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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006717
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】キャパシタ
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/12 20060101AFI20230111BHJP
   H01G 9/08 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
H01G9/12 B
H01G9/08 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109453
(22)【出願日】2021-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000190091
【氏名又は名称】ルビコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】堀川 博数
(57)【要約】
【課題】放熱性能の高いキャパシタを提供する。
【解決手段】キャパシタ10は、キャパシタ素子11を収納したケース20と、ケース20の端面(第1の面)21に設けられた圧力弁25と、ケース20の端面21の少なくとも一部を、圧力弁25を含めて囲い、放熱用樹脂の充填用エリア28を規定するようにケース20から突き出た凸構造30を含む。凸構造30は、圧力弁25の作動時に充填用エリア28に充填される放熱用樹脂が噴き出すための噴出口35が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャパシタ素子を収納したケースと、
前記ケースの第1の面に設けられた圧力弁と、
前記ケースの前記第1の面の少なくとも一部を、前記圧力弁を含めて囲い、放熱用樹脂の充填用エリアを規定するように前記ケースから突き出た凸構造であって、前記圧力弁の作動時に前記放熱用樹脂が噴き出すための噴出口が設けられた凸構造とを有する、キャパシタ。
【請求項2】
請求項1において、
前記凸構造は、前記ケースの一部が突き出た構造を含む、キャパシタ。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記凸構造は、前記ケースの表面に樹脂により成型された構造体を含む、キャパシタ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記凸構造は、前記充填用エリアを規定するように断続的に配置された壁構造または柱構造を含む、キャパシタ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記圧力弁は吹き出し方向が異方性の部分を含み、
前記噴出口は前記圧力弁の吹き出し方向に設けられている、キャパシタ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、
前記凸構造の前記第1の面からの最大突出量は4mmである、キャパシタ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記ケースは円筒状であり、前記第1の面は前記ケースの端面を含む、キャパシタ。
【請求項8】
請求項7において、
前記凸構造の前記第1の面からの突出量hと、前記端面の直径Dとが以下の条件を満たす、キャパシタ。
0.02<h/D<1
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかにおいて、
前記凸構造の開口率OPは以下の条件を満たす、キャパシタ。
0.01<OP<0.99
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかにおいて、
放熱機能を含む構造体の壁面と前記凸構造とが接し、前記第1の面と前記壁面との間に前記放熱用樹脂が充填されるように実装されるキャパシタ。
【請求項11】
請求項1ないし9のいずれかに記載のキャパシタと、放熱機能を含む構造体とを有し、
前記構造体の壁面と前記凸構造とが接し、前記第1の面と前記壁面との間の前記充填用エリアに前記放熱用樹脂が充填されている装置。
【請求項12】
キャパシタの実装方法であって、
前記キャパシタは、キャパシタ素子を収納したケースと、
前記ケースの第1の面に設けられた圧力弁と、
前記ケースの前記第1の面の少なくとも一部を、前記圧力弁を含めて囲い、放熱用樹脂の充填用エリアを規定するように前記ケースから突き出た凸構造であって、前記圧力弁の作動時に前記放熱用樹脂が噴き出すための噴出口が設けられた凸構造とを有し、
当該実装方法は、前記キャパシタを、前記ケースの前記第1の面の前記凸構造が、放熱機能を含む構造体の壁面と接するように配置することと、
前記第1の面と前記壁面との間の前記充填用エリアに前記放熱用樹脂を充填することとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサなどのキャパシタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、放熱性を向上し、耐リプル性に優れた電解コンデンサを提供することが記載されている。この文献では、コンデンサ素子をケースに収納し、このケースに蓋を取り付けて密封した電解コンデンサにおいて、コンデンサ素子をケースの少なくとも底面に接触するとともに、前記ケースの内側底面又は蓋の裏面の少なくともどちらか一方に、弾性体を被覆し、前記コンデンサ素子の巻芯に挿入した突起を設けることを特徴とする電解コンデンサが開示されている。
【0003】
特許文献2には、小型化を図るとともに、放熱性が良く適切な寿命を確保することが可能な電子機器を提供することが記載されている。この文献の電子機器は、ケースと、アルミ電解コンデンサと、トランスと、放熱ゲルシートとを備えている。ケースは、アルミ電解コンデンサ及びトランスが内部に配置されている。放熱ゲルシートは、前記ケースとアルミ電解コンデンサの間に配置され、前記ケースとアルミ電解コンデンサに接触して配置されている。
【0004】
特許文献3には、放熱性を向上させることが可能な電解コンデンサの冷却構造および電解コンデンサユニットを提供することが記載されている。この文献の電解コンデンサユニットは、第1面を備えた放熱性樹脂と、放熱性樹脂と一体的に設けられ、防爆弁を有し、防爆弁を第1面側にして並べられた複数の電解コンデンサと、を備えた電解コンデンサユニットと、第2面を備え、第1面に第2面を熱的に接触させるように取り付けられた放熱性部材と、を備え、第1面および第2面の少なくとも一方に、複数の防爆弁の全てを外気に通気させる通気経路を設け、通気経路は、複数の防爆弁のうちの少なくとも1つの防爆弁を他の少なくとも1つの防爆弁を介して外気に通気させる通気溝を有する。
【0005】
特許文献4には圧力弁の作動圧力を高くすることなく、圧力弁の作動を遅らせることが記載されている。この文献のコンデンサは、底面に溝状の圧力弁が形成されており、電解液が含浸されたコンデンサ素子を収納する外装ケースの底面に、圧力弁と重ならない領域であり、かつ、外装ケースの底面の外縁より内側の領域に少なくとも3つの凹部を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10-149959号公報
【特許文献2】特開2015-177070号公報
【特許文献3】特開2017-168778号公報
【特許文献4】特開2015-88504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、車載製品等に採用されるキャパシタにおいて、入力側の高リプル化、高耐熱化および高容量化が望まれている。リプル電流の負荷が大きな状態でキャパシタを使用すると内部発熱により製品寿命が低下する可能性がある。この現象は特に高温での使用時に顕著となる。このため、キャパシタ自身の材料や内部構造を見直すことで発熱の低減を行っている。しかしながら、更なる高リプル化のため、回路設計側あるいは装置側でキャパシタに対する放熱を促す技術が重要となっている。例えば、キャパシタに放熱板を設ける際に、それらの間に放熱用樹脂を充填し、放熱効果を上げる技術が提案されている。一方、電解コンデンサなどのキャパシタでは、円筒形アルミニウムケースのケース底面に圧力弁(防爆弁)が設けられており、ケース底面と放熱板との間に放熱用樹脂を充填してしまうと圧力弁の作動を妨げる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、キャパシタ素子を収納したケースと、ケースの第1の面に設けられた圧力弁と、ケースの第1の面の少なくとも一部を、圧力弁を含めて囲い、放熱用樹脂の充填用エリアを規定するようにケースから突き出た凸構造であって、圧力弁の作動時に放熱用樹脂が噴き出すための噴出口が設けられた凸構造とを有するキャパシタである。圧力弁から放出される、キャパシタ内において発生したガス成分が噴出口から吹き出されてもよい。このキャパシタにおいては、圧力弁を含めたケースの一部を囲うように凸構造を設けて充填用エリアを規定するとともに、噴出口を設定して圧力弁の作動時に放熱用樹脂が充填用エリアから噴き出すことを可能とする。このため、ケースの圧力弁を含めた面(領域)を、放熱用樹脂を介した熱伝達のために使用できる。したがって、放熱板などの放熱機能を備えた構造体を積極的に利用した、放熱能力(放熱性能)が高い状態で安全に実装可能なキャパシタを提供できる。
【0009】
圧力弁を含む第1の面に設けられた噴出口を設けた凸構造は、圧力弁の機能が阻害されることを抑制できる。したがって、従来、熱伝達用の領域として使用が難しかった圧力弁が設けられた面(面積)を放熱のため使用できる。さらに、凸構造により放熱用樹脂を支持可能とすることにより、密着性が高く、熱伝達率が高いが強度が比較的低い、グリース状またはゲル状のシリコーン樹脂などの放熱用樹脂を安定した状態で使用できる。また、低強度の放熱用樹脂を用いることにより圧力弁の機能が阻害されることを抑制できる。
【0010】
凸構造は、ケースの一部が、プレスなどの加工により突き出た構造を含んでもよい。凸構造は、ケースの表面に樹脂により成型された構造体を含んでもよい。凸構造は、充填用エリアを規定するように断続的に配置された壁構造または柱構造を含んでもよい。圧力弁の吹き出し方向が異方性の部分を含む場合は、噴出口は圧力弁の吹き出し方向に設けられていてもよい。
【0011】
凸構造の第1の面からの最大突出量は4mmであってもよい。ケースは円筒状であってもよく、第1の面はケースの端面、例えば底面を含んでいてもよい。凸構造の第1の面からの突出量hと、端面の直径Dとが以下の条件(1)を満たしてもよい。
0.02<h/D<1・・・(1)
凸構造の開口率OPは以下の条件(2)を満たしてもよい。
0.01<OP<0.99・・・(2)
条件(1)の下限は0.05、上限は0.8であってもよく、条件(2)の下限は、0.1であってもよく、上限は、0.5であってもよい。
【0012】
本発明の他の態様の1つは、上記に記載のキャパシタと、放熱機能を含む構造体とを有し、キャパシタのケースの第1の面が構造体の壁面と対峙するように配置され、第1の面と前記壁面との間に放熱用樹脂が充填された装置、例えば、電源装置、充電装置、コンバーターなどの電子機器あるいは電気機器である。
【0013】
本発明のさらに異なる他の態様の1つは、キャパシタの実装方法であって、キャパシタを、ケースの第1の面の凸構造が、放熱機能を含む構造体の壁面と接するように配置することと、第1の面と壁面との間の充填用エリアに放熱用樹脂を充填することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】キャパシタの概要を示す斜視図。
図2図2(a)はキャパシタを実装する状態を示し、図2(b)はキャパシタを底面方向から見た状態を示す図。
図3図3(a)はキャパシタが実装された状態を示し、図3(b)は実装されたキャパシタを、放熱板を透かして示す図。
図4図4(a)は異なる例のキャパシタが実装された状態を示し、図4(b)は実装されたキャパシタを、放熱板を透かして示す図。
図5図5(a)はさらに異なる例のキャパシタが実装された状態を示し、図5(b)は実装されたキャパシタを、放熱板を透かして示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に、本発明に係るキャパシタの一例を示している。このキャパシタ(コンデンサ、蓄電器)10は、キャパシタ素子11を収納したケース20と、ケース20の端面(第1の面)21に設けられた圧力弁25と、ケース20の端面21の少なくとも一部を、圧力弁25を含めて囲い、放熱用樹脂の充填用エリア28を規定するようにケース20から突き出た凸構造30を含む。凸構造30には、圧力弁25の作動時に充填用エリア28に充填される放熱用樹脂が噴き出すための噴出口35が設けられている。圧力弁25が作動する要因となるキャパシタ10内で発生したガス成分は放熱用樹脂とともに噴出口35から吹き出されてもよい。
【0016】
キャパシタ10の一例は電解コンデンサである。キャパシタ素子(コンデンサ素子)11の一例は、陽極箔と陰極箔との間に、電解紙などからなるセパレータを介在させて巻回したものである。陽極箔の一例は、両面に酸化皮膜層を有するアルミニウム箔であり、陽極箔および陰極箔はそれぞれリードタブを介して一対の端子12に接続されている。キャパシタ素子11は電解液が含浸された状態で、外装ケース20に収納され、開口部が、端子12が突き出た状態で封口体15により密閉される。キャパシタ10は、固体電解コンデンサ、例えば、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ(導電性高分子コンデンサ)であってもよく、電気二重層キャパシタであってもよい。本発明の対象となるキャパシタ10は、圧力弁25が設けられるタイプのキャパシタ(コンデンサ)であればよい。
【0017】
外装ケース20の一例は、有底円筒状であって、例えばアルミニウム等の金属で形成されている。ケース20の端面(底面、第1の面)21の中央部の外表面には、K字状の溝(溝部)26が形成され、溝部26により形成された薄肉部により圧力弁(防爆弁、安全弁)25が構成されている。K字状(K字型)の溝26は、十字状であってもよく、Y字状、ψ字状、偏った十字状(十字型)などであってもよく、底面21において交差または接する複数の溝部26で構成されていればよい。十字型などの回転対象な溝26から構成される圧力弁25に対して、K字状、偏った十字状などの回転非対称の形状の溝26から構成される圧力弁25は、吹き出し方向に異方性の部分を含み、本発明において、より好ましい形状の圧力弁である。
【0018】
キャパシタ10は、典型的には、電源回路などにおいてICへの負荷電流が変動することにより流れる電流(リプル電流、リップル電流)により自己発熱する。このため、高リプル対応のキャパシタ10を提供するためには放熱能力(放熱機能)を向上することが望ましい。さらに、自己発熱によりケース20の内圧が所定の値を超えたときに封口体15が破壊されるよりも前に圧力弁25からのケース20内部の気体または液体を放出することによりキャパシタ10の崩壊を未然に防止することが重要となる。このため、圧力弁25はケース20の内圧が、封口体15が変形するよりも低い段階で溝部26に亀裂を発生させてケース20の内圧の上昇を抑制するように設けられる。円筒状のケース20の場合、典型的には直径Dは6~40mmであり、軸方向の長さLは5~150mmである。しかしながら、キャパシタ10のケース20の大きさはこれらの値に限定されるものではない。
【0019】
キャパシタ10は、ケース20の円形の底面(第1の面)21の外周部がプレス加工などにより底面21から立ち上がった凸構造(凸構造体)30を含む。具体的には、凸構造30は、ケース20の底面21の外周に沿った一部が間隔34を設けて断続的に壁状に立ち上がった複数の壁構造(壁体)33を含む。キャパシタ10は、底面21の中央部分にはK字状の圧力弁25を含み、凸構造30は、底面21の圧力弁25を含む領域28を囲い、凸構造30に囲われた内部の領域28を放熱用樹脂の充填用エリア28として規定する。
【0020】
図2に、キャパシタ10を含む装置、例えば、電源装置1を組み立てる様子を示している。電源装置1は、充電装置、コンバーターであってもよく、これらを含む電子機器あるいは電気機器であってもよい。図2(a)に示すように、電源装置1は、放熱機能を含む構造体、例えば外壁または放熱板5と、キャパシタ10と、キャパシタ10が取り付けられた回路基板3とを含む。キャパシタ10は、ケース20の底面(第1の面)21が構造体である放熱板5の壁面5aと対峙するように配置される。底面21には、図2(b)に示すように、圧力弁25と、それを囲うように、底面21の外周に沿って凸構造30が設けられている。
【0021】
図3(a)および(b)に示すように、電源装置1の放熱板5は、壁面5aがキャパシタ10の凸構造30に対峙して接するように配置され、ケース20の底面21と、放熱板5の壁面5aとの間の、凸構造30により囲われた充填用エリア28に放熱用樹脂50が充填される。放熱性を有する樹脂50としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、合成ゴム等を挙げることができる。樹脂50の物性値としては、破断強度が測定法(JIS K 6251)で3Mps以下であってもよく、ヤング率の範囲が0.2~8Mpaであってもよく、0.5MPs~3Mpsの範囲であってもよい。樹脂は柔らかいものであってもよく、例えば、ガラス転移点Tgが0℃以下の領域にある樹脂であってもよい。樹脂は、ガラス転移点Tgが-20℃以下の領域の樹脂であってもよく、-30℃以下の領域の樹脂であってもよく、-40℃以下の領域の樹脂であってもよい。例えば、シリコーンゴムのガラス転移点Tgは-123℃であり、ポリエチレンは-125℃であり、ポリウレタンは-20℃であり、ポリフッ化ビニリデンは-35℃であり、室温状態で十分に柔らかいものである。
【0022】
本例においては、充填用エリア28が凸構造30により囲われているので、グリース状またはゲル状のシリコーン樹脂などの比較的強度が低く、柔軟性の高い、粘性のある、または、非可塑性の放熱用樹脂50を放熱板5とケース20の底面21との間に、安定した状態で充填することが可能であり、放熱板5および底面21との密着性を確保しやすい。このため、放熱板5とケース20とを熱伝導が良好な状態で接続でき、放熱板5を介して自己発熱を効率的に放熱できる状態でキャパシタ10を実装できる。
【0023】
一方、図3(a)および(b)の矢印55に示すように、圧力弁25が動作した場合は、比較的強度が低く、柔軟性の高い、粘性のある、または、非可塑性の放熱用樹脂50が、圧力弁25から放出される気体または液体の圧力により、凸構造30の壁体(壁構造)33の間34から充填用エリア28の外に向けて放出(噴出)される。圧力弁25が動作した際に、充填用エリア28の内部の圧力が高まるが、充填用エリア28を囲う凸構造30は、壁体33とその間の隙間34とを含み、隙間34の部分に圧力が集中しやすい。このため、充填用エリア28内の圧力上昇が比較的低い場合であっても、充填用エリア28の放熱用樹脂50は、隙間34を噴出口35として外に向かって放出または押し出される。このため、圧力弁25は、放熱用樹脂50により覆われていても、ケース20の内圧が発熱などにより上昇し、所定の圧力に達すると圧力弁25として正常に動作できる。
【0024】
さらに、圧力弁25はK字状または矢印状に複数の溝部26が組み合わされた、回転対称ではなく、異方性がある形状であり、内圧が高くなったときに圧力弁25から噴出される気体あるいは液体の方向は異方性があり、溝部26が矢印状に組み合わされた方向(本例では矢印55の方向)に主に噴出される。このため、噴出口35の方向を、圧力弁25の吹き出し方向と合致させることにより、充填用エリア28に塗布あるいは注入された放熱用樹脂50をさらに容易に噴出または押し出すことができる。
【0025】
近年、車載製品等の入力側に用いられるキャパシタ10の高リプル化、高容量化が望まれている。キャパシタ10を高リプル化するためには、内部発熱による製品寿命の低下を抑制するために、キャパシタ10の材料や内部構造を見直すことで自己発熱を低減することが行われてきた。さらに、高いリプル電流に対応できるキャパシタ10を提供するためには、電源装置1などの回路設計側との放熱技術のマッチングあるいは協働が重要になっている。その1つは、放熱板とキャパシタとの間に放熱用樹脂(放熱用の樹脂)を注入あるいは挿入することにより放熱効果を上げることである。しかしながら、キャパシタ10に樹脂を塗布したり、キャパシタ10の一部に樹脂を密着させる際は圧力弁25の動作を妨げないようにする必要がある。
【0026】
圧力弁25は、キャパシタ10のケース20の強度を部分的に低下させることになるため、ケース20の構造的に安定した部分に通常設けられる。例えば、ケース20が円筒形アルミニウムケースの場合は、ケース20の底面21に設けられる。一方、ケース20に放熱用樹脂50を塗布する場合、放熱板5との接触面積が確保でき、さらに、形状として安定した、例えば平面状の部分であることが望ましく、円筒型ケース20の場合、その底面21が最も適している。しかしながら、底面21に樹脂50を塗布することは、圧力弁25上への塗布となり、圧力弁25の作動を妨げるという発想により行われていなかった。
【0027】
本例のキャパシタ10は、上記の従来の発想を覆すものであり、圧力弁25の上に塗布された樹脂50を圧力弁25の動作により吹き飛ばすことを可能とするものである。すなわち、キャパシタ10の底面21の外周に沿って凸構造30を設け、凸構造30を放熱板5などの放熱構造に接地させることで圧力弁25の上に塗布される樹脂50の厚みを圧力弁25の動作を妨げない範囲に制御する。それと共に、凸構造30に噴出口35を設けることにより、樹脂50を囲う構造に強弱を設け、強度の低い噴出口35から樹脂50が噴出されるようにする。これにより、放熱用樹脂50により圧力弁25が覆われても圧力弁25の作動範囲を確保し、圧力弁25を正常に作動させることが可能となる。したがって、圧力弁25が設けられた底面21を通じてさらに放熱が促されるようにキャパシタ10を実装できる。
【0028】
凸構造30の底面(第1の面)21からの最大突出量hは0.1~4.0mmであってもよい。ケース20が円筒状であって円形の底面(端面)21に凸構造30を設ける場合、その突出量hは、底面21の直径Dに対し以下の条件(1)を満たしてもよい。
0.02<h/D<1・・・(1)
凸構造の開口率OP、例えば、壁体33に対する隙間34の割合は以下の条件(2)を満たしてもよい。
0.01<OP<0.99・・・(2)
ケース20の底外周部の突起(壁体)33同士は間隔34をあけ、圧力弁25の作動時に放出されるガスおよびケース20の底面21上に塗布した放熱用樹脂50を突起33の間の隙間34から外部へ押し出される様にする。
【0029】
図4にキャパシタの異なる例を示している。このキャパシタ10aは、円筒状のケース20の底面21の外周に沿って凸構造30が形成されており、キャパシタ10aを、ケース20の底面21の凸構造30が、放熱機能を含む構造体5の壁面5aと接地するように配置し、底面21と壁面5aとの間の充填用エリア28に放熱用樹脂50を充填することにより放熱能力が高い状態でキャパシタ10aを実装できる。このキャパシタ10aは、このような高い放熱効果が得られる実装方法を採用可能とするものである。したがって、リプル電流が増加して自己発熱が増加してもキャパシタ10aの温度上昇を抑制することができ、高リプル対応のキャパシタを実装できる。
【0030】
対応の本例の凸構造30は、複数の壁状の突起33が樹脂により成型されている。突起33を成型する樹脂としては、エポキシ樹脂、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、フェノール樹脂、感光性樹脂、熱硬化樹脂などを挙げることができる。
【0031】
底面21に設けられた圧力弁25は、強度の異なる溝部26aおよび26bの組み合わせにより構成されている。圧力弁25の一例は偏った十字状であり、短手方向の溝26aが所定の圧力で開く深さを備えており、長手方向の溝部26bは、それよりも浅く、ダミーパターンとして機能する。圧力弁25は、溝部26aが開いて動作したときに、長手方向の溝部26bが変形し、圧力弁25から吹き出される気体の方向に異方性を与えることができる。特に、圧力弁25から吹き出される気体の方向を底面21に沿った方向に偏心できる。
【0032】
この例では、凸構造30の噴出口35の方向と、圧力弁25の偏った十字の方向が矢印55の方向に一致している。このため、圧力弁25が動作すると、圧力弁25から気体が底面21に沿って噴出口35の方向に吹き出される。このため、圧力弁25を覆っていた放熱用樹脂50は、底面21に面して配置された放熱板5に妨げられることなく、簡単に噴出口35から吹き出され、放熱用樹脂50が圧力弁25の動作の障害となることを抑制できる。
【0033】
図5にキャパシタのさらに異なる例を示している。このキャパシタ10bは、円筒状のケース20の底面21の外周に沿って樹脂により成型された複数の柱状(柱構造)の突起33により凸構造30が構成されている。キャパシタ10bのケース20の底面21に設けられた圧力弁25は、図4に示したキャパシタ10aと同様に、強度の異なる溝部26aおよび26bの組み合わせにより構成され、吹き出し方向を制御できるようになっている。このため、圧力弁25を覆っていた放熱用樹脂50は、底面21に面して配置された放熱板5に妨げられることなく、簡単に噴出口35から吹き出され、放熱用樹脂50が圧力弁25の動作の障害となることを抑制できる。一方、ケース20の底面21には、ほぼ全面にわたり放熱用樹脂50を塗布できるので、放熱能力の高い状態でキャパシタ10bを実装できる。
【符号の説明】
【0034】
10、10a、10b キャパシタ
20 ケース、 21 底面
30 凸構造、 33 突起、 34 隙間、 35 噴出口
50 放熱用樹脂
図1
図2
図3
図4
図5