IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

<>
  • 特開-車両のパイプ固定構造 図1
  • 特開-車両のパイプ固定構造 図2
  • 特開-車両のパイプ固定構造 図3
  • 特開-車両のパイプ固定構造 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066899
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】車両のパイプ固定構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 31/02 20060101AFI20230509BHJP
   F16B 7/20 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
B62D31/02 C
F16B7/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177755
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【弁理士】
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 智
【テーマコード(参考)】
3J039
【Fターム(参考)】
3J039AA03
3J039BB01
3J039FA03
3J039FA05
(57)【要約】
【課題】車両の走行振動による異音の発生を防止する車両用パイプ固定構造を提供する。
【解決手段】車両2の天井7まで延在するパイプ6と、天井6に固定されるフランジ部12を一方の端部に有し、他方の端部においてパイプ6の天井7側が内挿される筒状のブラケット11Aと、パイプ6の天井7側の端部に内挿される胴部22及びブラケット11Aに内挿される張出部23を有するスペーサ21と、を有する車両のパイプ固定構造1であって、スペーサ21は、胴部22がパイプ6の内径より大きい外径を有し、張出部23がブラケット11Aの内径より大きい外径を有した弾性部材である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の天井まで延在するパイプと、
前記天井に固定されるフランジ部を一方の端部に有し、他方の端部において前記パイプの天井側が内挿される筒状のブラケットと、
前記パイプの天井側の端部に内挿される胴部及び前記ブラケットに内挿される張出部を有するスペーサと、
を有する車両のパイプ固定構造であって、
前記スペーサは、前記胴部が前記パイプの内径より大きい外径を有し、前記張出部が前記ブラケットの内径より大きい外径を有した弾性部材である、
車両のパイプ固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のパイプ固定構造に関する。より具体的には、バスなどの乗り物の室内において仕切り棒や握り棒などとして用いられるパイプの固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バスの運転席後ろのガードパイプ(仕切り棒)や乗客が掴まり立ちするための握り棒は天井と床の間や天井と座席との間に亘って設置される。仕切り棒や握り棒などとして用いられるパイプは天井、床又は座席に固定されるブラケットに差し込み、このブラケットを介して天井、床又は座席に固定されている(特許文献1参照)。
【0003】
パイプの下端は、床又は座席に設けられたブラケットに差し込まれてからビスやリベットで固定するが、パイプの上端は天井に設けられるブラケットに対しては固定を行っていない。パイプの上下両端でブラケットに固定すると走行時のボデー変形によりビス又はリベットが切れることが考えられるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-208527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、パイプとブラケットとの間には隙間があるため、走行時のボデー変形によりパイプと天井側ブラケットの間で相対的な振動が発生してこの振動によりパイプとブラケット又はパイプと天井とが干渉して異音が発生する。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、車両のパイプ固定構造において、車両の走行振動による異音の発生を防止することができる、車両のパイプ固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0008】
本適用例に係る車両のパイプ固定構造は、車両の天井まで延在するパイプと、前記天井に固定されるフランジ部を一方の端部に有し、他方の端部において前記パイプの天井側が内挿される筒状のブラケットと、前記パイプの天井側の端部に内挿される胴部及び前記ブラケットに内挿される張出部を有するスペーサと、を有する車両のパイプ固定構造であって、前記スペーサは、前記胴部が前記パイプの内径より大きい外径を有し、前記張出部が前記ブラケットの内径より大きい外径を有した弾性部材である。
【0009】
このように構成された車両のパイプ固定構造は、車両の走行振動による異音の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る車両のパイプ固定構造を適用した車両の車内前側の座席周囲を車内側方から見た概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る車両のパイプ固定構造の垂直断面図である。
図3】スペーサの(a)側面図、及び(b)斜視図、である。
図4】本発明の一実施形態に係る車両のパイプ固定構造においてケーブルを配策した一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。なお、前後とは車両の進行方向、上下とは車両の車高方向、左右とは車両の車幅方向を示しているものとして、以下説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両のパイプ固定構造を適用した車両の車内前側の座席周囲を車内側方から見た概略図である。
【0013】
本発明の一実施形態に係る車両のパイプ固定構造(以下単にパイプ固定構造という)1が適用される車両2はバスであり、例えば、図1に示すように、運転手座席3及び運転手座席3の背後に配置される乗客座席4との間に設けられるパーティション5に適用される。なお、本実施形態のバスは、車両の車幅方向中央に前後方向の延びる通路が形成され、左右に座席が配置されている。図1の運転手座席3及び乗客座席4は車両前右部に配置されている。
【0014】
パーティション5は、通路側において、上下方向に延在するスタンションパイプ(以下単にパイプという)6を有する。パイプ6は、上側は天井7においてブラケット11A、下側は床8において、ブラケット11Bを介して固定される。本実施形態では、パイプ固定構造1は、パーティション5の上側部分(図1の一点鎖線で囲まれた領域)に適用されている。なお、下側のブラケット11Bでは、パイプ6の下端部分が挿入され、ブラケット11B側面からビスやボルト等の締結部材によりパイプ6が固定されている。
【0015】
図2は、本発明の一実施形態に係る車両のパイプ固定構造の垂直断面図である。具体的には、図1の一点鎖線で囲む領域で示すパイプ固定構造1の、パイプ6の軸心を通る面における垂直断面図である。
【0016】
パイプ固定構造1は、図2に示すように、上端にスペーサ21が取り付けられたパイプ6が、天井7に取り付けられたブラケット11Aに挿入されて構成される。
【0017】
パイプ6は、床8から天井7までの距離より少し短い長さの中空の円管であり、車両2に設置された状態で、上端と天井7との間に隙間ができるようになっている。パイプ6は、握り棒として用いることができる程度の外径、例えば3cm程度の外径R2を有し、外周に滑り止めとして機能する樹脂やラバーの薄い外被材が巻かれている場合もある。また、パイプ6は、ステンレスや鉄等の金属で形成され、握り棒としての十分な強度を備える厚みとなるよう内径R1が設定される。
【0018】
ブラケット11Aは、一方の端部にフランジ部12を有する中空の円筒部材であり、フランジ部12の一方の端面が天井7に当接して配置される。フランジ部12には、ボルト等の締結部材Bを挿入するための孔が複数設けられ、ボルト等の締結部材Bにより天井7に固定されている。ブラケット11Aは、パイプ6の外径R2よりわずかに大きい内径R3を有し、ステンレスや鉄等の金属で形成されている。
【0019】
スペーサ21は、胴部22と、胴部22の上端側に外周方向に張り出した張出部23を有する、外周面の断面が段差形状の中空円筒部材である。胴部22は、その外周面の少なくとも一部が、パイプ6の内周面に当接して挿入(内挿)される。また、張出部23は、その外周面の少なくとも一部がブラケット11Aの内周面に当接して挿入(内挿)される。
【0020】
図3は、スペーサ21の(a)側面図、及び(b)斜視図、である。図3を参照しながら、スペーサ21の形状の詳細を説明する。
【0021】
スペーサ21は、パイプ6及びブラケット11Aに挿入されていない状態では、図3(a)に示すように、張出部23は外径R4を有し、上側の約半分において面取りがされている。また、胴部22は、下端から順に外径R5の第1胴部221、外径R6の第2胴部222、中間部223から構成され、第1胴部221及び第2胴部222は、下側の約半分においてそれぞれ面取りがされている。また、スペーサ21は、外周側に、スペーサ21の内周面まで到達しない深さで、スペーサ21の上端から下端に亘る軸方向の切欠部24a、24b、24cを有する。本実施形態では、切欠部24a、24b、24cは、周方向に等間隔で3か所設けられているが、1か所のみ、又は周方向に対向する2か所や、4カ所以上に設けても構わない。さらに、スペーサ21は、ゴムや樹脂等の弾性材料で形成されている。
【0022】
第1胴部221の外径R5及び第2胴部222の外径R6は、パイプ6の内径R1より大きく、パイプ6にスペーサ21の胴部22が圧入される。この圧入により胴部22の外周の押しつぶされた部分は、切欠部24b、24cを埋めるように変形することで、胴部22全体としては円滑にパイプ6の内径R1に収まることが可能である。これにより、胴部22の外周面がパイプ6の内周面に適度に押し付けられて当接し、スペーサ21がパイプ6に対して上下移動することを防止する。また、第1胴部221の外径R5は、第2胴部222の外径R6よりわずかに小さくなっている。これにより、スペーサ21をパイプ6に挿入しやすくしている。同様に、張出部23の外径R4は、ブラケット11Aの内径R3より大きいが、切欠部24aを有することにより、張出部23をブラケット11Aに収容しつつ、張出部23の外周面をブラケット11Aに適度な圧力で当接させることができる。
【0023】
スペーサ21は、また、図2及び図3(b)に示すように、内周面側の上下両端においても面取りがされている。これにより、図4に示すように、天井7に孔を設けて電気配線等のケーブル9をパイプ6内に配策する場合において、スペーサ21にケーブル9を傷つけることなく挿入しやすくなるとともに、パイプ固定構造1の設置後は、ケーブル9を適度に保持してケーブル9が車両2の走行停止に伴い移動するのを妨げるため、パイプ6の端面や天井7の孔の縁でケーブル9が損傷するのを低減することができる。
【0024】
以上のように構成された分割構造を採用するパイプ固定構造1は、スペーサ21が、パイプ6とブラケット11Aの相対的な位置関係を保持する。これにより、パイプ6の外周とブラケット11Aの内周とに隙間がある場合でも、車両2の走行に伴うボデー変形により、パイプ6がブラケット11Aに干渉することがなく、異音の発生を防止することができる。また、ブラケット11Aの内部で天井7とパイプ6の上端の間に隙間が設けられることに対しても、スペーサ21が緩衝材となりパイプ6の上端が直接天井7に接触しないため、上下方向の振動に対しても異音の発生を防止することができる。
【0025】
以上で本発明に係る車両のパイプ固定構造の実施形態についての説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0026】
上記実施形態において、パイプ6は運転手座席3の背後に設置されるパーティション5に適用されていたが、車内に設置されるその他の同径のパイプの接続部に適用してもよい。部品共通化によりコスト削減になる。
【0027】
上記実施形態において、スペーサ21の胴部22は第1胴部221及び第2胴部222の2段構成であったが、1段であっても構わない。これによりスペーサ21の形状が単純化するため製造が容易になる。
【0028】
また、上記実施形態において、車両2はバスであったが、床と天井をつなぐパイプを有する他の車両であっても良い。
【0029】
また、上記実施形態においては、床と天井7を直接連結するパイプ6に車両のパイプ固定構造1が適用されていたが、床に固定された座席等、床の振動を直接的に受ける他の部分と天井とを連結するパイプにも適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 :パイプ固定構造
2 :車両
3 :運転手座席
4 :乗客座席
5 :パーティション
6 :スタンションパイプ
7 :天井
8 :床
9 :ケーブル
11 :ブラケット
12 :フランジ部
21 :スペーサ
22 :胴部
23 :張出部
24a、24b、24c :切欠部
221 :第1胴部
222 :第2胴部
223 :中間部
B :締結部材
図1
図2
図3
図4