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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067105
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】振動アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   B06B 1/04 20060101AFI20230509BHJP
   H02K 33/16 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
B06B1/04 S
H02K33/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178095
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000112565
【氏名又は名称】フォスター電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】種村 雄太
【テーマコード(参考)】
5D107
5H633
【Fターム(参考)】
5D107AA02
5D107BB08
5D107CC09
5D107DD03
5D107DD12
5H633BB08
5H633BB10
5H633GG02
5H633GG06
5H633GG09
5H633GG17
5H633HH03
5H633HH04
5H633HH09
5H633HH13
5H633HH14
5H633JA03
5H633JB06
(57)【要約】
【課題】可動子の軸心がずれることを防止して、マグネットとヨークとの間のギャップを小さくすることができる振動アクチュエータを得る。
【解決手段】振動アクチュエータ1は、筒状のケース10に設けられたコイル24と共に磁気駆動部を構成し、板バネ2を介してケース10に支持された状態で、ケース10の軸方向に沿って振動する可動子30を備えている。この可動子30は、マグネット34とヨーク32を含んで構成され、ヨーク32は、可動子30の中心部に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケースと、
前記ケースに設けられたコイルと、
前記ケースの軸方向の一端と他端にそれぞれ設けられた弾性部材と、
マグネットとヨークを含み、前記コイルと共に磁気駆動部を構成し、前記弾性部材を介して前記ケースに支持された状態で前記ケースの軸方向に沿って振動する可動子と、を備え、
前記可動子において、前記ヨークは、前記可動子の中心部に設けられている、
振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記可動子において、前記マグネットは、振動方向に間隔を設けて配置され、前記ヨークの振動方向一方側に配置される第1マグネットと、前記ヨークの振動方向他方側に配置される第2マグネットを有している、請求項1に記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記可動子において、前記第1マグネット及び第2マグネット着磁方向は、振動方向に沿って同一方向とされている、請求項2に記載の振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記可動子において、前記ヨークは、前記可動子の中心部の一方側と他方側に延び、前記マグネットの外周を覆う側部とを有している、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の振動アクチュエータ。
【請求項5】
前記可動子は、前記マグネットに対して振動方向の外側に配置されたポールピースを更に備え、
前記コイルは、前記マグネットの外周側で前記ポールピースと前記ヨークとの間に配置され、前記ポールピースと前記ヨークとの間に形成される磁気ギャップの中に配置される第1領域と、振動方向に前記磁気ギャップから露出した第2領域と、を有している、請求項4の何れか1項に記載の振動アクチュエータ。
【請求項6】
前記ケースに設けられ、前記ポールピースの外周を覆う筒状のボビンを備え、
前記コイルは、前記ボビンの外周に巻回されている、請求項5に記載の振動アクチュエータ。
【請求項7】
前記可動子は、前記ケースの軸中心に沿って配置された接続部材を介して前記弾性部材に支持されている、請求項1~請求項6の何れか1項に記載の振動アクチュエータ。
【請求項8】
前記ケースは、内周との間に間隙を設けて配置される円筒状の延在部を有し、
前記接続部材は、前記延在部の内側に配置されると共にその最外周部が前記延在部の内周に近接対向して配置されている、請求項7に記載の振動アクチュエータ。
【請求項9】
前記接続部材の先端部は、前記弾性部材に貫通形成された貫通孔に挿通されると共に、押し潰されてかしめられた状態で前記弾性部材に接合されている、請求項7又は請求項8に記載の振動アクチュエータ。
【請求項10】
前記可動子において、前記マグネット及び前記ヨークは接着剤を介して接合され、互いに対向する接着面の少なくとも一方に接着方向に窪んだ凹部が形成され、
前記凹部は、接着面の外周に沿って延在し、前記接着剤の一部を収容可能に構成されている、請求項1~請求項9の何れか1項に記載の振動アクチュエータ。
【請求項11】
筒状のケースと、
前記ケースに設けられたコイルと、
前記ケースの軸方向の一端と他端にそれぞれ設けられた弾性部材と、
マグネットとヨークを含み、前記コイルと共に磁気駆動部を構成し、前記弾性部材を介して前記ケースに支持された状態で前記ケースの軸方向に沿って振動する可動子とを備え、
前記マグネットは、振動方向に間隔を設けて配置される第1マグネットと第2マグネットを有し、
前記ヨークは、その一部が前記第1マグネットと前記第2マグネットに挟み込まれるようにして前記第1マグネット及び前記第2マグネットと振動方向に接合されている、
振動アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、振動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、筒状のケースの内周にヨークとコイルを固定してケース側駆動部(固定子)を構成し、マグネットとポールピースとマスで構成した可動子をケースに弾性支持させる振動アクチュエータが開示されている。この振動アクチュエータでは、コイルに交流の電力を通電させて可動子の磁気回路との間に磁気反発と磁気吸着を発生させて可動子を振動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2020/175610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、可動子の推力を増強させるためには、マグネットとヨークとの間のギャップを小さくすることが望ましい。
【0005】
一方で、マグネットの磁力によって、マグネットとヨークの間には、互いに引き寄せあう方向の力が作用している。従って、上記特許文献1のように、固定子を構成するヨークに対してマグネットの位置が変位する場合、マグネットとヨークとの間のギャップが小さすぎると、磁力によってマグネットがヨークに引き寄せられて可動子の軸心がずれる虞がある。
【0006】
本開示は上記事実を考慮し、可動子の軸心がずれることを防止して、マグネットとヨークとの間のギャップを小さくすることができる振動アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様に係る振動アクチュエータは、筒状のケースと、前記ケースに設けられたコイルと、前記ケースの軸方向の一端と他端にそれぞれ設けられた弾性部材と、マグネットとヨークを含み、前記コイルと共に磁気駆動部を構成し、前記弾性部材を介して前記ケースに支持された状態で前記ケースの軸方向に沿って振動する可動子と、を備え、前記可動子において、前記ヨークは、前記可動子の中心部に設けられている、振動アクチュエータ。
【0008】
第1の態様に係る振動アクチュエータでは、筒状のケースに設けられたコイルと共に磁気駆動部を構成し、弾性部材を介してケースに支持された状態で、ケースの軸方向に沿って振動する可動子を備えている。この可動子は、マグネットとヨークを含んで構成され、ヨークは、可動子の中心部に設けられ、マグネットと一体に振動する。従って、ヨークに対してマグネットの位置が変位しない。その結果、マグネットの磁力によって可動子の軸心がずれることが防止され、マグネットとヨークとの間のギャップを小さくすることができる。
【0009】
本開示の第2の態様に係る振動アクチュエータは、第1の態様に記載の前記可動子において、前記マグネットは、振動方向に間隔を設けて配置され、前記ヨークの振動方向一方側に配置される第1マグネットと、前記ヨークの振動方向他方側に配置される第2マグネットを有している。
【0010】
第2の態様に係る振動アクチュエータによれば、マグネットは、ヨークに対して振動方向の一方側に配置される第1マグネットと他方側に配置される第2マグネットで構成され、振動方向に間隔を空けて配置される二つのマグネットの間にヨークの一部を配置することでマグネットの振動方向の中心にヨークを通して連結している。これにより、マグネットの振動方向の中心にヨークを通す複雑な構造部を必要とせずに、マグネットとヨークを容易に連結させることができる。
【0011】
本開示の第3の態様に係る振動アクチュエータは、第2の態様に記載の構成の前記可動子において、前記第1マグネット及び第2マグネット着磁方向は、振動方向に沿って同一方向とされている。
【0012】
第3の態様に係る振動アクチュエータでは、第1マグネットと第2マグネットの着磁方向が軸方向に同一方向とされているため、中心を通るヨークを挟んで第1マグネットと第2マグネットとの間に強力な磁気吸着力が作用する。これにより、磁気吸着力を利用してマグネットとヨークを強固に連結することができ、部材間の接着強度を容易に確保することができる。
【0013】
本開示の第4の態様に係る振動アクチュエータは、第1の態様~第3の態様の何れか1態様に記載の前記可動子において、前記ヨークは、前記マグネットの振動方向の中心を通る中心部と前記中心部の外縁から振動方向の一方側と他方側に延び、前記マグネットの外周を覆う側部とを有している。
【0014】
第4の態様に係る振動アクチュエータでは、マグネットの振動方向の中心を通るヨークの中心部に対して、振動方向の一方側と他方側に側部が延びてマグネットの外周を覆っている。これにより、ヨークの中心部を隔てて振動方向の両側に二つの磁気ギャップを形成することができる。振動方向に間隔を空けて二つのコイルを配置して、それぞれをケース内の二つの磁気ギャップに配置する構造の振動アクチュエータは従来から存在する。しかしながら、これらは、振動方向の中心に一つのマグネットを配置して磁気ギャップを形成することが一般的であるため、振動質量を考慮して磁気ギャップの位置を調整することが難しい。これに対して、ヨークの中心部を隔てて振動方向の両側に二つの磁気ギャップを形成することができる構成とすることで、ヨークの中心部の板厚を変更して振動質量や磁気ギャップの位置の調整を容易に行うことができる。
【0015】
本開示の第5の態様に係る振動アクチュエータは、第4の態様の何れか1態様に記載の構成において、前記可動子は、前記マグネットに対して振動方向の外側に配置されたポールピースを更に備え、前記コイルは、前記マグネットの外周側で前記ポールピースと前記ヨークとの間に配置され、前記ポールピースと前記ヨークとの間に形成される磁気ギャップの中に配置される第1領域と、振動方向に前記磁気ギャップから露出した第2領域と、を有している。
【0016】
第5の態様に係る振動アクチュエータでは、マグネットに対して振動方向の外側にポールピースが配置されており、ポールピースとヨークとの間に形成される磁気ギャップにコイルが配置されている。ここで、コイルは、磁気ギャップの中に配置される第1領域と、振動方向に磁気ギャップから露出した第2領域と、を有している。これにより、コイルに対して可動子が相対的に変移する振動状態において、磁気ギャップの中に配置されるコイルの領域を確保することができ、コイルを貫く磁束を安定させることができる。また、振動質量の増加によって可動子の変位が大きくなった場合でも、同一の構造にて対応することができる。
【0017】
本開示の第6の態様に係る振動アクチュエータは、第5の態様に記載の構成において、前記ケースに設けられ、前記ポールピースの外周を覆う筒状のボビンを備え、前記コイルは、前記ボビンの外周に巻回されている。
【0018】
第6の態様に係る振動アクチュエータでは、ケースに設けられた筒状のボビンによってポールピースの外周が覆われており、ボビンの外周にコイルが巻回されている。即ち、可動子を構成するポールピースと固定子を構成するコイルとの間にボビンが配置されている。これにより、ケースに対して外部からの強い衝撃が加わった際にも、ポールピースとボビンとの間の絶縁を確保することができる。
【0019】
本開示の第7の態様に係る振動アクチュエータは、第1の態様~第6の態様の何れか1態様に記載の構成において、前記可動子は、前記ケースの軸中心に沿って配置された接続部材を介して 前記弾性部材に支持されている。
【0020】
第7の態様に係る振動アクチュエータでは、ケースの軸方向に振動する可動子が、接続部材を介してケースの軸方向の一端と他端に設けられた弾性部材に支持されている。これにより、ケース側に設けられた弾性部材との接合のために、可動子を複雑な形状にすることを要しないため、部品のコスト低減を図ることができる。
【0021】
本開示の第8の態様に係る振動アクチュエータは、第7の態様に記載の構成において、前記ケースは、内周との間に間隙を設けて配置される円筒状の延在部を有し、前記接続部材は、前記延在部の内側に配置されると共にその最外周部が前記延在部の内周に近接対向して配置されている。
【0022】
第8の態様に係る振動アクチュエータによれば、ケースは、内周との間に間隙を設けて配置される円筒状の延在部を有しており、延在部の内側に接続部材が配置される。ここで、接続部材は、その最外周部が延在部に近接対向して配置されるため、ケースに対して外部からの強い衝撃が加わった際にも、接続部材の最外周部が延在部に当接して可動部がコイルに接触することを抑制することができる。
【0023】
本開示の第9の態様に係る振動アクチュエータは、第7の態様又は第8の態様に記載の構成において、前記接続部材の先端部は、前記弾性部材に貫通形成された貫通孔に挿通されると共に、押し潰されてかしめられた状態で前記弾性部材に接合されている。
【0024】
第9の態様に係る振動アクチュエータでは、接続部材は、先端部を押し潰してかしめることにより、弾性部材に接合されている。従って、接続部材と弾性部材とを接合するために接合用のネジ等の追加部品が必要とされないため、部品のコスト低減を図ることができる。
【0025】
本開示の第10の態様に係る振動アクチュエータは、第1の態様~第9の態様の何れか1態様に記載の構成において、前記可動子において、前記マグネット及び前記ヨークは接着剤を介して接合され、互いに対向する接着面の少なくとも一方に接着方向に窪んだ凹部が形成され、前記凹部は、接着面の外周に沿って延在し、前記接着剤の一部を収容可能に構成されている。
【0026】
第10の態様に係る振動アクチュエータでは、可動子を構成するマグネットとヨークが接着剤を介して接合されている。ここで、マグネットとヨークの互いに対向する接着面には、少なくとも一方に接着方向に窪んだ凹部が形成されている。この凹部は、接着面の外周に沿って延在し、接着剤の一部を収容可能に構成されている。これにより、マグネットとヨークを接着する際に、余った接着剤の一部は、外周側に押し出されて凹部内に収容される。その結果、接着面の外側に余剰分の接着剤が漏れ出ることで、接着剤とコイルとが干渉することを抑制することができる。
【0027】
本開示の第11の態様に係る振動アクチュエータは、筒状のケースと、前記ケースに設けられたコイルと、前記ケースの軸方向の一端と他端にそれぞれ設けられた弾性部材と、マグネットとヨークを含み、前記コイルと共に磁気駆動部を構成し、前記弾性部材を介して前記ケースに支持された状態で前記ケースの軸方向に沿って振動する可動子とを備え、前記マグネットは、振動方向に間隔を設けて配置される第1マグネットと第2マグネットを有し、前記ヨークは、その一部が前記第1マグネットと第2マグネットに挟み込まれるようにして前記第1マグネット及び前記第2マグネットと振動方向に接合されている。
【0028】
第11の態様に係る振動アクチュエータでは、筒状のケースに設けられたコイルと共に磁気駆動部を構成し、弾性部材を介してケースに支持された状態で、ケースの軸方向に沿って振動する可動子を備えている。この可動子は、マグネットとヨークを含んで構成され、マグネットは、振動方向に間隔を設けて配置される第1マグネットと第2マグネットを有している。ここで、ヨークは、その一部が第1マグネットと第2マグネットに挟み込まれるようにして前記第1マグネット及び前記第2マグネットと振動方向に接合されている。これにより、ヨークが可動子の一部を構成してマグネットと一体に振動するため、ヨークに対してマグネットの位置が変位しない。その結果、マグネットの磁力によって可動子の軸心がずれることが防止され、マグネットとヨークとの間のギャップを小さくすることができる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本開示に係る振動アクチュエータでは、可動子の軸心がずれることを防止して、マグネットとヨークとの間のギャップを小さくすることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本実施形態に係る振動アクチュエータであって、その一部をケースの軸方向の中心線に沿って切断して示す部分断面斜視図である。
図2】本実施形態に係る可動子の分解斜視図である。
図3】本実施形態に係る振動アクチュエータをケースの軸方向の中心線に沿って切断した断面図である。
図4】本実施形態に係る振動アクチュエータの作動を説明する概略図である。
図5】本実施形態に係る振動アクチュエータの使用例の一例を示す図3に対応する断面図である。
図6】実施例に係る振動アクチュエータの周波数と変移の関係を示す図である。
図7】実施例に係る振動アクチュエータの周波数と加速度の関係を示す図である。
図8】実施例に係る振動アクチュエータの周波数と加振力の関係を示す図である。
図9】本実施形態の振動アクチュエータの第1の変形例を示す図3に対応する断面図である。
図10】本実施形態の振動アクチュエータの第2の変形例を示す図3に対応する断面図である。
図11】本実施形態の振動アクチュエータの第3の変形例を示す図3に対応する断面図である。
図12】本実施形態の振動アクチュエータの第4の変形例を示す図3に対応する断面図である。
図13】本実施形態の振動アクチュエータの第5の変形例を示す図3に対応する断面図である。
図14】本実施形態の振動アクチュエータの第6の変形例を示す図3に対応する断面図である。
図15】本実施形態の振動アクチュエータの第7の変形例であって、マグネットの着磁方向を示す、図4に対応する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図1図5を参照して本実施形態に係る振動アクチュエータ1について説明する。なお、図1図4の各図に適宜示される線分Oは、振動アクチュエータ1の振動方向(軸方向)の中心線を示している。
【0032】
図1図3に示されるように、本実施形態の振動アクチュエータ1は、その振動方向1/2の箇所(振動方向の中心)において中心線Oと直交する対称面S(図3参照)を境界として、同一形状の部材を設けたものである。そこで、各部材の構成については、対称形の一方の構成のみを説明し、他方については特別に必要がない限りは同一の符号を付すことで説明は省略する。また、「可動子の中心部」という場合には、可動子における振動方向の中心側をいい、中心線Oを軸心とする内外方向については、中心線Oを基準として内周或いは外周と表現する。
【0033】
振動アクチュエータ1は、主に、外殻をなす円筒状のケース10と、ケース10の内部に設けられた固定子20と、固定子20により振動可能な可動子30と、可動子30の振動軸方向の両端部をそれぞれケース10に対して弾性支持する板バネ2を備えている。
【0034】
ケース10は、振動アクチュエータ1の振動方向を軸方向とする円筒状のケース本体12と、その両端開口を塞ぐ図示しないカバーケース、及びケース本体12の開口部の近傍の内周部分に設けられたコイルフレーム14を備えている。本実施形態において、ケース本体12、カバーケース及びコイルフレーム14は、それぞれABS等の樹脂材料からなるが、樹脂材料に限定されるものではない。また、ケース本体12の外面には、リード線が接続される図示しないターミナルが形成されている
【0035】
コイルフレーム14は、ケース本体12の開口部に沿って設けられた環状の枠部14Aを有している。この枠部14Aには、内周部分から突出して設けられた複数のボス部16を有している。本実実施形態では、枠部14Aの周方向に沿って等間隔に三つのボス部16が設けられている。枠部14Aの上方側には板バネ2の外周部が配置され、ボス部16に加締められるピン18を用いて板バネ2がコイルフレーム14に固定されている。なお、ケース本体12とコイルフレーム14の枠部14Aとは、ネジや接着、溶着により接合してもよい。
【0036】
更に、コイルフレーム14には、枠部14Aの内側で段差部14Bを介して形成された延在部14Cを有している。延在部14Cは、段差部14Bの内縁から振動方向中心側に延びる略円筒状を成しており、外径の寸法が枠部14Aの外径よりも小径に形成されている。この延在部14Cは、ケース本体12の内周面に対して径方向内側に間隔を設けて配置され、ケース本体12の内周と対向する外周側で固定子20を支持している。
【0037】
振動アクチュエータ1は、ケース10の内部に設けられた固定子20と、固定子20により振動可能な可動子30によって電磁駆動部を構成する。
【0038】
固定子20は、紙材で形成されたボビン22と、ボビン22に固定されたコイル24とを有している。ボビン22は、コイルフレーム14の延在部14Cの外周に接着剤を用いて固定されており、延在部14Cから振動方向中心側に延びる略円筒状を成している。コイル24は、ボビン22の外周に沿って巻回され、接着剤を用いてボビン22に固定されている。
【0039】
コイル24は、ケース10内において、ケース本体12の内周との間に間隙を設けて配置されている。また、コイル24は、後述するヨーク32とポールピース36との間の磁気ギャップGに配置されている。振動時におけるポールピース36とのコイル24との接触を防止するために、ポールピース36の表面(外周)を覆うようにボビン22がコイルフレーム14に支持されて、ボビン22の内周とポールピース36の外周との間に間隙が設けられている。コイル24のリード線はケース本体12の外面側で図示しないターミナルに接続され、ターミナルからの通電により磁場を発生可能となっている。
【0040】
可動子30は、円筒状のケース10の軸方向である中心線O方向に沿って振動するように、ケース本体12内に配置されている。可動子30は、ヨーク32と、マグネット34と、ポールピース36と、接続部材40と、を備えている。マグネット34、ポールピース36及び接続部材40は、ケース本体12の内部において振動方向の中心から外側に向かってこの順で配置されている。また、本実施形態において、ヨーク32及びポールピース36は金属製の軟磁性材料で形成され、接続部材40はABS等の樹脂材料で形成されている。
【0041】
ヨーク32は、振動方向の外側に向かって開口する有底筒状に形成されており、中心部321と側部322とを備えている。中心部321は、円板状を成し、ケース本体12の振動方向の中心に配置されている。側部322は、中心部321の外縁から振動方向の外側に延びる円筒状を成している。このヨーク32は、中心線O方向(振動方向)と直交する対称面Sに対し、対称を成して配置される他方側のヨーク32と互いの中心部321同士を接着させて一体化されている。即ち、ケース本体12の振動方向の中心に対して一方側と他方側に配置される二つのヨーク32が一体化されることにより、ケース本体12の内部には、振動方向に沿った断面が略H形状を成すヨーク32が配置されている。
【0042】
マグネット34は、略円板状を成し、ヨーク32の中心部321の振動方向外側に配置されている。更に、マグネット34の振動方向外側には、円板状を成すポールピース36が配置されている。上述したヨーク32の側部322は、マグネット34及びポールピース36の外周を覆い、マグネット34及びポールピース36の外周と側部322の内周との間に間隙を設けて配置されている。そして、ポールピース36とヨーク32との間に形成された磁気ギャップGの中に固定子20のコイル24が配置されている。
【0043】
ここで、コイル24は、磁気ギャップGの中に配置される領域(第1領域)と、磁気ギャップGから振動方向に露出した領域(第2領域)とを有している。このため、コイル24に対して可動子30が相対的に変移する振動状態において、磁気ギャップGの中に配置されるコイルの領域を確保することができ、コイル24を貫く磁束を安定させることができる。
【0044】
なお、ここでいう磁気ギャップGとは、ポールピース36の外周とヨーク32の側部322の内周とが対向する領域である。
【0045】
図3に示されるように、ポールピース36は接続部材40を介して板バネ2の中心に接続されている。 接続部材40は、振動方向を軸方向とする円筒状を成し、ケース本体12の軸中心に沿って配置されている。接続部材40は、その両端開口がポールピース36及び板バネ2の軸中心に貫通形成された貫通孔361,21と同軸的に配置されている。ポールピース36と接続部材40は、ポールピース36の貫通孔361と接続部材40の開口に振動方向の中心側から第1固定ピン42が挿入されることにより、固定されている。接続部材40と板バネ2は、板バネ2の貫通孔21と接続部材40の開口に振動方向の外側から第2固定ピン44が挿通されることにより、固定されている。これにより、ヨーク32、マグネット34及びポールピース36で構成される可動子30が板バネ2を介してケース10に弾性支持されている。
【0046】
以下、振動アクチュエータ1の内部の対称性の成す構成について説明する。なお、以下では、説明を分かりやすくするために、ケース10の振動方向の中心に対し一方側に配置された可動子30を第1可動子30Aと称し、第1可動子30Aを構成するヨーク32、マグネット34、ポールピース36をそれぞれ、ヨーク32A、第1マグネット34A、第1ポールピース36Aと称して説明する。また、ケース10の振動方向の中心に対し他方側に配置された可動子30を第2可動子30Bと称し、第2可動子30Bを構成するヨーク32、マグネット34、ポールピース36をそれぞれ、第2ヨーク32B、第2マグネット34B、第2ポールピース36Bと称して説明する。また、第1可動子30Aの磁気ギャップGに配置されたコイル24を第1コイル24Aと称し、第2可動子30Bの磁気ギャップGに配置されたコイル24を第2コイル24Bと称して説明する。
【0047】
本実施形態の振動アクチュエータ1では、ケース10の振動方向の一方側に配置された第1可動子30Aと、他方側に配置された第2可動子30Bとを有している。第1可動子30A及び第2可動子30Bは、振動方向と直交する対称面Sに対して対称構造を成すように配置され、これにより、第1可動子30Aの第1マグネット34Aと第2可動子30Bの第2マグネット34Bとが振動方向に間隔を設けて配置される。そして、ヨーク32Aと第2ヨーク32Bの中心部321が、第1マグネット34Aと第2マグネット34Bに挟み込まれるようにして、第1マグネット34A及び第2マグネット34Bと振動方向に接合されている。即ち、本実施形態のヨーク(ヨーク32A,第2ヨーク32B)は、その一部がマグネット34(第1マグネット34A,第2マグネット34B)の振動方向の中心を通って配置されている。これにより、磁気駆動部を構成する第1マグネット34A及び第2マグネット34Bは、ヨーク32A及び第2ヨーク32Bとの相対的な位置関係が変位されない状態で振動する構成となっている。
【0048】
ここで、第1マグネット34Aと第2マグネット34Bの着磁方向は、振動方向に沿って同一方向とされている。このため、図4に矢印で示されるように、本実施形態の第1可動子30A及び第2可動子30Bでは、第2マグネット34Bの磁力線がヨーク32A及び第2ヨーク32Bの中心部321を通って第1マグネット34Aに至り、磁気ギャップG、ヨーク32Aの側部322、第2ヨーク32Bの側部322を経て磁気ギャップGを通る磁気回路が形成されている。従って、振動方向に沿って配置された各部材が磁気吸着力によって強力に連結されている。
【0049】
本実施形態では、第1可動子30Aと第2可動子30Bとの間に反発磁界が生じないため、第1可動子30Aと第2可動子30Bの組立後に着磁することができる。
【0050】
図3に示されるように、振動アクチュエータ1は、ケース10の軸方向の一端に取り付けられた第1板バネ2Aと、他端に取り付けられた第2板バネ2Bとを有する。第1可動子30A及び第2可動子30Bは、ケース10の軸中心(中心線O)に沿って配置される接続部材40を介して第1板バネ2Aと第2板バネ2Bにそれぞれ支持されている。
【0051】
なお、接続部材40は、ABS等の軽量な樹脂材料で形成してもよい。若しくは、金属や樹脂等の比較的重い非磁性材料で形成し、第1及び第2可動子30A,30Bと第1及び第2板バネ2A,2Bとの間の負荷質量を調整するためのマスとして構成されてもよい。
【0052】
第1板バネ2A及び第2板バネ2Bは、金属製の一枚ないし複数枚の板バネで構成されており、例えば本実施形態ではステンレスの薄板を加工したものを使用している。第1板バネ2A及び第2板バネ2Bの材料は、金属に限らず樹脂や繊維を含む複合材料であってもよい。また、第1板バネ2A及び第2板バネ2Bの材料は、耐久性及び可撓性に優れた材料であればよく、例えば、コイルバネでもよい。なお、第1板バネ2A及び第2板バネ2Bが、本開示における「弾性部材」に相当する。
【0053】
第1板バネ2A及び第2板バネ2Bのそれぞれは、中心部から外周方向へ渦巻き状に延びる三本の腕部23を有しており、各腕部23の外周端がコイルフレーム14の枠部14Aとケース本体12のボス部16に連結されて、支持されている。
【0054】
本実施形態において、第1板バネ2A及び第2板バネ2Bは、対称面Sを境界として対称形に設けられている。これら2つの板バネの腕部23の渦巻き方向は互いに逆方向になっている。これにより、振動アクチュエータ1の振動時において、第1可動子30Aおよび第2可動子30Bは、第1板バネ2A及び第2板バネ2Bから各々逆方向のトルクを受けるため、振動方向に振動しても、中心線Oに沿った軸周りに回転しない。
【0055】
このように構成された第1板バネ2A及び第2板バネ2Bは、振動方向(中心線O方向)及び振動方向と直交する対称面Sの面方向において所定の範囲で弾性変形可能である。なお、この所定の範囲は、振動アクチュエータ1として通常に使用した場合の第1可動子30A及び第2可動子30Bの振幅範囲に相当する。従って、所定の範囲は少なくとも第1板バネ2A及び第2板バネ2Bがケース10に接触しない範囲であり、第1板バネ2A及び第2板バネ2Bの弾性変形の限界を超えない範囲である。
【0056】
(作用並びに効果)
【0057】
以上のように構成された振動アクチュエータ1において、第1及び第2可動子30A,30Bは、第1及び第2コイル24A、24Bに通電していない状態では、図3に示すように、第1及び第2コイル24A、24Bの中央に位置している。
【0058】
第1及び第2可動子30A,30Bを振動させる際には、ケース10の外面に設けたターミナル(不図示)を介して、第1及び第2コイル24A、24Bに交互に逆極性の磁界を発生させる向きに交流の電力を通電させる。即ち、第1及び第2コイル24Bの隣り合う部分に同極が発生するようになっている。
【0059】
例えば、図4に示す極性の場合、第1及び第2可動子30A,30Bには実線矢印Aで示す振動方向他方側(図4では下方側)への推力が発生し、第1及び第2コイル24A、24Bへ流す電流を反転させれば、第1及び第2可動子30A,30Bには点線矢印Bで示す振動方向一方側(図4では上方側)への推力が発生する。
【0060】
このように、第1及び第2コイル24A、24Bに交流の電力を通電させると、第1及び第2可動子30A,30Bは、第1及び第2板バネ2A,2Bによる付勢力を両側から受けながら、中心線O方向に沿って振動する。
【0061】
ところで、第1及び第2可動子30A,30Bに発生する推力は、基本的にはフレミングの左手の法則に基づいて与えられる推力に準じられる。本実施形態では、第1及び第2コイル24A、24Bがケース10に固定されているため、第1及び第2マグネット34A,34Bが取り付けられた第1及び第2可動子30A,30Bに、第1及び第2コイル24A、24Bに発生する力の反力としての推力が発生する。よって、第1及び第2マグネット34A,34Bの磁束の水平成分(対称面Sの面方向の成分)が推力に寄与している。そして、第1及び第2ヨーク32A,32Bは、第1及び第2マグネット34A,34Bの磁束の水平成分を増大するものであるため、第1及び第2マグネット34A,34Bと第1及び第2ヨーク32A,32Bとの間には、互いに引き合う磁力が作用している。
【0062】
従って、仮に、第1及び第2ヨーク32A,32Bが、ケース10側に固定される固定子を構成した場合において、第1及び第2マグネット34A,34Bと第1及び第2ヨーク32A,32Bとの間のギャップが小さくなり過ぎると、互いに引き合う磁力の作用によって可動子30の軸心がずれる虞がある。このため、第1及び第2可動子30A,30Bの推力を増強させるために、第1及び第2マグネット34A,34Bと第1及び第2ヨーク32A,32Bとの間のギャップを小さくすることが困難になる。
【0063】
これに対して、本実施形態によれば、第1及び第2ヨーク32A,32Bから成るヨーク32は、その一部が第1及び第2マグネット34A、34Bから成るマグネット34の振動方向の中心を通り、マグネット34と振動方向に接合されている。従って、ヨーク32が可動子30の一部を構成してマグネット34と一体に振動するため、ヨーク32に対してマグネット34の位置が変位しない。その結果、マグネット34の磁力によって可動子30の軸心がずれることが防止され、マグネット34とヨーク32との間のギャップを小さくすることができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、マグネット34は、ヨーク32の中心部321に対して振動方向の一方側に配置される第1マグネット34Aと他方側に配置される第2マグネット34Bで構成され、振動方向に間隔を空けて配置される二つのマグネットの間にヨークの一部を配置することでマグネット34の振動方向の中心にヨーク32を通して連結している。これにより、マグネット34の振動方向の中心にヨークを通す複雑な構造部を必要とせずに、マグネット34とヨーク32を容易に連結させることができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、第1マグネット34Aと第2マグネット34Bの着磁方向が軸方向に同一方向とされているため、中心を通るヨーク32の中心部321を挟んで第1マグネット34Aと第2マグネット34Bとの間に強力な磁気吸着力が作用する。これにより、磁気吸着力を利用してマグネット34とヨーク32を強固に連結することができ、部材間の接着強度を容易に確保することができる。
【0066】
また、本実施形態によれば、ヨーク32Aと第2ヨーク32Bを連結して一体化し、振動方向に沿った断面形状がH形状を成す一つのヨーク32を構成している。従って、マグネット34の振動方向の中心を通るヨーク32の中心部321に対して、振動方向の一方側と他方側に側部322が延びてマグネット34の外周を覆っている。これにより、ヨーク32の中心部321を隔てて振動方向の両側に二つの磁気ギャップGを形成することができる。振動方向に間隔を空けて二つのコイルを配置して、それぞれをケース内の二つの磁気ギャップに配置する構造の振動アクチュエータは従来から存在する。しかしながら、これらは、振動方向の中心に一つのマグネットを配置して磁気ギャップを形成することが一般的であるため、振動質量を考慮して磁気ギャップの位置を調整することが難しい。これに対して、ヨーク32の中心部321を隔てて振動方向の両側に二つの磁気ギャップGを形成することができる構成とすることで、ヨーク32の中心部321の板厚を変更して振動質量や磁気ギャップGの位置の調整を容易に行うことができる。
【0067】
また、本実施形態では、マグネット34に対して振動方向の外側にポールピース36が配置されており、ポールピース36とヨーク32との間に形成される磁気ギャップGにコイル24が配置されている。ここで、コイル24は、磁気ギャップGの中に配置される第1領域と、振動方向に磁気ギャップGから露出した第2領域と、を有している。これにより、コイル24に対して可動子30が相対的に変移する振動状態において、磁気ギャップGの中に配置されるコイル24の領域を確保することができ、コイル24を貫く磁束を安定させることができる。また、振動質量の増加によって可動子30の変位が大きくなった場合でも、同一の構造にて対応することができる。
【0068】
また、本実施形態によれば、ケース10に設けられた筒状のボビン22によってポールピース36の外周が覆われており、ボビン22の外周にコイル24が巻回されている。即ち、可動子30を構成するポールピース36と固定子20を構成するコイル24との間にボビン22が配置されている。これにより、ケース10に対して外部からの強い衝撃が加わった際にも、ポールピース36とボビン22との間の絶縁を確保することができる。
【0069】
また、本実施形態では、ケース10の軸方向に振動する可動子30が、接続部材40を介して間にマスを介さずにケース10の軸方向の一端と他端に設けられた第1板バネ2Aと第2板バネ2Bに弾性支持されている。これにより、振動アクチュエータ1では、重量やバランス特性を考慮した複雑な形状のマスが必要とされないため、部品のコスト低減を図ることができる。
【0070】
また、本実施形態では、ヨーク32A、第1マグネット34A及び第1ポールピース36Aを有する第1可動子30Aと、第2ヨーク32B、第2マグネット34B及び第2ポールピース36Bを有する第2可動子30Bによって可動子30が構成されている。ここで、第1可動子30Aと第2可動子30Bは、ケース10の振動方向の中心側でヨーク32A及び第2ヨーク32Bを対向させて接合し、振動方向に対称構造を成して配置されている。これにより、共通する機能部品を第1可動子30Aと第2可動子30Bで共用することができ、部品コストを低減させることができる。また、組立を容易にすることができる。
【0071】
更にまた、本実施形態の振動アクチュエータ1は、多様な用途での実施が可能である。例えば、携帯電話やスマートフォン等の携帯端末、ゲーム機のコントローラ、美顔器、マッサージ器等を含む美容機器、並びにダイヤフラムポンプ等の端末の振動のための用途で用いることができる。なお、本実施形態に係る第1及び第2板バネ2A,2Bの振幅(変位量)は、これらの板バネの硬さを変更し、より弾性変形し易くすることで大きくすることができる。このため、図5に示す一例のように、第1可動子30Aと第1板バネ2Aとを連結する接続部材50の先端を弾性材料から成るダイヤフラム70に固定することによって、ダイヤフラム70の往復動作のためのアクチュエータとして用いることができる。
【0072】
図5に示す一例では、接続部材50の先端が、筐体60に固定されたダイヤフラム70の中心に接続されている。筐体60には、ダイヤフラム70と対向する上面に吸引用の開口部62が形成されており、振動アクチュエータ1の作動により、ダイヤフラム70が振動方向の他方側(図5では下方側)に変位すると、筐体60の開口部62から外部の空気が吸引される。このように、本実施形態の振動アクチュエータ1は、気体の吸引用の用途で用いることも可能である。なお、図5では、図面を分かりやすくするために、一部の符号を省略して図示している。
【0073】
なお、接続部材50について補足すると、接続部材50は、ケース10の軸中心に沿って配置された第1接続部材52と第2接続部材54によって構成されている。第1接続部材52は、振動方向を軸方向とする円柱状を成し、第1可動子30Aと第1板バネ2Aとの間に配置されている。第1接続部材52は、振動方向の中心側の端部は、上記実施形態の接続部材40と同様に第1固定ピン42を用いて第1ポールピース36Aに機械的に接合されている。第1接続部材52の振動方向外側の端部には、第1板バネ2Aの貫通孔21に挿通され、振動方向の外側に突出した突起部521が形成されている。第2接続部材54は、振動方向を軸方向とする円柱状を成し、振動方向中心側の端部に第1接続部材52の突起部521に対応して設けられた凹部541が形成されている。第1接続部材52及び第2接続部材54は、第1板バネ2Aを挟むようにして突起部521を凹部541に挿入した状態で固定されている。
【0074】
[実施例]
発明者らは、アクチュエータの用途別に本願発明の効果を確認するために、振動方向の中心に一つのマグネットが配置され、ヨークがケース側に固定される固定子を構成する従来例の振動アクチュエータ(例えば、国際公開WO2020/175610号に記載の振動アクチュエータ)と、振動用の用途のために設計された図1図3に相当する振動アクチュエータ1と、吸引用の用途のために設計された図5に相当する振動アクチュエータ1のそれぞれについて、周波数(Frequency[Hz])-変位(Displacement[mm])、周波数(Frequency[Hz])-加速度(Acceleration[m/ss])及び周波数(Frequency[Hz])-加振力(Forces[N])の関係を調べた。その結果を図6図8に示す。
【0075】
図6図8の各図では、従来例の振動アクチュエータについて実線で示し、振動用の用途のために設計された振動アクチュエータ1について破線で示し、吸引用の用途のために設計された振動アクチュエータ1について一点鎖線で示している。
【0076】
各実施例では、入力電力が1[W]に設定され、固定子を構成する二つのコイルの性能を同一の構成にした。また、樹脂材料で形成された上記実施形態の接続部材40を金属の軟磁性材料から成る構成に変更し、接続部材40を100[g]の負荷質量のマスとして構成した。更に、振動用の振動アクチュエータ1及び吸引用の振動アクチュエータ1では、従来例と比較して、振動質量(ヨーク、マグネット、ポールピース、及びマスの質量の加算値)が大きく設定され、且つ、磁気ギャップGが小さく設定されている。
【0077】
振動用の振動アクチュエータ1と吸引用の振動アクチュエータ1との間の構成の違いは、第1及び第2板バネ2A,2Bの機械的コンプライアンス値(バネ定数の逆数で示される)のみである。振動用の振動アクチュエータ1では、機械的コンプライアンス値が0.50[mm/N]に設定され、吸引用では1.25[mm/N]に設定されている。
【0078】
図6に示されるように、一点鎖線で示す吸引用の振動アクチュエータ1では、第1及び第2板バネ2A,2Bの機械的コンプライアンス値が振動用に比べて大きく設定され、軟らかいバネが使用されているため、周波数が40[Hz]以下の低周波数帯域で、変位量が従来例及び振動用のアクチュエータを上回っていることが分かる。
【0079】
図7に示されるように、破線で示す振動用の振動アクチュエータ1では、従来例と比較して、振動質量が上回り、加速度のピーク値が他の実施例を上回っている。
【0080】
図8に示されるように、破線で示す振動用の振動アクチュエータ1と実線で示す従来例では、マスによる質量負荷が共通していても、ヨーク、マグネット及びポールピースの質量を含む振動質量において、振動用の振動アクチュエータ1が従来例を上回るため、加振力の大きさが従来例を上回ることが分かる。
【0081】
[補足説明]
以上、本実施形態の振動アクチュエータ1について説明したが、各部の構成は、その要旨を変更しない範囲で変更又は組み合わせが可能である。また、本開示は、上記実施形態に限らず、図9図11に示す各変形例に係る構成を適用してもよい。なお、図9図11に示す各変形例は、変形した一部の部材を除き、基本的には、上記実施形態に係る振動アクチュエータ1の構成を踏襲している。従って、図面を分かりやすくするために、各図において、一部の符号を省略して図示している。
【0082】
(第1の変形例)
上記実施形態では、第1マグネット34Aと第2マグネット34Bによって、第1及び第2ヨーク32A,32Bの中心部321が直接挟み込まれるように構成されたが、本開示はこれに限らない。図9に示す第1の変形例に係る可動子80(80A,80B)のように、第1及び第2ヨーク32A,32Bの中心部321が、部材を介して第1マグネット34Aと第2マグネット34Bに挟み込まれる構成としてもよい。この第1の変形例では、第1及び第2ヨーク32A,32Bの中心部321と第1及び第2マグネット34A,34Bとの間に金属の軟磁性材料で形成された円板状の中間ポールピース82が配置されている。上記構成では、中間ポールピース82のように、簡単な形状の軟磁性材料を用いて振動方向に沿った可動子80の位置を調整することができるため、コイル24に対する磁気ギャップの高さ調整が容易である。また、中間ポールピース82を設けることで、固定子20の先端と第1及び第2ヨーク32A,32Bの中心部321との距離を確保することができるため、コイル24と第1及び第2ヨーク32A,32Bとが干渉しない位置で可動子80を振動させることができる。
【0083】
(第2の変形例)
また、上記実施形態では、それぞれが有底筒状に形成されたヨーク32Aと第2ヨーク32Bを用いて、互いの中心部321を一体化させることにより、断面H形状のヨークを形成したが、本開示はこれに限らない。ヨーク32Aと第2ヨーク32Bを一体に形成して、一つの部品として構成してもよい。即ち、図10に示す第2の変形例に係る可動子90のように、ケース10内において振動方向の中心に配置される円板状の中心部94の外縁に振動方向の一方側と他方側に延びる側部96を一体に形成して、振動方向の断面がH形状を成すヨーク92を形成してもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、第1及び第2ポールピース36A,36Bと接続部材40が別部材で構成されたが、これに限らず、第2の変形例に係るポールピース100のように、ポールピースと接続部材が一体に形成される構成でもよい。第2の変形例に係るポールピース100では、円板状の本体部102に、ケース10の軸中心に沿って立設された円柱状の接続部104が一体に形成されている。接続部104は、その先端部に形成された凹部104に第2固定ピン44が挿通されて第1及び第2板バネ2A,2Bに接続されている。
【0085】
(第3の変形例)
また、上記実施形態では、可動子30と板バネ2を連結させる接続部材40が細長い円筒状に形成されたが、本開示はこれに限らない。この第3の変形例では、接続部材110は、円筒状の接続部112と、接続部112の振動方向中心側の端部から径方向に広がる底部114と、底部114の外縁から振動方向の外側に立設された円筒状の外周壁部116とを備えている。そして、接続部材110の最外周部を構成する外周壁部116が、コイルフレーム14の延在部14Cに近接対向して配置されている。このため、振動アクチュエータ1に外部からの衝撃などが加わった際にも、接続部材110の外周壁部116がコイルフレーム14の延在部14Cに当接し、可動子30とコイル24の接触を抑制することができる。なお、この際、接続部材110の外周壁部116と延在部14Cとの間の間隙の大きさを、可動子30を構成するヨーク32の側部322とコイル24との間の間隙の大きさよりも小さく設定することで可動子30とコイル24との接触を確実に防止することができる。
【0086】
(第4の変形例)
また、上記図5では、接続部材50を用いてダイヤフラム70に固定される吸引用の振動アクチュエータ1の構成について説明したが、当該構成により、図12に示すように振動アクチュエータ1をダイヤフラムポンプ120のアクチュエータを構成することができる。ダイヤフラムポンプ120の筐体122には、底面にダイヤフラム70が固定され、ダイヤフラム70の変形(振動)により、内部のチャンバCの容積を変更可能に構成されている。筐体122には、チャンバCと連通する第1流路124と第2流路126が形成されており、第1流路124には、吸引弁130が取り付けられており、図12(A)に示すように、チャンバCの容積を増加させる方向にダイヤフラム70が変位されると、吸引弁130が開いて吸気サイクルとなる。また、第2流路126には、吐出弁140が取り付けられており、図12(B)に示すように、チャンバCの容積を縮小させる方向にダイヤフラム70が変位されると、吐出弁140が開いて吐出のサイクルとなる。
【0087】
(第5の変形例)
また、上記実施形態では、可動子30(30A,30B)と接続部材40、接続部材40と板バネ2(2A,2B)が、それぞれ第1及び第2固定ピン42,44を介して接合される構成としたが、本開示はこれに限らない。図13に示すように、固定用のピンやネジを使用せずに接合してもよい。
【0088】
即ち、図13に示す振動アクチュエータ200では、接続部材250と可動子210(210A,210B)のポールピース240とが接着剤260を用いて固定されている。また、接続部材250と板バネ2は、接続部材250の先端部250Aを板バネ2の軸中心に貫通形成された貫通孔21に挿通されると共に、押し潰されてかしめられた状態で板バネ2に接合されている。これにより、接続部材250と板バネ2、並びに可動子210を接合するために接合用のネジ等の追加部品が必要とされないため、部品のコスト低減を図ることができる。
【0089】
更に、この振動アクチュエータ200では、ケース300を構成するケース本体302、コイルフレーム304及びコイルフレーム304とカバーケース306が、図示しない接着剤を用いて互い接合されている。そして、可動子210を構成するヨーク220、マグネット230及びポールピース240が接着剤260を用いて互いに接合されているため、接合用のネジやピンを用いることなく振動アクチュエータ200を組み立てることができる。
【0090】
ここで、可動子210のヨーク220は、可動子の振動方向(中心線O方向)に沿った断面が略E形状を成している。このヨーク220には、底部を構成する円板状の中心部221と、中心部221の外縁から立設された円筒状の側部222と、側部222の内側で、中心部221から立設された円柱状の中柱部223とが一体に形成されている。即ち、この第5の変形例に係るヨーク220は、図9に示す第1の変形例のヨーク32(32A,32B)と中間ポールピース82とが一体に形成された構成に相当する。従って、基本的には、第1の変形例に係る可動子80(80A,80B)の構成を踏襲しているため、同様の作用効果を奏する。また、中間ポールピース82に相当する部材をヨーク220と一体に形成することで、部品点数を減らすことができる。
【0091】
また、変形例5のヨーク220及びポールピース240には、マグネット230と対向する接着面に接着方向に窪んだ凹部270がそれぞれ形成されている。凹部270は、接着面の外周に沿って延在しており、本実施形態では、リング状に形成されている。そして、マグネット230とヨーク220、マグネット230とポールピース240をそれぞれ接着する際に、余った接着剤260の一部は、接着面の外周側に押し出されて凹部270内に収容される。このようにして、接着面の外側に余剰分の接着剤が漏れ出ることを防止することがきるので、余剰分の接着剤とコイルとが干渉する懸念を生じない。これにより、可動子210の磁気ギャップGを小さく設定することができる。
【0092】
なお、上記変形例5では、凹部270をヨーク220及びポールピース240の接着面に形成したが、これに限らない。凹部270は、ヨーク220、マグネット230及びポールピース240において、互いに対向する接着面の少なくとも一方に設ける構成とすればよく、凹部270をマグネット230の接着面に設ける構成としてもよい。
【0093】
(第6の変形例)
また、第5の変形例では、ヨーク220に中柱部223を設けることで、振動方向に沿った可動子80の位置を調整する構成としたが、これに限らない。図14に示す第6の変形例のように、振動方向に沿って間隔を空けて配置された二つのヨーク220の間に板状のスペーサ280を配置して、可動子80の位置を調整してもよい。このスペーサ280は、磁気回路を構成しない非磁性体材料で形成してもよいし、軟磁性体材料で形成してヨーク220と共に磁気回路の一部を構成してもよい。なお、第6の変形例は、二つのヨーク220の間に板状のスペーサ280を配置する以外は、第5の変形例と同様の構成であるため、詳細な説明を割愛する。また、図14では、図面を分かりやすくするために、一部の符号を省略して図示している。
【0094】
(第7の変形例)
なお、上記実施形態では、第1マグネット34Aと第2マグネット34B の着磁方向が、振動方向に沿って同一方向に設定されたが、本開示はこれに限らない。図15に示す第7の変形例のように、第1マグネット34Aと第2マグネット34Bの着磁方向を、振動方向に沿って互いに逆方向に着磁することもできる。この場合、図15に矢印で示すように、第1マグネット34Aによって、第1ポールピース36A、磁気ギャップGを経てヨーク32Aを通る磁気回路が形成される。また、第2マグネット34Bによって第2ポールピース36B、磁気ギャップGを経て第2ヨーク32Bを通る磁気回路が形成される。
【0095】
上記の磁気回路では、第2マグネット34Bが第1マグネット34Aの反発マグネットとなって磁気漏洩を抑制することができる。なお、第1ヨーク32Aと第2ヨーク32Bとの間には反発磁界が発生するが、中心部321の厚みを確保することで第1ヨーク32Aと第2ヨーク32Bを接合した際の機械的強度を確保することができる。また、第1可動子30Aと第2可動子30Bは、予め、第1マグネット34Aと第2マグネット34Bに着磁した後に、接着剤等を用いて接合することにより組み立てることができる。
【0096】
なお、上記各実施形態及び変形例では、ヨーク、マグネット、ポールピースの寸法及び形状が、第1可動子30Aと第2可動子30Bとで同一に構成したが、必須ではない。即ち、磁気駆動部の可動子30を、振動方向の中心に対して対称構造を成して配置することは必須ではなく、例えば、第1マグネット34Aの大きさと第2マグネット34Bの大きさが異なる構成としてもよい。
【0097】
また、本実施形態では、ケース10の内部に第1ヨーク32Aと第2ヨーク32Bを配置したが、本開示はこれに限らない。即ち、少なくとも一つのヨークが可動子の中心部に設けられ、マグネットと振動方向に接合される構造であればよいので、ケース10内から、第2ヨーク32B、第2ポールピース36B及び第2コイル24Bを省いた構成としてもよい。
【0098】
なお、上記実施形態及び各変形例では、コイル24は、磁気ギャップGの中に配置される領域(第1領域)と、磁気ギャップGから振動方向に露出した領域(第2領域)とを有する構成とされたが、本開示はこれに限らない。巻回されたコイルの軸方向のコイル長を短く設定し、コイルの全体が磁気ギャップGの中に配置される構成としてもよい。当該構成においても、コイル長を短く設定することで可動子の振動中もコイル全体を磁気ギャップGの中に配置させることができるため、コイルを貫く磁束を安定させ、コイルが受ける磁力の変化を低減させることができる。
【符号の説明】
【0099】
1 振動アクチュエータ
2 弾性部材(第1板バネ2A,第2板バネ2B)
10 ケース
14C 延在部
24 コイル
34 マグネット(第1マグネット34A,第2マグネット34B)
32 ヨーク(32A,32B)
321 中心部
322 側部
36 ポールピース(36A,36B)
30 可動子(30A,30B)
21 貫通孔(弾性部材に貫通形成された貫通孔)
22 ボビン
40 接続部材
50 接続部材
80 可動子(80A,80B)
110 接続部材
116 外周壁部(最外周部)
200 振動アクチュエータ
210 可動子(200A,200B)
250 接続部材
250A先端部
260 接着剤
270 凹部
300 ケース
G 磁気ギャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図12
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図14
図15