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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067082
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】検出装置及び検出方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
G06F3/041 580
G06F3/041 522
G06F3/041 520
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178055
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】518078142
【氏名又は名称】上海天馬微電子有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100183955
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 悟郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100180334
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋美
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100174067
【弁理士】
【氏名又は名称】湯浅 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 成美
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幸浩
(57)【要約】
【課題】信号強度が小さい非接触状態の対象物に起因するピークを判別できる、検出装置及び検出方法を提供する。
【解決手段】検出装置は、駆動電極と複数の検出電極とを有するセンサ部と、駆動電極に電圧を印加することにより、検出電極から取得される信号強度の時間変化を示す信号波形から非接触状態の対象物を検出する制御部と、を備える。制御部は、ピークの上昇開始点からピークのピークトップまでの時間幅ΔT1と、ピークの上昇開始点からピークのピークトップまでの高さΔH1と、ピークの上昇側の傾きUcとに基づいて、非接触状態の対象物に起因するピークを判別する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動電極と複数の検出電極とを有するセンサ部と、
前記駆動電極に電圧を印加することにより、前記検出電極から取得される信号強度の時間変化を示す信号波形から、非接触状態の対象物を検出する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記信号波形における、ピークの上昇開始点から前記ピークのピークトップまでの時間幅と前記ピークの上昇開始点から前記ピークのピークトップまでの高さと前記ピークの上昇側の傾きとに基づいて、前記非接触状態の対象物に起因するピークを判別する、
検出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記信号波形の一次微分波形と二次微分波形に基づいて、前記ピークの上昇開始点と前記ピークのピークトップとを判別する、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記二次微分波形の値が正の値から負の値に変化し前記一次微分波形の値が正の値である時間を、前記ピークの上昇開始点に対応する時間とし、前記ピークの上昇開始点に対応する時間から時間が経過する方向で、前記一次微分波形の値が正の値から負の値に変化する最初の時間を、前記ピークのピークトップに対応する時間とすることにより、前記ピークの上昇開始点と前記ピークのピークトップとを判別する、
請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ピークの上昇開始点に対応する時間と前記ピークのピークトップに対応する時間が所定の第1期間の内にない場合、前記ピークの上昇開始点に対応する時間から時間が経過する方向で、次の前記ピークの上昇開始点を判別する、
請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記ピークのピークトップに対応する時間から時間が経過する方向で、前記二次微分波形の値が負の値から正の値に変化し前記一次微分波形の値が負の値である最初の時間を、前記ピークの下降終了点に対応する時間とし、前記ピークのピークトップに対応する時間と前記ピークの下降終了点に対応する時間が所定の第2期間の内にない場合、前記ピークのピークトップに対応する時間から時間が経過する方向で、次の前記ピークの上昇開始点を判別する、
請求項3又は4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記ピークの下降終了点から前記ピークのピークトップまでの時間幅と前記ピークの下降終了点から前記ピークのピークトップまでの高さと前記ピークの下降側の傾きの少なくとも1つに基づいて、前記非接触状態の対象物に起因するピークを判別する、
請求項5に記載の検出装置。
【請求項7】
前記信号波形が、前記検出電極のそれぞれから取得される信号強度の時間変化を示す信号波形と、前記検出電極の信号波形を平均した平均信号波形である、
請求項1から6のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記信号波形のそれぞれにおいて前記非接触状態の対象物に起因するピークと判別されたピークの、前記ピークトップの時間順から、前記非接触状態の対象物の動きを判別する、
請求項1から7のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項9】
前記非接触状態の対象物に起因するピークと判別されたピークの前記ピークトップの時間間隔から、前記非接触状態の対象物の動きを判別する、
請求項8に記載の検出装置。
【請求項10】
駆動電極に電圧を印加することにより、複数の検出電極から信号強度の時間変化を示す信号波形を取得する工程と、
前記信号波形における、ピークの上昇開始点から前記ピークのピークトップまでの時間幅と前記ピークの上昇開始点から前記ピークのピークトップまでの高さと前記ピークの上昇側の傾きとに基づいて、非接触状態の対象物に起因するピークを判別する工程と、
判別された前記非接触状態の対象物に起因するピークに基づいて、前記非接触状態の対象物を検出する工程と、を含む、
検出方法。
【請求項11】
前記信号波形の一次微分波形と二次微分波形に基づいて、前記ピークの上昇開始点と前記ピークのピークトップとを判別する工程を含む、
請求項10に記載の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検出装置及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザーの指示を、ユーザーのジェスチャーにより受け付けるインターフェースが求められている。例えば、特許文献1は、並進ジェスチャーが行われた時に、熱を検出する画素ごとに、検出された熱の時間的強度推移に応じた信号の振れを有する信号を出力するように構成されたジェスチャセンサを有する、スイッチ作動装置を開示している。特許文献1では、信号の振れの絶対値が所定のレベルを上回るか否かを検査することにより、並進ジェスチャーに起因する信号とノイズ信号とを判別している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2016-526213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、信号の振れの絶対値のみで、ジェスチャーに起因する信号とノイズ信号とを判別しているので、ジェスチャーに起因する信号のレベルが小さい場合(センサとジェスチャーとの距離が遠い場合)、ジェスチャーに起因する信号とノイズ信号との判別が困難である。
【0005】
本開示は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、信号強度が小さい非接触状態の対象物に起因するピークを判別できる、検出装置及び検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の第1の観点に係る検出装置は、
駆動電極と複数の検出電極とを有するセンサ部と、
前記駆動電極に電圧を印加することにより、前記検出電極から取得される信号強度の時間変化を示す信号波形から、非接触状態の対象物を検出する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記信号波形における、ピークの上昇開始点から前記ピークのピークトップまでの時間幅と前記ピークの上昇開始点から前記ピークのピークトップまでの高さと前記ピークの上昇側の傾きとに基づいて、前記非接触状態の対象物に起因するピークを判別する。
【0007】
本開示の第2の観点に係る検出方法は、
駆動電極に電圧を印加することにより、複数の検出電極から信号強度の時間変化を示す信号波形を取得する工程と、
前記信号波形における、ピークの上昇開始点から前記ピークのピークトップまでの時間幅と前記ピークの上昇開始点から前記ピークのピークトップまでの高さと前記ピークの上昇側の傾きとに基づいて、非接触状態の対象物に起因するピークを判別する工程と、
判別された前記非接触状態の対象物に起因するピークに基づいて、前記非接触状態の対象物を検出する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、信号強度が小さい、非接触状態の対象物に起因するピークを判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係る検出装置を示す図である。
図2】実施形態1に係るセンサ部を示す平面図である。
図3】実施形態1に係る表示ユニットを示す模式図である。
図4】実施形態1に係る制御部の構成を示すブロック図である。
図5】実施形態1に係る移動平均化された信号波形を示す図である。
図6】実施形態1に係る一次微分波形を示す図である。
図7】実施形態1に係る二次微分波形を示す図である。
図8】実施形態1に係る移動平均化された信号波形におけるピークの上昇開始点とピークトップを示す図である。
図9】実施形態1に係る制御部のハードウェア構成を示す図である。
図10】実施形態1に係る検出処理を示すフローチャートである。
図11】実施形態1に係る算出処理を示すフローチャートである。
図12】実施形態1に係るピーク端点・ピークトップ判別処理を示すフローチャートである。
図13】実施形態1に係るピーク判別処理を示すフローチャートである。
図14】実施形態1に係る対象物のピークの一例を示す図である。
図15】実施形態1に係る非接触検出処理を示すフローチャートである。
図16】実施形態1に係るルックアップテーブルの一例を示す図である。
図17】実施形態2に係る移動平均化された信号波形における下降終了点を示す図である。
図18】実施形態2に係るピーク端点・ピークトップ判別処理を示すフローチャートである。
図19】実施形態3に係る仮想検出電極を示す模式図である。
図20】実施形態3に係る+Y方向から-Y方向へのフリックジェスチャーに対応するピークトップの時間順の一例を示す図である。
図21】実施形態3に係る移動平均化された信号波形を示す図である。
図22】実施形態3に係る移動平均化された平均信号波形を示す図である。
図23】実施形態4に係る時計回りのサークルジェスチャーを示す模式図である。
図24】実施形態4に係る非接触検出処理を示すフローチャートである。
図25】変形例に係る移動平均化された信号波形における下降終了点を示す図である。
図26】変形例に係る仮想検出電極を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る検出装置について、図面を参照して説明する。
【0011】
<実施形態1>
図1図16を参照して、本実施形態に係る検出装置10を説明する。検出装置10は、非接触状態の対象物(例えば、ユーザーのジェスチャー)を検出する。まず、検出装置10の全体構成を説明する。
【0012】
検出装置10は、図1に示すように、センサ部20と制御部50とを備える。センサ部20は、図2に示すように、透光性基板22と駆動電極24と複数の検出電極26a~26eとを有している。駆動電極24と検出電極26a~26eは、透光性基板22に形成されている。制御部50は、駆動電極24に電圧を印加することにより、検出電極26a~26eから取得される、静電容量を表す信号の信号強度の時間変化を示す信号波形から、非接触状態の対象物を検出する。本明細書では、理解を容易にするため、図2におけるセンサ部20の右方向(紙面の右方向)を+X方向、上方向(紙面の上方向)を+Y方向、+X方向と+Y方向に垂直な方向(紙面の手前方向)を+Z方向として説明する。また、静電容量を表す信号を「信号」と、静電容量を表す信号の信号強度を「信号強度」とも記載する。
【0013】
検出装置10は、図3に示すように、表示装置100と共に表示ユニット200を構成する。表示ユニット200は、スマートフォン、ラップトップ型コンピュータ、インフォメーションディスプレイ等に搭載される。表示装置100は、表示パネル110と表示制御部120とを有する。表示パネル110は、文字、画像等を表示する。表示パネル110は、液晶表示パネル、有機EL(Electro Luminescence)表示パネル等である。表示制御部120は、表示パネル110の表示を制御する。また、表示制御部120と検出装置10の制御部50は、接続されている。
【0014】
検出装置10のセンサ部20は、図示しない接着層を介して、表示パネル110の表示面側に設けられる。この場合、センサ部20の駆動電極24は表示パネル110の表示領域の上に位置し、センサ部20の検出電極26a~26eは表示パネル110の表示領域の外周の上に位置している。また、センサ部20の上には、樹脂製の保護カバー202が図示しない接着層を介して設けられている。検出装置10は、センサ部20上の検出空間に位置する非接触状態の対象物を検出する。これにより、検出装置10は、表示装置100の表示に対するユーザーの指示を受け付ける、インターフェースとして機能する。なお、検出空間の厚さLは、例えば150mmである。
【0015】
次に、検出装置10の具体的な構成について、説明する。検出装置10のセンサ部20は、図2に示すように、透光性基板22と駆動電極24と検出電極26a~26eとを有する。
【0016】
センサ部20の透光性基板22は、例えばガラス基板である。透光性基板22は、第1主面22aを有している。
【0017】
センサ部20の駆動電極24は、透光性基板22の第1主面22aの上に設けられる。駆動電極24は、矩形状で、第1主面22aの中央部に設けられている。本実施形態では、駆動電極24は、平面視した場合に、表示パネル110の表示領域を覆っている。駆動電極24は、図示しない配線を介して、制御部50に電気的に接続している。
【0018】
センサ部20の検出電極26a~26eは、それぞれ、透光性基板22の第1主面22aに設けられる。検出電極26aは、駆動電極24の+Y側に配置され、X方向に延びている。検出電極26b~26eは、駆動電極24の-Y側に、X方向に並んで配置されている。検出電極26a~26eのそれぞれは、図示しない配線を介して、制御部50に電気的に接続している。
【0019】
駆動電極24と検出電極26a~26eは、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)から形成される。駆動電極24と検出電極26a~26eは、対象物(例えば、ユーザーの指、手、ペン等)との間で静電容量を形成する。
【0020】
検出装置10の制御部50は、検出電極26a~26eから取得される静電容量を表す信号の、信号強度の時間変化を示す信号波形から、非接触状態の対象物を検出する。まず、制御部50の機能的構成を説明する。制御部50は、図4に示すように、入出力部51と、記憶部52と、駆動部54と、受信部56と、算出部58と、第1判別部62と、第2判別部64と、検出部66とを備える。
【0021】
制御部50の入出力部51は、制御部50と表示装置100の表示制御部120との間の信号、検出部66と電子機器の制御部との間の信号等を入出力する。
【0022】
制御部50の記憶部52は、プログラム、データ、受信部56が受信した静電容量を表す信号、信号強度の時間変化を示す信号波形等を記憶する。
【0023】
制御部50の駆動部54は、入出力部51を介して送信された電子機器の制御部からの指示に基づいて、駆動電極24に電圧を印加する。制御部50の受信部56は、検出電極26a~26eからの静電容量を表す信号を受信する。
【0024】
制御部50の算出部58は、受信部56が受信した信号の、信号強度の時間変化を示す信号波形に、移動平均処理を施して、移動平均化された信号波形を求める(図5)。これにより、細かなノイズを除去できる。さらに、算出部58は、図6図7に示すように、移動平均化された信号波形の一次微分波形と二次微分波形を求める。
【0025】
制御部50の第1判別部62は、移動平均化された信号波形の一次微分波形と二次微分波形に基づいて、移動平均化された信号波形における、ピークの上昇開始点とピークのピークトップとを判別する。具体的には、第1判別部62は、図6図7に示すように、二次微分波形の値が正の値から負の値に変化し一次微分波形の値が正の値である時間を、ピークの上昇開始点に対応する時間とする。また、第1判別部62は、ピークの上昇開始点に対応する時間から時間が経過する方向で、一次微分波形の値が正の値から負の値に変化する最初の時間を、ピークのピークトップに対応する時間とする。さらに、第1判別部62は、ピークの上昇開始点に対応する時間とピークのピークトップに対応する時間から、ピークの上昇開始点とピークのピークトップとを判別する。以下では、ピークの上昇開始点を「上昇開始点」と、ピークのピークトップを「ピークトップ」とも記載する。
【0026】
なお、第1判別部62は、上昇開始点に対応する時間から所定の第1期間(例えば100ms)経過してもピークトップが判別されない場合(すなわち上昇開始点に対応する時間とピークトップに対応する時間が所定の第1期間の内にない場合)、上昇開始点と一旦判別された点を、上昇開始点でないと再判別して、上昇開始点を時間が経過する方向に再度判別してもよい。
【0027】
制御部50の第2判別部64は、上昇開始点からピークトップまでの時間幅ΔT1と、上昇開始点からピークトップまでの高さΔH1と、ピークの上昇側の傾きUc(Uc=ΔH1/ΔT1)とに基づいて、移動平均化された信号波形における非接触状態の対象物に起因するピークを判別する。具体的には、第2判別部64は、時間幅ΔT1が所定の第1しきい値Cw(例えば10ms)以上、高さΔH1が所定の第2しきい値Ch(例えば10a.u.)以上、上昇側の傾きUcが第3しきい値Cd(例えば、0.15)以上であるピークを、移動平均化された信号波形における非接触状態の対象物に起因するピークと判別する。以下では、非接触状態の対象物に起因するピークを「対象物のピーク」とも記載する。
【0028】
本実施形態では、時間幅ΔT1と高さΔH1と上昇側の傾きUcとに基づいて、対象物のピークを判別する。したがって、検出装置10は、高さΔH1のしきい値である第2しきい値Chを小さく設定されても、対象物のピークを判別できる。すなわち、検出装置10は、信号強度が小さい対象物のピークを判別できる。また、上昇開始点とピークトップから対象物のピークを判別するので、信号波形がピークトップに達した時点で対象物のピークを判別でき、非接触状態の対象物を短時間で検出できる。
【0029】
制御部50の検出部66は、検出電極26a~26eの移動平均化された信号波形における対象物のピークの、ピークトップの時間順から、非接触状態の対象物の動きを検出する。例えば、対象物のピークのピークトップが、時間が経過する方向で、+X側に位置する検出電極26eから、検出電極26d、検出電極26c、検出電極26bの順に現れた場合、検出部66は、ユーザーが+X方向から-X方向へのフリックジェスチャーを行ったと判別し、ユーザーの+X方向から-X方向へのフリックジェスチャーを検出する。
【0030】
検出部66は、検出した非接触状態の対象物の動きを表す信号を、検出装置10を搭載している電子機器の制御部に出力する。非接触状態の対象物の動きを表す信号は、例えば、-X方向へのフリックジェスチャーに対してユーザーが設定した、キーイベント、メッセージ等を表す。検出した非接触状態の対象物の動きを表す信号は、1回の検出に対して、1回出力されても複数回出力されてもよい。なお、検出されるジェスチャーは、+Y方向から-Y方向へのフリックジェスチャー、非接触状態の対象物が円形に移動するサークルジェスチャー等であってもよい。以下では、非接触状態の対象物の動きを「対象物の動き」とも記載する。
【0031】
図9は、制御部50のハードウェアの構成を示す。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)82と、ROM(Read Only Memory)83と、RAM(Random Access Memory)84と、入出力インターフェース86と、特定機能の回路88から構成される。CPU82はROM83に記憶されているプログラムを実行する。ROM83は、プログラム、データ、信号等を記憶している。RAM84は、データを記憶する。入出力インターフェース86は、各部の間の信号を入出力する。特定機能の回路88は、駆動回路、受信回路、演算回路等を含む。制御部50の機能は、CPU82のプログラムの実行と特定機能の回路88の機能により、実現される。
【0032】
次に、図10図16を参照して、検出装置10の検出処理(動作)を説明する。ここでは、検出装置10と表示装置100とを有する表示ユニット200が電子器機器に搭載されている場合について、説明する。検出装置10の検出処理は、図10に示すように、駆動処理(ステップS100)、算出処理(ステップS200)、ピーク端点・ピークトップ判別処理(ステップS300)、ピーク判別処理(ステップS400)、非接触検出処理(ステップS500)の順に行われる。非接触検出処理(ステップS500)の後、制御部50に終了指示が入力されない場合(ステップS600;NO)、検出装置10の検出処理は算出処理(ステップS200)に戻る。制御部50に終了指示が入力された場合(ステップS600;YES)、検出装置10の検出処理は終了する。
【0033】
駆動処理(ステップS100)では、制御部50の入出力部51を介して送信された電子機器の制御部からの指示に基づいて、制御部50の駆動部54が駆動電極24に電圧を印加し、制御部50の受信部56が検出電極26a~26eのそれぞれから静電容量を表す信号を受信する。受信された静電容量を表す信号は、制御部50の記憶部52に記憶される。
【0034】
図11を参照して、算出処理(ステップS200)を説明する。算出処理(ステップS200)では、移動平均化された信号波形と、移動平均化された信号波形の一次微分波形と二次微分波形が求められる。まず、制御部50の算出部58が、受信部56が受信した信号の信号強度の時間変化を示す信号波形に、移動平均処理を施し、検出電極26a~26eのそれぞれにおける移動平均化された信号波形を求める(ステップS202)。さらに、算出部58は、求められた移動平均化された信号波形のそれぞれの一次微分波形と二次微分波形を求める(ステップS204)。
【0035】
次に、図12を参照して、ピーク端点・ピークトップ判別処理(ステップS300)を説明する。ピーク端点・ピークトップ判別処理(ステップS300)では、移動平均化された信号波形の一次微分波形と二次微分波形に基づいて、移動平均化された信号波形における上昇開始点とピークトップが判別される。まず、制御部50の第1判別部62が、移動平均化された信号波形のそれぞれの一次微分波形と二次微分波形から、時間が経過する方向に沿って、移動平均化された信号波形のそれぞれにおける上昇開始点を判別する(ステップS302)。第1判別部62は、二次微分波形の値が正の値から負の値に変化し一次微分波形の値が正の値である時間を、上昇開始点に対応する時間とすることにより、上昇開始点を判別する。ステップS302は、上昇開始点が判別されるまで、時間が経過する方向に繰り返される(ステップS302;NO)。
【0036】
上昇開始点が判別された場合(ステップS302;YES)、第1判別部62は、移動平均化された信号波形のそれぞれの一次微分波形から、移動平均化された信号波形のそれぞれにおけるピークトップを判別する(ステップS304)。第1判別部62は、上昇開始点に対応する時間から時間が経過する方向で、一次微分波形の値が正の値から負の値に変化する最初の時間を、ピークトップに対応する時間とすることにより、ピークトップを判別する。
【0037】
ステップS304は、ピークトップが判別されるまで、時間が経過する方向に繰り返される(ステップS304;NO)。なお、上昇開始点に対応する時間から所定の第1期間(例えば100ms)経過してもピークトップが判別されない場合、すなわち上昇開始点に対応する時間とピークトップに対応する時間が所定の第1期間の内にない場合、ステップS302において判別された上昇開始点を上昇開始点でないと再判別して、ステップS302に戻り、再度、時間の経過する方向で上昇開始点を判別してもよい。
【0038】
ピークトップが判別された場合(ステップS304;YES)、第1判別部62は、判別された上昇開始点の対応する時間と移動平均値と、判別されたピークトップの対応する時間と移動平均値とを記憶部52に記憶させ(ステップS306)、ピーク端点・ピークトップ判別処理(ステップS300)は終了する。
【0039】
図13図14を参照して、ピーク判別処理(ステップS400)を説明する。ピーク判別処理(ステップS400)では、上昇開始点からピークトップまでの時間幅ΔT1と、上昇開始点からピークトップまでの高さΔH1と、ピークの上昇側の傾きUcとに基づいて、移動平均化された信号波形における対象物のピークが判別される。まず、制御部50の第2判別部64が、ピーク端点・ピークトップ判別処理(ステップS300)において判別された上昇開始点とピークトップの時間幅ΔT1(ピークトップに対応する時間と上昇開始点に対応する時間との差)と、高さΔH1(ピークトップの移動平均値と上昇開始点の移動平均値との差)とを求める(ステップS402)。更に、第2判別部64は、ピークの上昇側の傾きUc(ΔH1/ΔT1)を求める(ステップS404)。
【0040】
次に、第2判別部64は、時間幅ΔT1と、高さΔH1と、ピークの上昇側の傾きUcとに基づいて、ピークが移動平均化された信号波形における対象物のピークか否か判別する(ステップS406)。具体的には、第2判別部64は、図14に示すように、時間幅ΔT1が所定の第1しきい値Cw以上、高さΔH1が所定の第2しきい値Ch以上、上昇側の傾きUcが第3しきい値Cd以上であるピークを、移動平均化された信号波形における対象物のピークと判別する。なお、時間幅ΔT1が所定の第1しきい値Cw未満、高さΔH1が所定の第2しきい値Ch未満、上昇側の傾きUcが第3しきい値Cd未満のピークは、ノイズ(ノイズのピーク)となる。
【0041】
対象物のピークと判別されない場合(ステップS406;NO)、検出処理はピーク端点・ピークトップ判別処理(ステップS300)のステップS302に戻る。対象物のピークと判別された場合(ステップS406;YES)、ピーク判別処理(ステップS400)は終了する。
【0042】
本実施形態では、時間幅ΔT1と高さΔH1と上昇側の傾きUcとに基づいて、対象物のピークを判別する。したがって、ピーク判別処理(ステップS400)は、高さΔH1のしきい値である第2しきい値Chが小さくとも、対象物のピークを判別できる。すなわち、検出処理は、信号強度が小さい対象物のピークを判別できる。また、ピーク判別処理(ステップS400)は、上昇開始点とピークトップから対象物のピークを判別するので、信号波形がピークトップに達した時点で対象物のピークを判別でき、非接触状態の対象物を短時間で検出できる。
【0043】
図15図16を参照して、非接触検出処理(ステップS500)を説明する。非接触検出処理(ステップS500)では、判別された対象物のピークのピークトップの時間順から、対象物の動き(ユーザーのジェスチャー)が判別される。まず、制御部50の検出部66は、検出電極26a~26eを、それぞれの移動平均化された信号波形におけるピークトップの時間順に並べる(ステップS502)。そして、検出部66は、検出電極26a~26eの移動平均化された信号波形におけるピークトップの時間順と対象物の動きとの関係を示すルックアップテーブルを参照して、対象物の動き(ユーザーのジェスチャー)を判別する(ステップS504)。図16は、ルックアップテーブルの一例を示す。例えば、ピークトップの時間順が、検出電極26e、検出電極26d、検出電極26c、検出電極26bの順である場合、検出部66は、ユーザーが+X方向から-X方向へのフリックジェスチャーを行ったと判別し、+X方向から-X方向へのフリックジェスチャーを検出する。ルックアップテーブルは、記憶部52に予め記憶されている。
【0044】
対象物の動きが検出された場合(ステップS504;YES)、検出部66は、入出力部51を介して、表示ユニット200(検出装置10)が搭載されている電子機器の制御部に、検出した対象物の動きを表す信号を出力する(ステップ506)。検出部66が対象物の動きを表す信号を出力すると、非接触検出処理(ステップS500)は終了する。対象物の動きが検出されない場合(ステップS506;NO)、検出処理はピーク端点・ピークトップ判別処理(ステップS300)のステップS302に戻る。
【0045】
以上のように、検出装置10は、時間幅ΔT1と高さΔH1と上昇側の傾きUcとに基づいて対象物のピークを判別するので、信号強度が小さい対象物のピークを判別できる。また、検出装置10は、上昇開始点とピークトップから対象物のピークを判別するので、非接触状態の対象物を短時間で検出できる。
【0046】
<実施形態2>
実施形態1では、検出装置10は、ピークの上昇開始点とピークのピークトップとを判別している。検出装置10は、ピークの上昇開始点とピークのピークトップとピークの下降終了点とを判別してもよい。以下では、ピークの下降終了点を「下降終了点」とも記載する。
【0047】
本実施形態の検出装置10は、実施形態1の検出装置10と同様に、センサ部20と制御部50とを備える。本実施形態のセンサ部20は実施形態1のセンサ部20と同様であるので、ここでは、本実施形態の制御部50と検出処理とを説明する。
【0048】
本実施形態の制御部50は、実施形態1の制御部50と同様に、入出力部51~検出部66を備える。本実施形態の入出力部51~算出部58と第2判別部64と検出部66は、実施形態1と同様であるので、本実施形態の第1判別部62を説明する。
【0049】
本実施形態の第1判別部62は、移動平均化された信号波形の一次微分波形と二次微分波形に基づいて、移動平均化された信号波形における上昇開始点とピークトップと下降終了点とを判別する。上昇開始点とピークトップの判別は、実施形態1同様である。本実施形態の第1判別部62は、図6図7図17に示すように、ピークトップに対応する時間から時間が経過する方向で、二次微分波形の値が負の値から正の値に変化し一次微分波形の値が負の値である時間を、下降終了点に対応する時間とすることにより、下降終了点を判別する。
【0050】
さらに、本実施形態の第1判別部62は、ピークトップに対応する時間から所定の第2期間(例えば30ms)経過しても下降終了点が判別されない場合(すなわち上昇開始ピークトップに対応する時間と下降終了点に対応する時間が所定の第2期間の内にない場合)、上昇開始点と判別された点とピークトップと判別された点を、上昇開始点とピークトップでないと再判別して、時間が経過する方向で上昇開始点を再度判別する。
【0051】
次に、本実施形態の検出処理を説明する。本実施形態の検出処理は、実施形態1の検出処理と同様に、駆動処理(ステップS100)~非接触検出処理(ステップS500)の順に行われる。本実施形態の駆動処理(ステップS100)とピーク判別処理(ステップS400)と非接触検出処理(ステップS500)は実施形態1と同様であるので、図18を参照して、本実施形態のピーク端点・ピークトップ判別処理(ステップS300)を説明する。
【0052】
まず、実施形態1のピーク端点・ピークトップ判別処理(ステップS300)と同様に、制御部50の第1判別部62は、上昇開始点を判別し(ステップS302)、ピークトップを判別する(ステップS304)。ピークトップが判別された場合(ステップS304;YES)、第1判別部62は、移動平均化された信号波形のそれぞれの一次微分波形と二次微分波形から、移動平均化された信号波形のそれぞれにおける下降終了点を判別する(ステップS306)。
【0053】
具体的には、第1判別部62は、ピークトップに対応する時間から時間が経過する方向で、二次微分波形の値が負の値から正の値に変化し一次微分波形の値が負の値である時間を、下降終了点に対応する時間とすることにより、下降終了点を判別する。ピークトップに対応する時間から所定の第2期間経過してもピークトップが判別されない場合(ステップS306;NO)、ステップS302において判別された上昇開始点とステップS304において判別されたピークトップは、それぞれ、上昇開始点とピークトップでないと再判別されて、ピーク端点・ピークトップ判別処理(ステップS300)はステップS302に戻る。
【0054】
ピークトップに対応する時間から所定の第2期間の内にピークトップが判別された場合(ステップS306;YES)、第1判別部62は、判別された上昇開始点の対応する時間と移動平均値と、判別されたピークトップの対応する時間と移動平均値とを記憶部52に記憶させ(ステップS306)、ピーク端点・ピークトップ判別処理(ステップS300)は終了する。
【0055】
本実施形態では、下降終了点がピークトップに対応する時間から所定の第2期間の内に存在するか否かにより、上昇開始点とピークトップ(すなわちピークの有無)が判別される。これにより、本実施形態の検出装置10は、対象物の動きに起因しない信号強度の増加をピークと判別することを抑制でき、誤検出を抑制できる。また、本実施形態の検出装置10は、実施形態1の検出装置10と同様に、信号強度が小さい対象物のピークを判別できる。
【0056】
<実施形態3>
実施形態1と実施形態2では、検出装置10は、検出電極26a~26eのそれぞれの信号波形から、対象物の動きを検出している。検出装置10は、複数の検出電極(例えば、検出電極26b~26e)の信号波形を平均した信号波形から、対象物の動きを検出してもよい。
【0057】
本実施形態では、検出装置10は、検出電極26a~26eのそれぞれの信号波形と検出電極26b~26eの信号波形を平均した信号波形から、対象物の動きを検出する。本実施形態の検出装置10は、実施形態1の検出装置10と同様に、センサ部20と制御部50とを備える。本実施形態のセンサ部20は実施形態1のセンサ部20と同様であるので、ここでは、本実施形態の制御部50と検出処理とを説明する。
【0058】
本実施形態の制御部50は、実施形態1の制御部50と同様に、入出力部51~検出部66を備える。本実施形態の入出力部51~受信部56は、実施形態1と同様であるので、本実施形態の算出部58~検出部66を説明する。
【0059】
本実施形態の算出部58は、実施形態1の算出部58と同様に、受信部56が受信した信号から、検出電極26a~26eの移動平均化された信号波形を求める。
【0060】
また、本実施形態の算出部58は、複数の検出電極から構成された仮想検出電極を設定し、仮想検出電極の移動平均化された信号波形を求める。本実施形態では、図19に示すように、検出電極26b~26eから仮想検出電極(26b-26e)が構成される。本実施形態の算出部58は、仮想検出電極(26b-26e)の信号波形として、検出電極26b~26eの信号波形を平均した平均信号波形(26b-26e)を求める。さらに、本実施形態の算出部58は、平均信号波形(26b-26e)に移動平均処理を施した、移動平均化された平均信号波形(26b-26e)を求める。
【0061】
さらに、本実施形態の算出部58は、検出電極26a~26eの移動平均化された信号波形と移動平均化された平均信号波形(26b-26e)の一次微分波形と二次微分波形を求める。
【0062】
本実施形態の第1判別部62は、検出電極26a~26eの移動平均化された信号波形と仮想検出電極(26b-26e)の移動平均化された平均信号波形(26b-26e)における、上昇開始点とークトップとを判別する。上昇開始点とピークトップの判別は、実施形態1と同様である。
【0063】
本実施形態の第2判別部64は、検出電極26a~26eの移動平均化された信号波形と仮想検出電極(26b-26e)の移動平均化された平均信号波形(26b-26e)における、対象物のピークを判別する。対象物のピークの判別は、実施形態1と同様である。
【0064】
本実施形態の検出部66は、検出電極26a~26eの移動平均化された信号波形における対象物のピークと、移動平均化された平均信号波形(26b-26e)における対象物のピークの、ピークトップの時間順から、対象物の動きを判別する。例えば、対象物のピークのピークトップが、時間が経過する方向で、検出電極26a、仮想検出電極(26b-26e)の順に現れた場合、検出部66は、ユーザーが+Y方向から-Y方向へのフリックジェスチャーを行ったと判別し、ユーザーの+Y方向から-Y方向へのフリックジェスチャーを検出する。
【0065】
検出電極26a~26eのピークトップの時間順のみから+Y方向から-Y方向へのフリックジェスチャーを判別する場合、図20に示すように、+Y方向から-Y方向へのフリックジェスチャーに対応するピークトップの時間順は多数あり、判別が複雑になる虞がある。また、図21に示すように、ピークトップの信号強度差と時間差が小さくなり、判別が困難になる虞もある。
【0066】
本実施形態では、ピークトップが検出電極26a、仮想検出電極(26b-26e)の順に現れた場合、ユーザーが+Y方向から-Y方向へのフリックジェスチャーを行ったと判別するので、本実施形態の検出装置10は、対象物の動きを簡易に判別できる。また、図22に示すように、判別対象である信号波形が少なくなり、本実施形態の検出装置10は、対象物の動きを容易に判別できる。
【0067】
本実施形態の検出部66は、検出した対象物の動きを表す信号を、検出装置10を搭載している電子機器の制御部に出力する。対象物の動きを表す信号は、例えば、-Y方向へのフリックジェスチャーに対してユーザーが設定した、キーイベント、メッセージ等を表す。なお、本実施形態の検出部66は、検出電極26aのピークトップと、仮想検出電極(26b-26e)のピークトップと、検出電極26b~26eのピークトップの時間順から、+Y方向から-Y方向へのフリックジェスチャーを検出してもよい。
【0068】
次に、本実施形態の検出処理を説明する。本実施形態の検出処理は、実施形態1の検出処理と同様に、駆動処理(ステップS100)~非接触検出処理(ステップS500)の順に行われる。本実施形態の駆動処理(ステップS100)は実施形態1と同様であるので、本実施形態の算出処理(ステップS200)~非接触検出処理(ステップS500)を説明する。
【0069】
本実施形態の算出処理(ステップS200)では、算出部58は、仮想検出電極(26b-26e)の信号波形として、検出電極26b~26eの信号波形を平均した平均信号波形(26b-26e)を求め、更に、移動平均化された平均信号波形(26b-26e)を求める。算出部58は、移動平均化された平均信号波形(26b-26e)の一次微分波形と二次微分波形を求める。本実施形態の算出処理(ステップS200)におけるその他の処理は、実施形態1の算出処理(ステップS200)と同様である。
【0070】
本実施形態のピーク端点・ピークトップ判別処理(ステップS300)では、第1判別部62は、求められた一次微分波形と二次微分波形に基づいて、検出電極26a~26eの移動平均化された信号波形と移動平均化された平均信号波形(26b-26e)における、上昇開始点とークトップとを判別する。本実施形態のピーク端点・ピークトップ判別処理(ステップS300)におけるその他の処理は、実施形態1のピーク端点・ピークトップ判別処理(ステップS300)と同様である。
【0071】
本実施形態のピーク判別処理(ステップS400)では、第2判別部64は、上昇開始点からピークトップまでの時間幅ΔT1と、上昇開始点からピークトップまでの高さΔH1と、ピークの上昇側の傾きUcとに基づいて、検出電極26a~26eの移動平均化された信号波形と移動平均化された平均信号波形(26b-26e)における、対象物のピークを判別する。本実施形態のピーク判別処理(ステップS400)におけるその他の処理は、実施形態1のピーク判別処理(ステップS400)と同様である。
【0072】
本実施形態の非接触検出処理(ステップS500)では、検出部66は、判別された対象物のピークのピークトップの時間順から、対象物の動き(ユーザーのジェスチャー)を判別する。検出部66は、実施形態1と同様に、ピークトップの時間順と対象物の動きとの関係を示すルックアップテーブルを参照して、対象物の動きを判別する。
【0073】
以上のように、本実施形態の検出装置10は、複数の検出電極(検出電極26b~26e)の信号波形を平均した信号波形から対象物の動きを判別するので、容易に対象物を検出できる。また、本実施形態の検出装置10は、実施形態1の検出装置10と同様に、信号強度が小さい対象物のピークを判別できる。
【0074】
<実施形態4>
実施形態1~実施形態3では、検出装置10は、ピークトップの時間順から対象物の動きを判別している。検出装置10は、ピークトップの時間間隔から対象物の動きを判別してもよい。
【0075】
本実施形態では、検出装置10は、ピークトップの時間順とピークトップの時間間隔から対象物の動きを判別する。本実施形態の検出装置10は、実施形態1の検出装置10と同様に、センサ部20と制御部50とを備える。本実施形態のセンサ部20は実施形態1のセンサ部20と同様であるので、ここでは、本実施形態の制御部50と検出処理とを説明する。
【0076】
本実施形態の制御部50は、実施形態3の制御部50と同様に、入出力部51~検出部66を備える。本実施形態の入出力部51~第2判別部64は、実施形態3と同様であるので、本実施形態の検出部66を説明する。
【0077】
本実施形態の検出部66は、検出電極26a~26eのピークトップと仮想検出電極(26b-26e)のピークトップとの時間間隔から、判別する対象物の動きの種類(判別するジェスチャーの種類)を分ける。例えば、検出電極26aの移動平均化された信号波形におけるピークトップと、仮想検出電極(26b-26e)移動平均化された平均信号波形(26b-26e)におけるピークトップとの時間間隔から、判別する対象物の動きの種類をフリックジェスチャーとサークルジェスチャーとに分ける。
【0078】
具体的には、検出電極26aのピークトップと仮想検出電極(26b-26e)のピークトップとの時間間隔T2が所定の第4しきい値th4以下である場合、検出部66は、判別する対象物の動きの種類をフリックジェスチャーとする。また、検出電極26aのピークトップと仮想検出電極(26b-26e)のピークトップとの時間間隔T2が所定の第4しきい値th4よりも大きく所定の第5しきい値th5よりも小さい場合、検出部66は、判別する対象物の動きの種類をサークルジェスチャーとする。フリックジェスチャーにおける動きの開始から終了までの時間は、サークルジェスチャーにおける動きの開始から終了までの時間よりも短いので、ピークトップの時間間隔により、判別する対象物の動きの種類をフリックジェスチャーとサークルジェスチャーとに分けることができる。
【0079】
本実施形態の検出部66は、さらに、分けられた、判別する対象物の動きの種類ごとに、検出電極26a~26eのピークトップと仮想検出電極(26b-26e)のピークトップの時間順から、対象物の動きを判別する。例えば、判別する対象物の動きの種類がサークルジェスチャーと判別され、ピークトップの時間順が、検出電極26aのピークトップ、仮想検出電極(26b-26e)のピークトップの順である場合、対象物の動きは図23に示すような時計回りのサークルジェスチャーと判別される。一方、判別する対象物の動きの種類がサークルジェスチャーと判別され、ピークトップの時間順が予め設定されている時間順でない場合、対象物の動きでないと判別される。また、判別する対象物の動きの種類がフリックジェスチャーと判別され、ピークトップの時間順が、検出電極26aのピークトップ、仮想検出電極(26b-26e)のピークトップの順である場合、対象物の動きは+Y方向から-Y方向へのフリックジェスチャーと判別される。
【0080】
本実施形態では、検出装置10は、ピークトップの時間順とピークトップの時間間隔から対象物の動きを判別するので、より多種類の対象物の動きをより容易に判別できる。
【0081】
次に、本実施形態の検出処理を説明する。本実施形態の検出処理は、実施形態1の検出処理と同様に、駆動処理(ステップS100)~非接触検出処理(ステップS500)の順に行われる。本実施形態の駆動処理(ステップS100)~ピーク判別処理(ステップS400)は実施形態3と同様であるので、図24を参照して、本実施形態の非接触検出処理(ステップS500)を説明する。
【0082】
本実施形態の非接触検出処理(ステップS500)では、まず、制御部50の検出部66は、検出電極26a~26eと仮想検出電極(26b-26e)を、ピークトップの時間順に並べる(ステップS512)。次に、検出部66は、検出電極26a~26eのピークトップと仮想検出電極(26b-26e)のピークトップの時間間隔から、判別する対象物の動きの種類(ユーザーのジェスチャーの種類)を分ける(ステップS514)。具体的には、検出電極26aのピークトップと仮想検出電極(26b-26e)のピークトップとの時間間隔T2が所定の第4しきい値th4以下である場合、検出部66は、判別する対象物の動きの種類をフリックジェスチャーとする(ステップS514;T2≦th4)。検出電極26aのピークトップと仮想検出電極(26b-26e)のピークトップとの時間間隔T2が第4しきい値th4よりも大きく所定の第5しきい値th5よりも小さい場合、検出部66は、判別する対象物の動きの種類をサークルジェスチャーとする(ステップS514;th4<T2<th5)。さらに、検出電極26aのピークトップと仮想検出電極(26b-26e)のピークトップとの時間間隔T2が所定の第5しきい値th5である場合、検出処理は、ピークトップ判別処理(ステップS300)のステップS302に戻る。
【0083】
判別する対象物の動きの種類がフリックジェスチャーである場合(ステップS514;T2≦th4)、検出部66は、フリックジェスチャーにおけるピークトップの時間順と対象物の動きとの関係を示すルックアップテーブルを参照して、対象物の動きを検出する(ステップS516)。対象物の動きが検出されない場合(ステップS514;NO)、検出処理はピーク端点・ピークトップ判別処理(ステップS300)のステップS302に戻る。
【0084】
一方、判別する対象物の動きの種類がサークルジェスチャーである場合(ステップS514;th4<T2<th5)、検出部66は、サークルジェスチャーにおけるピークトップの時間順と対象物の動きとの関係を示すルックアップテーブルを参照して、対象物の動きを検出する(ステップS518)。対象物の動きが検出されない場合(ステップS518;NO)、検出処理はピーク端点・ピークトップ判別処理(ステップS300)のステップS302に戻る。
【0085】
ステップS516又はステップS516において、対象物の動きが検出された場合(ステップS516;YES、ステップS518;YES)、検出部66は、表示ユニット200(検出装置10)が搭載されている電子機器の制御部に、検出した対象物の動きを表す信号を出力する(ステップ506)。検出部66が対象物の動きを表す信号を出力すると、非接触検出処理(ステップS500)は終了する。
【0086】
以上のように、本実施形態の検出装置10は、ピークトップの時間順とピークトップの時間間隔から対象物の動きを判別するので、より多種類の対象物の動きを、より容易に判別できる。また、本実施形態の検出装置10は、信号強度が小さい対象物のピークを判別できる。
【0087】
<変形例>
以上、実施形態を説明したが、本開示は、要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0088】
例えば、センサ部20の検出電極の数と配置は任意である。例えば、検出電極は、駆動電極24の+X側と-X側にも配置されて、駆動電極24を囲んでもよい。また、センサ部20は、複数の駆動電極24を備えてもよい。
【0089】
検出装置10は、上昇開始点からピークトップまでの時間幅ΔT1と上昇開始点からピークトップまでの高さΔH1とピークの上昇側の傾きUcに加えて、図25に示す、下降終了点からピークトップまでの時間幅ΔT3と下降終了点からピークトップまでの高さΔH2とピークの下降側の傾きDc(ΔH2/ΔT3)の少なくとも1つとに基づいて、対象物のピークを判別してもよい。
【0090】
実施形態では、検出装置10は、信号強度の時間変化を示す信号波形に移動平均処理を施している。検出装置10は、信号強度の時間変化を示す信号波形に移動平均処理を施さなくともよい。例えば、検出装置10は、受信部56が受信した信号波形の一次微分波形と二次微分波形に基づいて、上昇開始点とピークトップを判別してもよい。
【0091】
実施形態3では、検出電極26b~26eの信号波形を平均した信号波形(仮想検出電極(26b-26e)の平均信号波形(26b-26e))から、対象物の動きを検出している。仮想検出電極を構成する検出電極は、検出電極26b~26eに限られない。例えば、図26に示すように、仮想検出電極は、検出電極26aと検出電極26b(仮想検出電極(26a,26b))、検出電極26aと検出電極26e(仮想検出電極(26a,26e))から構成されてもよい。例えば、ピークトップが仮想検出電極(26a,26b)、検出電極26a、仮想検出電極(26a,26e)、仮想検出電極(26b-26e)の順に現れた場合、検出装置10は時計回りのサークルジェスチャーと判別できる。
【0092】
制御部50は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、制御回路等の専用ハードウェアを備えてもよい。この場合、処理のそれぞれを、個別のハードウェアにより実行してもよい。また、処理のそれぞれをまとめて、単一のハードウェアにより実行してもよい。処理の一部を専用ハードウェアにより実行し、処理の他の一部をソフトウェア又はファームウェアにより実行してもよい。
【0093】
以上、好ましい実施形態について説明したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。
【符号の説明】
【0094】
10 検出装置、20 センサ部、22 透光性基板、22a 第1主面、24 駆動電極、26a~26e 検出電極、50 制御部、51 入出力部、52 記憶部、54 駆動部、56 受信部、58 算出部、62 第1判別部、64 第2判別部、66 検出部、82 CPU、83 ROM、84 RAM、86 入出力インターフェース、88 特定機能の回路、100 表示装置、110 表示パネル、120 表示制御部、200 表示ユニット、202 保護カバー、L 厚さ、Cw 第1しきい値、Ch 第2しきい値、Cd 第3しきい値、Uc 上昇側の傾き、Dc 下降側の傾き、ΔH1 高さ、ΔT1 時間幅、T2 時間間隔、ΔT3 時間幅、th4 第4しきい値、th5 第5しきい値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26