(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067187
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】電解コンデンサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 9/008 20060101AFI20230509BHJP
H01G 9/048 20060101ALI20230509BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20230509BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20230509BHJP
【FI】
H01G9/008 303
H01G9/048 G
H01G9/00 290D
H01G13/00 307A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178212
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 悠司
(72)【発明者】
【氏名】油谷 将弘
(72)【発明者】
【氏名】青山 達治
(72)【発明者】
【氏名】田代 智之
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082AB09
5E082BC38
5E082EE03
5E082FF05
5E082FG03
5E082FG27
5E082FG44
5E082GG06
5E082GG22
5E082JJ06
5E082JJ15
5E082JJ28
5E082KK02
5E082LL29
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】電解コンデンサにおいて、リード部材と電極箔との接触抵抗を低減する。
【解決手段】電解コンデンサは、第1主面および第1主面と反対側の第2主面を有する電極箔と、電極箔に接続されるリード部材と、を備える。電極箔と、リード部材とは、電極箔の第1主面とリード部材とが重なり合う重なり部において、かしめ部により接続されている。かしめ部は、電極箔およびリード部材を貫通する貫通孔を有する。かしめ部において、電極箔は、貫通孔の周縁部より延びており、第2主面上に折り返された第1折り返し部を有する。リード部材は、貫通孔の内壁を構成するとともに電極箔を貫通する貫通部と、貫通部の端部より延びており、第2主面上に折り返された第2折り返し部と、を有する。第2折り返し部は、第1折り返し部を内包している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面および前記第1主面と反対側の第2主面を有する電極箔と、前記電極箔に接続されるリード部材と、を備え、
前記電極箔と、前記リード部材とは、前記電極箔の前記第1主面と前記リード部材とが重なり合う重なり部において、かしめ部により接続され、
前記かしめ部は、前記電極箔および前記リード部材を貫通する貫通孔を有し、
前記かしめ部において、
前記電極箔は、前記貫通孔の周縁部より延びており、前記第2主面上に折り返された第1折り返し部を有し、
前記リード部材は、前記貫通孔の内壁を構成するとともに前記電極箔を貫通する貫通部と、前記貫通部の端部より延びており、前記第2主面上に折り返された第2折り返し部と、を有し、
前記第2折り返し部は、前記第1折り返し部を内包している、電解コンデンサ。
【請求項2】
前記電極箔の厚みは、20μm以上、60μm以下である、請求項1に記載の電解コンデンサ。
【請求項3】
前記電極箔は、金属箔と、前記金属箔の両方の主面を覆う被覆層と、を備え、
前記被覆層は、金属酸化物層、金属窒化物層、金属炭化物層、および導電層からなる群より選択される少なくとも1種を含み、
前記第1折り返し部は、前記第2折り返し部で覆われる表面において、前記金属箔の金属組織が露出する領域を有する、請求項1または2に記載の電解コンデンサ。
【請求項4】
前記被覆層の厚みは、0.1μm以上、5μm以下である、請求項3に記載の電解コンデンサ。
【請求項5】
前記かしめ部における前記電極箔の厚み方向の断面において、
前記貫通孔の中心から前記第1折り返し部の端部までの前記電極箔の面方向の長さL1は、前記貫通孔の中心から前記第2折り返し部の端部までの前記電極箔の面方向の長さL2よりも小さい、請求項1~4のいずれか1項に記載の電解コンデンサ。
【請求項6】
第1主面および前記第1主面と反対側の第2主面を有する電極箔と、リード部材と、を準備する第1工程と、
前記電極箔と前記リード部材とを接続する第2工程と、を含み、
前記第2工程は、
前記電極箔に予備貫通孔を設け、前記第1主面における前記予備貫通孔を含む所定の領域に前記リード部材を重ね合わせる第2A工程と、
前記第2A工程の後、前記リード部材側から前記リード部材の前記予備貫通孔と対応する位置に針状部材を突き刺して孔を形成し、前記リード部材の前記孔の周縁部を前記電極箔の第2主面に引き出すとともに、前記針状部材を前記予備貫通孔に通過させて前記予備貫通孔を押し拡げ、前記電極箔の前記予備貫通孔の周縁部を前記電極箔の第2主面より突出させる第2B工程と、
前記電極箔の前記第2主面より突出させた部分P1とともに前記リード部材の前記第2主面に引き出された部分P2を前記第2主面上に折り返し、前記部分P1および前記部分P2の折り返し部を前記第2主面に加締め付ける第2C工程と、
を含み、
前記第2B工程において前記針状部材を前記予備貫通孔に通過させるときの前記針状部材の径D2に対応する前記予備貫通孔の径D1は、前記針状部材の径D2よりも小さく、
前記第2C工程において、前記部分P2は、前記第2主面上で前記部分P1の折り返し部を内包するように折り返される、電解コンデンサの製造方法。
【請求項7】
前記第2主面上に折り返される前の前記部分P1の前記第2主面からの高さH1は、前記第2主面上に折り返される前の前記部分P2の前記第2主面からの高さH2よりも小さい、請求項6に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項8】
前記予備貫通孔の径D1と、前記針状部材の径D2と、前記リード部材の厚みTとは、
0<(D2-D1)/T≦1/2
の関係を満たす、請求項6または7に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項9】
前記第2C工程で前記部分P1および前記部分P2の折り返し部を前記第2主面に加締め付けて形成されるかしめ部における前記電極箔の厚み方向の断面において、
前記貫通孔の中心から前記部分P1の折り返し部の端部までの前記電極箔の面方向の長さをL1とし、前記貫通孔の中心から前記部分P2の折り返し部の端部までの前記電極箔の面方向の長さをL2とするとき、
前記針状部材の径D2と、前記長さL1と、前記長さL2とは、
D2/2<L1/L2<1の関係を満たす、請求項6~8のいずれか1項に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項10】
前記針状部材の先端形状は、角錐形である、請求項6~9のいずれか1項に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項11】
前記予備貫通孔の形状は、円形、多角形、または星形多角形である、請求項6~10のいずれか1項に記載の電解コンデンサの製造方法。
【請求項12】
前記第1工程では、金属箔と、前記金属箔の両方の主面を覆う被覆層と、を備える前記電極箔を準備し、
前記被覆層は、金属酸化物層、金属窒化物層、金属炭化物層、および導電層からなる群より選択される少なくとも1種を含み、
前記第2A工程で設けられる前記予備貫通孔の内壁面において、前記金属箔の金属組織が露出している、請求項6~11のいずれか1項に記載の電解コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電解コンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサは、第1主面および第1主面と反対側の第2主面を有する電極箔と、電極箔に接続されるリード部材と、を備える。電極箔とリード部材との接続は、工程(a)および工程(b)により行われる。工程(a)では、電極箔の第1主面にリード部材を重ね合わせ、重なり部の所定位置をリード部材側より針状部材を用いて穿孔して貫通孔を形成する。工程(b)では、穿孔に伴いリード部材において貫通孔の周縁部より電極箔の第2主面に引き出された部分を第2主面上に折り返して加締める。
【0003】
特許文献1では、引出端子に接続される一対の電極体と当該電極体の間に介在する電解質とを備える電解コンデンサであって、一方又は両方の前記電極体は、黒鉛露出電極体であり、黒鉛を含有するカーボン層を外表面に露出させて有し、前記引出端子と前記黒鉛露出電極体は、ステッチ接続構造を有し、前記ステッチ接続構造は、前記黒鉛露出電極体を貫通する貫通孔と、前記引出端子にのみ発生し、前記貫通孔から前記黒鉛露出電極体の裏側面に引き出されたバリと、前記黒鉛露出電極体の前記裏側面側に折り返された前記バリの折り返し部と、を有する、電解コンデンサが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リード部材と電極箔との接触抵抗の低減が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面は、第1主面および前記第1主面と反対側の第2主面を有する電極箔と、前記電極箔に接続されるリード部材と、を備え、前記電極箔と、前記リード部材とは、前記電極箔の前記第1主面と前記リード部材とが重なり合う重なり部において、かしめ部により接続され、前記かしめ部は、前記電極箔および前記リード部材を貫通する貫通孔を有し、前記かしめ部において、前記電極箔は、前記貫通孔の周縁部より延びており、前記第2主面上に折り返された第1折り返し部を有し、前記リード部材は、前記貫通孔の内壁を構成するとともに前記電極箔を貫通する貫通部と、前記貫通部の端部より延びており、前記第2主面上に折り返された第2折り返し部と、を有し、前記第2折り返し部は、前記第1折り返し部を内包している、電解コンデンサに関する。
【0007】
本開示の別の側面は、第1主面および前記第1主面と反対側の第2主面を有する電極箔と、リード部材と、を準備する第1工程と、前記電極箔と前記リード部材とを接続する第2工程と、を含み、
前記第2工程は、前記電極箔に予備貫通孔を設け、前記第1主面における前記予備貫通孔を含む所定の領域に前記リード部材を重ね合わせる第2A工程と、前記第2A工程の後、前記リード部材側から前記リード部材の前記予備貫通孔と対応する位置に針状部材を突き刺して孔を形成し、前記リード部材の前記孔の周縁部を前記電極箔の第2主面に引き出すとともに、前記針状部材を前記予備貫通孔に通過させて前記予備貫通孔を押し拡げ、前記電極箔の前記予備貫通孔の周縁部を前記電極箔の第2主面より突出させる第2B工程と、
前記電極箔の前記第2主面より突出させた部分P1とともに前記リード部材の前記第2主面に引き出された部分P2を前記第2主面上に折り返し、前記部分P1および前記部分P2の折り返し部を前記第2主面に加締め付ける第2C工程と、を含み、
前記第2B工程において前記針状部材を前記予備貫通孔に通過させるときの前記針状部材の径D2に対応する前記予備貫通孔の径D1は、前記針状部材の径D2よりも小さく、前記第2C工程において、前記部分P2は、前記第2主面上で前記部分P1の折り返し部を内包するように折り返される、電解コンデンサの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、電解コンデンサにおいて、リード部材と電極箔との接触抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態に係る電解コンデンサにおける電極箔およびリード部材の要部をリード部材側から見た正面図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る電解コンデンサにおける電極箔およびリード部材の要部を電極箔側から見た正面図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る電解コンデンサの製造方法における第2A工程後(穿孔前)の電極箔およびリード部材の要部を模式的に示す断面図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る電解コンデンサの製造方法における第2B工程後(穿孔後)の電極箔およびリード部材の要部を模式的に示す断面図である。
【
図7】本開示の実施形態に係る電解コンデンサを模式的に示す断面図である。
【
図8】本開示の実施形態に係る電解コンデンサが備える巻回体の構成を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[電解コンデンサ]
本開示の実施形態に係る電解コンデンサは、第1主面および第1主面と反対側の第2主面を有する電極箔と、電極箔に接続されるリード部材と、を備える。電極箔と、リード部材とは、電極箔の第1主面とリード部材とが重なり合う重なり部において、かしめ部により接続されている。
【0011】
かしめ部は、電極箔およびリード部材を貫通する貫通孔を有する。かしめ部において、電極箔は、貫通孔の周縁部より延びており、第2主面上に折り返された第1折り返し部を有する。リード部材は、貫通孔の内壁を構成するとともに電極箔を貫通する貫通部と、貫通部の端部より延びており、第2主面上に折り返された第2折り返し部と、を有する。第2折り返し部は、第1折り返し部を内包している。
【0012】
なお、「第2折り返し部が第1折り返し部を内包している」とは、下記(i)および(ii)の条件を満たすことを意味する。
【0013】
条件(i):かしめ部を電極箔の第2主面の法線方向から見たときに、第2折り返し部が第1折り返し部を覆っている領域の面積S1は、第2折り返し部の面積S2よりも小さい。
【0014】
条件(ii):かしめ部を電極箔の第2主面の法線方向から見たときに、第1折り返し部が第2折り返し部で覆われている領域の面積S3aが、第1折り返し部が第2折り返し部で覆われていない領域の面積S3bよりも大きいか、もしくは、第1折り返し部の全体が第2折り返し部で覆われている。
【0015】
面積S2に対する面積S1の比:S1/S2は、例えば、1/3以上(もしくは1/2以上)、1未満であってもよく、1/3以上(もしくは1/2以上)、9/10以下であってもよく、1/3以上(もしくは1/2以上)、4/5以下であってもよい。
【0016】
第2折り返し部が、複数のかしめ片に分離して形成される場合、複数のかしめ片の1/2以上が、S1/S2<1を満たしていればよく、複数のかしめ片の3/4以上(もしくは全て)が、S1/S2<1を満たしていることが好ましい。
【0017】
図3に示すかしめ部710の場合、第2折り返し部412は、4つのかしめ片(4つの三角形の部分)に分離しており、4つのかしめ片のそれぞれが第1折り返し部分312を覆っている領域(
図3中の4つの斜線部分)を有する。この場合、上記(i)の面積S2は、1つのかしめ片(1つの三角形の部分)の面積である。面積S1は、1つのかしめ片における1つの斜線部分の面積である。
図3に示すかしめ部710では、4つのかしめ片の全てにおいて、S1/S2<1を満たしている。
【0018】
面積S3aに対する面積S3bの比:S3b/S3aは、例えば、0以上、1/3以下(もしくは1/2以下)であってもよく、0以上、1/4以下であってもよい。
【0019】
図3に示すかしめ部710の場合、上記(ii)の面積S3aは、第1折り返し部312が、第2折り返し部412(4つのかしめ片)で覆われている領域の面積(
図3中の4つの斜線部分を合わせた面積)である。面積S3bは、第1折り返し部312全体の面積から面積S3aを差し引いた値である。
図3に示すかしめ部710では、S3b/S3a<1を満たしている。
【0020】
第1折り返し部および第2折り返し部を有するかしめ部は、後述の製造方法により形成される。第1折り返し部を内包するように第2折り返し部が形成される場合、かしめ部の形成時(重なり部のプレス時)に、第1折り返し部は第2主面上で第2折り返し部に包まれた状態で第2折り返し部とともにプレスされる。よって、第1折り返し部と第2折り返し部とが強固に密着し、密着する領域も十分に確保される。その結果、リード部材と電極箔との接触抵抗が低減される。また、リード部材と電極箔との接続強度が高められ、リード部材と電極箔との接続部(かしめ部)に負荷がかかる場合でも、低い接触抵抗が維持される。
【0021】
仮に、第2折り返し部が第1折り返し部を内包しない場合、プレス時に第1折り返し部が第2折り返し部により固定されにくく、第2主面上で第2折り返し部からはみ出す方向にずれ易くなる。よって、第1折り返し部と第2折り返し部との密着性が十分に確保されず、密着する領域も小さくなる。
【0022】
電極箔は、第1金属を含む金属箔を含む。第1金属は、アルミニウム、タンタル、ニオブ等の弁作用金属を含む。金属箔は、プレーン箔であってもよく、エッチング処理等により表面が粗面化された金属箔であってもよい。
【0023】
表面が粗面化された金属箔は、多孔質部と、多孔質部に連続する芯部と、を備える。多孔質部の厚み(片面あたりの厚み)は、例えば、金属箔の総厚みの1/10以上、3/10以下である。多孔質部は金属部分で囲まれる多数のピット(もしくは細孔)を有する。ピット径(もしくは細孔径)ピークは、例えば、50nm~2000nm(もしくは100nm~300nm)である。ピット径(もしくは細孔径)ピークは、例えば水銀ポロシメータで測定される体積基準の細孔径分布の最頻度孔径である。
【0024】
金属箔の表面は、通常、自然酸化皮膜もしくは後述の被覆層で覆われている。金属箔の表面が被覆層(もしくは自然酸化皮膜)で覆われた電極箔を用いて、後述の製造方法によりかしめ部を形成する場合、第1折り返し部は、第2折り返し部で覆われる表面において、被覆層(もしくは自然酸化皮膜)で覆われない領域、すなわち、電極箔の金属素地が露出する領域(後述の領域C)を有し得る。被覆層の導電性が低い場合でも、領域Cの存在によりリード部材と電極箔との接触抵抗を低減できる。上記の電極箔の金属素地は、金属箔の金属組織とも言える。ただし、表面が粗面化された金属箔である場合、電極箔の金属素地は、金属箔の芯部の金属組織を意味する。
【0025】
仮に、第2折り返し部が第1折り返し部を内包しない場合、領域Cは第2折り返し部の端部で覆われやすく、領域Cと第2折り返し部との密着性が低いことがある。または、領域Cが第2折り返し部から露出することもある。
【0026】
電極箔は、金属箔と、金属箔の表面を覆う被覆層と、を備えてもよい。被覆層は、例えば、陰極箔の耐腐食性の向上、陰極箔の導電性の向上などを目的として形成される。この場合、被覆層は、金属酸化物層、金属窒化物層、金属炭化物層、および導電層からなる群より選択される少なくとも1種を含み得る。被覆層は、第2金属を含んでもよい。第2金属としては、例えば、チタン、ニッケル、タンタル、ニオブ等が挙げられる。被覆層は、2種以上の第2金属を含んでもよい。第2金属は、第1金属と同じであってもよく、異なっていてもよい。また、被覆層はカーボンを含んでもよく、導電層はカーボン層であってもよい。金属箔の表面が粗面化されている場合、電極箔は、多孔質部を構成する金属骨格を覆う被覆層を備えてもよい。
【0027】
電極箔を陰極箔として用いる場合、電極箔の厚みは、例えば、20μm以上、60μm以下であり、被覆層の厚みは、例えば、0.1μm以上、5μm以下である。表面が粗面化された金属箔の場合、被覆層の厚みとは、多孔質部の外表面を覆う被覆層の厚みを指す。
【0028】
電極箔は、多孔質部および多孔質部に連続する芯部を有する金属箔と、多孔質部を構成する金属骨格を覆う金属酸化物層と、を備えてもよい。この場合、電極箔を陽極箔として用いることができる。金属酸化物層は誘電体層として機能し得る。金属酸化物層は、化成処理により形成される化成皮膜(第1金属の酸化物層)であってもよい。
【0029】
かしめ部における電極箔の厚み方向の断面において、貫通孔の中心から第1折り返し部の端部までの電極箔の面方向の長さL1は、貫通孔の中心から第2折り返し部の端部までの電極箔の面方向の長さL2よりも小さいことが好ましい。L1/L2は、0.9以下であってもよく、0.8以下であってもよい。また、L1/L2は、後述の針状部材の径D2の1/2倍よりも大きいことが好ましく、0.4以上であってもよく、0.5以上であってもよい。L1/L2は、上記の上限と下限とを任意に組み合わせた範囲(例えば、D/2超、1未満)であってもよい。L1/L2が上記範囲内である場合、第1折り返し部(領域C)が第2折り返し部で覆われ易く、第1折り返し部と第2折り返し部との良好な密着性が確保され易い。
【0030】
なお、上記の「第2折り返し部の端部」とは、第2折り返し部における貫通孔の中心から最も離れた点Pである。L2は、当該中心から点Pまでの最短距離である。上記の「第1折り返し部の端部」とは、かしめ部の点Pを含む断面(電極箔の厚み方向の断面)において、第1折り返し部における貫通孔の中心から最も離れた点Qである。L1は、当該中心から点Qまでの最短距離である。第2折り返し部が複数のかしめ片に分断される場合、少なくとも1つのかしめ片において、L1<L2の関係が満たされていればよく、複数のかしめ片の1/2以上(もしくは全て)において、L1<L2の関係が満たされることが望ましい。かしめ部を電極箔の一方の主面の法線方向から見たときに、貫通孔の形状が正多角形である場合、貫通孔の中心は、正多角形の外接円の中心と一致する。
【0031】
ここで、
図1は、本開示の実施形態に係る電解コンデンサにおける電極箔およびリード部材の要部をリード部材側から見た正面図である。
図1では、重なり部600をリード部材400側(電極箔300の第1主面S1側)から見ている。
図2は、本開示の実施形態に係る電解コンデンサにおける電極箔およびリード部材の要部を電極箔側から見た正面図である。
図2では、重なり部600を電極箔300側(第2主面S2側)から見ている。
図1および
図2では、便宜的に、重なり部600にハッチングを付している。
【0032】
電極箔300は、第1主面S1および第1主面S1と反対側の第2主面S2を有する。電極箔300は、金属箔301と、金属箔301の一方の主面を覆う(第1主面S1側の)第1被覆層302aと、金属箔301の他方の主面を覆う(第2主面S2側の)第2被覆層302bと、を備える。金属箔301はプレーン箔であり、被覆層302a、302bはプレーン箔の両面に形成されている。なお、金属箔は、これに限定されず、表面が粗面化された金属箔であってもよい。第1主面S1側の第1多孔質部と、第2主面S2側の第2多孔質部と、第1多孔質部および第2多孔質部に連続する芯部と、を有する金属箔であってもよい。
【0033】
リード部材400は、リード線427と、平坦なタブ部425と、リード線427が接続されるリード線接続部426と、を備える。リード部材400としては、タブ部425とリード線接続部426とリード線427とを有する導電性の部材であれば特に限定されないが、例えば、次のようにして準備することができる。金属の棒状部材を用意し、その一方の端をプレス等によって平坦に延ばし、タブ部425を形成する。他方の端は、棒状のまま残して、リード線接続部426とする。リード線接続部426とリード線427とを、溶接等によって接続する。
【0034】
電極箔300とタブ部425とを重ねることにより、重なり部600が形成されている。電極箔300とリード部材400のタブ部425とは、重なり部600において、4箇所のかしめ部700(第1かしめ部710、第2かしめ部720、第3かしめ部730、第4かしめ部740)によって、接続されている。4箇所のかしめ部700は、それぞれ後述の製造方法により形成されている。
【0035】
複数のかしめ部700は、それぞれ、電極箔300とリード部材400とを貫通する1つの貫通孔701(第1貫通孔711、第2貫通孔721、第3貫通孔731、第4貫通孔741)を有する。各貫通孔701の内壁は、主に、電極箔300の第2主面S2側に一部が引き出されるリード部材400により形成されているが、その一部は電極箔300が露出することによって形成されていてもよい。リード部材400は、貫通孔701の内壁を形成するとともに、電極箔300を第1主面S1から第2主面S2に貫通する貫通部を有する。かしめ部700を、電極箔300の一方の主面の法線方向から見たとき、リード部材400および電極箔300のいずれも存在しない領域が、貫通孔701である。貫通孔701の外周は、貫通孔701を電極箔の一方の主面に投影してできる環状のラインである。
【0036】
複数のかしめ部700は、それぞれ、1つの貫通孔701(第1貫通孔711、第2貫通孔721、第3貫通孔731、第4貫通孔741)の周縁部に形成される1つのかしめ片702(第1かしめ片712、第2かしめ片722、第3かしめ片732、第4かしめ片742)を有する。
【0037】
ここで、
図3は、
図2の第1かしめ部710の拡大正面図である。
図4は、
図2のX-X断面図であり、かしめ片712(折り返し部312、412)の第2主面S2側への回り込みの長さ(後述の長さL1、L2に相当する)が最大となる断面を示している。
図4は、第1かしめ部710を模式的に示す断面図である。なお、第2かしめ部720~第4かしめ部740は、第1かしめ部710と同様の構成であり、説明を省略する。
【0038】
第1かしめ部710において、電極箔300は、第1貫通孔711の周縁部より延びており、第2主面S2上に折り返された第1折り返し部312を有する。リード部材400は、貫通孔711の内壁を構成するとともに電極箔300を貫通する貫通部430と、貫通部430の端部より延びており、第2主面S2上に折り返される第2折り返し部412と、を有する。第2折り返し部412は、第2主面S2側において第1折り返し部312を内包している。第1かしめ片712は、第1折り返し部312および第2折り返し部412のかしめ片により構成されている。第2折り返し部412は、4つのかしめ片(
図3中の三角形の部分)に分離して形成されている。第1折り返し部312は、1つのかしめ片で構成されているが、複数(例えば4つ)のかしめ片に分離して形成されていてもよい。リード部材400(貫通部430)は、第1貫通孔711の内壁を形成している。第1折り返し部312が第2折り返し部412で覆われる表面は、金属箔301の金属組織が露出する領域Cを有する。領域Cは、第1折り返し部312の端部付近に存在する。
【0039】
図4に示す第1かしめ部710における電極箔300の厚み方向の断面(
図2のX-X断面)において、第1貫通孔711の中心から第1折り返し部312の端部までの電極箔300の面方向の長さをL1とする。第1貫通孔711の中心から第2折り返し部412の端部までの電極箔300の面方向の長さをL2とする。このとき、L1/L2は、上述の範囲内であることが好ましい。この場合、第1折り返し部が第2折り返し部で覆われ易く、第1折り返し部と第2折り返し部との良好な密着性が確保され易い。
【0040】
かしめ片712の断面形状は、かしめ部712のどの断面を見るかによって異なる。他のかしめ片の断面形状も同様である。
図4は、
図2のX-X断面であり、かしめ片712(折り返し部312、412)の第2主面S2側への回り込みの長さが最大となる断面を示している。
【0041】
図1および
図2では、4個の貫通孔701を電極箔300の幅方向に一列に配置する例を示しているが、貫通孔の配置はこれに限定されない。かしめ部の確保および接続強度の観点から、4個の貫通孔の間は、例えば、0.5mm以上離して設けてもよく、0.5mm以上、3.0mm以下離して設けてもよい。
【0042】
図1および
図2中の重なり部に形成されるかしめ部700(貫通孔701)の数は4個であるが、かしめ部(貫通孔)の数はこれに限定されず、通常は2個以上であり、接触抵抗および接続強度の観点から、例えば2~4個(もしくは3~4個)が好ましい。
【0043】
貫通孔701の大きさは、特に限定されないが、最大径で0.5mm以上、1.2mm以下(もしくは0.7mm以上、1mm以下)が好ましい。貫通孔の最大径が0.5mm以上であると、電気的接続が確実になり易い。貫通孔の最大径が1.2mm以下であると、リード部材や電極箔の機械的強度が保たれ易い。複数の貫通孔の大きさは、互いに異なっていてもよい。
【0044】
4箇所のかしめ部のうちの一部は、
図4に示す構造以外の構造であってもよいが、電極箔とリード部材との接触抵抗の低減の観点から、いずれのかしめ部も
図4に示す構造を有することが好ましい。
【0045】
[電解コンデンサの製造方法]
本開示の実施形態に係る電解コンデンサの製造方法は、第1主面および第1主面と反対側の第2主面を有する電極箔と、リード部材と、を準備する第1工程と、電極箔とリード部材とを接続する第2工程と、を含む。第2工程は、第2A工程~第2C工程を含む。
【0046】
第2A工程では、電極箔に予備貫通孔を設け、予備貫通孔を有する第1主面の所定の領域にリード部材を重ね合わせる。
第2B工程では、リード部材側からリード部材の予備貫通孔と対応する位置に針状部材を突き刺して孔を形成し、リード部材の孔の周縁部を電極箔の第2主面に引き出す(すなわち、リード部材の孔の周縁部を、電極箔を貫通させて、電極箔の第1主面側から第2主面側まで引き出す)とともに、針状部材を予備貫通孔に通過させて予備貫通孔を押し拡げ、電極箔の予備貫通孔の周縁部を電極箔の第2主面より突出させる。
【0047】
第2B工程において針状部材を予備貫通孔に通過させるときの針状部材の径D2に対応する予備貫通孔の径D1は、針状部材の径D2よりも小さい。D1/D2<1を満たす場合、引き出し部とともに突出部が形成されやすい。後述の領域Bを有する突出部を形成できる。D1/D2は、0.9以下であってもよく、0.8以下であってもよい。第2B工程では、電極箔の第1主面の法線方向から見て、針状部材の径D2を示す径と予備貫通孔の径D1を示す径とが一致するように、針状部材を予備貫通孔に通過させる。
【0048】
なお、針状部材の径D2とは、針状部材の角錐形の先端部の底面に相当する断面において、当該断面の中心(針状部材の軸心)を通り、当該断面を横切る任意の線分のうち、線分の少なくとも一方の端と中心との距離が最小となるときの線分の長さを意味する。当該断面の形状が正多角形の場合、径D2は、正多角形の任意の一辺を底辺とするときの高さ寸法に相当するとも言える。当該断面の形状が正四角形の場合、径D2は、正四角形の一辺の長さに相当する。当該断面の中心は、当該断面が正多角形の場合、正多角形の外接円の中心である。
【0049】
第2C工程では、電極箔の第2主面より突出させた部分P1とともにリード部材の第2主面に引き出された部分P2を第2主面上に折り返し、部分P1および部分P2の折り返し部を第2主面に加締め付ける。第2C工程により、かしめ部が形成される。第2C工程では、電極箔とリード部材との重なり部を電極箔およびリード部材の厚み方向にプレスする。以下、部分P1および部分P2は、それぞれ、「突出部」および「引き出し部」とも称する。部分P1および部分P2の折り返し部は、それぞれ、「第1折り返し部」および「第2折り返し部」とも称する。
【0050】
第2C工程において、部分P2は、第2主面上で部分P1の折り返し部を内包するように折り返される。この場合、第2C工程でのかしめ部の形成時(重なり部のプレス時)に、第1折り返し部は、第2主面上において第2折り返し部で包まれた状態でプレスされる。よって、第1折り返し部と第2折り返し部とが強固に密着し、密着する領域も十分に確保される。その結果、リード部材と電極箔との接触抵抗が低減される。また、リード部材と電極箔との接続強度も向上し、リード部材と電極箔との接続部(かしめ部)に負荷がかかる場合でも、低い接触抵抗が維持される。
【0051】
第2A工程では、予備貫通孔の形成に伴い、電極箔の予備貫通孔の内壁面において電極箔の金属素地が露出する領域Aが形成される。第2B工程では、突出部の形成に伴い、突出部の上端面において、領域Aに由来する、電極箔の金属素地が露出する領域Bが形成される。第2C工程では、第1折り返し部および第2折り返し部の形成およびプレスに伴い、第1折り返し部の第2折り返し部で覆われる表面(第2主面と反対側の表面)において、領域Bに由来する、電極箔の金属素地が露出する領域Cが形成される。この領域Cは、第1折り返し部の先端付近に形成され、第2折り返し部と強固に密着して形成される。突出部の形成時に領域Aは第2主面側に引き延ばされ、第1折り返し部の形成時に領域Bが押し拡げられるため、領域Cが大きく確保されやすい。領域Cと第2折り返し部とが面状に接しやすく、領域C(第1金属)と第2折り返し部との間において金属結合が生じ得る。その結果、リード部材と電極箔との接触抵抗を低減することができる。
【0052】
領域Aが小さい場合でも領域Cを十分に形成でき、厚みが小さい陰極箔の場合に接触抵抗の低減効果が顕著に得られる。陰極箔の厚みは、例えば、20μm以上、60μm以下である。
【0053】
仮に、第1折り返し部を内包しないように第2折り返し部が形成される場合、プレス時に第1折り返し部は第2折り返し部により固定されにくくなり、第2主面上で第2折り返し部からはみ出す方向にずれ易くなる。よって、第1折り返し部(領域C)と第2折り返し部との密着性が十分に確保されず、密着する領域も小さくなる。領域Cが第2折り返し部で覆われない場合もある。
【0054】
仮に第2A工程で予備貫通孔を設けない場合、第1折り返し部は第2折り返し部により内包されにくく、領域Cが第2折り返し部で覆われない場合がある。
【0055】
仮に1≦D1/D2である場合、第2B工程では、予備貫通孔の周囲が引き出されにくく、突出部(領域B)が形成されにくく、第2折り返し部と強固に密着する第1折り返し部が形成されにくい。よって、リード部材と電極箔との接続部(かしめ部)の強度が低下し、当該接続部に負荷がかかる場合に接触抵抗が増大することがある。また、突出部(領域B)が形成されにくく、第2B工程ではリード部の貫通部が予備貫通孔の内壁面を覆うように形成され、第2C工程ではリード部の貫通部が予備貫通孔の内壁面を覆う状態で重なり部がプレスされる。この場合、領域Aと貫通部との密着性が低く(密着領域が小さく)、かしめ部において電極箔の金属素地とリード部材との接触が不十分となる場合がある。
【0056】
第2主面上に折り返される前の部分P1の第2主面からの高さH1(最大の高さ)は、第2主面上に折り返される前の部分P2の第2主面からの高さH2(最大の高さ)よりも小さいことが好ましい。H1/H2は、0超、1未満であってもよく、0.1以上、0.9以下であってもよく、0.2以上(もしくは0.4以上)、0.8以下であってもよい。この場合、第2C工程で第1折り返し部を内包する第2折り返し部が形成され易い。
【0057】
予備貫通孔の径D1(mm)と、針状部材の径D2(mm)と、リード部材(タブ部)の厚みT(mm)とは、以下の式(1)の関係を満たすことが好ましい。
【0058】
0<(D2-D1)/T≦1/2 (1)
【0059】
式(1)を満たす場合、高さH1を高さH2をよりも小さく調節し易く、H1/H2を上記範囲内に調節し易い。長さL1を長さL2よりも小さく調節し易く、L1/L2を上記範囲内に調節し易い。第2C工程で第1折り返し部を内包する第2折り返し部が形成され易い。
【0060】
以下、本開示の実施形態に係る電解コンデンサの製造方法における第2工程の一例をします。
図5は、第2A工程後の電極箔およびリード部材の要部を模式的に示す断面図である。
図6は、第2B工程後の電極箔およびリード部材の要部を模式的に示す断面図である。
図4は、第2C工程後の電極箔およびリード部材の要部を模式的に示す断面図である。
【0061】
(第2A工程)
パンチなどの所定の治具を用いて、電極箔300に円柱状の予備貫通孔330が設けられる。電極箔300は、予備貫通孔330の内壁面において金属箔301の金属組織が露出する領域Aを有する。電極箔300を、その主面の法線方向から見たとき、予備貫通孔330の形状は、円形である。なお、予備貫通孔の形状は、これに限定されず、多角形、星形多角形であってもよい。予備貫通孔の形状が、(星形)正多角形である場合、予備貫通孔の中心は、(星形)正多角形の外接円の中心である。
【0062】
電極箔300の第1主面S1における予備貫通孔330を含む所定の領域にリード部材400を重ね合わせることで、電極箔300とリード部材400との重なり部600が形成される。
【0063】
(第2B工程)
針状部材500を用いて、重なり部600の所定の位置を穿孔する。具体的には、重なり部600において、リード部材400側からリード部材400の予備貫通孔330と対応する位置に針状部材500を突き刺す。針状部材500によって穿孔された箇所に、電極箔300およびリード部材400をともに貫く貫通孔711が形成される。
【0064】
貫通孔の形成711に伴い、貫通孔711の周囲において、リード部材400の一部が第2主面S2に引き出されるとともに、電極箔300の一部が第2主面S2より突出する。すなわち、貫通孔430の形成に伴い、リード部材400の一部は電極箔300の第2主面S2に引き出され、引き出し部411が形成される。さらに、針状部材500は予備貫通孔330を通過することにより、予備貫通孔330が押し拡げられる。このとき、電極箔300の予備貫通孔330の周縁部は電極箔300の第2主面S2より突出し、突出部311が形成される。
【0065】
針状部材500の先端形状は四角錐形であり、先端形状の断面は四角形である。電極箔300(予備貫通孔330の周囲)およびリード部材400は、針状部材500の先端の断面の角に沿って突き破られる。針状部材500による穿孔に伴い第2主面S2より突出する突出部分311および引き出し部411は、四方に花弁状に押し広げられた形状となる。なお、針状部材の先端形状は、これに限定されず、四角錐形以外の角錐形であってもよい。この場合、貫通孔および突出部(引き出し部)の形状は
図1および
図2の例とは異なり得る。
【0066】
図5および
図6に示すように、針状部材500を予備貫通孔330に通過させるときの針状部材500の径D2に対応する予備貫通孔の径D1は、針状部材500の径D2よりも小さい。なお、針状部材500の径D2は、四角錐形の先端部の底面に相当する断面における四角形の一辺の長さに相当し、
図3中の貫通孔711のX-X方向の長さに相当するとも言える。突出部311の端面は、領域Aに由来する、金属箔301の金属組織が露出する領域Bを有する。
【0067】
図5に示す、予備貫通孔330の径D1(mm)と、針状部材500の径D2(mm)と、リード部材400(タブ部425)の厚みT(mm)とは、上述の式(1)の関係を満たすことが好ましい。式(1)を満たす場合、
図6中のH1およびH2について、H1/H2が1未満(もしくは0.9以下)となるように調節し易い。また、
図4中のL1およびL2について、L1/L2が1未満(もしくは0.9以下)となるように調節し易い。なお、
図5中、H1は突出部311の第2主面からの最大高さを示し、H2は引き出し部411の第2主面からの最大高さを示す。
図5では、突出部および引き出し部の高さは重なり部の同一断面において最大となっているが、重なり部の異なる断面において最大となっていてもよい。
【0068】
(第2C工程)
突出部311および引き出し部411が形成された重なり部600をプレスすることで、かしめ部710が形成される。重なり部600は、例えば、8~12MPa圧力でプレスされる。プレスされる時間は特に限定されないが、例えば、0.3~1秒程度である。重なり部600のプレスにより、突出部311とともに引き出し部411は第2主面上に折り返され、第1折り返し部312および第2折り返し部412が形成される。さらに、重なり部600(第1折り返し部312および第2折り返し部412)がプレスされ、第1折り返し部312および第2折り返し部412が第2主面に加締め付けられる。
【0069】
引き出し部411は、第2主面S2上で第1折り返し部312を内包するように折り返される。すなわち、かしめ部710において、第1折り返し部312を内包する第2折り返し部412が形成される。第1折り返し部312の第2折り返し部412で覆われる表面(第2主面S2と反対側の表面)は、領域Bに由来する、金属箔301の金属組織が露出する領域Cを有する。
【0070】
重なり部600は電極箔300の厚み方向に押圧され、突出部311および引き出し部411とともに、貫通孔711、および貫通孔711周辺の電極箔300およびリード部材400が変形する。突出部311および引き出し部411の変形により、貫通孔711の外周において、第1折り返し部312および第2折り返し部412を有するかしめ片712が形成される。かしめ片712は貫通孔711より四方に花弁状に形成されている。電極箔300は、かしめ片712に強く押さえ込まれ、リード部材2に圧着される。この圧着により、電極箔300とリード部材400とが、電気的に接続される。
【0071】
ここで、
図7は、本開示の一実施形態に係る電解コンデンサを模式的に示す断面図である。
図7では、巻回型のコンデンサ素子を備える電解コンデンサの一例を示す。
図8は、
図7の巻回体の構成を模式的に示す斜視図である。
【0072】
電解コンデンサ200は、巻回体100を備える。巻回体100は、陽極箔10と陰極箔20とを、セパレータ30を介して巻回して構成されている。
【0073】
陽極箔10および陰極箔20には、それぞれリードタブ50Aおよび50Bの一方の端部が接続されており、リードタブ50Aおよび50Bを巻き込みながら巻回体100が構成される。リードタブ50Aおよび50Bの他方の端部には、リード線60Aおよび60Bがそれぞれ接続されている。
【0074】
陽極箔10とリードタブ50Aとの接続、および/または、陰極箔20とリードタブ50Bとの接続は、本開示に係る電解コンデンサの製造方法(第2工程)により行われる。特に、陰極箔20は厚みが小さいことから、当該製造方法を用いることによる陰極箔とリードタブ50Bとの接触抵抗の低減効果が顕著に得られる。
【0075】
巻回体100の最外層に位置する陰極箔20の外側表面に巻止めテープ40が配置され、陰極箔20の端部は巻止めテープ40により固定されている。なお、陽極箔10を大判の箔から裁断して準備する場合、裁断面に誘電体層を設けるために、巻回体100に対して更に化成処理を行ってもよい。
【0076】
巻回体100は電解質を含み、陽極箔10(誘電体層)と陰極箔との間に電解質が介在している。電解質を含む巻回体100は、例えば、導電性高分子を含む処理液を巻回体100に含浸させることで行われる。含浸は、減圧下、例えば10kPa~100kPaの雰囲気で行ってもよい。さらに電解液を巻回体100に含ませてもよい。
【0077】
リード線60A、60Bが有底ケース211の開口側に位置するように、巻回体100が有底ケース211に収納されている。有底ケース211の材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、鉄、真鍮等の金属あるいはこれらの合金を用いることができる。
【0078】
巻回体100が収納された有底ケース211の開口部に封止部材212を配置し、有底ケース211の開口端を封止部材212にかしめてカール加工し、カール部分に座板213を配置することにより、巻回体100が有底ケース211内に封止されている。
【0079】
セパレータ30としては、特に制限されず、例えば、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ビニロン、ポリアミド(例えば、脂肪族ポリアミド、アラミド等の芳香族ポリアミド)の繊維を含む不織布等を用いてもよい。
【0080】
封止部材212は、リード線60A、60Bが貫通するようにが貫通するように形成されている。封止部材212は、絶縁性物質であればよく、弾性体が好ましい。中でも耐熱性の高いシリコーンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、ハイパロンゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム等が好ましい。
【0081】
電解質は、固体電解質および電解液の少なくとも一方を含む。電解液は、非水溶媒と、それに溶解している溶質(例えば有機塩)とを含む。固体電解質とともに非水溶媒を用いてもよい。固体電解質は、ポリチオフェン等の導電性高分子を含む。固体電解質は、導電性高分子とともにポリスチレンスルホン酸等のドーパントを含んでもよい。
【0082】
[実施例]
以下、実施例に基づいて、本開示をより詳細に説明するが、本開示は実施例に限定されるものではない。
【0083】
《実施例1》
図1~
図4に示すかしめ部を形成し、陰極箔とリード部材とを接続した。
電極箔として、厚み28μmのアルミニウム箔(プレーン箔)の両面に窒化チタン層(厚み:1μm)が形成された陰極箔を準備した。陰極箔を、長さ300mmおよび幅10mmの帯状に裁断した。所定のパンチを用いて陰極箔の所定位置に円柱状の予備貫通孔(径D1:0.5mm)を4個設けた。4個の予備貫通孔は、陰極箔の幅方向に沿って一定の間隔で設けた。陰極箔の予備貫通孔を設けた位置にリード部材(厚みT:0.3mm)を重ね合わせ、重なり部を形成した。先端形状が四角錐形の針状部材(径D2:0.6mm)を用いて、重なり部の予備貫通孔と対応する位置に穿孔を行った。穿孔はリード部材側より行った。ついで、プレスを行って、陰極箔とリード部材とを4箇所のかしめ部によって接続した。このようにして、リード部材と電極箔とが接続されたサンプルAを得た。サンプルAでは、第1折り返し部を内包する第2折り返し部が形成された。L1/L2は、表1に示す値であった。
【0084】
[評価1:接触抵抗の測定]
四端子法により、陰極箔とリード部材との接触抵抗を測定した。サンプルAを15個準備し、15個の接触抵抗の平均値を求めた。
【0085】
[評価2:負荷後の接触抵抗の測定]
陰極箔を固定し、リード部材の重なり部に近い箇所(重なり部の端部からの距離が2mmの位置)の側端面より、陰極箔の長さ方向と平行な方向に100gfの荷重をかけた。荷重をかけた時間は3秒間とした。その後、評価1と同じ方法で負荷後の接触抵抗を測定した。サンプルAを10個準備し、10個の負荷後の接触抵抗の平均値を求めた。
【0086】
《比較例1》
陰極箔に予備貫通孔を設けなかった以外、実施例1と同様にしてサンプルB1を得、評価した。サンプルB1では、第1折り返し部は第2折り返し部により内包されていなかった。
【0087】
《比較例2》
予備貫通孔の径D1を0.7mmとした以外、実施例1と同様にしてサンプルB2を得、評価した。サンプルB2では、第1折り返し部がほぼ形成されなかった。
【0088】
評価結果を表1に示す。なお、表1中の接触抵抗は、評価1で求めたサンプルB1の接触抵抗を100とするときの相対値として表す。
【0089】
【0090】
サンプルAでは、接触抵抗が低減され、接続強度が高く、負荷後の接触抵抗も小さく抑えられた。サンプルB1では、接触抵抗が高く、接続強度が低く、負荷後の接触抵抗も増大した。サンプルB2では、接続強度が低く、負荷後の接触抵抗が増大した。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本開示に係る電解コンデンサの製造方法は、リード部材と電極箔との接触抵抗が小さい電解コンデンサの製造に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0092】
10:陽極箔、20:陰極箔、30:セパレータ、40:巻止めテープ、60A,60B:リード線、50A,50B:リードタブ、100:巻回体、200:電解コンデンサ、211:有底ケース、212:封止部材、213:座板、300:電極箔、301:金属箔、302a:第1被覆層、302b:第2被覆層、311:突出部、312:第1折り返し部、330:予備貫通孔、400リード部材、411:引き出し部、412:第2折り返し部、425:タブ部、426:リード線接続部、427:リード線、430:貫通部、500:針状部材、600:重なり部、700:かしめ部、710:第1かしめ部、720:第2かしめ部、730:第3かしめ部、740:第4かしめ部、701:貫通孔、711:第1貫通孔、721:第2貫通孔、731:第3貫通孔、741:第4貫通孔、702かしめ片、712:第1かしめ片、722:第2かしめ片、732:第3かしめ片、742:第4かしめ片