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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006699
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】光受信方法及び光受信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/69 20130101AFI20230111BHJP
   H04B 10/2575 20130101ALI20230111BHJP
   H04B 1/18 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
H04B10/69
H04B10/2575
H04B1/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109426
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000114226
【氏名又は名称】ミハル通信株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正英
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正治
(72)【発明者】
【氏名】椿 一成
(72)【発明者】
【氏名】栗原 正美
【テーマコード(参考)】
5K062
5K102
【Fターム(参考)】
5K062AA12
5K062BF02
5K102AA52
5K102AB02
5K102AD04
5K102AH21
5K102MA02
5K102MB13
5K102PH31
5K102RC02
5K102RD05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】無給電時の光入力レベルが高くても、光電変換されたFM信号の出力を低下しにくくする光受信方法及び光受信装置(光回線終端装置)を提供する。
【解決手段】光受信装置は、受信した光信号を電気信号に変換する光電変換手段1と、光電変換手段1に対して電圧供給する電源供給手段Vccと、光電変換手段1が出力する電気信号を出力端側に伝送する二つの伝送ラインAL、KLを備える。二つの伝送ラインのうちの何れか一方の伝送ラインに短絡回路4があり、電源供給手段Vccから光電変換手段1に電源供給される給電時には双方の伝送ライン電気信号が出力され、電源供給されない無給電時には短絡回路4を備えた伝送ラインKLが短絡回路4で短絡されて、その伝送ラインKLからは電気信号が出力されず、短絡されない他方の伝送ラインALからのみ電気信号が出力されて、その伝送ラインALに接続された受信機器で少なくともFM信号を受信する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
FM信号とRF信号を含む光信号を、光電変換手段により光電変換して両信号を含む電気信号に変換する光受信方法において、
光電変換手段に電源電圧が供給される給電時には、当該光電変換手段が光信号を電気信号に変換して、光電変換手段の二つの出力側に接続されている二つの伝送ラインの双方に出力し、夫々の伝送ラインの出力端に接続された受信機器でFM信号とRF信号の双方又はいずれか一方を受信することができ、
前記光電変換手段に電源電圧が供給されない無給電時には、当該光電変換手段が光信号を電気信号に変換して、光電変換手段の二つの出力側に接続されている二つの伝送ラインの双方に出力されるが、一方の伝送ラインが短絡回路で短絡されてその伝送ラインからは電気信号が出力されず、短絡されない他方の伝送ラインからのみ電気信号が出力されて、短絡されない伝送ラインに接続された受信機器で少なくともFM信号を受信できるようにした、
ことを特徴とする光受信方法。
【請求項2】
請求項1記載の光受信方法において、
光電変換手段がフォトダイオードであり、二つの伝送ラインの一方がフォトダイオードのアノード側に接続されたアノード側伝送ライン、他方がフォトダイオードのカソード側に接続されたカソード側伝送ラインであり、給電時にはフォトダイオードのアノード側から出力される電気信号がアノード側伝送ラインに、カソード側から出力される電気信号がカソード側伝送ラインに出力され、無給電時にはアノード側伝送ライン又はカソード側伝送ラインの一方が短絡され、他方が短絡されず、短絡されない伝送ラインから少なくともFM電気信号が出力されるようにした、
ことを特徴とする光受信方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の光受信方法において、
光電変換手段から出力される電流が、給電時には逆方向バイアス状態となってインピーダンスが増大し、無給電時には順方向バイアス状態となってインピーダンスが減少する還流手段を通して光電変換手段に還流されるようにした、
ことを特徴とする光受信方法。
【請求項4】
FM信号とRF信号を含む光信号を受信して、両信号を含む電気信号に変換する光電変換手段を備えた光受信装置において、
前記光信号を電流に変換する光電変換手段と、
前記光電変換手段に対して電圧を供給する電源供給手段と、
前記光電変換手段の二つの出力側から出力される電流を伝送する二つの伝送ラインを備え、
二つの伝送ラインのうちいずれか一方の伝送ラインに短絡回路があり、
前記電源供給手段から光電変換手段に電源供給される給電時には、前記二つの伝送ラインに電流が出力され、
前記電源供給手段から光電変換手段に電源供給されない無給電時には、短絡回路を備えた伝送ラインが当該短絡回路で短絡されてその伝送ラインには電流が流れず、短絡されない他方の伝送ラインからのみ電流が出力されて、少なくともFM信号を短絡されない伝送ラインに接続された受信機器で受信できる、
ことを特徴とする光受信装置。
【請求項5】
請求項4記載の光受信装置において、
短絡回路が結合コンデンサと短絡スイッチの組み合わせで構成されている、
ことを特徴とする光受信装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5記載の光受信装置において、
光電変換手段がフォトダイオードであり、一方の伝送ラインがフォトダイオードのアノード側から出力される電気信号を伝送するアノード側伝送ラインであり、他方の伝送ラインがフォトダイオードのカソード側から出力される電気信号を伝送するカソード側伝送ラインである、
ことを特徴とする光受信装置。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の光受信装置において、
光電変換手段に直列接続されて、光電変換手段からの電流を電圧に変換して出力する電流電圧変換手段を備えた、
ことを特徴とする光受信装置。
【請求項8】
請求項7記載の光受信装置において、
光電変換手段及び電流電圧変換手段に対して並列接続された整流手段を備え、
整流手段は電源供給手段からの給電時には逆方向バイアス状態となってインピーダンスが増大し、無給電時には順方向バイアス状態となってインピーダンスが減少する、
ことを特徴とする光受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信側から光伝送網を介して受信者(加入者)側に送信される光信号を電気信号に変換する光受信方法及び光受信装置(光回線終端装置:ONU:Optical Network Unit)に関する。
【背景技術】
【0002】
光伝送システムを採用したCATVシステムでは、送信者側の光送信機と受信者側の光受信装置とが光伝送路を介して接続されている。CATVシステムでは告知放送信号(FM信号)とテレビ放送信号(RF信号)とを多重化したFM・RF多重光信号(以下、単に「光信号」という。)を受信者側に配信し、その光信号をONUでFM・RF多重電気信号(以下、単に「電気信号」という。)に変換して出力し、ONUの出力側に接続されている受信者側の受信機器で受信できるようにしている。
【0003】
光受信装置には光信号を電気信号に変換する光電変換装置が組み込まれている。光電変換装置には一般的にフォトダイオード(PD:Photo Diode)が使用されている。PDに逆電圧(逆バイアス電圧)を印加することで、PDに入射した光エネルギーの光強度変化に比例した電流(逆電流)が流れて光電変換される。
【0004】
告知放送は災害情報や緊急情報等の放送であるため、商用電源停電時(無給電時:逆バイアス時)でも光電変換して受信できることが必要である。無給電時でも告知放送を受信できるようにした光電変換装置は従来からある(特許文献1、2)。
【0005】
特許文献1は図9(a)(b)のように高域伝送路10と低域伝送路11を設けて、高域信号については高域伝送路10を介してフォトダイオード2に還流させることで、高域信号が電流調節手段を通過する場合に生じるロスを回避できるようにしてある。また、高域伝送路10に結合コンデンサC2を設け、結合コンデンサC2をフォトダイオード2のカソードK側に直列に接続して接地してある。結合コンデンサC2はフォトダイオード2から出力される電気信号のうち高域信号のみを結合して通過させるための高域信号通過手段であるため、低域ではハイインピーダンスになり、高域ではローインピーダンスとなるように数pFの小容量のコンデンサが使用されている。結合コンデンサC2は無給電時には高域信号を還流(ループ)させる効果があるが、給電時は高周波信号を接地(ショート)させるものであるため大容量のコンデンサを使用することはできない。このため、高域信号に対するインピーダンスが大きくなり、無給電時の光入力レベルが高くなると、光電変換されたFM信号(高域信号)の出力が低減する。
【0006】
特許文献2は図10(a)(b)のように、電源ラインにショットキーバリアダイオード11を実装して無給電時のFM信号の高出力化を可能としてあるが、ショットキーバリアダイオード11は容量が非常に大きく周波数特性に影響があるため、インダクタ14を通した後に実装している。この場合、給電時は、光入力レベルが高くなっても光電変換されたFM信号の出力が殆ど低下せず(図8の給電時曲線:従来/本特許)、理想曲線(図8)に近い曲線になるが、無給電時は、光入力レベルが高くなると光電変換されたFM信号の出力が低下し(図8の無給電時曲線:従来)、高出力化が必ずしも十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-15164号公報
【特許文献2】特開2016-213579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、無給電時に光入力レベルが高くなっても、光電変換された電気信号(FM信号)の高出力化を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光受信方法は、光伝送システムで伝送される光信号を、光電変換手段で光信号の強度(光強度)に応じた電気信号に変換し、変換された電気信号を光電変換手段の出力側の二つの伝送ラインの双方に出力して、夫々の伝送ラインの出力側に接続された受信機器で受信することができるようにした光受信方法である。
【0010】
本発明の光受信方法の特徴は、光電変換手段に電源供給手段から電圧が供給される給電時には、光電変換手段で光電変換された電気信号が光電変換手段の出力側の伝送ラインの双方に流れて、両伝送ラインに接続された受信機器で電気信号を受信することができ、電源供給手段から電圧が供給されない無給電時には、一方の伝送ラインを結合コンデンサと短絡スイッチを備えた短絡回路で短絡して光電変換手段から短絡して、光電変換手段から出力される電気信号が短絡された伝送ラインには伝送されず、短絡されない伝送ラインに伝送されて、その伝送ラインに接続された受信機器で少なくともFM信号を受信できるようにしたことである。
【0011】
本発明の光受信装置は、光伝送システムで伝送される光多重信号を受信して、両信号を含む電気信号に変換する光受信装置である。その特徴は、受信した光多重信号をその光強度に応じた電気信号に変換する光電変換手段と、光電変換手段に電圧を供給する電源供給手段と、光電変換手段の出力側から出力される電気信号を伝送する二つの伝送ラインを備え、いずれか一方の伝送ラインを光電変換手段から短絡する短絡回路と、電源供給手段から光電変換手段に電源供給される給電時には双方の伝送ラインで電気信号が伝送されて、それら伝送ラインの夫々に接続された受信機器で電気信号を受信することができ、電源供給手段から光電変換手段に電源電圧が供給されない無給電時には、短絡回路を備えた伝送ラインが当該短絡回路で短絡されて光電変換手段の一方の出力側から出力される電気信号はその伝送ラインを伝送されず、光電変換手段の他方の出力側から出力される電気信号は短絡回路を備えない伝送ラインを伝送されて、その伝送ラインに接続された受信機器で少なくともFM信号を受信できるようにしたことにある。
【0012】
前記結合コンデンサは数pF程度ではなく大容量のコンデンサを使用することが望ましい。光電変換手段をフォトダイオードとし、フォトダイオードのアノード側にアノード側伝送ライン、カソード側にカソード側伝送ラインを設けることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光受信方法及び光受信装置によれば次のような効果がある。
(1)無給電時に光電変換手段の一方の出力側の伝送ラインが、短絡回路で短絡されて光電変換手段から短絡されるので、光電変換手段から出力される電気信号がその伝送ラインには流れず、短絡されない他方の伝送ラインに流れる。このため、無給電時に光信号の入力レベルが高くなってもFM信号の出力レベルが殆ど低減せず(図8の無給電時:本特許)、理想曲線(図8)に近い高出力化が可能となる。
(2)結合コンデンサとして大容量のコンデンサを使用できるため、高域信号に対するインピーダンスが小さくなり、無給電時の光入力レベルが高くなっても、光電変換されたFM信号(高域信号)の出力が低減しない(図8)。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の光受信装置の一例であって、カソード側伝送ラインに短絡回路(結合コンデンサ及び短絡スイッチ)を設けた場合の回路図。
図2】本発明の光受信装置の他例であって、短絡回路を電源ラインの外側に設けた場合の回路図。
図3】本発明の光受信装置の他例であって、増幅器が複数のダイオードで構成された場合の回路図。
図4】本発明の光受信装置の他例であって、出力端子が一つの出力端子(共通出力端子)であり、二つの伝送ラインをスイッチで共通端子に切り替え接続する場合の回路図。
図5】本発明の光受信装置の他例であって、出力端子が一つの共通出力端子であり、二つの伝送ラインの出力を混合器で共通出力端子に混合する場合の回路図。
図6】本発明の光受信装置の他例であって、図1のアノード側伝送ラインとカソード側伝送ラインの構成を入れ替えた場合の回路図。
図7】本発明の光受信装置の他例であって、図2のアノード側伝送ラインとカソード側伝送ラインの構成を入れ替えた場合の回路図。
図8】無給電時の光信号の入力強度と光電変換されたFM信号の出力レベルの特性比較図。
図9】従来の光受信装置の回路図であり、(a)は給電時、(b)は無給電時の説明図。
図10】従来の他の光受信装置の回路図であり、(a)は給電時、(b)は無給電時の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の光受信方法と光受信装置の実施形態を併せて説明する。
本発明の光受信方法は、光電変換手段に電源供給手段から電圧が供給される給電時には、光電変換された電気信号を光電変換手段の出力側の二つの伝送ラインの双方で伝送して、両伝送ラインに接続された受信機器で電気信号を受信することができ、無給電時には、一方の伝送ラインを短絡回路で短絡して、光電変換手段から出力される電気信号が短絡された伝送ラインからは出力されず、短絡されない伝送ラインからのみ出力されて、その伝送ラインに接続された受信機器で少なくともFMの電気信号を受信できるようにした方法である。
【0016】
(光受信装置の実施形態1:図1
図1は本発明の光受信装置の実施形態の一例である、この光受信装置は、光信号を電気信号に変換する光電変換手段1、光電変換手段1に電源を供給する電源供給手段Vcc、光電変換手段1で光電変換された電流を電圧に変換する電流電圧変換手段(電流電圧変換回路)2、光電変換手段1の二つの出力側に設けられた伝送ラインAL、KL、整流用ダイオードD2、コイルL1を備えている。前記両伝送ラインAL、KLのうち一方の伝送ラインKLは短絡回路4を備えている。短絡回路4は結合コンデンサC5と短絡スイッチSW2で構成されており、無給電時に伝送ラインKLを短絡させて光電変換手段1を短絡するものである。OUT1、OUT2は出力端子である。
【0017】
光電変換手段1にはフォトダイオードD1が使用されている。フォトダイオードD1のカソード側はコイルL1を介して電源供給手段Vccに接続され、アノード側は電流電圧変換回路2に直列接続されている。光電変換手段1は光電変換可能なものであればフォトダイオード以外のものであってもよい。フォトダイオードD1はアノード側が電流電圧変換回路2を介して接地され、カソード側が電源供給手段Vcc及びコイルL1、L2に接続されて、アノードから出力される電流を電流電圧変換回路2を介してフォトダイオードD1のカソードに還流する還流回路5を構成する。
【0018】
図1の電流電圧変換回路2はフォトダイオードD1から出力される電流を電圧に変換して出力するものであり、抵抗R1が使用されている。電流電圧変換回路2は他の構成であってもよい。
【0019】
図1の二つの伝送ラインAL、KLは、光電変換手段1で光電変換された電気信号を出力端子OUT1、OUT2に伝送するものである。光電変換手段1にフォトダイオードD1を使用した図1ではフォトダイオードD1のカソード側をカソード側伝送ラインKL、アノード側をアノード側伝送ラインALとしてある。
【0020】
結合コンデンサC5はフォトダイオードD1から出力される電気信号のうち高域信号と結合されるものである。結合コンデンサC5としては数pF程度ではなく、数十pF以上の大容量のものが適する。コンデンサは、静電容量が大きくなるとインピーダンスが減少する特性がある。本発明では結合コンデンサC5に大容量のコンデンサを使用することにより、高域信号に対するインピーダンスが小さくなり、無給電時に光入力レベルが高くなっても、光電変換されたFM信号(高域信号)の出力が低減しない(図8)。
【0021】
短絡スイッチSW2は結合コンデンサC5との組み合わせで短絡回路4を構成するものである。短絡スイッチSW2は増幅器(IC1)、DCカット用のコンデンサC1、C2と共にカソード側伝送ラインKLに設けてある。短絡スイッチSW2は給電時に開、無給電時に自動で閉に切り替わるものである。給電時に開くとカソード側伝送ラインKLに出力されるフォトダイオードD1のカソード側からの出力が、出力端子OUT1に出力され、無給電時に閉じるとカソード側伝送ラインKLを接地(短絡)して、結合コンデンサC5で結合された電気信号が接地(短絡)されて、出力端子OUT1に出力されない。
【0022】
図1の整流用ダイオードD2には、例えば、ショットキーバリアダイオードを使用することができる。整流用ダイオードD2は電源供給手段Vccから電圧が供給される給電時には逆方向バイアス状態となってインピーダンスが増大し、電圧が供給されない無給電時には順方向バイアス状態となってインピーダンスが減少する。整流用ダイオードD2はバイポーラトランジスタのベースとエミッタを接続した構成にしたり、FETのゲートとソースを接続した構成としたりすることもできる。また、多数のダイオードが集積された集積回路とすることもできる。
【0023】
図1の光受信装置の給電時の動作]
図1の電源供給手段Vccには各種電源を使用可能であるが、例えば、商用電源を降圧し、整流して生成することができる。商用電源が正常である場合は、電源供給手段Vccの電圧は整流用ダイオードD2、フォトダイオードD1に逆電圧として印加されて給電状態となる。
【0024】
給電時には、電源供給手段VccからコイルL1、増幅器IC1にも給電される。このとき短絡スイッチSW2は開となっている。この状態で、図示しない光伝送網を介して伝送されてきた光信号がフォトダイオードD1に入力されると、フォトダイオードD1は光入力レベルに対応する電気信号(電流)を出力する。光入力レベルが高く(強く)なると光入力レベルに応じて出力電流が大きくなる。出力電流が変化すると電流電圧変換回路2に流れる電流も変化する。電流電圧変換回路2はフォトダイオードD1のアノード側から出力される電流を電圧に変換する。フォトダイオードD1のアノード側の出力電流はアノード側伝送ラインALを通して出力端子OUT2に出力され、カソード側の出力電流はカソード側伝送ラインKLを通して出力端子OUT1に出力される。カソード側伝送ラインKLを流れる電流は増幅器IC1で増幅されて出力端子OUT1に出力される。出力端子OUT1、OUT2に出力される信号はFM・RF多重信号であるため、出力端子OUT1に接続されるTV受像機でRF信号を、出力端子OUT2に接続される告知放送受信機でFM信号を受信することができる。
【0025】
図1の光受信装置の無給電時の動作]
商用電源の停電やその他の理由によって、図1の光受信装置に電源供給手段Vccから電圧が給電されなくなる無給電時になると、フォトダイオードD1は逆方向バイアスの状態ではなくなり、短絡スイッチSW2は自動的に閉じる。この状態で、光がフォトダイオードD1に入力されると、光の入力レベルに対応する電流がフォトダイオードD1のアノードから出力される。この電流は電流電圧変換回路2の抵抗R1からトランスT1、コイルL1を介して整流用ダイオードD2のアノードに印加される。このとき、整流用ダイオードD2は順方向バイアス状態となってインピーダンスが減少し、フォトダイオードD1、トランスT1、抵抗R1、コンデンサC4、整流用ダイオードD2及びコイルL1による閉回路(還流回路)5が形成されるので、フォトダイオードD1のアノードから出力される電流はこの還流回路5を経てフォトダイオードD1のカソードに還流する。
【0026】
無給電時は、電源供給手段Vccの電源回路(図示せず)の電圧を制御するための出力トランジスタが遮断状態となっているので、図1の整流用ダイオードD2のカソードから出力された電流は電源供給手段Vccの電源回路側には流れず、フォトダイオードD1のアノードから出力される電流は略全てがフォトダイオードD1のカソードに還流する。このとき、短絡スイッチSW2が閉じているため、還流された電流は結合コンデンサC5-短絡スイッチSW2を通してアースされて(短絡されて)カソード側伝送ラインKLには流れない。このとき、フォトダイオードD1のアノード側から出力される電流がトランスT1の出力端子(二次側端子)からアノード側伝送ラインALの結合コンデンサC3を介して出力端子OUT2に出力される。出力端子OUT2に出力される信号はFM・RF多重信号であるため、無給電時であっても出力端子OUT2に接続されている告知放送受信機でFM信号を受信することができる。
【0027】
(光受信装置の実施形態2:図2
図2は本発明の光受信装置の第2の実施形態である。その基本構成は図1と同様であり、異なるのは、図2のカソード側伝送ラインKLの結合コンデンサC5及び短絡スイッチSW2を、電源ラインVLの外側に配置したことである。結合コンデンサC5は図1の場合と同様に大容量のものが適する。短絡スイッチSW2も図1の場合と同様に給電時に開であり、無給電時に自動的に閉に切り替わるものである。
【0028】
図2の光受信装置の給電時の動作]
図2の光信号装置の給電時の動作、無給電時の動作は図1の場合と同様である。即ち、給電時には短絡スイッチSW2が開いているため、フォトダイオードD1のカソード側から出力されてカソード側伝送ラインKLに流れる電流は、増幅器IC1で増幅されて出力端子OUT1に出力され、出力端子OUT1に接続されているTV受像機でRF信号を受信することができる。フォトダイオードD1のアノード側から出力される電流はトランスT1の二次側からアノード側伝送ラインALに流れて出力端子OUT2に出力され、出力端子OUT2に接続されている告知放送受信機でFM信号を受信することができる。
【0029】
図2の光受信装置の無給電時の動作]
無給電時には短絡スイッチSW2が自動的に閉じ、カソード側伝送ラインKLが結合コンデンサC5-短絡スイッチSW2を通して接地(短絡)される。このため、フォトダイオードD1のカソード側から出力される電流はカソード側伝送ラインKLに出力されないが、フォトダイオードD1のアノードから出力される電流はトランスT1の二次側からアノード側伝送ラインALに流れて出力端子OUT2に出力される。このため、無給電時でも、FM・RF信号はレベル低下せずに出力端子OUT2に出力され、出力端子OUT2に接続されている告知放送受信機でFM信号を受信することができる。
【0030】
(光受信装置の実施形態3:図3
図1の光受信装置は増幅器IC1を一個だけ使用した場合であるが、図3は複数の増幅器IC1、IC2、IC3・・・を多段接続したものである。増幅器IC1は複数の増幅器IC1、IC2、IC3・・・を備えた集積回路とすることもできる。
【0031】
図3の光受信装置の給電時、無給電時の動作]
図3の光受信装置は、基本的構成が図1の場合と同様であり、異なるのは、増幅器IC1を複数にしたことだけであるため、図3の光受信装置の給電時、無給電時の動作は図1の場合と同様である。
【0032】
(光受信装置の実施形態4:図4
図4の光受信装置は出力端子共通型であり、図1図3の光受信装置のRF信号出力用の出力端子OUT1とFM信号出力用の出力端子OUT2を一つの出力端子(共通出力端子)OUT3とし、切り替えスイッチSW3の切り替えにより、カソード側伝送ラインKLから出力される電流とアノード側伝送ラインALから出力される電流のいずれかを共通出力端子OUT3に出力できるようにしたものである。図4の光受信装置の給電時、無給電時の切り替えスイッチSW3までの動作は図1図3の場合と同様である。このため、共通出力端子OUT3に接続してある受信機がTV受信機の場合はRF信号とFM信号の双方を受信することができ、告知放送受信機の場合はFM信号を受信することができる。
【0033】
(光受信装置の実施形態5:図5
図5の光受信装置は、図4の切り替えスイッチSW3に代えて混合器3を使用したものである。この場合は、カソード側伝送ラインKLからの出力とアノード側伝送ラインALからの出力が混合器3で混合されて、共通出力端子OUT3にRF・FM混合の電気信号が出力される。図5の光受信装置の給電時、無給電時の、切り替えスイッチSW3までの動作は図4の場合と同様である。このため、共通出力端子OUT3に接続してある受信機がTV受信機の場合はRF信号とFM信号の双方を受信することができ、告知放送受信機の場合はFM信号を受信することができる。
【0034】
(光受信装置の実施形態6:図6
図1図2の実施形態では、カソード側伝送ラインKLに結合コンデンサC5、増幅器IC1、直流阻止用のコンデンサC2、C3等を入れてあるが、フォトダイオードD1は、カソード側とアノード側のどちらからも同じ電流が出力されるため、カソード側伝送ラインKLの構成とアノード側伝送ラインALの構成を入れ替えることもできる。図6の光受信装置は図1のカソード側伝送ラインKLの構成とアノード側伝送ラインALの構成を入れ替えたものである。具体的には、アノード側伝送ラインALに結合コンデンサC5、短絡スイッチSW2、コンデンサC1、増幅器IC1、コンデンサC2を設け、カソード側伝送ラインKLにコンデンサC3を入れたものである。短絡スイッチSW2は図3の場合と同様に給電時に開、無給電時に自動的に閉に切り替わるものである。結合コンデンサC5は図2の場合と同様に大容量のものが適する。
【0035】
図6の光受信装置の給電時の動作]
図6の光受信装置の給電時の動作は図1の場合と同様である。フォトダイオードD1で光電変換された電流がカソードからカソード側伝送ラインKLに、アノードからアノード側伝送ラインALに出力される。夫々の伝送ラインを流れる電気信号は出力端子OUT1、OUT2に出力され、それら出力端子OUT1、OUT2に接続された受信機器でFM信号、RF信号を受信することができる。
【0036】
図6の光受信装置の無給電時の動作]
図6の光受信装置の無給電時の動作は、図1の光受信装置の無給電時の動作と同様である。無給電時には短絡スイッチSW2が閉となってアノード側伝送ラインALが短絡されるため、フォトダイオードD1で光電変換された電流は、結合コンデンサC5、短絡スイッチSW2を備えたアノード側伝送ラインALに流れることはなく、カソード側伝送ラインKLにのみ流れて出力端子OUT1に出力される。このため、出力端子OUT1に接続された告知放送受信機で少なくともFM信号を受信することができる。
【0037】
(光受信装置の実施形態7:図7
図7の実施形態は図2のカソード側伝送ラインKLの構成とアノード側伝送ラインALの構成を入れ替えたものである。具体的には、アノード側伝送ラインALに結合コンデンサC5、短絡スイッチSW2、コンデンサC1、増幅器IC1、コンデンサC2を設け、カソード側伝送ラインKLにコンデンサC3を入れたものである。短絡スイッチSW2は図2の場合と同様に給電時に開、無給電時に自動的に閉に切り替わるものである。結合コンデンサC5は図2の場合と同様に大容量のものが適する。
【0038】
図7の光受信装置の給電時の動作]
図7の光受信装置の給電時の動作は図2の場合と同様である。フォトダイオードD1で光電変換された電流は、カソードからカソード側伝送ラインKLに、アノードからアノード側伝送ラインALに出力され、夫々の伝送ラインに接続された出力端子OUT1、OUT2にFM・RF信号が出力され、夫々の出力端子OUT1、OUT2に接続された受信機器でFM信号、RF信号を受信することができる。
【0039】
図7の光受信装置の無給電時の動作]
図7の光受信装置の無給電時の動作は図2の光受信装置の無給電時の動作と同様である。無給電時は短絡スイッチSW2が閉じてアノード側伝送ラインALが短絡されるため、フォトダイオードD1で光電変換された電流は結合コンデンサC5、短絡スイッチSW2を備えたアノード側伝送ラインALに流れることはなく、カソード側伝送ラインKLにのみ出力され、カソード側伝送ラインKLの出力端子OUT1にFM・RF信号が出力され、出力端子OUT1に接続された告知放送受信機で少なくともFM信号を受信することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
前記実施形態はあくまでも本発明の例であるため、本発明はそれら実施形態に限定されるものではなく、発明の課題を解決できる範囲で設計変更可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 光電変換手段
2 電流電圧変換回路
3 混合器
4 短絡回路
5 還流回路
D1 フォトダイオード
D2 整流用ダイオード
L1、L2 コイル
C1、C2、C3 コンデンサ
C5 結合コンデンサ
SW2 短絡スイッチ
SW3 切り替えスイッチ
AL 伝送ライン(アノード側伝送ライン)
KL 伝送ライン(カソード側伝送ライン)
VL 電源ライン
Vcc 電源供給手段
OUT1 出力端子
OUT2 出力端子
OUT3 共通出力端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10