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  • 特開-埋戻し材および埋戻し材の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067000
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】埋戻し材および埋戻し材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/00 20060101AFI20230509BHJP
   C09K 17/06 20060101ALI20230509BHJP
   C04B 18/16 20230101ALI20230509BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20230509BHJP
   B28C 7/04 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
C09K17/00 P
C09K17/06 P
C04B18/16
C04B28/02
B28C7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177911
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 秀岳
(72)【発明者】
【氏名】藤原 斉郁
(72)【発明者】
【氏名】坂本 淳
(72)【発明者】
【氏名】石井 裕泰
【テーマコード(参考)】
4G056
4G112
4H026
【Fターム(参考)】
4G056AA25
4G056CB17
4G056CB23
4G056CB36
4G056CD47
4G112PA30
4G112PB08
4H026CA01
4H026CA02
4H026CB01
4H026CB03
4H026CC06
(57)【要約】
【課題】コンクリートプラント等で発生するコンクリート洗浄水を有効に活用するとともに、材料分離抵抗性を向上させた埋戻し材および埋戻し材の製造方法を提案する。
【解決手段】固化材と、炭酸カルシウムを含有する練混ぜ水と、土砂とを含む埋戻し材。この埋戻し材の製造方法は、コンクリート洗浄水に由来する原水を回収する原水回収工程S1と、原水に二酸化炭素を供給して炭酸カルシウムを析出させた練混ぜ水を生成する練混ぜ水生成工程S2と、練混ぜ水と、固化材と、土砂とを混合して埋戻し材を製造する埋戻し材製造工程S6とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固化材と、
コンクリート洗浄水に由来する練混ぜ水と、
土砂と、を含む埋戻し材であって、
前記練混ぜ水は、炭酸カルシウムを含有していることを特徴とする、埋戻し材。
【請求項2】
コンクリート洗浄水に由来する原水を回収する原水回収工程と、
前記原水に二酸化炭素を供給して炭酸カルシウムを析出させた練混ぜ水を生成する練混ぜ水生成工程と、
前記練混ぜ水と、固化材と、土砂とを混合する埋戻し材混合工程と、を備えることを特徴とする、埋戻し材の製造方法。
【請求項3】
バッチ毎に前記練混ぜ水の密度および粘性を算出する粘性密度算出工程と、
前記密度および前記粘性に基づいて、一定の流動性、材料分離抵抗性および硬化後の強度が確保できるバッチ毎の配合を設定する配合設定工程と、をさらに備えていることを特徴とする、請求項2に記載の埋戻し材の製造方法。
【請求項4】
前記粘性密度算出工程では、
貯留体に前記練混ぜ水を貯留する材料貯留作業と、
前記貯留体の下部から前記練混ぜ水を排出するとともに前記練混ぜ水の流下速度を測定する材料排出作業と、
前記練混ぜ水の粘性および密度を算出する粘性密度算出作業と、を行い、
前記貯留体には、複数の圧力計が異なる高さ位置に配設されており、
前記粘性密度算出作業では、複数の圧力計により測定された圧力分布および前記流下速度を利用して前記練混ぜ水の粘性および密度を算出することを特徴とする、請求項3に記載の埋戻し材の製造方法。
【請求項5】
前記材料排出作業では、前記貯留体から前記練混ぜ水を排出する際の前記練混ぜ水の液面高さの時間変化を測定することを特徴とする、請求項4に記載の埋戻し材の製造方法。
【請求項6】
前記土砂の土粒子密度を特定するとともに、前記土砂と前記練混ぜ水を混合した泥状土及び前記埋戻し材の密度とフロー値との関係を密度・フロー関係として特定する密度フロー特定工程をさらに備え、
前記埋戻し材混合工程では、
前記埋戻し材の目標とするフロー値から前記密度・フロー関係を利用して対応する前記埋戻し材の目標密度を推定する作業と、
推定された前記目標密度を備える前記埋戻し材から前記固化材を取り除いた場合の密度を前記泥状土の目標密度とし、前記泥状土の目標密度を前記密度・フロー関係に当てはめることにより、前記泥状土の目標となるフロー値を管理フロー値として特定する作業と、
前記管理フロー値を基準にして前記泥状土を調整する作業と、を行うことを特徴とする、請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の埋戻し材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート洗浄水に由来する練混ぜ水を用いた埋戻し材および埋戻し材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中構造物や埋設物の施工などにおいては、工事に伴って形成された空隙を埋め戻す場合がある。この埋戻し材に掘削に伴う発生土を使用すれば、廃棄処分する土量を削減し、残土処分に要する手間や費用を削減できる。
埋め戻し工事では、所定の位置に埋戻し材を搬送して充填する必要がある。しかしながら、重機等が入り込めない場所において埋戻し材の搬送及び充填を人力により行う場合には、作業に手間がかかる。そのため、埋戻し材として、自己充填性を有した材料(例えば、土砂に水および固化材を供給して流動性を付与したソイルモルタルや流動化処理土等)を使用することで、施工性の向上を図る場合がある。
なお、埋戻し材の混練水として、コンクリートプラント等において発生するコンクリート洗浄水から採取したスラッジ水を使用すれば、沈殿槽を利用した分級分離や脱水機による脱水等の複数の処理工程を経る排水処理に要する手間の削減が可能となる。例えば、特許文献1には、所定量の砂にセメントとスラッジ水とを混錬してなる埋戻し材が開示されている。
また、埋戻し材中の固形分濃度が低い場合には、所望の品質(材料分離抵抗性)を確保できないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-102057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、コンクリートプラント等で発生する洗浄排水(コンクリート洗浄水)を有効に活用するとともに、材料分離抵抗性を向上させた埋戻し材および埋戻し材の製造方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の埋戻し材は、固化材と、コンクリート洗浄水に由来する練混ぜ水と、土砂とを含んでいて、前記練り混ぜ水は炭酸カルシウムを含有するしている。
この埋戻し材の製造方法は、コンクリート洗浄水に由来する原水を回収する原水回収工程と、前記原水に二酸化炭素を供給して炭酸カルシウムを析出させた練混ぜ水を生成する練混ぜ水生成工程と、前記練混ぜ水と固化材と土砂とを混合する埋戻し材混合工程とを備えている。
かかる埋戻し材および埋戻し材の製造方法によれば、二酸化炭素を供給することで炭酸カルシウムを析出させた練混ぜ水を埋戻し材の混練水として使用するため、コンクリート洗浄水から採取した原水内に内包される微粒子分(固形分)が増加し、その結果、材料分離抵抗性が向上する。また、大気中に放出される二酸化炭素や、大気中の二酸化炭素を資源として利用することで、二酸化炭素の固定化が可能となる。ゆえに、発生土やコンクリート洗浄水などの建設副産物の有効利用に加えて、カーボンニュートラルへの貢献も可能としている。ここで、本明細書において「コンクリート洗浄水に由来する原水」には、コンクリート洗浄水から骨材等を除去したもの(回収水)、回収水から上澄水を除去したもの、回収水から沈殿物を除去したもの、または、回収水から上澄水と沈殿物を除去したもの(スラッジ水)等が含まれる。
【0006】
なお、前記埋戻し材の製造方法は、バッチ毎に前記練混ぜ水の密度および粘性を算出する粘性密度算出工程と、前記密度および前記粘性に基づいてバッチ毎の配合を設定する配合設定工程とをさらに備えているのが望ましい。かかる埋戻し材の製造方法によれば、バッチ毎に埋戻し土の品質が変化することを抑制し、一定の流動性、材料分離抵抗性および硬化後の強度を確保できる。
なお、前記粘性密度算出工程では、貯留体に前記練混ぜ水を貯留する材料貯留作業と、前記貯留体の下部から前記練混ぜ水を排出するとともに前記練混ぜ水の流下速度を測定する材料排出作業と、前記練混ぜ水の粘性および密度を算出する粘性密度算出作業とを行うのが望ましい。前記貯留体には複数の圧力計を異なる高さ位置に配設しておき、前記粘性密度算出作業では、複数の圧力計により測定された圧力分布および前記流下速度を利用して前記練混ぜ水の粘性および密度を算出する。かかる埋戻し材の製造方法によれば、複数の圧力計により測定された圧力分布を利用して密度を算出するとともに、材料の流下速度により粘性を把握できる。
また、前記材料排出作業において、前記貯留体から前記練混ぜ水を排出する際の前記練混ぜ水の液面高さの時間変化を測定すれば、流量計などを使用せずとも、容易に流下速度を測定できる。
さらに、前記土砂の土粒子密度を特定するとともに、前記土砂と前記練混ぜ水を混合した泥状土及び前記埋戻し材の密度とフロー値との関係を密度・フロー関係として特定する密度フロー特定工程をさらに備えているのが望ましい。この場合には、前記埋戻し材混合工程において、前記埋戻し材の目標とするフロー値から前記密度・フロー関係を利用して対応する前記埋戻し材の目標密度を推定する作業と、推定された前記目標密度を備える前記埋戻し材から前記固化材を取り除いた場合の密度を前記泥状土の目標密度とし、前記泥状土の目標密度を前記密度・フロー関係に当てはめることにより、前記泥状土の目標となるフロー値を管理フロー値として特定する作業と、前記管理フロー値を基準にして前記泥状土を調整する作業とを行うものとする。こうすることにより、土砂(原料土)の土粒子密度に応じた泥状土の管理フロー値を特定することが可能となり、埋戻土を目標性能に管理しやすい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の埋戻し土および埋戻し土の製造方法によれば、発生土(残土)のみならず、コンクリートプラント等で発生する洗浄排水(コンクリート洗浄水)を有効に活用するとともに、材料分離抵抗性を向上させことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る埋戻し材の製造方法の手順を示すフローチャートである。
図2】原水回収工程および練混ぜ水生成工程の概要を示す概略図である。
図3】本実施形態に係る粘性密度測定装置の使用状況を示す概略図である。
図4】埋戻し材混合工程の概要を説明するための説明図である。
図5】他の形態に係る原水回収工程および練混ぜ水生成工程の概要を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態では、建設工事における掘削部の埋戻しに使用する埋戻し材およびこの埋戻し材の製造方法について説明する。
本実施形態の埋戻し材は、掘削により発生した掘削土(土砂)に、セメント(固化材)と、混練水とを添加して混合したいわゆる流動化処理土である。
混練水には、炭酸カルシウムを含有する練混ぜ水を使用する。練混ぜ水は、コンクリート洗浄水に由来する原水に二酸化炭素を供給して、原水中のカルシウム成分と二酸化炭素とを反応させることで、炭酸カルシウムを析出させたものである。
【0010】
以下、埋戻し材の製造方法について説明する。図1に埋戻し材の製造方法を示す。埋戻し材製造方法は、図1に示すように、原水回収工程S1と、練混ぜ水生成工程S2と、粘性密度算出工程S3と、密度フロー特定工程S4と、配合設定工程S5と、埋戻し材混合工程S6とを備えている。
原水回収工程S1では、原水(回収水)W1を回収する。図2に原水回収工程S1の概要を示す。原水W1は、アジテータ車のドラム内洗浄や、コンクリートミキサの内部洗浄などにより発生したコンクリート洗浄水から回収する。本実施形態では、図2に示すように、分級機Mなどを利用して、コンクリート洗浄水W0から骨材Aを分離して採取した回収水を練混ぜ水Wの原水W1として使用する。
【0011】
練混ぜ水生成工程S2では、図2に示すように、原水(回収水)W1に二酸化炭素を供給する。原水W1に二酸化炭素を供給することで、炭酸カルシウムを析出させた練混ぜ水Wが生成される。原水W1中に炭酸カルシウムを析出させることで、原水W1中の固形分濃度が上昇する。なお、原水W1(練混ぜ水W)中の固形分濃度が高すぎる場合には、水を添加して薄めればよい。原水W1への炭酸カルシウムの供給は、例えば、炭酸カルシウムを含有するガスG(大気、液化炭酸ガス、産業施設などにおいて発生した燃焼排ガス、車両等から発生する排気ガス等)を容器T1に貯留された原水W1に供給する(すなわち、ガスGと原水W1を気液接触させる)ことにより行う。
【0012】
粘性密度算出工程S3では、バッチ毎に練混ぜ水Wの密度および粘性を算出する。練混ぜ水Wの密度および粘性の測定には、粘性密度測定装置1を利用する。図3に粘性密度測定装置1を示す。図3に示すように、粘性密度測定装置1は、練混ぜ水Wが貯留された練混ぜ水タンクT2の近傍に設けられている。粘性密度測定装置1は、貯留体2、圧力計3と、距離計4と、流入管5と、流入弁6と、排出管7と、排出弁8とを備えている。
貯留体2は、中空部材からなる。貯留体2の本体部(上部)は、横断面形状が一様な円筒状であり、貯留体2の下部は、逆円錐台状に縮径されていて、下部の下端中央には排出口が形成されている。また、本実施形態の貯留体2の上面は開口しており、貯留体2の上部側面(上端から所定高さ低い位置)には、流入口が形成されている。貯留体2は、中心軸が鉛直(略鉛直も含む)になるように設置する。
【0013】
圧力計3は、貯留体2の内部に設けられている。圧力計3は、貯留体2内に貯留された練混ぜ水Wの圧力を測定する。本実施形態では、複数の圧力計3,3,…が貯留体2の一般部(下部より上の断面積が一定の部分)の高さ方向に沿って所定の間隔をあけて並設されている。圧力計3の数および圧力計3同士の間隔は、限定されるものではなく、適宜決定すればよい。圧力計3の高さ位置は、貯留体2の下端(排出口)からの距離が既知である。すなわち、各圧力計3は、貯留体2に貯留された練混ぜ水Wの最下点からの高さが既知な状態で鉛直方向に並べられている。
【0014】
距離計4は、貯留体2の上方に設けられていて、貯留体2の上面(開口部)から、貯留体2内の練混ぜ水Wの液面高さ(上面)を測定する。距離計4は、貯留体2の上端から予め設定された距離の位置に固定されている。距離計4は、貯留体2に固定してもよいし、他の部材(例えば、練混ぜ水タンクT2や別途設けた支持部材等)に固定してもよい。本実施形態の距離計4は、非接触式の距離計の一種であるレーザー距離計であって、練混ぜ水Wの液面(上面)に対してレーザー光を照射して反射したレーザー光を受信するまでの時間により練混ぜ水Wの液面までの距離を算出する。
【0015】
流入管5は、図2に示すように、練混ぜ水タンクT2から貯留体2に至る管路である。流入管5は、流入弁6を介して貯留体2(流入口)に接続されている。流入管5は、練混ぜ水タンクT2内の練混ぜ水Wを貯留体2に輸送する。流入管5は、練混ぜ水タンクT2内の練混ぜ水Wが貯留体2に流下するように、練混ぜ水タンクT2の上部の練混ぜ水Wの液面よりも低い位置に設けられている。
流入弁6は、貯留体2と流入管5との連通・非連通を制御する(貯留体2の流入口を開閉する)。流入弁6を開くと、流入管5を介して輸送された練混ぜ水Wが貯留体2内に供給される。一方、流入弁6を閉じると、貯留体2への練混ぜ水Wの供給が停止される。
【0016】
排出管7は、図2に示すように、貯留体2から排出された練混ぜ水Wを輸送する管路である。排出管7は、排出弁8を介して貯留体2の下端(排出口)に接続されている。本実施形態では、貯留体2の下に仮受けタンクT3が設けられており、貯留体2から排出された練混ぜ水Wは、排出管7を介して仮受けタンクT3に流下する。
排出弁8は、貯留体2と排出管7との連通・非連通を制御する(排出口を開閉する)。排出弁8を開くと、貯留体2内の練混ぜ水Wが貯留体2から排出されて、排出管7を介して仮受けタンクT3に輸送される。
本実施形態では、仮受けタンクT3から練混ぜ水タンクT2に至る返送管71が配管されている。返送管71は、仮受けタンクT3内に設けられたポンプ72を介して貯留体2から排出されて仮受けタンクT3に貯留された練混ぜ水Wを練混ぜ水タンクT2に圧送する。
【0017】
粘性密度算出工程S3では、貯留体2に練混ぜ水Wを貯留する材料貯留作業と、貯留体2の下部から練混ぜ水Wを排出するとともに練混ぜ水Wの流下速度を測定する材料排出作業と、練混ぜ水Wの粘性および密度を算出する粘性密度算出作業とを行う。
材料排出作業では、距離計4を利用して、貯留体2から練混ぜ水Wを排出する際の練混ぜ水Wの液面高さの時間変化を測定する。
また、粘性密度算出作業では、複数の圧力計3,3,…により測定された圧力分布および流下速度を利用して練混ぜ水Wの粘性および密度を算出する。
【0018】
以下、練混ぜ水Wの粘性および密度の算出方法の一例を示す。
練混ぜ水Wの密度を算出する場合には、まず、上下に配設された圧力計3の測定値の圧力差を高低差で除することにより練混ぜ水Wの単位体積重量を算出し、これを重力加速度(9.81)で除することで密度を算出する。練混ぜ水Wの密度の算出は、各圧力計3同士の間を層と仮定して、各層毎に行う。
練混ぜ水Wの粘性を算出する場合には、まず、液面高さの時間変化に基づいて練混ぜ水Wの流下速度を算出する。本実施形態の貯留体2は、本体部分(下部以外の部分)の内空面積が一定のため、液面高さの変化量を時間で除することにより、流下速度(単位時間あたりの液面高さの変化量)を算出する。次に、室内試験や過去のデータなどに基づいて作成された流下速度とフロー値との関係を表す近似式に、算出した流下速度を代入することでフロー値を算出する。フロー値に基づいて、練混ぜ水Wの粘性を評価する。なお、流下速度は、貯留体2の内面と練混ぜ水Wとの間に発生する摩擦力の影響を受けるため、液面高さの測定は、摩擦力の影響が一定となるよう内空断面が一定の区間(本実施形態では円筒部分)において実施することが好ましい。
【0019】
密度フロー特定工程S4では、土砂の土粒子密度を特定するとともに、土砂と練混ぜ水Wを混合した泥状土及び埋戻し材の密度とフロー値との関係を密度・フロー関係として特定する。
配合設定工程S5では、埋戻し材の配合を設定する。埋戻し材の配合は、密度および粘性に基づいて、一定の流動性、材料分離抵抗性および硬化後の強度が確保できるバッチ毎の配合を設定する。
【0020】
埋戻し材混合工程S6では、練混ぜ水Wと、固化材と、土砂とを混合して埋戻し材を製造する。
埋戻し材混合工程では、まず、埋戻し材の目標とするフロー値から密度・フロー関係を利用して対応する埋戻し材の目標密度を推定する作業を行う。図4は、密度とシリンダーフローとの関係を規定した式1に基づいて作成したグラフ(傾向曲線)である。本実施形態では、埋戻し材の目標フロー値を200mmとする。埋戻し材の目標フロー値を設定したら、目標フロー値と傾向曲線との交点から目標密度を推定する。なお、目標密度は、式1を使用して算出することも可能である。
C.F.=(2.758Gs 13.259)/(ρ 15.881)+80 ・・・ 式1
C.F.:シリンダーフロー値(mm)
Gs:平均土粒子密度(g/cm3
ρ:湿潤密度(g/cm3
【0021】
目標密度の推定にともない、埋戻し材として必要とされる強度などから、固化材の添加量を設定しておく。
次に、推定された目標密度を備える埋戻し材から固化材を取り除いた場合の密度を泥状土の目標密度(泥状土目標密度)を算出する。さらに、算出した泥状土の目標密度を傾向曲線(密度・フロー関係)に当てはめることにより、泥状土の目標となるフロー値を管理フロー値として特定する。なお、目標密度を式1に代入することで、泥状土の目標となるフロー値を算出することもできる。
そして、管理フロー値を基準にして、水の量を調整し、泥状土が管理フロー値またはその許容範囲に入るように調整する作業を行う。
このように、管理フロー値を基準にして調整された泥状土に固化材を添加して、埋戻し土を製造する。
【0022】
本実施形態の埋戻し材および埋戻し材の製造方法によれば、二酸化炭素を供給することで炭酸カルシウムを析出させた練混ぜ水Wを埋戻し材の混練水として使用するため、原水W1内に内包される微粒子分(固形分)が増加し、その結果、材料分離抵抗性が向上する。
また、大気中に放出される二酸化炭素や、大気中の二酸化炭素を資源として利用することで、二酸化炭素の固定化が可能となる。ゆえに、発生土やコンクリート洗浄水などの建設副産物の有効利用に加えて、カーボンニュートラルへの貢献も可能としている。
【0023】
また、バッチ毎に練混ぜ水Wの密度および粘性を算出する粘性密度算出工程と、密度および前記粘性に基づいてバッチ毎の配合を設定する配合設定工程とを備えているため、バッチ毎に埋戻し土の品質が変化することを抑制し、一定の流動性、材料分離抵抗性および硬化後の強度が確保できる。原水W1(回収水等)が含有する微粒分は、主にセメントなどの固化材と微細な骨材(比重:2.6g/cm程度)の2種類であり、比重が異なる微粒分の混入比率によって密度と粘性の関係が変化するが、バッチ毎に密度及び粘性を算出することで、品質の均一化を可能としている。
また、複数の圧力計により測定された圧力分布を利用して密度を算出するとともに、材料の流下速度により練混ぜ水Wの粘性程度を適切に把握した状態で、配合を設定するため、高品質な埋戻し材を製造できる。
また、貯留体2から練混ぜ水Wを排出する際の液面高さの時間変化を測定するため、流量計などを使用せずとも、容易に流下速度を測定できる。
また、土砂(原料土)の土粒子密度に応じた泥状土の管理フロー値を特定することを可能とし、埋戻し材を目標性能に管理しやすい。
【0024】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
製造される埋戻し材は、流動化処理土に限定されるものではなく、例えば、ソイルモルタルであってもよい。
前記実施形態では、コンクリート洗浄水W0から骨材Aを除去したいわゆる回収水を練混ぜ水Wの原水W1として使用する場合について説明したが、原水W1は、これに限定されるものではない。例えば、図5に示すように、回収水を水槽T4に貯留して上澄水W2とスラッジ水W3と沈殿物Sとに分離した後、上澄水W2のみを除去したもの(スラッジ水W3+沈殿物S)、沈殿物Sのみを除去したもの(上澄水W2+スラッジ水W3)、または、上澄水W2および沈殿物Sを除去したもの(スラッジ水W3)を原水としてもよい(図5参照)。
原水W1(練混ぜ水W)中の固形分濃度が高すぎる場合において、濃度を薄める際に使用する水には、いわゆる上澄水W2を使用してもよい。
前記実施形態では、固化材としてセメントを使用するものとしたが、固化材を構成する材料は、セメントの他に高炉スラグやフライアッシュ等であってもよいし、または、これらのうちの少なくとも2種類の材料の混合体であってもよい。
前記実施形態では、圧力計3が貯留体2に設置されている場合について説明したが、圧力計3の設置個所は限定されるものではなく、例えば、練混ぜ水タンクT2内に設置してもよい。
【符号の説明】
【0025】
1 粘性密度測定装置
2 貯留体
3 圧力計
4 距離計
W 練混ぜ水
W1 原水(回収水)
W2 上澄水
W3 スラッジ水
図1
図2
図3
図4
図5