(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067175
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】茶樹への蒸気防除構造
(51)【国際特許分類】
A01M 1/00 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
A01M1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178195
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000104375
【氏名又は名称】カワサキ機工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(71)【出願人】
【識別番号】397063109
【氏名又は名称】株式会社丸文製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智久
(72)【発明者】
【氏名】結城 康浩
(72)【発明者】
【氏名】服部 雅己
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昌志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光
(72)【発明者】
【氏名】中村 浩也
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA11
2B121AA20
2B121CB02
2B121CB24
2B121CB25
2B121CB33
2B121CB47
2B121DA43
2B121EA26
2B121FA15
2B121FA16
(57)【要約】
【課題】
農薬を使わずに、加熱した水(加熱ミスト)を利用した茶の病害虫防除方法を効率的に且つ効果的に実施することのできる、新規な茶樹への蒸気防除構造の開発を技術課題とした。
【解決手段】
茶葉Lの温度が所定温度内となるように、加熱ミストMを茶葉L乃至茶樹Tに接触させるための加熱ミスト噴出装置4が、移動体に搭載されることにより、茶畝の茶株面から一定間隔あけて茶株面の上方に位置することができるように構成されていることを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶葉の温度が所定温度内となるように、加熱ミストを茶葉乃至茶樹に接触させるための加熱ミスト噴出装置が、移動体に搭載されることにより、茶畝の茶株面から一定間隔あけて茶株面の上方に位置することができるように構成されていることを特徴とする茶樹への蒸気防除構造。
【請求項2】
前記所定温度内とは45℃~55℃の範囲であることを特徴とする請求項1記載の茶樹への蒸気防除構造。
【請求項3】
前記加熱ミスト噴出装置におけるノズルは、茶株面の上方に位置した状態で、茶畝の茶株面との間で被覆部材にて覆われるように構成されていることを特徴とする請求項1または2いずれか記載の茶樹への蒸気防除構造。
【請求項4】
前記加熱ミスト噴出装置は、ノズルと、茶畝の茶株面との間隔が調整可能な方向に移動可能であることを特徴とする請求項1、2または3いずれか記載の茶樹への蒸気防除構造。
【請求項5】
前記加熱ミスト噴出装置におけるノズルの下方にはローラが具えられ、このローラによって茶畝の茶株面から突出した茶葉を押し倒すことができるように構成されていることを特徴とする請求項4記載の茶樹への蒸気防除構造。
【請求項6】
前記加熱ミストは、インバータ制御される送風機を用いて温度調節されていることを特徴とする請求項1、2、3、4または5いずれか記載の茶樹への蒸気防除構造。
【請求項7】
前記噴出装置へ蒸気を供給するための加熱ミスト生成装置を、左右の走行装置を接続する門型フレームの上部に搭載することを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の茶樹への蒸気防除構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶樹における病害虫を駆除又は防除するための茶樹への蒸気防除構造に関する。
【背景技術】
【0002】
茶園等の圃場においては、種々の病害虫の発生は避けられず、茶樹を健全に栽培するためには病害虫の防除作業は必要不可欠である。このため従来より、適宜の時期、種類、量の薬剤(農薬)散布が行われてきたが、近時、消費者が薬剤の使用を好ましく思わない傾向にあり、このような要請に応えるべく、農薬を使わずに、加熱した水(加熱ミスト)を利用する茶の病害虫防除方法が提案されている(例えば本件出願人の一による特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、農薬を使わずに、加熱した水(加熱ミスト)を利用した茶の病害虫防除方法として、市販のボイラーを用いて加熱ミストを生成し、市販のノズルを使用して、茶葉の表面温度が45℃~55℃になるように、茶樹及び茶葉に加熱ミストを噴射する防除方法が開示されている。
このような茶樹及び茶葉に加熱ミストを噴射する防除方法は、薬剤の使用を好ましく思わない消費者の要求に応えるものであり、製品茶葉の商品価値を高める上で非常に有効なものである。
しかしながら、茶園が広大な場合には作業効率を上げるために乗用管理機等を用いた防除方法も考える必要が生じるが、上記特許文献1にはそこまでの具体的な技術開示はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような背景を考慮して成されたものであり、農薬を使わずに、加熱した水(加熱ミスト)を利用した茶の病害虫防除方法を効率的に且つ効果的に実施することのできる、新規な茶樹への蒸気防除構造の開発を技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち請求項1記載の茶樹への蒸気防除構造は、茶葉の温度が所定温度内となるように、加熱ミストを茶葉乃至茶樹に接触させるための加熱ミスト噴出装置が、移動体に搭載されることにより、茶畝の茶株面から一定間隔あけて茶株面の上方に位置することができるように構成されていることを特徴として成るものである。
【0007】
また請求項2記載の茶樹への蒸気防除構造は、前記要件に加え、前記所定温度内とは45℃~55℃の範囲であることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項3記載の茶樹への蒸気防除構造は、前記要件に加え、前記加熱ミスト噴出装置におけるノズルは、茶株面の上方に位置した状態で、茶畝の茶株面との間で被覆部材にて覆われるように構成されていることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項4記載の茶樹への蒸気防除構造は、前記要件に加え、前記加熱ミスト噴出装置は、ノズルと、茶畝の茶株面との間隔が調整可能な方向に移動可能であることを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項5記載の茶樹への蒸気防除構造は、前記請求項4記載の要件に加え、前記加熱ミスト噴出装置におけるノズルの下方にはローラが具えられ、このローラによって茶畝の茶株面から突出した茶葉を押し倒すことができるように構成されていることを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項6記載の茶樹への蒸気防除構造は、前記要件に加え、前記加熱ミストは、インバータ制御される送風機を用いて温度調節されていることを特徴として成るものである。
【0012】
また請求項7記載の茶樹への蒸気防除構造は、前記要件に加え、前記噴出装置へ蒸気を供給するための加熱ミスト生成装置を、左右の走行装置を接続する門型フレームの上部に搭載することを特徴として成るものである。
そしてこれら各請求項記載の要件を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0013】
まず請求項1の発明によれば、加熱された霧状の水(加熱ミスト)を噴出する加熱ミスト噴出装置と茶畝の茶株面との間隔を一定とすることで、加熱ミストが作用した茶葉の温度が所定温度内となり、防除効果を保ちながら効率のよい茶園防除が可能となる。
【0014】
また請求項2の発明によれば、45℃以下では、防除効果が小さく、55℃以上では茶葉の熱障害が発生するため、好適な防除を実施することが可能である。
【0015】
更にまた請求項3の発明によれば、加熱ミスト噴出装置を被覆部材で覆うことで、加熱ミストの飛散が抑制され、より精度よく茶葉表面の温度を所定温度内に収めることができる。
【0016】
更にまた請求項4の発明によれば、加熱ミスト噴霧装置と茶畝の茶株面との間隔を常に一定に保つことができるため、茶葉表面の温度が所定温度内となり、防除効果を保ちながら効率のよい茶園防除が可能となる。
【0017】
更にまた請求項5の発明によれば、ローラによって押し倒された茶葉の裏側に付いた虫等に、加熱ミストを直接作用させて防除を効果的に行うことができる。
【0018】
更にまた請求項6の発明によれば、インバータ制御される送風機にて蒸気と大気とを混合することで、加熱ミストは噴出時の温度が安定化し、加熱ミストが作用した茶葉表面の温度を所定温度内に収めることができる。
【0019】
更にまた請求項7の発明によれば、加熱ミスト噴出装置へ蒸気を供給する加熱ミスト生成装置を、加熱ミスト噴出装置とは別体のものとし、加熱ミスト生成装置を門型フレームの上部に配置させることで、保温ミスト空間を大きくすることが可能となり、作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の茶樹への蒸気防除構造が具えられた茶園防除装置全体を示す斜視図である。
【
図2】茶園防除装置における蒸気経路を示すブロック図である。
【
図3】本発明の茶樹への蒸気防除構造の構成要素である蒸気噴出装置を一部透視して示す斜視図である。
【
図4】茶園防除装置による防除の様子を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔本発明の茶樹への蒸気防除構造の概要〕
本発明の茶樹への蒸気防除構造1(以下、蒸気防除構造1と称する。)は、茶葉Lの表面温度が所定温度になるように、加熱ミストMを茶葉L乃至茶樹Tに接触させるための加熱ミスト噴出装置4が、移動体に搭載されることにより、茶畝の茶株面(茶樹Tの上面)から所定間隔あけて茶株面の上方に位置することができるように構成された装置である。
【0022】
〔本発明の適用対象となる茶葉乃至茶樹〕
また本発明の蒸気防除構造1が対象とする茶葉L乃至茶樹Tとしては、摘採した茶葉Lもしくは茶葉Lの加工物に含まれる成分を液体に抽出し、その液体を飲用することを目的として栽培されるものである。また摘採した茶葉Lを食用することを目的として栽培される茶葉L乃至茶樹Tであってもよく、具体的には、例えば煎茶、碾茶、玉露、烏龍茶、紅茶、その他飲料用の茶として栽培される茶葉L乃至茶樹Tある。
【0023】
〔本発明の適用対象なる病害・虫害〕
また本発明の蒸気防除構造1が防除対象とし得る病害としては、例えば炭そ病、輪斑病、赤葉枯病、網もち病、白星病などを挙げることができる。また本発明の蒸気防除構造1が防除対象とし得る虫害の虫種としては、例えばチャノミドリヒメヨコバイ(以下、ウンカと示す)、カンザワハダニ、クワシロカイガラムシ、チャノキイロアザミウマ、チャノコカクモンハマキ、チャノホソガなどを挙げることができる。但し、これらに限定するものではない。
【0024】
〔加熱ミスト〕
加熱ミストを生成するための水は、水道水、井戸水など比較的清浄な水であればよいが、溜池、池沼等の水は不純物が多く含まれているため、後述する加熱ミスト生成装置3、加熱ミスト噴出装置4におけるノズル43の目詰まり等を考慮すると好ましくない。但し適宜のろ過手段を用いることができる場合にはこの限りではない。
また、必要に応じて、この水に薬剤を添加することもできる。
【0025】
また加熱ミストを得る方法は、加熱した水を霧状にしてもよいし、また、霧状にした水を加熱してもよい。具体的には、例えばボイラーで得た蒸気を冷却する方法や、熱風中に細かな水滴を散布する方法などを挙げることができる。但し、これらの方法に限定するものではない。
【0026】
〔茶葉乃至茶樹への加熱ミストの接触〕
前記加熱ミストは、少なくとも茶樹T及び茶葉Lのうち、葉層表面部分(茶畝の茶株面)の茶葉Lに接触させるのが好ましく、更には摘採対象となる芽部分の茶葉Lに接触させるのも好ましい。
葉層表面部分の茶葉Lに加熱ミストを接触させることで、芽の周囲に存在しその成長や品質に影響を与える病気の分生子や害虫を防除することができる。また、摘採対象となる芽部分の茶葉Lに加熱ミストを接触させることで、直接的に芽の防除を行うことができる。
特に加熱ミストを茎の切断面にも接触させるのが好ましく、毛茸が存在する若い葉にも加熱ミストを接触させるのが好ましい。また、一般的に「親葉」と称される摘採面より下にある硬化が進んだ茶葉Lにも加熱ミストを接触させるのが好ましく、更に枝に加熱ミストを接触させるのが好ましく、更には幹にも加熱ミストを接触させるのが好ましい。
加熱ミストを茎の切断面に接触させることで輪斑病の防除を効果的に行うことができ、毛茸が存在する若い茶葉Lにも加熱ミストを接触させることで炭そ病の防除を効果的に行うことができる。また、加熱ミストを親葉や枝、幹にも接触させることで、それらに付着している分生子や害虫を防除することができる。
【0027】
そして加熱ミストを茶葉L乃至茶樹Tに接触させることにより、茶葉Lの表面温度が45℃~55℃になるようにするのが好ましい。
茶葉の表面温度が45℃以上であれば、病気及び害虫の防除に有効である一方、55℃以下であれば熱傷害の発生を防止することができる。
かかる観点から、加熱ミストを茶葉L乃至茶樹Tに接触させた際の茶葉Lの表面温度が45℃~55℃になるようにするのが好ましく、更には46℃~53℃になるようにするのがより好ましく、更には50℃~52℃になるようにするのがよりいっそう好ましい。
この際、茶葉Lの表面温度は、加熱ミストの温度と接触時間によって調整することができる。
【0028】
〔防除処理時期〕
また炭そ病や輪斑病などを効果的に防除する観点から、上記処理すなわち加熱された霧状の水を茶葉Lに接触させる処理は、茶葉Lの摘採若しくは整枝を行った時から2週間以内、中でも1週間以内、その中でも1日以内に実施するのが好ましい。
【0029】
なお、上記茶葉Lの摘採とは、茶葉Lを収穫するための摘採であれば特に限定するものではない。中でも、一番茶又は二番茶以降の茶葉Lを収穫するための摘採であるのが好ましい。
また、上記茶葉Lの整枝とは、茶葉Lを摘採した後に行う摘採面の刈込作業を意味する。中でも一番茶摘採後の整枝又は二番茶摘採後の整枝であるのが好ましい。
【0030】
以上の中でも、一番茶の摘採後、二番茶の摘採前に、加熱された霧状の水を茶葉Lに接触させる処理を行うのが好ましい。
但し、一番茶の摘採前に行ってもよいし、また、二番茶の摘採後に行ってもよい。その中でも、一番茶の摘採当日~14日の間に実施するのが好ましく、その中でも摘採当日~7日の間、その中でも摘採当日~3日以下の間に実施するのがより一層好ましい。
また摘採することによって茶樹Tには傷がつくため、その傷口から輪斑病の分生子などが入り込むことがある。そのため、茶摘採後すぐに防除するのが好ましく、萌芽前の炭そ病の分生子の低減、ウンカの低減も行うことができる。
【0031】
更に、炭そ病やウンカなどを発生防止する観点からすると、これらに最も効果的な二番茶芽が萌芽する一番茶摘採日から10日~25日の間、中でも摘採日から15日~20日の間に、加熱された霧状の水を茶葉Lに接触させる処理を実施するのが特に好ましい。
【0032】
他方、輪斑病などを予防する観点からすると、輪斑病の感染源となりやすい摘採機の刃による付傷部が感染部になるため、上記処理すなわち加熱された霧状の水を茶葉Lに接触させる処理を、茶葉Lの摘採若しくは整枝を行った時から24時間以内、中でも18時間以内、その中でも12時間以内に実施するのが好ましい。
【実施例0033】
本発明の茶樹への蒸気防除構造1による防除の概要の一例は、以上述べたとおりであり、以下、本発明の蒸気防除構造1の最良の形態を下記実施例に基づいて詳述するが、これらの実施例に対して本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更を加えることも可能である。
なお請求項1で定義した移動体としては、一例として走行体11及び飛行体100が挙げられ、この実施例では移動体として走行体11を採用した形態について説明し、後ほど他の実施例において移動体として飛行体100を採用した形態について説明する。
【0034】
図1は本発明の蒸気防除構造1が具えられ、移動体として走行体11が採用された茶園防除装置10の全体斜視図を示したものである。
茶園防除装置10(走行体11)は、エンジン13又は電気モータで駆動されるクローラベルト等の走行装置12を、進行方向に向かって左右に備えている。
【0035】
またこれら左右の走行装置12は
図4に示すように、門型フレーム21の下端部に具えられるとともに、この門型フレーム21によって接続されており、更に門型フレーム21上部に加熱ミスト生成装置3が搭載されている。
【0036】
また前記加熱ミスト生成装置3は
図2に示されるように、給水タンク14から供給される水Wを、燃料タンク15から供給される燃料Fを燃焼させるバーナ31等の燃焼熱によって蒸気Sとし(霧化)、この蒸気Sと大気Aとを混合して、加熱された霧状の水(前記加熱ミストM)を生成するための装置である。
更に生成された加熱ミストMは伸縮管Pを通じて、加熱ミスト噴出装置4にて保管される。この加熱ミスト噴出装置4の下面全域には加熱ミストMを噴出するノズル43が複数設けられており、且つ加熱ミスト噴出装置4は門型フレーム21の下部と茶株面との間に配置されるため、茶株面から至近距離で加熱ミストMを茶葉L乃至茶樹Tに噴出し、噴出された加熱ミストMの温度を低下させずに茶葉L乃至茶樹Lに作用させることが可能である。
【0037】
また前記ノズル43の下方には
図2、3に示されるように、ローラフレーム41に支持された複数のローラ42が具えられており、
図4に示すように茶株面(茶樹Tの上面)から突出した長い茶葉Lを押し倒し、茶葉Lの裏側に付いた虫等に加熱ミストMを直接作用させて、効果的に防除を行うことができる構造とされている。
【0038】
更に、加熱ミスト噴出装置4(加熱ミストMを噴出する複数のノズル43)と茶株面とをシート状の被覆部材6で覆い、その内側に保温ミスト空間60を形成することで、より精度よく茶葉L乃至茶樹Tへ作用する加熱ミストMの温度を管理することができる。
即ち、本発明においては、加熱ミスト噴出装置4と茶畝の茶株面間で保温ミスト空間60を形成することで、加熱ミストMの発散が抑制でき、一定温度に保温された加熱ミストMを茶葉L乃至茶樹Tに噴出させることができる。
なお
図4に示すように加熱ミスト噴出装置4の左右には給水タンク14が位置するため、茶樹Tの左右面は、これら給水タンク14によって実質的に閉鎖された状態とされる。
【0039】
その際、加熱ミストMの温度は、加熱ミスト生成装置3にて生成された蒸気Sに対し、大気Aを混合させて調整するため、インバータ(図示省略)によって送風機5の回転数を制御することにより、蒸気Sと混合する大気Aの量を細かく制御することができ、保温ミスト空間60内の温度のバラツキを更に小さくすることが可能となる。
尚、前述のとおり茶葉L乃至茶樹Tに接触する際の加熱ミストMの温度は45℃~55℃に調整するのが好ましいため、加熱ミスト噴出装置4内の加熱ミストMの温度については、茶園防除装置10の進行速度や茶葉Lの密集具合に応じて、保温ミスト空間60内で温度が下がり、加熱ミストMによって加熱される茶葉Lの温度に幅が生じてしまうことも考慮すると、前記温度と同等又は若干高い温度にて設定し、茶葉Lへの接触時間も加味しながら温度管理するのが望ましい。
【0040】
また、前記ノズル43と茶畝の茶株面の上部との間隔については、茶畝や茶葉Lの成長具合によって常に一定ではないことが予想される。そのような状態で加熱ミストMを茶葉L乃至茶樹Tに作用させた場合には、茶葉L表面の温度にバラツキが生じてしまうことが予想される。
【0041】
そこで本発明では
図4に示すように、ノズル43部と茶畝の茶株面の上部との間隔を一定間隔になるように、門型フレーム21に対し、加熱ミスト噴出装置4がリンク22によって上下方向に移動が可能な構造となっている。このような構造とすることで、加熱ミスト噴出装置4に具えられたローラフレーム41、ローラ42、ノズル43及び被覆部材6が一体となって、茶畝の茶株面に対して上下方向に移動が可能となる。そしてノズル43と茶畝の茶株面の上部との間隔を、適宜のセンサによって計測し、この計測値に応じてリンク22を操作して、ノズル43と茶畝の茶株面の上部との間隔を常に一定に調整することが可能となる。その結果、更に精度良く、加熱ミストMが作用した部位の温度を所定温度内に保つことが可能となる。
【0042】
本発明においては、加熱ミスト生成装置3と加熱ミスト噴出装置4とを、一例として蛇腹チューブ(いわゆるフレキ管)が適用された伸縮管Pを介して接続し、加熱ミスト噴出装置4のみを茶畝の茶株面上部に対して接近離反することができる構造としている。
なお加熱ミスト生成装置3についても加熱ミスト噴出装置4と同じく門型フレーム21の下部に設けることも可能であるが、保温ミスト空間60の確保という観点からは好ましくはない。保温ミスト空間60を大きく確保した方が、より防除作用の効率化を図ることが可能であるため、加熱ミスト生成装置3を門型フレーム21の上部に配置し、加熱ミスト噴出装置4のみを門型フレーム21の下部に配置する方が防除作用の効率化の面からはより望ましい。
【0043】
なお本発明の蒸気防除構造1による茶樹Tへの加熱ミストMの接触は、防除以外にも、国際公開2019/146561号にも開示があるように、茶葉Lの表面を所定内温度にて加熱をすることで、茶葉Lの成長を促進させるという別の効果もある。
【0044】
〔他の実施例〕
上記実施例は、移動体としてクローラベルトなどの走行装置12を装備した走行体11を示した例であったが、以下、移動体として飛行体100を採用した形態について説明する。この飛行体100は、例えば、
図5に示したようないわゆるドローンと呼ばれるプロペラ107を有する飛行体100を採用することができる。
【0045】
この場合には、飛行体本体101の一部に加熱ミスト生成装置103が配置され、飛行体本体101の下部に加熱ミスト噴出装置104が配置され、更に加熱ミスト噴出装置104と茶畝の茶株面との間を被覆部材106にて覆うような構造が採られる。このような飛行体100の構造であれば、加熱ミスト噴出装置104におけると茶畝の茶株面との間隔を一定に保ちながら加熱ミストMを噴出することで、移動体としての走行体11を採用した場合と同様、茶葉L乃至茶樹Tに作用する温度を一定に保ちながら作業効率のよい茶園防除が可能となる。
【0046】
また、前述のような飛行体100の構造の場合には、駆動はモータでもエンジンでもよく、加熱ミスト生成装置103、燃料タンク(図示省略)、給水タンク114、送風機105などの構成部品は、飛行体本体101の内部又は側部、更には上部に配置させることができる。更にこのような飛行体100であれば、前述した加熱ミスト噴出装置104の上下可変機構を設けなくても茶畝の茶株面との間隔を飛行高さによって調整が可能であり、走行体11採用した場合と比較すると、よりシンプルな構造で茶葉L乃至茶樹Tに作用する加熱ミストMの温度を一定に保つことができる。なお飛行体100の飛行高さは、飛行体100を操縦するリモコン等の遠隔操作、あるいは自動運転操作によって任意に調整が可能である。また加熱ミスト噴出装置104には、上記実施例と同様にローラフレーム141及びローラ142が具えられている。