(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067153
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】作業機械を制御するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20230509BHJP
E02F 9/24 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
E02F9/20 Q
E02F9/20 H
E02F9/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178165
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺村 晃彦
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB01
2D003BA06
2D003BA07
2D003BB12
2D015GA03
2D015GB04
2D015GB06
2D015GB07
(57)【要約】
【課題】計算処理の負荷を軽減し、作業機械を適切に制御すること。
【解決手段】下部走行体2と、下部走行体2に対して旋回可能な上部旋回体3とを備える作業機械1の制御システム500は、作業機械1の周辺に存在する対象物を検出する検出装置200と、走行体の走行モードを設定するための走行速度設定装置10Sと、下部走行体2の動作を制御するコントローラ300とを備える。コントローラ300は、走行速度設定装置10Sからの信号に基づいて、設定された走行モードを判定し、判定した前記走行モードに基づいて、下部走行体停止領域を設定し、検出装置200によって検出された対象物の位置と下部走行体停止領域とに基づいて下部走行体2の動作を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、前記走行体に対して旋回可能な旋回体とを備える作業機械を制御するためのシステムであって、
前記作業機械の周辺に存在する対象物を検出する検出装置と、
前記走行体の走行モードを設定するための走行速度設定装置と、
前記作業機械の前記走行体の動作を制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記走行速度設定装置からの信号に基づいて、設定された走行モードを判定し、
判定した前記走行モードに基づいて、第1設定領域を設定し、
前記検出装置によって検出された前記対象物の位置と前記第1設定領域とに基づいて前記走行体の動作を制御する、
システム。
【請求項2】
前記走行モードは、前記作業機械の走行速度を所定の速度以下に制限する低速モードと制限しない高速モードとを含み、
前記コントローラは、
前記走行モードが低速モードに設定されたと判定した場合、第1範囲を前記第1設定領域として設定し、
前記走行モードが高速モードに設定されたと判定した場合、前記第1範囲より広い第2範囲を前記第1設定領域として設定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1設定領域と異なり、前記第1設定領域より広い第3設定領域を備え、
前記コントローラは、
前記走行モードが前記低速モードに設定されたと判定した場合、第3範囲を前記第3設定領域として設定し、
前記走行モードが前記高速モードに設定されたと判定した場合、前記第3範囲より広い第4範囲を前記第3設定領域として設定し、
前記検出装置によって検出された前記対象物の位置と、前記第3設定領域とに基づいて前記走行体を減速するよう制御する、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記検出装置は、前記旋回体に取り付けられ、
前記第1設定領域は、前記旋回体を基準とする座標系に設定され、
前記検出装置は、前記旋回体を基準とする座標系における前記対象物の位置を検出し、
前記コントローラは、前記検出装置によって検出された前記対象物の位置が前記第1設定領域内に存在すると判定した場合、前記走行体の速度を制限するよう制御する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1設定領域は、外周の形状の少なくとも一部が前記旋回体を基準とする座標系の原点を中心とする円弧形状である、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
走行体と、前記走行体に対して旋回可能な旋回体とを備える作業機械を制御するための方法であって、
検出装置によって、前記作業機械の周辺に存在する対象物を検出することと、
走行速度設定装置からの信号に基づいて設定された走行モードを判定することと、
判定した前記走行モードに基づいて、第1設定領域を設定することと、
前記検出装置で検出された前記対象物の位置と前記第1設定領域とに基づいて前記走行体の動作を制御する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械を制御するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械に係る技術分野において、特許文献に開示されているような、作業機械の周辺の障害物を検知する安全装置を備える作業機械が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、下部走行体の走行を制御するための制御領域を有し、制御領域の内側に障害物が存在すると判定された場合、安全動作指令を出力する。
【0005】
ところで、作業機械は、様々な走行速度で走行することができるため、走行速度に応じて制動距離は変化する。具体的には、走行速度が速くなるにつれて制動距離は長くなる。このため、走行速度に応じた制御領域を設定しておくのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係るシステムは、走行体と、走行体に対して旋回可能な旋回体とを備える作業機械を制御するためのシステムである。本形態に係るシステムは、作業機械の周辺に存在する対象物を検出する検出装置と、走行体の走行モードを設定するための走行速度設定装置と、作業機械の走行体の動作を制御するコントローラとを備える。コントローラは、走行速度設定装置からの信号に基づいて、設定された走行モードを判定する。コントローラは、判定した走行モードに基づいて、第1設定領域を設定する。コントローラは、検出装置によって検出された対象物の位置と第1設定領域とに基づいて走行体の動作を制御する。
【0007】
本開示の第2の態様に係る方法は、走行体と、走行体に対して旋回可能な旋回体とを備える作業機械の制御方法である。本形態に係る方法は、以下の処理を備える。第1の処理は、旋回体に取り付けられた検出装置によって、作業機械の周辺に存在する対象物を検出することである。第2の処理は、走行速度設定装置からの信号に基づいて設定された走行モードを判定することである。第3の処理は、判定した走行モードに基づいて、第1設定領域を設定することである。第4の処理は、検出装置で検出された対象物の位置と第1設定領域とに基づいて走行体の動作を制御することである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、作業機械の走行速度に応じて、作業機械を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る作業機械を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る作業機械の装置構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る制御システムを示す機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る上部旋回体を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、上部旋回体領域及び下部走行体領域の一例を示す概略図である。
【
図6】
図6は、上部旋回体が旋回した状態における、
図5に示す上部旋回体領域及び下部走行体領域を示す概略図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る制御方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態に係るコンピュータシステムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示はこれに限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0011】
[作業機械]
図1は、実施形態に係る作業機械を示す斜視図である。
図2は、
図1に示した作業機械の装置構成を示すブロック図である。実施形態においては、作業機械1は、油圧ショベルとする。以下の説明においては、作業機械1を適宜、油圧ショベル1と称する。油圧ショベル1は、下部走行体2と、下部走行体2に対して旋回可能な上部旋回体3とを備える。本実施形態では、油圧ショベル1は、下部走行体2と、下部走行体2に対して旋回可能に支持される上部旋回体3と、上部旋回体3に支持される作業機4を備える。
【0012】
下部走行体2は、一対の履帯を有する。下部走行体2は、
図2に示す右走行モータ15Rと左走行モータ15Lを備える。下部走行体2は、右走行モータ15Rと左走行モータ15Lの回転駆動によって履帯を回転させ油圧ショベル1を走行させる。
【0013】
上部旋回体3は、下部走行体2に対して旋回軸RXを中心に旋回可能である。油圧ショベル1は、上部旋回体3を旋回させるための旋回モータ16を備える。上部旋回体3は、旋回モータ16の回転力により旋回される。上部旋回体3は、油圧ショベル1のオペレータが搭乗する運転室6を有する。運転室6には、オペレータが着座する運転シート9が配置される。運転室6は、上部旋回体3の前方に配置される。運転室6は、作業機4の左方に配置される。
【0014】
作業機4は、上部旋回体3に連結されるブーム4Aと、ブーム4Aに連結されるアーム4Bと、アーム4Bに連結されるバケット4Cとを含む。油圧ショベル1は、作業機4を駆動するための油圧シリンダ5を備える。油圧シリンダ5は、ブーム4Aを駆動するブームシリンダ5Aと、アーム4Bを駆動するアームシリンダ5Bと、バケット4Cを駆動するバケットシリンダ5Cとを含む。
【0015】
ブーム4Aは、ブーム回転軸AXを中心に回転可能に上部旋回体3に支持される。アーム4Bは、アーム回転軸BXを中心に回転可能にブーム4Aに支持される。バケット4Cは、バケット回転軸CXを中心に回転可能にアーム4Bに支持される。
【0016】
ブーム回転軸AXと、アーム回転軸BXと、バケット回転軸CXとは、平行である。ブーム回転軸AX、アーム回転軸BX、及びバケット回転軸CXと、旋回軸RXと平行な軸とは、直交する。以下の説明においては、旋回軸RXと平行な方向を適宜、上下方向、と称し、ブーム回転軸AX、アーム回転軸BX、及びバケット回転軸CXと平行な方向を適宜、左右方向、と称し、ブーム回転軸AX、アーム回転軸BX、及びバケット回転軸CXと旋回軸RXとの両方と直交する方向を適宜、前後方向、と称する。運転シート9に着座したオペレータを基準として作業機4が存在する方向が前方であり、前方の逆方向が後方である。運転シート9に着座したオペレータを基準として左右方向の一方が右方であり、右方の逆方向が左方である。下部走行体2の接地面から離れる方向が上方であり、上方の逆方向が下方である。
【0017】
図2に示すように、油圧ショベル1は、動力源17、油圧ポンプ18、制御弁19、操作装置10、検出装置200、及びコントローラ300を有する。
【0018】
動力源17は、油圧ショベル1を駆動させるための動力を発生する。動力源17は、例えば、内燃機関である。動力源17の駆動軸には、油圧ポンプ18が機械的に連結されている。動力源17が駆動することで、油圧ポンプ18が駆動する。油圧ポンプ18が油圧駆動系への作動油供給源となってこれらの油圧機器を駆動する。なお、制御弁19は、流量方向制御弁であり、操作装置10の各操作レバーの操作方向に応じて図示しないスプールを移動させ、各油圧アクチュエータへの作動油の流れ方向を規制する。各操作レバーの操作量に応じた作動油を、ブームシリンダ5A、アームシリンダ5B、バケットシリンダ5C、右走行モータ15R又は左走行モータ15L、旋回モータ16等の油圧アクチュエータに供給する。
【0019】
油圧ショベル1は、運転室6に配置される操作装置10を備える。操作装置10は、油圧ショベル1の少なくとも一部の作動のために操作される。操作装置10は、オペレータによって操作される。油圧ショベル1の作動は、下部走行体2の作動、上部旋回体3の作動、及び作業機4の作動の少なくとも一つを含む。操作装置10は、油圧ショベル1の操作量を示す操作信号をコントローラ300へ出力する。
【0020】
操作装置10は、上部旋回体3及び作業機4の作動のために操作される左作業レバー11及び右作業レバー12と、下部走行体2の作動のために操作される左走行レバー13及び右走行レバー14と、図示しない左フットペダル及び右フットペダルと、走行モードを設定するために操作される走行速度設定装置10Sとを含む。
【0021】
左作業レバー11は、運転シート9の左方に配置される。左作業レバー11が前後方向に操作されることによって、アーム4Bがダンプ動作又は掘削動作する。左作業レバー11が左右方向に操作されることによって、上部旋回体3が左旋回又は右旋回する。右作業レバー12は、運転シート9の右方に配置される。右作業レバー12が左右方向に操作されることによって、バケット4Cが掘削動作又はダンプ動作する。右作業レバー12が前後方向に操作されることによって、ブーム4Aが下げ動作又は上げ動作する。
【0022】
左走行レバー13及び右走行レバー14は、運転シート9の前方に配置される。左走行レバー13は、右走行レバー14の左方に配置される。左走行レバー13が前後方向に操作されることによって、下部走行体2の左側の履帯が前進動作又は後進動作する。右走行レバー14が前後方向に操作されることによって、下部走行体2の右側の履帯が前進動作又は後進動作する。
【0023】
左フットペダル及び右フットペダルは、運転シート9の前方に配置される。左フットペダルは、右フットペダルの左方に配置される。左フットペダルは、左走行レバー13と連動する。右フットペダルは、右走行レバー14と連動する。左フットペダル及び右フットペダルが操作されることによって、下部走行体2が前進動作又は後進動作されてもよい。
【0024】
走行速度設定装置10Sは、油圧ショベル1の走行モードを設定するためにオペレータによって操作される操作装置である。本実施形態では、走行速度設定装置10Sは、走行モードを選択するためのスイッチである。オペレータが走行速度設定装置10Sを操作することによって、油圧ショベル1の走行速度を所定の速度以下に制限する低速モード、または、油圧ショベル1の走行速度を制限しない高速モードに設定することができる。走行モードを低速モードに設定することで、例えば、右走行モータ15Rおよび左走行モータ15Lの斜板角度は低速モードに適した角度に設定される。走行モードを低速モードに設定することで、例えば、右走行モータ15Rおよび左走行モータ15Lの容量が大きくなるように斜板角度が設定される。
【0025】
[制御システム]
図3は、実施形態に係る制御システム400を示す機能ブロック図である。油圧ショベル1は、制御システム400を備える。制御システム400は、油圧ショベル1の周辺で検知された対象物の位置と、上部旋回体3を基準とする座標系に設定される上部旋回体領域A1とに基づいて上部旋回体3の動作を制御する。制御システム400は、油圧ショベル1の周辺で検知された対象物の位置と、上部旋回体3を基準とする座標系に設定される下部走行体領域に基づいて下部走行体2の動作を制御する。制御システム400は、検出装置200とコントローラ300とを備える。
【0026】
[検出装置]
図4は、実施形態に係る上部旋回体を模式的に示す図である。油圧ショベル1は、検出装置200を備える。検出装置200は、油圧ショベル1の周辺を監視するための装置である。検出装置200は、油圧ショベル1の周辺の人及び動体(以下、「対象物」という。)を検出する。検出装置200は、油圧ショベル1の周囲に存在する対象物を検出する。本実施形態では、検出装置200は、上部旋回体3に配置される。本実施形態では、検出装置200は、上部旋回体3を基準とする座標系における対象物の位置を検出する。
【0027】
本実施形態では、検出装置200は、複数のカメラ20(21、22、23、24)を有する。複数のカメラ20は、上部旋回体3に配置される。カメラ20は、撮像対象の画像を取得する。
図4に示すように、カメラ20は、油圧ショベル1の周囲に複数配置される。本実施形態では、カメラ20は、上部旋回体3の後部に配置される後カメラ21と、上部旋回体3の右部に配置される右後カメラ22及び右前カメラ23と、上部旋回体3の左部に配置される左後カメラ24とを含む。
【0028】
後カメラ21は、上部旋回体3の後方領域を撮像する。右後カメラ22は、上部旋回体3の右後方領域を撮像する。右前カメラ23は、上部旋回体3の右前方領域を撮像する。左後カメラ24は、上部旋回体3の左後方領域を撮像する。複数のカメラ20(21、22、23、24)のそれぞれは、光学系と、イメージセンサとを有する。イメージセンサは、CCD(Couple Charged Device)イメージセンサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサを含む。
【0029】
なお、左後カメラ24は、上部旋回体3の左側方領域及び左後方領域の範囲を撮像するものであるが、そのどちらか一方を撮像するものであってもよい。同様に、右後カメラ22は、上部旋回体3の右側方領域及び右後方領域の範囲を撮像するものであるが、そのどちらか一方を撮像するものであってもよい。同様に、右前カメラ23は、上部旋回体3の右前方領域及び右側方領域の範囲を撮像するものであるが、そのどちらか一方を撮像するものであってもよい。また、カメラ20は、上部旋回体3の左後方、後方、右後方、及び右前方を撮像するが、これに限定されない。例えば、カメラ20の数は、
図4に示す例と異なってもよい。例えば、カメラ20の撮像範囲は、
図4に示す例と異なってもよい。また、本実施形態においては、運転室6の前方及び左前方を撮影するカメラを有していないが、これに限定されない。運転室6の前方及び左前方の状況を示す画像データを取得するカメラ20を有してもよい。検出装置200は、検出したデータをコントローラ300へ出力する。
【0030】
[コントローラ]
油圧ショベル1は、コントローラ300を備える。コントローラ300は、油圧ショベル1を制御するための装置である。コントローラ300は、油圧ショベル1の下部走行体2及び上部旋回体3の動作を制御する。本実施形態では、コントローラ300は、運転室6に配置される。
【0031】
コントローラ300は、油圧ショベル1の周辺で検知された対象物の位置と後述する下部走行体領域とに基づいて下部走行体2の動作を制御する。コントローラ300は、油圧ショベル1の周辺で検知された対象物の位置と後述する上部旋回体領域A1とに基づいて上部旋回体3の動作を制御する。より詳しくは、コントローラ300は、検出装置200によって検出された対象物の位置と、上部旋回体3を基準とする座標系に設定される下部走行体停止領域A2及び下部走行体減速領域A3に基づいて下部走行体2の動作を制御する。コントローラ300は、検出装置200によって検出された対象物の位置と、上部旋回体3を基準とする座標系に設定される上部旋回体領域A1とに基づいて上部旋回体3の旋回を制御する。
【0032】
コントローラ300は、検出装置200によって検出された上部旋回体3を基準とする座標系における対象物の位置が下部走行体停止領域A2又は下部走行体減速領域A3内に存在すると判定した場合、下部走行体2の速度を制限するよう制御する。
【0033】
コントローラ300は、検出装置200によって検出された上部旋回体3を基準とする座標系における対象物の位置が下部走行体停止領域A2内に存在すると判定した場合、下部走行体2を停止するよう制御する。コントローラ300は、検出装置200によって検出された上部旋回体3を基準とする座標系における対象物の位置が下部走行体減速領域A3内に存在すると判定した場合、下部走行体2を減速するよう制御する。
【0034】
コントローラ300は、RAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリ及びROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリを含む記憶部32と、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサを含む演算処理部33とを有する。
【0035】
演算処理部33は、制御プログラムを実行することで、データ取得部331と、検知部332と、位置特定部333と、判定部334と、操作信号取得部335と、制御部336と、出力部337と、領域設定部338とを備える。
【0036】
データ取得部331は、検出装置200から検出データを取得する。本実施形態では、データ取得部331は、後カメラ21から油圧ショベル1の後方の状況を示す画像データを取得する。データ取得部331は、右後カメラ22から油圧ショベル1の右後方の状況を示す画像データを取得する。データ取得部331は、右前カメラ23から油圧ショベル1の右前方の状況を示す画像データを取得する。データ取得部331は、左後カメラ24から油圧ショベル1の左後方の状況を示す画像データを取得する。
【0037】
検知部332は、データ取得部331によって取得された検出データに基づいて、油圧ショベル1の周辺に存在する人及び動体を含む対象物を検知する。本実施形態では、検知部332は、データ取得部331によって取得された画像データを画像処理することによって、画像データにおける対象物を検知する。画像処理は、画像データから対象物の特徴量を抽出する処理を含む。検知部332は、画像データから抽出した特徴量と、特徴量記憶部321に記憶された特徴量とを照合して、油圧ショベル1の周辺に存在する対象物を検知する。
【0038】
位置特定部333は、検出装置200によって検出された対象物の位置を特定する。位置特定部333は、上部旋回体3に対する検出した対象物の位置を特定する。より詳しくは、位置特定部333は、上部旋回体3を基準とする座標系で示された対象物の位置を特定する。
【0039】
判定部334は、検出装置200によって検出された対象物が所定の領域に存在するか否か判定する。より詳しくは、判定部334は、後述する上部旋回体領域A1、下部走行体停止領域A2及び下部走行体減速領域A3に対象物が存在するか否かを判定する。判定部334は、上部旋回体領域A1の内側、下部走行体停止領域A2の内側、又は、下部走行体停止領域A2の外側かつ下部走行体減速領域A3の内側のうち、対象物がどの領域に存在するかを判定する。判定部334は、位置特定部333によって特定された対象物の位置と、領域記憶部322に記憶された各領域の位置とを照合して、対象物が上部旋回体領域A1の内側に存在するか否かを判定する。判定部334は、位置特定部333によって特定された対象物の位置と、領域記憶部322に記憶された各領域の位置とを照合して、対象物が下部走行体停止領域A2の内側に存在するか否かを判定する。判定部334は、位置特定部333によって特定された対象物の位置と、領域記憶部322に記憶された各領域の位置とを照合して、対象物が下部走行体停止領域A2の外側かつ下部走行体減速領域A3の内側に存在するか否かを判定する。
【0040】
操作信号取得部335は、オペレータによって操作された操作装置10の各操作レバーの操作量を示す操作信号および各スイッチからの操作信号を取得する。
【0041】
制御部336は、油圧ショベル1の下部走行体2及び上部旋回体3を制御するための制御指令を生成する。より詳しくは、制御部336は、操作信号取得部335によって取得された操作信号が示す操作量に基づいて、下部走行体2及び上部旋回体3を制御するための制御指令を生成する。制御部336は、例えば、操作装置10の各操作レバーの操作方向に応じて制御弁19を制御ために各油圧アクチュエータへの作動油の流れを制御するための制御指令を生成する。制御部336は、例えば、各操作レバーの操作量に応じた作動油を、ブームシリンダ5A、アームシリンダ5B、バケットシリンダ5C、右走行モータ15R又は左走行モータ15L、旋回モータ16等の油圧アクチュエータに供給するように制御弁19を制御するための制御指令を生成する。
【0042】
制御部336は、判定部334の判定結果に基づいて、下部走行体2の走行及び上部旋回体3の旋回を規制する制御指令を生成する。制御部336は、例えば、対象物が上部旋回体領域A1に存在する場合、上部旋回体3の旋回を規制する制御指令を生成する。制御部336は、例えば、対象物が上部旋回体領域A1に存在する場合、油圧ショベル1が旋回中であれば左作業レバー11及び右作業レバー12の操作量によらず、旋回角速度が上限角速度以下となるように旋回を規制する制御指令を生成する。旋回を規制する制御指令によって、旋回モータ16は供給される作動油が規制され、上部旋回体3の旋回角速度が上限角速度以下に規制される。
【0043】
制御部336は、上部旋回体3を停止させた後、例えば、オペレータによる旋回停止制御の解除操作を検知するまで、旋回停止状態を維持させる。制御部336は、上部旋回体3を停止させた後、例えば、オペレータによる旋回停止制御の解除操作を検知するまで、上部旋回体3の旋回角速度が上限角速度以下に規制された状態を維持させる。例えば、制御部336は、対象物が上部旋回体領域A1に存在することが検知された後、対象物が上部旋回体領域A1より外側に出た場合でも、オペレータによる解除操作がされるまで旋回停止状態を解除しない。
【0044】
制御部336は、例えば、対象物が下部走行体停止領域A2に存在する場合、下部走行体2を停止させる制御指令を生成する。制御部336は、例えば、油圧ショベル1が走行中であれば左走行レバー13及び右走行レバー14の操作量によらず、走行速度が停止速度以下となるように走行を規制する制御指令を生成する。走行停止の制御指令によって、右走行モータ15R又は左走行モータ15Lは供給される作動油が規制され、下部走行体2の走行速度が減速速度より遅い停止速度以下に規制される。
【0045】
制御部336は、下部走行体2を停止させた後、例えば、オペレータによる走行停止制御の解除操作を検知するまで、走行停止状態を維持させる。制御部336は、下部走行体2を停止させた後、例えば、オペレータによる走行停止制御の解除操作を検知するまで、下部走行体2の走行速度が停止速度以下に規制された状態を維持させる。例えば、制御部336は、対象物が下部走行体停止領域A2に存在することが検知された後、対象物が下部走行体停止領域A2より外側に出た場合でも、オペレータによる解除操作がされるまで走行停止状態を解除しない。
【0046】
制御部336は、例えば、対象物が下部走行体減速領域A3に存在する場合、下部走行体2を減速させる制御指令を生成する。制御部336は、例えば、油圧ショベル1が走行中であれば左走行レバー13及び右走行レバー14の操作量によらず、走行速度が減速速度以下となるように走行を規制する制御指令を生成する。減速の制御指令によって、右走行モータ15R又は左走行モータ15Lは供給される作動油が規制され、下部走行体2の走行速度が停止速度より速い減速速度以下に規制される。
【0047】
制御部336は、下部走行体2を減速させた後、例えば、オペレータによる減速制御の解除操作を検知するまで、減速状態を維持させる。制御部336は、下部走行体2を減速させた後、例えば、オペレータによる減速制御の解除操作を検知するまで、下部走行体2の走行速度が減速速度以下に規制された状態を維持させる。例えば、制御部336は、対象物が下部走行体減速領域A3に存在することが検知された後、対象物が下部走行体減速領域A3より外側に出た場合でも、オペレータによる解除操作がされるまで減速状態を解除しない。
【0048】
出力部337は、制御部336が生成した制御指令を制御弁19へ出力する。
【0049】
領域設定部338は、油圧ショベル1の走行モードに応じて下部走行体領域を設定する。より詳しくは、領域設定部338は、操作信号取得部335が取得した走行速度設定装置10Sからの信号が示す走行モードに基づいて、下部走行体領域を設定する。本実施形態においては、領域設定部338は、走行モードが低速モードに設定されたと判定した場合、第1範囲A2aを下部走行体停止領域A2として決定する。領域設定部338は、走行モードが高速モードに設定されたと判定した場合、第1範囲A2aよりも広い第2範囲A2bを下部走行体停止領域A2として選択する。領域設定部338は、走行モードが低速モードに設定されたと判定した場合、第3範囲A3aを下部走行体減速領域A3として選択する。領域設定部338は、走行モードが高速モードに設定されたと判定した場合、第3範囲A3aより広い第4範囲A3bを下部走行体減速領域A3として選択する。
【0050】
記憶部32は、演算処理部33における処理で使用する各種データなどを記憶する。本実施形態では、記憶部32は、対象物の特徴量を記憶する特徴量記憶部321を有する。特徴量は、対象物輪郭、対象物の色などを含み、対象物の外観を特定する情報である。また、本実施形態では、記憶部32は、設定領域を記憶する領域記憶部322を有する。
【0051】
図5は、上部旋回体領域及び下部走行体領域の一例を示す概略図である。領域記憶部322は、上部旋回体領域A1及び下部走行体領域の情報を記憶する。
【0052】
上部旋回体領域A1は、第2設定領域である。上部旋回体領域A1は、内側に対象物が検知されると上部旋回体3の旋回を規制する領域である。上部旋回体領域A1は、上部旋回体3を基準とする座標系に設定される。上部旋回体領域A1は、上部旋回体3が旋回すると、上部旋回体3とともに旋回する。上部旋回体領域A1は、内側に対象物が検知されたときに、対象物と接触せずに上部旋回体3が停止するために必要な領域である。
【0053】
下部走行体領域は、内側に対象物が検知されると下部走行体2の走行を規制する領域である。下部走行体領域は、上部旋回体3を基準とする座標系に設定される。下部走行体領域は、上部旋回体3が旋回すると、上部旋回体3とともに旋回する。下部走行体領域は、下部走行体停止領域A2と下部走行体減速領域A3とを含む。
【0054】
下部走行体停止領域A2は、第1設定領域である。下部走行体停止領域A2は、内側に対象物が検知されたときに、対象物と接触せずに下部走行体2が停止するために必要な領域である。下部走行体停止領域A2は、外周の形状の少なくとも一部が上部旋回体3を基準とする座標系の原点を中心とする円弧形状である。下部走行体領域は、下部走行体2に接触しない領域である。
【0055】
本実施形態においては、領域記憶部322には、下部走行体停止領域A2として、第1範囲A2aと、第1範囲A2aよりも広い第2範囲A2bとが記憶されている。第1範囲A2aは、低速モードに応じた領域である。第2範囲A2bは、高速モードに応じた領域である。
【0056】
下部走行体減速領域A3は、第3設定領域である。下部走行体減速領域A3は、内側に対象物が検知されたときに、対象物と接触せずに下部走行体2が減速するために必要な領域である。下部走行体減速領域A3は、下部走行体停止領域A2より広く、下部走行体停止領域A2を含む領域である。下部走行体減速領域A3は、上部旋回体領域A1より広く、上部旋回体領域A1を含む領域である。
【0057】
本実施形態においては、領域記憶部322には、下部走行体減速領域A3として、第3範囲A3aと、第3範囲A3aより広い第4範囲A3bとが記憶されている。第3範囲A3aは、低速モードに応じた領域である。第4範囲A3bは、高速モードに応じた領域である。
【0058】
図5に示す例では、上部旋回体領域A1は、例えば、上部旋回体3の前端部から距離d11前方に位置する直線部A11と、上部旋回体3の左側端部から距離d12左方に位置する直線部A12と、上部旋回体3の右側端部から距離d13右方に位置する直線部A13と、上部旋回体3の後端部から距離d14の円弧部A14とで囲まれた領域である。円弧部A14は、上部旋回体3の旋回軸RXを中心とする円弧である。
【0059】
下部走行体停止領域A2は、上部旋回体3の旋回軸RXを中心とした円で囲まれた領域である。本実施形態においては、低速モードに応じた下部走行体停止領域A2である第1範囲A2aと、高速モードに応じた下部走行体停止領域A2である第2範囲A2bとが設定される。第1範囲A2aは、上部旋回体3の旋回軸RXを中心とした半径r1の円で囲まれた領域である。第2範囲A2bは、上部旋回体3の旋回軸RXを中心とした半径r2の円で囲まれた領域である。半径r2は、半径r1よりも大きい。
【0060】
下部走行体減速領域A3は、例えば、矩形状の領域である。本実施形態においては、低速モードに応じた下部走行体減速領域A3である第3範囲A3aと、高速モードに応じた下部走行体減速領域A3である第4範囲A3bとが設定される。第3範囲A3aは、上部旋回体領域A1及び第1範囲A2aから距離d15以上離れた周縁部を有する領域である。第3範囲A3aは、例えば、第1範囲A2aの前端部から距離d15前方に位置する直線部A31aと、上部旋回体領域A1の左側端部から距離d15左方に位置する直線部A32aと、上部旋回体領域A1の右側端部から距離d15右方に位置する直線部A33aと、上部旋回体領域A1の後端部から距離d15後方に位置する直線部A34aとで囲まれた領域である。第4範囲A3bは、上部旋回体領域A1及び第2範囲A2bから距離d16以上離れた周縁部を有する領域である。第4範囲A3bは、例えば、第2範囲A2bの前端部から距離d16前方に位置する直線部A31bと、上部旋回体領域A1の左側端部から距離d16左方に位置する直線部A32bと、上部旋回体領域A1の右側端部から距離d16右方に位置する直線部A33bと、上部旋回体領域A1の後端部から距離d16後方に位置する直線部A34bとで囲まれた領域である。距離d16は、距離d15よりも大きい。
【0061】
図6は、上部旋回体が旋回した状態における、
図5に示す上部旋回体領域及び下部走行体領域を示す概略図である。
図6に示すように、上部旋回体3が旋回した場合、上部旋回体領域A1、下部走行体停止領域A2及び下部走行体減速領域A3は、上部旋回体3とともに旋回する。
【0062】
[制御方法]
図7は、実施形態に係る制御方法を示すフローチャートである。油圧ショベル1がキーオンされると、検出装置200及びコントローラ300が起動する。
【0063】
コントローラ300は、検出装置200が検出した検出データを取得する(ステップSP11)。より詳しくは、データ取得部331は、検出装置200のカメラ20が撮像した油圧ショベル1の周辺の画像データを取得する。
【0064】
コントローラ300は、対象物を検知する(ステップSP12)。より詳しくは、検知部332は、データ取得部331によって取得された検出データに基づいて、油圧ショベル1の周辺に存在する人及び動体を含む対象物を検知する。本実施形態では、検知部332は、データ取得部331によって取得された画像データに基づいて、油圧ショベル1の周辺に人及び動体を含む対象物を検知する。
【0065】
コントローラ300は、対象物の位置を特定する(ステップSP13)。より詳しくは、位置特定部333は、検知部332が検知した上部旋回体3を基準とする座標系における対象物の位置を特定する。
【0066】
コントローラ300は、走行モードを判定する(ステップSP14)。より詳しくは、領域設定部338は、操作信号取得部335が取得した走行速度設定装置10Sからの信号に基づいて、設定された走行モードを判定する。領域設定部338が、走行モードが低速モードに設定されたと判定した場合(ステップSP14でYes)、ステップSP15へ進む。領域設定部338が、走行モードが高速モードに設定されたと判定した場合(ステップSP14でNo)、ステップSP16へ進む。
【0067】
領域設定部338が、走行モードが低速モードに設定されたと判定した場合(ステップSP14でYes)、コントローラ300は、低速モードに応じた下部走行体領域を設定する(ステップSP15)。より詳しくは、領域設定部338は、領域記憶部322に記憶された第1範囲A2aを下部走行体停止領域A2として設定し、領域記憶部322に記憶された第3範囲A3aを下部走行体減速領域A3として設定する。
【0068】
領域設定部338が、走行モードが高速モードに設定されたと判定した場合(ステップSP14でNo)、コントローラ300は、高速モードに応じた下部走行体領域を設定する(ステップSP16)。より詳しくは、領域設定部338は、領域記憶部322に記憶された第2範囲A2bを下部走行体停止領域A2として設定し、領域記憶部322に記憶された第4範囲A3bを下部走行体減速領域A3として設定する。
【0069】
コントローラ300は、下部走行体減速領域A3内に対象物が存在するか否かを判定する(ステップSP17)。より詳しくは、判定部334は、位置特定部333によって特定された対象物の位置と、領域設定部338が設定した下部走行体減速領域A3の位置とを照合して、対象物の位置が下部走行体減速領域A3の内側であるかを判定する。判定部334が、下部走行体減速領域A3内に対象物が存在すると判定した場合(ステップSP17でYes)、ステップSP18へ進む。判定部334が、下部走行体減速領域A3内に対象物が存在すると判定しない場合(ステップSP17でNo)、ステップSP19へ進む。
【0070】
判定部334が、下部走行体減速領域A3内に対象物が存在すると判定した場合(ステップSP17でYes)、コントローラ300は、下部走行体2を減速させる制御指令を生成する(ステップSP18)。より詳しくは、制御部336は、例えば、油圧ショベル1が走行中であれば操作量によらず、走行速度が減速速度以下となるように走行を規制する制御指令を生成する。
【0071】
なお、ステップSP18において、制御部336は、例えば、オペレータによる減速制御の解除操作を検知するまで、下部走行体2の走行速度が減速速度以下に規制される状態を維持する制御指令を生成してもよい。
【0072】
コントローラ300は、下部走行体停止領域A2内に対象物が存在するか否かを判定する(ステップSP19)。より詳しくは、判定部334は、位置特定部333によって特定された対象物の位置と、領域設定部338が設定した下部走行体停止領域A2の位置とを照合して、対象物の位置が下部走行体停止領域A2の内側であるかを判定する。判定部334が、下部走行体停止領域A2内に対象物が存在すると判定した場合(ステップSP19でYes)、ステップSP20へ進む。判定部334が、下部走行体停止領域A2内に対象物が存在すると判定しない場合(ステップSP19でNo)、ステップSP21へ進む。
【0073】
判定部334が、下部走行体停止領域A2内に対象物が存在すると判定した場合(ステップSP19でYes)、コントローラ300は、下部走行体2を停止させる制御指令を生成する(ステップSP20)。より詳しくは、制御部336は、例えば、油圧ショベル1が走行中であれば操作量によらず、走行速度が停止速度以下となるように走行を規制する制御指令を生成する。
【0074】
なお、ステップSP20において、制御部336は、例えば、オペレータによる走行停止制御の解除操作を検知するまで、下部走行体2の走行速度が停止速度以下に規制される状態を維持する制御指令を生成してもよい。
【0075】
コントローラ300は、上部旋回体領域A1内に対象物が存在するか否かを判定する(ステップSP21)。より詳しくは、判定部334は、位置特定部333によって特定された対象物の位置と、領域記憶部322に記憶された上部旋回体領域A1の位置とを照合して、対象物の位置が上部旋回体領域A1の内側であるかを判定する。判定部334が、上部旋回体領域A1内に対象物が存在すると判定した場合(ステップSP21でYes)、ステップSP22へ進む。判定部334が、上部旋回体領域A1内に対象物が存在すると判定しない場合(ステップSP21でNo)、ステップSP23へ進む。
【0076】
判定部334が、上部旋回体領域A1内に対象物が存在すると判定した場合(ステップSP21でYes)、コントローラ300は、上部旋回体3の旋回を規制させる制御指令を生成する(ステップSP22)。より詳しくは、制御部336は、例えば、油圧ショベル1が旋回中であれば操作量によらず、旋回角速度が上限角速度以下となるように旋回を規制する制御指令を生成する。
【0077】
なお、ステップSP22において、制御部336は、例えば、オペレータによる旋回停止制御の解除操作を検知するまで、上部旋回体3の旋回角速度が上限角速度以下に規制される状態を維持する制御指令を生成してもよい。
【0078】
コントローラ300は、制御指令を出力する(ステップSP23)。より詳しくは、出力部337は、制御部336が生成した制御指令を制御弁19へ出力する。ステップSP18で生成された制御指令を出力部337によって出力されることによって、下部走行体2の走行速度は減速速度以下に規制される。また、ステップSP20で生成された制御指令を出力部337によって出力されることによって、下部走行体2の走行速度は停止速度以下に規制される。また、ステップSP22で生成された制御指令を出力部337によって出力されることによって、上部旋回体3の旋回角速度は上限角速度以下に規制される。
【0079】
上記の処理を油圧ショベル1の動作中に常時実行することで、コントローラ300は、油圧ショベル1の制御を行う。
【0080】
[コンピュータシステム]
図8は、実施形態に係るコンピュータシステムを示すブロック図である。上述の演算処理部33は、コンピュータシステム1000を含む。コンピュータシステム1000は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ1001と、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含むメインメモリ1002と、ストレージ1003と、入出力回路を含むインターフェース1004とを有する。上述の演算処理部33の機能は、コンピュータプログラムとしてストレージ1003に記憶されている。プロセッサ1001は、コンピュータプログラムをストレージ1003から読み出してメインメモリ1002に展開し、コンピュータプログラムに従って上述の処理を実行する。なお、コンピュータプログラムは、ネットワークを介してコンピュータシステム1000に配信されてもよい。
【0081】
コンピュータプログラム又はコンピュータシステム1000は、上述の実施形態に従って、第1の処理として、検出装置200によって、油圧ショベル1の周辺に存在する対象物を検出することと、第2の処理として、油圧ショベル1の下部走行体2及び上部旋回体3の動作を制御するコントローラ300によって、検知された対象物の位置と、上部旋回体3を基準とする座標系に設定される下部走行体領域である下部走行体停止領域A2及び下部走行体減速領域A3とに基づいて下部走行体2の動作を制御し、検知された対象物の位置と上部旋回体領域A1とに基づいて上部旋回体3の動作を制御することと、を実行させる。
【0082】
このように、検知された対象物の位置と、上部旋回体3を基準とする座標系に設定される下部走行体領域である下部走行体停止領域A2及び下部走行体減速領域A3とに基づいて下部走行体2の動作が制御され、検知された対象物の位置と上部旋回体領域A1とに基づいて上部旋回体3の動作が制御される。
【0083】
[効果]
以上説明したように、本実施形態では、上部旋回体3を基準とする座標系に設定される下部走行体領域である下部走行体停止領域A2及び下部走行体減速領域A3とに基づいて下部走行体2の動作を制御し、検知された対象物の位置と上部旋回体領域A1とに基づいて上部旋回体3の動作を制御することができる。本実施形態では、下部走行体2と上部旋回体3との制御をそれぞれ異なる領域で判定する。本実施形態では、下部走行体2と上部旋回体3とをそれぞれ適切に制御することができる。
【0084】
本実施形態は、走行モードに応じて下部走行体停止領域の範囲が設定される。本実施形態によれば、走行速度に応じた制御領域を設定することができる。本実施形態よれば、作業機械の走行速度に応じて、作業機械を適切に制御することができる。
【0085】
[その他の実施形態]
上述の実施形態においては、検出装置200が作業機械1の周辺を撮影するカメラ20であることとしたが、これに限定されない。例えば、検出装置200は、油圧ショベル1に設けられたステレオカメラやLIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)であってもよいし、レーダ装置や超音波装置を用いて対象物を検出してもよい。
【0086】
また、上述した実施形態に係る制御システム400は、油圧ショベル1に設置されるものとして説明したが、これに限られない。制御システム400の一部、又は全部の構成が油圧ショベル1の外部に設置されてもよく、例えば、コントローラ300は、遠隔地の操作室に配置され、遠隔操作に係る油圧ショベル1を制御するものであってもよい。
【0087】
また、上述した実施形態に係るコントローラ300は、1または複数のコントローラで構成されてもよい。例えば、他の実施形態においては、検出装置200から検出データを取得し、油圧ショベル1の周辺に存在する人及び動体を含む対象物を検知するための第1のコントローラと、対象物の位置を特定し、対象物が存在する領域を判定し、油圧ショベル1を制御する第2のコントローラとを有してもよい。
【0088】
上述した実施形態に係るコントローラ300は、油圧ショベル1の走行モードに応じて下部走行体停止領域A2及び下部走行体減速領域A3を設定するとしたが、これに限定されない。例えば、コントローラ300は、油圧ショベル1の走行モードに応じて下部走行体停止領域A2または下部走行体減速領域A3のいずれかのみを設定してもよい。
【0089】
上述した実施形態に係るコントローラ300は、検出装置200によって検出された上部旋回体3を基準とする座標系における対象物の位置が下部走行体停止領域A2内に存在すると判定した場合、下部走行体2を停止するように制御するとしたが、これに限定されない。例えば、コントローラ300は、検出装置200によって検出された上部旋回体3を基準とする座標系における対象物の位置が下部走行体停止領域A2内または上部旋回体領域A1内のいずれかに存在すると判定された場合、下部走行体2を停止するよう制御してもよい。
【0090】
上述の実施形態において、作業機械1は、油圧によって駆動する油圧ショベルとしたがが、これに限定されない。作業機械1は、例えば、バッテリや発電機からの電力を動力源とする電動ショベルでもよい。この場合、旋回モータ16や右走行モータ15R、左走行モータ15Lは電動機としてもよく、コントローラ300は、旋回モータ16や右走行モータ15R、左走行モータ15Lを制御してもよい。
【0091】
上述の実施形態において、油圧ショベル1は、鉱山などで使用されるマイニング用油圧ショベルでもよいし、建設現場において用いられる油圧ショベルでもよい。また、ダンプトラックや、ホイールローダや他の作業機械用の制御システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0092】
1…油圧ショベル(作業機械)、2…下部走行体(走行体)、3…上部旋回体(旋回体)、4…作業機、4A…ブーム、4B…アーム、4C…バケット、5…油圧シリンダ、5A…ブームシリンダ、5B…アームシリンダ、5C…バケットシリンダ、6…運転室、9…運転シート、10…操作装置、11…左作業レバー、12…右作業レバー、13…左走行レバー、14…右走行レバー、10S…走行速度設定装置、15R…右走行モータ、15L…左走行モータ、16…旋回モータ、17…動力源、18…油圧ポンプ、19…制御弁、20…カメラ、21…後カメラ、22…右後カメラ、23…右前カメラ、24…左後カメラ、32…記憶部、33…演算処理部、200…検出装置、300…コントローラ、321…特徴量記憶部、322…領域記憶部、331…データ取得部、332…検知部、333…位置特定部、334…判定部、335…操作信号取得部、336…制御部、337…出力部、338…領域設定部、400…制御システム、1000…コンピュータシステム、1001…プロセッサ、1002…メインメモリ、1003…ストレージ、1004…インターフェース、A1…上部旋回体領域(第2設定領域)、A2…下部走行体停止領域(第1設定領域)、A3…下部走行体減速領域(第3設定領域)、AX…ブーム回転軸、BX…アーム回転軸、CX…バケット回転軸、RX…旋回軸。