用いることで、既存薬剤の投与量を減らし、副作用を抑制することが可能である。特に、安全性が確認されている既存薬を本発明の治療薬の有効成分とすることで、臨床応用に向けた開発期間を短縮できることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ニコチン性アセチルコリン受容体(AChR)の主要免疫原性領域(MIR)付近に存在すると予測された化合物ポケットを示す。
図2】Namiki Virtual Chemical libraryのうち、コンピューターシミレーションの結果最もスコアが高い化合物のAChRとの予測ドッキングポーズを示す。
図3】Sisomicin SulfateのAChRとの予測ドッキングポーズを示す。
図4】ヒトiPS細胞から運動神経への分化誘導方法の概略図を示す。
図5】実施例で分化誘導した神経細胞における、運動神経特異的遺伝子発現レベルの測定結果を示す。エラーバーは標準誤差、*はp<0.05を示す。それぞれ、n=3。
図6】実施例で分化誘導した神経細胞における、免疫染色の結果を示す。
図7】実施例で分化誘導した運動神経(様)細胞と骨格筋細胞の共培養における、免疫染色の結果を示す。
図8】α-BungarotoxinがAchRに共有結合することを示す。蛍光ラベルを付加したα-Bungarotoxinを用い、その存在部位を骨格筋上に指し示した。
図9図8同様、蛍光ラベルを付加したα-Bungarotoxinを用い、その存在部位を骨格筋上に指し示した。
図10図9同様、蛍光ラベルを付加したα-Bungarotoxinを用い、その存在部位を骨格筋上に指し示した。
図11】ヒット化合物の薬効評価方法の概略図を示す。
図12】ヒット化合物の薬効評価の結果(左図)及び推定メカニズムの概略図(右図)を示す。エラーバーは標準誤差、**はp<0.01を示す。それぞれ、n=5。
【発明を実施するための形態】
【0019】
下述の実施例で示される通り、コンピューターシミレーションの結果、スコアが高い複数の化合物が、ニコチン性アセチルコリン受容体(AChR)と抗AChR抗体との結合を阻害し、MGの病因の1つであるAChRの内在化を抑制できることが、本発明者らにより実証された。従って、本実施例で用いた化合物、及びそれ以外のスコアの高い化合物(以下では、これらの化合物を総称して、「本発明の化合物」との用語を用いることがある。)は、MGの病因の1つであるAChRの内在化を抑制し、それによりMGを治療又は予防することが可能となる。従って、本発明は、本発明の化合物を含有してなる、MGの治療又は予防薬(以下、「本発明の医薬」と称することがある)を提供する。
【0020】
本発明の医薬は、有効成分である本発明の化合物をそのまま単独で、又は薬理学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤等と混合し、適当な剤型の医薬組成物として経口的又は非経口的に投与することができる。また、本発明の医薬は、哺乳動物(例:ヒト、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、ウシ、イヌ、ネコ、サル)に対して投与することが可能である。よって、哺乳動物に対し、本発明の化合物の有効量を投与することを特徴とする、該哺乳動物におけるMGの治療又は予防方法も提供される。
【0021】
本発明において、治療又は予防の対象となるMGとしては、特に限定されず、成人期発症MGであっても、新生児一過性型を含む小児期発症MGであってもよい。また、MGFA(Myasthenia Gravis Foundation of America)分類としては、成人第I型(眼筋型)、成人第II型(全身型)、成人第III型(急性激症状)、成人第IV型(晩期重症型)、成人第V型(筋萎縮型)が挙げられる。
【0022】
本明細書において、「治療薬」には、MGの根治治療を目的とする医薬だけでなく、例えば、これらの疾患の進行抑制を目的とする医薬、症状の軽減(例えば、生活、仕事の支障がない症状軽微(minimal manifestations MM)への改善)を目的する、又は後遺症を軽減する医薬も含まれるものとする。例えば、重症筋無力症は、長期間(通常年単位)にわたり進行する病気であることから、早期に治療を開始することで、症状の進行を予防することができる。また、本明細書において、「予防薬」には、MGを発症していない対象に対して、MGを発症するリスクを低減させることを目的とする医薬だけでなく、MGを発症した対象に対して、MGが再発するリスクを低減させることを目的とする医薬も包含されるものとする。例えば、潜在的に、MGに罹患しやすい遺伝的バックグラウンドを有するような患者に対して、MGの症状を呈する前に本発明の医薬を投与することにより、MGの発症を予防することもできる。
【0023】
また、本発明の化合物は、AChRと抗AChR抗体との結合阻害剤又はAChRの内在化抑制剤(以下、「本発明の剤」と称することがある。)として用いることもできる。本発明の剤は、一般的な医薬組成物又は医薬製剤として、あるいは化粧品や食品として調製され、経口又は非経口的に投与される。また、本発明の剤は、試剤として用いることもできる。本発明の剤は、例えば、ヒトを含む対象(例:哺乳動物、哺乳類動物の細胞、組織、器官など)に投与することができる。したがって、本発明の化合物を対象に投与することを含む、該対象におけるAChRと抗AChR抗体との結合阻害方法又はAChRの内在化抑制方法も提供される。
【0024】
本発明の化合物として、具体的には、下記式(I):
【0025】
【化5】
【0026】
〔式(I)中、
~Rは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基及び各水素原子が置換されていてもよいアミノ基又は炭素数1~3の脂肪族基からなる群から選択される原子又は基を示し、
環Aは、下記式(II-1)又は式(II-2):
【0027】
【化6】
【0028】
〔式(II-1)又は式(II-2)中、
~R12は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基及び各水素原子が置換されていてもよいアミノ基又は炭素数1~3の脂肪族基からなる群から選択される原子又は基を示す〕を示し、
環Bは、下記式(III-1)又は式(III-2):
【0029】
【化7】
【0030】
〔式(III-1)又は式(III-2)中、
13~R19は、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基及び各水素原子が置換されていてもよいアミノ基からなる群から選択される原子又は基を示し、
Yは酸素原子又は-C(H)(R20)-〔R20は、水素原子、ヒドロキシ基及び各水素原子が置換されていてもよいアミノ基からなる群から選択される原子又は基を示す〕を示し、
mは0~2の整数(好ましくは0又は1)を示し、
Lは存在してもしなくてもよく、存在する場合には、以下式(IV-1)、(IV-2)又は(IV-3):
【0031】
【化8】
【0032】
〔式(IV-1)、(IV-2)又は(IV-3)中、
点線はいずれかの位置に二重結合が存在してもよいことを示す〕を示し、
Xは酸素原子又は=C(R21)-若しくは-C(H)(R21)-〔R21は、水素原子、ヒドロキシ基及び各水素原子が置換されていてもよいアミノ基からなる群から選択される原子又は基を示す〕を示し、
点線はいずれかの位置に二重結合が存在してもよいことを示す〕
で示される化合物が挙げられる。
【0033】
一態様において、上記式(I)のRが、水素原子又は各水素原子が置換されていてもよい(換言すれば、置換基を有していてもよい)炭素数1~3の脂肪族基である化合物が挙げられる。上記式(I)のRが、脂肪族基である場合において、該脂肪酸基は、少なくとも1つ(好ましくは1つ)の置換基(好ましくはアミノ基)を有していてもよい炭素数1又は2(好ましくは1)の脂肪族基(好ましくはメチル基)である。また、Rが、置換基を有していてもよい(好ましくは置換基を有さない)アミノ基であることも好ましい。R及びRが、共に、水素原子であるか、ヒドロキシ基であることもまた好ましい。
【0034】
式(I)の環Cは、以下の下記式(V-1)、(V-2)又は(V-3)で示される環構造であることが好ましい。
【0035】
【化9】
【0036】
〔式(V-1)、(V-2)及び(V-3)中、R~R及びR21の定義及び好ましい態様は、式(I)における定義及び好ましい態様と同じである。〕
【0037】
環Cが、上記式(V-3)で示される環構造である場合において、R~R及びR21のうちの少なくとも1つ、好ましくは全てが水素原子であることが好ましい。
【0038】
式(I)の環Aが、式(II-1)で表される場合において、式(II-1)のR、R、R、R11及びR12が、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基又は置換基を有していてもよい(好ましくは置換基を有さない)アミノ基であることが好ましい。中でも、R及びRの少なくとも1つ、好ましくは両方が、ヒドロキシ基であることがより好ましい。また、Rが、1つ以上の(好ましくは1つの)置換基(好ましくはヒドロキシ基)を有していてもよい炭素数1又は2(好ましくは1)の脂肪酸基(好ましくはメチル基)であることが好ましい。
【0039】
式(I)の環Aが、式(II-2)で表される場合において、式(II-2)のRは、少なくとも1つの置換基(好ましくはメチル基)を有していてもよいアミノ基であることが好ましい。また、R10が、少なくとも1つの置換基を有していてもよい(好ましくは置換基を有さない)炭素数1又は2(好ましくは1)の脂肪族基(好ましくはメチル基)であることが好ましい。さらに、R、R11及びR12が、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基又は置換基を有していてもよい(好ましくは置換基を有さない)アミノ基であることが好ましい。中でも、R及びR11の少なくとも1つ、好ましくは両方、がヒドロキシ基であることがより好ましい。また、R12が水素原子であることも好ましい。
【0040】
式(I)の環Bが、式(III-1)で表される場合において、式(III-1)のR13~R15及びR20(存在する場合)が、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基又は置換基を有していてもよい(好ましくは置換基を有さない)アミノ基であることが好ましい。好適な態様において、R13及びR15が、置換基を有していてもよい(好ましくは置換基を有さない)アミノ基であり、R14が水素原子であり、R20がヒドロキシ基である化合物が挙げられる。別の好適な態様において、R13~R15がヒドロキシ基であり、Yが酸素原子である化合物が挙げられる。
【0041】
式(I)の環Bが、式(III-2)で表される場合において、式(III-2)のR16~R19が、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基又は置換基を有していてもよい(好ましくは置換基を有さない)アミノ基であることが好ましい。中でも、R16がヒドロキシ基であることが好ましい。また、R17及びR19が、置換基を有していてもよい(好ましくは置換基を有さない)アミノ基であることが好ましい。R18が水素原子であることもまた好ましい。
【0042】
式(I)のLが存在する場合には、Lは上記式(IV-3)で表される化合物が好ましく、中でも下記式(IV-3-a)で表される化合物が好ましい。
【0043】
【化10】
【0044】
好ましい環A~Cの組み合わせとしては、(1)環Aが(II-2)で表される構造、環Bが(III-1)で表される構造、及び環Cが(V-1)で表される構造の組み合わせ、(2)環Aが(II-1)で表される構造、環Bが(III-2)で表される構造、及び環Cが(V-2)で表される構造の組み合わせ、並びに(3)環Aが(II-1)で表される構造、環Bが(III-1)で表される構造、及び環Cが(V-3)で表される構造の組み合わせ、が挙げられる。上記(1)又は(2)の組み合わせの場合には、mは0であり、及び/又はLが存在しない化合物が好ましい。上記(3)の組み合わせの場合には、mが1であり、及び/又はLが上記式(IV-3)(好ましくは上記式(IV-3-a))で表される化合物が好ましい。
【0045】
本発明の化合物として、表1及び表2に挙げられた、化合物番号1~19で表される化合物も挙げられる。
【0046】
【表1-1】
【0047】
【表1-2】
【0048】
【表1-3】
【0049】
【表2】
【0050】
上記式(I)で表される化合物のより具体的な例としては、Sisomicin(化合物番号2)、Rosarin(化合物番号16)及びRibostamycin(化合物番号1)が挙げられる。
【0051】
本明細書において、「脂肪族基」とは、完全に飽和している、又は1つ以上の不飽和結合を含む、直鎖又は分枝した炭化水素鎖を意味する。脂肪族基として、例えば、直鎖又は分岐したアルキル基(例:メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、2-ブチル基、2-メチルプロピル基、1,1-ジメチルエチル基、ペンチル基、3-ペンチル基、3-メチルブチル基、ヘキシル基、3-ヘキシル基等)、アルケニル基(例:ビニル基、アリル基、2-プロピニル基、2-ブテニル基、3-メチル-2-ブテニル基、3-ヘキセニル基等)、アルキニル基(例:エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、2-ヘキシニル基、3-ヘキシニル基、4-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、4-メチル-2-ペンチニル基等)などが挙げられる。
【0052】
本明細書において、「各水素原子が置換されていてもよい」とは、基が有する少なくとも1つの水素原子が、他の原子又は基で置換されていてもよいことを意味する。すなわち、各水素原子が置換されていてもよい基とは、置換基を有していてもよい基と換言することができる。本明細書において、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメチル基、ヒドロキシ基、低級脂肪酸基、低級アルコキシ基、低級アルカノイルオキシ基、アミノ基、アミノ基、モノ低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、カルバモイル基、低級アルキルアミノカルボニル基、ジ低級アルキルアミノカルボニル基、低級アルコキシカルボニルアミノ基、カルボキシル基、低級アルコキシカルボニル基、低級アルキルチオ基、低級アルキルスルフィニル基、低級アルキルスルホニル基、低級アルカノイルアミノ基、低級アルキルスルホンアミド基が挙げられる。これらの置換基は、各水素原子が置換されていてもよい。本明細書において、特にことわらない限り、「各水素原子が置換されていてもよい」との記載がない場合には、無置換の基を意味する。また、本明細書において、「低級」とは、炭素数5以下(好ましくは3以下)を意味する。
【0053】
本発明の化合物は、市販品を用いるか、あるいは各化合物についてそれぞれ自体公知の方法により製造することができる。例えば、米国における各化合物の販売元は、Drugs@FDAなどから知ることができる。
【0054】
本発明の化合物には、フリー体だけでなく、その薬理学的に許容される塩も包含されるものとする。薬理学的に許容される塩は化合物の種類によって異なるが、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アルミニウム塩、アンモニウム塩等の無機塩基塩、並びにトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン等の有機塩基塩などの塩基付加塩、あるいは塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩等の有機酸塩などの酸付加塩が挙げられる。
【0055】
本発明の化合物が、光学異性体、立体異性体、位置異性体、回転異性体等の異性体を有する場合には、いずれか一方の異性体も混合物も本発明の化合物に包含される。例えば、化合物1~19の少なくともいずれかに光学異性体が存在する場合には、ラセミ体から分割された光学異性体も本発明における化合物に包含される。これらの異性体は、自体公知の合成手法、分離手法(例、濃縮、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、再結晶等)、光学分割手法(例、分別再結晶法、キラルカラム法、ジアステレオマー法等)等によりそれぞれを単品として得ることができる。
【0056】
本発明の化合物は、結晶であってもよく、結晶形が単一であっても結晶形混合物であっても本発明の化合物に包含される。結晶は、自体公知の結晶化法を適用して、結晶化することによって製造することができる。
【0057】
本発明の化合物は、溶媒和物(例、水和物等)であっても、無溶媒和物(例、非水和物等)であってもよく、いずれも本発明の化合物に包含される。
【0058】
また、同位元素(例、3H, 14C, 35S, 125I等)等で標識された化合物も、本発明の化合物に包含される。
【0059】
経口投与のための組成物としては、固体又は液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。一方、非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含しても良い。これらの製剤は、賦形剤(例えば、乳糖、白糖、葡萄糖、マンニトール、ソルビトールのような糖誘導体;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α澱粉、デキストリンのような澱粉誘導体;結晶セルロースのようなセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルランのような有機系賦形剤;及び、軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウムのような珪酸塩誘導体;燐酸水素カルシウムのような燐酸塩;炭酸カルシウムのような炭酸塩;硫酸カルシウムのような硫酸塩等の無機系賦形剤である)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;タルク;コロイドシリカ;ビーズワックス、ゲイ蝋のようなワックス類;硼酸;アジピン酸;硫酸ナトリウムのような硫酸塩;グリコール;フマル酸;安息香酸ナトリウム;DLロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物のような珪酸類;及び、上記澱粉誘導体である)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、及び、前記賦形剤と同様の化合物である)、崩壊剤(例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、内部架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース誘導体;カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンのような化学修飾されたデンプン・セルロース類である)、乳化剤(例えば、ベントナイト、ビーガムのようなコロイド性粘土;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムのような金属水酸化物;ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウムのような陰イオン界面活性剤;塩化ベンザルコニウムのような陽イオン界面活性剤;及び、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルのような非イオン界面活性剤である)、安定剤(メチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;及び、ソルビン酸である)、矯味矯臭剤(例えば、通常使用される、甘味料、酸味料、香料等である)、希釈剤等の添加剤を用いて周知の方法で製造される。
【0060】
本発明の医薬又は剤の有効成分である本発明の化合物の投与量は、化合物の種類、投与対象の症状、齢、体重、薬物受容性等の種々の条件により変化し得るが、経口投与の場合には、1回当たり下限0.1mg(好適には0.5mg)、上限1000mg(好適には500mg)を、非経口的投与の場合には、1回当たり下限0.01mg(好適には0.05mg)、上限100mg(好適には50mg)を、成人に対して1日当たり1乃至6回投与することができる。症状に応じて増量若しくは減量してもよい。特に、本発明の化合物が上記疾患以外の疾患に対する医薬品として、既に上市されている場合には、各化合物について、安全性が確認されている範囲で、適宜投与量を選択することができる。
【0061】
本発明の医薬又は剤は、MGに対する手術療法(例:胸腺摘除術等)と組み合わせて、あるいはMGに対する他の治療薬又は予防薬(以下、「既存薬」と称することがある。)(例:免疫抑制薬、コリンエステラーゼ阻害薬、免疫グロブリン等)と組み合わせて用いることもできる。従って、本発明の一態様において、本発明の化合物と、1種以上の既存薬とを含有する、GMの治療又は予防薬が提供される。
【0062】
上記免疫抑制薬としては、例えば、ステロイド(例:プレドニン、プレドニゾロン、リンデロン等)、カルシニューリン阻害薬(例:タクロリムス、シクロスポリン等)、アザチオプリン、シクロホスファミド、リツキシマブなどが挙げられる。上記コリンエステラーゼ阻害薬としては、例えば、アンベノニウム(商品名:マイテラーゼ)、ピリドスチグミン(商品名:メスチノン)、ジスチグミン(商品名:ウブレチド)、ネオスチグミン(商品名:ワゴスチグミン)、エドロホニウム(商品名:アンチレクス)などが挙げられる。これらの化合物又はその塩は、適宜組み合わせて用いることもできる。
【0063】
前述の通り、MGの寛解は得難いため、MGの治療は通常長期にわたり、免疫抑制薬やコリンエステラーゼ阻害薬などの既存薬の投与による副作用の影響も増大する。そのため、本発明の医薬を既存薬の補助薬として用いることで、既存薬の投与量を減らし、副作用を抑制することが可能である。また、MGの治療方針として、経口ステロイドは少量としカルシニューリン阻害薬を早期から積極的に用い、残るMG症状は強力で速効性の治療を用い短期間に改善させる治療方法(早期強力治療戦略)が提案されている。本発明の医薬は、かかる早期強力治療戦略にも有用であり得る。
【0064】
併用薬剤として用いる場合には、かかる併用薬剤は、本発明の化合物とともに製剤化して単一の製剤として投与することもできるし、あるいは、本発明の化合物とは別個に製剤化して(例えば、キットとして)、本発明の医薬又は剤と同一若しくは別ルートで、同時若しくは時間差をおいて投与することもできる。また、これらの併用薬剤の投与量は、該薬剤を単独投与する場合に通常用いられる量であってよく、あるいは通常用いられる量より減量することもできる。
【0065】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【実施例0066】
実施例1:コンピューターシミレーション
本実施例には、バイオ産業情報化コンソーシアム (JBIC:〒135-8073 東京都江東区青海2-4-32 TIME24ビル10階)が無償提供する医薬品開発支援のために作成された分子シミュレーション計算のプログラム集:myPrestoを用いた。まず、Protein data base(PDB)から、AchRαサブユニットの立体構造情報(ID: 2BG9)を入手した。続いてmyPrestoに含まれる、MolSiteと名付けられたプログラムを用い、AchRのMIR部位付近に存在する分子ポケットを探索した。次にこれらのポケットに対して、化合物ライブラリーのドッキングシミュレーションを(sievgene_M)と名付けられたプログラムを用いて行った。
【0067】
この結果示されるスコアから、上位化合物を選抜した。さらにこれらに対して、シミュレーションされた結合における自由エネルギー変化量であるdelta G値および、結合予測の正確性の指標である、化合物の原子座標の予測誤差(root-mean-square deviation of atomic positions:RMSD)値の計算を実施し、これらの結果を参照して2次スクリーニングを行った。この結果においてスコアの高い化合物群をリストとしてまとめた(上記表1)。また、よりMIRに近い化合物ポケットのみをスクリーニング対象として、ヒットした化合物の一部を、リストとしてまとめた(上記表2)。
【0068】
実施例2:ラジオイムノアッセイ
本アッセイは、RSR Limited(Avenue Park Pentwyn Cardiff CF23 8HE
United Kingdom)が販売する、RiaRSRTM AChRAbの操作指示書に従い実施された。本明細書に記載の検査結果は、株式会社SRL(東京都新宿区西新宿二丁目1番1号)によって実施された。
【0069】
結果を表3に示す。Rosarin、Ribostamycin及びSisomicinのいずれも、AChRと、自己抗体(抗AChR抗体)との結合を阻害できることが確認された。中でも、Sisomicinが、最も高い阻害効果を有することが示された。
【0070】
【表3】
【0071】
実施例3:ヒット化合物の薬効を評価
運動神経細胞を用いて、ヒット化合物の薬効を評価した。まず、ヒトiPS細胞から運動神経細胞を分化誘導した。維持培養していたヒトiPS細胞をTrypLE Express(Thermo Fisher Scientific Inc.)で細胞剥離し、120×g、25℃で5分間遠心分離した。その後、アスピレーターで上清を除去し、0.15% bovine serum albmin(BSA, Thermo Fisher Scientific Inc.)を含むDulbecco’s phosphate buffer saline(-)(D-PBS (-), ナカライテスク株式会社, 京都)2 mLを加え懸濁した。Matrigel(Thermo Fisher Scientific Inc., MA, USA)コーティング済み6 cm dishにDMEM/F12(富士フィルム和光純薬株式会社, 大阪):Neurobasal medium(Thermo Fisher Scientific Inc.)= 1:1、10% Knockout Serum Replacement(Thermo Fisher Scientific Inc.)、1% Non- Essential Amino Acid(Sigma-Aldrich Inc., MO, USA)、1% GlutaMAX(Thermo Fisher Scientific Inc.)ならびに神経堤細胞への分化誘導因子として3 μM CHIR99021(Cayman Chemical Company Inc., MI, USA)、2.5 μM Dorsomorphin(Cayman Chemical Company Inc.)および10 μM SB431542(東京化成工業株式会社)を加え、そこに先に準備したヒトiPS細胞を0.5×106 個播種して3日間培養した。その際、ヒトiPS細胞の細胞死を防ぐために10 μM Y-27632を加えた。分化誘導した神経堤細胞にMN基礎培地(DMEM / F12:Neurobasal medium = 1:1、10% Knockout Serum Replacement、1% Non-Essential Amino Acid、1% GlutaMAX、1% B-27(Thermo Fisher Scientific Inc.)、1% N-2(Thermo Fisher Scientific Inc.)、0.1 mM L-ascorbic acid(Sigma-Aldrich Inc.))、3 μM CHIR99021、 2.5 μM Dorsomorphinおよび10 μM SB431542を加えた。また、腹側の位置情報を与える1 μM Purmmorphamine(Cayman Chemical Company Inc.)、1 μM Smoothened agonist(SAG)Dihydrochloride(AdipoGen Life Sciences Inc., Basel, Swiss)、100 ng/ml Sonic hedgehog(SHH)(Pepro Tech Inc. NJ, USA)を加え4日間培養した。その後、MN基礎培地に1 μM Purmmorphamine、1 μM SAG Dihydrochloride、100 ng/ml SHHおよび胸側の位置情報を与える1 μM All-trans retinoic acid(富士フィルム和光純薬株式会社)を加え培養した。分化誘導開始から11~14日後、Accutase(Innovative Cell Technologies Inc., CA, USA)1 mLを加え、細胞剥離し、回収した。その後、96 well plate(住友ベークライト株式会社, 東京)に1000 cells/well播種し、MN基礎培地で10~20日間培養してsphere状にした。
【0072】
次に、得られた運動神経における遺伝子発現量やタンパク質の発現パターンを調べた。ヒトiPS細胞由来NMJモデルから培地を除去し、0.15% bovine serum albminを含むDulbecco’s phosphate buffer saline(-)2 mLを加え、洗浄した後、ISOGEN(株式会社ニッポンジーン, 東京)500 μLを加えセルスクレーパー(住友ベークライト株式会社)で回収した。また、未分化ヒトiPS細胞をTrypLE Expressで細胞剥離し、120×g、25℃で5分間遠心分離した。その後、アスピレーターで上清を除去し、ISOGEN 500 μLを加え、回収した。ヒトiPS細胞由来NMJ回収液および未分化ヒトiPS細胞回収液それぞれにクロロホルム(富士フィルム和光純薬株式会社)100 μLを加え15秒間激しく振盪し室温で3分放置した後、12000×g、4℃で10分間遠心分離した。最上層の水相のみ回収し、2-プロパノール(富士フィルム和光純薬株式会社)を250 μL加え室温で10分放置した後、12000×g、 4℃で10分間遠心分離した。上清を除去し、70%エタノール1 mLを加えボルテックスした後、7500×g、4℃で5分間遠心分離した。その後、上清を除去し、15分間風乾した後、Diethylpyrocarbonate(DEPC)処理水(ナカライテスク株式会社)30 μLを加えtotal RNAとした。
【0073】
逆転写反応は、Verso cDNA Synthesis Kit(Thermo Fisher Scientific Inc.)を用いて行った。5×cDNA Synthesis buffer 4 μL、dNTP Mix 2 μL、RNA Primer(anchored oligo dT)1 μL、RT Enhancer 1 μL、Verso Enzyme Mix 1 μLおよび上記方法で調製したtotal RNA 2 μg/tubeを加え、さらにDEPC処理水を全量20 μLとなるように200 μLのPCRチューブに加えた。その後、サーマルサイクラー(PC320, 株式会社アステック, 福岡)を用いて反応(42℃:31分、95℃:2分、 4℃)させ、cDNAを作製した。得られたcDNA 100 ng/1 μLにPower SYBR(登録商標) Green PCR Master Mix(×2)(applied biosystems Inc., MA, USA)10 μL、50 μM Forward Primer 0.5 μL、50 μM Reverse Primer 0.5 μLおよびDEPC処理水8 μLを100 μLの PCRチューブに加えた。Rotor-Gene Q(QIAGEN Sciences Inc, MD, USA)を用いてリアルタイムPCR(holding stage:95℃ 10分、cycling stage:95.0℃ 30秒、50℃ 30秒および72.0℃ 1分を45 Cycles、get signal:72.0℃)により解析した。リアルタイムPCRで用いたプライマーは以下の通りである。
【0074】
hChAT-Fw(株式会社ファスマック, 神奈川) GGAGGCGTGGAGCTCAGCGACACC(配列番号1)
hChAT-Rv(株式会社ファスマック)CGGGGAGCTCGCTGACGGAGTCTG(配列番号2)
hIslet1(primer 1)-Fw(株式会社ファスマック)AAGGACAAGAAGCGAAGCAT(配列番号3)
hIslet1(primer 1)-Rv(株式会社ファスマック)TTCCTGTCATCCCCTGGATA(配列番号4)
hIslet1(primer 2)-Fw(株式会社ファスマック)GTTACCAGCCACCTTGGAAA(配列番号5)
hIslet1(primer 2)-Rv(株式会社ファスマック)GGACTGGCTACCATGCTGTT(配列番号6)
Olig2-Fw(株式会社ファスマック)AGCTCCTCAAATCGCATCC(配列番号7)
Olig2-Rv(株式会社ファスマック)ATAGTCGTCGCAGATTTCG(配列番号8)
h18S-Fw(株式会社ファスマック)TCAACTTTCGATGGTAGTCGCC(配列番号9)
h18S-Rv(株式会社ファスマック)TCCTTGGATGTGGTAGCCGTTTCT(配列番号10)
【0075】
結果を図5及び図6に示す。図5及び図6より、運動神経細胞が存在することが確認された。
【0076】
ヒトiPS細胞由来骨格筋芽細胞の分化を行った。ヒトiPS細胞コロニーを、Matrigelコーティング済み6 well plate(CORNING Inc.)にDMEM/F12 (富士フィルム和光純薬工業株式会社)に1倍濃度ITS (Thermofisher)および3.5μM CHIR99021を添加し、6日間培養し、さらに、10日間DMEM/F12に1倍濃度ITS (Thermofisher)および20ng/ml bFGF(富士フィルム和光純薬工業株式会社)を添加した条件で培養した。続いて、10日間 DMEM/F12に1倍濃度ITS (Thermofisher)を添加した条件で培養してヒトiPS細胞由来骨格筋芽細胞を得た。
【0077】
次に、Matrigelコーティング済み6 well plate(CORNING Inc.)にDMEM(Low Glucose)(富士フィルム和光純薬工業株式会社)、5%FCS(Cytiva Inc., ON, Canada)、10 μM SB431542および10 μM N-[(3,5-Difluorophenyl)acetyl]-L-alanyl-2-phenyl]glycine-1,1-dimethylethyl ester(DAPT, Sigma-Aldrich Inc.)を加え、T75 フラスコ(Thermo Fisher Scientific Inc.)から回収したヒトiPS細胞由来筋芽細胞の1/16量を播種し、骨格筋細胞へ分化誘導した。
【0078】
最後に、上記運動神経細胞隗と骨格筋細胞を共培養し、1週間程培養した。作製した運動神経sphereを回収後、8 spheres/wellずつヒトiPS細胞由来骨格筋細胞培養中の6 well plateへ加え、MN基礎培地、神経成長因子である10 ng / mL CNTF(Pepro Tech Inc.)、10 ng / mL BDNF(Bio Legend Inc., CA, USA)、10 ng / mL NT-3(Bio Legend Inc.)および10 ng / mL GDNF(Pepro Tech Inc.)を加え、共培養した。運動神経細胞隗からは神経軸索突起が伸展し、周辺の骨格筋細胞に接合している状態が確認された。図7は形態的な神経筋接合部の存在を示す。
【0079】
図8~10は、個々の骨格筋細胞に接して、アセチルコリン受容体の集団である神経筋接合部が形成されていることを示す。ヒトiPS細胞由来NMJモデルから培地を除去し、0.15%BSAを含むD-PBS (-)2 mLで洗浄した後、4%パラホルムアルデヒド(富士フィルム和光純薬株式会社)1 mLを加え、室温で10分放置した。その後、4%パラホルムアルデヒドを除去し、1× Tris Bufferd Saline(ナカライテスク株式会社)に0.1w/v% Tween20(ナカライテスク株式会社)を加えた混合液(TBS-T) 2 mLで洗浄し、Block Ace(株式会社ケー・エー・シー)を含むイムノブロック(株式会社ケー・エー・シー, 京都)1 mLを加え4℃で静置した。24時間後、Block Aceを含むイムノブロックを除去し、Block Aceを含むイムノブロックとTBS-Tの等量混合溶液で100倍希釈したAnti-HB9 mouse monoclonal抗体(Divelopmental Studies Hybridoma Bank, IA, USA)、およびAnti-Neurofilament rabbit polyclonal 抗体(Sigma-Aldrich Inc.)をそれぞれ100 μL加え、4℃で静置した。24時間後、TBS-T 1 mLで2回洗浄し、Block Aceを含むイムノブロックとTBS-Tを等量混合溶液で100倍希釈したAlexa Fluor 546標識 ロバ(抗ウサギIgG(H+L))IgG(Thermo Fisher Scientific Inc.)およびAlexa Fluor 488標識ロバ(抗マウスIgG(H+L))IgG(Thermo Fisher Scientific Inc.)をそれぞれ100 μL加え4℃で静置した。24時間後、TBS-T 2 mLで3回洗浄し、TBS-Tで1000倍希釈した4,6-diamidino-2-phenylindole(DAPI, Molecular Probes Inc., OR, USA)1 mLを加え、室温で5分間放置した。その後、TBS-T 2 mL で3回洗浄し、蛍光顕微鏡(ECLIPSE Ti2-E/B, 株式会社ニコン, 東京)で観察した。
【0080】
最後に、得られた神経筋接合部を有する骨格筋神経共培養システムを用いて、ヒット化合物の薬効を評価した。評価方法の概要を図11に示す。作製したヒトiPS細胞由来NMJモデルに20%MG患者血清(AChR Ab 「コスミックII」陽性コントロール, 株式会社コスミックコーポレーション, 東京)を加え、MGモデルとし、ヒット化合物であるSisomicinを10μMの濃度で添加したものと、溶媒のみを同量添加したものを作製し、24時間培養を継続した。培地をアスピレーターで除去し、MN基礎培地1 mLにα-BTX CF(登録商標)555 conjugate(Biotium Inc., CA, USA)1 μLを加え、37℃で60分間放置した。その後、MN基礎培地1 mLで2回洗浄し、ヒット化合物の薬効を評価するため蛍光顕微鏡(ECLIPSE Ti2-E/B)で1視野(1.69 mm2)あたりのα-BTX CF(登録商標)555 conjugateで検出したAChR数を無作為に選んだ5視野においてカウントした。
【0081】
結果を図12に示す。図12より、ヒット化合物を添加することで、AChRの内在化が有意に抑制されることが確認された。
【0082】
以上の結果より、ヒット化合物は、ヒトiPS細胞由来神経筋接合部に対する患者自己抗体の結合を阻害できること、さらには該自己抗体との結合によるAChRの内在化を抑制できることが確認された。従って、これらの化合物は、MGの治療又は予防効果を発揮することが強く示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の化合物は、重症筋無力症の治療又は予防に有用である。また、本発明の化合物は、重症筋無力症の治療のための併用薬剤としても有用である。特に、他の疾患に対する医薬品として既に上市されている薬剤は、安全性等の臨床及び非臨床データが蓄積されており、また、周辺化合物のライブラリーが既に存在するため、低コストにかつ迅速に、重症筋無力症を治療又は予防可能な医薬品を開発できる可能性がある。
図1
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図12
【配列表】
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