(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067084
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
F24F 1/0007 20190101AFI20230509BHJP
【FI】
F24F1/0007 331
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178057
(22)【出願日】2021-10-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】321011653
【氏名又は名称】武井 敦史
(74)【代理人】
【識別番号】100215027
【弁理士】
【氏名又は名称】留場 恒光
(72)【発明者】
【氏名】武井 敦史
【テーマコード(参考)】
3L050
【Fターム(参考)】
3L050BB05
(57)【要約】
【課題】多孔質粒子に付着した水の蒸発を利用する冷却装置において、多孔質粒子の高い表面積を維持して高い冷却効果を得る。また、その冷却効果を効率的に伝達し、冷却材周辺以外の場所を冷却することを可能とする。
【解決手段】冷却装置1の給水ノズル32から冷却材22に水が供給されると、多孔質粒子222表面に水が吸着する。多孔質粒子222は高い表面積を有するため、水は効率的に蒸発する。水の蒸発による冷却効果は、熱伝導性の高い綿状金属224やダクト10を通じて伝達し、ダクト10内の空気を冷却する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を通過させるダクトと、
前記ダクトの周囲を覆う態様で配設される冷却部と、
を備え、
前記冷却部は、多孔質粒子と綿状金属とを含む冷却材と、前記冷却材を保持するための冷却材保持部とを備え、
前記綿状金属の少なくとも一部が前記ダクトに接していることを特徴とする、冷却装置。
【請求項2】
前記冷却材保持部が、通気性を有する網状部材を備えることを特徴とする、
請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
さらに、空気流入口と空気流出口とを備える筐体と、
前記筐体内に空気を流通させる気化促進用換気装置と、
を備え、
前記網状部材が内部に多孔質粒子を収容する網状容器であり、
前記網状容器は、前記筐体内部に配設され、
前記網状容器の内側に前記空気流入口または前記空気流出口の一方を備え、前記網状容器の外側に前記空気流入口または前記空気流出口の他方を備え、
前記網状容器は、前記空気流入口から流入する空気が、網状容器を貫通するように通過してから前記空気流出口に至るように配設されることを特徴とする、
請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記多孔質粒子がパーライトまたは珪藻土焼成粒であり、かつBET比表面積が3m2/g以上50m2/g以下であることを特徴とする、
請求項1から3のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記給水部が、側面に複数の散水孔を備える散水ホースを備え、
前記散水ホースは前記ダクトに沿って配設されることを特徴とする、
請求項1から4のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記ダクトが、内部に綿状金属を備えることを特徴とする、
請求項1から5のいずれか1項に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷却装置に関し、例えば気化熱を利用する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物内部、特に居住空間内を適切な温度に保つ方法は多く知られている。例えば、エアーコンディショナーなどの装置により冷却する方法である。ただし、こうした装置の設置には一定のコストがかかり、また継続的に少なからぬ電力を必要とする。さらに、こうした装置は二酸化炭素の排出につながるという問題点もあった。そして、大量の電力を必要とする空調装置は、作業小屋等の小規模な建物の冷却などには適さないという欠点があった。
【0003】
エアーコンディショナーなどの装置を用いる方法の代わりに、太陽光の照射による建物の過熱を防止し、屋内の温度上昇を防止する方法が考えられる。例えば、太陽光を反射する素材で被覆することにより、建物に熱を蓄積させない方法が挙げられる。また、過熱した屋根や壁面に水を噴霧することにより、気化熱を利用して建物を冷却する方法も挙げられる。このような方法は、電力を消費しないか、過大な電力を消費することが無いため、環境に優しく、好ましい一方で、冷却効果に限界があり室温の調整や冷却効果の維持に難点がある。
【0004】
空間を冷却する方法として例えば、冷風扇と呼ばれる簡易的な冷却装置がある。これは、水分を含んだフィルタ(不織布やスポンジなど)の隙間を、吸気ファンにより吸気された空気が通過し、放出する構成を備える装置である。フィルタの水が蒸発する際に気化熱を奪うことでフィルタが冷却される。その冷却されたフィルタを空気が通過し、放出されるため風の温度が低下するものである。
しかしながらこの装置は、気化した水分が屋内に放出されるため、室内の湿度が上昇するという欠点がある。室内の湿度が上昇することで体感的には蒸し暑くなる。
【0005】
冷却するための素材に特長のある冷却材なども開示されている。
特許文献1には、水が蒸発するときに奪う気化熱を利用し、建造物を冷却する冷却材や冷却方法について開示されている。特に、吸水性、浸潤長を増強した建造物冷却材について開示されている。
特許文献2には、パーライト等の保水性を有する軽量人工土壌材を用いた軽量保水性断熱屋根について開示されている。
【0006】
しかしながら、例えば板状冷却材の表面に散水する方法では、板状部材の表面積が小さく、大気との接触面積が小さいため、冷却効率が低下するという問題点があった。
即ち、表面積の大きい多孔質粒子に水を散布し、その蒸発を利用して冷却効果を得る冷却装置や冷却方法において、多孔質粒子の高い表面積を維持する方法が必要である。
【0007】
このような問題を解決する例として、例えば特許文献3には、通気性及び通水性を有した収容材内に保水用セラミックスを収容してなる保水材パッケージを建造物又は地表に配列してなる保水構造体について開示されている。
この場合、保水材パッケージと大気との接触面積が大きく、保水材パッケージ内の保水用セラミックスから水が効率よく蒸散するようになり、冷却効果が高いという効果があることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007-197914号公報
【特許文献2】特開2002-364130号公報
【特許文献3】特許第5233850号公報
【0009】
しかしながら、これらの冷却装置は、建物の外壁を冷却するなど、冷却材や冷却装置周辺を冷却する効果はあっても、冷却された空気を運搬し、屋内に取り込むなどの活用を図るものではなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする問題点は、多孔質粒子に付着した水の蒸発を利用する冷却装置や冷却方法において、多孔質粒子の高い表面積を維持しなければ高い冷却効果が得られない点である。また、通常冷却効果は冷却材や冷却装置周辺にとどまるため、その冷却効果を冷却材周辺以外の場所に伝達したい場合、その効率的な伝達が困難であることも、解決しようとする問題点である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ダクトと、冷却材および冷却材保持部を備える冷却部とを備え、前記冷却材は、高い表面積を備える多孔質粒子と、熱伝導率の高い綿状金属を備えることを最も主要な特徴とする。
【0012】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、以下の手段を採用している。
(1)請求項1の発明は、空気を通過させるダクトと、前記ダクトの周囲を覆う態様で配設される冷却部と、を備え、前記冷却部は、多孔質粒子と綿状金属とを含む冷却材と、前記冷却材を保持するための冷却材保持部とを備え、前記綿状金属の少なくとも一部が前記ダクトに接していることを特徴とする、冷却装置を提供する。
(2)請求項2の発明は、前記冷却材保持部が、通気性を有する網状部材を備えることを特徴とする、請求項1に記載の冷却装置を提供する。
この場合、網状部材の通気性が高いことから、多孔質粒子に付着した水の揮発が促進され、冷却効果が向上する。また、気化促進用換気装置44を用いる場合に、気化促進用換気装置44の配設場所の自由度が高まるほか、冷却材の上部に限らず、側面からも風を当てることができることから、冷却効果が向上する。
(3)請求項3の発明は、さらに、空気流入口と空気流出口とを備える筐体と、前記筐体内に空気を流通させる気化促進用換気装置と、を備え、前記網状部材が内部に多孔質粒子を収容する網状容器であり、前記網状容器は、前記筐体内部に配設され、前記網状容器の内側に前記空気流入口または前記空気流出口の一方を備え、前記網状容器の外側に前記空気流入口または前記空気流出口の他方を備え、前記網状容器は、前記空気流入口から流入する空気が、網状容器を貫通するように通過してから前記空気流出口に至るように配設されることを特徴とする、請求項2に記載の冷却装置を提供する。
この場合、ダクトが螺旋状に配設されることで流路が長くなるため、冷却効果が向上する。また、網製容器を用いることで、上記ダクトの流路を長くしつつ、多孔質粒子の間を空気が効率よく流通し、また空気が過度の湿気を吸収して冷却効果が低下することがないため、冷却効果が向上する。
(4)請求項4の発明は、前記多孔質粒子がパーライトまたは珪藻土焼成粒であり、かつBET比表面積が3m2/g以上50m2/g以下であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の冷却装置を提供する。
この場合、多孔質粒子の保水量と水分蒸発量がともに高いことから、多くの水分を包含でき、一度の水分供給で長時間の冷却効果を得ることができる。また、高い含水量により高い冷却効果を得ることができるため、装置全体として冷却効果の高い冷却装置を提供することができる。さらに、吸水量の高い多孔質粒子を用いることにより、装置の小型化が可能となる。
(5)請求項5の発明は、前記給水部が、側面に複数の散水孔を備える散水ホースを備え、前記散水ホースは前記ダクトに沿って配設されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の冷却装置を提供する。
この場合、装置上方から給水する場合と比較し、水が冷却材全体に万遍なく行き渡らせることができるため、冷却に寄与しない乾燥部分を少なくし、装置全体として冷却効率を向上させることができる。
(6)請求項6の発明は、前記ダクトが、内部に綿状金属を備えることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の冷却装置を提供する。
この場合、ダクト内部に熱伝導性の高い金属が配設されることにより、冷却効果がダクト中心軸側にも伝達するため、冷却効果が高くなるほか、ダクトに結露が生じることを軽減する効果がある。
【発明の効果】
【0013】
本発明の冷却装置は、冷却材保持部内に多孔質粒子が保持されることにより、多孔質粒子が粒子形状のまま、即ち、高い表面積を維持したまま保持される。そのため、多孔質粒子に付着した水が効率的に蒸発し、冷却装置は高い冷却効果を得ることができる。また、その冷却効果が、熱伝導性の高い綿状金属により効率的にダクトに伝播する。ダクト内の空気が冷却されることにより、得られた冷却効果を屋内等の他の場所に伝えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第一の実施形態に係る冷却装置1の断面図(正面から見た図)である。
【
図2】第一の実施形態に係る冷却装置1の断面図(上から見た図)である。
【
図3】第二の実施形態に係る冷却装置1の断面図(正面から見た図)である。
【
図4】第二の実施形態に係る冷却装置1の断面図(上から見た図)である。
【
図5】第三の実施形態に係る冷却装置1の断面図(正面から見た図)である。
【
図6】第四の実施形態に係る冷却装置1の断面図(正面から見た図)である。
【
図7】第五の実施形態に係る冷却装置1の断面図(正面から見た図)である。
【
図8】第五の実施形態に係る冷却装置1の断面図(上から見た図)である。
【
図9】第六の実施形態に係る冷却装置1の断面図(正面から見た図)である。
【
図10】第六の実施形態に係る冷却装置1の断面図(上から見た図)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を図面に省略する場合がある。また、以下に用いる図面は本実施形態を説明するために用いるものであり、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0016】
以下、装置の上下方向をZ軸方向とし、上側をZ軸正方向とする。また、Z軸方向に直交する2方向をそれぞれX軸方向及びY軸方向として説明する。上下方向に直交する方向、すなわちX-Y平面に水平な方向を水平方向と、X-Y平面を水平面と表記することがある。
【0017】
また、円筒形状を備えるものについては、その中心軸に沿う方向を軸方向と表記する。また、中心軸と垂直に交わる平面において、中心軸から離間する方向を径方向と、円筒外周に沿う方向を周方向や周囲と表記する場合がある。
【0018】
(実施形態の概要)
本実施形態の概要について、
図1を用いて説明する。
給水ノズル32から冷却材22に水が供給されると、多孔質粒子222表面に水が吸着する。多孔質粒子222は高い表面積を有するため、水は効率的に蒸発する。水の蒸発による冷却効果は、熱伝導性の高い綿状金属224を通じて伝達し、ダクト10内の空気を冷却する。
【0019】
(実施形態の詳細)
以下、本実施形態に係る冷却装置1について、詳細を説明する。
【0020】
(第一の実施形態)
<冷却装置1>
図1は第一の実施形態の冷却装置1を正面から見た場合(正面視)の断面図である。
図中の直線矢印は、ダクト10内における空気の流れを示す。
また
図2は、第一の実施形態の冷却装置1を上から見た場合(平面視)の断面図(横断面図)である。
【0021】
図1に示すように、第一の実施形態の冷却装置1は、ダクト10、冷却部20、および給水部30の給水ノズル32を備える。また、冷却部20は冷却材22と、冷却材22の多孔質粒子222や綿状金属224を保持するための冷却材保持部24を備える。本実施形態において、冷却材保持部24は断熱材で構成されている(冷却材保持部(断熱材)242)。以下各部位について説明する。
【0022】
<ダクト10>
図1および
図2に示すように、ダクト10は、内部に空気を流通させるための円筒形状の管である。本実施形態のダクト10は、断面形状が円形であり、胴体部分が蛇腹形状のアルミニウム管(アルミフレキ管)である。
図1の矢印に示すように、ダクト10には、冷却部20により冷却された空気が流通する。ダクト入口12から外気が取り込まれ、冷却された空気がダクト出口14から流出する。
なお便宜上、ダクト10内部の空間を、通気スペースSと表記する場合がある。また、本実施形態のダクト10の胴体部分は蛇腹形状を有するが、
図1、
図2において蛇腹形状の描画は省略している。
【0023】
ダクト10のダクト入口12側の端部は、例えば外気取込口(図示省略)に接続する。また、ダクト10のダクト出口14側の端部は、例えば建物の屋内に開口部(図示省略)に接続する。この場合、外から取り込まれ、冷却装置1により冷却された空気が屋内に取り込まれる。
【0024】
ダクト10は、ダクト10内外の温度交換を促す。温度交換により、ダクト10外側の冷却部20による冷却効果をダクト10内部(通気スペースS側)に伝達する。
よって、ダクト10は熱交換が起こりやすい高熱伝導性の金属素材で構成される。ダクト10に用いられる素材として、測定温度300K(ケルビン)における素材の熱伝導率が10W/(m・K)以上のものが好ましく、200W/(m・K)以上のものがより好ましい。
【0025】
このような素材として例えば、アルミニウム(225W/(m・K))、アルミニウム合金(220W/(m・K))、SUS304(16.0W/(m・K)、ステンレス鋼の一例)、りん脱酸銅(372W/(m・K))、タフピッチ銅(391W/(m・K))、銅(398W/(m・K))、鉄(80.3W/(m・K))が挙げられる。
この中では加工性が良く熱伝導率の高いアルミニウム、アルミニウム合金、銅、または銅合金が好ましく、特に水分に接触しても錆びにくいアルミニウムやアルミニウム合金がさらに好ましい。
【0026】
なお、熱伝導率は、厚さ1mの板の両端に1K(ケルビン)の温度差がある時、その板の1m2を通して1秒間に流れる熱量で定義されるものとする。測定方法として例えば、樹脂であれば定常法(JIS規格A1412の保護熱板法や熱流計法)、金属であれば非定常法(レーザーフラッシュ法)などが用いられる。
【0027】
上述したように、ダクト10は蛇腹形状を有する管であり、折り曲げが可能である。また表面に凹凸形状を有するため、ダクト10の表面積が大きくなり、冷却部20とダクト10内部との熱交換を促す。即ち、ダクト10が蛇腹形状を備えることにより、冷却装置1の冷却効率を向上することが出来る。
【0028】
なお、
図1に示すように、本実施形態において、ダクト入口12が下側、ダクト出口14が上側に配置されているが、これに限られるものではなく、ダクト入口12が上側、ダクト出口14が下側にあっても良い。
また、ダクトの断面形状は円形に限られるものではなく、長方形等であっても良い。
【0029】
ダクト10内は冷却されるため、結露が生じる場合がある。したがって、ダクト10はこのような水分を排出するためのドレインホースを備えていても良い。
【0030】
<冷却部20>
冷却部20は、水が蒸発する際に吸熱する現象(気化熱)を利用して周りの空気を冷却する部位である。
図1に示すように、冷却部20は、冷却材22と、冷却材22を保持するための冷却材保持部24を備える。
【0031】
冷却部20はダクト10の周囲を覆う態様で配設される。周囲を覆う態様とは、常にダクト10の周囲360度を覆う態様に限るものではないが、冷却効率を考えるとダクト10の周囲の少なくとも180度以上覆うものが好ましく、360度(全周囲)を覆うものが最も好ましい。また、冷却部20はダクト10に密着するほうが、冷却効率向上のため好ましい。
【0032】
冷却材22は、多孔質粒子222と綿状金属224を含む。冷却材22は、気化熱を利用して周りの空気を冷却し、またその冷却効果をダクト10内側に伝達する部材である。
本実施形態において、冷却材保持部24内に冷却材22が充填される。具体的には、冷却材保持部24内に綿状金属224が充填され、そこにさらに粒子状の多孔質粒子222が充填される。
図1、
図2に示すように、本実施形態において、冷却材22は前記ダクト10の周囲を覆う態様で配設される。これにより、冷却効果をダクト10に効率的に伝達することができる。
【0033】
<多孔質粒子222>
多孔質粒子222とは、表面に存在する無数の孔に水等の小分子を吸着する粒子である。多孔質粒子222として例えばパーライトや珪藻土焼成粒などを挙げることができる。
図1や
図2に示すように、多孔質粒子222は綿状金属224とともに、冷却材22としてダクト10と冷却材保持部24の間に保持される。
【0034】
多孔質粒子222が表面に備える孔(細孔)の直径は数百nmから数十μmである。
また粒子とは、JIS規格が定義する粗砂区分または礫区分である粒径0.25mm以上の粒子を、重量比で80%以上含むものを指す。
【0035】
なお、多孔質粒子222として、パーライトや珪藻土焼成粒のほか、粒子状珪藻土、軽石、ゼオライト、クリンカーアッシュ、木炭、抗火石、粉砕された陶器片等を用いることもできる。保存性や耐久性、孔の径等を考慮すると、無機物を焼成したもの(セラミックス)が好ましい。
この中で、保水性能や放水性能を鑑みると、パーライトや珪藻土焼成粒がより好ましく、より軽量で取り扱いが容易なパーライトが最も好ましい。
【0036】
パーライトとは、火成岩の一種である黒曜石・真珠岩・松脂岩を粉砕し、急速に加熱することで、内包する水分をガス化させ発泡させることで人工的に生成される物質である。パーライトは一般的に、園芸培養土、土壌改良材、濾過材、保冷材として用いられる、市場で入手可能な材料である。
【0037】
また、珪藻土焼成粒とは、珪藻土を高温で焼成したセラミックス多孔体である。
パーライトと珪藻土焼成粒は共に、SiO2(二酸化ケイ素)、Al2O3(酸化アルミニウム)を多く含有する。
【0038】
パーライトのBET比表面積はおおよそ23m2/gである。また、珪藻土のBET比表面積は焼成温度により3m2/g以上32m2/g以下と幅がある。
【0039】
本実施形態で用いる多孔質粒子は、空気との接触面に水分を持続的に供給する観点から、一定の水分を粒子内や粒子間に保持する必要がある。また同時に、水分の気化を促す観点から、空気の流動性を確保しつつ、濡れた状態における空気との接触面積を高める必要がある。
これらの条件を鼎立させるため、多孔質粒子222の粒度分布、BET比表面積、全孔隙率、吸水率はそれぞれ好ましい範囲が存在する。以下説明する。
【0040】
多孔質粒子222の粒度分布は、1mm以上10mm未満の粒子が体積の50%以上であることが好ましい。
10mm以上の粒子が体積の50%以上となる粒度分布の場合、水の浸透速度が速くなりすぎてしまい、多孔質粒子222に保持される前に下に落ちてしまうため、好ましくない。
【0041】
一方、1mm未満の粒子が体積の50%以上となる粒度分布の場合、逆に水の浸透速度が遅くなり、例えば下の方にある多孔質粒子222に給水されにくくなるため、好ましくない。
また、粒子が細かすぎると、粒子内に空気を通したときの空気抵抗が大きくなり吸引による通気が困難になる。空気の流量が低下すると、空気が湿気を帯びやすくなって冷却効果が低下する。
【0042】
多孔質粒子222のBET比表面積は、3m2/g以上400m2/g以下であることが好ましく、3m2/g以上50m2/g以下であることがより好ましい。
多孔質粒子222のBET比表面積が3m2/g未満であると、保水量、水分蒸発量が共に少なく、所望の冷却効果が得られないため好ましくない。
それに対し、多孔質粒子222のBET比表面積が3m2/g以上の場合は、高い比表面積により保水量が高くなり、多孔質粒子222は水分を長く供給できる。また同時に、揮発面積が大きいことから、多孔質粒子222から水分が効率的に蒸発する。
【0043】
しかしながら、多孔質粒子222のBET比表面積が400m2/gを超えると、冷却効果が低減する。理由は定かではないが、水分が多孔質粒子の孔に捕捉され、水分を放出しにくくなるためと考えられる。このような例として、シリカゲル(BET比表面積は700m2/g)が挙げられる。
【0044】
多孔質粒子222の全孔隙率は60%以上であることが好ましい。気孔を多く備えることにより、多孔質粒子222の保水性や水の蒸発性が高くなる。逆に、多孔質粒子222の全孔隙率は60%未満であると、吸水量が少なくなって水分の蒸発量が少なくなるため、冷却効率が低下する。
なお、多孔質粒子222の全孔隙率の上限は特に無いが、物理的な強度を考慮すると、全孔隙率は80%以下であることが好ましい。
【0045】
多孔質粒子222の吸水率50%以上であることが好ましい。多孔質粒子222の吸水率50%未満であると、保水量が少なくなり、冷却装置1の冷却効果が低下するためである。
【0046】
なおここで、上述したパラメータの測定方法について説明する。ただし以降において、商品名が記載されているものについては、その商品の製造販売者によるカタログ値を記載している場合がある。
【0047】
粒子径分布は、レーザ回折散乱法(JIS規格R1629)や遠心沈降光透過法、X線透過法、遮光法などで測定することができる。
BET比表面積は、容量法装置または流動法装置を用いた気体吸着BET法(JIS規格R1626)により測定することができる。
全孔隙率(気孔率、ポロシティ)は、水銀ポロシメータを用いる水銀圧入法により測定することができる(JIS規格R1655)。その他、水中重量法(アルキメデス法)(JIS規格R1634、JIS規格R2205)などにより測定することができる。
吸水率は、乾燥減量法(JIS規格R1639)や、水中重量法(アルキメデス法)(JIS規格R1634、JIS規格R2205)などにより測定することができる。
【0048】
<綿状金属224>
綿状金属224は、紐状の金属を折り曲げ、絡み合わせたものである。本実施形態において綿状金属224は、紐状の金属を絡み合わせて塊状にしたものである。
この塊状の綿状金属224は三次元立体構造を有し、空隙を多く含むため、この空隙に上述した多孔質粒子222を充填することができる。即ち上述したように、冷却材22は、綿状金属224の空隙に多孔質粒子222が充填されたものである。
図1や
図2に示すように、この冷却材22はダクト10と冷却材保持部24の間に保持される。
【0049】
綿状金属224は、多孔質粒子222に付着した水の蒸発による冷却効果を伝達する役割を有する。よって、綿状金属224は熱伝導性が高いことが好ましい。
具体的には、綿状金属224は測定温度300K(ケルビン)における素材の熱伝導率が10W/(m・K)以上の金属を用いたものであることが好ましく、75W/(m・K)以上の金属を用いたものがより好ましく、300W/(m・K)以上の金属を用いたものが最も好ましい。
【0050】
本実施形態において、綿状金属224はステンレスたわし(株式会社大創産業製、製品名ステンレスたわし50g2個入り)である。1個につき重さ50g、直径約8cmの球体状たわしを、それぞれ約2000cm3に広げて2個使用している(体積計4000cm3)。
この広げた状態におけるステンレスたわしの密度は、0.025g/cm3である。また、ステンレスたわしの熱伝導率は12W/(m・K)である。
【0051】
なお、本実施形態のステンレスたわしに代えて、銅製たわしを用いてもよい。銅製のたわしは熱伝導率が高い点で好ましい。このような銅製たわしとして例えば、アドプラス社(ココマート)製、製品名「純銅製たわし6個入りTWS-6」が挙げられる。
ただし、銅製たわしの場合、弾性に乏しく、広げようとすると切れてしまうなどの問題もあるため、取り扱いやすさの点ではステンレスたわしが有用である。
【0052】
柔軟性の高い綿状金属224は、冷却材保持部24内部への充填が容易である。また、綿状金属224の柔軟性が高いことにより、多くの綿状金属224がダクト10外側に接触し、接触面積が大きくなるため、熱をより伝達しやすいという利点がある。
【0053】
冷却効果をダクト10に効率的に伝達するため、綿状金属224の少なくとも一部はダクト10に接している。ここで、綿状金属224の少なくとも一部はダクト10に直接接していることが好ましいが、熱伝導率の高い金属素材を介してダクト10に接触しても良い。この場合における熱伝導率の高い金属素材とは、具体的には測定温度300K(ケルビン)における素材の熱伝導率が10W/(m・K)以上、好ましくは75W/(m・K)以上の金属素材である。
なお、綿状金属224がダクト10内部に配設される場合であっても(後述)、綿状金属224の少なくとも一部はダクト10に接するよう配設される。
【0054】
本実施形態において、綿状金属224はひとかたまりの金属たわしを用いているが、これに限られるものではない。例えば、上述した金属たわしよりも小さい直径のたわしを複数用いても良いし、もっと細かい金属繊維を充填するものであっても良い。
例えば、冷却材22は、多孔質粒子222と金属繊維とを混合して充填する態様であっても良い。
ただし、冷却材保持部24やダクト10への充填しやすさを考えると、綿状金属224は、金属片が分離し、散らばらないひとかたまりの単位であることが好ましい。綿状金属224がひとかたまりの三次元網目状金属である場合、多孔質粒子222が保持しやすいというメリットがある。
【0055】
<冷却材保持部24>
冷却材保持部24は、多孔質粒子222をダクト10周囲に保持するための部材である。冷却材保持部24は、本実施形態の容器状物のように定型を有するものであっても良いし、後述する第二の実施形態の袋状物のように定型を有しないものであっても良い。
本実施形態において、冷却材保持部24は断熱材で構成される。断熱材で構成される冷却材保持部24を冷却材保持部(断熱材)242と表記する。
【0056】
冷却材保持部(断熱材)242は断熱性を有し、冷却材22による冷却効果が外部に漏出しにくくなるため、効率的にダクト10内部(通気スペースS)を冷却することができる。
【0057】
冷却材保持部(断熱材)242は、断熱材としての効果の他、内側にあるダクト10や冷却材22を保護する役割も有する。本実施形態において、冷却材保持部(断熱材)242は塩化ビニル管である。冷却材持部(断熱材)242はこれに限られるものではなく、塩化ビニルやシリコーンゴムなどの樹脂のほか、例えばSUS材の様に相対的に熱伝導率の低い金属であっても良い。
なお冷却材保持部(断熱材)242は、任意の素材を断熱材で被覆させるものであっても良い。例えばSUS管を、綿や発泡スチロールといった断熱材で覆うことなどが挙げられる。
【0058】
冷却材保持部(断熱材)242として樹脂を用いる場合、熱伝導率が低い素材が好適に用いられる。そのような素材として例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニルが挙げられる。また、発泡スチロールのように、発泡性の素材などを用いても良い。
【0059】
より具体的には、測定温度300K(ケルビン)における素材の熱伝導率が1.0W/(m・K)以下のものが好ましい。このような素材を例示すると、ポリエチレン(0.34W/(m・K))、ポリプロピレン(0.20W/(m・K))、塩化ビニル樹脂(0.16W/(m・K))、シリコーンゴム(0.20W/(m・K))などが挙げられる。この中では、耐腐食性が高く、施工性が良い塩化ビニル樹脂が好適に用いられる。
【0060】
なお
図1に示すように、本実施形態の冷却装置1は、ダクト10の下側において、ダクト10と冷却材保持部(断熱材)242が接しており、多孔質粒子222が落下するのを防ぐ。しかし、多孔質粒子222の落下を防止する方法はこれに限られるものではない。任意の素材による蓋や、多孔質粒子222よりも目の細かい素材、例えば布や網などで下側の空隙を塞いでも良い。
【0061】
また、ダクト10をU字形状に形成してもよい。この場合、ダクト入口12とダクト出口14がどちらも上側を向くため、多孔質粒子222の落下を防止することができる。
【0062】
なお、ダクト10は上述した形状のほか、任意の形状を取ることができる。ただし、ダクト10は、結露水の排出の観点から、上側(ダクト出口14側)から下側(ダクト入口12側)にかけて連続して下降することが好ましい。
またダクト10が、例えばU字形状やS字形状など、上下方向に蛇行して配設される場合には、結露水排出のためのドレインホースの設置が必要である。
【0063】
<給水部30>
給水部30は、冷却部20の多孔質粒子222に水分を供給する部位である。給水部30は、例えば漏斗のように水を自然落下させるものであってもよいし、給水量を電気的に制御する装置を備えるものであっても良い。
【0064】
図1において、給水部30の全体が示されているわけではなく、水を放出する部分である給水ノズル32が模式的に描画されている。本実施形態において、給水ノズル32は水を滴下するものであるが、スプレーのように噴霧するものであっても良い。
【0065】
当該給水ノズル32には水を供給するための水供給管が接続しても良い。また当該水供給管には、水を送出するポンプや、水を保管するする水タンクが接続していても良い。さらに、給水部30には、水に含まれる不純物を除去するためのフィルタが備え付けられていても良い。
【0066】
<換気装置40>
換気装置40は強制的に空気を流通させるための装置である。換気装置40は例えば、電力により換気ファンを回転させ、換気を行う送風機である。
本実施形態において、冷却装置1はダクト10内(通気スペースS内)空気を強制的に入れ換えるためのダクト用換気装置42を備える(不図示)。
ダクト用換気装置42は、ダクト10のダクト出口14側に配設され、またその換気ファンが回転することにより、ダクト出口14側から強制的に空気の流通を促す(吸気型)。ダクト用換気装置42により、冷却装置1で冷却された通気スペースS内の空気が、ダクト出口14側に流出する。
【0067】
以上の構成により、本実施形態の冷却装置1では、給水部30の給水ノズル32から冷却材22に水が供給されると、多孔質粒子222表面に水が吸着する。多孔質粒子222は何らかの部材の表面に塗布されたり、他の素材、例えばバインダーなどと混合されて成形されたりするものではなく、粒子形状のまま使用されるため、高い表面積を保持している。多孔質粒子222は高い表面積を有するため、水は効率的に蒸発する。
【0068】
水の蒸発により冷却された空気は、熱伝導性の高い綿状金属224やダクト10を通じて伝達し、ダクト10内(通気スペースS内)の空気を冷却する。また、ダクト10の長さを調整することで、冷却材22に接触させる距離・時間を調整することができるため、ダクト10内の温度を微調整することができる。
ダクト10内の冷却された空気は換気装置40により運搬される。また、ダクト10の長さが任意であるため、所望の場所に冷却された空気を運搬することができる。
【0069】
まとめると、本実施形態の冷却装置1は、冷却材や冷却装置周辺を冷却するにとどまらず、綿状金属224を備えることにより効果的に冷却効果をダクト10内に伝達する。またダクト10により、冷却された空気を屋内等に取り込むことができる。
本実施形態の冷却装置1では、蒸発した水分そのものはダクト10内に侵入しないため、ダクト10内の水蒸気量を増加させないという利点を有する。
【0070】
(第二の実施形態)
図3は第二の実施形態の冷却装置1を正面から見た場合(正面視)の断面図である。
図中の直線矢印は、ダクト10内における空気の流れを示す。また、図中の白抜き矢印は、気化促進用換気装置44による空気の流れを示す。
図4は第二の実施形態の冷却装置1を上から見た場合(平面視)の断面図(横断面図)である。
【0071】
図3に示すように、第二の実施形態の冷却装置1が、ダクト10、冷却部20、および給水部30の給水ノズル32を備える点は第一の実施形態と同様である。説明済みの項目については説明を省略する。
第二の実施形態では、冷却材保持部24が通気性のある網袋で構成されている点や、気化促進用換気装置44を備える点で第一の実施形態と異なる。
【0072】
<冷却材保持部(網材)244>
第二の実施形態における冷却材保持部24は、通気性を有する一方で、多孔質粒子222や綿状金属224を保持することができる網袋である。網袋などの網材で構成される冷却材保持部24を、冷却材保持部(網材)244と表記する。
【0073】
本実施形態において、冷却材22の綿状金属224は、その一部が冷却材保持部(網材)244の網の目を突き抜けてダクト10に接触している。熱伝導率の高い綿状金属224をダクト10に直接接触させることにより、冷却効果をダクト10内に効率的に伝達するためである。
【0074】
なお
図3において、冷却材保持部(網材)244をダクト10の周囲に巻き付け、固定するための固定具の記載は省略している。固定方法としては紐や鎖で固定する方法のほか、接着剤で固定する方法が挙げられる。
【0075】
本実施形態において、冷却材保持部(網材)244はポリエチレン樹脂製であるが、材質はこれに限られるものではない。冷却材保持部(網材)244の材質としては、例えばポリエチレン以外の樹脂のほか、炭素繊維、金属、セラミックなどが挙げられる。また、これらの繊維を複数組み合わせて用いても良い。
この中で、加工性の高さを考慮すると、冷却材保持部(網材)244はポリエチレン樹脂で構成されていることがより好ましい。また、冷却材保持部(網材)244が金属素材であれば、金属素材の熱伝導率の高さにより、冷却材22の冷却効果を効率的に伝達する。
【0076】
冷却材保持部(網材)244の網の目の大きさ(目開き)は、収容した多孔質粒子222が脱落しない大きさである。また、通気性を確保し、水分の揮発を促進するため、冷却材保持部(網材)244の網の目の大きさは多孔質粒子222が脱落しない範囲でなるべく大きいことが望ましい。
【0077】
<気化促進用換気装置44>
図3に示すように、本実施形態の冷却装置1は、上述したダクト用換気装置42(不図示)とは別に、気化促進用換気装置44を備える。気化促進用換気装置44は、冷却部22周辺に送風することにより、多孔質粒子222に付着した水の気化を促進して冷却効果を高める。
このような気化促進用換気装置44として例えば、Hon&Guan(登録商標・深セン市鴻冠電機有限公司)社製ダクトファンHF-100PMZCが挙げられる。
【0078】
なお、
図3では、給水ノズル32は冷却部20の上側に配設されているが、これに限られない。即ち、本実施形態における冷却材保持部24は網でできているため、この網の隙間から水を補給することができる。例えば、給水ノズル32は冷却部20の斜め上方や、側面に配設されていても良い。
以上のように、冷却材保持部24として冷却材保持部(網材)244を用いることにより、通気性が良くなるほか、水を任意の場所から供給できるという利点がある。
【0079】
以上の構成により、第二の実施形態に係る冷却装置1において、冷却材保持部(網材)244は通気性を有する。このため、気化促進用換気装置44による強制換気により水の揮発が促進され、冷却装置1は高い冷却効果を得ることができる。
【0080】
なお、冷却材保持部24を冷却材保持部(網材)244にすることにより、自然風によっても水の揮発が促進されるため、気化促進用換気装置44は必須ではない。しかし、気化促進用換気装置44を備える場合、冷却装置1の冷却効果が高くなるためより好ましい。
【0081】
(第三の実施形態)
図5は第三の実施形態の冷却装置1を正面から見た場合(正面視)の断面図である。
図中の直線矢印は、ダクト10内における空気の流れを示す。また、図中の白抜き矢印は、気化促進用換気装置44による空気の流れを示す。
【0082】
図5に示すように、第三の実施形態における冷却装置1は、ダクト10、冷却部20、給水部30の給水ノズル32、換気装置40、および筐体50を備える。説明済みの項目については説明を省略する。
【0083】
<筐体50>
筐体50は、ダクト10の一部や冷却部20を内包する箱である。筐体50は、空気流入口52と、空気流出口54を備える。気化促進用換気装置44による換気効率を維持するため、筐体50は空気流入口52や空気流出口54以外において気密性を有する。
本実施形態において、筐体50は直径1m、高さ1.2mの円筒形状である。また、筐体50は断熱性能を有する。
【0084】
図5に示すように、本実施形態において、空気流出口54側に通気管が配設され、その中に気化促進用換気装置44が配設される。気化促進用換気装置44は筐体50内に空気を流通させる。即ち、気化促進用換気装置44により筐体50内部が減圧されるため、空気流入口52側から筐体50内に空気が流入する。
【0085】
なお、本実施形態において気化促進用換気装置44は空気流出口54側の通気管内に配設されているが(吸気型)、これに限られるものではなく、空気流入口52側の通気管に配設されても良いし(送気型)、筐体内に配設されるものであっても良い。
例えば送気型のものは、空気流入口52側からの送気による正圧を用いて水の気化を促進する。
また、気化促進用換気装置44の数は一つでも複数でも良く、また、より多数の吸気口を有し多方向に吸気する形状にしても良い。
【0086】
<網状容器246>
図5に示すように第三の実施形態では、冷却材保持部24として、網製容器246を備える。網製容器246は、内部に多孔質粒子222や綿状金属224を収容可能な、網製の容器である。網製容器246は二重の円錐構造を有している。
便宜上、容器外側の円錐部分を容器外側網体246A、容器内側の円錐部分を容器内側網体246Bと称する。
網製容器246は筐体50内部に配設される。網製容器246は網でできていることから、収容した多孔質粒子222が脱落しないよう保持する一方で、通気性を確保し、水分の蒸発を促進する。
【0087】
網製容器246の網部分(容器外側網体246Aおよび容器内側網体246B)の材質や網の目の大きさの好ましい態様については、上述の冷却材保持部(網材)244の箇所で説明した通りである。網製容器246は自立できる強度を備えるが、必要に応じて支柱や補強材を備えていても良い。例えば本実施形態において、網製容器246は、容器内側網体246Bが形成する円錐の頂点部分を支える支柱を備えていても良い。
【0088】
図5に示すように、網製容器246の内部には、ダクト10が螺旋を描くように(いわばとぐろを巻くように)配設される。そして、網製容器246のダクト10以外の部分の空隙を埋めるように冷却材22が充填される。冷却材22が多孔質粒子222と綿状金属224を含む点は上述の実施形態と同様である。
なお、ダクト10は、結露水の排出の観点から、上側(ダクト出口14側)から下側(ダクト入口12側)にかけて連続して下降することが好ましい。
【0089】
ダクト10がといわばとぐろを巻くように配設されるため、本実施形態の冷却装置1は少ないスペースにおいてダクト長を稼ぐことができ、ダクト入口12から流入した空気がダクト出口14に至るまでの間に十分に冷却されるという利点がある。
【0090】
図5に示すように、本実施形態において、空気流入口52は網製容器246の内側(下側)に配設され、空気流出口54は網製容器246の外側(上側)に配設される。これは、空気流入口52から流入した空気が、網製容器246内部に収容された多孔質粒子222の間を通過したうえで空気流出口54に至るようにしたものである。
【0091】
即ち、気化促進用換気装置44により強制排気される空気は、網製容器246による多孔質粒子222の層を貫通するように通過する。気化促進用換気装置44による風を多孔質粒子222表面のみに吹き付ける第二の実施形態の場合と比べ、多孔質粒子222に付着した水の揮発がより促進されるため、本実施形態の冷却装置1は冷却効果が高い。
【0092】
なお、網製容器246の形状は円錐形状に限られるものではなく、円柱型、釣鐘型、正面視が台形のコップ型、四角錐などの多角錐型、または半球型などのドーム型などであっても良い。網状容器246は容器形状を有しており、容器内側と外側を分画することが特徴である。本実施形態では、空気が多孔質粒子222の層を貫通するように通過するために、網製容器246における内側か外側のいずれか一方に空気流入口52があり、他方に空気流出口54があることが重要である。
【0093】
以上の構成により、気化促進用換気装置44により強制排気される空気は必ず網製容器246を通過するため、ほぼすべての多孔質粒子222が通気されることになる。このことにより、多孔質粒子222表面に付着した水がより効率的に蒸発するため、本実施形態に係る冷却装置1の冷却効果を高めることができる。
【0094】
また、網製容器246の円錐形状は、ダクト10の距離を長く取るのに適切である。即ち、ダクト10が螺旋を描くように網製容器246内に配設されることで、省スペースながらダクト10をより長く確保することができ、長時間にわたって冷却材22に触れさせておくことができるため、冷却効果が向上する。
【0095】
さらに、網製容器246が円錐形状を有するため、円錐の内側と外側にそれぞれ空気流入口52と空気流出口54を備えることが可能である。また円錐形状の網製容器246は、例えば網製容器が二重の円柱形状である場合と比較すると、ほぼすべての多孔質粒子222が通気される形状であるため、通気効率が高い。
【0096】
なお、本実施形態に係る冷却装置1は、空気が網製容器246による多孔質粒子222の層を貫通するように通過する構成により、空気が冷却体内を移動する距離が短くなる。このことにより、筐体50内部の湿度の上昇を抑えることができ、筐体50内部の温度上昇を抑制することができる。筐体50内部の温度上昇の抑制は、冷却装置1の冷却効果向上に寄与することができる。
【0097】
(第四の実施形態)
図6は、第四の実施形態の冷却装置1を正面から見た場合(正面視)の断面図である。
【0098】
<平面網248>
第三の実施形態が網製容器246を用いていたのに対し、本実施形態では網製容器246の代わりにポリエチレン樹脂製の平面網248を用いている。つまり、第三の実施形態の網製容器246が略円錐形という三次元形状を有しているのに対し、本実施形態の平面網248は円という二次元形状である。
図6に示すように、本実施形態では、平面網248の上側に冷却材22が積層される。また、当該冷却材22内にダクト10が埋設されている。
図6に示すように、ダクト10は紙面手前側から奥側に貫くように配設される。
【0099】
第四の実施形態の平面網248の面積と、第三の実施形態の網製容器246の円錐部分の底部(円)の面積がほぼ同じ場合、第三の実施形態の冷却装置1の方が本実施形態の冷却装置1よりも冷却効果が高い。これは、立体形状を有する網製容器246では、より多くの多孔質粒子222に空気が触れるためである。
【0100】
(第五の実施形態)
図7は第五の実施形態の冷却装置1を正面から見た場合(正面視)の断面図である。
図中の直線矢印は、ダクト10内における空気の流れを示す。
図8は第四の実施形態の冷却装置1を上から見た場合(平面視)の断面図(横断面図)である。
図7および
図8において、白抜き矢印は水の流れを示す。
【0101】
<散水ホース34>
図7および
図8に示すように、第四の実施形態の冷却装置1は、給水部30として散水ホース34を備える。本実施形態では、
図7に示すように、散水ホース34内部を下から上に向かって水が流通する。散水ホース34以外の部分は、第一の実施形態と同様であるため説明を省略する。
散水ホース34は、ゴム製ホースの側面に、複数の孔(以下「散水孔」とする。)があけられたホースである。散水ホース34に水が供給されると、散水孔から水が漏出し、多孔質粒子222に水を供給する。
【0102】
本実施形態において、散水ホース34はダクト10に沿って配設される。
「ダクト10に沿って配設される」とは、散水ホース34内とダクト10内の延びる方向が同じであることを意味する(
図7上下方向)。
図7のように、散水ホース34はダクト10と並んで配設される態様であっても良いし、散水ホース34がダクト10に螺旋状に巻き付くような態様で配設されても良い。
【0103】
装置上部から水を供給する態様の場合、上部にある多孔質粒子222には水が供給されやすくなる一方で、下部にある多孔質粒子222には水が供給されにくくなるため、多孔質粒子の濡れ方にムラが生じる。
そこで、装置上部から水を供給する代わりに散水ホース34を用いることにより、多孔質粒子222全体に万遍なく水を供給することができる。
【0104】
特に、ダクト10が長くなる場合、場所によっては水が供給されない多孔質粒子222の割合が高くなる可能性があるが、本実施形態の散水ホース34を用いることにより、ダクト10の長さを気にせずに冷却装置1を構成することができるという利点がある。
【0105】
なお、散水ホース34で流通する水そのものが低温である場合、その冷却効果がダクト内に伝え、さらなる冷却効果を得ることができる。ただし、こちらは水冷方式の冷却装置と同じであるため、詳細は割愛する。
【0106】
(第六の実施形態)
図9は第六の実施形態の冷却装置1を正面から見た場合(正面視)の断面図である。
図中の直線矢印は、ダクト10内における空気の流れを示す。
図10は第六の実施形態の冷却装置1を上から見た場合(平面視)の断面図(横断面図)である。
【0107】
図9および
図10に示すように、第六の実施形態の冷却装置1は、ダクト10内部に綿状金属224を備える。本実施形態において、綿状金属224としてステンレス(株式会社大創産業製、製品名ステンレスたわし50g2個入り)を用いている。
1つのたわしは直径8cmの球体状であるが、これを広げて約1000cm
3の大きさにして使用している(ステンレスたわしの密度0.050g/cm
3)。たわしはダクト10内部に摩擦力で引っ掛かる様に配設される。
ダクト10内部に綿状金属224が配設されている以外は第一の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0108】
ダクト10内部に綿状金属224を配設することにより、断熱性の高い空気の一部が熱伝導性の高い金属素材に置換される。これにより、冷却部20の冷却効果がダクト10の軸周辺部(ダクト10の管部分近傍)だけではなく、ダクト10の軸中心部(通気スペースSの軸中心部)にも伝達しやすくなる。結果、冷却装置1の冷却効率が向上するほか、ダクト10の金属管部分のみが過剰に冷却されて結露が生じることを防ぐことができる。
なお、上記効果を効率的に発揮するため、本実施形態においても綿状金属224の少なくとも一部はダクト10に接している。
【実施例0109】
以下では、冷却装置1の冷却効果を測定するための実験について説明する。なお、本明細書に記載する商品名は登録商標である場合があるが、登録商標の表記は省略されている場合がある。
【0110】
(多孔質粒子222)
本実施例では、多孔質粒子222としてパーライト、珪藻土焼成粒、木炭を用いた。以下説明する。
パーライトとして、三井金属鉱業株式会社製の製品名「ネニサンソ(登録商標)1号」を用いた。
化学成分比率は、珪酸が75%、アルミナが15%、その他成分(鉄、加里、ソーダ等)が10%である。物性は、粒径5mm、かさ比重0.17、BET比表面積23m2/g、全孔隙率77%(容量%)、吸水率77%(容量%)である。また、粗孔隙(直径0.1mm以上の孔隙)の比率である粗孔隙率は46%(空気率%)である。
【0111】
珪藻土焼成粒として、イソライト工業株式会社製の製品名「イソライト(登録商標)CG2号」を用いた。
化学成分比率は、SiO2が75%以上80%以下、Al2O3が10%以上12%以下、Fe2O3が4%以上6%以下である。物性は、粒径2mm、比重0.50g/cm3以上0.60g/cm3以下(かさ比重)、BET比表面積30m2/g、全孔隙率70%、吸水率70から80%(w/w%)である。また、粗孔隙率は28%(空気率%)である。
なお、成分表記として化合物名称を用いる場合と化学式を用いる場合があるが、これらは製造会社等のカタログ資料等の記載に基づく。
【0112】
木炭として、市川木材株式会社製の製品名「床下調湿炭」を、解体して用いた。物性は、粒径2mm、比重0.3g/cm3(かさ比重)、BET比表面積400m2/g、全孔隙率75%、吸水率40%(w/w%)である。
【0113】
(綿状金属224)
本実施例では、綿状金属224としてステンレスたわし又は銅たわしを用いた。
ステンレスたわしとして、株式会社大創産業製、製品名「ステンレスたわし50g2個入り」を用いた(熱伝導率は12W/(m・K))。
1個につき重さ50g、直径約8cmの球体状たわしを、それぞれ約2000cm3に広げて2個使用している(体積計4000cm3)。この広げた状態の密度は0.025g/cm3である。
【0114】
銅たわしとして、アドプラス社(ココマート)製、製品名「純銅製たわし6個入りTWS-6」を用いた(熱伝導率は398W/(m・K))。
【0115】
(冷却装置1)
図1に示すように、直径12.5cm、高さ80cmの円筒状断熱材の内側に、ダクト10として直径7.5cm、高さ80cmのアルミニウム製ダクトを通し、管が二重になるようにした。当該円筒状断熱材と当該アルミニウム製ダクトの間の空間である冷却材保持部24の容積は、4000cm
3である。
当該冷却材保持部24に、綿状金属224としてステンレスたわし(株式会社大創産業製、商品名ステンレスたわし50g2個入り)を所定の量だけ充填した。さらに、多孔質粒子222を所定量充填し、冷却部20を形成した。冷却材保持部24の下側は断熱材で覆っており、下から多孔質粒子222が漏出しないようにした(
図1参照)。
【0116】
(冷却実験における基礎条件)
まず、ダクト10内部の換気を開始した。換気には日本電興株式会社製NDR-110を用いた。続いて、冷却部20の上側から飽和状態となるまで水を滴下した。給水直後を0分として、以降15分後、30分後、45分後におけるダクト出口14中央の温度を温湿度計(シンワ測定株式会社製温湿度計U3)で計測した。
【0117】
多孔質粒子222や綿状金属224の有無、多孔質粒子222の種類や量を変化させて実験を行った。
各実験水準の実験条件を以下に示す。
水準1:比較用水準である。円筒状断熱材の内側にアルミニウム製ダクトを通したものであるが、冷却材保持部24に綿状金属224や多孔質粒子222は充填していない。
水準2:冷却材保持部24に多孔質粒子222としてパーライトを200g充填した。
水準3:冷却材保持部24に多孔質粒子222として珪藻土焼成粒を200g充填した。
水準4:冷却材保持部24に多孔質粒子222として粒子状の黒炭を200g充填した。
水準5:冷却材保持部24に綿状金属224としてステンレスたわし100gを充填し(ステンレスたわしの密度0.025g/cm
3)、さらにそこに多孔質粒子222としてパーライトを200g充填した(第一の実施形態(
図1および
図2))。
水準6:冷却材保持部24に綿状金属224としてステンレスたわし100gを充填し、さらにそこに多孔質粒子222としてパーライトを250g充填した。
水準7:冷却材保持部24に綿状金属224としてステンレスたわし100gを充填し、さらにそこに多孔質粒子222としてパーライトを300g充填した。
水準8:水準5のステンレスたわし100gに代えて、銅たわし100gを用いた。
水準9:水準5の条件のほか、さらにアルミニウム製ダクトの内側にステンレスたわしを充填した(第六の実施形態(
図9および
図10))。ここで、1個のたわしは重量50g、直径8cmの球体状であるが、これを広げて約1000cm
3の大きさにして(ステンレスたわしの密度0.050g/cm
3)アルミニウム製ダクトの内側に充填した。
【0118】
【0119】
まず、多孔質粒子を含まないもの(水準1)と含むもの(水準2~4)では、多孔質粒子を含むものはいずれも冷却効果が認められた。
また、多孔質粒子222を検討した実験では(水準2~4)、パーライトが最も高い冷却効果を示した。
【0120】
多孔質粒子222単独の水準(水準2)と、多孔質粒子222と綿状金属224(金属たわし)とをともに含む水準(水準5)とでは、多孔質粒子222と綿状金属224をともに含む水準(水準5)の方が、冷却効果が高かった(第一の実施形態)。
【0121】
多孔質粒子222と綿状金属224の比率違いを検討した水準によると(水準5から7)、実験した配合比の中ではパーライト比率が小さいほど、冷却効果が高いという結果になった。
理由は定かではないが、これは、パーライト比率が小さくなると、空気が透過可能な空間が増えるためと考えている。
【0122】
ダクト10内部に綿状金属224を含まない水準(水準5)と含む水準(水準8)では、ダクト内部にも綿状金属224を含む水準(水準8)の方が、高い冷却効果が認められた(第六の実施形態)。
この結果から、ダクト10内部の綿状金属224が、冷却効果に寄与していると言える。
【0123】
(変形例)
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
【0124】
例えば、第三の実施形態(
図5)では上側に頂点を持つ円錐形の網製容器を用いていたが、当該網製容器246の上下を逆にし、下側が円錐の頂点となるように配設しても良い。この場合、筐体50の上側であって、かつ網製容器246の内側に空気流出口54が配設され、筐体50の下側であって、かつ網製容器246の外側に空気流入口52が配設される。
上述の実施形態に係る冷却装置1は、建物の冷却システム等に応用でき、また、体育館や厨房等、冷房を設置できない広大な空間への活用も考えられる。さらに、換気装置を除けば電力を必要としないため、山間部の建物や小型の建物、例えば作業小屋や納屋といった建物の冷却に好適に用いることが出来る。その他、壁面の冷却だけではなく、建物の屋根部分の冷却にも適用することができる。
冷却装置1による空気の冷却は湿度が低く温度が高いほど効果的に作用し、またローコストで実施できるため、例えば空調設備が未だ普及していない熱帯乾燥地域の住宅などに広く応用することが可能である。これにより、貧富の差による生活環境の格差是正やカーボンニュートラルの実現に対する貢献、ひいては持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)達成への貢献が期待できる。