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特開2023-66978伸縮性フィルム及びこれを用いた両面粘着テープ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023066978
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】伸縮性フィルム及びこれを用いた両面粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20230509BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20230509BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
C08J5/18 CFF
C09J7/20
B32B27/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177879
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000226091
【氏名又は名称】日榮新化株式会社
(72)【発明者】
【氏名】篠原 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】中村 榛菜
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J004
【Fターム(参考)】
4F071AA03
4F071AA53
4F071AC02A
4F071AE19A
4F071AF15Y
4F071AF20Y
4F071AF21Y
4F071AF25Y
4F071AH19
4F071BA02
4F071BB02
4F071BB12
4F071BC02
4F071BC12
4F100AK51A
4F100BA03
4F100BA06
4F100CA02A
4F100CB05B
4F100CB05C
4F100EH46A
4F100EJ98A
4F100JA06A
4F100JA07A
4F100JB13A
4F100JC00A
4F100JK02A
4F100JK08A
4F100JK12
4F100JK12A
4F100JK17
4F100JL13B
4F100JL13C
4F100JN01
4F100YY00A
4J004AA05
4J004AA10
4J004AA11
4J004AA14
4J004AB01
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004CC08
4J004DA02
4J004DA03
4J004DA04
4J004DB02
4J004EA05
4J004FA08
(57)【要約】
【課題】柔軟性があり、再使用が可能な樹脂フィルム及びこれを用いた両面粘着テープを提供する。
【解決手段】両面粘着テープ20は、シート状の樹脂基材1を有し、23℃、相対湿度50%、ひずみ100%の条件で引張りと復元とを10サイクル繰り返した場合のヒステリシスロスが20%以下である伸縮性フィルム10と、伸縮性フィルム10の第1の面に形成された第1の粘着剤層7と、伸縮性フィルム10の第2の面に形成された第2の粘着剤層9とを備える。両面粘着テープ20は、第1の被着体31と第2の被着体33との間に貼り付けられた後、伸縮性フィルム10を延伸することで第1の被着体31及び第2の被着体33から剥離可能である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の樹脂基材を備えた伸縮性フィルムであって、
23℃、相対湿度50%、ひずみ100%の条件で引張りと復元とを10サイクル繰り返した場合のヒステリシスロスが20%以下である伸縮性フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の伸縮性フィルムにおいて、
23℃、相対湿度50%、ひずみ100%の条件で引張りと復元とを50サイクル繰り返した場合のヒステリシスロスは15%以下である伸縮性フィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の伸縮性フィルムにおいて、
アスカーゴム硬度計A型を用いて測定される前記樹脂基材のゴム硬度は、40°以上75°以下である伸縮性フィルム。
【請求項4】
請求項1~3のうちいずれか1項に記載の伸縮性フィルムにおいて、
前記樹脂基材は、熱硬化性ウレタンの硬化物により形成されている伸縮性フィルム。
【請求項5】
請求項1~4のうちいずれか1項の伸縮性フィルムにおいて、
23℃、相対湿度50%での前記樹脂基材のMD方向及びTD方向の破断強度は共に10N/10mm以上35N/10mm以下であり、
23℃、相対湿度50%での前記樹脂基材のMD方向及びTD方向の破断伸度は共に300%以上900%以下である伸縮性フィルム。
【請求項6】
請求項1~5のうちいずれか1項に記載の伸縮性フィルムと、
前記伸縮性フィルムの第1の面に形成された第1の粘着剤層と、
前記伸縮性フィルムの第2の面に形成された第2の粘着剤層とを備え、
第1の被着体と第2の被着体との間に貼り付けられた後、前記伸縮性フィルムを延伸することで前記第1の被着体及び前記第2の被着体から剥離される両面粘着テープ。
【請求項7】
請求項6に記載の両面粘着テープにおいて、
前記第1の被着体及び前記第2の被着体から剥離された後に再使用が可能な両面粘着テープ。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の両面粘着テープにおいて、
前記樹脂基材は、前記第1の粘着剤層及び前記第2の粘着剤層の間からいずれかの端部方向に向けて突出する延出部を有している両面粘着テープ。
【請求項9】
請求項6~8のうちいずれか1項に記載の両面粘着テープにおいて、
前記伸縮性フィルムのバイオマス度は5%以上30%以下である両面粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示された技術は、樹脂基材を備えた伸縮性フィルムと、これを用いて作製された両面粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯機器の画面保護や自動車の車体の保護フィルムの他、建築用、医療用等の様々な分野で柔軟性のある樹脂フィルムが用いられている。この樹脂フィルムは単独で使用される場合もあれば、片面又は両面に接着剤層又は粘着剤層が形成された形で使用されることも多い。
【0003】
特許文献1には、柔軟性と復元性を維持しつつ、耐湿熱性と後加工適性とを両立した樹脂フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-151815
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、環境意識が高まり、生分解性の無いプラスチック廃棄物の削減が世界的に進められている。環境への負荷を低減するため生分解性プラスチックの使用や紙等への代替を進める動きもあるが、柔軟性が必要な樹脂フィルムについては、これらの材料への置き換えは難しい。そこで、廃棄物を減らすための対策として、一度使用した樹脂フィルムを再使用することが考えられる。
【0006】
ここで、特許文献1に記載された樹脂フィルムは、再使用することが想定されていない。このため、樹脂フィルムを使用後に被着体から剥がした場合、フィルムやテープの変形や物性の変化等により再使用が困難になる可能性がある。
【0007】
また、樹脂フィルムの両面に粘着剤層が設けられた両面粘着テープであって、被着体に貼り付けた後で延伸しながら剥離できるテープが知られているが、この両面粘着テープは剥離時に大きく引き伸ばされるため、変形しやすく再使用がしにくくなっている。
【0008】
本発明の目的は、柔軟性があり、再使用が可能な樹脂フィルム及びこれを用いた両面粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示された伸縮性フィルムの一例は、シート状の樹脂基材を備えた伸縮性フィルムであって、23℃、相対湿度50%、ひずみ100%の条件で引張りと復元とを10サイクル繰り返した場合のヒステリシスロスが20%以下である。
【0010】
また、本明細書に開示された両面粘着テープの一例は、上述の伸縮性フィルムと、前記伸縮性フィルムの第1の面に形成された第1の粘着剤層と、前記伸縮性フィルムの第2の面に形成された第2の粘着剤層とを備え、第1の被着体と第2の被着体との間に貼り付けられた後、前記伸縮性フィルムを延伸することで前記第1の被着体及び前記第2の被着体から剥離可能である。
【発明の効果】
【0011】
本明細書に開示された伸縮性フィルム及び両面粘着テープによれば、23℃、相対湿度50%、ひずみ100%の条件で引張りと復元とを10サイクル繰り返した場合のヒステリシスロスが20%以下であることにより、再使用しやすくなっている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の実施形態に係る伸縮性フィルムを示す断面図である。
図2図2は、図1に示す伸縮性フィルムを用いて作製された両面粘着テープを示す断面図である。
図3図3は、本開示の実施形態に係る両面粘着テープの使用例を示す断面図である。
図4図4は、本開示の変形例に係る両面粘着テープの使用例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本明細書に開示された実施形態の一例である、伸縮性フィルムを示す断面図である。図2は、図1に示す伸縮性フィルムを用いて作製された両面粘着テープを示す断面図である。図1及び図2は、伸縮性フィルム及び両面粘着テープの構成を模式的に示す図であり、各層の実際の厚みの比率は図示された比率に限定されない。
【0014】
(伸縮性フィルム)
図1に示すように、本実施形態の一例に係る伸縮性フィルム10は、シート状の樹脂基材1を備えている。樹脂基材1は、同図に示すように単一の組成を有する樹脂により形成されていてもよいし、組成が相異なる複数の樹脂層の積層体であってもよい。
【0015】
伸縮性フィルム10の第1の面(図1での下面)には第1の剥離ライナー3が設けられていてもよく、伸縮性フィルム10の第2の面には第2の剥離ライナー5が設けられていてもよい。
【0016】
伸縮性フィルム10は、物品の保護フィルム等として単独で使用されてもよいし、片面又は両面に粘着剤層を設けて粘着テープの基材として使用されてもよい。
【0017】
伸縮性フィルム10は、23℃、相対湿度50%、ひずみ100%の条件で引張りと復元とを10サイクル繰り返した場合のヒステリシスロスが20%以下となっている。ヒステリシスロスの具体的な測定方法は後述する。
【0018】
伸縮性フィルム10はこのように優れた復元力を有しているので、使用時又は使用後に引き伸ばされた場合であっても速やかに元の形状に回復できる。このため、例えば伸縮性フィルム10を物品の保護フィルムとして使用し、その後物品から剥がした場合に、施工や剥離の際に引張応力がかかっていたとしても、伸縮性フィルム10を再使用することができる。
【0019】
伸縮性フィルム10において、23℃、相対湿度50%の条件で引張りと復元とを50サイクル繰り返した場合のひずみ100%でのヒステリシスロスが15%以下であってもよく、10%以下であればより好ましい。これと同条件でひずみ50%でのヒステリシスロスは15%以下であってもよく、10%以下であればより好ましい。
【0020】
[樹脂基材]
図1に示す例では、樹脂基材1自体が伸縮性フィルム10となっているので、樹脂基材1についても、ひずみ100%の条件で引張りと復元とを10サイクル繰り返した場合のヒステリシスロスが20%以下となっている。
【0021】
ゴム硬度とヒステリシスロスの値とは関連しており、樹脂基材1において、アスカーゴム硬度計A型を用いて測定されるゴム硬度は、40°以上75°以下であってもよく、50°以上70°以下であればより好ましい。樹脂基材1のゴム硬度が40°以上70°以下であることは、樹脂基材1が適度な適度な柔軟性を有していることを示すので、曲面を有する物品に対する伸縮性フィルム10の追従性を良好にすることができる。
【0022】
また、樹脂基材1の23℃、相対湿度50%におけるMD方向及びTD方向の破断強度は共に10N/10mm以上35N/10mm以下であってもよく、15N/10mm以上30N/10mm以下であればより好ましい。また、23℃、相対湿度50%における樹脂基材1のMD方向及びTD方向の破断伸度は共に300%以上900%以下であってもよく、350%以上800%以下であればより好ましい。ここで、本明細書では、樹脂基材1が製造時に延伸されていない場合の「MD方向」及び「TD方向」の語を、単にシート平面内の「縦方向」及び「横方向」の意味を表す語として使用する。
【0023】
樹脂基材1のMD方向及びTD方向の破断強度が共に10N/10mm以上であれば、被覆対象物に伸縮性フィルム10を貼り付ける際や伸縮性フィルム10を剥離する際に破断しにくくすることができ、且つフィルムの向きを気にせず施工を行うことができる。樹脂基材1のMD方向及びTD方向の破断伸度が共に300%以上であれば、施工時にフィルムを伸ばしやすく、曲面を有する被覆対象物への貼り付けがしやすくなる。樹脂基材1の破断伸度が900%以下であることにより、貼り付け時に伸縮性フィルム10が伸び過ぎず、全体を均一に伸ばしやすくなる。
【0024】
また、23℃、相対湿度50%において、引張速度を200mm/minとした時の樹脂基材1の100%モジュラスの値は0.5N/10mm以上5N/10mm以下であってもよい。樹脂基材1の300%モジュラスの値は0.7N/10mm以上15N/10mm以下であってもよい。
【0025】
樹脂基材1の色は特に限定されないが、透明であれば画面保護フィルムや印刷物の保護フィルム等としても使用することができる。樹脂基材1(伸縮性フィルム10)の全光線透過率は80%以上であってもよく、90%以上であってもよい。樹脂基材1のヘイズ値は特に限定されないが、0.1%以上10%以下であってもよい。
【0026】
樹脂基材1の厚みは例えば10μm以上であってもよく、50μm以上であれば好ましく、80μm以上であればより好ましい。樹脂基材1の厚みが10μm以上であれば良好に成膜することができる。樹脂基材1の厚みが50μm以上であれば破断強度を大きくすることができるので、第1の剥離ライナー3又は第2の剥離ライナー5を樹脂基材1から剥離する際に破断しにくくなり、取り扱いが容易になる。また、伸縮性フィルム10を両面粘着テープの芯材として使用する場合、被着体からの剥離時に破断しにくくなるので、再使用が容易になる。
【0027】
樹脂基材1の厚みは300μm以下であってもよく、200μm以下であってもよく、150μm以下であってもよい。樹脂基材1の厚みが300μm以下であることにより、伸縮性フィルム10を保護フィルム等に使用する場合に曲面への追従性を良好にすることができる。
【0028】
樹脂基材1には必要に応じて添加剤や無機物又は高分子化合物からなるフィラーが含まれていてもよい。しかし、ヒステリシスロスを小さくするために、樹脂基材1は発泡体以外の材料により形成されていることが好ましい。
【0029】
樹脂基材1は、伸縮性フィルム10のヒステリシスロスを小さくできる樹脂材料(樹脂硬化物)で構成されていればよい。例えば、樹脂基材1は、合成ゴム、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂及びシリコーン系樹脂から選ばれた1つ以上の材料により構成されていてもよい。
【0030】
ポリウレタン樹脂としては、例えばポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得られる2液硬化型で熱硬化型の、水酸基末端を有するポリウレタン樹脂を用いることができる。
【0031】
ポリウレタンの製造に使用可能なポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリフェニルポリメチレンポリイソシネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族または脂環族ポリイソシアネート、カルボジイミド基を有するポリイソシアネート、アロファネート基を有するポリイソシアネート、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネート等を使用することができる。ポリイソシアネートとしては、芳香族ポリイソシアネートを使用することが好ましい。
【0032】
ポリウレタンの製造に使用可能なポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリエーテルエステルポリオールから選ばれたポリオールを、単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0033】
ポリエステルポリオールとしては、ポリカルボン酸とポリオールとの反応物を使用することができる。ポリカルボン酸としては、例えばコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ポリカルボン酸、o-フタル酸等の芳香族ポリカルボン酸等を使用することができる。
【0034】
ポリエステルポリオールの製造に使用可能なポリオールとしては、例えばエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,8-オクタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール等を使用することができる。ポリエステルポリオールとしては、脂肪族ポリエステルポリオールを使用することができる。
【0035】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、上記ポリオールやポリアミン等を開始剤とし、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を開環重合して得られるものを使用することができる。
【0036】
ポリエステルポリオールとして、植物又は微生物由来のバイオマス材料を用いることもできる。例えば、生物由来のコハク酸、マレイン酸、セバシン酸等のポリカルボン酸と、植物由来のポリオールとの反応物をポリエステルポリオールとして使用してもよい。ポリイソシアネートとしては、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、リジンジイソシアネート(LDI)等を使用してもよい。
【0037】
伸縮性フィルム10を構成する樹脂中の生物由来材料(石油由来材料を除く)の乾燥質量基準での割合(バイオマス度)は、例えば5質量%以上30質量%以下であってもよく、10質量%以上25質量%以下であってもよい。バイオマス度を上記の範囲にすることで、伸縮性等の物性を発揮しつつ、環境に配慮した製品にすることができる。
【0038】
ポリウレタンと組み合わせ使用可能なポリイソシアネート(硬化剤)としては、例えばトリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリフェニルポリメチレンポリイソシネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族または脂環族ポリイソシアネート、カルボジイミド基を有するポリイソシアネート、アロファネート基を有するポリイソシアネート、イソシアヌレート基を有するポリイソシアネート、及びそれらのアダクト体等を使用することができる。
【0039】
樹脂基材1の製造時には、適宜アセチルアセトン等の反応遅延剤や帯電防止剤、熱安定剤、滑剤及び紫外線吸収剤等の添加剤を、上述の樹脂材料に添加してもよい。また、必要に応じて樹脂材料にトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド等、公知の溶媒を添加してもよい。
【0040】
[剥離ライナー]
第1の剥離ライナー3、第2の剥離ライナー5としては、それぞれシリコーン系離型剤層と基材とを有する公知の剥離ライナーを使用することができる。基材の構成材料は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂や合成紙、不織布、上質紙、グラシン紙等であってもよい。
【0041】
伸縮性フィルム10から第1の剥離ライナー3を剥離するのに要する剥離力A(N/50mm)と伸縮性フィルム10から第2の剥離ライナー5を剥離するのに要する剥離力B(N/50mm)とが互いに異なっていれば軽剥離側から剥がしやすくなるので好ましい。例えば、第1の剥離ライナー3を重剥離側、第2の剥離ライナー5を軽剥離側としてもよい。
【0042】
[樹脂基材の製膜方法]
以下、伸縮性フィルム10が樹脂基材1のみで構成される例について説明する。樹脂基材1の製膜方法は特に限定されないが、製膜時に延伸しないキャスト法等を用いて製膜することにより、MD方向とTD方向との間で機械的特性の差を小さくすることができ、フィルムの向きを気にせず使用することができる。
【0043】
キャスト法の一例として、まずポリウレタンと溶媒とを含有する組成物と、ポリイソシアネート(硬化剤)とを混合して得た2液硬化型組成物を、コンマ型コーターを用いて第1の剥離ライナー3の離型面に塗工して塗工層を形成する。次いで、100℃~130℃程度の温度下で5分程度乾燥させた後、樹脂基材1の露出面に第2の剥離ライナー5の離型面を貼り合わせる。その後、例えば40℃、相対湿度50の環境下で2~3日間エージングを行うことにより、塗工層を架橋させて樹脂基材1を形成することができる。
【0044】
なお、伸縮性フィルム10のヒステリシスロスの大きさや破断伸度、破断強度は、樹脂基材1を構成する樹脂の種類によって変わるが、同じ主剤を用いた場合には添加する硬化剤の量が増えるにつれてヒステリシスロスが小さく、破断強度が大きく、破断伸度が小さくなる。主剤の樹脂固形分100質量部に対する硬化剤の添加量は例えば3.5質量部以上20質量部以下であってもよく、3.5質量部以上15質量部以下であってもよい。
【0045】
(両面粘着テープ)
図2に示すように、本実施形態の一例に係る両面粘着テープ20は、上述の伸縮性フィルム10と、伸縮性フィルム10(樹脂基材1)の第1の面に形成された第1の粘着剤層7と、伸縮性フィルム10の第2の面に形成された第2の粘着剤層9とを備えている。図2は、両面粘着テープ20と、第1の粘着剤層7の下面に形成された第3の剥離ライナー11と、第2の粘着剤層9の上面に形成された第4の剥離ライナー13とを備えた積層体30も示している。一例として、第3の剥離ライナー11は重剥離側、第4の剥離ライナー13は軽剥離側となっている。
【0046】
[両面粘着テープの使用例]
図3は、両面粘着テープ20の使用例を示す断面図である。両面粘着テープ20の用途は特に限定されないが、例えば、部材同士の固定用に使用することができる。この場合、図3に示すように、積層体30から第4の剥離ライナー13を剥がして第2の粘着剤層9を第2の被着体33に貼り付けた後、第3の剥離ライナー11を剥がして第1の粘着剤層7を第1の被着体31に貼り付ける。この際に、両面粘着テープ20の一部を露出させておく。次いで、両面粘着テープ20の露出部分を把持して被着体との貼付面と平行な方向に延伸することにより、テープ幅が小さく且つテープ厚みが薄く変形し、第1の被着体31及び第2の被着体33を傷めることなく両面粘着テープ20を除去することができる。ここで、第1の被着体31は特に限定されないが、例えば壁、金属板、ガラス板等であり、第2の被着体33も特に限定されないが、例えば紙製又は樹脂製の掲示物やフック等である。
【0047】
[両面粘着テープ及び樹脂基材の特性]
両面粘着テープ20は、伸縮性フィルム10と同様に、23℃、相対湿度50%、ひずみ100%の条件で引張りと復元とを10サイクル繰り返した場合のヒステリシスロスが20%以下となっている。ここで、第1の粘着剤層7及び第2の粘着剤層9がヒステリシスロスの値に与える影響は非常に小さいので、両面粘着テープ20のヒステリシスロスの値は、伸縮性フィルム10のヒステリシスロスの値とほぼ同様となっている。
【0048】
両面粘着テープ20は、引張りと復元とを繰り返した場合のヒステリシスロスが小さくなっているので、使用後に第1の被着体31及び第2の被着体33から剥離した後の寸法変化が小さくなっている。このため、使用後の両面粘着テープ20は繰り返し使用可能となっている。
【0049】
両面粘着テープ20では、23℃、相対湿度50%、ひずみ100%の条件で引張りと復元とを50サイクル繰り返した場合のヒステリシスロスが15%以下となっていれば、より多い回数再使用することができるので好ましく、ヒステリシスロスが10%以下であればより好ましい。
【0050】
また、両面粘着テープ20において、アスカーゴム硬度計A型を用いて測定される樹脂基材1のゴム硬度が、40°以上75°以下であってもよく、50°以上70°以下であればより好ましい。
【0051】
また、樹脂基材1の23℃、相対湿度50%におけるMD方向及びTD方向の破断強度は共に10N/10mm以上35N/10mm以下であってもよく、15N/10mm以上30N/10mm以下であればより好ましい。樹脂基材1の破断強度が10N/10mm以上であれば、両面粘着テープ20を被着体から剥離する際に延伸しても破断しにくくなるので、信頼性が向上する。樹脂基材1の破断強度が35N/10mm以下であれば、両面粘着テープ20を延伸して被着体から剥がす際に、剥がれる前に破断するリスクを低減することができる。
【0052】
23℃、相対湿度50%における樹脂基材1のMD方向及びTD方向の破断伸度は共に300%以上900%以下であってもよく、350%以上800%以下であればより好ましい。
【0053】
樹脂基材1のMD方向及びTD方向の破断伸度が共に300%以上であれば、両面粘着テープ20を除去する際に引き伸ばしやすくなる。樹脂基材1の破断伸度が900%以下であることにより、両面粘着テープ20を除去する際に伸び過ぎず、取り扱い易くなる。
【0054】
両面粘着テープ20の厚みは、特に限定されないが、例えば取り扱い易さと製造コスト抑制の観点から15μm以上400μm以下であってもよく、60μm以上300μm以下であってもよく、80μm以上150μm以下であってもよい。
【0055】
[粘着剤層]
第1の粘着剤層7及び第2の粘着剤層9は、公知のアクリル系粘着剤、アクリルウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤及びシリコーン系粘着剤から選ばれた1つ以上を含む粘着剤組成物を使用して形成することができる。使用される粘着剤組成物は、熱硬化型であってもよいし、光硬化型であってもよい。
【0056】
第1の粘着剤層7及び第2の粘着剤層9の、被着体に対する粘着力は、各被着体を固定できる範囲であれば特に限定されない。第1の粘着剤層7及び第2の粘着剤層9は、テープが延伸された場合に被着体との界面で剥離し、被着体に残らないことが好ましい。
【0057】
第1の粘着剤層7の組成と第2の粘着剤層9の組成とは同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0058】
第1の粘着剤層7の厚みと第2の粘着剤層9の厚みとは同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。第1の粘着剤層7及び第2の粘着剤層9の厚みは例えば5μm以上100μm以下であってもよく、10μm以上80μm以下であってもよく、
20μm以上50μm以下であってもよい。第1の粘着剤層7及び第2の粘着剤層9の厚みは、第1の被着体31及び第2の被着体33とを固定するのに十分な粘着力を発揮できる厚みであり、且つ延伸することで剥離できる厚みであればよい。
【0059】
[剥離ライナー]
第3の剥離ライナー11、第4の剥離ライナー13としては、それぞれシリコーン系離型剤層と基材とを有する公知の剥離ライナーを使用することができる。基材の構成材料は、例えばPET、PE、PP等の樹脂や合成紙、不織布、上質紙、グラシン紙等であってもよい。
【0060】
第3の剥離ライナー11の基材と第4の剥離ライナー13の基材とは同一材料により形成されていてもよいし、互いに異なる材料により形成されていてもよい。第3の剥離ライナー11の基材と第4の剥離ライナー13の基材のいずれか一方を樹脂製にし、残りの一方を紙製にすることにより、第3の剥離ライナー11及び第4の剥離ライナーを両面粘着テープ20から剥がしやすくすることができる。
【0061】
[その他の変形例]
図4は、本開示の変形例に係る両面粘着テープ20aの使用例を示す断面図である。変形例に係る両面粘着テープ20aでは、樹脂基材1のうち、第1の粘着剤層7及び第2の粘着剤層9の間からいずれかの端部方向に向けて突出する部分が延出部35として設けられている。これ以外の構成は図3に示す両面粘着テープ20と同様である。
【0062】
本変形例に係る両面粘着テープ20aによれば、両面に第1の粘着剤層7及び第2の粘着剤層9が設けられていない延出部35を使用後に手で把持して引張ることで、容易に両面粘着テープ20aを第1の被着体31及び第2の被着体33から剥離することが可能となる。両面粘着テープ20aの平面形状が四辺形である場合、延出部35の幅は、把持しやすい幅であればよく、伸縮性フィルム10(樹脂基材1)のうち、第1の粘着剤層7及び第2の粘着剤層9が設けられた部分の幅と同じであってもよいし、当該部分の幅より狭い、又は広くてもよい。
【0063】
また、上述の両面粘着テープ20、20aにおいて、伸縮性フィルム10のバイオマス度は5%以上30%以下であってもよい。第1の粘着剤層7及び第2の粘着剤層9の構成材料が生物由来材料を含んでいてもよく、各粘着剤層のバイオマス度は5%以上40%以下程度であってもよい。
【0064】
なお、以上で説明した伸縮性フィルム10及び両面粘着テープ20、20aの構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【実施例0065】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0066】
[製造方法]
<製造例1>
1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール及びアジピン酸を反応させて得られた数平均分子量1500のポリエステルポリオール42.0質量部、及び1,4-ブタンジオールとアジピン酸とを反応させて得られた数平均分子量600のポリブチレンアジペートポリオール18.0質量部、トリメチロールプロパン0.05質量部を、メチルエチルケトン28.0質量部により希釈した。
【0067】
次に、希釈液にトリレンジイソシアネート10.0質量部を混合し、80℃で3時
間反応させた後、1,4-ブタンジオール0.20質量部を反応させることによって、水酸基を有する熱硬化型のポリウレタン溶液(固形分67質量%、25℃における粘度10000~20000mPa・s)を得た。
【0068】
<実施例1>
製造例1で調製されたポリウレタン溶液100質量部に、ヘキサメチレンジイソシアネート(硬化剤)2.5質量部、アセチルアセトン3.0質量部及びトルエン25.0質量部を加えて混合することによって塗液を作製した。この塗液をPET製の第1の剥離ライナーの剥離面に、コンマ型コーターを用いて塗工した後、100℃で5分間加熱することにより、塗液を硬化及び乾燥させてポリウレタンを含む厚さ50μmの樹脂基材を作製した。次に、樹脂基材の第1の剥離ライナーが形成されたのとは反対側の面に第2の剥離ライナーを貼り合わせた。その後、40℃、3日間エージングを行った。これにより、図1に示すような伸縮性フィルムを作製した。
【0069】
<実施例2>
上述の硬化剤をポリウレタン溶液100質量部に対して3.5質量部加えた以外は実施例1と同様の方法により、厚さ50μmの樹脂基材を備えた伸縮性フィルムを作製した。
【0070】
<実施例3>
上述の硬化剤をポリウレタン溶液100質量部に対して5.0質量部加えた以外は実施例1と同様の方法により、厚さ50μmの樹脂基材を備えた伸縮性フィルムを作製した。
【0071】
<実施例4>
上述の硬化剤をポリウレタン溶液100質量部に対して10.0質量部加えた以外は実施例1と同様の方法により、厚さ50μmの樹脂基材を備えた伸縮性フィルムを作製した。
【0072】
<実施例5>
樹脂基材の厚みを10μmにしたこと以外は実施例3と同様の方法により、伸縮性フィルムを作製した。
【0073】
<実施例6>
樹脂基材の厚みを100μmにしたこと以外は実施例3と同様の方法により、伸縮性フィルムを作製した。
【0074】
<実施例7>
コンマ型コーターを用いて実施例6で作製した伸縮性フィルムから第2の剥離ライナーを剥がし、第4の剥離ライナー上に第2の粘着剤層を形成した後、伸縮性フィルムの露出面に第2の粘着剤層を貼り合わせた。次いで、第1の剥離ライナーを伸縮性フィルムから剥がし、第3の剥離ライナー上に第1の粘着剤層を形成した後、伸縮性フィルムの露出面に第1の粘着剤層を貼り合わせた。第1の粘着剤層及び第2の粘着剤層の厚みは共に25μmとした。次いで、40℃で3日間エージングを行うことにより、両面粘着テープ20を作製した。
【0075】
<比較例1>
上述の硬化剤をポリウレタン溶液100質量部に対して2.0質量部加えた以外は実施例1と同様の方法により、厚さ50μmの樹脂基材を備えた伸縮性フィルムを作製した。
【0076】
<比較例2>
市販の延伸剥離型の両面粘着テープと同様の構成の両面粘着テープを作製した。具体的には、公知の共押し出し法により、厚さ790μmの柔軟なポリエチレン製発泡体の両面にそれぞれ厚さ46μmのポリエチレンフィルムが形成された構成の芯材を作製した。次いで、公知の方法でゴム系粘着剤及び架橋剤を含む塗液を第1の剥離ライナーに塗工した後、芯材の一方の面に第1の剥離ライナーを貼り合わせた。次いで、第2の剥離ライナーに先程と同じ組成の塗液を塗工した後、芯材の他方の面に貼り合わせて、加熱することにより、芯材の両面にゴム系粘着剤層を有する厚さ約900μmの両面粘着テープを作製した。
【0077】
実施例1~4及び比較例1で作製した伸縮性フィルムの配合及び塗工結果を表1に示す。表1において、塗工結果が「良好」とあるのは、伸縮性フィルムが形状を保たまま第2の剥離ライナー及び第1の剥離ライナーから剥離できる程度に硬化していることを示す。
【0078】
【表1】
【0079】
[測定方法]
<破断強度、破断伸度及びモジュラスの測定>
実施例1~6及び比較例1で作製した伸縮性フィルム、並びに実施例7及び比較例2で作製した両面粘着テープを、幅10mm、長さ50mmの短冊状にカットし、引張試験機を用い、23℃、相対湿度50%の環境下、つかみ間隔20mm、引張速度200mm/minで引張り試験を行い、破断強度、破断伸度の測定を行った。測定は実施例7を除いてMD方向とTD方向のそれぞれについて行った。
【0080】
また、実施例1~6及び比較例1で作製した伸縮性フィルム、並びに実施例7で作製した両面粘着テープを幅10mm、長さ50mmの短冊状にカットし、引張試験機を用い、23℃、相対湿度50%の環境下、つかみ間隔20mm、引張速度200mm/minで引張り試験を行い、MD方向について100%伸張時の引張応力(100%モジュラス)と、300%伸張時の引張応力(300%モジュラス)とを測定した。上述の測定は、第1の剥離ライナー及び第2の剥離ライナー又は第3の剥離ライナー及び第4の剥離ライナーを剥がした状態の試料を用いて測定した。
【0081】
<光学測定>
各試料の全光線透過率は、剥離ライナーを剥がした状態で、積分計付き分光光度計を用いて、JIS K7361-1に準拠した方法により行った。ヘイズ値の測定は、積分計付き分光光度計を用いて、JIS K7136に準拠した方法により行った。
【0082】
<ヒステリシスロスの測定>
伸縮性フィルム又は両面粘着テープの各試料を、幅10mm、長さ50mmの短冊状にカットし、第1の剥離ライナー及び第2の剥離ライナー又は第3の剥離ライナー及び第4の剥離ライナーを剥がした状態の試験片を準備した。この試験片を引張試験機に設置し、つかみ間隔20mm、速度200mm/minで100%の位置まで引張った状態で10秒間維持してから0%の位置に戻して10秒間維持した。この引張りと復元とを10サイクル繰り返した。ひずみ100%でのヒステリシスロスの値(%)は、100-100×(復元10回目の伸張率100%の位置での応力)/(引張り1回目の伸張率100%の位置での応力)の式に基づいて算出した。ひずみ50%でのヒステリシスロスの値(%)は、100-100×(復元10回目の伸張率50%の位置での応力)/(引張り1回目の伸張率50%の位置での応力)の式に基づいて算出した。
【0083】
また、上述の試験片の引張りと復元とを50サイクル繰り返し、100-100×(復元50回目の伸張率100%の位置での応力)/(引張り1回目の伸張率100%の位置での応力)の式に基づいて、ひずみ100%でのヒステリシスロスの値(%)を算出した。ひずみ50%でのヒステリシスロスの値は、100-100×(復元50回目の伸張率50%の位置での応力)/(引張り1回目の伸張率50%の位置での応力)の式に基づいて算出した。
【0084】
<ゴム硬度の測定>
ゴム硬度は、伸縮性フィルムの試料を、厚さが6mmになるまで積層した後、50℃、0.5MPa、30分の条件でオートクレーブを行うことで試験片を作製した。次いで、アスカーゴム硬度計A型を用いてこの試験片に1kgの荷重を加え、加圧5秒後の数値を測定することで、ゴム硬度の測定値を得た。
【0085】
<両面粘着テープの再使用試験>
実施例7で作製した両面粘着テープと比較例2で作製した両面粘着テープを、幅10mm、長さ50mmの大きさに裁断して試験片を作製した。軽剥離側の第4の剥離ライナーを剥離して第2の粘着剤層をSUS鋼板に貼り付けた後、重剥離側の第3の剥離ライナーを剥がして第1の粘着剤層に幅10mmで長さ40mm、厚さ1mmのPET板を貼り付けた。この際、両面粘着テープの端部がPET板から露出するようにした。23℃で24時間経過した後、長さ10mmの両面粘着テープの露出部分を手でつかみ、貼り付け面に平行な方向に引っ張って剥離させた。
【0086】
回収した両面粘着テープの一方の面を再度SUS鋼板に貼り付け、次いで両面粘着テープの他方の面にPET板を貼り付けた。その後、両面粘着テープの端部を手で引っ張ってSUS鋼板及びPET板から剥離させた。二度目の貼り付け及び剥離が可能であり、且つ両面粘着テープに破断が生じなければ「再使用可能」と判定し、変形や破断等により二度目の貼り付け及び剥離ができない場合は「再使用不可」と判定した。
【0087】
[測定結果]
各測定の結果を表2~表5に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
【表5】
表2に示す実施例1~4及び比較例1の結果から、樹脂基材を形成するための主剤が同一で樹脂基材の厚みが互いに等しい場合、硬化剤の添加量が増えるにつれて破断強度は大きく、且つ破断伸度は小さくなる傾向にあることが確認できた。実施例1~4で作製された伸縮性フィルムの破断強度はいずれも10N/10mm以上35N/10mm以下の範囲にあり、破断伸度はいずれも300%以上900%以下であった。
【0092】
表3に示すように、実施例1~4で作製された伸縮性フィルムのゴム硬度はいずれも40°以上75°以下であったが、比較例1で作製された伸縮性フィルムのゴム硬度は40°未満であった。
【0093】
表3及び表4に示すように、実施例1~6で作製された伸縮性フィルムはいずれも引張りと復元とを10サイクル繰り返した場合のひずみ100%でのヒステリシスロスが20%以下であり、良好な復元性を有することが確認できた。特に、実施例2&#12316;6で作製された伸縮性フィルムの50サイクル経過時のヒステリシスロスは10%以下であった。これに対し、比較例1で作製された伸縮性フィルムではひずみ50%とひずみ100%でのヒステリシスロスがいずれも30%を超えていた。
【0094】
また、硬化剤の添加量が同一である場合には、樹脂基材の膜厚が厚くなる程破断強度が増し、伸張させた場合に破断しにくくなることが確認できた。
【0095】
また、表5に示すように、実施例7で作製された両面粘着テープでは引張りと復元とを50サイクル繰り返した場合のひずみ50%とひずみ100%でのヒステリシスロスがいずれも10%以下であったのに対し、比較例2で作製された両面粘着テープでは10サイクル経過時で既にヒステリシスロスが20%を超えていることが確認できた。実施例7で作製された両面粘着テープでは再使用が可能であったのに対し、比較例2で作製された両面粘着テープでは最初の剥離時に大きく変形してしまい、再使用することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本明細書に開示された伸縮性フィルムは、部材固定用粘着テープの芯材や保護フィルム等として利用可能であり、両面粘着テープは、再使用できる延伸剥離型の粘着テープとして利用できる。
【符号の説明】
【0097】
1 樹脂基材
3 第1の剥離ライナー
5 第2の剥離ライナー
7 第1の粘着剤層
9 第2の粘着剤層
10 伸縮性フィルム
11 第3の剥離ライナー
13 第4の剥離ライナー
20、20a 両面粘着テープ
30 積層体
31 第1の被着体
33 第2の被着体
35 延出部
図1
図2
図3
図4