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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067167
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
B25J9/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178187
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】杉本 亘
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707LS02
3C707MS29
3C707MT01
3C707MT04
(57)【要約】
【課題】ダイレクトティーチングが実行されるロボットにおいて、ユーザが先端アームを正確に動かしやすくする。
【解決手段】互いに連結された複数のアーム(11~16)を備え、ダイレクトティーチングが実行されるロボット(10)であって、複数のアームのうちの先端アーム(16)は、円筒状の外表面を備え、円筒状の外表面には周方向に沿って滑り止め構造(16b)が所定構造として設けられている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連結された複数のアームを備え、ダイレクトティーチングが実行されるロボットであって、
前記複数のアームのうちの先端アームは、円筒状の外表面を備え、前記円筒状の外表面には周方向に沿って滑り止め構造が所定構造として設けられている、ロボット。
【請求項2】
互いに連結された複数のアームを備え、ダイレクトティーチングが実行されるロボットであって、
前記複数のアームのうちの先端アームは、円筒状の外表面を備え、前記円筒状の外表面には周方向に沿って所定パターンの凹凸が所定構造として設けられている、ロボット。
【請求項3】
互いに連結された複数のアームを備え、ダイレクトティーチングが実行されるロボットであって、
前記複数のアームのうちの先端アームは、円筒状の外表面を備え、前記円筒状の外表面は、所定粗さの第1部分と、前記所定粗さよりも粗く且つ周方向に沿って設けられた所定構造としての第2部分と含む、ロボット。
【請求項4】
前記所定構造は、前記先端アームにおいて、前記複数のアームのうちの隣のアーム側の端部に設けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項5】
前記円筒状の外表面には、ケーブル接続部及び管接続部の少なくとも一方が設けられ、
前記所定構造は、前記先端アームにおいて、前記ケーブル接続部及び前記管接続部よりも、前記複数のアームのうちの隣のアーム側にのみ設けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項6】
前記所定構造は、前記円筒状の外表面の全周にわたって設けられている、請求項1~5のいずれか1項に記載のロボット。
【請求項7】
前記所定構造は、前記円筒状の外表面がローレット加工されたローレット加工部である、請求項1~6のいずれか1項に記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイレクトティーチングが実行されるロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1~第6アームを備える6軸ロボットの第6アーム(先端アーム)をユーザが把持し、ロボットを動かしてダイレクトティーチングを実行する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-151807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ユーザが先端アームを把持してロボットを動かす際に、先端アームを正確に動かしにくいことに、本願発明者は着目した。ダイレクトティーチングにおいてユーザが先端アームを正確に動かすことができない場合、ティーチングが不正確になったり、ダイレクトティーチング後に別の方法による先端アーム位置の微調整が必要になったりして、ティーチングの効率が大きく低下する。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、ダイレクトティーチングが実行されるロボットにおいて、ユーザが先端アームを正確に動かしやすくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
互いに連結された複数のアームを備え、ダイレクトティーチングが実行されるロボットであって、
前記複数のアームのうちの先端アームは、円筒状の外表面を備え、前記円筒状の外表面には周方向に沿って滑り止め構造が所定構造として設けられている。
【0007】
上記構成によれば、ロボットは、互いに連結された複数のアームを備え、ダイレクトティーチングが実行される。
【0008】
ここで、前記複数のアームのうちの先端アームは、円筒状の外表面を備えている。このため、先端アームとユーザとが接触した際に、ユーザが受ける被害を軽減することができる。一方、先端アームが円筒状の外表面を備えている場合、ダイレクトティーチングにおいてユーザが先端アームを把持して動かす際に、手が滑りやすく、先端アームを注視して把持する必要があり、ユーザが先端アームを正確に動かしにくいことに本願発明者は着目した。
【0009】
この点、前記円筒状の外表面には周方向に沿って滑り止め構造が所定構造として設けられている。このため、先端アームを動かす際に手が滑ることを滑り止め構造により抑制することができるとともに、先端アームを回転させる方向の力を伝えやすくなる。さらに、ダイレクトティーチングにおいて、ユーザは先端アームを注視しなくても、滑り止め構造の部分を把持していることを周方向のいずれかの位置において手触りで確認することができる。これにより、先端アームに取り付けられる手先(ツール)やワークを見ながらダイレクトティーチングを実行することができる。したがって、ユーザが先端アームを正確に動かしやすくなり、ダイレクトティーチング後に別の方法により先端アーム位置を微調整しなくても、ティーチングを正確に実行することができる。その結果、ティーチングの効率を大きく向上させることができるという顕著な効果を奏することができる。
【0010】
第2の手段は、
互いに連結された複数のアームを備え、ダイレクトティーチングが実行されるロボットであって、
前記複数のアームのうちの先端アームは、円筒状の外表面を備え、前記円筒状の外表面には周方向に沿って所定パターンの凹凸が所定構造として設けられている。
【0011】
上記構成によれば、前記円筒状の外表面には周方向に沿って所定パターンの凹凸が所定構造として設けられている。このため、先端アームを動かす際に手が滑ることを所定パターンの凹凸により抑制することができるとともに、先端アームを回転させる方向の力を伝えやすくなる。さらに、ダイレクトティーチングにおいて、ユーザは先端アームを注視しなくても、所定パターンの凹凸の部分を把持していることを周方向のいずれかの位置において手触りで確認することができる。これにより、先端アームに取り付けられる手先(ツール)やワークを見ながらダイレクトティーチングを実行することができる。したがって、ユーザが先端アームを正確に動かしやすくなり、ダイレクトティーチング後に別の方法により先端アーム位置を微調整しなくても、ティーチングを正確に実行することができる。その結果、ティーチングの効率を大きく向上させることができるという顕著な効果を奏することができる。
【0012】
第3の手段は、
互いに連結された複数のアームを備え、ダイレクトティーチングが実行されるロボットであって、
前記複数のアームのうちの先端アームは、円筒状の外表面を備え、前記円筒状の外表面は、所定粗さの第1部分と、前記所定粗さよりも粗く且つ周方向に沿って設けられた所定構造としての第2部分と含む。
【0013】
上記構成によれば、前記円筒状の外表面は、所定粗さの第1部分と、前記所定粗さよりも粗く且つ周方向に沿って設けられた所定構造としての第2部分と含む。このため、先端アームを動かす際に手が滑ることを第2部分により抑制することができるとともに、先端アームを回転させる方向の力を伝えやすくなる。さらに、ダイレクトティーチングにおいて、ユーザは先端アームを注視しなくても、第2部分を把持していることを周方向のいずれかの位置において手触りで確認することができる。これにより、先端アームに取り付けられる手先(ツール)やワークを見ながらダイレクトティーチングを実行することができる。したがって、ユーザが先端アームを正確に動かしやすくなり、ダイレクトティーチング後に別の方法により先端アーム位置を微調整しなくても、ティーチングを正確に実行することができる。その結果、ティーチングの効率を大きく向上させることができるという顕著な効果を奏することができる。
【0014】
一般に、先端アームの先端部分(隣のアームと反対側の部分)には、手先(ツール)が取り付けられる。このため、ユーザが先端アームの先端付近を把持すると、誤って手先に接触するおそれがある。
【0015】
この点、第4の手段では、前記所定構造は、前記先端アームにおいて、前記複数のアームのうちの隣のアーム側の端部に設けられている。こうした構成によれば、ユーザは、先端アームにおいて隣のアーム側の端部を把持するようになり、先端アームの先端付近を把持することを抑制することができる。
【0016】
第5の手段では、前記円筒状の外表面には、ケーブル接続部及び管接続部の少なくとも一方が設けられ、前記所定構造は、前記先端アームにおいて、前記ケーブル接続部及び前記管接続部よりも、前記複数のアームのうちの隣のアーム側にのみ設けられている。
【0017】
上記構成によれば、前記円筒状の外表面には、ケーブル接続部及び管接続部の少なくとも一方が設けられている。このため、ケーブル接続部にケーブルを接続したり、管接続部に管(チューブ、パイプ等)を接続したりすることができる。一方、その場合、ユーザが誤ってケーブルや管に接触するおそれがある。
【0018】
この点、前記所定構造は、前記先端アームにおいて、前記ケーブル接続部及び前記管接続部よりも、前記複数のアームのうちの隣のアーム側にのみ設けられている。このため、ユーザは、先端アームにおいて前記ケーブル接続部及び前記管接続部よりも前記隣のアーム側を把持するようになり、誤ってケーブルや管に接触することを抑制することができる。したがって、前記ケーブル接続部及び前記管接続部からケーブルや管が抜けたり、ケーブルや管が切断したりすることを抑制することができる。
【0019】
第6の手段では、前記所定構造は、前記円筒状の外表面の全周にわたって設けられている。こうした構成によれば、ダイレクトティーチングにおいて、ユーザが先端アームを把持する周方向の位置にかかわらず、手が滑ることを抑制することができる。さらに、ユーザが先端アームを把持する周方向の位置にかかわらず、所定構造の部分を把持していることを手触りで確認することができる。
【0020】
第7の手段では、前記所定構造は、前記円筒状の外表面がローレット加工されたローレット加工部である。こうした構成によれば、先端アームを構成する既存の部材に加工を行うだけで、容易且つ低コストで所定構造を設けることができる。さらに、例えば先端アームの円筒状の外表面に滑り止め部材等を貼り付けた構造と比較して、滑り止め部材等が剥がれるおそれがなく、滑り止め部材等の劣化や摩耗による粉塵発生のおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ロボットの側面図。
図2】アームを把持する態様を示す図。
図3】アームを動かす態様を示す図。
図4】第6アームを示す拡大斜視図。
図5】第6アーム、ハンド、カメラ、及びケーブルを示す模式図。
図6】第6アームの変更例を示す拡大斜視図。
図7】第6アームの他の変更例を示す拡大斜視図。
図8】第6アームの他の変更例を示す拡大斜視図。
図9】ロボットの変更例を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、人と協働するロボットに具現化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1に示すように、ロボット10は、互いに連結された複数のアームを備える垂直多関節型のロボット(いわゆる6軸ロボット)であり、制御装置20を内蔵している。ロボット10は、例えば人が一人で持ち運ぶことができる程度に小型及び軽量のものである。ロボット10は、例えば人との協働を前提としており、その動作環境に安全柵が不要となるように設計されている。
【0024】
なお、制御装置20は、ロボット10に内蔵されたものに限られず、ロボット10の外部に設けられていてもよい。この場合、ロボット10と制御装置20とは、有線または無線により相互通信可能に構成される。また、制御装置20は、ティーチングペンダントや、パソコン、スマートフォン(携帯端末)など、その他の外部装置に有線または無線により相互通信可能に接続されていてもよい。
【0025】
ロボット10は、ベース10a、6つ(複数)のアーム11~16、及びハンド22を備えている。ベース10aは、設置面に固定されていてもよいし、固定されていなくても良い。各アーム11~16及びハンド22は、ベース10a上に順に設けられている。ベース10a側から順に、第1アーム11、第2アーム12、第3アーム13、第4アーム14、第5アーム15(隣のアーム)、及び第6アーム16(先端アーム)が連結されている。また、各アーム11~16を特定しない場合は、各アーム11~16を総称して単にアームと称する。各アーム11~16は、円柱状に形成されており、円筒状の外表面を備えている。これにより、各アーム11~16とユーザとが接触した際に、ユーザが受ける被害を軽減することができる。第6アーム16の円筒状の外表面は、例えば金属により形成されている。
【0026】
ハンド22(手先部)は、第6アーム16の先端部分(隣の第5アーム15と反対側の部分)に取り付けられている。この場合、ベース10a側が各アーム11~16の基端側となり、ハンド22側が各アーム11~16の先端側となる。なお、ハンド22は、例えばチャックやグリッパであり、その他にも吸着ハンドなどを採用することができ、ロボット10の用途に応じて適宜選択することができる。
【0027】
各アーム11~16は、それぞれ複数の軸J1~J6を介して回転可能に連結されている。この場合、ベース10a側から順に、第1軸J1、第2軸J2、第3軸J3、第4軸J4、第5軸J5、及び第6軸J6となっている。なお、各軸J1~J6を特定しない場合は、各軸J1~J6を総称して単に軸Jと称する。
【0028】
第1軸J1は、垂直方向に延びる回転軸であり、ベース10aに対して第1アーム11を水平方向に回転可能に連結する。第2軸J2は、水平方向に延びる回転軸であり、第1アーム11に対して第2アーム12を鉛直方向に回転可能に連結する。第3軸J3は、水平方向に延びる回転軸であり、第2アーム12に対して第3アーム13を鉛直方向に回転可能に連結する。第4軸J4は、第3アーム13の長手方向に延びる回転軸であり、第3アーム13に対して第4アーム14を回転可能に連結する。第5軸J5は、水平方向に延びる回転軸であり、第4アーム14に対して第5アーム15を鉛直方向に回転可能に連結する。そして、第6軸J6は、第5アーム15の長手方向に延びた回転軸であり、第5アーム15に対して第6アーム16を回転可能に連結する。
【0029】
ロボット10は、各軸J1~J6をそれぞれ駆動する6つ(複数)のモータ(図示略)を備えている。各モータは、機械的又は電気的なブレーキ機能を有している。各モータは、ブレーキを動作させることで、各モータに対応した各軸J1~J6を拘束し、これにより各軸J1~J6を介して相互に連結された各アーム11~16の回転動作を規制(禁止)する。各モータにおいてブレーキが動作している状態を、各軸J1~J6が拘束されている状態と称する。また、各モータにおいてブレーキが動作していない状態(ブレーキが解除されている状態)を、各軸J1~J6の動作が拘束されていない状態(各軸J1~J6の拘束が解除されている状態)と称する。
【0030】
制御装置20は、例えばCPU、ROM、RAM、書き換え可能な記憶装置、及び入出力インターフェース等を備えるマイクロコンピュータを主体に構成されている。制御装置20は、ロボット10全体の動作を制御する。記憶装置は、ロボット10を駆動制御するためのロボット制御プログラムを記憶している。そして、制御装置20は、CPUによりロボット制御プログラムを実行することで、ロボット10の動作を制御する。各モータは、制御装置20に電気的に接続されている。そして、制御装置20は、各モータの回転位置を検出する回転位置センサ等の検出結果に基づいて、各モータの駆動状態を制御する。
【0031】
図示を省略するが、例えばロボット10には、ダイレクトティーチングの開始を指示する開始ボタン、各軸の拘束を解除する解除ボタン、ダイレクトティーチングの終了を指示する終了ボタン等が設けられている。制御装置20は、ユーザにより開始ボタンが押されると、各アーム11~16の移動経路、移動速度、または位置などの教示内容の記録を開始する。制御装置20は、解除ボタンが押されている間のみ全ての軸J1~J6の拘束を解除する。そして、制御装置20は、終了ボタンが押されると、教示内容の記録を終了する。なお、解除ボタンに相当するボタンがティーチングペンダント等に設けられていてもよい。また、ティーチングペンダント等を操作して、操作対象となる軸を選択したり、各軸J1~J6の拘束条件を設定したりしてもよい。
【0032】
また、制御装置20は、軸J1~J6の拘束が解除されている状態においては、拘束が解除された軸J1~J6に連結している各アーム11~16が各アーム11~16の自重により動かないように各モータを制御することで重力補正を行う。この場合、各モータは、各アーム11~16の自重により各モータに作用するトルクに対抗し得る程度の弱いトルクを発生させる。そのため、ユーザは、軸J1~J6の拘束が解除された場合であっても、アーム11~16の重さを感じずに任意のアーム11~16を軽い力で動かすことができる。
【0033】
ダイレクトティーチングを実行する場合に、ユーザは開始ボタンを押す。そして、ユーザは、解除ボタンを押した状態で、図2に示すように第6アーム16を把持する。図3に示すように、ユーザは、第6アーム16を把持しながらロボット10を動かして、ハンド22をワーク等の位置まで移動させる。その後、ユーザが解除ボタンを押すことをやめて終了ボタンを押すことにより、ダイレクトティーチングが終了する。
【0034】
ここで、第6アーム16は円筒状の外表面を備えているため、ダイレクトティーチングにおいてユーザが第6アーム16を把持して動かす際に、手が滑りやすく、第6アーム16を注視して把持する必要がある。このため、ユーザは、ワーク等を注視しながら第6アーム16を動かしにくく、ハンド22(第6アーム16)をワーク等の位置まで正確に動かしにくいことに本願発明者は着目した。
【0035】
この点、図1に示すように、第6アーム16には、ローレット加工部16bが設けられている。詳しくは、図4に示すように、第6アーム16の円筒状の外表面(外周面)には、イーサネット(登録商標)規格のLANケーブル接続部31、照明ケーブル接続部32、ハンドケーブル接続部33、エアチューブ接続部(図示略)、センサケーブル接続部(図示略)等が設けられている。LANケーブル接続部31(ケーブル接続部)には、例えばカメラのケーブルが接続される。照明ケーブル接続部32(ケーブル接続部)には、照明(ライト)のケーブルが接続される。ハンドケーブル接続部33(ケーブル接続部)には、ハンド22のケーブルが接続される。エアチューブ接続部(管接続部)には、エアを供給するチューブが接続される。センサケーブル接続部(ケーブル接続部)には、センサのケーブルが接続される。
【0036】
第6アーム16の外表面において、第5アーム15側の端部には、ローレット加工部16bが設けられている。すなわち、ローレット加工部16b(所定構造)は、第6アーム16において、ケーブル接続部31~33及びエアチューブ接続部よりも、第5アーム15側にのみ設けられている。ローレット加工部16b(滑り止め構造)は、第6アーム16の円筒状の外表面がローレット加工された部分である。ローレット加工は、切削による加工であっても、転造による加工であってもよい。ローレット加工部16bは、円筒状の外表面の全周にわたって設けられている。すなわち、円筒状の外表面には、周方向に沿ってローレット加工部16bが設けられている。ローレット加工部16bは、円筒状の外表面に周方向に沿って設けられた所定パターンの凹凸といえる。ローレット加工部16b(第2部分)の表面粗さは、円筒状の外表面においてローレット加工部16bが設けられていない部分16a(第1部分)の表面粗さ(所定粗さ)よりも粗い。
【0037】
図5に示すように、ダイレクトティーチングにおいてユーザが第6アーム16を把持する際に、ユーザが誤ってハンドケーブル23や、LANケーブル25、ハンド22、カメラ24等に接触するおそれがある。この点、ローレット加工部16bにより、第6アーム16においてユーザが把持すべき部分を示すことができる。このため、第6アーム16において第5アーム15側の端部に設けられたローレット加工部16bを、ユーザが把持するように促すことができる。第6アーム16を把持したユーザは、ローレット加工部16bにより、滑り止め効果を得るとともに、第6アーム16を周方向に回転させやすくなる。さらに、ユーザは、ローレット加工部16bから凹凸の感触を得ることができる。
【0038】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0039】
・第6アーム16の円筒状の外表面には周方向に沿って滑り止め構造(ローレット加工部16b)が所定構造として設けられている。このため、第6アーム16を動かす際に手が滑ることを滑り止め構造により抑制することができるとともに、第6アーム16を回転させる方向の力を伝えやすくなる。さらに、ダイレクトティーチングにおいて、ユーザは第6アーム16を注視しなくても、滑り止め構造の部分を把持していることを周方向のいずれかの位置において手触りで確認することができる。これにより、第6アーム16に取り付けられたハンド22やワークを見ながらダイレクトティーチングを実行することができる。したがって、ユーザが第6アーム16を正確に動かしやすくなり、ダイレクトティーチング後に別の方法により第6アーム16位置を微調整しなくても、ティーチングを正確に実行することができる。その結果、ティーチングの効率を大きく向上させることができるという顕著な効果を奏することができる。
【0040】
・第6アーム16の円筒状の外表面には周方向に沿って所定パターンの凹凸(ローレット加工部16b)が所定構造として設けられている。このため、第6アーム16を動かす際に手が滑ることを所定パターンの凹凸により抑制することができるとともに、第6アーム16を回転させる方向の力を伝えやすくなる。さらに、ダイレクトティーチングにおいて、ユーザは第6アーム16を注視しなくても、所定パターンの凹凸の部分を把持していることを周方向のいずれかの位置において手触りで確認することができる。
【0041】
・円筒状の外表面は、所定粗さの第1部分(部分16a)と、所定粗さよりも粗く且つ周方向に沿って設けられた所定構造としての第2部分(ローレット加工部16b)と含む。このため、第6アーム16を動かす際に手が滑ることを第2部分により抑制することができるとともに、第6アーム16を回転させる方向の力を伝えやすくなる。さらに、ダイレクトティーチングにおいて、ユーザは第6アーム16を注視しなくても、第2部分を把持していることを周方向のいずれかの位置において手触りで確認することができる。
【0042】
・所定構造(ローレット加工部16b)は、第6アーム16において、第5アーム15側の端部に設けられている。こうした構成によれば、ユーザは、第6アーム16において第5アーム15側の端部を把持するようになり、第6アーム16の先端付近を把持することを抑制することができる。
【0043】
・所定構造(ローレット加工部16b)は、第6アーム16において、ケーブル接続部31~33及びエアチューブ接続部よりも、第5アーム15側にのみ設けられている。このため、ユーザは、第6アーム16においてケーブル接続部31~33及びエアチューブ接続部よりも第5アーム15側を把持するようになり、誤ってケーブル23,25やエアチューブに接触することを抑制することができる。したがって、ケーブル接続部31~33及びエアチューブ接続部からケーブル23,25やエアチューブが抜けたり、ケーブル23,25やエアチューブが切断したりすることを抑制することができる。
【0044】
・所定構造(ローレット加工部16b)は、円筒状の外表面の全周にわたって設けられている。こうした構成によれば、ダイレクトティーチングにおいて、ユーザが第6アーム16を把持する周方向の位置にかかわらず、手が滑ることを抑制することができる。さらに、ユーザが第6アーム16を把持する周方向の位置にかかわらず、所定構造の部分を把持していることを手触りで確認することができる。
【0045】
・所定構造は、円筒状の外表面がローレット加工されたローレット加工部16bである。こうした構成によれば、第6アーム16を構成する既存の部材に加工を行うだけで、容易且つ低コストで所定構造を設けることができる。さらに、例えば第6アーム16の円筒状の外表面に滑り止め部材等を貼り付けた構造と比較して、滑り止め部材等が剥がれるおそれがなく、滑り止め部材等の劣化や摩耗による粉塵発生のおそれもない。
【0046】
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0047】
・ローレット加工部16b(滑り止め構造、所定パターンの凹凸、第2部分、所定構造)は、第6アーム16の円筒状の外表面に、周方向に沿って部分的に設けられていてもよい。
【0048】
図6に示すように、第6アーム16の円筒状の外表面には、周方向に沿って部分的にブラスト加工部16cが設けられていてもよい。ブラスト加工部16c(滑り止め構造、第2部分、所定構造)は、第6アーム16の円筒状の外表面がブラスト加工された部分である。ブラスト加工部16cの表面粗さは、部分16aの表面粗さよりも粗い。
【0049】
・ローレット加工部16b及びブラスト加工部16cに代えて、エッチング処理部を設けることもできる。エッチング処理部(滑り止め構造、第2部分、所定構造)は、第6アーム16の円筒状の外表面がエッチング処理された部分である。エッチング処理部の表面粗さは、部分16aの表面粗さよりも粗い。
【0050】
・第6アーム16の材質は、金属に限らず、上記の加工方法、処理方法に応じて適宜選択することができる。
【0051】
図7に示すように、第6アーム16の円筒状の外表面に、周方向に沿って複数のゴム部材16dを貼り付けることにより、滑り止め構造(所定パターンの凹凸、第2部分、所定構造)を設けることもできる。
【0052】
図8に示すように、第6アーム16の円筒状の外表面に、周方向に沿って複数の凹部16eを形成することにより、滑り止め構造(所定パターンの凹凸、所定構造)を設けることもできる。
【0053】
図9に示すように、第6アーム16における第5アーム15側の端部、及び第5アーム15における第6アーム16側の端部に、円筒状の外表面の周方向に沿ってそれぞれローレット加工部16b,15b(滑り止め構造、所定パターンの凹凸、第2部分、所定構造)を設けてもよい。こうした構成によれば、ロボット10が小さい場合であっても、ユーザが把持すべき部分を確保しやすくなる。なお、第6アーム16の円筒状の外表面全体にローレット加工部16bを設けたり、第5アーム15の円筒状の外表面全体にローレット加工部15bを設けたりすることもできる。
【0054】
・ロボット10は、垂直多関節型のロボットに限らず、水平多関節型のロボットであってもよい。ロボット10は、6軸ロボットに限らず、5軸以下の軸数のロボットや、7軸以上の軸数のロボットであってもよい。ロボット10は、ダイレクトティーチングが実行されるロボットであれば、人協働型のロボットでなくてもよく、大型のロボットであってもよい。
【0055】
なお、上記の各変更例を組み合わせて実施することもできる。
【符号の説明】
【0056】
10…ロボット、15b…ローレット加工部(滑り止め構造、所定パターンの凹凸、第2部分、所定構造)、16…第6アーム(先端アーム)、16a…部分、16b…ローレット加工部(滑り止め構造、所定パターンの凹凸、第2部分、所定構造)、16c…ブラスト加工部(滑り止め構造、第2部分、所定構造)、16d…ゴム部材(滑り止め構造、所定パターンの凹凸、第2部分、所定構造)、16e…凹部(滑り止め構造、所定パターンの凹凸、所定構造)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9