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特開2023-66909睡眠時無呼吸症候群判定装置、睡眠時無呼吸症候群判定方法および睡眠時無呼吸症候群判定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066909
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】睡眠時無呼吸症候群判定装置、睡眠時無呼吸症候群判定方法および睡眠時無呼吸症候群判定プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
A61B5/16 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177771
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼玉 圭樹
(72)【発明者】
【氏名】中理 怡恒
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038PP05
4C038PS00
(57)【要約】
【課題】睡眠時無呼吸症候群の判定が行えるようにする。
【解決手段】被測定者の一定時間ごとの睡眠段階を判定した結果の睡眠段階の変化に基づいて、被測定者が睡眠時無呼吸症候群であると判定する。例えば、一定時間ごとの睡眠段階が、ステージ2のノンレム睡眠、覚醒、ステージ1のノンレム睡眠の順で現れる変化が、覚醒が3つの一定時間で連続して現れる変化よりも多い回数であるとき、睡眠時無呼吸症候群であると判定する。あるいは、ステージ3またはステージ4のノンレム睡眠から覚醒になる変化が発生したとき、睡眠時無呼吸症候群であると判定する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の睡眠段階を一定時間ごとに判定した結果の睡眠段階の変化に基づいて、前記被測定者が睡眠時無呼吸症候群であると判定する睡眠時無呼吸症候群判定部を備える
睡眠時無呼吸症候群判定装置。
【請求項2】
睡眠時無呼吸症候群判定部は、被測定者の睡眠中に、睡眠段階の変化が、第1の特定の変化になる回数と、第2の特定の変化になる回数とを比較して、前記第1の特定の変化になる回数の方が多いとき、前記被測定者が睡眠時無呼吸症候群であると判定する
請求項1に記載の睡眠時無呼吸症候群判定装置。
【請求項3】
前記第1の特定の変化は、ステージ2のノンレム睡眠、覚醒、ステージ1のノンレム睡眠の順で現れる変化であり、
前記第2の特定の変化は、覚醒が3つの一定時間で連続して現れる変化である
請求項2に記載の睡眠時無呼吸症候群判定装置。
【請求項4】
睡眠時無呼吸症候群判定部は、被測定者の睡眠中に判定した睡眠段階の変化が、第3の特定の変化となることを検出したとき、前記被測定者が睡眠時無呼吸症候群であると判定する
請求項1に記載の睡眠時無呼吸症候群判定装置。
【請求項5】
前記第3の特定の変化は、ステージ3またはステージ4のノンレム睡眠から覚醒への変化である
請求項4に記載の睡眠時無呼吸症候群判定装置。
【請求項6】
睡眠時無呼吸症候群判定部は、被測定者の睡眠中に判定した睡眠段階の変化が、第1の特定の変化になる回数と、第2の特定の変化になる回数とを比較して、前記第1の特定の変化になる回数の方が多い場合と、被測定者の睡眠中に判定した睡眠段階の変化が、第3の特定の変化となる場合のいずれか一方を満たすとき、前記被測定者が睡眠時無呼吸症候群であると判定する
請求項1に記載の睡眠時無呼吸症候群判定装置。
【請求項7】
睡眠段階を判定する一定時間は、少なくとも30秒である
請求項1~6のいずれか1項に記載の睡眠時無呼吸症候群判定装置。
【請求項8】
被測定者の睡眠段階を一定時間ごとに判定した結果の睡眠段階の変化に基づいて、前記被測定者が睡眠時無呼吸症候群であると判定する睡眠時無呼吸症候群判定処理を含む
睡眠時無呼吸症候群判定方法。
【請求項9】
被測定者の睡眠段階を一定時間ごとに判定した結果の睡眠段階の変化に基づいて、前記被測定者が睡眠時無呼吸症候群であると判定する睡眠時無呼吸症候群判定手順と、
をコンピュータに実行させる睡眠時無呼吸症候群判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の睡眠時無呼吸症候群を判定する睡眠時無呼吸症候群判定装置、睡眠時無呼吸症候群判定方法および睡眠時無呼吸症候群判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場では、睡眠障害や睡眠時無呼吸症候群を診断するために、被測定者の睡眠状態を測定することが行われている。人間の睡眠段階は、睡眠の深さの観点で6段階に分類したものが知られており、その6つの睡眠段階は、眠りが浅い段階から順に、覚醒、レム睡眠、ノンレム睡眠(ステージ1~4)と呼ばれている。これらの6段階の睡眠段階の判定は、従来、例えば被計測者の顔や頭部に多数の電極を装着して、その多数の電極から脳波、眼球運動、および顎筋電を測定し、測定結果の解析により行われていた。
【0003】
また、睡眠時無呼吸症候群の患者は、睡眠時に無呼吸になって、息が苦しくなって眠りが浅くなり、睡眠段階が覚醒の状態になることが多く、無呼吸症候群の診断を行う上でも、睡眠段階を測定する必要がある。
但し、睡眠時無呼吸症候群の判定を行うためには、睡眠段階の測定の他に、口と鼻の気流などの呼吸に伴った空気の流れの測定や、胸部および腹部の換気運動などの様々な測定を同時に行う必要がある。そして、睡眠段階の解析結果と呼吸状態の測定結果などに基づいて、医師が無呼吸症候群であるか否かを診断している。
【0004】
このような診断を行うために必要な、顔や頭部に多数の電極を装着した状態での睡眠の検査は、通常、医療機関に宿泊して、長時間連続して電極を身体に装着して行う検査であり、被測定者(患者)に精神的な負担と肉体的な負担を強いることになる。また、取得したデータは、専門知識と経験を持つ医師が解析して判定する必要がある。このため、睡眠時無呼吸症候群の判定は、簡単にできなかった。
【0005】
睡眠段階の測定に関する問題を解決するために、専門医師による診断を不要とする睡眠段階推定手法は、従来から数多く提案されている。
例えば、特許文献1には、遺伝的アルゴリズムによる学習手法を改良したDatabase-based Compact Genetic Algorithmと称される手法であって、マットレス型圧力センサの検出データから睡眠段階を推定する技術が記載されている。この特許文献1に記載された技術は、マットレス型圧力センサが検出した被測定者の体動と心拍に基づいて、睡眠段階を推定するものである。特許文献1に記載の技術によれば、マットレス型圧力センサを使って睡眠段階を推定することで、被測定者に負担を強いることなく、被測定者の睡眠状態を推定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-239789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、無呼吸症候群の患者が睡眠時に無呼吸になることで、息が苦しくなって眠りが浅くなり、睡眠段階が覚醒の状態になることが多々ある。このため、マットレス型圧力センサの検出データ、つまり体動の検出データを使って睡眠段階を検出することは、無呼吸症候群の判定の一つの指標になる。
【0008】
睡眠中の睡眠段階が覚醒になることが多い場合に、無呼吸症候群になる可能性があるという点は、例えば後述する図4の健常者の睡眠段階の変化例(a)と無呼吸症候群の患者の睡眠段階の変化例(b)とを比較すると分かる。すなわち、図4から分かるように、無呼吸症候群の患者の方が、健常者と比べて覚醒の睡眠段階が多く発生している。
しかしながら、健常者であっても、状況によっては深い睡眠ができない場合も多々あり、睡眠中の睡眠段階が覚醒になる回数が多いからと言って、それだけで無呼吸症候群と判断することはできない。このため、無呼吸症候群をより的確な判定することが急務となっていた。
【0009】
本発明は、睡眠時無呼吸症候群の判定を行うことが可能な無呼吸症候群判定装置、無呼吸症候群判定方法および無呼吸症候群判定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の睡眠時無呼吸症候群判定装置は、被測定者の睡眠段階を一定時間ごとに判定した結果の睡眠段階の変化に基づいて、被測定者が睡眠時無呼吸症候群であると判定する睡眠時無呼吸症候群判定部を備える。
【0011】
また、本発明の睡眠時無呼吸症候群判定方法は、被測定者の睡眠段階を一定時間ごとに判定した結果の睡眠段階の変化に基づいて、被測定者が睡眠時無呼吸症候群であると判定する睡眠時無呼吸症候群判定処理を含む。
【0012】
また、本発明の睡眠時無呼吸症候群判定プログラムは、上記の睡眠時無呼吸症候群判定方法が行う各処理を手順としてコンピュータに実行させるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、睡眠時無呼吸症候群の患者に特有の睡眠段階の変化が現れることを利用して、精度の高い睡眠時無呼吸症候群の判定ができるようになる。したがって、睡眠中の睡眠段階を測定したデータを使って、簡単に睡眠時無呼吸症候群の判定を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態例による睡眠時無呼吸症候群判定装置の構成例を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施の形態例による睡眠時無呼吸症候群の判定状態の例を示す図である。
図3】本発明の一実施の形態例の睡眠時無呼吸症候群判定装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施の形態例による睡眠中のパワースペクトルを一定期間ごとに得る処理の例を示す図である。
図5】睡眠中の睡眠段階の変化例を、健常者(a)と睡眠時無呼吸症候群の患者(b)とで比較した図である。
図6】本発明の一実施の形態例による睡眠時無呼吸症候群を判定するための処理の流れを示すフローチャートである。
図7】睡眠時無呼吸症候群の患者(9人)の睡眠中の90秒間の睡眠段階の変化をカウントし、患者ごとに回数が多い変化の例を示した図である。
図8】健常者(9人)の睡眠中の90秒間の睡眠段階の変化をカウントし、健常者ごとに回数が多い変化の例を示した図である。
図9図7の睡眠時無呼吸症候群の患者(9人)の睡眠段階の変化の中で、ステージ2のノンレム睡眠(2)、覚醒(w)、ステージ1のノンレム睡眠(1)に変化した場合と、覚醒(w)が3回続いた場合とを比較した図である。
図10図8の健常者(9人)の睡眠段階の変化の中で、ステージ2のノンレム睡眠(2)、覚醒(w)、ステージ1のノンレム睡眠(1)に変化した場合と、覚醒(w)が3回続いた場合とを比較した図である。
図11図7の睡眠時無呼吸症候群の患者(9人)の睡眠段階の変化の中で、ステージ2または3のノンレム睡眠(2/3)から覚醒(w)に変化した場合を示した図である。
図12図8の健常者(9人)の睡眠段階の変化の中で、ステージ2または3のノンレム睡眠(2/3)から覚醒(w)に変化した場合の発生回数を示した図である。
図13図7の睡眠時無呼吸症候群の患者(9人)の睡眠段階の変化の中で、図9の例の変化の比較と、図11の例の変化の発生のいずれかの条件を満たす場合を示す図である。
図14図8の健常者(9人)の睡眠段階の変化の中で、図10の例の変化の比較と、図12の例の変化の発生のいずれかの条件を満たす場合を示す図である。
図15図7の睡眠時無呼吸症候群の患者(9人)の睡眠段階の変化の中で、その他の組み合わせで判別できる例を示す図である。
図16図8の健常者(9人)の睡眠段階の変化の中で、その他の組み合わせで判別できる例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態例(以下、「本例」と称する)について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明や図面では、睡眠時無呼吸症候群をSAS、睡眠時無呼吸症候群の患者をSAS患者と称する。また、以下の説明で健常者と述べた場合には、SAS患者でない者を示す。
[1.睡眠時無呼吸症候群判定装置の構成]
図1は、本例の睡眠時無呼吸症候群判定装置10の構成を示すブロック図である。
図2は、本例の睡眠時無呼吸症候群判定装置10を使って睡眠時無呼吸症候群の判定を行う状態の例を示す図である。
【0016】
本実施の形態例の睡眠時無呼吸症候群判定装置10は、被測定者の生体振動をマットレスセンサ2で圧力データとして取得する。この生体振動には、被測定者の体動による振動成分の他に、心拍や呼吸による振動成分が含まれる。マットレスセンサ2は、被測定者Aの睡眠中の上半身の生体振動を圧力の変化として検出する。なお、マットレスセンサ2は、例えば図2に示すように、被測定者Aが睡眠を行うベッド1のマットレスの上あるいは下に敷いて用いられる。被測定者Aの下側になるマットレスの上にマットレスセンサ2を配置するのは一例であり、例えばマットレスの中にマットレスセンサ2を内蔵させてもよい。
【0017】
図2では、ベッド1の脇に睡眠時無呼吸症候群判定装置10を設置し、マットレスセンサ2と睡眠時無呼吸症候群判定装置10をケーブルで接続した例を示すが、例えばマットレスセンサ2が取得した圧力データ(生体振動データ)を、無線伝送で別の部屋の睡眠時無呼吸症候群判定装置10に伝送するようにしてもよい。
以下の説明では、マットレスセンサ2が出力する圧力データを、生体振動データと称する。
なお、生体振動データを圧力センサから得るのは一例であり、その他のセンサを使ってもよい。例えば、赤外線センサやレーザなどを使って、非接触で睡眠中の被測定者の振動を測定してもよい。
【0018】
睡眠時無呼吸症候群判定装置10は、図1に示すように、生体データ取得部11、生体データ処理部12、睡眠段階判定部13、睡眠時無呼吸症候群判定部(以下、「SAS判定部」と称する)14および出力部15を備える。
生体データ取得部11は、マットレスセンサ2が出力する生体振動データを取得する生体データ取得処理を行う。生体データ取得部11が取得した生体振動データは、生体データ処理部12に供給される。
【0019】
生体データ処理部12は、供給される生体振動データをサンプリングしてデジタルデータ化し、デジタルデータ化された生体振動データの周波数のパワースペクトルを算出する。この生体振動データの周波数のパワースペクトルを算出する処理は、30秒周期で行われる。但し、本例では、実際には1回の算出を32秒間行い、その32秒間の算出を30秒周期で、つまり2秒間だけ重なって行うようにしている。
【0020】
なお、生体データ処理部12が30秒周期でパワースペクトルを算出するのは一例であり、30秒よりも短い周期、または30秒よりも長い周期でパワースペクトルを算出してもよい。例えば、生体データ処理部12は、60秒周期でパワースペクトルを算出してもよい。1回の算出において、2秒間重なるようにした点も一例であり、重なる期間がないようにしてもよい。
そして、生体データ処理部12は、睡眠中の一定期間ごとのパワースペクトルの算出結果を、睡眠段階判定部13とSAS判定部14に供給する。
【0021】
睡眠段階判定部13は、一定期間ごとのパワースペクトルの算出結果に基づいて、その期間の被測定者の睡眠段階を判定する。この睡眠段階を判定する際には、パワースペクトルだけでなく、生体振動データを算出して得られる様々な特徴量を使って判定してもよい。また、機械学習の1つであるランダムフォレストを用いて、特徴量のデータから睡眠段階を判定してもよい。
【0022】
睡眠段階としては、睡眠段階が浅い方から順に、覚醒(WAKE:W)、レム睡眠(R)、ノンレム睡眠(NR)があり、ノンレム睡眠については、ステージ1からステージ4の4段階(NR1-NR4)に分けられる。したがって、睡眠段階は、合計で6段階に分けられることになる。6段階の睡眠段階の中では、ステージ4のノンレム睡眠(NR4)が最も深い睡眠段階である。但し、実際の睡眠でステージ4のノンレム睡眠のような深い睡眠段階になることは稀である。
なお、図面では、ステージ1~4のノンレム睡眠については、「NR」を省略して「N1」~「N4」または「1」~「4」と称する場合もある。
本例の睡眠段階判定部13は、生体振動データから睡眠段階を判定するようにしたが、睡眠段階判定部13は、脳波などのその他の生体データから睡眠段階を判定してもよい。
【0023】
SAS判定部14は、被測定者Aの1回の睡眠中(入眠から起床までの間)の一定期間ごと(30秒ごと)の睡眠段階の特定の変化の発生状況から、被測定者が睡眠時無呼吸症候群(SAS)か否かを判定する。SAS判定部14が、具体的に判断する睡眠段階の変化の例については後述する。
【0024】
出力部15は、SAS判定部14が判定した睡眠時無呼吸症候群か否かの結果を出力する。出力部15は、例えば表示装置により構成され、睡眠時無呼吸症候群の判定結果を表示する。あるいは、出力部15を記録装置として構成して、一晩の睡眠状態などと共に睡眠時無呼吸症候群の判定結果を記録するようにしてもよい。また、出力部15が表示または記録を行う際には、睡眠時無呼吸症候群の判定結果だけでなく、睡眠段階の判定結果の表示または記録を同時に行うようにしてもよい。
【0025】
さらに、出力部15を外部の別の端末として、ネットワーク経由で判定結果を伝送するようにしてもよい。例えば、出力部15を予め登録されたスマートフォンとして、判定結果を伝送してもよい。
なお、本例の睡眠時無呼吸症候群判定装置10は、睡眠時のデータ取得と判定をリアルタイムで行うようにしてもよい。一方、睡眠時無呼吸症候群判定装置10は、睡眠時には生体データ取得部11が生体振動データの取得のみを行い、取得したデータを記録しておき、後日、記録データを使って判定までの処理を行うようにしてもよい。
【0026】
[2.睡眠時無呼吸症候群判定装置のハードウェア構成例]
図3は、睡眠時無呼吸症候群判定装置10をコンピュータ装置で構成した場合のハードウェア構成例を示す。
コンピュータ装置Cは、バスC8に接続されたCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)C1、ROM(Read Only Memory)C2、およびRAM(Random Access Memory)C3を備える。さらに、コンピュータ装置Cは、不揮発性ストレージC4、ネットワークインターフェイスC5、入力装置C6、および表示装置C7を備える。
【0027】
CPU C1は、睡眠時無呼吸症候群判定装置10の生体データ処理部12、睡眠段階判定部13、SAS判定部14が備える各機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをROM C2から読み出して実行する。睡眠段階を判定する処理や、睡眠時無呼吸症候群を判定する処理についても、該当する処理を実行するプログラムをROM C2から読み出して、CPU C1が実行する。RAM C3には、演算処理の途中に発生した変数やパラメータ等が一時的に書き込まれる。
【0028】
不揮発性ストレージC4としては、例えば、HDD(Hard disk drive)、SSD(Solid State Drive)、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、不揮発性のメモリ等が用いられる。この不揮発性ストレージC4には、OS(Operating System)、各種のパラメータの他に、コンピュータ装置Cを睡眠時無呼吸症候群判定装置10として機能させるためのプログラムが記録されている。また、睡眠段階判定部13が判定した睡眠段階や、SAS判定部14が判定した睡眠時無呼吸症候群の有無についてのデータも、不揮発性ストレージC4に記録される。
【0029】
ネットワークインターフェイスC5には、例えば、NIC(Network Interface Card)等が用いられ、端子が接続されたLAN(Local Area Network)、専用線等を介して各種のデータを送受信することが可能である。例えば、コンピュータ装置Cは、マットレスセンサ2が出力する圧力データを、ネットワークインターフェイスC5を介して取得する。入力装置C6は、例えばキーボード等の機器で構成され、この入力装置C6により、睡眠時無呼吸症候群判定装置10で睡眠時無呼吸症候群を判定する期間の設定や、判定結果の表示形態の指示等が行われる。表示装置C7には、睡眠時無呼吸症候群判定装置10で睡眠時無呼吸症候群の判定結果が表示される。
なお、睡眠時無呼吸症候群判定装置10を、プログラム(ソフトウェア)の実行で判定装置として機能するコンピュータ装置から構成するのは一例であり、睡眠時無呼吸症候群判定装置10の一部または全ての処理を実行する専用のハードウェアを用意してもよい。
【0030】
[3.周波数のパワースペクトルの算出状態と睡眠段階の判定例]
次に、本例の睡眠時無呼吸症候群判定装置10の各部で行われる処理について説明する。
まず、図4を参照して、生体データ処理部12が、一定期間に睡眠中の生体振動の周波数のパワースペクトルを算出する例を説明する。既に説明したように、本例の場合には、生体データ処理部12は、32秒間のデータを、30秒間隔で処理する。
すなわち、図4に示すように、生体データ取得部11は、最初に入眠(0秒)から32秒までのマットレスセンサ2のセンサ値を取得し、以下、30秒周期で32秒間のセンサ値を取得していく。生体データ取得部11は、この生体振動データの取得を入眠から起床まで連続して行い、取得した生体振動データを、生体データ処理部12に供給する。
【0031】
そして、生体データ処理部12は、32秒間の周波数のパワースペクトルを図4の右下に示すように算出する。このパワースペクトルを算出する周波数解析は、例えば高速フーリエ変換(FFT:fast fourier transform)により行われる。
本例のような睡眠中の生体振動のパワースペクトルを算出したとき、高い密度を示す周波数は、心拍による生体振動の成分と、呼吸による生体振動の成分である。通常、心拍の周波数は1Hz前後であり、呼吸による生体振動の成分は2Hz前後である。但し、SAS患者の場合には、無呼吸となる区間があるため、呼吸による生体振動が生じていない期間がある。また、寝返りなどの大きな体動がある区間では、心拍や呼吸に比べて非常に大きな体動による生体振動の成分が生じる。
【0032】
睡眠段階判定部13は、この図4に示すような生体振動のパワースペクトルから、30秒間で主となる睡眠段階を判定する。生体振動のパワースペクトルから睡眠段階を判定する手法については、本願の発明者らが既に提案した手法が適用可能である。ここでは説明を省略するが、この手法によれば、例えば睡眠段階ごとに異なる特徴量の発生状況から睡眠段階を判定することができる。図4の例では、入眠から最初の30秒間は覚醒(W)と判定し、次の30秒間はステージ2のノンレム(N2)と判定している。
【0033】
図5は、ある睡眠期間での、健常者の睡眠段階を測定した例(a)と、睡眠時無呼吸症候群の患者(SAS患者)の睡眠段階を測定した例(b)を比較した図である。
【0034】
図5では、横軸が睡眠時間を示し、縦軸が睡眠段階を示す。縦軸の睡眠段階は、最も上側が、最も睡眠段階が浅い覚醒(WAKE)を示し、下側に行くほど、レム睡眠(REM)、ステージ1のノンレム睡眠(NREM1)、ステージ2のノンレム睡眠(NREM2)、ステージ3のノンレム睡眠(NREM3)、ステージ4のノンレム睡眠(NREM4)と順に変化して、深い睡眠段階になることを示す。
【0035】
図5の例では、(a)に示す健常者と、(b)に示すSAS患者のいずれの場合も、最も深い睡眠段階は、ステージ3のノンレム睡眠(NREM3)であり、ステージ4のノンレム睡眠(NREM4)には到達していない。
図5の健常者(a)とSAS患者(b)とを比較すると判るように、SAS患者は無呼吸が原因での覚醒(WAKE)が多発している。
なお、SAS患者の場合、覚醒(WAKE)時には、舌が気道を塞ぐことにより無呼吸が起こり、その影響が拍動(心拍)の変化に現れる。
したがって、睡眠段階判定部13が睡眠段階を判定する際には、SAS患者の覚醒時に現れる特徴についても考慮した判定処理を行うのが好ましい。
【0036】
ここで、本例の睡眠時無呼吸症候群判定装置10は、これらの6段階の睡眠段階が変化する状態から、以下に説明する処理手順によりSASの判定を行う。
【0037】
[4.睡眠時無呼吸症候群(SAS)の判定処理の流れ]
図6は、本例の睡眠時無呼吸症候群判定装置10でSASの判定を行う処理の流れを示すフローチャートである。
まず、SAS判定部14は、1回の睡眠中の90秒間の特定の変化状態の発生回数と、90秒間連続して覚醒(WAKE)となる回数との割合を比較する(ステップS11)。ここで、90秒間の特定の変化状態とは、最初の30秒間がステージ2のノンレム睡眠(NR2)となる状態、次の30秒間が覚醒(WAKE)となる状態、そして最後の30秒間がステージ1のノンレム睡眠(NR1)となる状態をいう。
【0038】
また、SAS判定部14は、1回の睡眠中の睡眠段階の変化として、ステージ3またはステージ4のノンレム睡眠(NR3またはNR4)から覚醒(WAKE)になる状態の有無を判定する(ステップS12)。
【0039】
そして、SAS判定部14は、ステップS11での比較で、特定の状態変化である、ステージ2のノンレム睡眠(NR2)、覚醒(WAKE)、ステージ1のノンレム睡眠(NR1)となる変化が、覚醒(WAKE)が90秒間連続する回数と同じか、それよりも多いか否か判定する。この判定で、特定の状態変化が、覚醒(WAKE)が90秒間連続する回数と同じか、それよりも多い場合、SAS判定部14は、被測定者がSAS患者であると判定する。
【0040】
さらに、SAS判定部14は、ステップS12での判定で、ステージ3またはステージ4のノンレム睡眠(NR3またはNR4)から覚醒(WAKE)になる状態が1回でもある場合、被測定者がSAS患者であると判定する(ステップS13)。そして、これらの判定でSAS患者に該当しない場合には、SAS判定部14は、被測定者がSAS患者でないと判定する。この判定結果は、出力部15から出力される。
【0041】
[5.実際の測定データによる検証]
次に、図6のステップS13での判定で、SASの判定が正しくできることを、実際の測定データから取得した睡眠段階の変化例で説明する。
図7は、9人のSAS患者D11~D19の1回の睡眠時の連続した3回の測定期間(90秒間)の変化として現れたものの一覧と、各変化の発生回数を示す。
図8は、9人の健常者D21~D29の1回の睡眠時の連続した3回の測定期間(90秒間)の変化として現れたものの一覧と、各変化の発生回数を示す。
図7および図8に示す各SAS患者D11~D19および健常者D21~D29のデータの内で、左側のものが最も発生回数が多い変化である。
【0042】
図7および図8の見方を説明すると、例えば、図7の最上段の各SAS患者D11の左端の変化「WWW」は、覚醒(WAKE)が3回連続して(90秒間)、発生したことを示し、その下の「14」が、1回の睡眠中に該当する覚醒(WAKE)が3回連続して発生した回数が14回であることを示す。また、「14」の下の数値「0.285714」は、覚醒が3回連続して発生する割合を示す。つまり、この例では覚醒が3回連続して発生する割合が約28.5%であることを示している。
【0043】
以下に、図7および図8に示す記号と、それらが示す90秒間に順に発生する3つの睡眠段階の意味の代表例を示す。
・WWW:覚醒→覚醒→覚醒
・2WW:ステージ2のノンレム睡眠→覚醒→覚醒
・2W2:ステージ2のノンレム睡眠→覚醒→ステージ2のノンレム睡眠
・2W1:ステージ2のノンレム睡眠→覚醒→ステージ1のノンレム睡眠
・1WW:ステージ1のノンレム睡眠→覚醒→覚醒
・1W1:ステージ1のノンレム睡眠→覚醒→ステージ1のノンレム睡眠
・WW1:覚醒→覚醒→ステージ1のノンレム睡眠
・3W1:ステージ3のノンレム睡眠→覚醒→ステージ1のノンレム睡眠
・3WW:ステージ3のノンレム睡眠→覚醒→覚醒
・4W3:ステージ4のノンレム睡眠→覚醒→ステージ3のノンレム睡眠

・RWW:レム睡眠→覚醒→覚醒
・RW1:レム睡眠→覚醒→ステージ1のノンレム睡眠
・RWR:レム睡眠→覚醒→レム睡眠
【0044】
図7および図8に示す各データを解析した例を、図9以降で順に説明する。
図9は、図7のSAS患者D11~D19のデータごとに、ステージ2のノンレム睡眠→覚醒→ステージ1のノンレム睡眠の順序(以下、「2W1」の順序と称する)で睡眠段階が変化した回数と、3回覚醒が連続した場合(「WWW」の順序と称する)の回数とを、比較したものである。
同様に、図10は、図8の健常者D21~D29のデータごとに、「2W1」の順序で睡眠段階が変化した回数と、3回覚醒が連続した「WWW」の順序の回数とを、比較したものである。
【0045】
ここで、図9のSAS患者D11~D19の場合、「2W1」の順序で睡眠段階が変化した回数が、「WWW」の順序で睡眠段階が変化した回数と同じか、それよりも多いことをSAS患者とすると、9人の内の6人のSAS患者D12,D13,D14,D17,D18,D19がSAS患者に該当する。なお、SAS患者D19の場合には、「WWW」の順序での睡眠段階の変化が発生していない。つまり、覚醒が90秒間続く状態が発生していない。
【0046】
一方、図10の健常者D21~D29の場合、9人すべてが、「WWW」の順序で睡眠段階が変化した回数の方が、「2W1」の順序で睡眠段階が変化した回数よりも多い。
したがって、「2W1」の順序で睡眠段階が変化した回数が、「WWW」の順序で睡眠段階が変化した回数と同じか、それよりも多い場合に、SAS患者と判定することで、比較的高い精度でSAS患者の判定が可能になる。例えば図9の例の場合には、SAS患者と判定する正解率が66.7%という高い値になる。また、図10の例の場合には、SAS患者でないと判定する正解率が100%である。
【0047】
なお、90秒間に「2W1」の順序の変化が発生する状態は、90秒間の中間で約30秒間だけ一時的に覚醒になる状態である。一時的に覚醒になる状態は、SAS患者の場合は、無呼吸状態が発生したことに起因して発生する可能性が高い。逆に健常者の場合には、そのような短時間だけの覚醒が発生する頻度は非常に少なく、90秒間に覚醒が連続する「WWW」の順序となる状態が比較的頻繁に発生する。
【0048】
図11は、図7のSAS患者D11~D19のデータごとに、睡眠段階が、ステージ3のノンレム睡眠またはステージ4のノンレム睡眠から、覚醒に変化した状態が発生(以下、「3W/4W」の発生と称する)した回数を示す。
同様に、図12は、図8の健常者D21~D29のデータごとに、「3W/4W」の発生がある回数を示す。
【0049】
この「3W/4W」は、図11の9人のSAS患者D11~D19の内の7人のSAS患者D11,D12,D13,D15,D16,D17,D19に発生している。
一方、図12の健常者D21~D29の場合、9人の内の一人D21だけに、「3W/4W」が発生している。
したがって、「3W/4W」の発生がある場合に、SAS患者と判定することで、高い精度でSAS患者の判定が可能になる。例えば図11の例の場合には、SAS患者と判定する正解率が100%になる。また、図12の例の場合には、SAS患者でないと判定する正解率が89%である。
【0050】
なお、「3W/4W」の発生、つまりステージ3またはステージ4のノンレム睡眠から、いきなり覚醒の睡眠段階への変化は、深い睡眠段階から最も浅い睡眠段階への変化である。この深い睡眠段階から最も浅い睡眠段階への変化は、健常者では稀にしか発生しないのに対して、SAS患者の場合には、深い睡眠段階での睡眠中に、無呼吸となることで発生する可能性がある。
【0051】
図13は、図7の9人のSAS患者D11~D19のデータについて、「2W1」の順序で睡眠段階が変化した回数が、「WWW」の順序で睡眠段階が変化した回数と同じか、それよりも多い場合と、「3W/4W」の発生がある場合のいずれか一方の条件を満たした場合に、SAS患者であると判定した例を示している。この図13の判定は、図6のフローチャートのステップS13で行う判定に相当する。
この図13に示す例の場合には、SAS患者と判定する正解率は、100%になっている。
【0052】
図14は、図8の9人の健常者D21~D29のデータについて、「2W1」の順序で睡眠段階が変化した回数が、「WWW」の順序で睡眠段階が変化した回数未満である場合と、「3W/4W」の発生がない場合のいずれか一方の条件を満たした場合に、SAS患者でないと判定した例を示す。
この図14に示す例の場合には、SAS患者でないと判定する正解率は、89%になる。
【0053】
したがって、本例の睡眠時無呼吸症候群判定装置10によると、睡眠段階の変化から、非常に精度の高い睡眠時無呼吸症候群の患者の判別が可能になる。
なお、ここまで説明した実施の形態例では、非拘束型のマットレスセンサ2の測定データから睡眠段階を取得するようしたが、睡眠段階の取得は、この例に限定されない。例えば、終夜睡眠ポリグラフィー検査(PGS検査)で、被測定者に電極を取り付けて睡眠段階を取得し、その取得した睡眠段階の変化から、本例の睡眠時無呼吸症候群判定装置10が睡眠時無呼吸症候群の患者の判別を行ってもよい。また、拘束型であるスマートウォッチ等のウェアラブル端末の測定データから睡眠段階を取得し、その取得した睡眠段階の変化から、本例の睡眠時無呼吸症候群判定装置10が睡眠時無呼吸症候群の患者の判別を行ってもよい。
【0054】
[6.変形例]
なお、上述した実施の形態例で説明した処理は、好適な一例を示したものであり、実施の形態例で説明したものに限定されるものではない。
例えば、上述した実施の形態例では、睡眠時無呼吸症候群判定装置10は、30秒ごとに睡眠段階を判定し、その30秒ごとの睡眠段階の変化から、SAS患者か否かを判定するようにした。これに対して、睡眠時無呼吸症候群判定装置10は、60秒程度、90秒程度などの比較的長い期間ごとに睡眠段階を判定した結果から、SAS患者か否かを判定してもよい。本実施の形態の睡眠時無呼吸症候群判定装置10では、少なくとも30秒以上の期間ごとに睡眠段階を判定すれば、SAS患者に特有の変化を捉えることができる。
【0055】
また、上述した実施の形態例では、ステージ2のノンレム睡眠→覚醒→ステージ1のノンレム睡眠の順序で睡眠段階が変化した回数と、3回覚醒が連続した場合の回数と、ステージ3のノンレム睡眠またはステージ4のノンレム睡眠から、覚醒に変化した状態の有無とを組み合わせるようにしたが、いずれか一方の判定だけでもSAS患者か否かの判定が可能である。
【0056】
さらに、上述した実施の形態例では、ステージ2のノンレム睡眠→覚醒→ステージ1のノンレム睡眠の順序で睡眠段階が変化した回数と、3回覚醒が連続した場合の回数と、ステージ3のノンレム睡眠またはステージ4のノンレム睡眠の有無を判断するようにしたが、それ以外の睡眠段階の変化から、SAS患者か否かの判定を行うようにしてもよい。
【0057】
図15および図16は、図9図14で説明した例とは別の組み合わせの可能性を示すものである。図15は、図7に示す9人のSAS患者のデータD11~D19に対して、90秒間に、レム睡眠→覚醒→レム睡眠となる状態(「RWR」の状態)や、ステージ1のノンレム睡眠→覚醒→ステージ1のノンレム睡眠となる状態(「1W1」の状態)の発生回数を示している。このように、SAS患者の場合には、レム睡眠やステージ1のノンレム睡眠から、一時的に覚醒となり、その後、元の睡眠段階に戻ることが、それなりの回数発生している。
【0058】
図16は、図8に示す9人の健常者のデータD21~D29に対して、90秒間に、覚醒→覚醒→ステージ1のノンレム睡眠となる状態(「WW1」の状態)の発生回数と、ステージ2のノンレム睡眠→覚醒→覚醒となる状態(「2WW」の状態)の発生回数を示す。
このように、SAS患者の場合には、60秒程度以上連続して覚醒状態になった後、ステージ1のノンレム睡眠になったり、ステージ2のノンレム睡眠から、60秒程度以上連続して覚醒状態になることが、それなりの回数発生している。
【0059】
したがって、レム睡眠やステージ1のノンレム睡眠から、一時的に覚醒となり、その後、元の睡眠段階に戻ることや、60秒程度以上連続して覚醒状態になった後、ステージ1のノンレム睡眠になったり、ステージ2のノンレム睡眠から、60秒程度以上連続して覚醒状態になることを検出して、SAS患者か否かを判定することもできる。
この図15図16に示す判定は単独で行ってもよいが、先に説明した図9図14に示す判定と組み合わせることで、よりSAS患者か否かの判定精度の向上が期待できる。
【0060】
さらに、一実施の形態例でも説明したように、マットレスセンサ2を使って得た生体振動から睡眠段階を判定する点は一例であり、本発明は、様々な手法によって睡眠段階を判定した結果から、同様に睡眠段階の変化を判断して、SAS患者か否かを判定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…ベッド、2…マットレスセンサ、10…睡眠時無呼吸症候群判定装置、11…生体データ取得部、12…生体データ処理部、13…睡眠段階判定部、14…睡眠時無呼吸症候群判定部(SAS判定部)、15…出力部、A…被測定者、C…コンピュータ装置、C1…CPU、C2…ROM、C3…RAM、C4…不揮発性ストレージ、C5…ネットワークインターフェイス表示部、C6…入力装置、C7…表示装置、C8…バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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