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特開2023-66969汚泥処理システム、制御装置、汚泥処理方法およびプログラム
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  • 特開-汚泥処理システム、制御装置、汚泥処理方法およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066969
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】汚泥処理システム、制御装置、汚泥処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/14 20190101AFI20230509BHJP
【FI】
C02F11/14 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177868
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】菊地 凱
(72)【発明者】
【氏名】木田 卓
(72)【発明者】
【氏名】松元 洋一
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA03
4D059BE25
4D059BE37
4D059BE57
4D059BE59
4D059BJ00
4D059CC01
4D059DB11
4D059EA01
4D059EA20
4D059EB11
(57)【要約】
【課題】最適な添加量の凝集剤を容易に添加することができる。
【解決手段】被処理汚泥が流入する水槽100と、水槽100に貯留された汚泥に凝集剤を添加する添加装置200と、添加装置200から凝集剤が添加された汚泥中の凝集物の状態を取得するセンサ400と、センサ400が取得した凝集物の状態を示す凝集指標を算出し、添加装置200が添加する凝集剤の添加量を変化させたときの凝集指標の変化量に基づいて、添加装置200が添加する凝集剤の添加量を制御する制御装置500とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理汚泥が流入する水槽と、
前記水槽に貯留された汚泥に凝集剤を添加する添加装置と、
前記添加装置から前記凝集剤が添加された汚泥中の凝集物の状態を取得するセンサと、
前記センサが取得した前記凝集物の状態を示す凝集指標を算出し、前記添加装置が添加する前記凝集剤の添加量を変化させたときの前記凝集指標の変化量に基づいて、前記添加装置が添加する前記凝集剤の添加量を制御する制御装置とを有する汚泥処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の汚泥処理システムにおいて、
前記水槽へ流入する被処理汚泥の汚泥濃度を測定する濃度計を有し、
前記制御装置は、前記濃度計が測定した汚泥濃度の単位時間における変化量と、前記凝集指標の変化量とに基づいて、前記添加装置が添加する前記凝集剤の添加量を制御する汚泥処理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の汚泥処理システムにおいて、
前記制御装置は、前記濃度計が測定した汚泥濃度の単位時間における変化量が所定の第1の閾値を超えた場合、前記濃度計が測定した汚泥濃度の変化に基づいて、前記添加装置が添加する前記凝集剤の添加量を制御する汚泥処理システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の汚泥処理システムにおいて、
前記制御装置は、前記凝集剤の添加量を変化させたときの前記添加量の変化量に対する前記凝集指標の変化量の割合である凝集変化量と所定の第2の閾値とを比較し、前記凝集変化量が前記第2の閾値を超える場合、前記添加装置が添加する前記凝集剤の添加量を増加させ、前記凝集変化量が前記第2の閾値以下である場合、前記添加装置が添加する前記凝集剤の添加量を減少させる汚泥処理システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の汚泥処理システムにおいて、
前記センサは、前記汚泥の画像を撮像する画像センサであり、
前記制御装置は、前記画像センサが撮像した画像から前記汚泥中の凝集物の特徴量を前記凝集指標として算出する汚泥処理システム。
【請求項6】
被処理汚泥が流入する水槽に添加装置が凝集剤を添加した汚泥中の凝集物の状態を取得するセンサが取得した前記凝集物の状態を示す凝集指標を算出する指標算出部と、
前記添加装置が添加する前記凝集剤の添加量を変化させたときの前記凝集指標の変化量に基づいて、前記添加装置が添加する前記凝集剤の添加量を制御する添加量制御部とを有する制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の制御装置において、
前記添加量制御部は、前記水槽へ流入する被処理汚泥の汚泥濃度の単位時間における変化量と、前記凝集指標の変化量とに基づいて、前記添加装置が添加する前記凝集剤の添加量を制御する制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の制御装置において、
前記添加量制御部は、前記汚泥濃度の単位時間における変化量が所定の第1の閾値を超えた場合、前記汚泥濃度の変化に基づいて、前記添加装置が添加する前記凝集剤の添加量を制御する制御装置。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか1項に記載の制御装置において、
前記添加量制御部は、前記凝集剤の添加量を変化させたときの前記添加量の変化量に対する前記凝集指標の変化量の割合である凝集変化量と所定の第2の閾値とを比較し、前記凝集変化量が前記第2の閾値を超える場合、前記添加装置が添加する前記凝集剤の添加量を増加させ、前記凝集変化量が前記第2の閾値以下である場合、前記添加装置が添加する前記凝集剤の添加量を減少させる制御装置。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか1項に記載の制御装置において、
前記指標算出部は、前記センサが前記汚泥の画像を撮像する画像センサであり、前記画像センサが撮像した画像から前記汚泥中の凝集物の特徴量を前記凝集指標として算出する制御装置。
【請求項11】
被処理汚泥が流入する水槽に添加装置が凝集剤を添加した汚泥中の凝集物の状態を取得するセンサが取得した前記凝集物の状態を示す凝集指標を算出する処理と、
前記添加装置が添加する前記凝集剤の添加量を変化させたときの前記凝集指標の変化量に基づいて、前記添加装置が添加する前記凝集剤の添加量を制御する処理とを行う汚泥処理方法。
【請求項12】
コンピュータに、
被処理汚泥が流入する水槽に添加装置が凝集剤を添加した汚泥中の凝集物の状態を取得するセンサが取得した前記凝集物の状態を示す凝集指標を算出する手順と、
前記添加装置が添加する前記凝集剤の添加量を変化させたときの前記凝集指標の変化量に基づいて、前記添加装置が添加する前記凝集剤の添加量を制御する手順とを実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥処理システム、制御装置、汚泥処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥を処理する方法の1つとして、水槽に貯留された汚泥に所定の凝集剤を添加し、凝集剤が添加された汚泥から水分を除去するため、脱水機を用いて脱水汚泥とろ液とに固液分離する方法が挙げられる。このような方法を用いる場合、汚泥に添加する凝集剤の添加量を制御する必要がある。例えば、汚泥中の凝集物を撮像し、撮像した凝集物の画像上での面積とあらかじめ設定された基準面積との比較に結果に基づいて、凝集剤の添加量を制御する技術が考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-189321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような技術においては、基準面積をあらかじめ決めておかなければならない。また、添加量を制御するためにあらかじめ設定された基準を用いるため、汚泥の状況が変化した場合にその変化した状況に適した添加量を容易に算出することが困難となってしまう。そのため、最適な添加量の凝集剤を添加できないおそれがある。
【0005】
本発明の目的は、最適な添加量の凝集剤を容易に添加することができる汚泥処理システム、制御装置、汚泥処理方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の汚泥処理システムは、
被処理汚泥が流入する水槽と、
前記水槽に貯留された汚泥に凝集剤を添加する添加装置と、
前記添加装置から前記凝集剤が添加された汚泥中の凝集物の状態を取得するセンサと、
前記センサが取得した前記凝集物の状態を示す凝集指標を算出し、前記添加装置が添加する前記凝集剤の添加量を変化させたときの前記凝集指標の変化量に基づいて、前記添加装置が添加する前記凝集剤の添加量を制御する制御装置とを有する。
【0007】
また、本発明の制御装置は、
被処理汚泥が流入する水槽に添加装置が凝集剤を添加した汚泥中の凝集物の状態を取得するセンサが取得した前記凝集物の状態を示す凝集指標を算出する指標算出部と、
前記添加装置が添加する前記凝集剤の添加量を変化させたときの前記凝集指標の変化量に基づいて、前記添加装置が添加する前記凝集剤の添加量を制御する添加量制御部とを有する。
【0008】
また、本発明の汚泥処理方法は、
被処理汚泥が流入する水槽に添加装置が凝集剤を添加した汚泥中の凝集物の状態を取得するセンサが取得した前記凝集物の状態を示す凝集指標を算出する処理と、
前記添加装置が添加する前記凝集剤の添加量を変化させたときの前記凝集指標の変化量に基づいて、前記添加装置が添加する前記凝集剤の添加量を制御する処理とを行う。
【0009】
また、本発明のプログラムは、
コンピュータに実行させるためのプログラムであって、
被処理汚泥が流入する水槽に添加装置が凝集剤を添加した汚泥中の凝集物の状態を取得するセンサが取得した前記凝集物の状態を示す凝集指標を算出する手順と、
前記添加装置が添加する前記凝集剤の添加量を変化させたときの前記凝集指標の変化量に基づいて、前記添加装置が添加する前記凝集剤の添加量を制御する手順とを実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、最適な添加量の凝集剤を容易に添加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の汚泥処理システムの実施の一形態を示す図である。
図2図1に示した制御装置の内部構成の一例を示す図である。
図3A図1に示した汚泥処理システムにおける汚泥処理方法のうちの凝集指標に基づいた添加量の制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図3B図1に示した汚泥処理システムにおける汚泥処理方法のうちの凝集指標に基づいた添加量の制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図4図1に示した汚泥処理システムにおける汚泥処理方法のうちの汚泥濃度に基づいた添加量の制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図5】本発明の汚泥処理システムの適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の汚泥処理システムの実施の一形態を示す図である。本形態における汚泥処理システムは図1に示すように、水槽100と、添加装置200と、凝集剤貯槽210と、濃度計300と、センサ400と、制御装置500とを有する。
【0014】
水槽100は、処理対象となる被処理汚泥が流入し、流入された被処理汚泥を貯留する貯留槽である。被処理汚泥は、下水処理場の処理過程や工場の廃液処理工程で生じる、有機物や無機物の最終生成物が凝集してできた泥状の物質が含まれるものである。また、被処理汚泥は廃棄物であるため、そのまま使用できない。そのため、被処理汚泥に対して、例えば、凝集剤を添加して行う凝集処理や、脱水機を用いた圧搾や遠心分離などの脱水処理により、被処理汚泥から脱水汚泥を取り除き、再利用可能な液体を取得する。脱水汚泥は、含水率がより低い状態が望ましく、廃棄物として処理、または肥料などに再利用される。水槽100は、所定の容量を持つ。添加装置200は、水槽100に貯留された汚泥に凝集剤貯槽210に貯められた凝集剤を添加する。添加装置200は、制御装置500からの指示に基づいた添加量の凝集剤を凝集剤貯槽210から水槽100に貯留された汚泥に添加する。濃度計300は、水槽へ流入する被処理汚泥の汚泥濃度を測定する。濃度計300は、被処理汚泥の汚泥濃度を測定できるものであれば特に限定しないが、SS(Suspended Solids)計であることが好ましい。濃度計300は、測定した値を制御装置500へ出力する。センサ400は、水槽100に貯留された汚泥に添加装置200から凝集剤が添加された汚泥中の凝集物(フロック)の状態を取得する。センサ400は、例えば、汚泥の画像を撮像する非接液の画像センサ(カメラ)であっても良い。センサ400は、赤外線センサであることが好ましい。センサ400は、水槽100内の汚泥の画像をあらかじめ設定された時間間隔以下の時間間隔で撮像するカメラ(例えば、継続的に撮像を行う動画撮像用カメラ)であっても良い。センサ400は、取得(撮像)した画像を示す画像データを制御装置500へ出力する。制御装置500は、濃度計300から出力されてきた濃度の値と、センサ400が取得(撮像)した凝集物の状態とに基づいて、添加装置200が凝集剤貯槽210から添加する凝集剤の添加量を制御する。なお、水槽100に、処理汚泥を攪拌する攪拌部材が設けられていても良い。
【0015】
図2は、図1に示した制御装置500の内部構成の一例を示す図である。図1に示した制御装置500は図2に示すように、指標算出部510と、添加量制御部520とを有する。なお、図2には、図1に示した制御装置500が有する構成要素のうち、本形態に関わる主要な構成要素のみを示した。
【0016】
指標算出部510は、センサ400が取得した凝集物の状態を示す凝集指標を算出する。センサ400が画像センサである場合、指標算出部510は、画像センサが撮像した画像から水槽100内の汚泥中の凝集物の特徴量を凝集指標として算出する。ここで、指標算出部510は、画像センサが撮像した画像から、水槽100内の汚泥に含まれる浮遊物質の個数または粒子径または変位量を特徴量として算出する。例えば、指標算出部510は、画像センサが撮像した画像(動画)に対して、Motion History Image等の画像処理技術を用いて、フレーム間にて差異のある部分を白色に着色し、その着色した白点のカウント数(変位量)を特徴量として算出しても良い。また、指標算出部510は、Optical flow等の画像処理技術を用いて、水槽100内の汚泥中のフロックのフローを可視化し、フローの幅を測定して粒子径を特徴量として算出しても良い。または、センサ400が画像センサである場合、指標算出部510は、画像センサが撮像した画像から水槽100内の汚泥中の凝集物のエッジ数を凝集指標として算出する。ここで、指標算出部510は、画像センサが撮像した画像中の互いに隣接する画素の色差(例えば、RGBの値の差)が閾値以上である画素を凝集物のエッジとして検出し、その検出されたエッジの数(画素数)を凝集指標として算出しても良い。または、センサ400が画像センサである場合、指標算出部510は、画像センサが撮像した画像から水槽100内の汚泥中の凝集物の面積を凝集指標として算出しても良い。または、センサ400が画像センサである場合、指標算出部510は、画像センサが撮像した画像から水槽100内の汚泥中の凝集物の個数を凝集指標として算出しても良い。また、センサ400が画像センサである場合、指標算出部510は、画像センサが撮像した画像から水槽100内の汚泥中の凝集物のエッジ数と面積と個数との任意の組み合わせを凝集指標として算出しても良い。
【0017】
添加量制御部520は、添加装置200が添加する凝集剤の添加量を変化させたときの、指標算出部510が算出した凝集指標の変化量に基づいて、添加装置200が添加する凝集剤の添加量を制御する。具体的には、添加量制御部520は、添加装置200が添加する凝集剤の添加量を変化させたときの凝集指標の変化量と、添加装置200が添加する凝集剤の添加量の変化量とに基づいて、添加装置200が添加する凝集剤の添加量を制御する。さらに具体的には、添加量制御部520は、添加装置200が添加する凝集剤の添加量の変化量に対する凝集指標の変化量の割合である凝集変化量と、あらかじめ設定された閾値(第2の閾値)とを比較する。そして、添加量制御部520は、その比較の結果に基づいて、添加装置200が添加する凝集剤の添加量を制御する。凝集変化量Vnは、以下に示す(式1)で算出される。
【0018】
【数1】
【0019】
(式1)において、Cnは凝集指標である。Cn-1は凝集剤の添加量の変更前の凝集指標である。また、Pnは凝集剤の添加量である。Pn-1は凝集剤の添加量の変更前の凝集剤の添加量である。
【0020】
凝集変化量Vnがあらかじめ設定された閾値以下である場合、添加量制御部520は、添加装置200が添加する凝集剤の添加量を減らす制御を行う。一方、凝集変化量Vnがあらかじめ設定された閾値を超える場合、添加量制御部520は、添加装置200が添加する凝集剤の添加量を増やす制御を行う。
【0021】
また、添加量制御部520は、濃度計300から出力されてきた値である汚泥濃度の単位時間における変化量と、算出した凝集指標の変化量とに基づいて、添加装置200が添加する凝集剤の添加量を制御する。具体的には、添加量制御部520は、濃度計300から出力されてきた値である汚泥濃度の単位時間における変化量である濃度変化量を算出する。添加量制御部520は、濃度変化量があらかじめ設定された閾値(第1の閾値)を超える場合、濃度が高くなる方へ変化しているのであれば、添加装置200が添加する凝集剤の添加量を増やす制御を行う。一方、添加量制御部520は、濃度変化量があらかじめ設定された閾値を超える場合、濃度が低くなる方へ変化しているのであれば、添加装置200が添加する凝集剤の添加量を減らす制御を行う。また、添加量制御部520は、濃度変化量があらかじめ設定された閾値以下である場合、上述した凝集指標に基づいた添加量の制御を行う。
【0022】
以下に、図1に示した汚泥処理システムにおける汚泥処理方法について説明する。図3A,3Bは、図1に示した汚泥処理システムにおける汚泥処理方法のうちの凝集指標に基づいた添加量の制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【0023】
まず、添加装置200が水槽100に凝集剤貯槽210から凝集剤を添加量Pn-1で添加する(ステップS1)。あらかじめ設定された時間が経過した後(ステップS2)、制御装置500の指標算出部510が、センサ400が取得した水槽100内の汚泥中の凝集物の状態から凝集指標Cn-1を算出する(ステップS3)。その後、添加装置200が水槽100に凝集剤貯槽210から凝集剤を添加量Pnで添加する(ステップS4)。あらかじめ設定された時間が経過した後(ステップS5)、制御装置500の指標算出部510が、センサ400が測定した水槽100内の汚泥中の凝集物の状態から凝集指標Cnを算出する(ステップS6)。すると、制御装置500の指標算出部510が、(式1)を用いて、凝集変化量Vnを算出する(ステップS7)。なお、凝集変化量Vnの算出は、指標算出部510ではなく、添加量制御部520が行っても良い。
【0024】
制御装置500の添加量制御部520は、算出された凝集変化量Vnがあらかじめ設定された閾値を超えているかどうかを判定する(ステップS8)。凝集変化量Vnがあらかじめ設定された閾値を超える値である場合、添加量制御部520は、添加装置200から添加する凝集剤の量を増やす(ステップS9)。添加量制御部520は、量を増やした添加量Pn+1の凝集剤を凝集剤貯槽210から添加するように添加装置200を制御する(ステップS10)。一方、ステップS8にて、凝集変化量Vnがあらかじめ設定された閾値以下である場合、添加量制御部520は、添加装置200から添加する凝集剤の量を減らす(ステップS11)。添加量制御部520は、量を減らした添加量Pn+1の凝集剤を凝集剤貯槽210から添加するように添加装置200を制御する(ステップS12)。その後、ステップS5の処理が行われる。なお、凝集剤の増やす量および減らす量は、あらかじめ設定された量であっても良いし、凝集変化量に応じて算出された量であっても良い。
【0025】
図4は、図1に示した汚泥処理システムにおける汚泥処理方法のうちの汚泥濃度に基づいた添加量の制御方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【0026】
添加量制御部520は、濃度計300から出力されてきた値である汚泥濃度の単位時間における変化量である濃度変化量を算出する(ステップS21)。添加量制御部520は、算出した濃度変化量があらかじめ設定された閾値を超えているかどうかを判定する(ステップS22)。濃度変化量があらかじめ設定された閾値を超えている場合、添加量制御部520は、汚泥濃度が高くなる(増加する)方へ変化しているかどうかを判定する(ステップS23)。汚泥濃度が高くなる(増加する)方へ変化している場合、添加量制御部520は、添加装置200が凝集剤貯槽210から添加する凝集剤の添加量を増やす(ステップS24)。そして、添加量制御部520は、増やした添加量の凝集剤を凝集剤貯槽210から添加するように添加装置200を制御する(ステップS25)。添加量の増やす量は、あらかじめ設定された量であっても良いし、汚泥濃度の変化量に応じて算出された量であっても良い。
【0027】
一方、ステップS23にて、汚泥濃度が低くなる(減少する)方へ変化している場合、添加量制御部520は、添加装置200が凝集剤貯槽210から添加する凝集剤の添加量を減らす(ステップS26)。そして、添加量制御部520は、減らした添加量の凝集剤を凝集剤貯槽210から添加するように添加装置200を制御する(ステップS27)。添加量の減らす量は、あらかじめ設定された量であっても良いし、汚泥濃度の変化量に応じて算出された量であっても良い。
【0028】
また、ステップS22にて、濃度変化量があらかじめ設定された閾値以下である場合、添加量制御部520は、図3A,3Bに示したフローチャートを用いて説明した凝集指標に基づいた添加量の制御を行う(ステップS28)。
【0029】
なお、図3A,3Bに示したフローチャートを用いて説明した凝集指標に基づいた添加量の制御が行われている間でも、ステップS21,S22の処理は行われており、濃度変化量が閾値を超えると、ステップS23~S27の処理が図3A,3Bに示したフローチャートを用いて説明した凝集指標に基づいた添加量の制御よりも優先して行われる。
【0030】
このように本形態においては、制御装置500は、水槽100内の汚泥に添加する凝集剤の添加量を変化させたときの、変化前と変化後とでの凝集指標の変化量に基づいて、添加する凝集剤の添加量を制御する。そのため、添加量の基準値や基準範囲を設けるためのデータ収集等の作業を必要とせず、汚泥性状の変化にも迅速に対応することができる。また、既設の混和槽内の凝集物を撮像すれば、添加量の制御が可能であり、増設のコストやスペースを必要としない。つまり、凝集剤を添加したときの凝集物の状態の変化に適した凝集剤の添加量を容易に制御することができる。さらに、制御装置500は、汚泥の濃度の変化量に応じて、汚泥濃度と凝集指標とに基づいた凝集剤の添加量の制御を行う。これにより、汚泥濃度が急激に変化した場合、その変化に迅速に対応することができる。なお、汚泥濃度に基づいた制御として、汚泥濃度に応じて凝集剤添加量を規定値へ変化させる方法を適用しても良い。汚泥濃度変化量が規定値を超えた場合に、凝集剤添加量を規定値だけ変化させることが好ましい。これにより、汚泥濃度が変化した際に、凝集剤添加量をリセットするのではなく、それまでの凝集剤添加量をベースに添加量を変化させるため、より適切かつ迅速に汚泥濃度の変化に対応できる。
(適用例)
【0031】
図5は、本発明の汚泥処理システムの適用例を示す図である。本適用例は図5に示すように、反応槽110と、添加装置201,202と、カチオン高分子凝集剤貯槽211と、アニオン高分子凝集剤貯槽212と、濃度計300と、センサ400と、制御装置500と、脱水機600とを有する。濃度計300、センサ400および制御装置500それぞれは、図1に示した実施の形態におけるものとそれぞれ同じものである。
【0032】
反応槽110は、図1に示した形態における水槽100に相当する。反応槽110には、被処理汚泥が貯留される。添加装置201は、制御装置500からの指示に基づいて、カチオン高分子凝集剤貯槽211から凝集剤を反応槽110に貯留された汚泥に添加する。添加装置202は、制御装置500からの指示に基づいて、アニオン高分子凝集剤貯槽212から凝集剤を反応槽110に貯留された汚泥に添加する。脱水機600は、反応槽110で処理された汚泥に脱水をかけて、ろ液と脱水汚泥とに分離させて排出する。なお、反応槽110と脱水機600とが一体化されていても良い。脱水機600は、スクリュープレス型や多重円盤型など多くの種類があるが、特に限定しない。
【0033】
以下に、本発明を実施したときの結果について記載する。
(実施例1)
【0034】
・試験方法
汚泥処理装置において、模擬汚泥とカチオン高分子凝集剤およびアニオン高分子凝集剤とを反応槽に供給し、反応槽に設置した画像センサが取得した凝集物のエッジ数の変化量に基づいて、添加量が自動制御されたカチオン高分子凝集剤とアニオン高分子凝集剤とを添加してカチオン高分子凝集剤の濃度および脱水汚泥の含水率を測定した。カチオン高分子凝集剤とアニオン高分子凝集剤との添加濃度の比率は5対1で一定とした。
・試験条件
模擬汚泥(汚泥濃度1%):乾燥おから(神戸食品産業)8.2g/L、純正こうじみそ(マルサンアイ株式会社)24.1g/L
汚泥処理装置:ヴァルート脱水機ES-051(アムコン株式会社)
汚泥供給量:5.5L/min
カチオン高分子凝集剤:オルフロックOX-307(オルガノ株式会社)
アニオン高分子凝集剤:オルフロックOA-12H(オルガノ株式会社)
脱水汚泥含水率測定器:加熱乾燥式水分計MX-50(株式会社エー・アンド・デイ)
・試験結果
試験結果を表1に示す。表1に示すように、汚泥濃度の変化に応じてカチオン高分子凝集剤濃度が変化し、含水率も80%前後で安定していた。すなわち、凝集物のエッジ数を凝集指標とした凝集指標の変化量に基づいた自動制御を用いることで、汚泥濃度の変化に応じて、凝集剤添加量を増減することができた。
【表1】
(実施例2)
【0035】
・試験方法
汚泥処理装置において、模擬汚泥とカチオン高分子凝集剤およびアニオン高分子凝集剤とを反応槽に供給し、反応槽に設置した画像センサが取得した凝集物の面積の変化量に基づいて、添加量が自動制御されたカチオン高分子凝集剤とアニオン高分子凝集剤とを添加してカチオン高分子凝集剤の濃度および脱水汚泥の含水率を測定した。カチオン高分子凝集剤とアニオン高分子凝集剤との添加濃度の比率は5対1で一定とした。
・試験条件
実施例1と同じである。
・試験結果
試験結果を表2に示す。表2に示すように、汚泥濃度の変化に応じてカチオン高分子凝集剤濃度が変化し、含水率も80%前後で安定していた。すなわち、凝集物の面積を凝集指標とした凝集指標の変化量に基づいた自動制御を用いることで、汚泥濃度の変化に応じて、凝集剤添加量を増減することができた。
【表2】
(実施例3)
【0036】
・試験方法
汚泥処理装置において、汚泥とカチオン高分子凝集剤およびアニオン高分子凝集剤とを反応槽に供給し、反応槽に設置した画像センサが取得した凝集物のエッジ数の変化量に基づいて、添加量が自動制御されたカチオン高分子凝集剤と、規定量の添加量のアニオン高分子凝集剤とを添加してカチオン高分子凝集剤の濃度および脱水汚泥の含水率を測定した。比較例1では汚泥濃度、フロックの外観、含水率などから、適切に処理できると判断した添加量のカチオン高分子凝集剤を添加した。汚泥濃度に対するアニオン高分子凝集剤の添加量は、実施例と比較例とで同じである。
・試験条件
汚泥:生物処理余剰汚泥
汚泥処理装置:ヘリオス脱水機SK-1000UP(株式会社ヘリオス)
汚泥供給量:6.0~8.0m3/h
カチオン高分子凝集剤:オルフロックEC-559K(オルガノ株式会社)
アニオン高分子凝集剤:オルフロックM-4414(オルガノ株式会社)
脱水汚泥含水率測定器:加熱乾燥式水分計MX-50(株式会社エー・アンド・デイ)
・試験結果
試験結果を表3に示す。表3に示すように、カチオン高分子凝集剤濃度が比較例1では440ppmで推移したのに対し、実施例3では390~460ppmで推移した。凝集物のエッジ数の変化量に基づいた自動制御を用いることで、カチオン高分子凝集剤使用量を約9%削減することができた。含水率を比較すると、比較例1に対して実施例3は最大で3%増加しており、凝集物のエッジ数の変化量による自動制御運転では、汚泥濃度の変動に対応しきれない可能性が示唆された。
【表3】
(実施例4)
【0037】
・試験方法
汚泥処理装置において、汚泥とカチオン高分子凝集剤およびアニオン高分子凝集剤とを反応槽に供給し、反応槽に設置した画像センサが取得した凝集物のエッジ数の変化量と汚泥濃度の変化量とに基づいて、添加量が自動制御されたカチオン高分子凝集剤と、規定量の添加量のアニオン高分子凝集剤とを添加してカチオン高分子凝集剤の濃度および脱水汚泥の含水率を測定した。比較例2では汚泥濃度、フロックの外観、含水率などから、適切に処理できると判断した添加量のカチオン高分子凝集剤を添加した。汚泥濃度に対するアニオン高分子凝集剤の添加量は、実施例と比較例とで同じである。
・試験条件
実施例3と同じである。
・試験結果
試験結果を表4に示す。表4に示すように、比較例2では、カチオン高分子凝集剤濃度が550~570ppmで推移したのに対し、実施例4では460~540ppmで推移した。凝集物のエッジ数の変化量と汚泥濃度の変化量とに基づいた自動制御運転を用いることで、カチオン高分子凝集剤使用量を約11%削減することができた。含水率については、実施例4と比較例2とでは、互いに同等であった。このように、凝集物のエッジ数の変化量と汚泥濃度の変化量とに基づいた自動制御運転を用いることで、汚泥濃度の変動にも対応でき、カチオン高分子凝集剤の使用量を削減することができる。
【表4】
【0038】
以上、各構成要素に各機能(処理)それぞれを分担させて説明したが、この割り当ては上述したものに限定しない。また、構成要素の構成についても、上述した形態はあくまでも例であって、これに限定しない。
【0039】
上述した制御装置500が行う処理は、目的に応じてそれぞれ作製された論理回路で行うようにしても良い。また、処理内容を手順として記述したコンピュータプログラム(以下、プログラムと称する)を制御装置500にて読取可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを制御装置500に読み込ませ、実行するものであっても良い。制御装置500にて読取可能な記録媒体とは、フロッピー(登録商標)ディスク、光磁気ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、CD(Compact Disc)、Blu-ray(登録商標) Disc、USB(Universal Serial Bus)メモリなどの移設可能な記録媒体の他、制御装置500に内蔵されたROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリやHDD(Hard Disc Drive)等を指す。この記録媒体に記録されたプログラムは、制御装置500に設けられたCPUにて読み込まれ、CPUの制御によって、上述したものと同様の処理が行われる。ここで、CPUは、プログラムが記録された記録媒体から読み込まれたプログラムを実行するコンピュータとして動作するものである。
【符号の説明】
【0040】
100 水槽
110 反応槽
200~202 添加装置
210 凝集剤貯槽
211 カチオン高分子凝集剤貯槽
212 アニオン高分子凝集剤貯槽
300 濃度計
400 センサ
500 制御装置
510 指標算出部
520 添加量制御部
600 脱水機
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5