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  • 特開-熱処理装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067053
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/40 20220101AFI20230509BHJP
   B09B 3/00 20220101ALI20230509BHJP
   C02F 11/10 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
B09B3/00 303M
B09B3/00 ZAB
C02F11/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021177991
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】399049981
【氏名又は名称】株式会社オメガ
(72)【発明者】
【氏名】中村 信一
【テーマコード(参考)】
4D004
4D059
【Fターム(参考)】
4D004AA02
4D004AA03
4D004AA04
4D004AA07
4D004AA12
4D004AA50
4D004AB01
4D004CA04
4D004CA13
4D004CA26
4D004CB04
4D004CB13
4D004CB31
4D004CB32
4D004CB34
4D004CB36
4D004CB42
4D004CB50
4D004CC11
4D004DA06
4D004DA07
4D059AA00
4D059AA07
4D059BB03
4D059BB05
4D059BK11
4D059CB01
4D059EB16
4D059EB20
(57)【要約】
【課題】従来よりも実用的な熱処理装置を提供しようとするもの。
【解決手段】加熱媒体Mの貯留槽1と、前記貯留槽1への処理対象物Xの供給機構2とを有し、前記供給機構2で処理対象物Xを貯留槽1に圧入するようにし、前記供給機構2中の加熱媒体Mの移送速度により処理対象物Xに及ぼす熱処理作用を制御するようにした。前記熱処理により浮上した熱処理物から、付着した加熱媒体Mを遠心分離により離脱させるようにしてもよい。前記熱処理の雰囲気の真空度を制御するようにしてもよい。前記加熱媒体M中で供給機構2の外には出たが圧入した貯留槽1中に存する時間を含めて制御するようにしてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱媒体(M)の貯留槽(1)と、前記貯留槽(1)への処理対象物(X)の供給機構(2)とを有し、前記供給機構(2)で処理対象物(X)を貯留槽(1)に圧入するようにし、前記供給機構(2)中の加熱媒体(M)の移送速度により処理対象物(X)に及ぼす熱処理作用を制御するようにしたことを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記熱処理により浮上した熱処理物から、付着した加熱媒体(M)を遠心分離により離脱させるようにした請求項1記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記熱処理の雰囲気の真空度を制御するようにした請求項1又は2記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記加熱媒体(M)中で供給機構(2)の外には出たが圧入した貯留槽(1)中に存する時間を含めて制御するようにした請求項1乃至3のいずれかに記載の熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、従来よりも実用的な熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生ごみ処理装置に関する提案があった(特許文献1)。
すなわち、一般的に、生ごみは埋立て或いは焼却の方法で処理される。生ごみは80%以上の水分を含有しており、また、腐敗しやすい有機性物質も含んでいるので、生ごみをそのまま埋め立てる方式で処理する場合には、腐敗する過程で発生される窒素と硫黄化合物による悪臭が発生することは勿論、蝿、蚊など害虫の繁殖を誘発する問題がある。
また、生ごみをそのまま埋め立てる場合には高濃度の浸出水が排出されて、土壌を広範に汚染するという深刻な問題があり、この理由で埋め立て施設が嫌悪すべき施設の一つとして認識されているので、埋め立て施設の敷地確保が難しく、また、メンテナンスに莫大な費用がかかるので次第に建設が制限されている深刻な状況である。
この従来技術に係る生ごみ処理装置は、各家庭や飲食店などに備えられ、発生する生ごみを撹拌槽内に挿入した後、微生物発酵剤を入れ撹拌すれば、生ごみは均一に混ぜ合って発酵され、発酵過程中に酸素が十分に供給され、排ガス中に含有された悪臭は別の装置によって捕集することにより処理時の悪臭の発生は著しく低減されるので、極めて使い勝手がよくなる利点がある、というものである。
しかし、このものはあまり実用的ではないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-88142
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこでこの発明は、従来よりも実用的な熱処理装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
(1)この発明の熱処理装置は、加熱媒体の貯留槽と、前記貯留槽への処理対象物の供給機構とを有し、前記供給機構で処理対象物を貯留槽に圧入するようにし、前記供給機構中の加熱媒体の移送速度により処理対象物に及ぼす熱処理作用を制御するようにしたことを特徴とする。
この熱処理装置では、加熱媒体の貯留槽と、前記貯留槽への処理対象物の供給機構とを有し、前記供給機構で処理対象物を貯留槽に圧入するようにしたので、貯留槽中の加熱媒体が供給機構に出入りしつつ処理対象物を加熱することが出来る。例えば、加熱媒体中に取り込んだ処理対象物から、含有水分を気化させて炭化させることが出来る。
【0006】
そして、前記供給機構中の加熱媒体の移送速度により処理対象物に及ぼす熱処理作用を制御するようにしたので、供給機構中(入口近傍、中域、出口近傍)を移送されていくに従い加熱媒体による熱処理(例えば炭化)の度合いが進行・増大していくこととなる。また、貯留槽中に存する加熱媒体(液状、粒状)は、空気などの気体よりも処理対象物に対する熱伝導性に優れる(比熱が小さい)ものである。
【0007】
前記処理対象物として、食品(珈琲豆その他)、生ごみ(魚の頭、骨など)、紙おしめ・布おむつ、廃プラスチック類、有機汚泥(湿潤体)、吸水した活性炭(賦活する)、のこ屑(活性炭にする)、排水・廃液(液体)、汚水(液体)などを例示できる。処理対象物(例えば紙おしめ)は、クラッシャー刃を有する粉砕機構3で細分化して供給することが出来る。
前記加熱媒体として、低融点合金(昇温 約650℃)、ソルトバス(昇温 約800℃、必ずしも溶融してなくてもよい)、タールピッチ(昇温 約350℃)、シリコンオイル(昇温 約500℃)などを例示できる。処理対象物の加熱媒体中での浮上に対し、加熱媒体の比重により重しとして機能させるようにすることが出来る。例えば、低融点合金はオイル系のものより比重が大きい。また低融点合金は、空気などの気体に対して格段に熱伝導性がいいという利点がある。
【0008】
加熱媒体の貯留槽は、LNGガス・バーナーなどの熱風によって加熱昇温することが出来る。加熱媒体の昇温温度として、例えば350℃~950℃を例示することが出来る。炭化時の排ガスは、電解スクラバーに送って浄化して大気解放することが出来る。
前記貯留槽への処理対象物の供給機構として、スパイラルポンプ、注射器(微小量の液体などの注入・圧入)などを例示できる。前記供給機構は、その向きが鉛直(上下)方向でも水平(左右)方向でも斜め方向でもよい。
前記供給機構の移送速度(時間)の制御として、スパイラルポンプの回転速度や羽根間の距離などを例示することができる。
【0009】
貯留槽の上方(の空間)から、加熱後の汚水中の有機物の残渣物、炭化した炭素パウダー(炭化物)が浮いてきたものを排出することが出来る。得られた炭化物の用途として、活性炭を例示することが出来る。
この熱処理装置では、選択した加熱媒体の吸熱特性や放熱特性を利用して、熱処理全般に色々な態様として適用することが出来る。
加熱媒体(例えば、低融点合金)中で、熱処理物(例えば、軽い粉状の炭化物等)が比重差(浮力)で液面へと浮上することとなる。
【0010】
処理対象物を熱処理・炭化する際、加熱媒体(例えば、低融点合金)中には酸素(O2)は存しないので、処理対象物の有機体が酸化して二酸化炭素(CO2)に化学変化することはなく、空気中での炭化処理の場合のように処理雰囲気中に窒素ガス(N2)を吹き込んで酸素を追い出す必要はない。
処理対象物を魚の骨、頭、内臓等の食品残渣とし、これを加熱媒体中で脱水・熱処理してその後(必要に応じて)クラッシャーし、この熱処理物を家畜(牛、豚、鶏)、養魚場、ペットなどの飼料(カルシウムなどを多く含む)、餌とすることも出来る。
【0011】
このようにすると、魚の骨、頭、内臓、肉、植物等の食品残渣について、(まだ腐敗が始まっていない新鮮なうちに)熱処理して乾物加工品などとして二次利用することが出来る。
熱源(LNGバーナー、電熱装置など)からの加熱媒体の吸熱作用と、処理対象物への放熱作用とを制御することも出来る。
【0012】
(2)前記熱処理により浮上した熱処理物から、付着した加熱媒体を遠心分離により離脱させるようにしてもよい。
このように、熱処理により浮上した熱処理物から付着した加熱媒体を遠心分離により離脱させるようにすると、処理対象物の熱処理物を清浄化して二次利用することが出来る。
【0013】
例えば、処理対象物として使用済みの含水した活性炭を使用し、加熱媒体として低融点合金を準備し、加熱媒体(低融点合金)の温度を約650~900℃に設定し、この活性炭を賦活し、浮上した熱処理物(賦活後の活性炭)から、付着した加熱媒体(低融点合金)を遠心分離(例えば3,600~7,200rpm)により離脱させるようにすることが出来る。この際、活性炭の比重約0.5と低融点合金の比重 例えば約6~7の差により、相互間の分離が円滑に進むこととなる。
【0014】
また、処理対象物として使用済みの含水した活性炭を使用し、加熱媒体としてタールピッチを準備し、バッチ式として加熱媒体(タールピッチ)の温度を80℃程度から約350℃へと昇温していくことにより、この活性炭にタールピッチ(バインダー材+炭素成分添加剤)をコーティングすると共に賦活し、浮上した熱処理物(タールピッチ・コーティング+賦活後の活性炭)から、付着した余分の加熱媒体(タールピッチ)を遠心分離により離脱させるようにすることも出来る。
【0015】
さらに、浮上した熱処理物(例えば、加熱媒体中での熱処理(=焙煎)後の珈琲豆)とその表面の加熱媒体(例えば、無害な重金属)を、遠心分離器(遠心分離回転網)の回転作用によってセパレートすることが出来る(焙煎豆の表皮からの比重が大きい重金属の剥離)。
【0016】
(3)前記熱処理の雰囲気の真空度を制御するようにしてもよい。
このように、熱処理の雰囲気の真空度を制御するようにすると、液状の加熱媒体の沸点を処理対象物に応じて調節することが出来る。
【0017】
(4)前記加熱媒体中で供給機構の外には出たが圧入した貯留槽中に存する時間を含めて制御するようにしてもよい。
このように、加熱媒体中で供給機構の外には出たが圧入した貯留槽中に存する時間を含めて制御するようにすると、基本的には供給機構中の加熱媒体の移送速度により処理対象物に及ぼす熱処理作用を制御するのであるが、供給機構の外にもある加熱媒体の全体を処理対象物の熱処理の制御に利用することが出来る。
【発明の効果】
【0018】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
供給機構中(入口近傍、中域、出口近傍)を移送されていくに従い加熱媒体による熱処理(例えば炭化)の度合いが進行・増大していくこととなるので、従来よりも実用的な熱処理装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明の熱処理装置の実施形態1を説明する断面図。
図2】この発明の熱処理装置の実施形態2を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(実施形態1)
図1に示すように、この実施形態の熱処理装置は、加熱媒体Mの貯留槽1と、前記貯留槽1への処理対象物Xの供給機構2とを有し、前記供給機構2で処理対象物Xを貯留槽1に圧入するようにし、前記供給機構2中の加熱媒体Mの移送速度により処理対象物Xに及ぼす熱処理作用を制御するようにした。
【0021】
処理対象物Xとして、食品(珈琲豆)、生ごみ(魚の頭、骨)、紙おしめ・布おむつ、廃プラスチック類、有機汚泥(湿潤体)、吸水した活性炭(賦活する)、のこ屑(活性炭にする)、排水・廃液(液体)、汚水(液体)を処理した。処理対象物X(紙おしめ)は、クラッシャー刃を有する粉砕機構3で細分化して供給した。
前記加熱媒体Mとして、低融点合金(昇温 約650℃)、ソルトバス(昇温 約800℃、)、タールピッチ(昇温 約350℃)、シリコンオイル(昇温 約500℃)を用いた。処理対象物Xの加熱媒体M中での浮上に対し、加熱媒体Mの比重(d)により重しとして機能させるようにした。
【0022】
加熱媒体Mの貯留槽1は、LNGガス・バーナーの熱風によって加熱昇温した。加熱媒体Mの昇温温度として、350℃~950℃とした。炭化時の排ガスは、電解スクラバーに送って浄化して大気解放した。
前記貯留槽1への処理対象物Xの供給機構2として、スパイラルポンプを用いた。前記供給機構2は、その向きが鉛直(上下)方向とした。前記供給機構2の移送速度(時間)の制御として、スパイラルポンプの回転速度や羽根間の距離とした。
【0023】
貯留槽1の上方の空間から、加熱後の汚水中の有機物の残渣物、炭化した炭素パウダー(炭化物)が浮いてきたものを排出した。加熱媒体M(低融点合金)中で、熱処理物(軽い粉状の炭化物)は比重差(浮力)で液面へと浮上することとなった。
【0024】
次に、この実施形態の熱処理装置の使用状態を説明する。
この熱処理装置では、加熱媒体Mの貯留槽1と、前記貯留槽1への処理対象物Xの供給機構2とを有し、前記供給機構2で処理対象物Xを貯留槽1に圧入するようにしたので、貯留槽1中の加熱媒体Mが供給機構2に出入りしつつ処理対象物Xを加熱することが出来た。加熱媒体M中に取り込んだ処理対象物Xから、含有水分を気化させて炭化させることが出来た。
【0025】
そして、前記供給機構2中の加熱媒体Mの移送速度により処理対象物Xに及ぼす熱処理作用を制御するようにしたので、供給機構2中(入口近傍、中域、出口近傍)を移送されていくに従い加熱媒体Mによる熱処理(炭化)の度合いが進行・増大していくこととなり、従来よりも実用的なものであった。
また、貯留槽1中に存する加熱媒体M(液状、粒状)は、空気などの気体よりも処理対象物Xに対する熱伝導性に優れる(比熱が小さい)ものであった。
【実施例0026】
処理対象物Xを魚の骨、頭、内臓等の食品残渣とし、これを加熱媒体M中で脱水・熱処理してその後クラッシャーし、この熱処理物を家畜(牛、豚、鶏)、養魚場、ペットなどの飼料(カルシウムを多く含む)、餌とすることも出来た。
【0027】
(実施形態2)
次に、実施形態2を上記実施形態との相違点を中心に説明する。
図2に示すように、この実施形態の熱処理装置は、熱処理により浮上した熱処理物から、付着した加熱媒体Mを遠心分離(遠心分離器4)により離脱させるようにした。これにより、処理対象物Xの熱処理物を清浄化して二次利用することが出来た。
【実施例0028】
処理対象物Xとして使用済みの含水した活性炭を使用し、加熱媒体Mとして低融点合金を準備し、加熱媒体M(低融点合金)の温度を約650~900℃に設定し、この活性炭を賦活し、浮上した熱処理物(賦活後の活性炭)から、付着した加熱媒体M(低融点合金)を遠心分離(3,600~7,200rpm)により離脱させるようにした。この際、活性炭の比重約0.5と低融点合金の比重 例えば約6~7の差により、相互間の分離が円滑に進むこととなった。
【実施例0029】
処理対象物Xとして使用済みの含水した活性炭を使用し、加熱媒体Mとしてタールピッチを準備し、バッチ式として加熱媒体M(タールピッチ)の温度を80℃程度から約350℃へと昇温していくことにより、この活性炭にタールピッチ(バインダー材+炭素成分添加剤)をコーティングすると共に賦活し、浮上した熱処理物(タールピッチ・コーティング+賦活後の活性炭)から、付着した余分の加熱媒体M(タールピッチ)を遠心分離により離脱させるようにした。
【実施例0030】
浮上した熱処理物(加熱媒体M中での熱処理(=焙煎)後の珈琲豆)とその表面の加熱媒体M(無害な重金属)を、遠心分離器4(遠心分離回転網)の回転作用によってセパレートすることが出来た(焙煎豆の表皮からの比重が大きい重金属の剥離)。
【産業上の利用可能性】
【0031】
従来よりも実用的なことによって、種々の熱処理装置の用途に適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 貯留槽
2 供給機構
4 遠心分離器
M 加熱媒体
X 処理対象物
図1
図2