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  • 特開-食品の固さ維持剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067030
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】食品の固さ維持剤
(51)【国際特許分類】
   A23B 7/154 20060101AFI20230509BHJP
   A23L 29/00 20160101ALI20230509BHJP
   A23L 19/00 20160101ALI20230509BHJP
   A23L 29/20 20160101ALN20230509BHJP
   A21D 13/32 20170101ALN20230509BHJP
【FI】
A23B7/154
A23L29/00
A23L19/00 Z
A23L29/20
A21D13/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177955
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】306007864
【氏名又は名称】ユニテックフーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 愛美
(72)【発明者】
【氏名】種市 和也
【テーマコード(参考)】
4B016
4B032
4B035
4B041
4B169
【Fターム(参考)】
4B016LC06
4B016LG05
4B016LG10
4B016LK02
4B016LK09
4B016LP10
4B016LP13
4B032DK14
4B032DK30
4B032DP67
4B032DP80
4B035LC03
4B035LG20
4B035LG32
4B035LP26
4B035LP59
4B041LC03
4B041LD01
4B041LH02
4B041LH05
4B041LH07
4B041LH16
4B041LK27
4B041LP25
4B169HA01
4B169KA10
4B169KB03
4B169KC31
(57)【要約】
【課題】長期間の保存において、食品の経時的な変化を抑制でき、食品本来の固さや食感等が維持できる新規の剤を提供する。
【解決手段】澱粉類及び/又は増粘多糖類を含み、かつ、10℃においてせん断速度10 1/sの時の粘度ηが1mPa・sを超え、209mPa・s未満の溶液からなる食品の固さ維持剤を提供する。食品が生の野菜である、澱粉類及び/又は増粘多糖類を含み、かつ、10℃においてせん断速度10 1/sの時の粘度ηが1mPa・sを超え、209mPa・s未満の溶液からなる食品の固さ維持剤を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉類及び/又は増粘多糖類を含み、かつ、10℃においてせん断速度10 1/sの時の粘度ηが1mPa・sを超え、209mPa・s未満の溶液からなる食品の固さ維持剤。
【請求項2】
食品が生の野菜である請求項1に記載の食品の固さ維持剤。
【請求項3】
次の(A)及び(B)の工程を含む、固さを維持させた食品の製造方法。
(A)請求項1又は2に記載の食品の固さ維持剤を食品に接触させる工程
(B)(A)の工程を経た食品から余剰の食品の固さ維持剤を除く工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品の固さ維持剤に関する。さらに詳しくは、澱粉類及び/又は増粘多糖類を含み、かつ、10℃においてせん断速度10 1/sの時の粘度ηが1mPa・sを超え、209mPa・s未満の溶液からなる食品の固さ維持剤に関する。
【0002】
サラダ、惣菜、サンドイッチ等のコンビニエンスストア、スーパーマーケット等で販売されている食品は、製造後4日程度迄の消費期限が設定されており、購入されるまで冷蔵保存やチルド保存されている。
この保存期間において、これらの食品に含まれる生野菜、加熱された野菜・畜肉・魚介類、加工食品等の経時的な変化により、離水による他の食材への水分の染込み等が起こり、食品の食感や外観が損なわれる等の問題があった。特に、サラダや、生野菜を挟んだサンドイッチ等では、美味しさに関わる、シャキシャキした食感が失われるという問題があった。そこで、これらの問題を解決するために、食品の製造方法を工夫したり、離水抑制剤を使用したりする等の様々な技術が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1ではスクシノグリカンを含有する加工食品用離水抑制剤が開示されており、これを配合することにより、経時的な食感の変化が少なく、離水が抑制されたツナマヨネーズやコールスローサラダ等を調製できることが記載されている。また、特許文献2では、オクテニルコハク酸化したα澱粉を一定量添加することが開示されており、これにより経時的な離しょうがなく、好ましい食感のツナサラダが得られたことが記載されている。そして、特許文献3では、野菜類の離水防止方法としてα化された澱粉を混入することが開示されており、α化米澱粉、α化馬鈴薯澱粉、α化コーンスターチ等をキュウリに混合しマヨネーズであえたものについて離水率が低下したことが記載されている。
【0004】
特許文献4では、卵黄、食用油脂等を配合した気泡入り酸性水中油型乳化食品が開示されており、これを和えることで、経時的に発生する野菜からの離水が抑えられた保存安定性に優れたサラダとしてポテトサラダ、ゴボウサラダ、大根サラダ等を製造したことが記載されている。また、特許文献5では、植物ステロール類と卵白リボ蛋白質との複合体を配合原料として加えることにより、水っぽくないポテトサラダや、離水が少ないマカロニサラダが製造できることが記載されている。そして、特許文献6では、野菜と水中油型の乳化食品とを混和させてサラダを製造するに際して、両者の混和段階で粉末ガムを添加するサラダの製造方法が開示されており、キュウリ、ニンジン、マヨネーズ、粉末ガムを含む分散ガムを混和したサラダにおいて水っぽさが抑制されたことが記載されている。さらに、特許文献7では、食塩、酢酸、及び食用有機酸を含むカット根菜類浸漬用組成物が開示されており、この組成物の水溶液に120分間浸漬したレンコンや山芋が、1ヶ月保管後も褐変、腐敗、異味異臭等がなく、シャキシャキした食感を有していたことが記載されている。
【0005】
このように、様々な技術が開発されているが、これらはいずれもスクシノグリカン、オクテニルコハク酸化したα澱粉等のα化澱粉、気泡入り酸性水中油型乳化食品等の各成分を食品内に配合したり、食塩、酢酸、食用有機酸等を含む調味作用のある水溶液に食材を浸漬したりすることを必須とするものであるため、製造できる食品の味や種類、調理方法等が限られるものであった。また、配合する成分によっては、油脂感や糸を引くような食感がある等の問題もあった。さらに、これらの方法によって食品全体の離水の抑制や、シャキシャキした食感の維持はできるものの、根菜類以外のレタス、キュウリ、キャベツ等の野菜についても十分な固さや食感が維持できるとはいえなかった。
そこで、本発明者らは、レタス、キュウリ、キャベツ等を含む様々な食品の製造に利用可能であり、長期間の冷蔵保存やチルド保存等において、食品の経時的な変化を抑制でき、食品本来の固さや食感等を維持することが可能な剤の提供を試みた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-131509号公報
【特許文献2】特開平10-276706号公報
【特許文献3】特開平02-163054号公報
【特許文献4】特許第5021527号
【特許文献5】特開2007-222051号公報
【特許文献6】特開昭61-185161号公報
【特許文献7】特開2002-34448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
長期間の保存において、食品の経時的な変化を抑制でき、食品本来の固さや食感等が維持できる新規の剤の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らはこのような剤の提供にあたり鋭意検討を行った結果、澱粉類及び/又は増粘多糖類を含み、かつ、10℃においてせん断速度10 1/sの時の粘度ηが1mPa・sを超え、209mPa・s 未満の溶液からなる剤を見出すに至った。
この剤で処理してから食品を保存することにより、長期間の保存においても、離水の発生、固さ、食感や外観の変化等の、食品の経時的な変化を抑制することが可能となる。
【0009】
すなわち、本発明は次の(1)~(3)に示される食品の固さ維持剤等に関する。
(1)澱粉類及び/又は増粘多糖類を含み、かつ、10℃においてせん断速度10 1/sの時の粘度ηが1mPa・sを超え、209mPa・s未満の溶液からなる食品の固さ維持剤。
(2)食品が生の野菜である上記(1)に記載の食品の固さ維持剤。
(3)次の(A)及び(B)の工程を含む、固さを維持させた食品の製造方法。
(A)上記(1)又は(2)に記載の食品の固さ維持剤を食品に接触させる工程
(B)(A)の工程を経た食品から余剰の食品の固さ維持剤を除く工程
【発明の効果】
【0010】
本発明の食品の固さ維持剤の提供により、コンビニやスーパーマーケット等で販売される、長期間の冷蔵保存やチルド保存等が必要な食品において、離水の発生、食感や外観の変化等の経時的な変化が抑制され、保存前と同等の固さを維持している食品の提供が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】食品の固さ維持剤の粘度η(mPa・s)と食品の固さ(Force(g))の相関関係を示した図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の「食品の固さ維持剤」とは、食品に接触させることにより、長期間保存後も、保存前と同等の食品の固さを維持できる剤のことをいう。ここで「食品の固さ」とは、テクスチャーアナライザー等の機器によって測定される数値(Force(g))や、きっ食時の歯応え等の食感で示すことができる。
例えば、次の測定機器及び測定条件で固さ(Force(g))を調べた場合に、保存前の測定数値と保存後の測定数値が100±10%の範囲内であれば、食品の固さが維持されていると言える。
測定機器:テクスチャーアナライザーTA XT Plus(英弘精機社)
測定条件:HDP/BSを測定冶具とし、貫入速度1mm/secで貫入距離が99.9%Strainの時の測定数値
【0013】
このような「食品の固さ維持剤」は、「澱粉類及び/又は増粘多糖類を含み、かつ、10℃においてせん断速度10 1/sの時の粘度ηが1mPa・sを超え、209mPa・s未満の溶液」からなるものであればよい。この粘度ηは、次の測定機器及び測定条件で測定することができる。
測定機器:Viscotester(商標) iQ(Thermo Fisher Scietific社)
測定治具:CCB25DIN/SS
せん断速度:0-100 1/s
測定温度:10℃
【0014】
本発明の「食品の固さ維持剤」は、粘度ηが1mPa・sを超え、209mPa・s未満であればよく、好ましくは3mPa・s以上、より好ましくは5mPa・s以上、さらに好ましくは7mPa・s以上であり、また、好ましくは200mPa・s以下、より好ましくは150mPa・s以下、さらに好ましくは100mPa・s以下、特に好ましくは98mPa・s以下である。
また、本発明の「食品の固さ維持剤」はこの粘度ηの要件を満たす溶液であれば、従来知られているいずれの澱粉類、増粘多糖類を含むものであってもよい。澱粉類、増粘多糖類は一種以上含めばよく、二種以上組み合わせて含むものであってもよい。
本発明の「食品の固さ維持剤」は、加熱又は非加熱で製造されたものであればよい。ここで、「非加熱」とは、90℃以上、80℃以上、70以上、又は60℃以上、50℃以上、40℃以上、又は30℃以上の温度で処理されていないことを意味する。
【0015】
本発明の「食品の固さ維持剤」に含まれる澱粉類は、食品の製造に利用できるものあればいずれの由来のものも使用することができ、例えば、トウモロコシ、小麦、米、馬鈴薯、サツマイモ、キャッサバ、カタクリ、葛等を由来とするものが挙げられる。
具体的には、澱粉、α化澱粉又は加工澱粉等が使用できる。また、α化澱粉として未加工のα化澱粉に加え、α化アセチル化アジピン酸架橋澱粉、α化アセチル化酸化澱粉、α化アセチル化リン酸架橋澱粉、α化オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、α化酢酸澱粉、α化酸化澱粉、α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、α化ヒドロキシプロピル澱粉、α化リン酸架橋澱粉、α化リン酸化澱粉、又はα化リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉等の、2008年10月に厚生労働省にて食品添加物として新規指定された11品目の加工澱粉をα化したもの等が挙げられる。また、加工澱粉は、アセチル化・エーテル・酸化・エステル化等のいずれの加工方法によって加工された澱粉であってもよい。
これらの澱粉類は市販のものを使用してもよく、従来知られているいずれかの方法によって独自に調製したものを使用してもよい。
【0016】
また、本発明の「食品の固さ維持剤」に含まれる「増粘多糖類」は、食品の製造に利用できるものあればいずれのものも使用することができ、例えば、カシアガム・ローカストビーンガム・タラガム・グァーガム等のガラクトマンナン類、グルコマンナン、カラギナン、寒天、アルギン酸類、キサンタンガム、スクシノグリカン、ウェランガム、ジェランガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、セルロース誘導体、シロキクラゲ多糖体、HMペクチン、LMペクチン、大豆多糖類等が挙げられる。
また、複数の増粘多糖類を組み合わせ製剤化したものであってもよく、このような剤として、UNet デリカキープ(主成分:加工澱粉・ペクチン、ユニテックフーズ社)、ユニガムZ-0202(主成分:加工澱粉・キサンタンガム、ユニテックフーズ社)等が挙げられる。
これらの増粘多糖類は市販のものを使用してもよく、従来知られているいずれかの方法によって独自に調製したものを使用してもよい。
【0017】
本発明の「食品」はいずれのものであってもよいが、冷蔵保存やチルド保存で製造後4日程度迄の保存が必要となる「食品」であることが好ましい。
このような「食品」として、サラダ、スティックサラダ、惣菜、サンドイッチ、おにぎり、麺類、丼、弁当、菓子類等の調理済みの食品が挙げられる。また、生の野菜・海藻・果物等、加熱された野菜・きのこ類・畜肉・魚介類・海藻・果物等、ハム・ソーセージ・チーズ・スモークサーモン・かまぼこ・ちくわ・豆腐等の加工食品も本発明の「食品」に含まれ、生できっ食できるものであれば、単に水洗いした食材も含まれる。
【0018】
本発明の「食品」は特に生の野菜であることが好ましく、このような「生の野菜」として、例えばもやし、豆苗、ニラ、キャベツ、ほうれん草、白菜、チンゲンサイ、小松菜、シュンギク、菜の花、レタス、玉ネギ、ネギ、アスパラガス、ニンジン、大根、カブ、トマト、キュウリ、ウリ、ピーマン、ナス、ズッキーニ、アボガド、ブロッコリー、カリフラワー、食用菊が挙げられる。
【0019】
本発明の「固さを維持させた食品の製造方法」は、次の(A)の工程を含む製造方法であればよく、さらに(B)の工程を含む製造方法であることが好ましい。
(A)澱粉類及び/又は増粘多糖類を含み、かつ、10℃においてせん断速度10 1/sの時の粘度ηが1mPa・sを超え、209mPa・s 未満の溶液からなる食品の固さ維持剤を、食品に接触させる工程
(B)(A)の工程を経た食品から余剰の食品の固さ維持剤を除く工程
【0020】
(A)の工程によって、食品の固さ維持剤が、食品の表面全体に万遍なく付着している状態となればよく、このような状態となるのであれば、浸漬、噴霧、塗布等、いずれの方法で「接触」を行ってもよい。
食品の固さ維持剤が、食品の表面全体に万遍なく付着している状態であれば、食品の固さの維持が可能となる。そのため(B)の工程において、食品がこの状態を保持しているのを前提として「余剰の食品の固さ維持剤を除く」ことで、例えば風味や食感が悪くなる等の、必要以上の「食品の固さ維持剤」が与え得る影響を取り除くことが可能となる。
「余剰の食品の固さ維持剤を除く」方法は、従来知られているいずれの方法で行っても良いが、例えば、ザルや脱水機器を使用して脱水処理を行う等が挙げられる。
このような本発明の製造方法によって得られる「固さを維持させた食品」は、そのままきっ食することも、様々な調理に使用することもできる。
【0021】
以下に実施例を挙げて本発明の具体的な実施態様について説明する。なお、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【実施例0022】
本発明の実施例において、別途記載がない限りは次の試料を使用し、また、製造した各食品の評価を行った。
1.試料
1)澱粉類・増粘多糖類
A. タマリンドシードガム(1w/w%(7mPa・s)):グリエイト(DSP五協フードケミカル社)、B. LMペクチン(0.1w/w%(15mPa・s)、1w/w%(23mPa・s)、2w/w%(39mPa・s)):UNIPECTIN OF755CSB(カーギル社)、C. α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉(1w/w%(32mPa・s)):PolarTex-Instant12643:カーギル社)、D. キサンタンガム(0.1w/w%(98mPa・s)):SATIAXAN CX90(カーギル社)、a. キサンタンガム(0.3w/w%(209mPa・s)):SATIAXAN CX90(カーギル社)
【0023】
2)食品
水道水で洗浄したレタスから芯部分を除き、葉の部分(1枚)を2.5cm×4cmの大きさにカットした。
【0024】
2.評価
1)物性評価
各食品(2.5cm×4cm)について、次の測定条件によりテクスチャーアナライザーTA XT Plus(英弘精機社)にて分析し、固さを調べた。
測定条件:
HDP/BSを測定冶具とし、貫入速度1mm/secで貫入距離が99.9%Strainの時の測定数値を固さ(Force(g))とした。
【0025】
2)官能評価
5人のパネラーにより、次の基準に沿って、各食品を咀嚼した際の食感(シャキシャキ感)を評価した。澱粉類及び/又は増粘多糖類で処理をしていない食品(コントロール:無添加(保存前))を5点とし、総合評価が平均3点以上であれば良好とした。
[評価基準]
5点:食品そのもののシャキシャキした食感がある
4点:食品そのもののシャキシャキした食感があるがやや劣る
3点:食品そのもののシャキシャキした食感があるがやや劣り、部分的にしんなりとしている
2点:全体的にややしんなりした食感である
1点:全体的にしんなりしており、シャキシャキした食感がない
【0026】
[実施例1]
1.食品の固さ維持剤の製造
澱粉類及び/又は増粘多糖類10gを、1990gの水を入れた容器に添加し、撹拌機(マゼラ NZ-1000 東京理化器械社製)で5分間攪拌して溶解し、表1の粘度に調整した食品の固さ維持剤(以下、単に固さ維持剤と示す場合がある)を製造した。
各固さ維持剤の粘度ηは次の測定機器及び測定条件により調べた。これらの固さ維持剤は、いずれも10℃においてせん断速度10 1/sの時の粘度ηが1mPa・sを超え、209mPa・s未満であった。
[粘度ηの測定]
測定機器:Viscotester(商標) iQ(Thermo Fisher Scietific社)
測定治具:CCB25DIN/SS
せん断速度:0-100 1/s
測定温度:10℃
【0027】
2.固さを維持させた食品の製造
前処理として、レタス(2.5cm×4cm)を5分流水洗浄後、ザルで大まかに水を切り、サラダスピナーで2分間脱水した。
上記1で製造した各固さ維持剤にレタスを5秒程度浸漬した後、サラダスピナーで2分間脱水し、食品の表面に付着した余剰の水分を除き、固さを維持させた食品(レタス)を製造した。
【0028】
3.評価
製造された各食品(レタス)を用いてサンドイッチを製造し、固さ(レタス(2.5cm×4cm)1枚)を測定するとともに、食感について官能評価を行った。
サンドイッチは食パン(1枚)の上にチーズ1枚、ハム1枚、サンドイッチ用ソース(マヨネーズとフレンチドレッシング(いずれもキユーピー社製)を同量混合)3g、及び各固さを維持させた食品(レタス)45gを順番に重ね、その上にサンドイッチ用ソース2.5gを塗布した食パン(1枚)を重ねて製造した。これを対角線上にカットし、サンドイッチ用袋に入れ、10℃で2日間保存した。
【0029】
保存後の各サンドイッチをきっ食し、各食品(レタス)の食感を評価した。また、各食品(レタス)の固さを測定し、これらの結果を表1に示した。
なお、コントロールとして、固さ維持剤による処理をしていないレタスでサンドイッチを製造し、同様に保存したもの(無添加(保存後))、評価時にこのレタスでサンドイッチを製造したもの(無添加(保存前))を用いた。
また、比較例として、10℃においてせん断速度10 1/sの時の粘度ηが209mPa・s以上となるように調製した澱粉類及び/又は増粘多糖類を含む溶液により、上記2と同様の処理を行ったレタスを用いて同様にサンドイッチを作成し、保存したものを用いた。
【0030】
【表1】
【0031】
表1及び図1に示されるように、澱粉類及び/又は増粘多糖類を含み、かつ、10℃においてせん断速度10 1/sの時の粘度ηが1mPa・sを超え、209mPa・s未満の溶液からなる食品の固さ維持剤を使用することによって、数日チルド保存した食品において、保存前と同等の固さが維持できることが確認できた。また、この食品は、表1に示されるように、保存後も食品そのもののシャキシャキした食感を維持していた。
この食品は保存期間において、食品からの離水による、他の食材(パン等)への水分の染込みが起こらず、外観も損なわず、保存前の食品と同等の瑞々しい美味しさが保たれたものであった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の食品の固さ維持剤の提供により、コンビニやスーパーマーケット等で販売される、長期間の冷蔵保存やチルド保存等が必要な食品において、離水の発生、食感や外観の変化等の経時的な変化が抑制され、保存前と同等の固さを維持している食品の提供が容易となる。
図1