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特開2023-67189油冷式スクリュ圧縮機の潤滑油回収機構
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023067189
(43)【公開日】2023-05-16
(54)【発明の名称】油冷式スクリュ圧縮機の潤滑油回収機構
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/02 20060101AFI20230509BHJP
【FI】
F04C29/02 361Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021178215
(22)【出願日】2021-10-29
(71)【出願人】
【識別番号】000241795
【氏名又は名称】北越工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 夏生
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA03
3H129AA16
3H129AA21
3H129AB02
3H129BB03
3H129CC33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】油冷式スクリュ圧縮機の圧縮機本体の軸封装置より漏出する潤滑油を,強制アンロードの実行頻度を減らし,かつ,短時間の強制アンロードで回収する。
【解決手段】油冷式スクリュ圧縮機1の圧縮機本体50に,軸封装置54を通過した潤滑油を捕集する潤滑油捕集空間55を設け,この潤滑油捕集空間55に一端20aを連通した排出流路20の他端20bを大気開放された貯留容器30に連通する。そして,この貯留容器30内の底部付近で一端40aを開口する回収流路40の他端を,吸気制御弁60の二次側において前記圧縮機本体50の吸入流路62に連通し,油冷式スクリュ圧縮機1が吸気制御弁60を閉じたアンロード運転状態にあるとき,吸気制御弁60の二次側における吸入流路62内に生じる負圧で貯留容器30内に溜まった潤滑油を回収する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に設けたロータ室内にオス,メス一対のスクリュロータが噛み合い回転可能に収容されていると共に,圧縮作用空間内に導入された潤滑油と共に被圧縮気体を圧縮して気液混合流体として吐出する圧縮機本体を備え,該圧縮機本体が,前記ケーシングを貫通して突出する駆動軸と,該駆動軸の外周に生じた隙間を封止する軸封装置と,前記軸封装置に対し前記ケーシングの外側寄りの位置で前記駆動軸の外周に設けられて前記軸封装置を通過した潤滑油を捕集する潤滑油捕集空間を備えた油冷式スクリュ圧縮機において,
前記潤滑油捕集空間に一端を連通した排出流路と,
前記排出流路の他端に連通されて,前記潤滑油捕集空間で捕集された潤滑油を,前記排出流路を介して導入すると共に貯留する,大気開放された貯留容器と,
前記貯留容器内に貯留された潤滑油を前記圧縮機本体の圧縮作用空間に回収する回収流路を設け,
該回収流路の一端を前記貯留容器内の底部付近で開口すると共に,前記回収流路の他端を,吸気制御弁の二次側において前記圧縮機本体の吸入流路に連通したことを特徴とする油冷式スクリュ圧縮機の潤滑油回収機構。
【請求項2】
前記貯留容器が,容器本体と,該容器本体の開口部に着脱可能に取り付けられて前記開口部を塞ぐ蓋体を備え,
前記排出流路の前記他端と,前記回収流路の前記一端が前記貯留容器内で開口するように前記排出流路と前記回収流路を前記蓋体に取り付けたことを特徴とする請求項1記載の油冷式スクリュ圧縮機の潤滑油回収機構。
【請求項3】
前記回収流路の前記一端をオリフィスにより形成したことを特徴とする請求項2記載の油冷式スクリュ圧縮機の潤滑油回収機構。
【請求項4】
前記オリフィスの入口を覆うストレーナを設けたことを特徴とする請求項3記載の油冷式スクリュ圧縮機の潤滑油回収機構。
【請求項5】
前記貯留容器の前記蓋体がキャップ型であり,前記容器本体の開口部と,該開口部から所定の高さ範囲における前記容器本体の側壁を覆うように構成されており,
前記容器本体に取り付けた前記蓋体の裾の位置よりも高い位置における前記容器本体の前記側壁に,該側壁を貫通する呼吸孔を設けたことを特徴とする請求項2~4いずれか1項記載の油冷式スクリュ圧縮機の潤滑油回収機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,油冷式スクリュ圧縮機の潤滑油回収機構に関し,より詳細には,油冷式スクリュ圧縮機の軸封部より漏出した潤滑油を回収して,油冷式スクリュ圧縮機の圧縮機本体とレシーバタンク間に形成されている潤滑油の循環系内に戻すための潤滑油回収機構に関する。
【背景技術】
【0002】
油冷式スクリュ圧縮機100の構成例を,図6を参照して説明する。
【0003】
この油冷式スクリュ圧縮機100は,潤滑,冷却,及び密封のために圧縮作用空間内に給油された潤滑油と共に被圧縮気体を圧縮して潤滑油との気液混合流体として吐出する圧縮機本体150と,この圧縮機本体150を駆動するエンジンやモータ等の駆動源170(図示の例ではモータ),及び,前記圧縮機本体150より気液混合流体として吐出された圧縮気体を導入して気液分離し,潤滑油を分離した後の圧縮気体を消費側に接続された空気作業機等の機器に供給するレシーバタンク180を備えている。
【0004】
このレシーバタンク180で圧縮気体より分離された潤滑油は,レシーバタンク180内の圧力を利用して,オイルクーラ191やオイルフィルタ192を備えた給油流路190を介して圧縮機本体150の圧縮作用空間に給油することができるように構成されており,これにより圧縮機本体150とレシーバタンク180間に潤滑油の循環系が形成されている。
【0005】
この油冷式スクリュ圧縮機100の圧縮機本体150では,ケーシング151内に形成されたロータ室156内に収容されたオス,メス一対のスクリュロータ157,158が噛み合い回転することによって被圧縮気体の圧縮が行われることから,前述したモータ等の駆動源170で発生した回転駆動力をスクリュロータ157,158に伝達して前述した噛み合い回転を行わせる必要がある。
【0006】
そのため,前述の圧縮機本体150では,オス,メス一対のスクリュロータ157,158のいずれかのロータ軸(図示の例ではオスロータ157の吸入側ロータ軸)を,ケーシング151を貫通させて突出させて駆動軸152とし,この駆動軸152に,モータ等の駆動源170の出力軸を,直接,又はカップリングや動力伝達機構,増速装置等を介して間接的に連結することで,駆動源170で発生した回転駆動力によってオス,メス一対のスクリュロータ157,158を噛み合い回転させることができるようにしている。
【0007】
このように油冷式スクリュ圧縮機100の圧縮機本体150では,ケーシング151を貫通して駆動軸152が突設されていることから,駆動軸152の外周を介して潤滑油や圧縮気体が機外へと漏出することを防止するためのメカニカルシールやオイルシール等から成る軸封装置154が設けられる。
【0008】
このような軸封装置154の取り付けは,一例として図7に示すようにケーシング151に駆動軸152を包囲するようにシール室153を設け,このシール室153内に軸封装置154を収容することによって行い,このシール室153に対しロータ室側に隣接して駆動軸152を支承する軸受159を設けることで,シール室153内にレシーバタンク180からの潤滑油を給油すると,軸封装置154の摺動部や軸受159を潤滑することができると共に,圧縮気体や潤滑油のケーシング151外への漏出が防止されている。
【0009】
しかし,前述したメカニカルシールやオイルシール等の軸封装置154では,潤滑油の漏出を完全には防止し得ず僅かな漏れが生じ得る。
【0010】
また,経年劣化等により軸封装置154のシール性能が低下する等してシール不良が生じると,更なる潤滑油の漏れも生じ得る。
【0011】
そのため,油冷式スクリュ圧縮機100の圧縮機本体150には,軸封装置154を通過した潤滑油を回収するために,図7に示すように軸封装置154に対し機外側に位置して,軸封装置154を通過した潤滑油を捕集するための,潤滑油捕集空間155が設けられている。
【0012】
そして,この潤滑油捕集空間155で捕集された潤滑油を回収して前述した潤滑油の循環系内に戻すための,各種の潤滑油回収機構が提案されている。
【0013】
このような潤滑油回収機構110の一例として,図6に示す油冷式スクリュ圧縮機100では,前述の潤滑油捕集空間155に一端120aを連通する回収流路120を設け(図6及び図7参照),この回収流路120の他端120bを吸気制御弁の二次側において圧縮機本体150の吸入流路162にオリフィスや逆止弁を介して連通する構造を採用する(特許文献1,請求項5,[0055],[0056];但し特許文献1では回収流路をケーシングの肉厚内に形成している点で図6の構成と相違する。)。
【0014】
このように構成された図6に記載の潤滑油回収機構110では,油冷式スクリュ圧縮機100が吸気制御弁160を閉じたアンロード運転に移行すると,吸気制御弁160の二次側における吸入流路162内が負圧となり,潤滑油捕集空間155や回収流路120内に溜まった潤滑油がこの負圧によって吸入流路162内に吸引されて圧縮機本体150内に回収できるよう構成されている。
【0015】
また,潤滑油回収機構の別の構成例として,図8に示す潤滑油回収機構210は,潤滑油捕集空間155に一端220aが連通された排出流路220の他端220bを,三方切替弁を介して容器230に連通し,この容器230の底部を,戻し流路240を介して圧縮機本体150の吸入流路162に連通すると共に,三方切替弁の残りのポートをレシーバタンク180に連通した構成を採用する(特許文献2の図1~4参照)。
【0016】
この図8に示した潤滑油回収機構210では,三方切替弁の操作によって排出流路220と容器230間の連通を遮断した状態で,レシーバタンク180内の圧縮気体の導入によって容器230内を加圧すると,容器230内に溜まった潤滑油が圧縮気体と共に戻し流路240及び吸入流路162を介して圧縮機本体150内に搬送されることで潤滑油を強制的に回収できるようになっている。
【0017】
更に別の潤滑油回収機構として,図9に示す潤滑油回収機構310は,エゼクタやベンチュリ等から成る混合器350を設け,この混合器350の駆動流導入口351を,開閉弁を介してレシーバタンク180に連通すると共に,混合器350の排出口352を圧縮機本体150の吸入流路162に連通し,更に混合器350の吸込口353を,潤滑油捕集空間155に連通した容器330の底部に設けた排出口331に連通した構造を採用する(特許文献3の請求項1,図1参照)。
【0018】
この図9に示した潤滑油回収機構310では,混合器350とレシーバタンク180間に設けた開閉弁を開弁して混合器350に対しレシーバタンク180内の圧縮気体を駆動流として導入すると,容器330内に回収された潤滑油が混合器350内に吸引されて駆動流であるレシーバタンク180からの圧縮気体と混合されて混合器350の排出口352より排出されることで,この排出口352に連通された吸入流路162を介して潤滑油を圧縮機本体150内に強制的に回収できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】WO2019/111661号公報
【特許文献2】特開2002-021757号公報
【特許文献3】特開2007-146718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
以上で説明した従来の潤滑油回収機構110,210,310のうち,図6を参照して説明した潤滑油回収機構110(特許文献1)は,比較的簡単な構成でありながら軸封装置154を通過して潤滑油捕集空間155や回収流路120に溜まった潤滑油を圧縮機本体150の圧縮作用空間内に回収することができる。
【0021】
しかし,図6に示した潤滑油回収機構110では,吸気制御弁160を閉弁したアンロード運転の際に生じる吸入流路162内の負圧を利用して潤滑油を回収する構造であることから(このように,アンロード運転時に生じる吸入流路内の負圧を利用して潤滑油を回収する形式の潤滑油回収機構を,以下「負圧吸引型」と呼称する。),油冷式スクリュ圧縮機100をアンロード運転に移行しなければ,潤滑油捕集空間155や回収流路120に溜まった潤滑油の回収は行われない。
【0022】
そのため,負圧吸引型の潤滑油回収機構110を備えた油冷式スクリュ圧縮機100では,圧縮気体の継続的な消費によってアンロード運転への移行がされることなく長時間ロード運転が継続されると,潤滑油捕集空間155及び回収流路120内に保持しきれなくなった潤滑油が溢れ出して油冷式スクリュ圧縮機100の防音箱内を汚染してしまう。
【0023】
そこで,このような潤滑油の漏出を防止するために,負圧吸引型の潤滑油回収機構110を備えた油冷式スクリュ圧縮機100では,消費側における圧縮気体の消費状態に拘わらず,タイマ等により設定した所定の時間隔毎に,溜まった潤滑油の回収に必要な所定時間,強制的にアンロード運転に移行する,所謂「強制アンロード」と呼ばれる処理が行われる。
【0024】
このような強制アンロードは,潤滑油の漏出を防止する上では有効であるものの,強制アンロードの実行中は消費側に対する圧縮気体の供給が一時的に停止するため,これにより消費側において行っていた作業についても一時的に中断されるおそれがあり,強制アンロードは,可及的に少ない頻度で,かつ,可及的に短い時間内に行われることが望ましい。
【0025】
しかし,潤滑油捕集空間155や回収流路120内に溜めておくことができる潤滑油量は比較的少なく,比較的短い時間のロード運転によっても軸封装置154を通過した潤滑油の漏出は生じ得るため,図6を参照して説明した従来の負圧吸引型の潤滑油回収機構110を備えた油冷式スクリュ圧縮機100では,強制アンロードを比較的高い頻度で行う必要があった。
【0026】
しかも,軸封装置154の機外側に設けた潤滑油捕集空間155は,駆動軸152の外周に生じた隙間δを介して大気開放されていることから(図7参照),アンロード運転時に生じた吸入流路162内の負圧によって回収流路120及び潤滑油捕集空間155内の潤滑油を吸引すると,前述の隙間δを介して潤滑油捕集空間155内に外気が吸入される。
【0027】
その結果,潤滑油捕集空間155,回収流路120,及び吸入流路162を介して圧縮機本体150に吸引・回収される流体の多くの部分を空気が占めることとなり,潤滑油の回収効率が悪くなることから,少量の潤滑油の回収にも比較的長時間が必要となる。
【0028】
このことから,図6を参照して説明した潤滑油回収機構110を備えた油冷式スクリュ圧縮機100では,一回あたりの強制アンロード時間を長く取るか,又は,強制アンロードを更に高頻度で実行しなければ短時間の強制アンロードによっては潤滑油の漏出を防止できない。
【0029】
これらの点から,図6を参照して説明した従来の負圧吸引型の潤滑油回収機構110を備えた油冷式スクリュ圧縮機100では,一例として,1回あたりの強制アンロードを1秒から数秒程度の比較的短い時間内で終了させようとすると,強制アンロードを約1時間毎という高頻度で行うことが必要となっており,より低い頻度で強制アンロードを実行した場合であっても,比較的短い時間内で潤滑油を回収することができる潤滑油回収機構が要望される。
【0030】
一方,図8(特許文献2)及び図9(特許文献3)を参照して説明した潤滑油回収機構210,310のように,レシーバタンク180内の圧縮気体の圧力を利用して容器230,330内に回収された潤滑油を搬送して強制的に回収する構成(以下,レシーバタンク内の圧力を利用して潤滑油を回収する潤滑油回収機構を「圧縮気体搬送型」と呼称する。)では,アンロード運転時のみならず,ロード運転時においても潤滑油を圧縮機本体150の圧縮作用空間内に回収することができることから,強制アンロードを行うことなく,従って,消費側で行われている作業等を中断等させることなく潤滑油の回収が可能である。
【0031】
しかし,図8及び図9に示した圧縮気体搬送型の潤滑油回収機構210,310では,レシーバタンク180と連通した流路中に三方切替弁や開閉弁等の電磁弁を設け,レシーバタンク180からの圧縮気体の供給の開始及び停止を電気的に制御することができるように構成すると共に,例えばタイマによる設定時間,又は,容器330に設けた液面検出手段により検出された潤滑油の液面位置に基づいて電磁弁の開閉を電気的に制御する,電子制御手段(コントローラ)が必要となる。
【0032】
また,図8に示した潤滑油回収機構210では,レシーバタンク180内の圧縮気体を容器230内に導入して潤滑油を加圧して圧送する構成を採用するため,容器230をこのような加圧に耐え得る圧力容器として構成する必要があり,更に,図9に示した潤滑油回収機構310では,潤滑油を圧縮気体と混合させるための混合器を必要とする。
【0033】
その結果,圧縮気体搬送型の潤滑油回収機構210,310を採用する場合,装置構成が複雑となると共に,部品点数が多くなることで,製造コストが嵩み,このような潤滑油回収機構210,310を装備した油冷式スクリュ圧縮機100の市場における価格競争力を低下させる。
【0034】
そこで,本発明は,上記従来技術における欠点に鑑みてなされたものであり,油冷式スクリュ圧縮機のアンロード運転の際に潤滑油を回収する,前述の「負圧吸引型」の構成を採用することで,装置構成を単純化して安価に提供できるようにする一方,強制アンロードの実行頻度を減らした場合,好ましくは大幅に減らした場合であっても,一回あたりの強制アンロード時間を比較的短い時間(一例として1秒から数秒程度)とすることができる潤滑油回収機構を備えた油冷式スクリュ圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と,発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0036】
上記目的を達成するために,本発明の油冷式スクリュ圧縮機の潤滑油回収機構10は,
ケーシング51内に設けたロータ室56内にオス,メス一対のスクリュロータ57,58(図1において,メスロータ58はオスロータ57の紙面裏側に隠れている。)が噛み合い回転可能に収容されていると共に,圧縮作用空間内に導入された潤滑油と共に被圧縮気体を圧縮して気液混合流体として吐出する圧縮機本体50を備え,該圧縮機本体50が,前記ケーシング51を貫通して突出する駆動軸52と,該駆動軸52の外周に生じた隙間を封止する軸封装置54と,前記軸封装置54に対し前記ケーシング51の外側寄りの位置で前記駆動軸52の外周に設けられて前記軸封装置54を通過した潤滑油を捕集する潤滑油捕集空間55を備えた油冷式スクリュ圧縮機1において,
前記潤滑油捕集空間55に一端20aを連通した排出流路20と,
前記排出流路20の他端20bに連通されて,前記潤滑油捕集空間55で捕集された潤滑油を,前記排出流路20を介して導入すると共に貯留する,大気開放された貯留容器30と,
前記貯留容器30内に貯留された潤滑油を前記圧縮機本体50の圧縮作用空間に回収する回収流路40を設け,
該回収流路40の一端40aを前記貯留容器30内の底部付近で開口すると共に,前記回収流路40の他端40bを,吸気制御弁60の二次側において前記圧縮機本体50の吸入流路62に連通したことを特徴とする(請求項1,図1及び図2参照)。
【0037】
前記貯留容器30を,容器本体31と,該容器本体31の開口部に着脱可能に取り付けられて前記開口部を塞ぐ蓋体32を備えた構成とし,
前記排出流路20の前記他端20bと,前記回収流路40の前記一端40aが前記貯留容器30内で開口するように前記排出流路20と前記回収流路40を前記蓋体32に取り付けることが好ましい(請求項2,図4参照)。
【0038】
この場合,前記回収流路40の前記一端40aをオリフィス41cにより形成することが好ましい(請求項3,図4参照)。
【0039】
また,前記オリフィス41cには,該オリフィス41cの入口を覆うストレーナ46を設けることが望ましい(請求項4,図4参照)。
【0040】
前記貯留容器30の前記蓋体32は,好ましくはキャップ型,図示の実施形態ではスクリュキャップ型とすることができ,該蓋体32によって前記容器本体31の開口部と,該開口部から所定の高さ範囲における前記容器本体31の側壁を覆うように構成されており,
前記容器本体31に取り付けた前記蓋体32の裾33の位置よりも高い位置における前記容器本体31の前記側壁に,該側壁を貫通する呼吸孔34を設けるものとしても良い(請求項5,図4参照)。
【発明の効果】
【0041】
以上で説明した本発明の構成により,本発明の潤滑油回収機構10を備えた油冷式スクリュ圧縮機では,以下の顕著な効果を得ることができた。
【0042】
本発明の潤滑油回収機構10は,吸気制御弁60を閉弁して行う油冷式スクリュ圧縮機1のアンロード運転時に生じる吸入流路62の負圧を利用して潤滑油の回収を行う,前述の「負圧吸引型」の構成を採用したことで,図8及び図9を参照して説明した「圧縮気体搬送型」の潤滑油回収機構210,310に比較して装置構成を簡易なものとすることができるため安価に提供することができた。
【0043】
しかも,図6を参照して説明した従来の「負圧吸引型」の潤滑油回収機構110との比較では,潤滑油回収機構10内に貯留容器30を設けたことで,従来の負圧吸引型の潤滑油回収機構110に比較して潤滑油の貯留量を大幅に増大させることができ,これにより強制アンロードの実行頻度を大幅に減少させることができた。
【0044】
しかも,回収流路40の一端40aを貯留容器30内の底部付近で開口させることで,貯留容器30内に潤滑油が溜まった状態では回収流路40は空気を巻き込むことなく潤滑油のみを吸引して圧縮機本体50の圧縮作用空間に回収することが可能である。
【0045】
その結果,図6を参照して説明した従来の負圧吸引型の潤滑油回収機構110のように空気と共に潤滑油を回収する場合に比較して,潤滑油の回収効率を大幅に向上させることができた。
【0046】
このように,本発明の潤滑油回収機構10では,潤滑油の貯留量の増大と,潤滑油の回収効率の向上により,図6を参照して説明した従来の負圧吸引型の潤滑油回収機構110では,強制アンロードを1秒から数秒程度の比較的短い時間で行うようにするためには,約1時間毎の時間隔で強制アンロードを行う必要があったのに対し,本発明の潤滑油回収機構では,一例として約10時間毎の時間隔で強制アンロードを行う場合であっても,1秒から数秒程度の比較的短い時間の強制アンロードで潤滑油を回収可能であった。
【0047】
貯留容器30を,容器本体31と,該容器本体31の開口部に着脱可能に取り付けられた蓋体32から成る構成とし,前記排出流路20の前記他端20bと,前記回収流路40の前記一端40aが貯留容器30内で開口するように排出流路20と回収流路40を蓋体32に取り付けた構成では,容器本体31に蓋部32を取り付けるだけで,排出流路20の他端20bと回収流路40の一端40aを貯留容器30内の適切な位置で開口させることができるだけでなく,容器本体31より蓋部32を取り外すだけで,排出流路20の他端20bと回収流路40の一端40aを貯留容器30より取り出すことができ,これらの部分の詰まり等の確認や,詰まった異物の除去等を容易に行うことができた。
【0048】
特に,回収流路40の一端40aをオリフィス41cによって形成した構成,更に,このオリフィス41cの入口を覆うストレーナ46を設けた構成では,容器本体31より蓋体32を取り外すだけでオリフィス41cやストレーナ46を貯留容器30外に取り出すことができ,ストレーナ46やオリフィス41cのメンテナンスや交換作業を極めて容易に行うことができた。
【0049】
更に,貯留容器30の蓋体32を,容器本体31の開口部から所定の高さ範囲における外壁までを覆うキャップ型として形成し,容器本体31に取り付けた状態の蓋体32の裾33の位置よりも高い位置で容器本体31の側壁に,該側壁を貫通する呼吸孔34を設けた構成では,貯留容器30内を大気開放した構成でありながら,蓋体32の取り付け時には呼吸孔34が蓋体32の裏側に隠れることで,呼吸孔34を介して貯留容器30内に埃等の異物が入り込み難い構造とすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明の潤滑油回収機構を備えた油冷式スクリュ圧縮機の説明図。
図2図1のII-II線断面図。
図3】本発明の潤滑油回収機構を備えた油冷式スクリュ圧縮機の要部斜視図。
図4】貯留容器の要部断面図。
図5】貯留容器の変形例(液面検出手段を設けた例)の説明図。
図6】従来の潤滑油回収機構(負圧吸引型)を備えた油冷式スクリュ圧縮機の説明図。
図7図6中の矢視VII部分の拡大図。
図8】従来の別の潤滑油回収機構(圧縮気体搬送型)を備えた油冷式スクリュ圧縮機の説明図。
図9】従来の更に別の潤滑油回収機構(圧縮気体搬送型)を備えた油冷式スクリュ圧縮機の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下に,添付図面を参照しながら本発明の構成につき説明する。
【0052】
〔油冷式スクリュ圧縮機の全体構成〕
図1に,本発明の潤滑油回収機構10を備えた油冷式スクリュ圧縮機1の構成例を示す。
【0053】
なお,潤滑油回収機構10,110の構造を除き,本発明の潤滑油回収機構10が適用される油冷式スクリュ圧縮機1の基本構成は,図6を参照して説明した従来の潤滑油回収機構110を備えた油冷式スクリュ圧縮機100の構成と同様であり,図6を参照して説明した油冷式スクリュ圧縮機100と共通の構成であるレシーバタンク180や,このレシーバタンク180内に回収された潤滑油を圧縮機本体50(150)に供給する給油流路190,及び給油流路190に設けられているオイルクーラ191やオイルフィルタ192は,図1において記載を省略している。
【0054】
また,本発明の潤滑油回収機構10を備えた油冷式スクリュ圧縮機1に設けられている圧縮機本体50が,吸気制御弁60により開閉される吸入流路62を介して導入された空気等の被圧縮気体を,圧縮作用空間に給油された潤滑油と共に圧縮して,潤滑油との気液混合流体として吐出するものである点も図6を参照して説明した従来の油冷式スクリュ圧縮機100と同様である。
【0055】
更に,この圧縮機本体50には,このケーシング51を貫通して突出する駆動軸52が設けられており,この駆動軸52の外周にシール室53を設けてこのシール室53内にメカニカルシールやオイルシール等の軸封装置54を収容して軸封を行っていると共に,この軸封装置54を通過した潤滑油を捕集するための潤滑油捕集空間55が設けられている点も,図6を参照して説明した従来の潤滑油回収機構110を備えた油冷式スクリュ圧縮機100の構成と同様である。
【0056】
〔潤滑油回収機構の全体構成〕
図6を参照し説明した従来の潤滑油回収機構110が,潤滑油捕集空間155と吸気制御弁160の二次側における吸入流路162間を回収流路120によって直接連通した構造であったのに対し,本発明の潤滑油回収機構10では,図1に示すように,潤滑油捕集空間55に一端20aを連通し,他端20bを貯留容器30に連通した排出流路20と,一端40aをこの貯留容器30内の底部付近で開口し,他端40bを吸気制御弁60の二次側における吸入流路62に連通する回収流路40を設けた構成となっており,前述の貯留容器30を介して潤滑油捕集空間55と吸気制御弁60の二次側の吸入流路62を連通した点で,図6を参照して説明した従来の潤滑油回収機構110とは大きく相違している。
【0057】
〔排出流路〕
本発明の潤滑油回収機構10を構成する排出流路20は,前述した潤滑油捕集空間55と後述の貯留容器30間を連通する流路であり,図示の実施形態において,この排出流路20は,圧縮機本体のケーシング51の肉厚内に潤滑油捕集空間55と連通するきり穴として形成された一端側流路21,この一端側流路21に連通されたナイロンチューブ等の外部配管から成る中間流路22,及び,この中間流路22と連通されるナイロンスリーブ等から成る他端側流路23によって構成されており,この他端側流路23を後述する貯留容器30に取り付けることで,排出流路20の他端20bを貯留容器30内で開口させている。
【0058】
この排出流路20のうち,ケーシング51の外部配管として設けられている中間流路22は,潤滑油捕集空間55で捕集された潤滑油を後述する貯留容器30に導入し得るものであれば既知の各種の配管材料で形成することができ,金属製のパイプの他,ナイロンチューブ等のフレキシブルチューブによって形成することができる。
【0059】
なお,後述する貯留容器30を,容器本体31と,該容器本体31に着脱可能に取り付けた蓋体32により構成し,排出流路20の他端20bが貯留容器30内で開口するよう前記蓋体32に排出流路20を取り付けた構成では,蓋体32の着脱を容易とすべく,図3に示すようにナイロンチューブ等のフレキシブルチューブによって排出流路20の中間流路22部分を形成することが好ましい。
【0060】
〔貯留容器〕
貯留容器30は,前記潤滑油捕集空間55よりも低い位置に配置されて排出流路20を介して流下した前記潤滑油捕集空間55からの潤滑油を貯留する,大気開放された容器であり,図4に示す実施形態では,この貯留容器30を,容器本体31と,この容器本体31の開口部に着脱可能に取り付けた蓋体32によって構成している。
【0061】
貯留容器30の容量は,油冷式スクリュ圧縮機1の使用状況等に応じて適宜設定可能であり,例えば,本発明の潤滑油回収機構10を備えた油冷式スクリュ圧縮機1が工場設備等として使用されるものである場合,該工場の操業時間中,アンロード運転を行うことなくフルロード運転を継続した場合に排出される量の潤滑油を貯留可能な容量とすることで,操業時間中に強制アンロードへの移行を不要とするものとしても良い。
【0062】
この貯留容器30内は大気開放されており,図8を参照して説明した特許文献2の回収容器のように加圧状態で使用されるものではないことから,高い剛性を必要とせず,合成樹脂製のフレキシブル容器等,比較的安価に入手できるものを使用することができる。
【0063】
好ましくは,この貯留容器30の少なくとも容器本体31を透明,又は半透明の材料によって形成し,溜まった潤滑油量を外部より肉眼にて観察できるようにすることが好ましい。
【0064】
図示の実施形態にあっては,前述の容器本体31のネック部分の外周に雄ねじを形成すると共に,蓋体32を,内周に雌ねじが形成されたスクリュキャップ型のものとして,容器本体31に対する螺着によって蓋体32を容易に着脱することができるようにした。
【0065】
蓋体32を容器本体31に取り付けた際に,蓋体32の裾33の位置よりも高い位置となる容器本体31のネック部分の側壁,図示の実施形態では雄ねじの形成範囲下端に対し僅かに下方に位置する部分の側壁には呼吸孔34を形成して,貯留容器30を大気開放している。
【0066】
このように呼吸孔34を蓋体32によって覆われる部分の容器本体31に形成することで,後述する回収流路40を介して貯留容器30内が吸引されることで貯留容器30内が負圧となって呼吸孔34より外気の吸引が行われた場合であっても,この呼吸孔34を介して埃等の異物が吸い込まれ難くなっている。
【0067】
貯留容器30に対する前述の排出流路20の他端20b部分の取り付けは,排出流路20を介して導入された潤滑油を貯留容器30内に回収し得るものであれば特に限定されないが,本実施形態では排出流路20の他端20bと,後述する回収流路40の一端40aが貯留容器30内で開口するように,貯留容器30に設けた前述の蓋体32に排出流路20の他端20b側の所定の範囲と,後述する回収流路40の一端40a側の所定の範囲を取り付けている。
【0068】
図4に示す実施形態では,排出流路20のうち,ナイロンスリーブによって形成された前述の他端側流路23を蓋体32に設けた貫通孔35に挿入し,このナイロンスリーブ(他端側流路)23の外周に設けられた雄ねじに螺着された一対のスリーブナット24a,24bとナイロンワッシャ25により貫通孔35の周縁部で蓋体32を上下より挟持することで排出流路20の他端側流路23を貯留容器30の蓋体32に取り付けていると共に,容器本体31に蓋体32を取り付けた際に,排出流路20の他端20bが貯留容器30内の所定の高さ位置で開口するように構成した。
【0069】
このナイロンスリーブ(他端側流路)23の上端に,ケーシング51に設けたきり穴(一端側流路)21に連通されたナイロンチューブ(中間流路)22を連結することで,一端20aを潤滑油捕集空間55に連通すると共に,他端20bを貯留容器30内で開口した排出流路20が形成されている。
【0070】
なお,この貯留容器30には,図5に示すようにフロートスイッチ等の液面検出手段37を設けて貯留容器30内に貯留された潤滑油の液面位置を検出することができるようにするものとしても良く,一例として,貯留容器30内に貯留された潤滑油の液面が所定の上限レベルLMAXにあることを検出した際に,強制アンロードを開始するようにし,及び/又は滑油の液面が所定の下限レベルLMINにあることを検出した際に,強制アンロードを停止するようにしても良い。
【0071】
〔回収流路〕
貯留容器30と吸気制御弁60の二次側における吸入流路62間を連通する回収流路40は,本実施形態では図1に示すように貯留容器30に取り付けられる一端側流路41と,この一端側流路41と吸入流路62間を連通する,ナイロンチューブ等から成る主流路42によって構成されている。
【0072】
この回収流路40の一端40aは図4に示すように貯留容器30の底部付近で開口しており,この回収流路40の他端40bを吸気制御弁60の二次側における吸入流路62に連通することで,吸気制御弁60を閉じたアンロード運転時,吸気制御弁60の二次側における吸入流路62が負圧となることで,回収流路40を介して貯留容器30内に貯留された潤滑油を圧縮機本体50の圧縮作用空間に回収することができるように構成されている。
【0073】
この回収流路40のうちの前述の主流路42の部分は,吸入流路62の負圧によって貯留容器30内に貯留された潤滑油を吸引して回収することができるものであれば,その材質等は特に限定されず,金属製パイプにより形成するものとしても良いが,貯留容器30の蓋体32に回収流路40のうちの一端側流路41の部分を取り付ける構成とした本実施形態の構成では,前述の排出流路20同様,図3に示したようにナイロンチューブ等のフレキシブルチューブにより回収流路40のうちの少なくとも主流路42の部分を形成して,容器本体31から蓋体32を着脱する際に変形させることができるようにすることが好ましい。
【0074】
この回収流路40の一端側流路41は,図4に示した実施形態では,ナイロンスリーブ41aと,このナイロンスリーブ41aの下端に連結されたナイロンチューブ41b,及び,このナイロンチューブ41bの下端に取り付けられたオリフィス41cによって構成されており,従って,図示の実施形態では,このオリフィス41cの下端が回収流路の一端40aとなる。
【0075】
このオリフィス41cの入口,従って,回収流路40の一端40aに設けた開口には,ストレーナ46を取り付けて,異物の吸い込みによるオリフィス41cの目詰まりを防止することが好ましい。
【0076】
図示の構成において,前述のナイロンスリーブ41aは,貯留容器30の蓋体32に形成された貫通孔36に挿入された状態で,該ナイロンスリーブ41aの外周に設けた雄ネジに螺着された一対のスリーブナット45a,45bによって貫通孔36の周縁部分で蓋体32を上下より挟持することで蓋体32に取り付けられている。
【0077】
図示の実施形態では,下側のスリーブナット45bとしてフランジナットを採用することによりナイロンワッシャの取り付けを省略しているが,排出流路20の他端20b側におけるナイロンスリーブ(他端側流路)23の取り付け構造と同様,下側のスリーブナット45bを通常のナットと成すと共に,蓋体32と下側のスリーブナット45b間にナイロンワッシャ等を挟持する構成としても良く,また,排出流路20の他端20b側のナイロンスリーブ(他端側流路)23の取り付け構造を,回収流路40の一端側流路41を構成するナイロンスリーブ41aの取り付け構造に倣い変更するものとしても良い。
【0078】
このようにして貯留容器30の蓋体32に取り付けたナイロンスリーブ41aの下端部には,連結ナット47aを介して前述のナイロンチューブ41bが取り付けられていると共に,このナイロンチューブ41bの下端に,連結ナット47bを介してオリフィス41cが取り付けられ,ナイロンスリーブ41a,ナイロンチューブ41b,及びオリフィス41cにより回収流路40のうち,貯留容器30の蓋体32に取り付けられる一端側流路41を形成している。
【0079】
そして,この一端側流路41の下端を成すオリフィス41cには,更に,該オリフィス41cの入口を覆うようにストレーナ46が着脱可能に取り付けている。
【0080】
このように回収流路40の一端40a部分をオリフィス41cによって形成すると共に,このオリフィス41cの入口にストレーナ46を取り付けることで,ストレーナ46やオリフィス41cに目詰まりが生じた場合には,貯留容器30の容器本体31から蓋体32を取り外すだけでストレーナ46やオリフィス41cを貯留容器30より取り出して目詰まりの解消や,ストレーナ46やオリフィス41cの交換等の作業を容易に行うことができる。
【0081】
このようにして貯留容器30の蓋体32に取り付けられたナイロンスリーブ41aの上端は逆止弁49を備えたナイロンチューブ等から成る主流路42を介して吸気制御弁60の二次側における吸入流路62に連通することで,一端40aを貯留容器30の底部付近で開口し,他端40bを吸気制御弁60の二次側における吸入流路62に連通した前述の回収流路40が形成されている。
【0082】
なお,図4に示した実施形態では,前述のストレーナ46とオリフィス41cを回収流路40の一端40a側に設ける構成を示したが,ストレーナ46とオリフィス41cは,図1に示したように回収流路40の一端40a以外の位置(例えば回収流路40の中間位置)に設けるものとしても良い。
【0083】
〔作用等〕
以上で説明した本発明の潤滑油回収機構10を備えた油冷式スクリュ圧縮機1において,該油冷式スクリュ圧縮機1の駆動中,シール室53に給油された潤滑油の一部は,軸封装置54を潤滑した後,軸封装置54を通過して潤滑油捕集空間55に捕集される。
【0084】
このようにして潤滑油捕集空間55に捕集された潤滑油は,潤滑油捕集空間55に一端20aを連通した排出流路20を介して貯留容器30に回収されて溜まる。
【0085】
貯留容器30内に溜まった潤滑油は,油冷式スクリュ圧縮機1が吸気制御弁60を閉じたアンロード運転に移行して吸気制御弁60の二次側における吸入流路62内が負圧となると,この負圧により回収流路40を介して吸入流路62内に吸引され,圧縮機本体50の圧縮作用空間内に導入されることで,潤滑油の循環系内に戻される。
【0086】
このように本発明の潤滑油回収機構10では,軸封装置54を通過して潤滑油捕集空間55で捕集された潤滑油を溜める貯留容器30を設けたことで,図6を参照して説明した従来の潤滑油回収機構110に比較して,潤滑油回収機構10内に貯留し得る潤滑油量を大幅に増大させることが可能となっている。
【0087】
しかも,貯留容器30内に一旦潤滑油を貯留することで,回収流路40の一端40aに設けられている開口部(オリフィス41cの入口)を貯留容器30に溜まった潤滑油内に没した状態で配置することができ,潤滑油を吸い上げる際に空気を巻き込むことなく潤滑油のみを吸い上げることができる。
【0088】
その結果,駆動軸152の外周に生じた隙間δ(図7参照)を介して吸い込んだ空気と共に潤滑油を回収する構造となっている,図6を参照して説明した従来の負圧吸引型の潤滑油回収機構110に比較して,潤滑油の回収を効率的に行うことができる。
【0089】
すなわち,本発明の潤滑油回収機構10(図1参照)と,従来の潤滑油回収機構110(図6参照)で,回収流路40,120を介して所定時間(例えば1秒間)あたりに吸入流路62,162内に吸引して回収できる「流体」の量(容積)が同じであったとしても,空気との混合流体として潤滑油を回収する従来の負圧吸引型の潤滑油回収機構110(図6)では,回収された流体の多くの部分を空気が占めているため,潤滑油は,回収された流体の一部として回収されるに過ぎない。これに対し,本発明の潤滑油回収構造10では,空気を含まない潤滑油を回収することで,回収された流体の全てが潤滑油であり,所定時間(例えば1秒間)あたりに回収することができる「流体」の量が同じであったとしても,「潤滑油」の回収量は大幅に増大する。
【0090】
その結果,回収流路120内に貯留できる潤滑油量が少ないこととも相まって,空気と共に潤滑油を回収する図6を参照して説明した従来の潤滑油回収機構110を備えた油冷式スクリュ圧縮機100では,約1秒間の強制アンロードで潤滑油を回収しようとした場合,約1時間毎の頻度で強制アンロードを実行する必要があったのに対し,本発明の潤滑油回収機構10を備えた油冷式スクリュ圧縮機1では,貯留容器30による貯油量の増大に伴い約10時間毎に強制アンロードを実行するように構成して,1回あたりの強制アンロードで回収する潤滑油量が10倍程度に増えた場合であっても,空気を含まない潤滑油を回収することで,従来と同様,1回あたり約1秒程度(貯留量によっては数秒程度)の強制アンロードの実行により貯留容器内に溜まった潤滑油を回収することができ,強制アンロードの実行頻度を大幅に減らした場合であっても,比較的短時間の強制アンロードの実行で潤滑油を回収することができた。
【0091】
なお,このような強制アンロードの実行は,例えばタイマにより設定された所定の時間隔毎に,設定された時間長さで行われるように構成するものとしても良いが,図5を参照して説明したように,貯留容器30に潤滑油の液面位置を検出する,フロートスイッチ等の液面検出手段37を設けた構成では,強制アンロードの開始,及び/又は停止を,この液面検出手段37の検出信号に基づいて行うようにしても良い。
【0092】
強制アンロード運転の開始を,液面検出手段37が検出した潤滑油の液面の位置に基づいて行う場合,一例として図5中にLMAXとして示した上限レベル,具体的には呼吸孔34の形成位置に対し所定の余裕分低い位置として設定した上限レベルLMAXに液面が達したときに強制アンロードを開始するように構成することができる。
【0093】
このように構成することで,貯留容器30の容量の上限近くまで潤滑油を貯留することができ,従って,強制アンロードの実行頻度を最小限に減らすことができる一方,貯留容器30内に貯留された潤滑油が呼吸孔34を介して貯留容器30より溢れ出る前に強制アンロードを開始することができ,潤滑油の漏出についても確実に防止することができる。
【0094】
特に,タイマによるカウントに基づいて所定の時間毎に行う通常の強制アンロードと併用して,液面検出手段37が上限レベルLMaxを検出した際にタイマによるカウント時間に拘わらず強制アンロードに移行するように構成することで,例えば,経年劣化等によって軸封装置54を通過する潤滑油量が増大する等して,通常の強制アンロードの実行では回収しきれていなかった潤滑油の蓄積が生じる等して貯留容器30内の潤滑油量が意図せずに増加していた場合であっても,潤滑油の漏出を防止することができる。
【0095】
一方,強制アンロード運転の停止を,液面検出手段37が検出した潤滑油の液面の位置に基づいて行う場合,一例として図5中にLMINとして示した下限レベル,具体的にはオリフィス41cの下端に設けた入口の位置に対し所定の余裕分高い位置に設定した下限レベルLMINに液面が達したときに強制アンロードを停止するように構成するものとしても良い。
【0096】
潤滑油の液面が下限レベルLMINよりも下がり,オリフィス41cの入口部分が液面より露出した状態で強制アンロード運転を継続すると,吸気制御弁60の二次側における吸入流路62には,回収流路40を介して貯留容器30内の空気が吸い込まれる。
【0097】
しかし,貯留容器30内の潤滑油の液面が前述した下限レベルLMINに達した際に強制アンロードを停止することで,圧縮機本体50の圧縮作用空間に対する空気の導入を防止できることから,上記下限レベルLMINで強制アンロードを停止することにより,本発明の潤滑油回収機構10を,空気以外の気体,例えば燃料ガス等を圧縮対象とする油冷式スクリュ圧縮機1の潤滑油回収機構10として採用した場合であっても,被圧縮気体に対する空気の混入を防止することができる。
【0098】
なお,強制アンロードの開始及び停止は,いずれも前述した液面検出手段37の検知信号に基づいて行うものとしても良く,また,強制アンロードの開始を液面検出手段37が上限レベルLMAXの検出時に開始すると共に,強制アンロードの停止については,タイマによる所定時間のカウントで行うものとしても良く,更には,強制アンロードの開始についてはタイマによる設定時間毎に行うと共に,強制アンロードの停止を液面検出手段37が下限レベルLMINの検出時に行うようにしても良く,更には,タイマによる制御と,液面検出手段37の検出信号に基づく制御を併用し,タイマによる設定時間のカウント,又は,液面検出手段37による液面検出のいずれかの条件が満たされたときに強制アンロードの開始及び/又は停止を行うようにしても良く,各種組み合わせの採用が可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 油冷式スクリュ圧縮機
10 潤滑油回収機構
20 排出流路
20a 一端(排出流路の)
20b 他端(排出流路の)
21 一端側流路(きり穴)
22 中間流路(ナイロンチューブ)
23 他端側流路(ナイロンスリーブ)
24a,24b スリーブナット
25 ナイロンワッシャ
30 貯留容器
31 容器本体
32 蓋体
33 裾(蓋体の)
34 呼吸孔
35,36 貫通孔
37 液面検出手段(フロートスイッチ)
40 回収流路
40a 一端(回収流路の)
40b 他端(回収流路の)
41 一端側流路(回収流路の)
41a ナイロンスリーブ
41b ナイロンチューブ
41c オリフィス
42 主流路(ナイロンチューブ)
45a,45b スリーブナット
46 ストレーナ
47a,47b 連結ナット
49 逆止弁
50 圧縮機本体
51 ケーシング
52 駆動軸
53 シール室
54 軸封装置
55 潤滑油捕集空間
56 ロータ室
57,58 スクリュロータ
60 吸気制御弁
62 吸入流路
70 駆動源(モータ)
100 油冷式スクリュ圧縮機
110 潤滑油回収機構
120 回収流路
120a 一端(回収流路の)
120b 他端(回収流路の)
130 容器
150 圧縮機本体
151 ケーシング
152 駆動軸
153 シール室
154 軸封装置
155 潤滑油捕集空間
156 ロータ室
157,158 スクリュロータ
159 軸受
160 吸気制御弁
162 吸入流路
170 駆動源(モータ)
180 レシーバタンク
190 給油流路
191 オイルクーラ
192 オイルフィルタ
210 潤滑油回収機構
220 排出流路
220a 一端(排出流路の)
220b 他端(排出流路の)
230 容器
240 戻し流路
310 潤滑油回収機構
330 容器
331 排出口
350 混合器
351 駆動流導入口
352 排出口
353 吸込口

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9