(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067010
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】溶鋼の供給システム及び鋼の連続鋳造方法
(51)【国際特許分類】
B22D 11/10 20060101AFI20230509BHJP
B22D 41/50 20060101ALI20230509BHJP
B22D 41/58 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
B22D11/10 320Z
B22D11/10 360Z
B22D41/50 520
B22D41/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177923
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】鶴川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】塚口 友一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 広大
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 希莉亜
【テーマコード(参考)】
4E014
【Fターム(参考)】
4E014DB00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】一の容器からノズルを介して他の容器へと溶鋼を供給する際、ノズル内の溶鋼中に導入された気泡がノズルから離脱することを抑えることができ、他の容器における裸湯の発生を抑制することが可能な、溶鋼を供給するシステムを提供する。
【解決手段】第1容器101からノズル110を介して第2容器102へと溶鋼105を供給するシステムであって、ノズルが、上流側である第1容器側に流入口110aを備え、下流側である第2容器側に流出口110bを備え、且つ、上流側から下流側に向かって下向きに延在しており、ノズルの流出口が、第2容器に供給された溶鋼の液面よりも下方、且つ、第2容器の底面102aよりも上方に位置し、ノズルの内部を流れる溶鋼の流量Q(ton/min)と、流出口よりも上流側にある最小のノズル内径D
1(mm)と、流出口におけるノズル内径D
2(mm)とが、所定の関係式を満たす、溶鋼の供給システム。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1容器からノズルを介して第2容器へと溶鋼を供給するシステムであって、
前記ノズルが、上流側である前記第1容器側に流入口を備え、下流側である前記第2容器側に流出口を備え、且つ、上流側から下流側に向かって下向きに延在しており、
前記ノズルの前記流出口が、前記第2容器に供給された前記溶鋼の液面よりも下方、且つ、前記第2容器の底面よりも上方に位置し、
前記ノズルの内部を流れる前記溶鋼の流量Q(ton/min)と、前記流出口よりも上流側にある最小のノズル内径D
1(mm)と、前記流出口におけるノズル内径D
2(mm)とが、以下の関係(1)~(3)を満たす、
溶鋼の供給システム。
【数1】
【請求項2】
前記ノズルが、前記流入口と前記流出口との間に、拡径部を有し、
前記拡径部において、上流側から下流側に向かってノズル内径が拡大している、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ノズルの内部へと不活性ガスを吹き込む、吹込機構を有する、
請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ノズルが、第1ノズル部と第2ノズル部とを有し、
前記第1ノズル部が、前記第2ノズル部よりも上流側に設けられ、
前記第1ノズル部と前記第2ノズル部とが、互いに接続されており、
前記第2ノズル部が、前記流出口を含み、
前記第2ノズル部が、ロングノズル部を含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1ノズル部が、流量調整機構を有する、
請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記ノズルの内部へと不活性ガスを吹き込む、吹込機構を有し、
前記吹込機構によって前記不活性ガスが吹き込まれる位置が、前記第1ノズル部と前記第2ノズル部との接続部から100mmの範囲内にある、
請求項4又は5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1容器が溶鋼鍋であり、前記第2容器がタンディッシュである、
請求項1~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のシステムを用いた鋼の連続鋳造方法であって、
前記ノズルの内部におけるガスの圧力が0.9atm以上1.1atm以下となるように、前記ノズルの内部に不活性ガスを吹き込むこと、
を含む、鋼の連続鋳造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は溶鋼の供給システム及び鋼の連続鋳造方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
鋼の連続鋳造プロセスにおいて、溶鋼鍋から鋳型へと溶鋼を供給するための中間容器としてタンディッシュが用いられている。タンディッシュは、(1)鋳型への溶鋼供給量の安定化機能、(2)複数の鋳型への溶鋼分配機能、(3)連続鋳造を複数の溶鋼鍋を用いて継続的に実施するためのバッファ機能、(4)非金属介在物の除去機能、などの複数の機能を有する。特に、清浄度が高い高級鋼材を効率的に生産する場合には、(4)非金属介在物の除去機能が極めて重要となる。
【0003】
溶鋼中の非金属介在物は、主として製鋼プロセス中で発生する酸化物や窒化物、硫化物、気泡をはじめとした鋼中の不純物に由来する。このような非金属介在物が最終製品に残留した場合、例えば応力集中による破壊の起点となって、最終製品の材質を低下させることが知られている。また、製鋼プロセスそのものにおいても、耐火物流路の内壁に非金属介在物が付着・堆積し、流路の狭窄化や閉塞を引き起こすことで、円滑な製造を阻害するだけでなく、鋳造等の加工時に母材の表層・内部双方に欠陥を発生させ得ることから、製品歩留まりを低下させるなど、製造コストを圧迫する要因となる。そのため、多くの場合、溶鋼成分の最終調整が行われる二次精錬から鋳型に至るまでの限られた工程で、非金属介在物を溶鋼中から除去する必要がある。
【0004】
溶鋼から非金属介在物を除去するためには、一般的に、溶鋼と非金属介在物との比重差を利用して非金属介在物を溶鋼中で浮上させたうえで、フラックスと呼ばれる酸化物の浮遊層で回収する方法が採られるが、この際の浮上速度は小型の非金属介在物であるほど低下し、フラックス層で回収するまでの時間が長大化することが知られている。従って、溶鋼中の非金属介在物を低減するにあたり、非金属介在物の浮上に必要な時間を確保するためには、タンディッシュ内での非金属介在物の滞留時間を長くすることが有効と考えられる。
【0005】
一般的に、溶鋼鍋からタンディッシュへの溶鋼の供給は、流量調整機能を有するスライディングノズルと、下端をタンディッシュの溶鋼中に浸漬して用いる筒状耐火物であるロングノズルとを介し、位置エネルギーを利用して流下させることでなされる。しかしながら、ロングノズルからの高速吐出流がタンディッシュの底部に衝突することで、ショートパスと呼ばれる鋳型へと向かう短絡流を形成し得るために(
図6参照)、タンディッシュにおける溶鋼の滞留時間を確保することは必ずしも容易ではない。この課題に対する一般的な対策は、タンディッシュの内部に堰を設けることで溶鋼流を迂回させる方法であるが、タンディッシュの内部に耐火物を施工することは、材料費や施工時間、作業負荷の増大を招くうえ、堰の近傍に流れがほとんどなく浮上除去に寄与しない空間が発生するほか、迂回しながらも高速で鋳型へと向かう新たな流れが誘起され得るため、必ずしも介在物の浮上を助けない。特に、小型の介在物は、浮力が小さく、溶鋼の流れに追随しやすいため、迂回による効果は大型の介在物の除去に限定され易い。
【0006】
また、製鋼プロセスにおいては、溶鋼の再酸化によって意図せずに非金属介在物が増加することに対しても注意を払わなくてはならない。一般的に、溶鋼の温度低下に伴うガス発生によって安定した鋳造が困難となることを避ける観点等から、連続鋳造に供される溶鋼は、精錬工程において脱酸処理が施され、可溶酸素濃度を大きく下回る酸素濃度となっており、非常に酸素を吸収しやすい状態にある。空気や低級酸化物と溶鋼とが接触した場合、溶鋼が酸素を吸収し、酸素との親和性が溶鋼よりも高い元素(溶鋼中に溶解しているAlやSiなど)と結びつくことで非金属介在物が生成する再酸化現象が生じてしまう。そのため、溶鋼鍋やタンディッシュにおいては、不活性ガスを用いた雰囲気の置換によりタンディッシュ内を低酸素濃度とするか、或いは、低級酸化物の含有量が少ない低反応性のフラックスを用いた溶鋼表面の被覆により溶鋼を外気から遮断する必要がある。しかしながら、ロングノズルによって溶鋼をタンディッシュに供給する場合、上記のようにノズルから吐出される溶鋼流が非常に高速であるため、タンディッシュの底部に衝突して発生した反転上昇流によってロングノズル近傍の溶鋼表面を被覆するフラックスが押し退けられ、溶鋼表面が裸湯として外気に直接曝露され、溶鋼が雰囲気内の酸素を吸収する再酸化現象が生じ得る(
図6参照)。また、ノズルの嵌合部における接続不良(ミスアライメント)が存在する場合や、耐火物の成型不良や損耗によって流路の密閉性が損なわれた場合などに、エジェクタによって外気がノズル内に導入され得る(
図6参照)。ノズル内に導入された外気が、溶鋼の流動に追随してタンディッシュまで浸入すると、ロングノズルの周囲に強い上昇流を形成するため裸湯の発生がより顕著となる。
【0007】
上記の課題は、一の容器から他の容器へと溶鋼を供給する工程のいずれにおいても生じ得る課題であり、当該課題を解決するための種々の手段が提案されている。例えば、特許文献1には、内径300mm以上の耐火物性の筒状体によって注入流を外気から遮断する注入管を用いる連続鋳造方法が開示されている。特許文献1に開示された技術によれば、ノズルから落下した注入流が管内の液面において管内の気体を叩き込むことで溶鋼中に多数の気泡を導入し、気泡が有する大きな浮力によって注入流速を減少させて、タンディッシュ内に緩やかな上昇流を生じさせることが可能と考えられる。加えて、固体の介在物は溶鋼との濡れ性が悪く、気泡に対して容易に付着するため、気泡が有する大きな浮力によって高速で浮上除去されることも期待される。一方で、上記のような注入管では、溶鋼が気相から酸素や窒素を吸収することを避けるために、管内を大量の不活性ガスで充満させる必要があり、ノズルを溶鋼中に浸漬させる場合と比較して大きな操業コストがかかってしまう。また、ノズルから放出された溶鋼の飛沫や浴面での叩き込みによって生じるスプラッシュが管内壁に付着すると、管径が大きいため付着物の抜熱が著しく、付着物が凝固及び積層して閉塞に至り易い。さらに、溶鋼中に導入された気泡が注入管外へと離脱した場合、当該気泡がタンディッシュ内の溶鋼液面へと到達して、溶鋼の再酸化を生じさせる虞があるため、管を小径化することが難しく、耐火物コストの低減が制限される。
【0008】
特許文献2には、タンディッシュ底部で反転した上昇流によって裸湯の曝露が発生することを防ぐために、胴体部に流れ制御部を設けたノズルが開示されている。しかしながら、特許文献2に開示された技術においては、ショートパスの発生に対しては別途対策を講じる必要があり、製造コストが増加する。加えて、ノズルの重量が増加するためノズルを把持する装置への負荷が大きく、鋳造中にノズルを支えきれなくなる虞がある。
【0009】
特許文献3には、注入ノズルの内部に不活性ガスのガス空間を形成し、ノズル内の鋼浴面において注入流に不活性ガスを巻き込ませるとともに、タンディッシュの底面に設置した攪拌ボックス内で該注入流を攪拌することで、溶鋼中の介在物と気泡の凝集を促進する連続鋳造方法及び連続鋳造装置が開示されている。特許文献3に開示された技術において、連続鋳造装置の注入ノズルは吐出孔の内径が十分に大きいためガス空間が安定して形成される。一方で、特許文献3に開示された技術は、注入流が巻き込んだ気泡がすべて注入ノズル内へと再浮上し、攪拌ボックス内での攪拌作用が十分に発揮されないことを回避するために、注入ノズルの内径を所定値以下とすることを特徴としているが、注入ノズルを離脱しタンディッシュの溶鋼表面に浮上した気泡は上記の通り再酸化が生じる原因となり得る。また、ノズル内における気液混相流の様相は各相の流速や分散状態に依存し、一般的には断面ボイド率によって代表されるため、溶鋼の注入量によっては不活性ガスの巻き込みが望ましくない形態となり、タンディッシュ内の流れを乱すことでかえって介在物の鋳型への流出や再酸化を引き起こす虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第6575355号公報
【特許文献2】特表2020-530813号公報
【特許文献3】特開2011-235339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願は、一の容器からノズルを介して他の容器へと溶鋼を供給する際、ノズル内の溶鋼中に導入された気泡がノズルから離脱することを抑えることができ、他の容器における裸湯の発生を抑制することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
第1容器からノズルを介して第2容器へと溶鋼を供給するシステムであって、
前記ノズルが、上流側である前記第1容器側に流入口を備え、下流側である前記第2容器側に流出口を備え、且つ、上流側から下流側に向かって下向きに延在しており、
前記ノズルの前記流出口が、前記第2容器に供給された前記溶鋼の液面よりも下方、且つ、前記第2容器の底面よりも上方に位置し、
前記ノズルの内部を流れる前記溶鋼の流量Q(ton/min)と、前記流出口よりも上流側にある最小のノズル内径D1(mm)と、前記流出口におけるノズル内径D2(mm)とが、以下の関係(1)~(3)を満たす、
溶鋼の供給システム
を開示する。
【0013】
【0014】
本開示のシステムにおいて、
前記ノズルが、前記流入口と前記流出口との間に、拡径部を有していてもよく、
前記拡径部において、上流側から下流側に向かってノズル内径が拡大していてもよい。
【0015】
本開示のシステムは、前記ノズルの内部へと不活性ガスを吹き込む、吹込機構を有していてもよい。
【0016】
本開示のシステムにおいて、
前記ノズルが、第1ノズル部と第2ノズル部とを有していてもよく、
前記第1ノズル部が、前記第2ノズル部よりも上流側に設けられていてもよく、
前記第1ノズル部と前記第2ノズル部とが、互いに接続されていてもよく、
前記第2ノズル部が、前記流出口を含んでいてもよく、
前記第2ノズル部が、ロングノズル部を含んでいてもよい。
【0017】
本開示のシステムにおいて、
前記第1ノズル部が、流量調整機構を有していてもよい。
【0018】
本開示のシステムは、前記ノズルの内部へと不活性ガスを吹き込む、吹込機構を有していてもよく、
前記吹込機構によって前記不活性ガスが吹き込まれる位置が、前記第1ノズル部と前記第2ノズル部との接続部から100mmの範囲内にあってもよい。
【0019】
本開示のシステムにおいて、
前記第1容器が溶鋼鍋であってもよく、前記第2容器がタンディッシュであってもよい。
【0020】
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、
上記本開示のシステムを用いた鋼の連続鋳造方法であって、
前記ノズルの内部におけるガスの圧力が0.9atm以上1.1atm以下となるように、前記ノズルの内部に不活性ガスを吹き込むこと、
を含む、鋼の連続鋳造方法
を開示する。
【発明の効果】
【0021】
本開示の技術によれば、一の容器からノズルを介して他の容器へと溶鋼を供給する際、ノズル内の溶鋼中に導入された気泡がノズルから離脱することを抑えることができ、他の容器における裸湯の発生を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】溶鋼の供給システムにおける第1容器、第2容器及びノズルの位置関係の一例を概略的に示している。
【
図2】溶鋼の供給システムにおけるノズルの断面構成の一例を概略的に示している。
【
図3】溶鋼の供給システムにおける溶鋼の供給状態の一例を概略的に示している。破線矢印にて溶鋼の流れが示されている。
【
図4】水モデル実験に用いた装置構成を概略的に示している。
【
図5】QとD
2/D
1との関係についての実験結果を示している。○が所定の効果が発揮された場合、△及び×が所定の効果が発揮されなかった場合である。
【
図6】従来技術における課題を示している。破線矢印にて溶鋼の流れが示されている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.溶鋼の供給システム
図1~3に溶鋼の供給システムの構成の一例を示す。
図1に示されるように、溶鋼の供給システム100は、第1容器101からノズル110を介して第2容器102へと溶鋼105を供給するシステムである。
図2及び3に示されるように、システム100において、前記ノズル110は、上流側である前記第1容器101側に流入口110aを備え、下流側である前記第2容器102側に流出口110bを備え、且つ、上流側から下流側に向かって下向きに延在している。また、前記ノズル110の前記流出口110bは、前記第2容器102に供給された前記溶鋼105の液面105aよりも下方、且つ、前記第2容器102の底面102aよりも上方に位置している。システム100においては、前記ノズル110の内部を流れる前記溶鋼105の流量Q(ton/min)と、前記流出口110bよりも上流側にある最小のノズル内径D
1(mm)と、前記流出口110bにおけるノズル内径D
2(mm)とが、以下の関係(1)~(3)を満たす。
【0024】
【0025】
1.1 第1容器
第1容器101は、第2容器102への溶鋼105の供給元となる容器である。
図1~3に示されるように、システム100において、第1容器101は、底面101aと側壁101bとを有して、溶鋼105を保持している。第1容器101は、さらに、蓋(不図示)を有していてもよい。第1容器101は、溶鋼105を保持可能な形状及び材質からなるものであればよい。また、第1容器101は、底面101aの一部に流出口101axが設けられ、ここから溶鋼105を流出できるように構成されていてもよい。流出口101axには、溶鋼105の流出量を制御するための開閉機構が設けられていてもよい。第1容器101の流出口101axにはノズル110が直接的又は間接的に接続され得る。第1容器101とノズル110との接続形態は特に限定されるものではなく、例えば、嵌合によって接続可能である。何らかの中間部材を介して、第1容器101とノズル110とが接続されていてもよい。
【0026】
第1容器101は、溶鋼105を保持可能な容器であればよく、様々な形態が想定されるが、特に、第1容器101が溶鋼鍋である場合に、本開示の技術を適用した場合の効果が一層顕著となる。
【0027】
1.2 第2容器
第2容器102は、第1容器101からの溶鋼105の供給先となる容器である。
図1~3に示されるように、第2容器102は、底面102aと側壁102bとを有して、第1容器101から供給された溶鋼105を保持している。第2容器102は、さらに、蓋102cを有していてもよい。第2容器102は、溶鋼105を保持可能な形状及び材質からなるものであればよい。
図1に示されるように、第2容器102の底面102aの一部には流出口102axが設けられていてもよく、ここから他の容器(例えば、鋳型)へと溶鋼105を流出できるように構成されていてもよい。流出口102axには、溶鋼105の流出量を制御するための開閉機構が設けられていてもよい。第2容器102の流出口102axには、ノズル120が直接的又は間接的に接続されていてもよい。第2容器102とノズル120との接続形態は特に限定されるものではなく、例えば、嵌合によって接続可能である。何らかの中間部材を介して、第2容器102とノズル120とが接続されていてもよい。
【0028】
第2容器102は、溶鋼105を保持可能な容器であればよく、様々な形態が想定される。第2容器102は、例えば、タンディッシュであってもよいし、溶鋼鍋であってもよいし、鋳型であってもよいし(この場合、第1容器101はタンディッシュであってもよい)、溶鋼105の成分を調整するための炉であってもよい。特に、第2容器102がタンディッシュである場合に、本開示の技術を適用した場合の効果が一層顕著となる。
【0029】
図3に示されるように、第2容器102に供給された溶鋼105の液面105a上には、フラックスを含む浮上層106が存在していてもよい。フラックスとしては公知のフラックスを採用すればよい。このようにフラックスによって溶鋼105の液面105aを被覆することで、溶鋼105を外気から遮断することができる。また、フラックスによって溶鋼105中の非金属介在物を回収することができる。尚、後述するように、システム100によれば、ノズル110から流出した溶鋼105が第2容器102の底面102aに衝突することによる反転上昇流を小さく抑えることができ、溶鋼105の液面105aが乱れ難く、液面105aの乱れによるフラックスの押し退けや途切れも生じ難いことから、裸湯による再酸化の問題が生じ難い。
【0030】
1.3 ノズル
ノズル110は、第1容器101から第2容器102へと溶鋼105を流通させる。すなわち、ノズル110は、上流側である第1容器101側に流入口110aを備え、下流側である第2容器102側に流出口110bを備える。ノズル110は、上流側から下流側に向かって下向きに延在している。ノズル110は、例えば、上流側から下流側に向かって下向きに延在する筒状体(筒状単孔ノズル)であってよい。具体的には、ノズル110は、鉛直方向に中心軸を有する円筒状体であってよい。
図2に示されるように、ノズル110は、流出口110bよりも上流側において最小のノズル内径D
1を有し、流出口110bにおいてノズル内径D
2を有する。尚、本願において「ノズル内径」とは、溶鋼105の流量を調整するための機構(スライディングゲート等の流量調整機構114)を有する場合は、当該流量調整機構114よりも下にあるノズル部分の内径をいい、当該流量調整機構114を有しない場合は、第1容器101と第2容器102との間のノズル部分の内径をいう。当該機構114における流路径は「ノズル内径」には含めない。
【0031】
図3に示されるように、ノズル110の流出口110bは、第2容器102に供給された溶鋼105の液面105aよりも下方、且つ、第2容器102の底面102aよりも上方に位置している。すなわち、ノズル110は、下流側の先端部が第2容器102の溶鋼105に浸漬されている。
図3に示されるように、システム100は、第2容器102の溶鋼105の液面105aからノズル110の流出口110bまでの間に距離h
1を有していてもよく、ノズル110の流出口110bから第2容器102の底面102aまでの間に距離h
2を有していてもよい。h
1やh
2の具体値やh
1とh
2との関係は特に限定されるものではない。例えば、h
1は100mm以上500mm以下であってもよく、h
2は300mm以上900mm以下であってもよく、h
1とh
2との比h
1/h
2は0.2以上0.7以下であってもよく、流出口110bにおけるノズル内径D
2(
図2参照)とh
2との比D
2/h
2は1.0以上3.0以下であってもよい。h
1やh
2を調整することで、後述するメカニズムによって生成した気泡105xのノズル110からの離脱等が一層抑制され易くなる。
【0032】
図2及び3に示されるように、ノズル110は、流入口110aと流出口110bとの間に、拡径部110cを有していてもよく、拡径部110cにおいて、上流側から下流側に向かってノズル内径が拡大していてもよい。拡径部110cにおける拡径率については特に限定されるものではない。拡径部110cにおいては、上流側から下流側に向かってノズル内径が直線的に拡大(単調増加にて拡大)していてもよいし、曲線的に拡大していてもよい。また、拡径部110cにおいては、上流側から下流側に向かってノズル内径が連続的に拡大していてもよいし、断続的に拡大していてもよい。また、ノズル110の全体長さに占める拡径部110cの長さの割合も特に限定されるものではない。
図2及び3に示されるように、ノズル110においては、拡径部110cの下端におけるノズル内径と、流出口110bにおけるノズル内径D
2とが、実質的に同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0033】
図2及び3に示されるように、ノズル110は、第1ノズル部111と第2ノズル部112とを有していてもよく、第1ノズル部111が、第2ノズル部112よりも上流側に設けられていてもよく、第1ノズル部111と第2ノズル部112とが、互いに接続されていてもよく、第2ノズル部112が、流出口110bを含んでいてもよく、第2ノズル部112が、ロングノズル部を含んでいてもよい。すなわち、ノズル110は、互いに異なる形状を有する第1ノズルと第2ノズルとが、接続部113を介して接続されたものであってもよい。この場合の第1ノズルと第2ノズルとの接続形態は、特に限定されるものではなく、例えば、嵌合によって接続されてもよい。尚、「ロングノズル部」とは、ロングノズルによって構成される部分をいう。ロングノズル部は、上記の関係(1)~(3)が満たされる形状を有していればよい。例えば、ロングノズル部は、上記の拡径部110cを有していてもよい。
図2及び3に示されるように、ノズル部は、第2容器102とは独立して設置されるもので、第2容器102に対して固定されている必要は無い。この点、第2容器の蓋に設置及び固定される注入管と、本願にいうノズル部(ノズル)とでは、その構成が明確に異なる。
【0034】
図2及び3に示されるように、ノズル110が第1ノズル部111と第2ノズル部112とを有する場合、第1ノズル部111が流量調整機構114を有していてもよい。流量調整機構114の具体例としては、例えば、
図2及び3に示されるようなスライディングゲートが挙げられる。すなわち、第1ノズル部111はスライディングノズルによって構成される部分であってよい。スライディングゲートにおいては、流通口を有する少なくとも一枚のスライド板114aが、溶鋼105の流通方向とは交差する方向にスライドされることで、流路径が変化し得る。或いは、流量調整機構114は、スライディングゲート以外の開閉機構であってもよい。ノズル110における流量調整機構114の形態そのものについては公知であることから、ここではこれ以上の説明を省略する。尚、上述したように、流量調整機構114における流路径は、関係(1)及び(2)にいうノズル内径には含めない。
【0035】
1.4 その他の機構
溶鋼の供給システム100は、上記の各構成に加えて、その他の機構を備えていてもよい。例えば、
図2及び3に示されるように、システム100は、ノズル110の内部へと不活性ガスを吹き込む、ガス吹込機構116を有していてもよい。背景技術として上述したように、一の容器からノズルを介して他の容器へと溶鋼を供給する場合、ノズルの嵌合部等からエジェクタによってノズル内部へと外気が取り込まれる場合があるが、システム100においては、これとは別に、ノズル110の内部へと不活性ガスを意図的に吹き込む機構116が採用され得る。後述するように、本開示のシステム100においては、溶鋼105の供給中に上記関係(1)~(3)が満たされることで、ノズル110の内部にガス空間115を維持でき、且つ、ノズル110の内部における溶鋼105の液面105aにおいて、溶鋼105の流れに伴って当該ガス空間115から溶鋼105中にガスが巻き込まれ、溶鋼105中に大小様々な気泡群が生成し得る。システム100がノズル110の内部へと不活性ガスを吹き込む機構116を有することで、ノズル110の内部において上記のガス空間115を一層維持し易くなる。不活性ガスとしては、例えば、Arが挙げられる。ガス空間115における不活性ガスの圧力は特に限定されるものではないが、例えば、0.9atm以上1.1atm以下であってよい。
【0036】
ノズル110の内部へと不活性ガスを吹き込む機構116の具体的な形態は限定されない。例えば、不活性ガス供給源(高圧の不活性ガスが充填された容器等)とノズル110とを配管等で接続することで、当該吹込機構116が構成され得る。或いは、不活性ガス供給源とノズル110よりも上流側の位置(例えば、第1容器101)とを接続して、不活性ガスが吹き込まれた溶鋼105がノズル110に流入するようにしてもよい。ただし、不活性ガス供給源とノズル110とが接続された場合のほうが、ノズル110に吹き込まれる不活性ガスの量を制御し易くなる。
【0037】
図2及び3に示されるように、ノズル110が第1ノズル部111と第2ノズル部112とを有する場合、上記の吹込機構116によって不活性ガスが吹き込まれる位置は、第1ノズル部111と第2ノズル部112との接続部113から100mmの範囲内にあってもよい。この範囲内であれば、上記の吹込機構116をノズル110に設置し易い。また、この範囲内において不活性ガスが吹き込まれることで、ノズル110の内部に上記のガス空間115を一層形成し易くなる。
【0038】
1.5 関係(1)~(3)
溶鋼の供給システム100においては、上記したようなノズル110の内部を流れる溶鋼105の流量Q(ton/min)と、流出口110bよりも上流側にある最小のノズル内径D1(mm)と、流出口110bにおけるノズル内径D2(mm)とが、上記の関係(1)~(3)を満たす必要がある。
【0039】
上記の関係(3)において、流量Qは、1.0ton/min以上15.0ton/min以下である。流量Qは、1.5ton/min以上、2.0ton/min以上、2.5ton/min以上又は3.0ton/min以上であってもよく、14.0ton/min以下、13.0ton/min以下、12.0ton/min以下、11.0ton/min以下又は10.0ton/min以下であってもよい。実操業において特によく採用され、且つ、特に高い効果が得られる観点から、流量Qは、7.0ton/min以上12.0ton/min以下であってもよい。
【0040】
上記の関係(2)において、最小ノズル径D1は、30mm以上140mm以下である。最小ノズル径D1は、35mm以上、40mm以上、45mm以上又は50mm以上であってもよく、130mm以下、120mm以下、110mm以下又は100mm以下であってもよい。実操業において特によく採用され、且つ、特に高い効果が得られる観点から、最小ノズル径D1は、70mm以上120mm以下であってもよい。
【0041】
溶鋼の供給システム100においては、上記の関係(2)及び関係(3)が満たされることを前提として、さらに、上記関係(1)が満たされることで、後述する所定の効果が発揮される。尚、システム100においては、上記関係(1)が満たされるように、ノズル径D1及びD2に応じて流量Qが調整されてもよいし、目的とする流量Qに応じて最適なノズルの形状(ノズル径D1及びD2)が選択されてもよい。
【0042】
1.6 作用・効果
図3に示されるように、システム100においては、ノズル110の流出口110b側のノズル内径を拡張することで、(必要であればガス吹込み機構116を介して外部より不活性ガスを導入しつつ)ノズル110内に明確な気相(ガス空間115)が形成される。ノズル110内の液面105aではガス空間115がサブミリからミリオーダーの気泡群105xとして注入流に巻き込まれる。このうち気泡径が大きいものほど水平方向に働く揚力が大きくなり、気泡105xの浮力によって注入流の下降流速、特に高流速となるノズル110の中央の流れが減速し、流れ場が均一化され易くなる。上記の関係(1)~(3)が満たされる場合、上記のガス空間115や気泡群105xの生成及び維持が容易であり、また、ノズル110から流出した気泡105xがノズル110の内部へと回収され易くなる。ノズル110の内部へと回収された気泡105xは、上記のガス空間115として機能するか、あるいはノズル110内に気泡105xのまま留まる。このように、システム100においては、ノズル110内部からの気泡105xの離脱が抑制されることで、上記の注入流の減速効果が維持され、第2容器102の底面102aに衝突後の反転上昇流も小さくなる。これにより、気泡105xが第2容器102の溶鋼105の液面105a上に浮かんだフラックスを押し退けて、溶鋼105が外気に暴露されるような事態(裸湯による再酸化の問題)が生じ難くなる。さらに、ノズル110からの吐出流速が均一化されることで、第2容器102内の溶鋼流動は流出口へと向かう栓流(プラグフロー)に近くなるため、第2容器102におけるショートパスの形成が防止され、フラックスや介在物が次工程へと持ち込まれるリスクが低減される。また、副次的な効果として、ノズル110における液面105aにて叩き込まれた気泡群105xは、ノズル110内に拘束され、ノズル110内の気相率が高くなるため、気泡105xが介在部に付着することによって、介在物が効率的に浮上除去され得る。
【0043】
2.鋼の連続鋳造方法
本開示の技術は、鋼の連続鋳造方法としての側面も有する。すなわち、本開示の鋼の連続鋳造方法は、上記本開示のシステム100を用いることに特徴がある。ここで、本開示の鋼の連続鋳造方法は、ノズル110の内部におけるガスの圧力が0.9atm以上1.1atm以下となるように、ノズル110の内部に不活性ガスを吹き込むこと、を含んでいてもよい。ノズル110の内部に不活性ガスを吹き込む機構の詳細については、上述した通りである。本開示の連続鋳造方法においては、例えば、第1容器101が溶鋼鍋で、第2容器102がタンディッシュであってよく、この場合、鋼の連続鋳造方法は、溶鋼鍋からノズル110を介してタンディッシュへと溶鋼105を供給すること、タンディッシュからノズル120を介して鋳型(不図示)へと溶鋼105を供給すること、及び、鋳型から鋳片を連続的に引き抜くこと、を含み得る。本開示の鋼の連続鋳造方法においては、上記のシステム100が採用されることを除いて、一般的な連続鋳造条件が採用され得る。
【0044】
尚、ノズル110の内部におけるガスの圧力は、様々な方法によって測定することができる。例えば、ノズル110の一部に圧力測定用の空間を有する部材を接続し、ノズル110の内部のガス空間115と当該部材の空間とを連通させることで、当該部材の空間の圧力をノズル110の内部のガス空間115と実質的に同じものとしたうえで、当該部材の空間の圧力を測定することで、ノズル110の内部におけるガスの圧力を測定可能である。
【実施例0045】
以下、実施例を示しつつ本発明についてさらに説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱せず、その目的を達する限りにおいては、種々の条件を採用可能とするものである。
【0046】
一般的に、溶鋼を含む系の観察は、観察対象が非常に高温かつ不透明であることや、粉塵の存在などを理由として極めて困難であることが知られている。そのため、通常は数値流体力学によって流動や伝熱を再現することによって可視化が試みられるが、気液二相流のように自由界面が存在する場合、異相間で密度の乖離があるうえに、界面の形状が経時的に大きく変化するため、その挙動を正確に計算するためには膨大な時間を必要とする。そこで、本発明者は慣性力と浮力との比であり下記式(4)で表されるFr数、及び、表面張力と慣性力との比率であり下記式(5)で表されるWe数が、室温での1/2スケール水モデルにおいて溶鋼系と概ね一致することを利用して、溶鋼中の気相の挙動を調査することとした。
【0047】
【数3】
ここで、v:代表流速(m/s)、g:重力加速度(m/s
2)、l:代表長さ(m)、ρ:密度(kg/m
3)を表す。
【0048】
図4に水モデル実験にて用いた装置の構成を概略的に示す。観察を容易にするため、ノズルと受水容器はアクリル材で製作し、ポンプとマスフローコントローラーを介して上方から所定流量の水を連続的に供給するものとした。また、受水容器は底面の四隅に排水口を備え、各々の排水口は絞り機構を備えており、流量に応じて排水量を調整して受水容器内の水位を1000mmで保持しつつ、ノズルの流出口側の先端部が100mm浸漬されるようにした。受水容器内の水位が安定したことを確認した後に、ノズル内部の水面と受水容器の水面とが概ね一致するまでガス導入口を一時的に開放することで、ノズル内部にガス空間を形成した。
【0049】
1.気泡の観察及び評価
水の供給量(溶鋼の流量Qに換算可能)やノズルの形状(最小のノズル内径D
1、流出口におけるノズル内径D
2)を変化させて、各々、気泡の観察及び評価を行った。各条件について、上記の通りにしてノズル内部にガス空間が形成されたことで、水流による巻き込みによってノズル内部の液面から下方に気泡が生成し、当該気泡の少なくとも一部がノズルの流出口よりも下方に流出した。各条件でノズルから流出した気泡がノズル内部に回収されるか(生成した気泡がノズルから離脱してノズル外の受水容器の液面に浮上することなく、ノズルの内部に再び戻ってくるか)を10分間目視で確認し、ほぼ全量の気泡が回収されたもの(ガス空間の消失が50体積%未満であったもの)は「○」、少量の気泡の離脱があったもの(ガス空間が50体積%以上80体積%未満消失したもの)は「△」、大部分の気泡がノズルから離脱してガス空間がほぼすべて消失したもの(ガス空間が80体積%以上消失したもの)を「×」として評価した。結果を表1及び
図5に示す。尚、表1中のスループットは、ノズル流入部における流れがFr数近似を満たすように換算した溶鋼系の値である。すなわち、水モデル実験における水の供給量を、溶鋼系における溶鋼の流量Qに換算した値が示されている。
【0050】
【0051】
表1及び
図5に示されるように、流量Q(ton/min)と、最小のノズル内径D1(mm)と、流出口におけるノズル内径D2(mm)とが、以下の関係(1)~(3)を満たす場合に、ノズルから流出した気泡がノズル内部にほぼ全量回収された。一方で、以下の関係(1)を満たさない場合は、ガス導入口を閉鎖した直後からノズル内の気液界面で巻き込まれた気泡が吐出流に連行され、ノズル内においてガス空間が短時間しか存在せず、数秒から数十秒ほどでほぼ全量のガスがノズル外へと排出された。すなわち、以下の関係(1)~(3)を満たす場合、ノズル外の溶鋼液面への気泡の到達を抑えることができ、裸湯による溶鋼の再酸化の問題を抑制できるものと考えられる。
【0052】
【0053】
2.流速の評価
上記の気泡の生成によるショートパス発生の抑制効果を確かめるため、各条件について、ノズル中心軸上であって水面から300mmの地点で、電磁流速計による流速測定を行った。その結果、上記関係(1)を満たす場合、上記関係(1)を満たさない場合よりも、中心軸上の吐出流速が明確に低下した。すなわち、関係(1)~(3)を満たす場合、ショートパスを抑制する効果が期待でき、また、反転上昇流を抑える効果が期待でき、裸湯による溶鋼の再酸化を防止する効果が期待できる。