(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066966
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】機械学習装置、推定装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20120101AFI20230509BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20230509BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20230509BHJP
G06N 3/02 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
G06Q50/02
G06Q10/04
G06N20/00
G06N3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177864
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】520284218
【氏名又は名称】TESNOLOGY株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002273
【氏名又は名称】弁理士法人インターブレイン
(72)【発明者】
【氏名】近藤 克彦
(72)【発明者】
【氏名】松村 昭彦
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA04
5L049CC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】植物の根の状態を簡便に推定できる機械学習装置及び推定装置を提供する。
【解決手段】機械学習装置は、所定植物を栽培する圃場の土壌データと、圃場の撮影画像から抽出された画像特徴量と、撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方とを記憶する記憶部と、土壌データと、撮影画像から抽出された画像特徴量とから、撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する推定モデルを機械学習により生成するモデル生成部と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定植物を栽培する圃場の土壌データと、前記圃場の撮影画像から抽出された画像特徴量と、前記撮影画像の撮影時点における前記所定植物の根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方とを記憶する記憶部と、
前記土壌データと、前記撮影画像から抽出された前記画像特徴量とから、前記撮影時点における前記所定植物の前記根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する推定モデルを機械学習により生成するモデル生成部と、を備える機械学習装置。
【請求項2】
所定植物を栽培する圃場の土壌データを記憶する記憶部と、
前記圃場の撮影画像を取得する画像取得部と、
前記取得された撮影画像から画像特徴量を抽出する抽出部と、
過去の栽培において前記所定植物を栽培した圃場の土壌データと、前記過去の栽培における前記圃場の撮影画像から抽出された画像特徴量とを入力データとし、前記過去の栽培における前記撮影画像の撮影時点における前記所定植物の根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を出力データとして機械学習された推定モデルを用いて、前記記憶している土壌データと、前記取得された撮影画像から抽出された前記画像特徴量とから、前記取得された撮影画像の撮影時点における前記所定植物の根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する推定部と、を備える推定装置。
【請求項3】
1期目の刈り取りの後に根を残して2期目の栽培が可能な所定植物を栽培する圃場の土壌データと、前記1期目の前記圃場の第1撮影画像から抽出された画像特徴量と、前記第1撮影画像の第1撮影時点における前記所定植物の根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方と、前記2期目の前記圃場の第2撮影画像から抽出された画像特徴量と、前記第2撮影画像の第2撮影時点における前記所定植物の根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方とを記憶する記憶部と、
前記土壌データと、前記第1撮影画像の前記画像特徴量とから、前記第1撮影時点における前記所定植物の根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する第1推定モデルを機械学習により生成し、
前記土壌データと、前記第2撮影画像の前記画像特徴量とから、前記第2撮影時点における前記所定植物の根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する第2推定モデルを機械学習により生成するモデル生成部と、を備える機械学習装置。
【請求項4】
1期目の刈り取りの後に根を残して2期目の栽培が可能な所定植物を栽培する圃場の土壌データを記憶する記憶部と、
前記1期目の前記圃場の第1撮影画像又は前記2期目の前記圃場の第2撮影画像を取得する画像取得部と、
前記第1撮影画像又は前記第2撮影画像から画像特徴量を抽出する抽出部と、
前記第1撮影画像を取得した場合に、過去の栽培において前記所定植物を栽培した圃場の土壌データと、前記過去の栽培における1期目の前記圃場の撮影画像から抽出された画像特徴量とを入力データとし、前記過去の栽培における前記1期目の前記撮影画像の撮影時点における前記所定植物の根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を出力データとして機械学習された第1推定モデルを用いて、前記記憶している土壌データと、前記第1撮影画像から抽出された前記画像特徴量とから、前記第1撮影画像の撮影時点における前記所定植物の根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定し、
前記第2撮影画像を取得した場合に、前記過去の栽培において前記所定植物を栽培した圃場の土壌データと、前記過去の栽培における2期目の前記圃場の撮影画像から抽出された画像特徴量とを入力データとし、前記過去の栽培における前記2期目の前記撮影画像の撮影時点における前記所定植物の根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を出力データとして機械学習された第2推定モデルを用いて、前記記憶している土壌データと、前記第2撮影画像から抽出された前記画像特徴量とから、前記第2撮影画像の撮影時点における前記所定植物の根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する推定部と、を備える推定装置。
【請求項5】
1期目の刈り取りの後に根を残して2期目の栽培が可能な所定植物を栽培する圃場の土壌データと、前記1期目の前記圃場の第1撮影画像から抽出された画像特徴量と、前記第1撮影画像の第1撮影時点における前記所定植物の根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方と、前記2期目の前記圃場の第2撮影画像から抽出された画像特徴量と、前記第2撮影画像の第2撮影時点における前記所定植物の根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方と、前記1期目終了時点の前記所定植物の根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方と、を記憶する記憶部と、
前記土壌データと、前記第1撮影画像の前記画像特徴量とから、前記第1撮影時点における前記所定植物の根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する第1推定モデルを機械学習により生成し、
前記土壌データと、前記第2撮影画像の前記画像特徴量と、前記1期目終了時点の前記所定植物の根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方とから、前記第2撮影時点における前記所定植物の根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する第2推定モデルを機械学習により生成するモデル生成部と、を備える機械学習装置。
【請求項6】
1期目の刈り取りの後に根を残して2期目の栽培が可能な所定植物を栽培する圃場の土壌データを記憶する記憶部と、
前記1期目終了時点の前記圃場の第1撮影画像を取得し、更に前記2期目の前記圃場の第2撮影画像を取得する画像取得部と、
前記第1撮影画像から画像特徴量を抽出し、更に前記第2撮影画像から画像特徴量を抽出する抽出部と、
過去の栽培において前記所定植物を栽培した圃場の土壌データと、前記過去の栽培における1期目の前記圃場の撮影画像から抽出された画像特徴量とを入力データとし、前記過去の栽培における前記1期目の前記撮影画像の撮影時点における前記所定植物の根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を出力データとして機械学習された第1推定モデルを用いて、前記記憶している土壌データと、前記第1撮影画像から抽出された前記画像特徴量とから、前記1期目終了時点における前記所定植物の根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定し、
前記過去の栽培において前記所定植物を栽培した前記圃場の前記土壌データと、前記過去の栽培における2期目の前記圃場の撮影画像から抽出された画像特徴量と、前記過去の栽培における1期目終了時点の前記所定植物の根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方とを入力データとし、前記過去の栽培における前記2期目の前記撮影画像の撮影時点における前記所定植物の根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を出力データとして機械学習された第2推定モデルを用いて、前記記憶している土壌データと、前記第2撮影画像から抽出された前記画像特徴量と、推定された前記1期目終了時点の前記所定植物の前記根の前記成長データ及び前記所定植物の前記根の前記二酸化炭素吸収量の少なくとも一方とから、前記第2撮影画像の撮影時点における前記所定植物の根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する推定部と、を備える推定装置。
【請求項7】
所定植物を栽培する圃場の土壌データと、前記圃場の撮影画像から抽出された画像特徴量と、前記撮影画像の撮影時点における前記所定植物の根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方とを記憶する機能と、
前記土壌データと、前記撮影画像から抽出された前記画像特徴量とから、前記撮影時点における前記所定植物の前記根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する推定モデルを機械学習により生成する機能と、をコンピュータに発揮させるプログラム。
【請求項8】
所定植物を栽培する圃場の土壌データを記憶する機能と、
前記圃場の撮影画像を取得する機能と、
前記取得された撮影画像から画像特徴量を抽出する機能と、
過去の栽培において前記所定植物を栽培した圃場の土壌データと、前記過去の栽培における前記圃場の撮影画像から抽出された画像特徴量とを入力データとし、前記過去の栽培における前記撮影画像の撮影時点における前記所定植物の根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を出力データとして機械学習された推定モデルを用いて、前記記憶している土壌データと、前記取得された撮影画像から抽出された前記画像特徴量とから、前記取得された撮影画像の撮影時点における前記所定植物の根の成長データ及び前記所定植物の前記根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する機能と、をコンピュータに発揮させるプログラム。
【請求項9】
推定された前記二酸化炭素吸収量に基づいて炭素価格を算出する炭素価格算出部を、更に備える請求項2、4又は6に記載の推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の成長を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の地球温暖化に伴い、植物の光合成による大気中の二酸化炭素量を削減するための植樹活動が広く行われている。また、植物の根に炭素固定能力があることが知られており、圃場に植えられた植物の根の長さを正確に把握することが、ひいては炭素吸収量を見積もる上で、重要になると考えられている。
【0003】
特許文献1には、樹木等の細根の分布量やその動態を定量的に把握するための効果的で客観的な土壌中の根圏要素を、目視等人手によることなく自動的に非破壊的に分類する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5078508号公報
【特許文献2】国際公開第2019/097892号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、ある特定の圃場における生育状況を予測する技術であり、広範囲の圃場を対象にする場合、仕組みの導入に多大なコストを要するという問題がある。
【0006】
また、特許文献2には、空撮画像等を利用して、圃場の撮影画像を撮影高度に基づいて分類し、分類された画像群から、圃場、前記圃場の区画、前記圃場における植物について、3D画像データ等を再構築し、さらに、前記圃場条件または前記撮像条件に基づく可視化データへの変換を行う技術が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示された技術は、区画ごとに高度を変えて撮影した画像を用意する必要があり、ドローンなどのUAV(Unmanned Aerial Vehicle)を、1つの圃場に対して複数回飛行させる必要がある。
【0008】
この点を解決するため、衛星で撮影した画像に基づき、大がかりな仕組みを用いることなく、所定の区域に栽培された植物、ひいては根の部分に吸収された二酸化炭素吸収量を把握する技術が求められている。
【0009】
本発明は、上記課題認識に基づいて完成された発明であり、その主たる目的は、植物の根の状態を簡便に推定できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様における機械学習装置は、
所定植物を栽培する圃場の土壌データと、圃場の撮影画像から抽出された画像特徴量と、撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方とを記憶する記憶部と、
土壌データと、撮影画像から抽出された画像特徴量とから、撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する推定モデルを機械学習により生成するモデル生成部と、を備える。
【0011】
本発明のある態様における推定装置は、
所定植物を栽培する圃場の土壌データを記憶する記憶部と、
圃場の撮影画像を取得する画像取得部と、
取得された撮影画像から画像特徴量を抽出する抽出部と、
過去の栽培において所定植物を栽培した圃場の土壌データと、過去の栽培における圃場の撮影画像から抽出された画像特徴量とを入力データとし、過去の栽培における撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を出力データとして機械学習された推定モデルを用いて、記憶している土壌データと、取得された撮影画像から抽出された画像特徴量とから、取得された撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する推定部と、を備える。
【0012】
本発明の別の態様における機械学習装置は、
1期目の刈り取りの後に根を残して2期目の栽培が可能な所定植物を栽培する圃場の土壌データと、1期目の圃場の第1撮影画像から抽出された画像特徴量と、第1撮影画像の第1撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方と、2期目の圃場の第2撮影画像から抽出された画像特徴量と、第2撮影画像の第2撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方とを記憶する記憶部と、
土壌データと、第1撮影画像の画像特徴量とから、第1撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する第1推定モデルを機械学習により生成し、
土壌データと、第2撮影画像の画像特徴量とから、第2撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する第2推定モデルを機械学習により生成するモデル生成部と、を備える。
【0013】
本発明の別の態様における推定装置は、
1期目の刈り取りの後に根を残して2期目の栽培が可能な所定植物を栽培する圃場の土壌データを記憶する記憶部と、
1期目の圃場の第1撮影画像又は2期目の圃場の第2撮影画像を取得する画像取得部と、
第1撮影画像又は第2撮影画像から画像特徴量を抽出する抽出部と、
第1撮影画像を取得した場合に、過去の栽培において所定植物を栽培した圃場の土壌データと、過去の栽培における1期目の圃場の撮影画像から抽出された画像特徴量とを入力データとし、過去の栽培における1期目の撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を出力データとして機械学習された第1推定モデルを用いて、記憶している土壌データと、第1撮影画像から抽出された画像特徴量とから、第1撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定し、
第2撮影画像を取得した場合に、過去の栽培において所定植物を栽培した圃場の土壌データと、過去の栽培における2期目の圃場の撮影画像から抽出された画像特徴量とを入力データとし、過去の栽培における2期目の撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を出力データとして機械学習された第2推定モデルを用いて、記憶している土壌データと、第2撮影画像から抽出された画像特徴量とから、第2撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する推定部と、を備える。
【0014】
本発明のさらに別の態様における機械学習装置は、
1期目の刈り取りの後に根を残して2期目の栽培が可能な所定植物を栽培する圃場の土壌データと、1期目の圃場の第1撮影画像から抽出された画像特徴量と、第1撮影画像の第1撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方と、2期目の圃場の第2撮影画像から抽出された画像特徴量と、第2撮影画像の第2撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方と、1期目終了時点の所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方と、を記憶する記憶部と、
土壌データと、第1撮影画像の画像特徴量とから、第1撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する第1推定モデルを機械学習により生成し、
土壌データと、第2撮影画像の画像特徴量と、1期目終了時点の所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方とから、第2撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する第2推定モデルを機械学習により生成するモデル生成部と、を備える。
【0015】
本発明のさらに別の態様における推定装置は、
1期目の刈り取りの後に根を残して2期目の栽培が可能な所定植物を栽培する圃場の土壌データを記憶する記憶部と、
1期目終了時点の圃場の第1撮影画像を取得し、更に2期目の圃場の第2撮影画像を取得する画像取得部と、
第1撮影画像から画像特徴量を抽出し、更に第2撮影画像から画像特徴量を抽出する抽出部と、
過去の栽培において所定植物を栽培した圃場の土壌データと、過去の栽培における1期目の圃場の撮影画像から抽出された画像特徴量とを入力データとし、過去の栽培における1期目の撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を出力データとして機械学習された第1推定モデルを用いて、記憶している土壌データと、第1撮影画像から抽出された画像特徴量とから、1期目終了時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定し、
過去の栽培において所定植物を栽培した圃場の土壌データと、過去の栽培における2期目の圃場の撮影画像から抽出された画像特徴量と、過去の栽培における1期目終了時点の所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方とを入力データとし、過去の栽培における2期目の撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を出力データとして機械学習された第2推定モデルを用いて、記憶している土壌データと、第2撮影画像から抽出された画像特徴量と、推定された1期目終了時点の所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方とから、第2撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する推定部と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、植物の根の状態を簡便に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図9】試験データ収集フェーズにおける処理過程を示すフローチャートである。
【
図10】実施形態におけるニューラルネットワークの構成図である。
【
図11】実施形態における1期目の教師データのデータ構造図である。
【
図12】実施形態における2期目の教師データのデータ構造図である。
【
図13】推定モデル生成フェーズにおける処理過程を示すフローチャートである。
【
図14】推定モデル利用フェーズにおける処理過程を示す図である。
【
図15】変形例1におけるニューラルネットワークの構成図である。
【
図16】変形例1における2期目の教師データのデータ構造図である。
【
図17】変形例1における3期目の教師データのデータ構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施形態]
カーボンニュートラルであるバイオマスは、二酸化炭素削減策として期待されている。バイオマスの一例であるソルガムは、エタノール生成材料になる。ソルガムは、イネ科の植物である。1ヘクタールで栽培されるソルガムは、葉と茎などで90トンの二酸化炭素を吸収し、根で60トンの二酸化炭素を吸収すると言われる。特に、根は二酸化炭素を地中に保持させる役割を果たす。
【0019】
ここでは、ソルガムを栽培し収穫するまでの間に吸収された二酸化炭素量を把握する仕組みを提供する。人工衛星で、ソルガムを栽培する圃場を上空から撮影し、撮影された衛星画像を使用する。さらに、人工知能の技術を活用して、栽培中のソルガムの成長度合いを推定する。特に、根の成長を測る。この例では、教師有り学習を行うため、教師データの基礎となるデータの収集のために、試験的な栽培を行うものとする。
【0020】
ソルガムの栽培法として3期作は行う。2期目では、1期目の草の刈り取りで残った根から2期目の草を育てる。さらに、3期目では、2期目の草の刈り取りで残った根から3期目の草を育てる。つまり、根を張らせたまま3回草を生育させる。
【0021】
図1は、試験段階の概要を示す図である。
圃場220a、圃場220bおよび圃場220cは、異なる特性の土壌でソルガムを栽培する。生育度合いを知るために、人工衛星302で、圃場220a、圃場220bおよび圃場220cを上方から撮影する。撮影された衛星画像は、画像提供サーバ300へ伝送される。生育管理装置100は、圃場220a、圃場220bおよび圃場220cの衛星画像を画像提供サーバ300から取得する。生育管理装置100は、たとえば圃場220a、圃場220bおよび圃場220cにおける所定植物の生育を管理するために使用される装置である。
【0022】
栽培開始前に、圃場220a、圃場220bおよび圃場220cの土壌データが、圃場端末200から生育管理装置100へ送られる。土壌データは、土壌の特性を表すデータであって、たとえば酸性度、水はけ、肥沃度、粘度などある。
【0023】
また、栽培中は、根の成長状態を表すデータ(以下、「根の成長データ」という)が、圃場端末200から生育管理装置100へ送られる。根の成長データは、たとえば根長、根の重量、根の体積などである。
【0024】
土壌の特性は、ソルガムの育ち方に影響を与える。特に、根の張り方は、土壌の影響を受けやすい。つまり、土壌データと根の成長データには、関連性がある。この例では、圃場220a、圃場220bおよび圃場220cにおいて、2020年に試験栽培がおこなわれて、基礎的なデータが得られたものとする。
【0025】
生育管理装置100は、試験段階で得られたデータを用いて機械学習を行って、根の生育状態を推定するための推定モデルを生成する。
【0026】
図2は、3期栽培の生育期間を示す図である。
1期目の刈り取りの後に根を残して2期目と3期目の栽培が可能な所定植物(たとえば、ソルガム)を対象とする生育について説明する。
【0027】
1期目は、種まきから開始し、70日目、つまり10週目まで栽培するものとする。その間、7日ごとに衛星画像が取得される。そのタイミングで根の計測が行われる。9週目を過ぎたころに実が成り、葉と茎と共に刈り取られる。一部の草は、10週目の撮影と計測のためにそのまま育てられる。後述する変形例1では、1回目に刈り取ったときにも衛星画像を取得し、根の計測を行う。
【0028】
1回目の刈り取りが、2期目の開始となる。2期目も10週目まで栽培するものとする。また、7日ごとに衛星画像が取得され、根の計測が行われる。9週目を過ぎたころに実が成り、葉と茎と共に刈り取られる。一部の草は、10週目の撮影と計測のためにそのまま育てられる。後述する変形例1では、2回目に刈り取ったときにも衛星画像を取得し、根の計測を行う。
【0029】
2回目の刈り取りが、3期目の開始となる。3期目も10週目まで栽培するものとする。また、7日ごとに衛星画像が取得され、根の計測が行われる。9週目を過ぎたころに実が成り、葉と茎と共に刈り取られる。一部の草は、10週目の撮影と計測のためにそのまま育てられる。根は、地中に残る。
【0030】
図3は、運用段階の概要を示す図である。
この例では、2021年に相当する。運用段階でも、土壌データが圃場端末200から生育管理装置100へ送られる。また、
図2に関連して説明したように、各期の各週において同様に衛星画像が取得される。ただし、運用段階では、根の計測を行わなくてもよい。生育管理装置100において、推定モデルを利用して、根の成長データおよび根の二酸化炭素吸収量を求めることができるからである。
【0031】
根の二酸化炭素吸収量(1株当たり)は、根の重量×所定倍率、根の体積×所定倍率で求められる。根の二酸化炭素吸収量は根の長さとの相関関係が成り立つので、根の長さと根の二酸化炭素吸収量を対応付ける対応表や相関関係を示す式から根の二酸化炭素吸収量を求めてもよい。なお、根の二酸化炭素吸収量(単位面積当たり)は、根の二酸化炭素吸収量(1株当たり)×草の密度(株/単位面積)で求めることができる。単位面積は、たとえばヘクタールである。
【0032】
図4は、情報処理のフェーズを示す図である。
試験データ収集フェーズ(S10)では、試験段階(
図1)における実績データを収集する。推定モデル生成フェーズ(S12)では、収集された実績データを教師データとして用いて学習モデルを生成する。この例における学習モデルを、推定モデルという。推定モデル利用フェーズ(S14)では、生成した推定モデルを用いて運用段階(
図3)で根の成長データおよび根の二酸化炭素吸収量を求める。
【0033】
植物の種類によって根の成長や二酸化炭素吸収量が異なるので、特定の植物における成長特性を推定モデルに反映させる。ソルガムの栽培に関しては、ソルガム用の推定モデルが生成される。他の植物に関しては、その植物用の推定モデルが生成される。
【0034】
また、1期目と2期目と3期目では、草の生育の仕方が異なる。そのため、それぞれの生育の仕方が反映された別々の推定モデルを生成する。1期目用の推定モデルを「第1推定モデル」という。2期目用の推定モデルを「第2推定モデル」という。3期目用の推定モデルを「第3推定モデル」という。なお、この例では、機械学習にニューラルネットワークを用いる。ニューラルネットワークを用いた機械学習の処理は、一般的なものであってもよい。また、形態素分析に代表される自然言語処理など、ニューラルネットワーク以外の手段を機械学習に用いてもよい。
【0035】
図5は、生育管理装置100の機能ブロック図である。
生育管理装置100は、試験データ収集フェーズ(S10)と推定モデル生成フェーズ(S12)における処理を行い、機械学習によって推定モデルを生成する機械学習装置の機能を有する。さらに、生育管理装置100は、推定モデル利用フェーズ(S14)において、衛星撮影を取得して、推定モデルで根の成長データと根の二酸化炭素吸収量を求める推定装置の機能を有する。
【0036】
生育管理装置100の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)および各種コプロセッサ(Coprocessor)などの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。図示した各ブロックは、主に機能単位のブロックを示している。各ブロックは、記憶装置に記憶されているプログラムを演算器に実行させることによって実現してもよい。
【0037】
生育管理装置100は、ユーザインターフェース処理部102、データ処理部104、通信処理部108およびデータ格納部106を含む。ユーザインターフェース処理部102は、マウスやタッチパネルなどを介してユーザからの操作を受け付けるほか、画像表示や音声出力など、ユーザインターフェース処理を担当する。通信処理部108は、ネットワークや近距離無線通信などを介した通信処理を担当する。データ格納部106は各種データを格納する。データ処理部104は、ユーザインターフェース処理部102と通信処理部108により取得されたデータおよびデータ格納部106に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部104は、ユーザインターフェース処理部102、通信処理部108およびデータ格納部106のインターフェースとしても機能する。
【0038】
ユーザインターフェース処理部102は、ユーザの操作によってデータを入力する入力部122とユーザへ提供するデータを出力する出力部120を有する。
【0039】
通信処理部108は、各種データを送信する送信部180と各種データを受信する受信部182を含む。
【0040】
データ処理部104は、土壌データ取得部140、画像取得部142、特徴量抽出部144、根データ取得部146、教師データ生成部148、推定モデル生成部150および根成長推定部154を含む。
土壌データ取得部140は、たとえば送信部180を用いて圃場端末200から土壌データを取得する。土壌データ取得部140は、入力部122において受け付けられた土壌データを取得してもよい。
【0041】
画像取得部142は、圃場220の撮影画像(この例では、衛星画像)を取得する。この例で、画像取得部142は、送信部180から画像提供サーバ300に対して圃場220の位置と撮影日を指定した衛星画像の要求を送信して、撮影された衛星画像を受信部182で受信する。具体的には、試験段階および運用段階において、圃場220a、圃場220bおよび圃場220cの1期目の各週、2期目の各週および3期目の各週の撮影タイミングにおいて、その圃場220を撮影した衛星画像が取得される。
【0042】
特徴量抽出部144は、取得された圃場220の撮影画像(この例では、衛星画像)から特徴量を抽出する。生育管理装置100は、衛星画像から抽出される特徴量(以下、「画像特徴量」という)を用いる。画像特徴量は、たとえば圃場範囲の平均色、圃場範囲の緑色の割合、圃場範囲の緑色の濃さの度合い、草丈などである。植物が成長すれば、葉や茎が大きくなるので、圃場範囲の平均色は土色から緑色へ変化する。また、植物の成長に伴って、圃場範囲の緑色の割合が多くなり、緑色の濃さの度合いも強くなる。さらに、植物の成長に伴って、草丈も長くなる。このように、葉や茎が成長すれば、それにつれて根部も大きくなる。したがって、画像特徴量は、根の成長データと相関関係がある。さらに、画像特徴量は、根の成長データと関連する根の二酸化炭素吸収量とも相関関係がある。具体的には、特徴量抽出部144は、1期目に取得された撮影画像(以下、「第1撮影画像」という)、2期目に取得された撮影画像(以下、「第2撮影画像」という)および3期目に取得された撮影画像(以下、「第3撮影画像」という)から画像特徴量を抽出する。たとえば、画素の色をRGB形式で表す場合、圃場範囲の平均色のR値は、圃場範囲に含まれる画素のR値の平均値であり、圃場範囲の平均色のG値は、圃場範囲に含まれる画素のG値の平均値であり、圃場範囲の平均色のR値は、圃場範囲に含まれる画素のR値の平均値である。平均色は、画像の色の特徴を示す指標の例である。平均色の代わりに、色調パターン、コントラストなど、平均化以外の方法でパターン化した指標(画像の色の特徴を示す指標)を用いるようにしてもよい。
【0043】
根データ取得部146は、圃場端末200から根の成長データを取得する。受信部182が、インターネットやLAN(Local Area Network)などのネットワーク通信で根の成長データを受信してもよいし、近距離無線通信で根の成長データを受信してもよい。あるいは、根データ取得部146は、入力部122において受け付けられた根の成長データを取得してもよい。
【0044】
教師データ生成部148は、土壌データと、画像特徴量と、根データ(根の成長データおよび根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方)とに基づいて、機械学習に用いられる教師データを生成する。推定モデル生成部150は、学習エンジン152を含む。推定モデル生成部150は、学習エンジン152を用いて教師データに基づく学習モデル(推定モデル)を生成する。学習モデルがニューラルネットワークを使用する場合、入力変数である土壌データおよび画像特徴量の各指標に対応する入力ノードと、出力変数である根データの指標に対応する出力ノードと、中間ノードとを備えたニューラルネットワークを使って、ノード間の連結の強さを示す重みデータを生成する。ニューラルネットワークの構成例については、
図10に関連して後述する。また、ニューラルネットワークを利用する場合には、適用データとして用意された入力変数の土壌データおよび画像特徴量の各指標値を、その指標に対応する入力ノードに設定して、重みデータに基づいて出力ノードから根データの指標値が得られる。
【0045】
つまり、推定モデル生成部150は、土壌データと、撮影画像(この例では、衛星画像)から抽出された画像特徴量(この例では、圃場範囲の平均色)とから、その撮影画像の撮影時点における所定植物(この例では、ソルガム)の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する推定モデルを機械学習により生成する。より具体的に言えば、推定モデル生成部150は、1期目に関して、土壌データと、第1撮影画像の画像特徴量とから、第1撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する第1推定モデルを機械学習により生成する。また、推定モデル生成部150は、2期目に関して、土壌データと、第2撮影画像の画像特徴量とから、第2撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する第2推定モデルを機械学習により生成する。さらに、推定モデル生成部150は、3期目に関して、土壌データと、第3撮影画像の画像特徴量とから、第3撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する第2推定モデルを機械学習により生成する。
【0046】
根成長推定部154は、推定モデル利用フェーズ(S14)で根の成長データを推定する。根成長推定部154は、推定モデル利用部156を含む。推定モデル利用部156は、根の成長データの推定のために、推定モデルを利用する。推定モデル利用部156は、推定対象の圃場220の土壌データと、取得された撮影画像(この例では、衛星画像)から抽出された画像特徴量を入力変数として、推定モデルに適用する。
【0047】
つまり、根成長推定部154は、過去の栽培(この例では、試験段階)において所定植物(この例では、ソルガム)を栽培した圃場220の土壌データと、過去の栽培における圃場220の撮影画像(この例では、衛星画像)から抽出された画像特徴量とを入力データとし、過去の栽培における撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を出力データとして機械学習された推定モデルを用いる。そして、根成長推定部154は、土壌データ記憶部160に記憶している対象圃場の土壌データと、画像取得部142で取得された撮影画像から抽出された画像特徴量とから、その撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する。
【0048】
より具体的に言えば、根成長推定部154は、運用段階の1期目において第1撮影画像を取得した場合に、過去の栽培(この例では、試験段階)において所定植物(この例では、ソルガム)を栽培した圃場220の土壌データと、過去の栽培における1期目の圃場220の撮影画像から抽出された画像特徴量とを入力データとし、過去の栽培における1期目の撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を出力データとして機械学習された第1推定モデルを用いる。そして、根成長推定部154は、土壌データ記憶部160に記憶している対象圃場の土壌データと、第1撮影画像から抽出された画像特徴量とから、第1撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する。
【0049】
さらに、根成長推定部154は、運用段階の2期目において第2撮影画像を取得した場合に、過去の栽培(この例では、試験段階)において所定植物(この例では、ソルガム)を栽培した圃場220の土壌データと、過去の栽培における2期目の圃場の撮影画像から抽出された画像特徴量とを入力データとし、過去の栽培における2期目の撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を出力データとして機械学習された第2推定モデルを用いる。そして、根成長推定部154は、土壌データ記憶部160に記憶している対象圃場の土壌データと、第2撮影画像から抽出された画像特徴量とから、第2撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する。
【0050】
加えて、根成長推定部154は、運用段階の3期目において第3撮影画像を取得した場合に、過去の栽培(この例では、試験段階)において所定植物(この例では、ソルガム)を栽培した圃場220の土壌データと、過去の栽培における3期目の圃場の撮影画像から抽出された画像特徴量とを入力データとし、過去の栽培における3期目の撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を出力データとして機械学習された第3推定モデルを用いる。そして、根成長推定部154は、土壌データ記憶部160に記憶している対象圃場の土壌データと、第3撮影画像から抽出された画像特徴量とから、第3撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する。
【0051】
データ格納部106は、土壌データ記憶部160、画像記憶部162、特徴量データ記憶部164、根データ記憶部166、教師データ記憶部168および推定モデル記憶部170を含む。
土壌データ記憶部160は、土壌データを記憶する。土壌データ記憶部160については、
図6に関連して後述する。画像記憶部162は、年と圃場220と撮影日時の組み合わせに対応付けて撮影画像(この例では、衛星画像)を記憶する。なお、撮影日時は、各圃場220の期と週を特定できる。特徴量データ記憶部164は、特徴量データを記憶する。特徴量データについては、
図7に関連して後述する。根データ記憶部166は、根データを記憶する。根データ記憶部166の構成については、
図8に関連して後述する。教師データ記憶部168は、教師データを記憶する。教師データについては、
図11、
図12に関連して後述する。推定モデル記憶部170は、各圃場220における各期の推定モデルを記憶する。データ格納部106は、各圃場220について地理的位置と範囲、所定植物(この例では、ソルガム)の密度(株/単位面積)などの圃場データを記憶する圃場データ記憶部(不図示)を含む。
【0052】
つまり、データ格納部106は、所定植物(この例では、ソルガム)を栽培する圃場220の土壌データと、圃場220の撮影画像(この例では、衛星画像)から抽出された画像特徴量と、その撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方とを記憶する。
【0053】
より詳しく言うと、データ格納部106は、1期目の刈り取りの後に根を残して2期目と3期目の栽培が可能な所定植物(この例では、ソルガム)を栽培する圃場220の土壌データと、1期目の圃場220の第1撮影画像から抽出された画像特徴量と、第1撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方と、2期目の圃場220の第2撮影画像から抽出された画像特徴量と、第2撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方とを記憶する。
【0054】
図6は、土壌データ記憶部160のデータ構造図である。
土壌データ記憶部160は、たとえば図示したテーブルを記憶する。このテーブルは、年と圃場IDの組み合わせ毎にレコードを有する。レコードは、テーブルにおける「行」に相当する。また、このテーブルは、例えば、年と圃場IDの組み合わせ毎に、酸性度、水はけ、肥沃度および粘度の項目を有する。項目は、テーブルにおける「列」に相当し、「カラム」ということもある。
【0055】
図7は、特徴量データとして成長過程における時期と平均色を示した場合のデータ構造図を示している。
図7に示す特徴量データは、テーブル形式で示している。特徴量データは、年と圃場IDの組み合わせ毎に、各期における平均色を示したレコードを有する。言い換えると、特徴量データは、年、圃場ID、各期における週毎の平均色をデータとして設定されている。すなわち、各期の各週のフィールドには、圃場範囲の平均色(画像特徴量の例)が設定されている。画像特徴量として圃場範囲の緑色の濃さの度合いを用いる場合には、圃場範囲の緑色の濃さの度合いが各期の各週のフィールドに設定される。
図7においては、画像特徴量を平均色とした場合の例を示したが、画像特徴量として草丈を用いる場合には、草丈が各期の各週のフィールドに設定される。フィールドは、データ値の設定領域に相当し、「セル」ということもある。
【0056】
図8は、根データ記憶部166が保持するデータ構造の一例を示す図である。
すなわち、根データ記憶部166は、たとえば
図8に示したテーブルを記憶する。このテーブルは、年と圃場IDの組み合わせ毎にレコードを有する。また、このテーブルは、年、圃場ID、各期における週毎の根長(根の生長データの例)と根の二酸化炭素吸収量をデータとして設定されている。根の生長データとして根の重量を用いる場合には、根長に代えて根の重量が各期の各週のフィールドに設定される。根の生長データとして根の体積を用いる場合には、根長に代えて根の体積が各期の各週のフィールドに設定される。
【0057】
図9は、試験データ収集フェーズ(S10)における処理過程を示すフローチャートである。
土壌データ取得部140は、各圃場220から土壌データを取得する(S20)。土壌データ取得部140は、受信部182によって圃場端末200から受信された圃場220の土壌データを取得してもよいし、入力部122において受け付けられた圃場220の土壌データを取得してもよい。
【0058】
生育管理装置100は、各圃場220の1期目の各週の衛星画像と根の生長データを取得する(S22)。具体的には、画像取得部142は、通信処理部108を用いて、画像提供サーバ300から衛星画像を受信する。衛星画像は、画像記憶部162に記憶される。このとき、特徴量抽出部144は、衛星画像から画像特徴量を抽出し、特徴量データ記憶部164に記憶する。また、根データ取得部146は、各圃場220の1期目の各週における根の成長データを取得する。具体的には、根データ取得部146は、通信処理部108において受信された根の成長データを取得してもよいし、入力部122において受け付けられた根の成長データを取得してもよい。
【0059】
S24の処理については、変形例1に関連して後述する。実施形態では、S24の処理を省いてもよい。
【0060】
生育管理装置100は、各圃場220の2期目の各週の衛星画像と根の生長データを取得する(S26)。データの取得処理と記憶処理については、S22の場合と同様である。
【0061】
S28の処理については、変形例1に関連して後述する。実施形態では、S28の処理を省いてもよい。
【0062】
生育管理装置100は、各圃場220の3期目の各週の衛星画像と根の生長データを取得する(S30)。データの取得処理と記憶処理については、S22の場合と同様である。
【0063】
図10は、実施形態におけるニューラルネットワークの構成図である。
実施形態におけるニューラルネットワークの入力層において、土壌データの例である酸性度、水はけ、肥沃度および粘度、画像特徴量の例である圃場範囲の平均色を入力ノードとする。また、ニューラルネットワークの中間層に、複数の中間ノードを設ける。さらに、ニューラルネットワークの出力層において、根の生長データの例である根長と根の二酸化炭素吸収量を出力ノードとする。根長および根の二酸化炭素吸収量のいずれか一方のみを出力ノードとしてもよい。入力層の入力ノードと中間層の中間ノードの間は、全結合である。また、中間層の中間ノードと出力層の出力ノードの間も、全結合である。このニューラルネットワークは、土壌データの値と画像特徴量の値が定まると、それらに応じて根長と根の二酸化炭素吸収量が定まる推定モデルを想定している。このニューラルネットワークは、1期目の第1推定モデル、2期目の第2推定モデルおよび3期目の第3推定モデルにおいて共に使用される。
【0064】
図11は、実施形態における1期目の教師データのデータ構造図である。
1期目の教師データは、1期目の第1推定モデルを生成するために準備される。この例における教師データは、テーブル形式である。教師データは、年、圃場ID、期および週の組み合わせ毎にレコードを有する。また、各レコードは、
図10に示した入力ノードに対応する酸性度、水はけ、肥沃度、粘度および圃場範囲の平均色の項目と、出力ノードに対応する根長および根の二酸化炭素吸収量の項目を有する。1つのレコードは、教師データにおける1つのサンプルに相当する。年、圃場ID、期および週の各組み合わせに応じて、教師データにおける各サンプルを特定可能であるものとする。
【0065】
たとえば、図示した1番目のレコードは、2020年、圃場ID:A1、1期目および第1週の組み合わせに対応する。2020年の圃場ID:A1の圃場220aでは、酸性度がB1であり、水はけがC1であり、肥沃度がD1であり、粘度がE1であることを示している。これらの値は、教師データ生成部148によって、土壌データ記憶部160からコピーされる。また、2020年の圃場ID:A1の圃場220aにおける1期目の第1週に撮影された衛星画像の平均色がF1-1-1であったことを示している。この値は、教師データ生成部148によって、特徴量データ記憶部164からコピーされる。さらに、また、2020年の圃場ID:A1の圃場220aにおける1期目の第1週に計測された根長がG1-1-1であり、その根長に基づいて算出された根の二酸化炭素吸収量がH1-1-1であったことを示している。これらの値は、教師データ生成部148によって、根データ記憶部166からコピーされる。
【0066】
この1期目の教師データを用いて、ニューラルネットワークで最適解となる重みデータが学習される。学習された重みデータは、推定モデル記憶部170に記憶される。ニューラルネットワークを用いた学習の手順自体は、従来技術であってもよい。
【0067】
図12は、実施形態における2期目の教師データのデータ構造図である。
2期目の教師データは、2期目の第2推定モデルを生成するために準備される。2期目の教師データの構成は、
図11に示した1期目の教師データの場合と同様である。たとえば、図示した1番目のレコードは、2020年、圃場ID:A1、2期目および第1週の組み合わせに対応する。3期目の教師データも同様の構成で、3期目に関する値が設定される。
【0068】
図13は、推定モデル生成フェーズ(S12)における処理過程を示すフローチャートである。
教師データ生成部148は、上述のとおり、土壌データ記憶部160と特徴量データ記憶部164と根データ記憶部166を参照して、1期目の教師データ(
図11)を生成する(S40)。
【0069】
推定モデル生成部150は、1期目の教師データを入力して、学習エンジン152による学習処理を起動する(S42)。学習エンジン152は学習処理を実行し、第1推定モデルを生成する(S44)。重みデータを含む第1推定モデルは、推定モデル記憶部170に記憶される。
【0070】
教師データ生成部148は、同様に2期目の教師データを生成する(S46)。推定モデル生成部150は、2期目の教師データを入力して、学習エンジン152による学習処理を起動する(S48)。学習エンジン152は学習処理を実行し、第2推定モデルを生成する(S50)。重みデータを含む第2推定モデルは、推定モデル記憶部170に記憶される。
【0071】
教師データ生成部148は、同様に3期目の教師データを生成する(S52)。推定モデル生成部150は、3期目の教師データを入力して、学習エンジン152による学習処理を起動する(S54)。学習エンジン152は学習処理を実行し、第3推定モデルを生成する(S56)。重みデータを含む第3推定モデルは、推定モデル記憶部170に記憶される。
【0072】
この処理は、推定モデル利用フェーズの前に行われる。この例では、2020年の3期目終了後から2021年の種まきの頃までの間に行われる。このあと、運用段階に移る。
【0073】
図14は、推定モデル利用フェーズ(S14)における処理過程を示す図である。
画像取得部142は、各圃場220の撮影タイミング(
図2参照)を待つ(S60)。画像取得部142は、当該圃場の衛星画像を取得する(S62)。衛星画像の取得方法は、試験データ収集フェーズ(
図9)の場合と同様である。特徴量抽出部144は、画像特徴量を抽出する(S64)。画像特徴量の抽出についても、試験データ収集フェーズ(
図9)の場合と同様である。
【0074】
根成長推定部154は、そのときの期に合わせて推定モデルを選択する(S66)。つまり、根成長推定部154は、撮影タイミングが1期目であれば第1推定モデルを選択し、撮影タイミングが2期目であれば第2推定モデルを選択し、撮影タイミングが3期目であれば第3推定モデルを選択する。
【0075】
推定モデル利用部156は、その圃場220の土壌データと、S62で抽出された画像特徴量を、推定モデルに適用する。つまり、推定モデル利用部156は、推定モデルによる演算を行うニューラルネットワークの入力ノードにこれらの値を設定する(S68)。根成長推定部154は、推定モデルの演算結果として出力ノードから根長と根の二酸化炭素吸収量の値を得る(S70)。
【0076】
そして、出力部120は、根長と根の二酸化炭素吸収量を出力(たとえば、ディスプレイへの表示)する(S72)。送信部180は、根長と根の二酸化炭素吸収量を圃場端末200へ送信してもよい。
【0077】
実施形態では、機械学習によって根の成長データや根の二酸化炭素排出量を推定する仕組みが得られる。特に、1期目で成長した根が残された場合に、2期目において根がどのように成長を続けるか、容易には把握できないという問題を解決した。
【0078】
[変形例1]
2期目では、1期目から引き継いだ根を更に成長させることになる。したがって、2期目に関して、1回目の刈り取りが早かったなどの理由から小さな根から始まる場合もあるし、1回目の刈り取りが遅かったなどの理由から大きな根から始まる場合もある。2期目の開始時における根の状態が一律であると想定することは、2期目の根の成長を正しく推定するために好ましくない面もある。
【0079】
1回目の刈り取り時は、1期目の終了時点であり、且つ2期目の開始時点でもある。変形例1では、第1推定モデルを使って1回目の刈り取り時における根の成長データを推定する。そして、推定された根の成長データを、2期目における根の状態の初期値として、2期目における根の成長データの推測要素に加える。
【0080】
図15は、変形例1におけるニューラルネットワークの構成図である。
変形例1の第1推定モデルは、実施形態と同様のニューラルネットワークを用いて生成される。変形例1の第2推定モデルと第3推定モデルは、
図15に示したニューラルネットワークを用いて生成される。
【0081】
変形例1におけるニューラルネットワーク(
図15)では、前期終了時点における根の成長データ又は根の二酸化炭素吸収量に相当する入力ノードが追加される。この例では、前期終了時点の根長の入力ノードが追加される。中間ノードと出力ノードは、変わらない。全結合である点も、実施形態の場合と同様である。
【0082】
図2で説明した1回目の刈り取り時において、各週の撮影タイミングの場合と同様に、撮影画像の取得と根の計測が行われる。また、2回目の刈り取り時においても、各週の撮影タイミングの場合と同様に、撮影画像の取得と根の計測が行われる。撮影画像からの画像特徴量の抽出も、各週の撮影タイミングの場合と同様に行われる。データの記憶についても、各週の撮影タイミングの場合と同様である。
【0083】
変形例1における1期目の教師データは、実施形態の場合(
図11)と同様であり、第1推定モデルの生成も同様である。
【0084】
図16は、変形例1における2期目の教師データのデータ構造図である。
変形例1における2期目の教師データでは、1期目終了時点の根長の項目が追加される。1回目の刈り取り時に計測された根長が、この項目のフィールドに設定される。
【0085】
図17は、変形例1における3期目の教師データのデータ構造図である。
同様に、変形例1における3期目の教師データでは、2期目終了時点の根長の項目が追加される。2回目の刈り取り時に計測された根長が、この項目のフィールドに設定される。
【0086】
そのため、
図9に示した試験データ収集フェーズの処理過程において、S22の処理の後に、生育管理装置100は、各圃場220の1回目の刈り取り時の衛星画像・根の成長データを取得する(S24)。S26の処理の後に、生育管理装置100は、各圃場220の2回目の刈り取り時の衛星画像・根の成長データを取得する(S28)。衛星画像の取得方法、衛星画像からの画像特徴量の抽出方法、根の成長データの取得方法などは、各週の撮影タイミングの場合と同様である。
【0087】
推定モデル生成フェーズ(S12)における処理に関して、
図13のS46で、1期目終了時点(1回目の刈り取り時)の根長を加えた2期目の教師データ(
図16)を生成する。S48で、推定モデル生成部150は、この2期目の教師データを入力して、変形例2における第2推定モデルを生成する。S52で、2期目終了時点(2回目の刈り取り時)の根長を加えた3期目の教師データ(
図17)を生成する。S54で、推定モデル生成部150は、この3期目の教師データを入力して、変形例2における第3推定モデルを生成する。
【0088】
推定モデル利用フェーズ(S14)における処理に関して、
図14のS66で第1推定モデルが選択されたときは、実施形態と同様に処理する。
【0089】
変形例1では、受信部182が、圃場端末200から1回目の刈り取りの時に通知を受信する。1回目の刈り取りの通知を受けて、S62と同様に画像取得部142は、その圃場220の衛星画像を取得し、S64と同様に特徴量抽出部144は、画像特徴量を抽出する。そして、推定モデル利用部156は、その圃場220の土壌データと、抽出された画像特徴量を、第1推定モデルに適用し、根成長推定部154は、1回目の刈り取り時点における根長と根の二酸化炭素吸収量の値を得る。
【0090】
この後2期目に入って、S66で第2推定モデルが選択されたときに、推定モデル利用部156は、1回目の刈り取り時点における根長を、ニューラルネットワークにおける前期終了時点の根長の入力ノードに設定する。つまり、推定モデル利用部156は、土壌データと、画像特徴量とに加えて、1回目の刈り取り時点における根長を第2推定モデルに適用し、根成長推定部154は、1回目の刈り取り時点における根長が考慮された2期目の根長と根の二酸化炭素吸収量の値を得る。
【0091】
また、受信部182は、圃場端末200から2回目の刈り取りの時に通知を受信する。2回目の刈り取りの通知を受けて、S62と同様に画像取得部142は、当該圃場の衛星画像を取得し、S64と同様に特徴量抽出部144は、画像特徴量を抽出する。そして、推定モデル利用部156は、その圃場220の土壌データと、抽出された画像特徴量を、第2推定モデルに適用し、根成長推定部154は、2回目の刈り取り時点における根長と根の二酸化炭素吸収量の値を得る。
【0092】
この後3期目に入って、S66で第3推定モデルが選択されたときに、推定モデル利用部156は、2回目の刈り取り時点における根長を、ニューラルネットワークにおける前期終了時点の根長の入力ノードに設定する。つまり、推定モデル利用部156は、土壌データと、画像特徴量とに加えて、2回目の刈り取り時点における根長を第3推定モデルに適用し、根成長推定部154は、2回目の刈り取り時点における根長が考慮された3期目の根長と根の二酸化炭素吸収量の値を得る。
【0093】
整理すると、データ格納部106は、1期目の教師データ(
図11)として、土壌データと、1期目の圃場の第1撮影画像から抽出された画像特徴量と、第1撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方とを記憶する。データ格納部106は、2期目の教師データ(
図16)として、土壌データと、2期目の圃場の第2撮影画像から抽出された画像特徴量と、第2撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方と、1期目終了時点の所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方とを記憶する。データ格納部106は、3期目の教師データ(
図17)として、土壌データと、3期目の圃場の第3撮影画像から抽出された画像特徴量と、第3撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方と、2期目終了時点の所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方とを記憶する。
【0094】
推定モデル生成部150は、
図10のニューラルネットワークと1期目の教師データ(
図11)を用いて、土壌データと、第1撮影画像の画像特徴量とから、1撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する第1推定モデルを機械学習により生成する。推定モデル生成部150は、
図15のニューラルネットワークと2期目の教師データ(
図16)を用いて、土壌データと、第2撮影画像の画像特徴量と、1期目終了時点の所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方とから、第2撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する第2推定モデルを機械学習により生成する。さらに、推定モデル生成部150は、
図15のニューラルネットワークと3期目の教師データ(
図17)を用いて、土壌データと、第3撮影画像の画像特徴量と、2期目終了時点の所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方とから、第3撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する第3推定モデルを機械学習により生成する。
【0095】
運用段階で2期目の推定を行う前提として、根成長推定部154は、第1推定モデルを用いて、土壌データと、1期目終了時点の第1撮影画像から抽出された画像特徴量とから、1期目終了時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する。そして、2期目の推定で、根成長推定部154は、第2推定モデルを用いて、土壌データと、第2撮影画像から抽出された画像特徴量と、推定された1期目終了時点の所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方とから、第2撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する。
【0096】
更に3期目の推定を行う前提として、根成長推定部154は、第2推定モデルを用いて、土壌データと、2期目終了時点の第2撮影画像から抽出された画像特徴量とから、2期目終了時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する。そして、3期目の推定で、根成長推定部154は、第3推定モデルを用いて、土壌データと、第3撮影画像から抽出された画像特徴量と、推定された2期目終了時点の所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方とから、第3撮影画像の撮影時点における所定植物の根の成長データ及び所定植物の根の二酸化炭素吸収量の少なくとも一方を推定する。
【0097】
2期目の最初の根の状態は、土の中なのでわからない。そこで、第1推定モデルで1期目の最後の根の状態を推定して、それを第2推定モデルに取り込むようにした。さらに、3期目の最初の根の状態も、土の中なのでわからない。そこで、第2推定モデルで2期目の最後の根の状態を推定して、それを第3推定モデルに取り込むようにした。これらの工夫は、根を残したまま多期作を行える植物特有の課題であって、1期作の作物や樹木ではない事情に関する。特に、このような植物の根に着目することは、従来なかった。2期目や3期目の根の状態を推測する動機は、発明者の優れた思想によるものであり、多期作物(ex.ソルガム)の根を活用した二酸化炭素削減の事業推進に大きく寄与する。
【0098】
[変形例2]
実施形態では、生育管理装置100は、機械学習によって推定モデルを生成する機械学習装置の機能と、推定モデルで根の成長データと根の二酸化炭素吸収量を求める推定装置の機能を有した。ただし、機械学習装置と推定装置を別に設けてもよい。
【0099】
図18は、生育管理システムの構成図である。
機械学習装置190は、試験データ収集フェーズ(S10)と推定モデル生成フェーズ(S12)における処理を行い、機械学習によって推定モデルを生成する。推定装置192は、推定モデル利用フェーズ(S14)において、衛星撮影を取得して、推定モデルを用いて根の成長データと根の二酸化炭素吸収量を求める。そのため、推定モデル生成フェーズ(S12)から推定モデル利用フェーズ(S14)へ移る前に、機械学習装置190で生成された推定モデルを推定装置192へ移すようにする。機械学習装置190は、たとえば推定モデルを提供するサービス業者によって使用される。推定装置192は、たとえば推定モデルを使用する農業者によって使用される。
【0100】
[変形例3]
生育管理装置100は、推定された根の二酸化炭素吸収量(1株当たり)に単位量当たりの炭素価格(レート)を乗じて炭素価格(1株当たり)を算出する炭素価格算出部(不図示)を設けるようにしてもよい。炭素価格算出部は、推定された根の二酸化炭素吸収量(単位面積当たり)に単位量当たりの炭素価格(レート)を乗じて炭素価格(単位面積当たり)を算出してもよい。出力部120は、炭素価格(1株当たり)又は炭素価格(単位面積当たり)を出力(たとえば、ディスプレイへの表示)してもよい。送信部180は、炭素価格(1株当たり)又は炭素価格(単位面積当たり)を圃場端末200へ送信してもよい。
【0101】
推定装置192も同様に、推定された根の二酸化炭素吸収量(1株当たり)に単位量当たりの炭素価格(レート)を乗じて炭素価格(1株当たり)を算出する炭素価格算出部を設けるようにしてもよい。炭素価格算出部は、推定された根の二酸化炭素吸収量(単位面積当たり)に単位量当たりの炭素価格(レート)を乗じて炭素価格(単位面積当たり)を算出してもよい。出力部120は、炭素価格(1株当たり)又は炭素価格(単位面積当たり)を出力(たとえば、ディスプレイへの表示)してもよい。送信部180は、炭素価格(1株当たり)又は炭素価格(単位面積当たり)を圃場端末200へ送信してもよい。
【0102】
[その他の変形例]
衛星画像に代えて、圃場220の上空を飛行するドローンのカメラで、圃場220を上方から撮影したドローン画像を用いてもよい。ドローン画像の場合、衛星画像よりも画素が多いので、圃場範囲の緑色の割合を求めやすいという利点がある。
【0103】
衛星画像に代えて、圃場220に設置されたカメラ(以下、「設置カメラ」という)で、圃場220の斜め上方から、あるいは水平方向から撮影したカメラ画像を用いてもよい。水平方向から撮影されたカメラ画像は草丈を求めやすいという利点がある。
【0104】
実施形態と変形例では、主に根の成長データと根の二酸化炭素吸収量の両方を求める例を示したが、根の成長データと根の二酸化炭素吸収量の一方のみを用いてもよい。また、根の成長データと根の二酸化炭素吸収量は相関が強いので、実施形態と変形例における指標としての両者を置き換えて使用するようにしてもよい。
【0105】
試験段階では、圃場220を複数の区域に分割して、各区域を1つの圃場220と見立て、刈り取りの時期や土壌を変えて試験栽培を行うようにしてもよい。このようにすれば、教師データに沢山のサンプルを含めることができる。
【0106】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0107】
100 生育管理装置、200 圃場端末、220 圃場、300 画像提供サーバ、302 人工衛星、102 ユーザインターフェース処理部、120 出力部、122 入力部、108 通信処理部、180 送信部、182 受信部、104 データ処理部、140 土壌データ取得部、142 画像取得部、144 特徴量抽出部、146 根データ取得部、148 教師データ生成部、150 推定モデル生成部、152 学習エンジン、154 根成長推定部、156 推定モデル利用部、106 データ格納部、160 土壌データ記憶部、162 画像記憶部、164 特徴量データ記憶部、166 根データ記憶部、168 教師データ記憶部、170 推定モデル記憶部、190 機械学習装置、192 推定装置