(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067173
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】車両の駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
H02K 11/30 20160101AFI20230509BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20230509BHJP
【FI】
H02K11/30
H02K9/19 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178193
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆之
(72)【発明者】
【氏名】林口 匡司
【テーマコード(参考)】
5H609
5H611
【Fターム(参考)】
5H609BB03
5H609PP02
5H609PP06
5H609PP09
5H609PP17
5H609QQ04
5H609QQ05
5H609QQ08
5H611AA09
5H611BB01
5H611BB02
5H611BB07
5H611BB08
5H611TT01
5H611UA04
(57)【要約】
【課題】モータ及びインバータからなる駆動ユニットの大型化を抑えつつ、モータ出力を増大させ、パワーモジュールからコイルへの経路のインダクタンスを低減・平準化する。
【解決手段】駆動ユニットでは、モータと、複数パワーモジュールを有するインバータと、がモータ軸方向に隣接する。モータでは、UVW相コイルを1つずつ含む第1コイル群及び第2コイル群が構成される。複数パワーモジュールは、並列接続された第1パワーモジュール群及び第2パワージュール群を構成する。第1パワーモジュール群及び第2パワーモジュール群は、UVW相パワーモジュールを1つずつ含む。第1パワーモジュール群U相パワーモジュールと第1コイル群U相コイルとの距離と、第1パワーモジュール群V相パワーモジュールと第1コイル群V相コイルとの距離と、第1パワーモジュール群W相パワーモジュールと第1コイル群W相コイルとの距離とは、軸方向に見て互いに等しい。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、複数のパワーモジュールを有するインバータと、が前記モータの軸方向に隣接して配置された車両の駆動ユニットであって、
各前記パワーモジュールは、前記軸方向に直交する載置面に載置されており、
前記モータでは、U相コイル、V相コイル及びW相コイルを1つずつ含むコイル群として、少なくとも第1コイル群及び第2コイル群が構成されており、
前記複数のパワーモジュールは、互いに並列接続された少なくとも第1パワーモジュール群及び第2パワージュール群を構成しており、
前記第1パワーモジュール群及び前記第2パワーモジュール群は、それぞれ、前記U相コイル、前記V相コイル及び前記W相コイルに対応したU相パワーモジュール、V相パワーモジュール及びW相パワーモジュールを1つずつ含み、
前記第1パワーモジュール群の前記各パワーモジュールは、前記第1コイル群の各前記コイルに接続されており、
前記第2パワーモジュール群の前記各パワーモジュールは、前記第2コイル群の前記各コイルに接続されており、
前記第1パワーモジュール群の前記U相パワーモジュールと前記第1コイル群の前記U相コイルとの距離と、前記第1パワーモジュール群の前記V相パワーモジュールと前記第1コイル群の前記V相コイルとの距離と、前記第1パワーモジュール群の前記W相パワーモジュールと前記第1コイル群の前記W相コイルとの距離とは、前記軸方向に見て、互いに等しい、車両の駆動ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の駆動ユニットにおいて、
前記第2パワーモジュール群の前記U相パワーモジュールと前記第2コイル群の前記U相コイルとの距離と、前記第2パワーモジュール群の前記V相パワーモジュールと前記第2コイル群の前記V相コイルとの距離と、前記第2パワーモジュール群の前記W相パワーモジュールと前記第2コイル群の前記W相コイルとの距離とは、前記軸方向に見て、互いに等しい、車両の駆動ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両の駆動ユニットにおいて、
前記第1パワーモジュール群の前記U相パワーモジュールと前記第1コイル群の前記U相コイルとの距離と、前記第2パワーモジュール群の前記U相パワーモジュールと前記第2コイル群の前記U相コイルとの距離とは、前記軸方向に見て、互いに等しく、
前記第1パワーモジュール群の前記V相パワーモジュールと前記第1コイル群の前記V相コイルとの距離と、前記第2パワーモジュール群の前記V相パワーモジュールと前記第2コイル群の前記V相コイルとの距離とは、前記軸方向に見て、互いに等しく、
前記第1パワーモジュール群の前記W相パワーモジュールと前記第1コイル群の前記W相コイルとの距離と、前記第2パワーモジュール群の前記W相パワーモジュールと前記第2コイル群の前記W相コイルとの距離とは、前記軸方向に見て、互いに等しい、車両の駆動ユニット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の車両の駆動ユニットにおいて、
前記モータでは、前記U相コイル、前記V相コイル及び前記W相コイル各々が、少なくとも2箇所に配置されるように集中巻きされており、
前記第1パワーモジュール群の前記U相パワーモジュールは、前記軸方向に見て、前記第1コイル群の前記U相コイルに重なる位置に配置されており、
前記第1パワーモジュール群の前記V相パワーモジュールは、前記軸方向に見て、前記第1コイル群の前記V相コイルに重なる位置に配置されており、
前記第1パワーモジュール群の前記W相パワーモジュールは、前記軸方向に見て、前記第1コイル群の前記W相コイルに重なる位置に配置されている、車両の駆動ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載の車両の駆動ユニットにおいて、
前記第2パワーモジュール群の前記U相パワーモジュールは、前記軸方向に見て、前記第2コイル群の前記U相コイルに重なる位置に配置されており、
前記第2パワーモジュール群の前記V相パワーモジュールは、前記軸方向に見て、前記第2コイル群の前記V相コイルに重なる位置に配置されており、
前記第2パワーモジュール群の前記W相パワーモジュールは、前記軸方向に見て、前記第2コイル群の前記W相コイルに重なる位置に配置されている、車両の駆動ユニット。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の車両の駆動ユニットにおいて、
前記第1パワーモジュール群の前記各パワーモジュールは、前記モータの径方向一方側に配置されており、
前記第2パワーモジュール群の前記各パワーモジュールは、前記径方向他方側に配置されており、
前記第1パワーモジュール群の前記U相パワーモジュールと前記第2パワーモジュール群の前記U相パワーモジュールとは、前記径方向に互いに対向しており、
前記第1パワーモジュール群の前記V相パワーモジュールと前記第2パワーモジュール群の前記V相パワーモジュールとは、前記径方向に互いに対向しており、
前記第1パワーモジュール群の前記W相パワーモジュールと前記第2パワーモジュール群の前記W相パワーモジュールとは、前記径方向に互いに対向している、車両の駆動ユニット。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の車両の駆動ユニットにおいて、
前記各パワーモジュールと前記各コイルとの間には、少なくとも出力用バスバーが介在しており、
前記出力用バスバーは、前記モータの周方向に沿うように、幅広に構成されている、車両の駆動ユニット。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の車両の駆動ユニットにおいて、
前記インバータは、前記載置面に載置された平滑コンデンサを有する、車両の駆動ユニット。
【請求項9】
請求項8に記載の車両の駆動ユニットにおいて、
前記平滑コンデンサと前記各パワーモジュールとは、入力用バスバーとしての負極側バスバー及び正極側バスバーによって互いに接続されており、
前記入力用バスバーの一端部は、前記平滑コンデンサに接続されており、
前記入力用バスバーの他端部は、前記各パワーモジュールに接続されており、
前記入力用バスバーのインダクタンスは、前記入力用バスバーにおける前記一端部から前記他端部に至る長さの関数であり、
前記関数は、互いに異なる第1長さ及び第2長さで同じ前記インダクタンスとなるように、極小値を有し、
前記負極側バスバー及び前記正極側バスバーのうちの一方の長さは、前記第1長さであり、
前記負極側バスバー及び前記正極側バスバーのうちの他方の長さは、前記第2長さである、車両の駆動ユニット。
【請求項10】
モータと、複数のパワーモジュールを有するインバータと、が前記モータの軸方向に隣接して配置された車両の駆動ユニットであって、
各前記パワーモジュールは、前記軸方向に直交する載置面に載置されており、
前記モータでは、U相コイル、V相コイル及びW相コイルを1つずつ含むコイル群として、少なくとも第1コイル群及び第2コイル群が構成されており、
前記複数のパワーモジュールは、互いに並列接続された少なくとも第1パワーモジュール群及び第2パワージュール群を構成しており、
前記第1パワーモジュール群及び前記第2パワーモジュール群は、それぞれ、前記U相コイル、前記V相コイル及び前記W相コイルに対応したU相パワーモジュール、V相パワーモジュール及びW相パワーモジュールを1つずつ含み、
前記第1パワーモジュール群の前記各パワーモジュールは、前記第1コイル群の各前記コイルに接続されており、
前記第2パワーモジュール群の前記各パワーモジュールは、前記第2コイル群の前記各コイルに接続されており、
前記第1パワーモジュール群の前記U相パワーモジュールは、前記軸方向に見て、前記第1コイル群の前記U相コイルに重なる位置に配置されており、
前記第1パワーモジュール群の前記V相パワーモジュールは、前記軸方向に見て、前記第1コイル群の前記V相コイルに重なる位置に配置されており、
前記第1パワーモジュール群の前記W相パワーモジュールは、前記軸方向に見て、前記第1コイル群の前記W相コイルに重なる位置に配置されている、車両の駆動ユニット。
【請求項11】
請求項10に記載の車両の駆動ユニットにおいて、
前記第2パワーモジュール群の前記U相パワーモジュールは、前記軸方向に見て、前記第2コイル群の前記U相コイルに重なる位置に配置されており、
前記第2パワーモジュール群の前記V相パワーモジュールは、前記軸方向に見て、前記第2コイル群の前記V相コイルに重なる位置に配置されており、
前記第2パワーモジュール群の前記W相パワーモジュールは、前記軸方向に見て、前記第2コイル群の前記W相コイルに重なる位置に配置されている、車両の駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータ及びインバータを備える車両の駆動ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリからの直流電流をインバータによって交流電流に変換してモータを駆動する駆動ユニットが知られている。インバータは、スイッチング素子を含むパワーモジュールを、有する。特許文献1に開示のインバータは、U相パワーモジュール、V相パワーモジュール及びW相パワーモジュールを含むパワーモジュールユニットを、備える。各相パワーモジュールは、モータの各相コイルに対応する。
【0003】
この種のインバータは、大きな電力を扱うため、高電圧が印加されて大電流が流れる。このため、作動時の発熱量が多く、冷却が必要である。大きなサージ電圧も発生する。そのため、インバータを構成する個々の電子部品も大きくなり、重量も重くなりやすい。したがって、従来のインバータは、燃費及び電費の向上を妨げる要因となっている。
【0004】
また、送電距離を短くするために、インバータは、通常、駆動モータの近くに配置される。しかし、自動車の場合、設置する装置が多く、インバータを配置できるスペースは限られる。車体のバランスを考慮する必要もある。このため、大型且つ高重量なインバータを自動車に適切に配置するのは難しい。
【0005】
このような課題に対し、特許文献1では、インバータをモータに一体化することによって、インバータを小型軽量化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インバータの各相パワーモジュールは、電気接続部材を介して、モータの各相コイルに接続される。電気接続部材には大電流が流れるため、電気接続部材は、大型且つ高重量である。電気接続部材の配線長が長くなると、その分だけ電気抵抗が高くなり、通電時に銅損が発生する。電気接続部材は、発熱量も多い。しかも、インバータでは、スイッチング制御によって大電流が高速でオン・オフされるので、それに伴って、大きな磁気的変化が電気接続部材で発生する。
【0008】
これにより、インバータの作動時には、磁気的変化に起因して、騒音、振動、電磁障害等が、電気接続部材で発生する。騒音、振動、電磁障害等は、エネルギー損失になるとともに、自動車の性能に様々な悪影響を及ぼすので、対策が必要である。
【0009】
したがって、モータ制御の観点において、各相パワーモジュールからモータの各相コイルに至る電気経路のインダクタンスを、低減するとともに、U相、V相、W相の間で平準化することが重要である。特に、モータの出力が大きい場合には、上記電気経路のインダクタンスを低減及び平準化することがより重要になる。
【0010】
一方、モータの出力を増大させるためには、インバータにおけるパワーモジュールの個数を増やす必要がある。しかしながら、パワーモジュールの増加に伴って、インバータが大型化することは避けたい。
【0011】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、モータ及びインバータで構成される駆動ユニットの大型化を抑制しつつ、モータ出力を増大させるとともに、各相パワーモジュールから各相コイルに至る電気経路のインダクタンスを低減及び平準化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の第1の態様に係る車両の駆動ユニットは、モータと、複数のパワーモジュールを有するインバータと、が上記モータの軸方向に隣接して配置された車両の駆動ユニットであって、各上記パワーモジュールは、上記軸方向に直交する載置面に載置されており、上記モータでは、U相コイル、V相コイル及びW相コイルを1つずつ含むコイル群として、少なくとも第1コイル群及び第2コイル群が構成されており、上記複数のパワーモジュールは、互いに並列接続された少なくとも第1パワーモジュール群及び第2パワージュール群を構成しており、上記第1パワーモジュール群及び上記第2パワーモジュール群は、それぞれ、上記U相コイル、上記V相コイル及び上記W相コイルに対応したU相パワーモジュール、V相パワーモジュール及びW相パワーモジュールを1つずつ含み、上記第1パワーモジュール群の上記各パワーモジュールは、上記第1コイル群の各上記コイルに接続されており、上記第2パワーモジュール群の上記各パワーモジュールは、上記第2コイル群の上記各コイルに接続されており、上記第1パワーモジュール群の上記U相パワーモジュールと上記第1コイル群の上記U相コイルとの距離と、上記第1パワーモジュール群の上記V相パワーモジュールと上記第1コイル群の上記V相コイルとの距離と、上記第1パワーモジュール群の上記W相パワーモジュールと上記第1コイル群の上記W相コイルとの距離とは、上記軸方向に見て、互いに等しい。
【0013】
かかる構成によれば、インバータにおいて第1パワーモジュール群と第2パワーモジュール群とが互いに並列接続されているので、モータの出力を増大させることができる。
【0014】
また、各パワーモジュールがモータ軸方向に直交する載置面に並んで載置されているので、パワーモジュールの個数を増加させたにもかかわらず、インバータの軸方向長さの増大を抑制することができる。
【0015】
また、モータとインバータとがモータ軸方向に隣接配置されるので、各相パワーモジュールと各相コイルとの距離を、短くすることができる。このため、各相パワーモジュールから各相コイルに至る電気経路のインダクタンスを、低減することができる。
【0016】
さらに、第1パワーモジュール群及び第1コイル群において、各相パワーモジュールと各相コイルとの距離は、U相、V相、W相の間で、モータ軸方向に見て互いに等しい。このため、第1パワーモジュール群及び第1コイル群において、各相パワーモジュールから各相コイルに至る電気経路のインダクタンスを、U相、V相、W相の間で、平準化することができる。
【0017】
以上、モータ及びインバータで構成される駆動ユニットの大型化を抑制しつつ、モータ出力を増大させるとともに、各相パワーモジュールから各相コイルに至る電気経路のインダクタンスを低減及び平準化することができる。
【0018】
一実施形態では、上記第2パワーモジュール群の上記U相パワーモジュールと上記第2コイル群の上記U相コイルとの距離と、上記第2パワーモジュール群の上記V相パワーモジュールと上記第2コイル群の上記V相コイルとの距離と、上記第2パワーモジュール群の上記W相パワーモジュールと上記第2コイル群の上記W相コイルとの距離とは、上記軸方向に見て、互いに等しい。
【0019】
かかる構成によれば、第2パワーモジュール群及び第2コイル群においても、第1パワーモジュール群及び第1コイル群と同様に、各相パワーモジュールから各相コイルに至る電気経路のインダクタンスを、U相、V相、W相の間で、平準化することができる。
【0020】
一実施形態では、上記第1パワーモジュール群の上記U相パワーモジュールと上記第1コイル群の上記U相コイルとの距離と、上記第2パワーモジュール群の上記U相パワーモジュールと上記第2コイル群の上記U相コイルとの距離とは、上記軸方向に見て、互いに等しく、上記第1パワーモジュール群の上記V相パワーモジュールと上記第1コイル群の上記V相コイルとの距離と、上記第2パワーモジュール群の上記V相パワーモジュールと上記第2コイル群の上記V相コイルとの距離とは、上記軸方向に見て、互いに等しく、上記第1パワーモジュール群の上記W相パワーモジュールと上記第1コイル群の上記W相コイルとの距離と、上記第2パワーモジュール群の上記W相パワーモジュールと上記第2コイル群の上記W相コイルとの距離とは、上記軸方向に見て、互いに等しい。
【0021】
かかる構成によれば、第1パワーモジュール群及び第1コイル群と、第2パワーモジュール群及び第2コイル群との間において、各相パワーモジュールから各相コイルに至る電気経路のインダクタンスを平準化することができる。
【0022】
一実施形態では、上記モータでは、上記U相コイル、上記V相コイル及び上記W相コイル各々が、少なくとも2箇所に配置されるように集中巻きされており、上記第1パワーモジュール群の上記U相パワーモジュールは、上記軸方向に見て、上記第1コイル群の上記U相コイルに重なる位置に配置されており、上記第1パワーモジュール群の上記V相パワーモジュールは、上記軸方向に見て、上記第1コイル群の上記V相コイルに重なる位置に配置されており、上記第1パワーモジュール群の上記W相パワーモジュールは、上記軸方向に見て、上記第1コイル群の上記W相コイルに重なる位置に配置されている。
【0023】
かかる構成によれば、第1パワーモジュール群及び第1コイル群において、各相パワーモジュールと各相コイルとの距離を、より短くすることができる。このため、第1パワーモジュール群及び第1コイル群において、各相パワーモジュールから各相コイルに至る電気経路のインダクタンスを、より低減することができる。
【0024】
一実施形態では、上記第2パワーモジュール群の上記U相パワーモジュールは、上記軸方向に見て、上記第2コイル群の上記U相コイルに重なる位置に配置されており、上記第2パワーモジュール群の上記V相パワーモジュールは、上記軸方向に見て、上記第2コイル群の上記V相コイルに重なる位置に配置されており、上記第2パワーモジュール群の上記W相パワーモジュールは、上記軸方向に見て、上記第2コイル群の上記W相コイルに重なる位置に配置されている。
【0025】
かかる構成によれば、第2パワーモジュール群及び第2コイル群においても、第1パワーモジュール群及び第1コイル群と同様に、各相パワーモジュールから各相コイルに至る電気経路のインダクタンスを、より低減することができる。
【0026】
一実施形態では、上記第1パワーモジュール群の上記各パワーモジュールは、上記モータの径方向一方側に配置されており、上記第2パワーモジュール群の上記各パワーモジュールは、上記径方向他方側に配置されており、上記第1パワーモジュール群の上記U相パワーモジュールと上記第2パワーモジュール群の上記U相パワーモジュールとは、上記径方向に互いに対向しており、上記第1パワーモジュール群の上記V相パワーモジュールと上記第2パワーモジュール群の上記V相パワーモジュールとは、上記径方向に互いに対向しており、上記第1パワーモジュール群の上記W相パワーモジュールと上記第2パワーモジュール群の上記W相パワーモジュールとは、上記径方向に互いに対向している。
【0027】
(特にコイル数が偶数の集中巻きの)モータでは、同相のコイル同士が、モータ径方向に互いに対向配置されることが多い。かかる構成によれば、同相のパワーモジュール同士を、同相のコイル同士と同様に、モータ径方向に互いに対向配置している。これにより、各相パワーモジュールを、各相コイルに対して、位置合わせしやすくなる。
【0028】
一実施形態では、上記各パワーモジュールと上記各コイルとの間には、少なくとも出力用バスバーが介在しており、上記出力用バスバーは、上記モータの周方向に沿うように、幅広に構成されている。
【0029】
かかる構成によれば、出力用バスバーを幅広にしやすくなるので、出力用バスバーのインダクタンスを低減しやすくなる。
【0030】
一実施形態では、上記インバータは、上記載置面に載置された平滑コンデンサを有する。
【0031】
かかる構成によれば、インバータの軸方向長さの増大を抑制する上で、より有利である。
【0032】
一実施形態では、上記平滑コンデンサと上記各パワーモジュールとは、入力用バスバーとしての負極側バスバー及び正極側バスバーによって互いに接続されており、上記入力用バスバーの一端部は、上記平滑コンデンサに接続されており、上記入力用バスバーの他端部は、上記各パワーモジュールに接続されており、上記入力用バスバーのインダクタンスは、上記入力用バスバーにおける上記一端部から上記他端部に至る長さの関数であり、上記関数は、互いに異なる第1長さ及び第2長さで同じ上記インダクタンスとなるように、極小値を有し、上記負極側バスバー及び上記正極側バスバーのうちの一方の長さは、上記第1長さであり、上記負極側バスバー及び上記正極側バスバーのうちの他方の長さは、上記第2長さである。
【0033】
かかる構成によれば、平滑コンデンサと各パワーモジュールとを互いに接続する入力用バスバーにおいて、負極側バスバーの長さと正極側バスバーの長さとが互いに異なるにもかかわらず、負極側バスバーのインダクタンスと正極側バスバーのインダクタンスとを、互いに平準化することができる。
【0034】
本開示の第2の態様に係る車両の駆動ユニットは、モータと、複数のパワーモジュールを有するインバータと、が上記モータの軸方向に隣接して配置された車両の駆動ユニットであって、各上記パワーモジュールは、上記軸方向に直交する載置面に載置されており、上記モータでは、U相コイル、V相コイル及びW相コイルを1つずつ含むコイル群として、少なくとも第1コイル群及び第2コイル群が構成されており、上記複数のパワーモジュールは、互いに並列接続された少なくとも第1パワーモジュール群及び第2パワージュール群を構成しており、上記第1パワーモジュール群及び上記第2パワーモジュール群は、それぞれ、上記U相コイル、上記V相コイル及び上記W相コイルに対応したU相パワーモジュール、V相パワーモジュール及びW相パワーモジュールを1つずつ含み、上記第1パワーモジュール群の上記各パワーモジュールは、上記第1コイル群の各上記コイルに接続されており、上記第2パワーモジュール群の上記各パワーモジュールは、上記第2コイル群の上記各コイルに接続されており、上記第1パワーモジュール群の上記U相パワーモジュールは、上記軸方向に見て、上記第1コイル群の上記U相コイルに重なる位置に配置されており、上記第1パワーモジュール群の上記V相パワーモジュールは、上記軸方向に見て、上記第1コイル群の上記V相コイルに重なる位置に配置されており、上記第1パワーモジュール群の上記W相パワーモジュールは、上記軸方向に見て、上記第1コイル群の上記W相コイルに重なる位置に配置されている。
【0035】
かかる構成によれば、インバータにおいて第1パワーモジュール群と第2パワーモジュール群とが互いに並列接続されているので、モータの出力を増大させることができる。
【0036】
また、各パワーモジュールがモータ軸方向に直交する載置面に並んで載置されているので、パワーモジュールの個数を増加させたにもかかわらず、インバータの軸方向長さの増大を抑制することができる。
【0037】
また、モータとインバータとがモータ軸方向に隣接配置されるので、各相パワーモジュールと各相コイルとの距離を、短くすることができる。このため、各相パワーモジュールから各相コイルに至る電気経路のインダクタンスを、低減することができる。
【0038】
さらに、第1パワーモジュール群及び第1コイル群において、各相パワーモジュールは、モータ軸方向に見て、各相コイルに重なる位置に配置されている。このため、第1パワーモジュール群及び第1コイル群において、各相パワーモジュールから各相コイルに至る電気経路のインダクタンスを、U相、V相、W相の間で、平準化することができる。
【0039】
以上、モータ及びインバータで構成される駆動ユニットの大型化を抑制しつつ、モータ出力を増大させるとともに、各相パワーモジュールから各相コイルに至る電気経路のインダクタンスを低減及び平準化することができる。
【0040】
一実施形態では、上記第2パワーモジュール群の上記U相パワーモジュールは、上記軸方向に見て、上記第2コイル群の上記U相コイルに重なる位置に配置されており、上記第2パワーモジュール群の上記V相パワーモジュールは、上記軸方向に見て、上記第2コイル群の上記V相コイルに重なる位置に配置されており、上記第2パワーモジュール群の上記W相パワーモジュールは、上記軸方向に見て、上記第2コイル群の上記W相コイルに重なる位置に配置されている。
【0041】
かかる構成によれば、第2パワーモジュール群及び第2コイル群においても、第1パワーモジュール群及び第1コイル群と同様に、各相パワーモジュールから各相コイルに至る電気経路のインダクタンスを、U相、V相、W相の間で、平準化することができる。
【発明の効果】
【0042】
本開示によれば、モータ及びインバータで構成される駆動ユニットの大型化を抑制しつつ、モータ出力を増大させるとともに、各相パワーモジュールから各相コイルに至る電気経路のインダクタンスを低減及び平準化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る駆動ユニットを備える車両システムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、モータ及びインバータを含む駆動ユニットの斜視図である。
【
図3】
図3は、モータをインバータ側から見た横断面図である。
【
図5】
図5は、SiC-MOSFETとIGBTとの比較を示す。
【
図6】
図6は、パワーモジュールの詳細構造を斜視図及び回路図で示す。
【
図7】
図7は、インバータをモータとは反対側から見た横断面図である。
【
図10】
図10は、バスバーにおけるサイズとインダクタンス感度との関係を示すグラフである。
【
図11】
図11は、第1の実施形態の第1変形例に係る
図7相当図であって、インバータをモータとは反対側から見た横断面図である。
【
図12】
図12は、第1の実施形態の第2変形例に係る
図7相当図であって、インバータをモータとは反対側から見た横断面図である。
【
図13A】
図13Aは、第1の実施形態の第3変形例に係る
図7相当図であって、インバータをモータとは反対側から見た横断面図である。
【
図14】
図14は、第2の実施形態に係る
図7相当図であって、インバータをモータとは反対側から見た横断面図である。
【
図15】
図15は、第2の実施形態に係る
図8相当図であって、インバータの縦断面図である。
【
図16】
図16は、第3の実施形態に係る
図7相当図であって、インバータをモータとは反対側から見た横断面図である。
【
図17】
図17は、第3の実施形態に係る
図8相当図であって、インバータの縦断面図である。
【
図18】
図18は、第3の実施形態の第1変形例に係る
図8相当図であって、インバータの縦断面図である。
【
図19】
図19は、第3の実施形態の第2変形例に係るパワーモジュール及びバスバーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0045】
<第1の実施形態>
(車両構成)
図1は、第1の実施形態に係る駆動ユニットAを備える車両1を、車両下側から見た状態で示す。車両1は、車両前側に配置されたエンジン2及び駆動モータ3の少なくとも一方からの動力を、車両後側に配置された後輪4に伝達する。すなわち、車両1は、フロントエンジン・リアドライブ(FR)のハイブリッド車両である。
【0046】
図1に示すように、車両1は、エンジン2と、エンジン2に連結された変速機5と、エンジン2と変速機5との間に配置された駆動モータ3と、変速機5に連結されてエンジン2及び駆動モータ3からの動力を後輪に伝達するプロペラシャフト6と、プロペラシャフト6に連結されてエンジン2及び駆動モータ3からの動力を左右の後輪4に伝達する差動装置7と、を備える。
【0047】
プロペラシャフト6は、フロアパネル8の下側において、車両前後方向に延びている。フロアパネル8の車幅方向中央側には、トンネル部9が設けられている。プロペラシャフト6は、トンネル部9の内側に配置されている。
【0048】
車両1は、エンジン2から車両前後方向に延びる排気管10を、備える。排気管10の上流側には、触媒装置11が配設されている。図示しないが、排気管10の下流側には、サイレンサが配設されている。
【0049】
車両1は、エンジン2に供給する燃料を貯蔵する燃料タンク(図示せず)と、モータ3に供給する電力を貯蔵するバッテリ12と、を備える。駆動モータ3は、後輪4に動力を伝達するとともに、車両減速時にプロペラシャフト6により回転駆動されて回生発電を行い、発電した電力をバッテリ12に供給する。バッテリ12は、車幅方向両側に配置された第1バッテリユニット12a及び第2バッテリユニット12bで構成されている。第2バッテリユニット12bは、第1バッテリユニット12aよりも、車両前後方向に長い。各バッテリユニット12a,12bは、複数のバッテリセルから構成されている。バッテリセルは、例えばリチウムイオンバッテリである。
【0050】
左右の前輪13各々には、インホイールモータ14が接続されている。インホイールモータ14は、車両1の発進時に動力を発生して前輪13に伝えるアシストモータとして機能する。また、インホイールモータ14は、車両の減速時に発電する回生ブレーキとしても機能する。インホイールモータ14は、駆動モータ3と同様に、バッテリ12から電力が供給される。
【0051】
図1に示すように、駆動モータ3と変速機5との間には、インバータ15が介在している。駆動モータ3とインバータ15とは、駆動モータ3の軸方向(車両前後方向)に隣接して配置されている。インホイールモータ14の車幅方向内側には、インバータ16が配置されている。インホイールモータ14とインバータ16とは、インホイールモータ14の軸方向(車幅方向)に隣接して配置されている。駆動モータ3及びインバータ15は、駆動ユニットAを構成する。同様に、インホイールモータ14及びインバータ16は、駆動ユニットAを構成する。
【0052】
インバータ15,16は、バッテリ12に貯蔵された直流電力を交流電力に変換してモータ3,14に供給するとともに、車両減速時にモータ3,14で発電した交流電力を直流電力に変換してバッテリを充電する。
【0053】
(駆動ユニット)
車両1の駆動ユニットAについて、駆動モータ3及びインバータ15を例に、説明する。
図2は、駆動ユニットAの斜視図である。上述したように、駆動ユニットAは、モータ3及びインバータ15で構成されている。モータ3とインバータ15とは、モータ3の軸方向に隣接して同軸に配置されている。詳細には、モータ3の中心軸Oとインバータ15の中心軸Oとは、互いに一致する。モータ3(詳細には、モータ3のケーシング)は、円筒状に形成されている。インバータ15(詳細には、インバータ15のケーシング)は、モータ3に対応した円筒状に形成されている。モータ3の回転軸3aは、インバータ15を軸方向に貫通している。インバータ15の厚みWivは、薄く、例えば、50mm以下(好ましくは30mm以下)である。インバータ15の内部には、後述する冷却通路61が設けられている。インバータの上部には、冷却通路61に連通する冷却用の入口配管62及び出口配管63が接続されている。
【0054】
図3は、モータ3をインバータ15側から見た横断面図である。モータ3は、コイル17を有する。具体的には、モータ3のステータには、U相コイル17u、V相コイル17v及びW相コイル17w各々が2箇所に配置されるように、各コイル17が集中巻きされている。各コイル17は、モータ3の周方向に均等に並んで配置されている。
【0055】
U相コイル17uとして、第1U相コイル17u1及び第2U相コイル17u2がある。V相コイル17vとして、第1V相コイル17v1及び第2V相コイル17v2がある。W相コイル17wとして、第1W相コイル17w1及び第2W相コイル17w2がある。
【0056】
モータ3では、U相コイル17u、V相コイル17v及びW相コイル17wを1つずつ含むコイル群として、第1コイル群C1及び第2コイル群C2が構成されている。具体的には、第1コイル群C1は、第1U相コイル17u1、第1V相コイル17v1及び第1W相コイル17w1で構成されている。第2コイル群C2は、第2U相コイル17u2、第2V相コイル17v2及び第2W相コイル17w2で構成されている。
【0057】
第1コイル群C1の各相コイル17u1,17v1,17w1は、モータ3の径方向一方側に配置されている。第2コイル群C2の各相コイル17u2,17v2,17w2は、モータ3の径方向他方側に配置されている。
【0058】
第1コイル群C1の第1U相コイル17u1と第2コイル群C2の第2U相コイル17u2とは、モータ3の径方向に互いに対向している。第1コイル群C1の第1V相コイル17v1と第2コイル群C2の第2V相コイル17v2とは、モータ3の径方向に互いに対向している。第1コイル群C1の第1W相コイル17w1と第2コイル群C2の第2W相コイル17w2とは、モータ3の径方向に互いに対向している。
【0059】
モータ3の外周部には、6つのモータ側端子台18が設けられている。各モータ側端子台18は、各コイル17に対応している。具体的には、各モータ側端子台18は、各コイル17に対して、同一周方向位置且つ径方向外側に配置されている。各コイル17からは、リード線(図示せず)が引き出されている。当該リード線は、各モータ側端子台18に、接続されている。回転軸3aには、ロータとして、鉄心27と、N極及びS極の永久磁石28と、が固定されている。
【0060】
図4は、インバータ15の回路図である。インバータ15は、平滑コンデンサ19と、複数のパワーモジュール20と、を有する。平滑コンデンサ19は、パワーモジュール20に印加される電圧を平滑化する。複数のパワーモジュール20は、インバータ回路を構成しており、直流電圧を交流電圧に変換する。
【0061】
複数のパワーモジュール20として、U相パワーモジュール20u、V相パワーモジュール20v及びW相パワーモジュール20wがある。U相パワーモジュール20uは、U相コイル17uに対応している。V相パワーモジュール20vは、V相コイル17vに対応している。W相パワーモジュール20wは、W相コイル17wに対応している。
【0062】
さらに、U相パワーモジュール20uとして、第1U相パワーモジュール20u1及び第2U相パワーモジュール20u2がある。V相パワーモジュール20vとして、第1V相パワーモジュール20v1及び第2V相パワーモジュール20v2がある。W相パワーモジュール20wとして、第1W相パワーモジュール20w1及び第2W相パワーモジュール20w2がある。
【0063】
複数のパワーモジュール20は、互いに並列接続された第1パワーモジュール群P1及び第2パワージュール群P2を構成している。第1パワーモジュール群P1及び第2パワーモジュール群P2は、それぞれ、U相パワーモジュール20u、V相パワーモジュール20v及びW相パワーモジュール20wを、1つずつ含む。
【0064】
第1パワーモジュール群P1は、第1U相パワーモジュール20u1、第1V相パワーモジュール20v1及び第1W相パワーモジュール20w1で構成されている。第1パワーモジュール群P1の各相パワーモジュール20u1,20v1,20w1は、第1コイル群C1の各相コイル17u1,17v1,17w1に接続されている。具体的には、第1パワーモジュール群P1の第1U相パワーモジュール20u1は、第1コイル群C1の第1U相コイル17u1に接続されている。第1パワーモジュール群P1の第1V相パワーモジュール20v1は、第1コイル群C1の第1V相コイル17v1に接続されている。第1パワーモジュール群P1の第1W相パワーモジュール20w1は、第1コイル群C1の第1W相コイル17w1に接続されている。
【0065】
第2パワーモジュール群P2は、第2U相パワーモジュール20u2、第2V相パワーモジュール20v2及び第2W相パワーモジュール20w2で構成されている。第2パワーモジュール群P2の各相パワーモジュール20u2,20v2,20w2は、第2コイル群C2の各相コイル17u2,17v2,17w2に接続されている。具体的には、第2パワーモジュール群P2の第2U相パワーモジュール20u2は、第2コイル群C2の第2U相コイル17u2に接続されている。第2パワーモジュール群P2の第2V相パワーモジュール20v2は、第2コイル群C2の第2V相コイル17v2に接続されている。第2パワーモジュール群P2の第2W相パワーモジュール20w2は、第2コイル群C2の第2W相コイル17w2に接続されている。
【0066】
パワーモジュール20は、スイッチング素子としての下アーム素子21及び上アーム素子22の2つで構成されている。各相のパワーモジュール20において、下アーム素子21及び上アーム素子22の一方が開くとき、下アーム素子21及び上アーム素子22の他方は閉じる。これにより、モータ3に対して三相交流電流が供給される。
【0067】
ここで、パワーモジュール20は、SiC-MOSFETを含む。
図5は、SiC-MOSFETとIGBTとの比較を示す。SiC-MOSFETは、炭化ケイ素(SiC)を含むMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)であって、下アーム素子21及び上アーム素子22並びにその他の制御素子等を含むチップ24を、構成する。チップ24の下面は、シリコン基板に、はんだで固定されている。チップ24の上面には、伝熱ブロックとしての銅ブロック25が、はんだで固定されている。IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)も、同様である。
【0068】
図5に示すように、SiC-MOSFETで構成されたチップ24の表面積は、IGBTで構成されたチップ24’の表面積に比べて、小さい。それに伴い、SiC-MOSFET(チップ)24の上側に配置された銅ブロック25のサイズは、IGBT(チップ)24’の上側に配置された銅ブロック25’のサイズに比べて、小さい。また、SiC-MOSFETは、IGBTよりも耐熱性に優れる。
【0069】
図6は、パワーモジュール20の詳細構造を斜視図及び回路図で示す。各パワーモジュール20は、幅広な扁平形状である。詳細には、各パワーモジュール20は、厚み方向tよりも幅方向Wに長い。パワーモジュール20は、略直方体状である。幅方向Wは、互いに直交する第1幅方向W1及び第2幅方向W2を含む。以下、パワーモジュール20の厚み方向一方側を下側、厚み方向他方側を上側という場合がある。
【0070】
パワーモジュール20は、下側(片面側、厚み方向片側)に、下面31を有する。パワーモジュール20は、上側に、上面32を有する。パワーモジュール20は、第1幅方向W1の一方側に、第1端面33を有する。パワーモジュール20は、第1幅方向W1の他方側に、第2端面34を有する。
【0071】
第1端面33の下側且つ第2幅方向W2の一方側には、負極側入力端子35が接続されている。第1端面33の上側且つ第2幅方向W2の他方側には、正極側入力端子36が接続されている。負極側入力端子35と正極側入力端子36とは、上下方向(厚み方向)に間隔を空けて配置されている。第2端面34の中央部には、出力端子37が接続されている。
【0072】
パワーモジュール20のパッケージ(箱体)内には、下アーム素子21及び上アーム素子22が収容されている。負極側入力端子35は、下アーム素子21に接続されている。正極側入力端子36は、上アーム素子22に接続されている。出力端子37は、下アーム素子21と上アーム素子22との間に接続されている。
【0073】
図7は、インバータ15をモータ3とは反対側から見た横断面図である。
図8は、インバータ15のVIII-VIII線における縦断面図である。
図7に示すように、インバータ15の中心には、モータ3の回転軸3aを貫通させる軸貫通孔40が、設けられている。軸貫通孔40の周囲には、円筒状のボス部41が形成されている。平滑コンデンサ19は、インバータ15の中心Oに配置されている。平滑コンデンサ19は、ボス部41に沿うように配置されている。平滑コンデンサ19は、回転軸3aを貫通させる軸貫通孔を有する中空の多角柱状に、形成されている。
【0074】
各パワーモジュール20(第1U相パワーモジュール20u1、第1V相パワーモジュール20v1、第1W相パワーモジュール20w1、第2U相パワーモジュール20u2、第2V相パワーモジュール20v2及び第2W相パワーモジュール20w2)は、平滑コンデンサ19よりも外周側に配置されている。各パワーモジュール20は、平滑コンデンサ19よりも外周側において、モータ3の周方向に並べて配置されている。また、各パワーモジュール20の入力端子35,36(第1端面33)及び出力端子37(第2端面34)は、モータ3(インバータ15)の周方向を向いている。各パワーモジュール20は、厚み方向tがモータ3の軸方向に一致するように、配置されている。平滑コンデンサ19及び各パワーモジュール20は、インバータ15における外周壁部42及びボス部41で区画された空間に、配置されている。
【0075】
第1パワーモジュール群P1の各相パワーモジュール20u1,20v1,20w1は、モータ3(インバータ15)の径方向一方側に配置されている。第2パワーモジュール群P2の各相パワーモジュール20u2,20v2,20w2は、モータ3の径方向他方側に配置されている。
【0076】
第1パワーモジュール群P1の第1U相パワーモジュール20u1と第2パワーモジュール群P2の第2U相パワーモジュール20u2とは、モータ3(インバータ15)の径方向に互いに対向している。第1パワーモジュール群P1の第1V相パワーモジュール20v1と第2パワーモジュール群P2の第2V相パワーモジュール20v2とは、モータ3の径方向に互いに対向している。第1パワーモジュール群P1の第1W相パワーモジュール20w1と第2パワーモジュール群P2の第2W相パワーモジュール20w2とは、モータ3の径方向に互いに対向している。
【0077】
図7,8に示すように、インバータ15におけるモータ3側には、ヒートシンク60が設けられている。ヒートシンク60は、主に、各パワーモジュール20の冷却のために用いられる。ヒートシンク60は、インバータ15における外周壁部42とボス部41との間に、配置されている。ヒートシンク60は、上壁部60aと、外周壁部60bと、下壁部60cと、内周壁部60dと、を有する。
【0078】
ヒートシンク60の上壁部60aにおける上面65は、モータ3の軸方向に直交する載置面(以下、「載置面65」という場合がある)を構成する。各パワーモジュール20の下面31は、モータ3側に臨む。詳細には、各パワーモジュール20の下面31は、同一の載置面65に並んで載置されている。
【0079】
図7,8に示すように、平滑コンデンサ19は、複数の円柱状のコンデンサ45の集合体を、厚み方向両側から平板で覆ったものである。平滑コンデンサ19は、下側(片面側、厚み方向片側)に、下面19aを有する。平滑コンデンサ19は、下面19aとは反対側に、上面19bを有する。平滑コンデンサ19の下面19a及び上面19bは、平板で構成されている。平滑コンデンサ19の下面19aは、モータ3側に臨む。詳細には、平滑コンデンサ19の下面19aは、載置面65に載置されている。
【0080】
図7,8に示すように、平滑コンデンサ19と各パワーモジュール20とは、入力用バスバー50(以下、単に「バスバー50」という場合がある)としての負極側バスバー51及び正極側バスバー52によって、互いに接続されている。負極側バスバー51及び正極側バスバー52は、板状である。詳細には、負極側バスバー51及び正極側バスバー52は、厚み方向tよりも幅方向W及び長さ方向Lに長い。
【0081】
図7に示すように、負極側バスバー51及び正極側バスバー52は、モータ3(インバータ15)の周方向に沿うように、幅広に構成されている。換言すると、負極側バスバー51及び正極側バスバー52は、各パワーモジュール20の並ぶ方向に沿うように、幅広に構成されている。負極側バスバー51及び正極側バスバー52の幅方向Wは、モータ3の周方向に(円弧状に)延びている。負極側バスバー51及び正極側バスバー52は、扇形状である。負極側バスバー51及び正極側バスバー52の長さ方向Lは、モータ3の径方向に延びている。
【0082】
負極側バスバー51(入力用バスバー50)の一端部51iは、平滑コンデンサ19の下面19a側に設けられた負極端子19cに、接続されている。負極側バスバー51(入力用バスバー50)の他端部51oは、各パワーモジュール20の負極側入力端子35に接続されている。正極側バスバー52(入力用バスバー50)の一端部52iは、平滑コンデンサ19の上面19b側に設けられた正極端子19dに、接続されている。正極側バスバー52(入力用バスバー50)の他端部52oは、各パワーモジュール20の正極側入力端子36に接続されている。
【0083】
負極側バスバー51は、下側(片面側、厚み方向片側)に、下面51aを、有する。負極側バスバー51の下面51aは、モータ3側に臨む。詳細には、負極側バスバー51の下面51aは、載置面65に載置されている。
【0084】
図7に示すように、各パワーモジュール20の出力端子37には、出力用バスバー54が接続されている。出力用バスバー54は、各パワーモジュール20u1,20v1,20w1,20u2,20v2,20w2(各コイル17u1,17v1,17w1,17u2,17v2,17w2)に対応して、計6つある。出力用バスバー54は、各パワーモジュール20と各コイル17との間に、介在している。出力用バスバー54は、板状である。また、各パワーモジュール20と各コイル17との間には、出力用バスバー54の他に、ワイヤハーネス等が介在してもよい。
【0085】
インバータ15の外周部には、6つのインバータ側端子台46が設けられている。各インバータ側端子台46は、各パワーモジュール20に対応している。具体的には、各インバータ側端子台46は、各パワーモジュール20に対して、同一周方向位置且つ径方向外側に配置されている。
【0086】
出力用バスバー54は、インバータ側端子台46まで、延びている。インバータ側端子台46とモータ側端子台18との間には、電導部材(バスバーやワイヤハーネス等)が介在している。
【0087】
(冷却通路)
図7,8に示すように、ヒートシンク60の内部には、冷却通路(冷却ジャケット)61が設けられている。冷却通路61は、上壁部60a、外周壁部60b、下壁部60c及び内周壁部60dによって区画されている。冷却通路61は、モータ3(インバータ15)の軸方向に見て、全周に亘ってドーナツ状(環状、円筒状)に形成されている(
図7参照)。内周壁部60dの内側には、モータ3の回転軸3aが貫通する。上述したように、ヒートシンク60の上壁部60aにおける上面は、載置面65である。
【0088】
冷却通路61は、載置面65よりもモータ3側に、設けられている。冷却通路61には、冷却媒体Hが流れる。冷却媒体Hは、冷却水や冷却油等である。
【0089】
また、ヒートシンク60の内部(冷却通路61)には、複数のフィン64が設けられている。フィン64は、上壁部60aから冷却通路61内を下側に延びている。すなわち、フィン64は、載置面65よりもモータ3側に、設けられている。
【0090】
図7,8に示すように、冷却通路61は、モータ3(インバータ15)の軸方向に見て、各パワーモジュール20の下面31、負極側バスバー51の下面51a及び平滑コンデンサ19の下面19aに、臨んでいる。
【0091】
同様に、フィン64は、モータ3の軸方向に見て、各パワーモジュール20の下面31、負極側バスバー51の下面51a及び平滑コンデンサ19の下面19aに、臨んでいる。
【0092】
図2に示すように、インバータ15の外周部の上部には、入口配管62及び出口配管63が接続されている。入口配管62及び出口配管63は、冷却通路61に連通している。入口配管62を介して冷却通路61に導入された冷却媒体Hは、冷却通路61内を流れた後、出口配管63を介して外部に排出される。
【0093】
(バスバーのインダクタンス感度)
図9は、バスバー50の斜視図である。
図10は、バスバー50におけるサイズとインダクタンス感度との関係を示すグラフである。本願発明者等は、鋭意研究の結果、バスバー50におけるサイズとインダクタンス感度との関係について、以下の発見をした。
【0094】
図9,10に示すように、バスバー50の幅寸法W(mm)が大きいほど、バスバー50のインダクタンス感度(nH)は小さくなる。
【0095】
バスバー50の長さ寸法L(mm)が大きいほど、基本的には、バスバー50のインダクタンス感度(nH)は大きくなる。しかしながら、
図10の真ん中のグラフに示すように、バスバー50における長さ寸法L(mm)とインダクタンス感度(nH)との関係には、極小値(変曲点)Mが存在する。これにより、長さ寸法Lが異なるにもかかわらず、同一のインダクタンス感度(nH)となることがある。詳細には、バスバー50(51,52)のインダクタンス感度(nH)は、バスバー50(51,52)における一端部51i,52i(平滑コンデンサ19の端子19c,19d)から他端部51o,52o(各パワーモジュール20の入力端子35,36)に至る長さ寸法L(mm)の関数である。当該関数は、互いに異なる第1長さL1(mm)及び第2長さL2(mm)で同じインダクタンス感度K(nH)となるように、極小値Mを有する。第2長さL2(mm)は、第1長さL1(mm)よりも長い。
【0096】
また、バスバー50の厚さ寸法t(mm)が変化しても、バスバー50のインダクタンス感度(nH)は変化しない。
【0097】
図7に示すように、負極側バスバー51の幅寸法と正極側バスバー52の幅寸法とは、互いに略同じである。
図8に示すように、負極側バスバー51の長さ寸法L-と正極側バスバー52の長さ寸法L+とは、互いに異なる。負極側バスバー51の長さ寸法L-は、第1長さL1に対応する。正極側バスバー52の長さ寸法L+は、第2長さL2に対応する。正極側バスバー52の長さ寸法L+(第2長さL2)は、負極側バスバー51の長さ寸法L-(第1長さL1)よりも長い。しかしながら、上記極小値Mの存在によって、負極側バスバー51のインダクタンス感度と正極側バスバー52のインダクタンス感度とは、互いに等しくなっている。
【0098】
(パワーモジュールとコイルとの位置関係)
図7に示すように、第1パワーモジュール群P1の第1U相パワーモジュール20u1は、モータ3(インバータ15)の軸方向に見て、第1コイル群C1の第1U相コイル17u1に重なる位置に配置されている。第1パワーモジュール群P1の第1V相パワーモジュール20v1は、モータ3の軸方向に見て、第1コイル群C1の第1V相コイル17v1に重なる位置に配置されている。第1パワーモジュール群P1の第1W相パワーモジュール20w1は、モータ3の軸方向に見て、第1コイル群C1の第1W相コイル17w1に重なる位置に配置されている。
【0099】
図7に示すように、第2パワーモジュール群P2の第2U相パワーモジュール20u2は、モータ3(インバータ15)の軸方向に見て、第2コイル群C2の第2U相コイル17u2に重なる位置に配置されている。第2パワーモジュール群P2の第2V相パワーモジュール20v2は、モータ3の軸方向に見て、第2コイル群C2の第2V相コイル17v2に重なる位置に配置されている。第2パワーモジュール群P2の第2W相パワーモジュール20w2は、モータ3の軸方向に見て、第2コイル群C2の第2W相コイル17w2に重なる位置に配置されている。
【0100】
詳細には、各パワーモジュール20の少なくとも一部が、モータ3(インバータ15)の軸方向に見て、各コイル17の少なくとも一部に重なるように配置されている。
【0101】
すなわち、
図7に示すように、第1パワーモジュール群P1の第1U相パワーモジュール20u1と第1コイル群C1の第1U相コイル17u1との距離du1と、第1パワーモジュール群P1の第1V相パワーモジュール20v1と第1コイル群C1の第1V相コイル17v1との距離dv1と、第1パワーモジュール群P1の第1W相パワーモジュール20w1と第1コイル群C1の第1W相コイル17w1との距離dw1とは、モータ3(インバータ15)の軸方向に見て、互いに等しい。
【0102】
同様に、
図7に示すように、第2パワーモジュール群P2の第2U相パワーモジュール20u2と第2コイル群C2の第2U相コイル17u2との距離du2と、第2パワーモジュール群P2の第2V相パワーモジュール20v2と第2コイル群C2の第2V相コイル17v2との距離dv2と、第2パワーモジュール群P2の第2W相パワーモジュール20w2と第2コイル群C2の第2W相コイル17w2との距離dw2とは、モータ3(インバータ15)の軸方向に見て、互いに等しい。
【0103】
さらに、
図7に示すように、第1パワーモジュール群P1の第1U相パワーモジュール20u1と第1コイル群C1の第1U相コイル17u1との距離du1と、第2パワーモジュール群P2の第2U相パワーモジュール20u2と第2コイル群C2の第2U相コイル17u2との距離du2とは、モータ3(インバータ15)の軸方向に見て、互いに等しい。第1パワーモジュール群P1の第1V相パワーモジュール20v1と第1コイル群C1の第1V相コイル17v1との距離dv1と、第2パワーモジュール群P2の第2V相パワーモジュール20v2と第2コイル群C2の第2V相コイル17v2との距離dv2とは、モータ3の軸方向に見て、互いに等しい。第1パワーモジュール群P1の第1W相パワーモジュール20w1と第1コイル群C1の第1W相コイル17w1との距離dw1と、第2パワーモジュール群P2の第2W相パワーモジュール20w2と第2コイル群C2の第2W相コイル17w2との距離dw2とは、モータ3の軸方向に見て、互いに等しい。
【0104】
各距離du1,dv1,dw1,du2,dv2,dw2はともに、ゼロである。各距離du1,dv1,dw1,du2,dv2,dw2の基準は、任意に設定してよい。
【0105】
(第1の実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、インバータ15において第1パワーモジュール群P1と第2パワーモジュール群P2とが互いに並列接続されているので、モータ3の出力を増大させることができる。
【0106】
また、各パワーモジュール20がモータ3の軸方向に直交する同一の載置面65に並んで載置されているので、パワーモジュール20の個数を増加させたにもかかわらず、インバータ15の軸方向長さの増大を抑制することができる。
【0107】
また、モータ3とインバータ15とがモータ3の軸方向に隣接配置されるので、各相パワーモジュール20と各相コイル17との距離を、短くすることができる。このため、各相パワーモジュール20から各相コイル17に至る電気経路(出力用バスバー54を含む)のインダクタンスを、低減することができる。
【0108】
さらに、少なくとも第1パワーモジュール群P1及び第1コイル群C1において、各相パワーモジュール20u1,20v1,20w1と各相コイル17u1,17v1,17w1との距離du1,dv1,dw1は、U相、V相、W相の間で、モータ3の軸方向に見て互いに等しい。このため、少なくとも第1パワーモジュール群P1及び第1コイル群C1において、各相パワーモジュール20u1,20v1,20w1から各相コイル17u1,17v1,17w1に至る電気経路(出力用バスバー54を含む)のインダクタンスを、U相、V相、W相の間で、平準化することができる。
【0109】
以上、モータ3及びインバータ15で構成される駆動ユニットAの大型化を抑制しつつ、モータ3の出力を増大させるとともに、各相パワーモジュール20から各相コイル17に至る電気経路のインダクタンスを低減及び平準化することができる。
【0110】
第2パワーモジュール群P2及び第2コイル群C2においても、第1パワーモジュール群P1及び第1コイル群C1と同様に、各相パワーモジュール20u2,20v2,20w2と各相コイル17u2,17v2,17w2との距離du2,dv2,dw2は、U相、V相、W相の間で、モータ3の軸方向に見て互いに等しい。このため、第2パワーモジュール群P2及び第2コイル群C2においても、第1パワーモジュール群P1及び第1コイル群C1と同様に、各相パワーモジュール20u2,20v2,20w2から各相コイル17u2,17v2,17w2に至る電気経路(出力用バスバー54を含む)のインダクタンスを、U相、V相、W相の間で、平準化することができる。
【0111】
さらに、第1パワーモジュール群P1及び第1コイル群C1と、第2パワーモジュール群P2及び第2コイル群C2との間において、各相パワーモジュール20u1,20v1,20w1,20u2,20v2,20w2から各相コイル17u1,17v1,17w1,17u2,17v2,17w2に至る電気経路(出力用バスバー54を含む)のインダクタンスを平準化することができる。
【0112】
第1パワーモジュール群P1の各相パワーモジュール20u1,20v1,20w1は、モータ3の軸方向に見て、第1コイル群C1の各相コイル17u1,17v1,17w1に重なる位置に配置されている。したがって、第1パワーモジュール群P1及び第1コイル群C1において、各相パワーモジュール20u1,20v1,20w1と各相コイル17u1,17v1,17w1との距離du1,dv1,dw1を、より短くすることができる。このため、第1パワーモジュール群P1及び第1コイル群C1において、各相パワーモジュール20u1,20v1,20w1から各相コイル17u1,17v1,17w1に至る電気経路(出力用バスバー54を含む)のインダクタンスを、より低減することができる。
【0113】
第2パワーモジュール群P2の各相パワーモジュール20u2,20v2,20w2は、モータ3の軸方向に見て、第2コイル群C2の各相コイル17u2,17v2,17w2に重なる位置に配置されている。したがって、第2パワーモジュール群P2及び第2コイル群C2においても、第1パワーモジュール群P1及び第1コイル群C1と同様に、各相パワーモジュール20u2,20v2,20w2と各相コイル17u2,17v2,17w2との距離du2,dv2,dw2を、より短くすることができる。このため、第2パワーモジュール群P2及び第2コイル群C2においても、第1パワーモジュール群P1及び第1コイル群C1と同様に、各相パワーモジュール20u2,20v2,20w2から各相コイル17u2,17v2,17w2に至る電気経路(出力用バスバー54を含む)のインダクタンスを、より低減することができる。
【0114】
(特にコイル17の個数が偶数の集中巻きの)モータ3では、同相のコイル17同士が、モータ3の径方向に互いに対向配置されることが多い(
図3参照)。本実施形態によれば、同相のパワーモジュール20同士を、同相のコイル17同士と同様に、モータ3の径方向に互いに対向配置している。これにより、各相パワーモジュール20を、各相コイル17に対して、位置合わせしやすくなる。
【0115】
平滑コンデンサ19と各パワーモジュール20とが、モータ3の軸方向に直交する同一の載置面65に載置されているので、インバータ15の軸方向長さの増大を抑制する上で、より有利である。さらに、平滑コンデンサ19と各パワーモジュール20との距離を短くすることができるので、平滑コンデンサ19と各パワーモジュール20とを接続する入力用バスバー50(負極側バスバー51及び正極側バスバー52)のインダクタンスを、より低減することができる。
【0116】
各パワーモジュール20が平滑コンデンサ19よりも外周側においてモータ3の周方向に並ぶので、平滑コンデンサ19と各パワーモジュール20の距離を、互いに等しくすることができる。さらに、入力用バスバー50(負極側バスバー51及び正極側バスバー52)をモータ3の周方向に沿うように幅広にすることによって、入力用バスバー50において、平滑コンデンサ19と各パワーモジュール20との間の電気経路のインダクタンスを、平準化することができる。
【0117】
平滑コンデンサ19と各パワーモジュール20とを互いに接続する入力用バスバー50(負極側バスバー51及び正極側バスバー52)において、上記極小値(変曲点)M(
図10参照)を利用することによって、負極側バスバー51の長さ寸法L-(第1長さL1)と正極側バスバー52の長さ寸法L+(第2長さL2)とが互いに異なるにもかかわらず、負極側バスバー51のインダクタンスと正極側バスバー52のインダクタンスとを、互いに平準化することができる。
【0118】
図1に二点鎖線で示すように、従来、インバータ15’を、バッテリ12’の第2バッテリユニット12b’近傍に配置することが多かった。本実施形態によれば、インバータ15をモータ3の軸方向に隣接配置することができるので、第2バッテリユニット12b近傍にインバータ15を配置しなくてもよくなる。これにより、第2バッテリユニット12bのレイアウト自由度が高まり、第2バッテリユニット12bを大きくすることができる。
【0119】
第1パワーモジュール群P1の各相パワーモジュール20u1,20v1,20w1は、モータ3の軸方向に見て、第1コイル群C1の各相コイル17u1,17v1,17w1に重なる位置に配置されている。このため、第1パワーモジュール群P1及び第1コイル群C1において、各相パワーモジュール20u1,20v1,20w1から各相コイル17u1,17v1,17w1に至る電気経路のインダクタンスを、U相、V相、W相の間で平準化する上で有利になる。
【0120】
第2パワーモジュール群P2の各相パワーモジュール20u2,20v2,20w2は、モータ3の軸方向に見て、第2コイル群C2の各相コイル17u2,17v2,17w2に重なる位置に配置されている。このため、第2パワーモジュール群P2及び第2コイル群C2においても、第1パワーモジュール群P1及び第1コイル群C1と同様に、各相パワーモジュール20u2,20v2,20w2から各相コイル17u2,17v2,17w2に至る電気経路のインダクタンスを、U相、V相、W相の間で平準化する上で有利になる。
【0121】
(第1の実施形態の第1変形例)
図11は、第1の実施形態の第1変形例に係る
図7相当図である。本変形例によれば、第1パワーモジュール群P1及び第1コイル群C1、並びに、第2パワーモジュール群P2及び第2コイル群C2の両方において、各相パワーモジュール20u1,20v1,20w1,20u2,20v2,20w2は、モータ3の軸方向に見て、各相コイル17u1,17v1,17w1,17u2,17v2,17w2に重なる位置に配置されていない。詳細には、各相パワーモジュール20u1,20v1,20w1,20u2,20v2,20w2は、モータ3の軸方向に見て、各相コイル17u1,17v1,17w1,17u2,17v2,17w2に対して、モータ3の周方向にずれて配置されている。
【0122】
各相パワーモジュール20u1,20v1,20w1,20u2,20v2,20w2と各相コイル17u1,17v1,17w1,17u2,17v2,17w2との距離du1,dv1,dw1,du2,dv2,dw2は、モータ3の軸方向に見て互いに等しく、d(>0)である。
【0123】
(第1の実施形態の第2変形例)
図12は、第1の実施形態の第2変形例に係る
図7相当図である。本変形例によれば、モータ3のステータには、U相コイル17uとしての第3U相コイル17u3と、V相コイル17vとしての第3V相コイル17v3と、W相コイル17wとしての第3W相コイル17w3と、がさらに設けられている。第3U相コイル17u3、第3V相コイル17v3及び第3W相コイル17w3は、第3コイル群C3を構成する。
【0124】
インバータ15には、U相パワーモジュール20uとしての第3U相パワーモジュール20u3と、V相パワーモジュール20vとしての第3V相パワーモジュール20v3と、W相パワーモジュール20wとしての第3W相パワーモジュール20w3と、がさらに設けられている。第3U相パワーモジュール20u3、第3V相パワーモジュール20v3及び第3W相パワーモジュール20w3は、第3パワーモジュール群P3を構成する。
【0125】
各相パワーモジュール20u1,20v1,20w1,20u2,20v2,20w2,20u3,20v3,20w3は、モータ3の軸方向に見て、各相コイル17u1,17v1,17w1,17u2,17v2,17w2,17u3,17v3,17w3に重なる位置に配置されている。各相パワーモジュール20u1,20v1,20w1,20u2,20v2,20w2,20u3,20v3,20w3と各相コイル17u1,17v1,17w1,17u2,17v2,17w2,17u3,17v3,17w3との距離du1,dv1,dw1,du2,dv2,dw2,du3,dv3,dw3は、モータ3の軸方向に見て互いに等しく、ゼロである。
【0126】
本変形例によれば、第1パワーモジュール群P1、第2パワーモジュール群P2及び第3パワーモジュール群P3を三並列接続することによって、モータ3の出力をさらに増大することができる。
【0127】
(第1の実施形態の第3変形例)
図13Aは、第1の実施形態の第3変形例に係る
図7相当図である。本変形例に係るインバータ16は、インホイールモータ14に対して、インホイールモータ14の軸方向(車幅方向)に隣接して配置されている(
図1参照)。インバータ16には、軸貫通孔40及びボス部41が設けられていない。平滑コンデンサ19は、円柱状に形成されている。平滑コンデンサ19には、軸貫通孔が設けられていない。
【0128】
(第1の実施形態の第4変形例)
図13Bは、第1の実施形態の第4変形例に係る出力用バスバー54を示す。本変形例に係る出力用バスバー54は、モータ3の周方向に沿うように、幅広に構成されている。換言すると、出力用バスバー54の幅方向は、周方向に(円弧状に)延びている。出力用バスバー54は、扇形状である。これにより、出力用バスバー54を幅広にしやすくなるので、出力用バスバー54のインダクタンスを低減しやすくなる。
【0129】
(第1の実施形態のその他の変形例)
モータ3におけるコイル群の個数と、インバータ15におけるパワーモジュール群の個数とが、互いに異なってもよい。例えば、モータ3におけるコイル群が3つ(コイルが9つ)であるのに対して、インバータ15におけるパワーモジュール群が2つ(パワーモジュールが6つ)でもよい。反対に、モータ3におけるコイル群が2つ(コイルが6つ)であるのに対して、インバータ15におけるパワーモジュール群が3つ(パワーモジュール20が9つ)でもよい。
【0130】
図示しないが、モータ3では、U相コイル17u、V相コイル17v及びW相コイル17w各々が、分布巻きされててもよい。
【0131】
入力用バスバー50において、負極側バスバー51の長さ寸法L-が第2長さL2である一方、正極側バスバー52の長さ寸法L+が第1長さL1であってもよい。
【0132】
載置面65は、モータ3の軸方向に直交する同一平面上に位置する複数の面で構成されてもよい。
【0133】
<第2の実施形態>
図14は、第2の実施形態に係る
図7相当図であって、インバータ15をモータ3とは反対側から見た横断面図である。
図15は、第2の実施形態に係る
図8相当図であって、インバータ15の縦断面図である。以下、上記実施形態と同様の構成については、詳細な説明を省略する場合がある。
【0134】
本実施形態では、各パワーモジュール20は、平滑コンデンサ19よりも外周側に配置されている。各パワーモジュール20は、平滑コンデンサ19よりも外周側において、モータ3の周方向に並べて配置されている。
【0135】
そして、各パワーモジュール20の入力端子35,36(第1端面33)及び出力端子37(第2端面34)は、モータ3(インバータ15)の径方向を向いている。具体的には、各パワーモジュール20の入力端子35,36(第1端面33)は、内周側を向いている。各パワーモジュール20の出力端子37(第2端面34)は、外周側を向いている。各パワーモジュール20は、インバータ15(モータ3)の中心Oを起点に、放射状に配置されている。
【0136】
図14に示すように、負極側バスバー51の幅寸法と正極側バスバー52の幅寸法とは、互いに同じである。
図15に示すように、負極側バスバー51の長さ寸法L-と正極側バスバー52の長さ寸法L+とは、互いに同じである。したがって、負極側バスバー51のインダクタンスと正極側バスバー52のインダクタンスとは、互いに等しくなっている。
【0137】
その他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0138】
<第3の実施形態>
図16は、第3の実施形態に係る
図7相当図であって、インバータ15をモータ3とは反対側から見た横断面図である。
図17は、第3の実施形態に係る
図8相当図であって、インバータ15の縦断面図である。以下、上記実施形態と同様の構成については、詳細な説明を省略する場合がある。
【0139】
図16,17に示すように、負極側入力端子35は、各パワーモジュール20の第1端面33の下側に接続されている。正極側入力端子36は、各パワーモジュール20の第2端面34の下側に接続されている。出力端子37は、各パワーモジュール20の上面32の中央に接続されている。
【0140】
負極側バスバー51は、平滑コンデンサ19の負極端子19cと各パワーモジュールの負極側入力端子35とを、互いに接続する。正極側バスバー52は、平滑コンデンサ19の正極端子19dと各パワーモジュール20の正極側入力端子36とを、互いに接続する。
【0141】
正極側バスバー52は、平滑コンデンサ19の正極端子19d(一端部52i)から出発して、各パワーモジュール20の第1端面33側から第2端面34側に亘って、上面32を沿うようにして延びる。その後、正極側バスバー52は、下側に折れて、第2端面34を沿うようにして、下側の正極側入力端子36(他端部52o)まで延びている。換言すると、正極側バスバー52は、各パワーモジュール20を上面32側から巻くようにして、延びている。各出力用バスバー54は、各パワーモジュール20の上面32の出力端子37から出発して、上側に延びている。正極側バスバー52には、上側に延びる3つの出力用バスバー54を通過させるための3つの開口部が、設けられている。
【0142】
図16に示すように、負極側バスバー51の幅寸法と正極側バスバー52の幅寸法とは、互いに同じである。
図17に示すように、負極側バスバー51の長さ寸法(L-)と正極側バスバー52の長さ寸法(La+及びLb+の合計)とは、互いに異なる。負極側バスバー51の長さ寸法(L-)は、第1長さL1に対応する。正極側バスバー52の長さ寸法(La+及びLb+の合計)は、第2長さL2に対応する。正極側バスバー52の長さ寸法(La+及びLb+の合計、第2長さL2)は、負極側バスバー51の長さ寸法(L-、第1長さL1)よりも長い。しかしながら、上記極小値M(
図10参照)の存在によって、負極側バスバー51のインダクタンスと正極側バスバー52のインダクタンスとは、互いに等しくなっている。
【0143】
なお、本実施形態に係る負極側バスバー51及び正極側バスバー52の条件(材質等)は、上記実施形態の場合とは異なる。したがって、上記極小値M(
図10参照)の態様も異なる。具体的には、第1長さL1と第2長さL2との間隔(差分)が、上記実施形態の場合よりも大きい。
【0144】
その他の構成は、第2の実施形態と同様である。
【0145】
(第3の実施形態の第1変形例)
図18は、第3の実施形態の第1変形例に係る
図8相当図であって、インバータ15の縦断面図である。上記実施形態では、各パワーモジュール20は、1つのパッケージ内に、下アーム素子21及び上アーム素子22の両方を収容していが、本変形例では異なる。本変形例では、各パワーモジュール20は、下アーム素子21を収容する第1パッケージ20aと、上アーム素子22を収容する第2パッケージ20bとに、分離されている。
【0146】
(第3の実施形態の第2変形例)
図19は、第3の実施形態の第2変形例に係るパワーモジュール20及びバスバー50の斜視図である。本変形例では、各パワーモジュール20は、直線状に並んで配置されている。各バスバー51,52の幅方向は、直線状(各パワーモジュール20の並ぶ方向)に延びている。この場合であっても、少なくとも第1パワーモジュール群P1及び第1コイル群C1において、各相パワーモジュール20u1,20v1,20w1と各相コイル17u1,17v1,17w1との距離du1,dv1,dw1が、U相、V相、W相の間で、モータ3の軸方向に見て互いに等しければよい。
【0147】
<その他の実施形態>
以上、本開示を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本開示は、車両の駆動ユニットに適用できるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0149】
A 駆動ユニット
L1 第1長さ
L2 第2長さ
K インダクタンス感度
M 極小値
du1,dv1,dw1,du2,dv2,dw2 距離
1 車両
3 駆動モータ
14 インホイールモータ
15 インバータ
16 インバータ
17 コイル
17u U相コイル
17v V相コイル
17w W相コイル
19 平滑コンデンサ
20 パワーモジュール
20u U相パワーモジュール
20v V相パワーモジュール
20w W相パワーモジュール
50 入力用バスバー
51 負極側バスバー
51i 一端部
51o 他端部
52 正極側バスバー
52i 一端部
52o 他端部
54 出力用バスバー
60 ヒートシンク
65 載置面