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特開2023-67118抗菌又は抗ウイルス組成物及び抗菌又は抗ウイルス処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067118
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】抗菌又は抗ウイルス組成物及び抗菌又は抗ウイルス処理方法
(51)【国際特許分類】
   A01N 47/44 20060101AFI20230509BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20230509BHJP
   A01N 33/12 20060101ALI20230509BHJP
   A61L 2/18 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 31/14 20060101ALI20230509BHJP
   A61K 31/08 20060101ALI20230509BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230509BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230509BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230509BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
A01N47/44
A01P1/00
A01N33/12 101
A61L2/18
A61K31/155
A61K31/14
A61K31/08
A61P31/04
A61P31/12
A61P43/00 121
A01P3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178112
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000115429
【氏名又は名称】ライオンハイジーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】田中 菜央
(72)【発明者】
【氏名】神藤 宏明
【テーマコード(参考)】
4C058
4C206
4H011
【Fターム(参考)】
4C058AA23
4C058BB07
4C058JJ06
4C058JJ24
4C206CA23
4C206FA41
4C206HA31
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA83
4C206NA05
4C206ZB33
4C206ZB35
4C206ZC75
4H011AA04
4H011BB04
4H011BB14
4H011BC03
4H011BC06
4H011BC07
(57)【要約】
【課題】処理対象物品における拭き残しが少なく、抗菌効果又は抗ウイルス効果に優れる抗菌又は抗ウイルス組成物及び抗菌又は抗ウイルス処理方法。
【解決手段】(A)成分:ポリアルキレンビグアナイド0.05~0.5質量%と、(B)成分:特定の第4級アンモニウム塩0.05~5質量%と、(C)成分:水70質量%以上と、を含有し、pH7~12であることよりなる。本発明の抗菌又は抗ウイルス組成物を処理対象物に接触させ、前記処理対象物に付着した前記抗菌又は抗ウイルス組成物の一部を拭き取ることよりなる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:ポリアルキレンビグアナイド0.05~0.5質量%と、(B)成分:下記式(b)で表される第4級アンモニウム塩0.05~5質量%と、(C)成分:水70質量%以上と、を含有し、pH7~12である、抗菌又は抗ウイルス組成物。
【化1】
(式(b)中、R~Rのうちの1つ又は2つは、炭素数8~20のアルキル基又はアルケニル基であり、それ以外はそれぞれ独立に、-(CHCHO)H(mは分子中の平均エチレンオキサイド付加モルが1~5となる数)で表される基、炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基である。Zは、塩素イオン、アルキル基の炭素数が1~5のアルキル硫酸イオン又はプロピオン酸イオンである。)
【請求項2】
(D)成分:第2級アルコールエトキシレートをさらに含有する、請求項1に記載の抗菌又は抗ウイルス組成物。
【請求項3】
前記(A)成分/前記(B)成分で表される質量比が、0.01~10である、請求項1又は2に記載の抗菌又は抗ウイルス組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抗菌又は抗ウイルス組成物を処理対象物に接触させ、前記処理対象物に付着した前記抗菌又は抗ウイルス組成物の一部を拭き取る、抗菌又は抗ウイルス処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌又は抗ウイルス組成物及び抗菌又は抗ウイルス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
公衆衛生の分野において、細菌やウイルスによる感染症の予防が重要視されている。例えば病院や介護施設は、免疫力の低下した患者が集団生活を行うため感染症対策が重要となる。
細菌やウイルスは、感染者の唾液、排泄物や、それに触れた手を介して、手すり及びドアノブ等のコンタクトポイント、テーブル、床、トイレ、又は風呂等、幅広い箇所で伝播され得る。このため、共有設備においては、使用の都度、殺菌処理又はウイルスの不活化処理が行われている。
また、新型コロナウイルスのまん延防止策として、飲食店等では、テーブル、座席、パーテイション等の備品の殺菌処理又は殺ウイルス処理が行われている。殺菌処理又は殺ウイルス処理は、例えば、液体組成物を備品に吹き付け、これを拭き取る方法で行われる。
殺菌処理又は殺ウイルス処理に用いる組成物として、特定のポリアルキレンビグアナイドと特定の第4級アンモニウム塩とを含有するウイルス不活化組成物が提案されている(特許文献1)。特許文献1に記載の発明によれば、ウイルスの不活化効果の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-14551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、感染症対策においては、備品等に付着している細菌又はウイルスを不活化させる効果に加え、備品等に新たに付着した細菌又はウイルスを不活化できる効果(抗菌効果又は抗ウイルス効果)が求められる。抗菌処理又は抗ウイルス処理の対象物品(処理対象物品)は多様である。処理対象物品としては、例えば、疎水性材料であるアクリル板等のプラスチック板、親水性材料であるガラス板等が挙げられる。抗菌処理又は抗ウイルス処理を施す組成物(抗菌又は抗ウイルス組成物)には、多様な処理対象物品に対して抗菌効果又は抗ウイルス効果を付与することが求められる。加えて、抗菌又は抗ウイルス組成物には、抗菌処理又は抗ウイルス処理を施した後、処理対象物品における拭き残しが少ないことが求められる。
そこで、本発明は、処理対象物品における拭き残しが少なく、抗菌効果又は抗ウイルス効果に優れる抗菌又は抗ウイルス組成物を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定のポリアルキレンビグアナイドと特定の第4級アンモニウム塩とを併用し、これらを特定の含有量とすることで、処理対象物品における拭き残しが少なく、優れた抗菌効果又は抗ウイルス効果を発揮できることを見出した。
本発明は以下の態様を有する。
<1>
(A)成分:ポリアルキレンビグアナイド0.05~0.5質量%と、(B)成分:下記式(b)で表される第4級アンモニウム塩0.05~5質量%と、(C)成分:水70質量%以上と、を含有し、pH7~12である、抗菌又は抗ウイルス組成物。
【化1】
(式(b)中、R~Rのうちの1つ又は2つは、炭素数8~20のアルキル基又はアルケニル基であり、それ以外はそれぞれ独立に、-(CHCHO)H(mは分子中の平均エチレンオキサイド付加モルが1~5となる数)で表される基、炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基である。Zは、塩素イオン、アルキル基の炭素数が1~5のアルキル硫酸イオン又はプロピオン酸イオンである。)
<2>
(D)成分:第2級アルコールエトキシレートをさらに含有する、<1>に記載の抗菌又は抗ウイルス組成物。
<3>
前記(A)成分/前記(B)成分で表される質量比が、0.01~10である、<1>又は<2>に記載の抗菌又は抗ウイルス組成物。
【0006】
<4>
<1>~<3>のいずれかに記載の抗菌又は抗ウイルス組成物を処理対象物に接触させ、前記処理対象物に付着した前記抗菌又は抗ウイルス組成物の一部を拭き取る、抗菌又は抗ウイルス処理方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の抗菌又は抗ウイルス組成物によれば、処理対象物品における拭き残しが少なく、抗菌効果又は抗ウイルス効果に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(抗菌又は抗ウイルス組成物)
本発明の抗菌又は抗ウイルス組成物は、(A)成分:ポリアルキレンビグアナイドと、(B)成分:特定の第4級アンモニウム塩と、(C)成分:水と、を含有する液体組成物である。
【0009】
抗菌又は抗ウイルス組成物のpHは、7~12であり、8~12が好ましく、10~12がより好ましい。pHが上記下限値以上であれば、抗菌効果又は抗ウイルス効果をより高められる。pHが上記上限値以下であれば、処理対象物品の変性をより抑制できる。pHは、測定対象を25℃とし、pHメーター(製品名:HM-30G、東亜ディーケーケー株式会社製)により測定される値である。
【0010】
抗菌又は抗ウイルス組成物の粘度は、特に限定されず、抗菌又は抗ウイルス組成物を有する製品形態に応じて適宜決定される。抗菌又は抗ウイルス組成物の粘度は、例えば、20mPa・s以下が好ましく、10mPa・s以下がより好ましい。粘度が上記上限値以下であれば、処理対象物品に塗布した際により容易に塗り広げられ、拭き残りをより低減できる。粘度の下限値は、特に限定されないが、実質的に1mPa・s以上が好ましい。粘度は、300mLトールビーカー内の25℃の抗菌又は抗ウイルス組成物を、BII型粘度計(TOKI SANGYO社製で測定した値である。
【0011】
<(A)成分>
(A)成分は、ポリアルキレンビグアナイドである。抗菌又は抗ウイルス組成物は、(A)成分を含有することで、抗菌効果又は抗ウイルス効果を発揮する。
【0012】
(A)成分としては、下記式(a)で表される化合物が挙げられる。
【0013】
-[R11-NH-C(NH)-NH-C(NH)-NH]- n・HY ・・・(a)
【0014】
式(a)中、R11は炭素数2~8のアルキレン基である。R11の炭素数は4~8が好ましく、R11はヘキサメチレン基がより好ましい。
nは2~14である。nは、10~14が好ましく、11~13がより好ましく、12がさらに好ましい。
HYは有機酸又は無機酸である。HYは、塩酸、グルコン酸、酢酸が好ましく、塩酸がより好ましい。
【0015】
(A)成分としては、式(a)において、R11がヘキサメチレン基であり、nが10~14である化合物が好ましい。(A)成分としては、R11がヘキサメチレン基でありnが11~13であるポリヘキサメチレンビグアニド塩酸塩がより好ましい。
【0016】
ポリヘキサメチレンビグアニド抗菌剤としては、市販のものを用いることができる。市販の(A)成分としては、式(a)において、R11がヘキサメチレン基であり、nが12であり、HYが塩酸である、ポリ(ヘキサメチレンビグアニド)塩酸塩(商品名Proxel IB(登録商標))が挙げられる。
(A)成分は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0017】
(A)成分の含有量は、抗菌又は抗ウイルス組成物の総質量に対し、0.05~0.5質量%であり、0.05~0.3質量%が好ましく、0.1~0.3質量%がより好ましい。(A)成分の含有量が上記下限値以上であれば、抗菌効果又は抗ウイルス効果をより高められる。(A)成分の含有量が上記上限値以下であれば、拭き残しをより低減できる。
【0018】
<(B)成分>
(B)成分は、特定の第4級アンモニウム塩である。抗菌又は抗ウイルス組成物は、(B)成分を含有することで、抗菌効果又は抗ウイルス効果を発揮する。加えて、抗菌又は抗ウイルス組成物は、(A)成分と(B)成分とを併用することで、多様な材質において、抗菌効果又は抗ウイルス効果を発揮する。
【0019】
(B)成分は、下記式(b)で表される。
【0020】
【化2】
【0021】
(式(b)中、R~Rのうちの1つ又は2つは、炭素数8~20のアルキル基又はアルケニル基であり、それ以外はそれぞれ独立に、-(CHCHO)H(mは分子中の平均エチレンオキサイド付加モルが1~5となる数)で表される基、炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基である。Zは、塩素イオン、アルキル基の炭素数が1~5のアルキル硫酸イオン又はプロピオン酸イオンである。)
【0022】
~Rのうち、炭素数8~20のアルキル基又はアルケニル基の数は、2つが好ましい。
~Rのうちの炭素数8~20のアルキル基又はアルケニル基の炭素数は、10~18が好ましく、10~12がより好ましい。
~Rのうちの炭素数8~20のアルキル基又はアルケニル基は、直鎖でもよく、分岐鎖でもよい。
~Rのうちの炭素数8~20のアルキル基又はアルケニル基は、アルキル基が好ましい。
【0023】
~Rのうち、炭素数8~20のアルキル基又はアルケニル基以外の基の少なくとも1つは、炭素数1~3のアルキル基が好ましい。
~Rのうち、-(CHCHO)Hのmは、1~5が好ましい。
【0024】
耐腐食性の観点から、Zは、アルキル基の炭素数が1~5のアルキル硫酸イオン又はプロピオン酸イオンが好ましく、アルキル基の炭素数が1~5のアルキル硫酸イオンがより好ましい。これらのZであれば、抗菌又は抗ウイルス組成物を金属に使用した場合に、金属の腐食をより良好に防止できる。
また、抗菌効果又は抗ウイルス効果の観点から、Zは、アルキル基の炭素数が1~5のアルキル硫酸イオン又は塩素イオンが好ましい。
【0025】
抗菌効果又は抗ウイルス効果の観点から、好ましい(B)成分としては、式(b)におけるR~Rのうちの1~2が炭素数8~20のアルキル基又はアルケニル基であり、残りの2つがそれぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基であり、Zがアルキル硫酸イオン又は塩素イオンである化合物が挙げられる。
また、耐腐食性の観点から、好ましい(B)成分としては、式(b)におけるR~Rのうちの1~2が炭素数8~20のアルキル基であり、残りがそれぞれ独立に炭素数1~3のアルキル基であり、Zがアルキル硫酸イオン又は-(CHCHO)Hである化合物が挙げられる。
【0026】
(B)成分としては、例えば、ジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート、ジデシルジメチルアンモニウムエチルサルフェート、ジデシルメチルポリオキシエチルアンモニウムプロピオネート、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、オクチルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド等が好ましく、ジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート、ジデシルジメチルアンモニウムエチルサルフェート、ジデシルメチルポリオキシエチルアンモニウムプロピオネート、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムメチルサルフェートがより好ましく、ジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート、ジデシルジメチルアンモニウムエチルサルフェート、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムメチルサルフェートがさらに好ましい。
【0027】
これらの(B)成分は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0028】
(B)成分の含有量は、抗菌又は抗ウイルス組成物の総質量に対し、0.05~5質量%であり、0.1~5質量%が好ましく、0.1~3質量%がさらに好ましい。(B)成分の含有量が上記下限値以上であれば、抗菌効果又は抗ウイルス効果をより高められる。(B)成分の含有量が上記上限値以下であれば、拭き残しをより低減できる。
【0029】
(A)成分/(B)成分で表される質量比(A/B比)は、0.01~10が好ましく、0.1~5がより好ましく、0.1~3がさらに好ましい。A/B比が上記下限値以上であれば、親水性の表面への吸着がより高まり、抗菌効果又は抗ウイルス効果をより高められる。A/B比が上記上限値以下であれば、疎水性の表面への吸着がより高まり、抗菌効果又は抗ウイルス効果をより高められる。
【0030】
<(C)成分>
(C)成分は、水である。抗菌又は抗ウイルス組成物は、(C)成分を含有することで、処理対象物品の表面に良好に塗り広げられる。
【0031】
(C)成分としては、水道水、井戸水、イオン交換水、純水等、いずれでもよい。
(C)成分の含有量は、抗菌又は抗ウイルス組成物の総質量に対して、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。(C)成分の含有量が上記下限値以上であれば、抗菌又は抗ウイルス組成物の粘度を低減して、抗菌又は抗ウイルス組成物を処理対象物品の表面により良好に塗り広げられる。
(C)成分の含有量の上限は、(A)~(B)成分及び後述の任意成分の合計量を100質量%から減じた値である。
【0032】
<任意成分>
抗菌又は抗ウイルス組成物は、(A)~(C)成分以外の任意成分を含有してもよい。
任意成分としては、特定のノニオン界面活性剤((D)成分)、(B)成分及び(D)成分を除く界面活性剤(任意界面活性剤)、水混和性有機溶媒、ハイドロトロープ剤、金属封鎖剤、色素、香料、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤、増粘剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0033】
(D)成分は、第2級アルコールにエチレンオキシドを付加した第2級アルコールエトキシレートである。抗菌又は抗ウイルス組成物は、(D)成分を含有することで、処理対象物品の表面をより清浄化し、抗菌効果又は抗ウイルス効果をより高められる。加えて、抗菌又は抗ウイルス組成物は、第2級アルコールエトキシレートを(D)成分として含有することで、汚れに対する浸透速度をより高め、使用時の泡立ちをより抑制できる。
第2級アルコールエトキシレートは、下記式(d)で表される。
21-O-(EO)-H …(d)
式(d)において、R21は第2級アルコール由来のアルキル基であり、qはEO(エチレンオキシ基)の平均繰り返し数である。
21の炭素数は、8~22が好ましく、10~20がより好ましく、10~18がさらに好ましい。
qは1~30が好ましく、2~25がより好ましく、3~20がさらに好ましく、4~15が特に好ましい。
これらの(D)成分は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0034】
(D)成分の含有量は、抗菌又は抗ウイルス組成物の総質量に対して、0.05~5質量%が好ましく、0.1~3質量%がより好ましく、0.1~2質量%がさらに好ましい。(D)成分の含有量が上記下限値以上であれば、処理対象物品の表面をより清浄化して、抗菌効果又は抗ウイルス効果をより高められる。(D)成分の含有量が上記上限値以下であれば、拭き残しをより低減できる。
【0035】
任意界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤(但し、(D)成分を除く)、両性界面活性剤、半極性界面活性剤が挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、例えば、以下に示すものが挙げられる。
・炭素数10~20のα-オレフィンスルホン酸塩(AOS)。
・炭素数10~20のアルキル硫酸塩又はアルケニル硫酸塩(AS)。
・炭素数8~18のアルキル基を有する直鎖状又は分岐鎖状のアルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS、ABS)。
・炭素数10~20のアルカンスルホン酸塩(SAS)。
・炭素数10~20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はアルケニル基を有し、平均付加モル数が10モル以下のエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド又はこれらの混合物を付加した、アルキルエーテル硫酸塩又はアルケニルエーテル硫酸塩(AES)。
・炭素数10~20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基又はアルケニル基を有し、平均付加モル数が10モル以下のエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド又はこれらの混合物を付加した、アルキルエーテルカルボン酸塩又はアルケニルエーテルカルボン酸塩。
・炭素数10~20のアルキルグリセリルエーテルスルホン酸等のアルキル多価アルコールエーテル硫酸塩。
・炭素数10~20の高級脂肪酸塩(石鹸)。
・α-スルホ脂肪酸塩又はそのエステル塩。好ましくは、炭素数8~20(好ましくは12~18)の飽和若しくは不飽和のα-スルホ脂肪酸塩又はそのエステル塩(好ましくは、メチルエステル塩(MES)、エチルエステル塩若しくはプロピルエステル塩)。
【0036】
ノニオン界面活性剤は、例えば、以下に示すものが挙げられる。
・炭素数6~22、好ましくは8~18の脂肪族アルコールに、炭素数2~4のアルキレンオキサイドを平均3~30モル、好ましくは平均5~20モル、特に好ましくは平均12~18モル付加したポリオキシアルキレンアルキルエーテル、又はポリオキシアルキレンアルケニルエーテル(アルコールアルコキシレート)。この中では、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルケニルエーテルが好適である。
ここで使用される脂肪族アルコールとしては、第1級アルコールが挙げられる。脂肪族アルコールのアルキル基は、分岐鎖を有していてもよい。
【0037】
両性界面活性剤としては、長鎖(好ましくは炭素数8以上)炭化水素基を1個又は2個有するスルホベタイン、カルボキシベタインが挙げられる。
長鎖炭化水素基は、エステル基、アミド基又はエーテル基を含んでいてもよい。また、長鎖炭化水素基は、1鎖型であってもよく、2鎖型であってもよい。また、長鎖炭化水素基における飽和型/不飽和型の割合、炭素鎖長の分布、不飽和基のシス体/トランス体の比率等は、特に限定されるものではない。また、長鎖炭化水素基は、前述のカチオン界面活性剤の製造原料である脂肪酸あるいは脂肪酸メチルエステルから誘導されるものであってもよい。
両性界面活性剤としては、例えば、N,N-ジアシルオキシエチル-N-メチルアンモニオエチルサルフェート、N,N-ジアシルオキシエチル-N-メチルアンモニオエチルカルボキシレート等のベタイン類;N-アシルオキシエチル-N-ヒドロキシエチル-N-メチルアンモニオベタイン類、N-アシルアミドプロピル-N,N-ジメチルアンモニオベタイン類、N-アシルアミドプロピル-N,N’-ジメチル-N’-β-ヒドロキシプロピルアンモニオベタイン等が挙げられる。
両性界面活性剤には、その窒素原子が4級化されてない化合物、原料であるアルカノールアミン、その中和物、又はその4級化物等のアミノベタインが含まれていてもよい。
【0038】
任意界面活性剤における塩の形態は、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の塩、アルカノールアミン塩、アンモニウム塩が挙げられ、これらが混在していてもよい。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。任意界面活性剤の塩としては、アルカリ金属の塩が好ましい。
これらの任意界面活性剤は、1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0039】
界面活性剤の総量((B)成分及び(D)成分を含む)は、抗菌又は抗ウイルス組成物の総質量に対し、0.1~10質量%が好ましく、0.2~3質量%がより好ましく、0.2~5質量%がさらに好ましい。界面活性剤の総量が上記下限値以上であれば、処理対象物品の表面をより清浄化して、抗菌効果又は抗ウイルス効果をより高められる。界面活性剤の総量が上記上限値以下であれば、拭き残しをより低減できる。
【0040】
水混和性有機溶媒は、25℃のイオン交換水1Lに50g以上溶解する有機溶媒である。抗菌又は抗ウイルス組成物は、水混和性有機溶剤を含有することで、粘度を低減し、又は泡立ちを抑制できる。
水混和性有機溶媒としては、例えば、炭素数2~4の一価アルコール、炭素数2~4の多価アルコール、グリコールエーテル系溶剤等が挙げられる。
炭素数2~4の一価アルコールとしては、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール等が挙げられる。
炭素数2~4の多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、平均分子量約200~5000のポリエチレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
グリコールエーテル系溶剤としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ダイセル社製セルトールEDGAC(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート)等が挙げられる。
【0041】
水混和性有機溶媒の含有量は、抗菌又は抗ウイルス組成物の総質量に対し、0.1~10質量%が好ましく0.1~5質量%がより好ましい。水混和性有機溶媒の含有量が上記下限値以上であれば、抗菌又は抗ウイルス組成物の粘度が高い場合には粘度を低減することができる。また、使用時の泡立ちをより抑制し、処理対象物品の表面をより早く乾燥させることができる。水混和性有機溶媒の含有量が上記上限値以下であれば、原料コストを低減できる。
【0042】
ハイドロトロープ剤としては、パラトルエンスルホン酸、クメントルエンスルホン酸等が挙げられる。
【0043】
金属封鎖剤としては、メチルグリシンジ酢酸三ナトリウム等のアミノカルボン酸塩、クエン酸等の有機酸等が挙げられる。
【0044】
pH調整剤としては、硫酸、塩酸等の酸、水酸化ナトリウム等の塩基が挙げられる。
【0045】
(製造方法)
抗菌又は抗ウイルス組成物の製造方法としては、例えば、上述した(A)成分~(C)成分と、必要に応じて任意成分とを混合する方法が挙げられる。
各成分を混合する方法としては、例えば、(C)成分の一部に、(A)成分及び(B)成分と、必要に応じて任意成分とを加えて混合した後、(C)成分の残部を加えて全体量を100質量%とする方法が挙げられる。また、各成分を混合する方法としては、全体量が100質量%となるように、(C)成分の全部に、残りの成分を全て加えて混合してもよい。
【0046】
本発明の抗菌又は抗ウイルス組成物は、いわゆるクリーナーであり、種々の製品形態を採り得る。
抗菌又は抗ウイルス組成物は、そのまま容器に収容されて容器入り物品とされてもよい。容器入り物品の容器としては、例えば、スプレー容器やスクイズ容器等の吐出容器が挙げられる。
スプレー容器としては、エアゾールスプレー容器、トリガースプレー容器(直圧型又は蓄圧型)、ディスペンサースプレー容器等が挙げられる。これらの容器は、手動式のものでもよいし、電動式のものでもよい。エアゾールスプレー容器としては、例えば、特開平9-3441公報、特開平9-58765号公報等に記載されているものが挙げられる。
トリガースプレー容器としては、例えば、特開平9-268473号公報、特開平10-76196号公報等に記載のものが挙げられる。蓄圧式のトリガースプレー容器としては、例えば、特開2013-154276号公報等に記載のものが挙げられる。ディスペンサースプレー容器としては、例えば、特開平9-256272号公報等に記載のものが挙げられる。
【0047】
また、抗菌又は抗ウイルス組成物は、織布又は不織布に浸漬されて、シート状クリーナーとされてもよい。
【0048】
(使用方法)
抗菌又は抗ウイルス組成物の使用方法(即ち、抗菌又は抗ウイルス処理方法)は、抗菌又は抗ウイルス組成物を処理対象物品に接触させ(接触操作)た後、処理対象物品に付着している抗菌又は抗ウイルス組成物の一部を汚れ等とともに拭き取る(払拭操作)方法が好ましい。
処理対象物品は、建築物の設備、居室空間の備品等が挙げられる。建築物の設備としては、家屋等の床、壁、ドア、ドアノブ、手すり、便器、浴室等が挙げられる。備品としては、テーブル、椅子、パーテイション等が挙げられる。
処理対象物品の表面は、疎水性でもよいし、親水性でもよい。疎水性の素材としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル等の樹脂、人工皮革等が挙げられる。親水性の素材としては、ガラス、タイル、金属、木等が挙げられる。
本発明の抗菌又は抗ウイルス組成物の処理対象物品としては、いわゆる硬質表面を有する物品が好ましい。硬質表面としては、ガラス、プラスチック、陶磁器、金属、木等が挙げられる。
【0049】
抗菌又は抗ウイルス組成物を対象物品に接触させる方法は、例えば、液状で塗布する方法、霧状又は泡状で吹き付ける方法が挙げられる。また、シート状クリーナーのように、抗菌又は抗ウイルス組成物を浸漬した織布又は不織布で、処理対象物品を拭く方法が挙げられる。
【0050】
抗菌又は抗ウイルス組成物を汚れ等と共に拭き取る方法としては、例えば、雑巾、モップ、ブラシ等の器具で拭き取る方法が挙げられる。なお、シート状クリーナーを用いる場合、接触操作が払拭操作を兼ねてもよい。
【0051】
こうして、接触操作と払拭操作とを行うことで、処理対象物品に抗菌効果又は抗ウイルス効果を付与できる。
【0052】
上述の通り、本発明の抗菌又は抗ウイルス組成物は、(A)成分と(B)成分とを併用するため、疎水性の物品及び親水性の物品のいずれにも抗菌性又は抗ウイルス性を付与できる。加えて、本発明の抗菌又は抗ウイルス組成物は、(A)成分及び(B)成分を特定量含有するため、抗菌効果又は抗ウイルス効果を付与し、かつ拭き残しを低減できる。
【実施例0053】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0054】
(使用原料)
<(A)成分>
・A-1:ポリヘキサメチレンビグアニド塩酸塩(商品名「Proxel IB」、ロンザジャパン製)。
【0055】
<(B)成分>
・B-1:ジデシルジメチルアンモニウムメチルサルフェート(商品名「リポカード210-80MSPG」、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製)、式(b)中のR~Rのうちの2つが炭素数10のアルキル基であり、残りの2つがメチル基であり、Zがメチル硫酸イオンである化合物)。
・B-2:ジデシルジメチルアンモニウムエチルサルフェート、式(b)中のR~Rのうちの2つが炭素数10のアルキル基であり、残りの2つがメチル基であり、Zがエチル硫酸イオンである化合物)。
・B-3:ジデシルメチルポリオキシエチルアンモニウムプロピオネート(商品名「Bardap26」、ロンザジャパン社製)、式(b)中のR~Rのうちの2つが炭素数10のアルキル基であり、他の1つがメチル基であり、残りの1つが-(CHCHO)Hで表される基であり、Zがプロピオン酸イオンである化合物)。
・B-4:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート(商品名「リポカード16-30MSK」、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製)。
・B-5:オクチルベンジルジメチルアンモニウムクロライド(商品名「カチオンG-50」、三洋化成工業製)、式(b)中のR~Rのうちの1つが炭素数8のアルキル基であり、他の1つがベンジル基であり、残りの2つがメチル基であり、Zが塩素イオンである化合物)。
・B-6:ジデシルジメチルアンモニウムクロライド(商品名「リポカード210-80E」、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製)。
【0056】
<(C)成分>
・イオン交換水。表中の「残部」とは、(C)成分と(C)成分以外の成分との合計(抗菌又は抗ウイルス組成物の総量)が100質量%となるのに必要な量である。
【0057】
<(D)成分>
・D-1:第2級アルコールエトキシレート(商品名「ソフタノール50」、日本触媒社製、式(d)中のR21の炭素数12~14、q=5)。
・D-2:第2級アルコールエトキシレート(商品名「ソフタノール120」、日本触媒社製、式(b)中のR21の炭素数12~14、q=12)。
【0058】
<任意成分>
・両性界面活性剤:ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(商品名「エナジーコールL-30B」、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、表中はベタインと記載)。
・アニオン界面活性剤:直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(商品名「ライポンLS-250」、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製、表中はLAS-Naと記載)。
・水混和性有機溶媒:ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルジグリコール、日本乳化剤社製、表中はBDGと記載)。
・金属封鎖剤:メチルグリシンジ酢酸三ナトリウム(商品名「Trilon M Max Liq」、BASF社製、表中はMGDAと記載)。
・クエン酸Na:クエン酸3ナトリウム2水和物(商品名「精製クエン酸ナトリウム」、扶桑化学製)。
・pH調整剤:水酸化ナトリウム(試薬特級、和光純薬工業製)又は硫酸(試薬一級、和光純薬工業製)。表中の「適量」とは、抗菌又は抗ウイルス組成物を表中のpHとするのに要した量である。
【0059】
(評価方法)
<洗浄力>
下記の油汚れとタンパク質汚れを混合したものを用いた。
・油汚れ:JIS K 3362(合成洗剤試験方法)の台所用合成洗剤の洗浄力評価方法記載のモデル汚れ。
・タンパク質汚れ:ヒツジ血液(羊血液(クエン酸ナトリウム)4℃、フナコシ社製)。
油汚れとタンパク質汚れとを1/1(質量比)で混合後、50mm角のガラス板と50mm角のアクリル板とのそれぞれに20μL滴下し、乾燥させて試験片とした。
各例の抗菌又は抗ウイルス組成物を霧吹きで、20cmの高さから試験片に1スプレー(1mL)し、30秒以内に綿布で1往復拭き取った。拭き取り後の24時間後に試験片を目視で観察し、下記の評価基準で洗浄力を評価した。
【0060】
≪評価基準≫
5:汚れが大部分落ちている。
4:汚れがかなり落ちている。
3:汚れが半分程度落ちている。
2:汚れがやや落ちている。
1:汚れがはっきり残っている。
【0061】
<拭き取り後の抗ウイルス性>
<洗浄力>の評価と同様に試験片を作成した。各例の抗菌又は抗ウイルス組成物を霧吹きで、20cm離れた位置から試験片に1スプレー(1mL)し、30秒以内に綿布で1往復拭き取った。拭き取り後の24時間後に、試験片に試験ウイルス液400μLを滴下し、その上を40mm角のフィルムで被覆して、疑似汚染片とした。試験片に代えて、無処理(各例の抗菌又は抗ウイルス組成物を接触させていないもの)のガラス板及びアクリル板を用いた以外は同様にして、対照の疑似汚染片を得た。
試験ウイルス液は、ネコカリシウイルス(Feline calicivirus、ATCC VR-782)液と、6g/L牛血清アルブミン水溶液(BSA Fraction V Bovine Albumin Fraction V solution 7.5%、gibco)を1:1で混合したものである。
【0062】
疑似汚染片を作製した4時間後に、各疑似汚染片をストマッカー袋に入れ、これにイーグル最小必須培地MEM(E-MEM、SIGMA社)を10mL加え、ウイルスを洗い出して、試料とした。ストマッカー内の試料をE-MEMで10倍ずつ段階希釈をした。
96穴ウエルプレートで、10%牛胎児血清(FBS、SIGMA社)E-MEMを用いてCRFK細胞を単層培養し、次いで、ウエル内の培養液を除去した。培養液を除去した各ウエルに、段階希釈をした試料100μLを接種し、ネコカリシウイルスとCRFK細胞とを接触させ、COインキュベーターにて37℃で3~5日間培養した。
CRFK細胞には、ネコ腎臓細胞(CRFK:Crandell-Reese Feline Kidney、ATCC CCL-94)を用いた。
【0063】
培養後に、実体顕微鏡にてウエル内を観察し、下記式(s1)で感染価(50%組織培養感染値量、50%tissue culture infective dose、TCID50)を求めた。TCID50はBehrens・Karber法に従った。
【0064】
感染価=log TCID50=log(1列目の希釈度)-(各希釈列における(変性ウエル数/全ウエル数)の総和-0.5)×log(希釈率) ・・・(s1)
【0065】
対照のウイルス感染価と比較して、下記式(s2)で抗ウイルス価を算出した。得られた抗ウイルス価を下記評価基準に分類し、拭き取り後の抗ウイルス性を評価した。
【0066】
抗ウイルス価=対照のウイルス感染価-各評価サンプルのウイルス感染価 ・・・(s2)
【0067】
≪評価基準≫
◎:抗ウイルス価が3.0以上。
○:抗ウイルス価が2.0以上3.0未満。
△:抗ウイルス価が1.0以上2.0未満。
×:抗ウイルス価が1.0未満。
【0068】
<拭き残り>
1mの透明アクリル板全体に、20cm離れた位置から霧吹きで、各例の抗菌又は抗ウイルス組成物を10回スプレーした(1mL/スプレー)。スプレーした(接触操作)後、30秒以内に綿布(15cm×15cm)で、1回拭いた(払拭操作)。
払拭操作の1時間後、素手で表面を触った時のべたつきの程度と、目視でのアクリル板の外観の観察結果と、を下記評価基準に従って評価した。
【0069】
≪評価基準≫
〇:べたつかなく、外観が透明のままである。
△:ややべたつくか、または、白化して透明度がやや劣る。
×:明らかにべたつくか、または、白化して透明度が明らかに劣る。
【0070】
(実施例1~9、比較例1~7)
表1~2に示す組成に従い、(A)成分、(B)成分、(D)成分及び任意成分を(C)成分に加え、混合して各例の抗菌又は抗ウイルス組成物を調製した。
なお、表中の配合量は純分換算値である。また、表中に配合量が記載されていない成分は、配合されていない。
各例の液体洗浄剤について、洗浄力、抗ウイルス価及び拭き残りの評価をし、その結果を表中に示す。
なお、抗ウイルス効果は、抗菌効果に比べて発現しにくい。このため、抗ウイルス価が高い抗菌又は抗ウイルス組成物は、抗菌効果も高いと判断できる。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
表1~2に、実施例及び比較例の結果を示す。
本発明を適用した実施例1~9は、抗ウイルス価が2.0~4.3であり、拭き残りの評価が「△」又は「〇」であった。
(A)成分の含有量が本願発明の下限値未満である比較例1は、ガラスに対する抗ウイルス価が1.5であった。
(B)成分の含有量が本願発明の下限値未満である比較例2は、ガラスに対する抗ウイルス価が1.5、アクリルに対する抗ウイルス効果が1.0であった。
(A)成分の含有量が本願発明の上限値超である比較例3は、拭き取りの評価が「×」であった。
(B)成分の含有量が本願発明の上限値超である比較例4は、拭き取りの評価が「×」であった。
pHが4である比較例5は、ガラスに対する抗ウイルス価及びアクリルに対する抗ウイルス価がいずれも1.5であった。
(B)成分に代えて、他の界面活性剤を配合した比較例6~7は、ガラスに対する抗ウイルス価及びアクリルに対する抗ウイルス効果が1.5であった。
以上の結果から、本発明を適用することで、処理対象物品における拭き残しが少なく、優れた抗菌効果又は抗ウイルス効果を発揮することが確認された。